説明

液圧式ブレーキ装置

【課題】適度な速さでブレーキをかけることができて破損の心配や過剰設計の必要がなく、しかも、動作の信頼性が高い液圧式ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】油収容部3の油を使用し、動力源駆動型ポンプ4の駆動によって摩擦ブレーキ2側に油圧が伝えられるようになされている。ポンプ4とブレーキ2とをつなぐ主油路5に、油収容部3に開放された分岐油路5が設けられ、該分岐油路5に絞り弁7が設けられ、ポンプ4の駆動によって油が分岐油路6を通じて循環しながらブレーキ2側に油圧が伝えられるようになっている。循環用の分岐油路6の分岐部よりもブレーキ2側の主油路5には、ポンプ4でブレーキ2側に伝えられる油圧値よりも高い油圧値の油圧を、絞り弁7の絞りを大きくすることで蓄える最終ロック用の蓄圧アキュムレータ8が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電用の風車などに用いられる液圧式ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電用の風車に用いられるブレーキ装置として、従来より、蓄圧アキュムレータを組み込んだ油圧式ブレーキ装置が提供されているが、このブレーキ装置では、液圧が最大値に達するまでの時間が非常に短く、ほぼ瞬間的に最大値に達するため、破損を起こしたり、過剰な設計を必要とするなどの問題がある。
【0003】
また、ブレーキのかかる方向に付勢する機械式バネと、バネ付勢力に抗してブレーキを解除状態に保持する油圧装置とを備え、油圧をゆっくりと抜いていくことにより、バネ力が最大値に達するまでの時間を遅らせるようにしたブレーキ装置も提供されているが、このブレーキ装置では、油圧装置の油路が油を抜くためのものであるため、油路は狭く、絞りもそのような狭い油路に設けられることになるため、油路に目詰まりを生じやすく、動作の信頼性にいくらかの不安がある。
【特許文献1】特開2002−048051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであって、適度な速さでブレーキをかけることができて破損の心配や過剰設計の必要がなく、しかも、動作の信頼性が高い液圧式ブレーキ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、液圧の力で作動する摩擦ブレーキと、
液収容部と、
液収容部の液を使用してブレーキ側に前記液圧を伝える動力源駆動型ポンプと
を備え、
前記ポンプの駆動によってブレーキが作動するようになされていることを特徴とする液圧式ブレーキ装置によって解決される。なお、「動力源駆動型ポンプ」とは、電動機や内燃機関等の動力源によって駆動されるポンプをいう。
【0006】
上記のブレーキ装置では、動力源駆動型ポンプの駆動によって発生した液圧をブレーキ側に伝えてブレーキをかけるものであるので、ブレーキ側に伝えられる液圧が最大値に達するまでの時間を蓄圧アキュムレータによるブレーキの場合に比べて長くすることができて、適度な速さでブレーキがかかっていき、破損の心配や過剰設計の必要がない。
【0007】
しかも、ポンプによって発生する液圧をブレーキ側に伝え、液圧でブレーキをかけるものであるから、ポンプとブレーキとを結ぶ液路を太くすることができ、液路に目詰まりを生じず、ブレーキの作動信頼性を高いものにすることができる。
【0008】
上記のブレーキ装置において、ポンプと摩擦ブレーキとをつなぐ主液路から分岐し、液収容部に開放された分岐液路と、
分岐液路に設けられ、ブレーキ側に伝えられる液圧値を調節する絞り弁と
が備えられ、
前記ポンプの駆動によって液を分岐液路を通じて循環させながらブレーキ側に液圧を伝えることができるようになされているとよい。
【0009】
この装置では、ポンプが、ブレーキ作動に必要な液圧を越える液圧を生じさせる能力を備えたものであっても、そのようなポンプでブレーキ装置を構成することができ、装置におけるポンプ選択の幅を広くすることができる。
【0010】
また、上記のブレーキ装置において、分岐液路の分岐部よりもブレーキ側の主液路に、ポンプと分岐液路と絞り弁とでブレーキ側に伝えられる液圧値よりも高い液圧値の液圧を、前記絞り弁の絞りを大きくすることで蓄える最終ロック用の蓄圧アキュムレータが設けられているのもよい。
【0011】
