説明

液晶に基づく、該液晶のスイッチングノイズを減衰させる光シャッタリング装置、対応する視覚ゴーグル及び表示装置

液晶材料18に基づきかつ電子スイッチング回路30によって制御される光学セル17を備える光シャッタリング装置であって、制御電圧を提供する電源モジュールBatと、前記電源モジュールと前記セルとの間に直列に取り付けられ、前記セルをオン状態とオフ状態との間でスイッチングするのを可能にするスイッチング機構SWとを備える、光シャッタリング装置を提案する。本発明の実施形態によれば、この装置は、電子スイッチング回路30が、電源モジュールBatとスイッチング機構Swとの間に直列に取り付けられた電流源Sと、好ましくは厚さ及び材料の異なる基板とをさらに備えるという点で注目すべきである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、液晶ベース材料を組み込んでいる光シャッタリング(optical shuttering)装置の分野である。
【0002】
より詳細には、本発明は、前記液晶のスイッチング中に聞こえるノイズを制限する技法に関する。
【0003】
本発明は、特に、但し排他的にではなく、液晶ベースの交互視(alternating vision)ゴーグルセット(又は液晶に基づく交互視眼鏡)であって、その主な特徴が液晶のスイッチングノイズを低減することである、ゴーグルセットを作製することに応用される。
【0004】
本発明を、より詳細には、例えば携帯電話の分野でのディスプレイ画面(表示(viewing))に適用することができる。
【背景技術】
【0005】
以下の説明記載の全体は、デジタルコンテンツを立体的に見るため(3D視)のアクティブゴーグルに関してなされている。
【0006】
こうしたゴーグルセットは、標準的に、少なくとも1つの液晶ベースのセルに基づくシャッターを有している。
【0007】
より詳細には、この種のゴーグルに取り付けられているシャッターは、互いに向かい合って液晶を包囲するように配置された2つの基板によって形成される少なくとも1つのセルからなる。こうした基板の大部分は、ガラス等の剛性かつ透明な材料で作製されている。
【0008】
軽量かつ小型のシャッターを作製するために、軽量で小型の液晶ベースのセルを使用することが一般に行われている。この種のセルの重量を軽減するために、標準的には、厚さが標準的に0.5mm〜1mmの範囲にある薄いガラス基板としてより知られている、薄い厚さのガラス基板を用いることにより、ガラス基板の厚さを低減することが行われている。
【0009】
こうしたゴーグルセットについては、特許文献1に特に記載されている。このゴーグルセットは、互いに向かい合うように位置する第1の基板及び第2の基板によって形成された単一セルからなる。これらの2つの基板の間の空間は、ネマチック型の液晶を受け入れるキャビティを形成する。
【0010】
液晶ベース材料は、透明な薄い電極を用いて2つの基板の間に制御電圧Vを印加することによって生成される電界Eをこれらの材料に印加することによって、光学特性、特にそれらの複屈折を変更することができる材料であることを想起することができる。液晶が、例えば交差する偏光子と検光子との間に配置されると、電圧制御光シャッターが得られる。そして、この種の液晶ベースの光シャッターは、2つの基板の端子に電圧が印加されるか否かに応じて、以下の少なくとも2つの状態をとる。すなわち、
−光を通過させる「通過」状態として知られている状態、及び
−光を通過させないか又はこの光の非常にわずかな部分しか通過させない「遮断」状態
である。
【0011】
3Dビジョンでの動きのレンダリングにおける品質の要件により、例えば、48Hzの映画の標準的なサンプリング周期に対して、96Hzでタイミング調整されたダブルフラッシュ技術(すなわち、画像が、目が感知することができない速度で各目に交互に投影される)の代りに、144Hzでタイミング調整されたトリプルフラッシュ投影の技術が開発された。
【0012】
従って、こうした技法は、高速な目のシャッターの技術とハリウッドのスタジオによって要求される映画館投影品質に匹敵する光学品質とを規定している。
【0013】
しかしながら、標準的に使用されているネマチック液晶セルでは、遮断状態から透明状態として知られている通過状態に移行するために十分に短い応答時間(開口時間とも呼ばれる)を得ることができない。実際に、この技術は、数ミリ秒程度の開口時間に限られている。ネマチック技術は、この場合、96Hzでタイミング調整されたダブルフラッシュ投影システムにしか適合性がなく、144Hzでタイミング調整されたトリプルフラッシュシステムには適合性がない。
【0014】
動的シャッターを作製するために用いられる別の技術は、スメクチック液晶の使用に基づく。このスメクチック技術により、
−透明状態から遮断状態に移行するために約100ms〜数100μsの範囲の短い応答時間、
−遮断状態から透明状態に移行するために約100ms〜数100μsの範囲の短い応答時間
を得ることが可能になる。
【0015】
遮断状態と透明状態との間のスイッチングの対称性について留意する。従って、例えば、強誘電性スメクチック液晶(FLC)又はさらには反強誘電性スメクチック液晶(AFLC)は、ネマチック液晶より高速である。
【0016】
ネマチック技術からスメクチック技術への移行におけるより高速な液晶の使用と共に、ビート周波数の上昇(48画像/秒から144画像/秒に移行)により、液晶に対しより短い立上り時間でより高い制御電圧が必要になる。液晶の厚さはまた、種々のネマチック液晶に対する5〜10μmと比較して、FLCの場合はより小さく、すなわち1μm〜2μmであることを知らなければならない。その結果、印加される電界が強くなる(ネマチック液晶の場合の数V/μmに対して、スメクチック液晶の場合は10V/μm)。
【0017】
従って、ビート周波数の上昇及び液晶に印加される電界の増大にはノイズ源が伴い、このノイズ源は使用者には不都合であることが分かっている。実際には、液晶セルが(この特定の例では)視覚(viewing)ゴーグルセット及び使用者の聴覚器に近いとすると、液晶セルが聴覚器に近接している時に液晶セルのスイッチングノイズが問題となる。
【0018】
より詳細には、ネマチック技術であってもスメクチック技術であっても、液晶スイッチを切り換えるために、シャッターセル(視覚ゴーグルの場合)を構成しているガラス基板とディスプレイユニット(例えば携帯電話画面)のガラス基板とに、交流の正の電圧及び負の電圧(方形波の形態)が印加されると、主にガラス基板の振動によってノイズがもたらされる。
【0019】
実際には、制御電圧Vの下で、可聴範囲にある周波数でガラス基板に及ぼされる結果としての静電気力により、基板が振動し、その結果が、可聴スペクトルにおける音響振動となる。
【0020】
この静電気力によって誘導される振動の振幅は、ガラス基板が薄いほどますます大きくなることが分かる。
【0021】
ここで、ノイズ発生のこの問題は、さらに薄いガラスを必要とする存在し得る最軽量の装置、例えば視覚ゴーグルセット又は表示装置の画面に光シャッタリング装置を組み込まなければならないほどいっそう深刻化する。
【0022】
言い換えれば、これら装置の製造業者が探求している装置の重量軽減は、このノイズ発生が、ガラス基板の厚さが小さくなるに従いいっそう伝搬し易くなる音響振動(又は波)からもたらされることによって制限される。この問題は、スメクチック液晶を使用すると、ネマチック結晶の場合より電界が大幅に強いために深刻化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第6943852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の少なくとも1つの実施の形態の目的は、液晶のスイッチング中に発生する静電気力によってもたらされる音響振動を効率的に低減すると同時に、2つの基板及び液晶によって構成されるセルの重量を最適化し、本発明の1つの特定の実施の形態による光シャッタリング装置の重量を低減するためにいっそう最適化する技法を提供することである。
【0025】
本発明の少なくとも1つの実施の形態はまた、実施が簡単でありコストがほとんどかからない、この種の技法を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の1つの特定の実施の形態は、
互いに向かい合って自由空間を形成するように配置された第1の透明基板と第2の透明基板とによって形成された光学セルと、
前記自由空間に配置された液晶材料と、
前記セルをスイッチングする電子回路であって、
制御電圧を提供する電源モジュールと、
前記電源モジュールと前記セルとの間に直列に取り付けられ、前記セルが通過状態と遮断状態との間でスイッチングされるのを可能にするスイッチング素子と、
を備えた電子回路と、
を具備する光シャッタリング装置を提案する。
【0027】