この装置では、ポンプと分岐液路と絞り弁とでブレーキをかけた後、それよりも高い液圧を蓄圧アキュムレータでブレーキ側に伝えてブレーキ装置をブレーキのかかったロック状態に保持することができる。のみならず、分岐液路と絞り弁が備えられていることにより、絞り弁の絞りの程度を調節するだけで、ブレーキ用の液圧と、アキュムレータ蓄圧用の液圧とを一つのポンプで発生させることができ、ポンプは一つでよく、簡素な構成でそれを実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のとおりのものであるから、適度な速さでブレーキをかけることができて破損の心配や過剰設計の必要がなく、しかも、ブレーキ動作の信頼性を高いものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示す第1実施形態の液圧式ブレーキ装置は、風力発電用の風車に用いられる油圧式のブレーキ装置で、該油圧式ブレーキ装置1において、2は摩擦ブレーキ、3は油収容部、4は電動モーターなどで駆動するポンプである。摩擦ブレーキ2は、風車15の回転軸16に取り付けられたローターとしてのディスク17と、ディスク17を両側から挟んで摩擦力でディスク17の回転を停止させるキャリパ、パッドなどを含むブレーキ駆動部18とを備えており、ブレーキ駆動部18は油圧の力でディスク17を挟み込むようになされている。なお、19は増速機、20は発電部である。
【0015】
そして、上記のブレーキ駆動部18とポンプ4とは主油路5で接続されて、ポンプ4で発生する油圧が主油路5を通じてブレーキ2に伝えられるようになされていると共に、主油路5に分岐油路6が設けられ、該分岐油路6は油収容部3内に開放され、分岐油路6に絞り弁7が設けられて、ポンプ4を駆動することにより、油を分岐油路6を通じて循環させながらブレーキ駆動部18に油圧を伝えることができるようになされている。
【0016】
更に、分岐油路6の分岐部よりもブレーキ駆動部18側の主油路5には、最終ロック用の蓄圧アキュムレータ8が設けられている。該蓄圧アキュムレータ8は、ポンプ4と分岐油路6と絞り弁7とでブレーキ駆動部18側に伝えられる液圧値よりも高い液圧値の液圧を蓄えるもので、蓄圧アキュムレータ8と主油路5とをつなぐ油路9には開閉弁10が設けられると共に、蓄圧アキュムレータ8とブレーキ駆動部18とを結ぶ主油路5には方向切換え弁11が介設され、方向切換え弁11から延ばされた油路12が油収容部3に開放されている。また、蓄圧アキュムレータ8と循環用分岐油路6とをつなぐ主油路5には、チェック弁13が介設されている。
【0017】
上記の油圧式ブレーキ装置1では、蓄圧アキュムレータ8への蓄圧は、絞り弁7を閉じ、開閉弁10を開き、方向切換え弁11でポンプ4側の主油路5を閉じた状態にし、その状態でポンプ4を駆動し、蓄圧アキュムレータ8にポンプ圧が伝えられた状態で、開閉弁10を閉じるようにすればよい。これにより、蓄圧アキュムレータ8に最終ロック用の高い圧力が蓄えられる。
【0018】
回転中の風車15にブレーキをかけて風車15を停止させるときは、上記の蓄圧状態において、絞り弁7を所定の絞り量に開き、方向切換え弁11で主油路5を開いた状態にし、その状態でポンプ4を駆動する。すると、分岐油路6を通じて油が循環し、蓄圧アキュムレータ8に蓄えられた油圧よりも低い油圧がブレーキ駆動部18に伝えられ、ブレーキ駆動部18がディスク17を挟んで風車15にブレーキがかかる。その過程は、図2(イ)のグラフに示すとおりであり、ブレーキ駆動部18に伝えられる油圧が最大値に達するまでの時間t1は、従来の蓄圧アキュムレータによるブレーキの場合に比べて長く、適度な速さでブレーキがかかっていき、従って、破損の心配や過剰設計の必要はない。
【0019】
そして、油圧が最大値に達して風車15が停止するまでの時間t2が経過した後、開閉弁10を開く。すると、蓄圧アキュムレータ8に蓄えられた油圧でチェック弁13が閉じられると共に、蓄圧アキュムレータ8の油圧がブレーキ駆動部18に伝えられ、風車15はロック状態になる。蓄圧アキュムレータ8によってブレーキ駆動部18に伝えられる油圧が最大値p2に達する時間t3は瞬間的であるが、風車15は既に停止しているので、破損の心配や過剰設計の必要はなく、瞬間的にロック状態にすることができる。
【0020】
なお、図1に示すように、主油路5にロボシリンダー等の加圧装置14を接続することで、図2(ロ)に示すように、ポンプ4による油圧が最大値p1に達してから風車15が停止するまでの時間t2を短縮するようにしてもよい。
【0021】
風車15のロック状態を解除するときは、方向切換え弁11で主油路5を閉じ、ブレーキ駆動部18側の主油路5を油収容部3に開放すればよい。
【0022】
このように、上記のブレーキ装置1では、ポンプ4によって発生する油圧をブレーキ駆動部18に伝えてブレーキをかけるものであるので、ブレーキ駆動部18に伝えられる液圧が最大値に達するまでの時間t1を蓄圧アキュムレータによる従来のブレーキの場合に比べて長くすることができて、適度な速さでブレーキがかかっていき、破損の心配や過剰設計の必要がなく、しかも、ポンプ4によって発生する油圧をブレーキ駆動部18に伝え、油圧でブレーキをかけるものであるから、ポンプ4とブレーキ2とを結ぶ油路5…を太くすることができて、油路5…に目詰まりを生じず、ブレーキの作動信頼性を高いものにすることができる。
【0023】