この実施形態によれば、本発明は、前記電子スイッチング回路が、前記電源モジュールと前記スイッチング素子との間に直列に取り付けられた電流源をさらに備える点で注目すべきである。
【0028】
従って、本実施の形態は、液晶のスイッチング中にこのガラス基板の振動によってもたらされるノイズを減衰させる完全に新規性及び進歩性がある手法に依拠し、この結果を、セルの液体セルの制御電圧のパルス形状を制御することによって達成する。特に、本発明による直列に取り付けられた電流源を使用することにより、セルに印加される電気パルスの立上り時間(勾配)を変更することができる。
【0029】
この電子的補正により、より厚さの小さい基板を使用することが可能になり、従って、光学セルの重量、特に光シャッタリング装置の重量が最適化される。
【0030】
有利には、前記第1の基板及び前記第2の基板は、それぞれの厚さが異なり、かつ該厚さは、
前記第1の基板及び前記第2の基板の累積した総厚さが2.50mm以下であるようになっており、
前記第1の基板及び前記第2の基板のうちの最も厚い基板がガラス製であり、厚さが0.70mmを上回るようになっている。
【0031】
従って、この構成により、光学セルの重量を制限するために少なくとも1つの薄い基板を使用することが可能になる。実際には、ガラス基板が厚くなるほど、液晶によって誘導される振動の吸収はより効率的になる。この構成により、電界によって誘導される基板の振動は、厚い方の基板によって緩衝される。
【0032】
この場合もまた、厚さが0.70mm以上のガラス基板を使用することにより、セルを十分に剛性にすることができ、従って、第1の基板及び第2の基板の振動による屈曲が制限される。これには、有利に、セルの重量を制限しかつその堅牢性を向上させると共に、セルにおける音響ノイズレベルを低減するという効果がある。
【0033】
有利には、最も薄い基板はガラス製であり、厚さが1mm以下である。
【0034】
従って、セルの重量を軽減すると同時に、電界によって導入される振動を制限することができる。
【0035】
また、最も薄い基板はプラスチック製であり、厚さが0.5mm以下である。
【0036】
従って、セルの重量が最適化される。
【0037】
本発明の有利な実施モードによれば、前記液晶材料は、少なくとも一種の液晶と一種のポリマーとを結合したものを含み、それにより、前記ポリマーによって安定化する液晶ゲルを構成する。
【0038】
従って、液晶のスイッチング時間の勾配を、衝撃(percussion)ノイズを制限するように調整することができる。実際には、ポリマーの存在により、液晶分子の移動に対するポリマー鎖の抵抗によってスイッチング時間が増大する。この機構には、分子の方向軸の回転移動に対する電気的衝撃の影響を制限することにより、音響ノイズを低減するという効果がある。
【0039】
本発明の別の有利な特徴によれば、前記液晶材料は、少なくとも一種の強誘電性スメクチック液晶FLC又は反強誘電性スメクチック液晶AFLCとポリマーとを結合したものを含み、それにより、それぞれPSFLC又はPSAFLCという名前でよりよく知られている、前記ポリマーによって安定化する液晶ゲルを形成する。
【0040】
従って、液晶のスイッチング時間の勾配を調整することができ、スメクチック液晶のスイッチングからもたらされる元の衝撃ノイズを制限することができる。
【0041】
本発明の1つの有利な特徴によれば、少なくとも一種の液晶と一種のポリマーとを前記結合したものは、前記ポリマーの質量密度での濃度が10%〜15%の範囲であるようなものである。
【0042】
従って、特に分子の動きに対するポリマー鎖の抵抗のために、材料の光学的品質に影響を与えることなく、かつポリマー濃度が高いことからもたらされる結果としての光拡散を防止して、液晶のスイッチング時間を増大させることができる。
【0043】
本発明の別の主要な特徴によれば、前記装置は、粘弾性材料の少なくとも1つの透明層をさらに具備する。
【0044】
粘弾性材料の層を用いることにより、音響エネルギー及び/又は機械エネルギーを吸収し、従ってシャッターで発生する音響ノイズのレベルをさらに低減させることができる。
【0045】
別の実施の形態では、本発明は、上述した光シャッタリング装置を実施する視覚ゴーグルのセットに関する。
【0046】
別の実施の形態では、本発明は、上述した光シャッタリング装置を実施する光学表示装置に関する。