また、上記の実施形態では、循環用分岐油路6と絞り弁7を備えさせているので、ポンプ4が、ブレーキ作動に必要な油圧p1を越える油圧を生じさせる能力を備えたものであっても、そのようなポンプ4でブレーキ装置1を構成することができ、装置1におけるポンプ4の選択の幅を広くすることができ、特に中型あるいは小型の風力発電機の風車用のブレーキ装置を、市場に出回っている汎用ポンプを用いて製作することなどが可能になる。
【0024】
更に、上記の実施形態のブレーキ装置では、ポンプ4でブレーキをかけた後、蓄圧アキュムレータ8でそれよりも高い油圧p2をブレーキ駆動部18に伝えてブレーキ装置1をブレーキのかかったロック状態に保持することができ、そのなかで、分岐油路6と絞り弁7が備えられていることにより、絞り弁7の絞りの程度を調節するだけで、ブレーキ用の液圧p1と、アキュムレータ蓄圧用の液圧p2とを一つのポンプ4で発生させることができ、ブレーキ装置1においてポンプ4は一つでよく、簡素な構成でそのようなロック状態を形成することができる。
【0025】
図3に示す第2実施形態の油圧式ブレーキ装置1は、循環用の分岐油路6と絞り弁7とが備えられ、最終ロック用の蓄圧アキュムレータが省略された装置に構成されている。このブレーキ装置1においても、図2(イ)に示すように、ブレーキ駆動部18に伝えられる液圧が最大値に達するまでの時間t1を長して、適度な速さでブレーキをかけることができて破損の心配や過剰設計の必要がなく、しかも、ポンプ4とブレーキ2とを結ぶ油路5…を太くすることができて、油路5…に目詰まりを生じず、ブレーキの作動信頼性を高いものにすることができる。また、循環用分岐油路6と絞り弁7を備えさせているので、ポンプ4が、ブレーキ作動に必要な油圧p1を越える油圧を生じさせる能力を備えたものであっても、そのようなポンプ4でブレーキ装置1を構成することができ、装置1におけるポンプ4の選択の幅を広くすることができる。なお、第3に示すように、主油路5にロボシリンダー等の加圧装置14を接続することで、図4(ロ)に示すように、ポンプ4による油圧が最大値p1に達してから風車15が停止するまでの時間t2を短縮するようにしてもよい。
【0026】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、最終ロック用の蓄圧アキュムレータを備えさせる場合の弁の種類や配置に制限はない。また、上記の実施形態では、摩擦ブレーキとして、ディスク型のブレーキを用いた場合を示したが、本発明は、ドラム型などの各種摩擦ブレーキに用いることができるし、また、用途についても、風力発電用の風車ブレーキに限らず、各種用途に用いることかできるものであることはいうまでもない。また、循環用の分岐油路と絞り弁は、省略されてもよい。また、循環用の分岐油路を採用しながら絞り弁は省略する構成にしてもよく、その場合であっても、分岐油路の通路面積を設定することで、装置におけるポンプ選択の幅を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態の油圧式ブレーキ装置を示す構造説明図である。
【図2】図(イ)(ロ)はそれぞれ、ブレーキの作動状態を示すグラフ図である。
【図3】第2実施形態の油圧式ブレーキ装置を示す構造説明図である。
【図4】図(イ)(ロ)はそれぞれ、ブレーキの作動状態を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0028】
1…油圧式ブレーキ装置(液圧式ブレーキ装置)
2…摩擦ブレーキ
3…油収容部
4…ポンプ
5…主油路
6…循環用分岐油路
7…絞り弁
8…蓄圧アキュムレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧の力で作動する摩擦ブレーキと、
液収容部と、
液収容部の液を使用してブレーキ側に前記液圧を伝える動力源駆動型ポンプと
を備え、
前記ポンプの駆動によってブレーキが作動するようになされていることを特徴とする液圧式ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ポンプと摩擦ブレーキとをつなぐ主液路から分岐し、液収容部に開放された分岐液路と、
分岐液路に設けられ、ブレーキ側に伝えられる液圧値を調節する絞り弁と
が備えられ、
前記ポンプの駆動によって液を分岐液路を通じて循環させながらブレーキ側に液圧を伝えることができるようになされている請求項1に記載の液圧式ブレーキ装置。
【請求項3】
前記分岐液路の分岐部よりもブレーキ側の主液路に、ポンプと分岐液路と絞り弁とでブレーキ側に伝えられる液圧値よりも高い液圧値の液圧を、前記絞り弁の絞りを大きくすることで蓄える最終ロック用の蓄圧アキュムレータが設けられている請求項2に記載の液圧式ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−105173(P2006−105173A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288867(P2004−288867)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】