【0047】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、網羅的でない例によって示す以下の説明及び添付図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1a】標準的な3D視覚ゴーグルセットの概略図である。
【図1b】視覚ゴーグルセットが装備されている標準的なシャッターの概略図である。
【図2】図1aの液晶ベースの視覚ゴーグルセットのシャッターを形成する種々の要素の概略図である。
【図3】同期信号のタイミング図及び図2の液晶ベースセルの電源投入用の関連する制御電圧の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態により、第1の基板及び第2の基板がガラス製であり、厚さe1が厚さe2より大きい場合の、第1の基板及び第2の基板それぞれの厚さe1及びe2の関数としての音響ノイズの進行の概略図である。
【図5】液晶ベースセルのスイッチング用の標準的な電子回路の概略図である。
【図6】図6aないし6dは、図5の電子回路によって電力が供給された時に制御電圧に応答してセルの端子に流れる電圧及び電流の進行の概略図であり、図5の電子回路によって電力が供給された時のセルの光応答及び音響応答の進行の概略図である。
【図7】本発明の一実施形態による液晶ベースセルの電子スイッチング回路の概略図である。
【図8】図8aないし8dは、図7の電子回路によって電力が供給された時に制御電圧に応答してセルの端子に流れる電圧及び電流の進行の概略図であり、図7の電子回路によって電力が供給された時のセルの光応答及び音響応答の進行の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本文書の以下では、説明は、特に、本発明者らがデジタルビデオコンテンツの3D視のためのゴーグルセットの分野で直面した問題に焦点を当てる。本発明は、当然ながら、この特定の応用分野には限定されず、本発明を、他の多くの分野、例えば携帯電話用のディスプレイ(表示)において、より包括的には、以下に列挙する目的が興味深いものであるすべての場合において実施することも可能である。
【0050】
図1aは、プロジェクタ(図示せず)からもたらされるデジタルビデオコンテンツ40の3D視用のゴーグルセット10の概略図を提供する。
【0051】
標準的に、使用者の右目23及び左目23’の各視軸に沿って、視覚ゴーグルセット10は、第1の基板14及び第2の基板15(図2)によって形成されたセル17によって特に形成されている光シャッター11を有している。この装置については、図2を参照してより十分詳細に説明する。
【0052】
このシャッター11は、標準的に、例えばセル17を保護するためのシェル等、簡略化するためにこの図1aに図示していない他の要素によって形成される。
【0053】
図1bは、シャッター11のセル17、例えば図1の標準的な視覚ゴーグルセット10の左シャッターのセル17の概略図を提供する。このセル17は、わずかにオフセットして互いに向かい合うように配置された第1の基板14及び第2の基板15によって形成されている。そして、液晶18が空間16(以下でより十分に説明する)に配置されることにより、液晶シャッター11が構成されている。
【0054】
図2に示すように、光シャッタリング装置は、その実施に必要ないくつかの要素を有している。
【0055】
従って、この光シャッタリング装置は、互いに向かい合うように配置された第1の基板14及び第2の基板15によって形成されたセル17からなり、各基板は、透明材料(例えばガラス)で作製される。
【0056】
標準的に、それぞれの厚さe1、e2を有する第1の基板14及び第2の基板15の組立て中、組み立てられたときにこれら2つの基板の間に厚さe3の空間16が形成されるように、スペーサ(図示せず)が用いられる。液晶18は、空間16内に注入されて、第1の基板の厚さe1及び第2の基板の厚さe2よりはるかに小さい厚さe3の液晶18の層を形成する。このように、液晶18ベースの光学セル17が形成される。
【0057】
上述したように、高速シャッターは、「透明」状態として知られている状態から遮断状態に移行する、約100μsの短い応答時間と、対称的に、遮断状態から透明状態に移行する、約100μsの短い開口時間とを有する、強誘電性スメクチック型高速液晶(すなわちFLC、強誘電性液晶)を現在使用している。
【0058】
従って、液晶ベースの高速シャッターを作製するために、この種の液晶18が、標準的に使用されて来た。
【0059】
第1の基板14及び第2の基板15は、各々、外側面141、151及び内側面142、152をそれぞれ備えている。
【0060】
各内側面142、152は、透明な導電性電極24の堆積物をさらに有している。
【0061】
空間16に収容される液晶18に電源を投入するために、これら電極24は、2つの電線リンク221によりセル17の電子スイッチング回路30に接続されている。
【0062】
従って、第1の基板14及び第2の基板15は、電子スイッチング回路30に電気的に接続されている。この電子スイッチング回路30については以下でより十分に説明する。
【0063】
電子スイッチング回路30を用いて、交流制御電圧22がセル17の2つの基板14、15に供給される。従って、この制御電圧22により、液晶18をスイッチングすることができる。スメクチック液晶の場合、この制御電圧は、正の電圧+Vと電圧−Vとの間で対称方形波の形状を有している(図3を参照して後述する)。
【0064】
標準的には、制御電圧22は、同期信号20によってタイミング調整されている。この信号を、例えば、デジタルビデオコンテンツ40を送出するプロジェクタ(図示せず)によって送出することができる。この信号はまた、ゴーグルセットの内部にあり、かつ、例えばゴーグルセットの一方の腕に位置する同期モジュールから与えることもできる。
【0065】
プロジェクタからの入射光及び出射光を偏光させるために、セル17の第1の基板14及び第2の基板15は、それぞれ、それらの外側面141、151に第1の偏光子12及び第2の偏光子13を備えている。
【0066】
図2の例では、製造コストを低減するために、光シャッタリング装置のセル17は唯一のセルである。当然ながら、本発明は、この種の単一セルと、(図1aに示すように)各々が使用者の視軸に面するようにかつ同じ同期信号20によって同期するように配置されている2つの独立したセルとに、同様に適切に適用することができる。
【0067】
実際には、本発明は、ポリマー鎖によって安定化され、それによりポリマーゲルを形成する強誘電性スメクチック型液晶18の使用を提案する。この種の液晶は、PSFLCゲルとしてよりよく知られている。これを選択することにより、液晶18の衝撃に対する非常に高い耐性と共にセル17の表面全体における非常に高い光学品質が確保され、従って、単一セル17を作製する方が好都合である。この種の液晶の使用は、本発明の発明者によって出願された特許文献(出願番号FR0702441号)からすでに既知である。異なる液晶の使用については、以下でより十分に説明する。
【0068】
図3は、同期信号20の図と、この同期信号に応答する、セル17に含まれる液晶18の制御電圧22の図との一例を示す。
【0069】
同期信号20は、通常、例えば(96Hzでタイミング調整された)ダブルフラッシュタイプの周知の3D投影技法と適合性のある周波数でタイミング調整された交流方形波信号である。
【0070】
セル17の電源投入は、例えば、同期信号20の前縁及び後縁の各々によって起動される。例えば、液晶18は、同期信号20の各前縁では−Vボルトの制御電圧22で電力が供給され、同期信号20の各後縁では+Vボルトの制御電圧22で電力が供給される。
【0071】
同期信号20が検出されない場合、液晶18には電力が供給されない(0ボルト)。
【0072】
液晶17のこのスイッチングについては、図5、図6a〜図6d、図7及び図8a〜図8dを参照して以下でより詳細に説明する。
【0073】
上述したように、制御電圧Vでは、静電気力が形成され、可聴範囲にある周波数で振動力が生成され、次いで、この振動力が音響振動の形態でガラス基板に伝達される。
【0074】
実際には、液晶セルを、初期分析において、静電容量Cのコンデンサーになぞらえることができる。電界Eの印加時に、静電気力Fが形成される。既知の方法で、この力は以下の形式で表される。
F=d(W)/d(e)=(1/2)d(CV)/d(e)
ここで、Wは仕事であり、eはプレートの間の厚さであり、Cは静電容量であり、Vは電圧であり、d(W)/d(e)はeに対するWの導関数を表す。
【0075】
印加される制御電圧Vが一定であるとすると、力は以下のように表される。
F=(V/2)d(C)/d(e)=−VεεS/2e
【0076】
この式において、Vは、セルの端子に印加される制御電圧であり、Sはコンデンサーのプレートの表面積であり、eはこれらプレートの間の厚さ(すなわち、液晶ベースの光学セル用の基板の間の液晶厚さ)である。
【0077】
εの値は真空の誘電体誘電率であり、εの値は材料の相対誘電率である。静電気力Fが周期的であり、周期が印加される制御電圧Vの2倍である(方形波の電圧+V及び−Vが同等である)場合、ガラスは、振動して力Fの値0を通過中に弛緩する。
【0078】
セルに液晶が存在する場合、振動の振幅が大きくなることに留意しなければならない。実際には、電圧がεの値を変更することにより、振動の振幅は、印加される電界Eに対する液晶の応答によって決まる。この現象は、液晶を再配向することによって増幅される可能性がある。
【0079】
また、ガラスの厚さ及びその剛性は、考慮すべき他の2つのパラメーターである。
【0080】
要約すると、使用者が感知し、かつ、ガラスの振動によって発生するノイズの振幅は、主に、基板に印加される制御電圧Vと、ガラスの間の厚さe(言い換えれば電界E)によって決まり、これらのパラメーターは二次的に作用する。
【0081】
以下に導入した表1は、図2の第1の基板14及び第2の基板15の振動によってもたらされる過剰ノイズ値に関する情報を提供する。
【0082】
【表1】

【0083】
dBaで表されるこれらのノイズを、無響室において、それぞれの厚さe1及びe2の第1のガラス基板14及び第2のガラス基板15によって同じ液晶18に対して形成されたセル17の種々の構成、すなわち、
−セル17の空間16内部に液晶18のない初期構成C0
−セル17の空間16に液晶18があり、厚さe1及びe2が同一でありかつ0.5mmに等しい、対称構成と呼ぶ第1の構成C1、
−セル17の空間16に液晶18があり、厚さe1が1.1mmに等しく厚さe2が0.5mmに等しい、非対称構成と呼ぶ第2の構成C2、
−セル17の空間16に液晶18があり、厚さe1及びe2が同一であり、かつ、1.1mmに等しい、第3の対称構成C3
に対し測定している。
【0084】
この表1はまた、各構成に対する電子的補正あり及び電子的補正なしのノイズ値も示している。この電子的補正については、本明細書において以下でより詳細に説明するため、ここでは論じないこととする。
【0085】
セル17は、総厚さeが、第1の基板14の厚さe1と第2の基板の厚さe2との合計におよそ対応している。この近似では、第1の基板14と第2の基板15との間に形成された自由空間16に収容される液晶材料の層の厚さe3は、第1の基板の厚さe1及び第2の基板の厚さe2に対して無視できるとみなされ、従って、e≒e+eである。
【0086】
表1の初期構成C0によれば、(セル17に対し)測定された過剰ノイズは0.3dBa(電子的補正なし)である。この測定値は、液晶18に基づくセル17のノイズが、大部分、液晶の存在(高い値のε)と、液晶材料の層によって誘導される振動とによるという観察に完全に適合する。
【0087】
次に、第1の構成C1及び第3の構成C3をそれぞれ検討することにする。これらの構成は、液晶セル17を作製するために標準的に用いられ、各々、以下でより十分に説明する利点及び欠点がある。
【0088】
表1の第3の構成C3によれば、従来、標準厚さが約1.10mmである第1のガラス基板及び第2のガラス基板が標準的に用いられている。この構成は対称である。そして、セル17の総厚さは約2.20mmであり、(セル17に対して)測定された過剰ノイズは15.4dBa(電子的補正なし)である。
【0089】
同様に対称である第1の構成C1によれば、各基板は、厚さが0.5mmに等しく、すなわち、第3の構成C3と比較して各基板の半分の厚さである。(セル17に対して)測定された過剰ノイズは、この場合17.6dBa(電子的補正なし)である。
【0090】
従って、第3の構成C3に関連するノイズの測定値と比較して第1の構成C1に関連するノイズの測定値は、液晶材料が存在する場合に静電気力Fによって誘導される振動の吸収が、ガラス基板が厚いほどいっそう効率的になるという観察を明確に示す。
【0091】
従って、第3の構成C3は振動を減衰させる。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、セル17の総厚さeが2.50mmの値に制限されるという制限により、その重量と、それが占める空間の量とが有利に制限されると同時に、高度な堅牢性が確保される。この値を超えると、セル17の重量、さらには視覚ゴーグルセット10の重量が、考慮している用途に関して高すぎる尺度となる。
【0093】
例えば、ガラスの質量密度が2.5kg/lに等しく、(例えば、左目23’用であり各目に1つのセルを採用する)特別な寸法を有する通常の台形シャッターであり、総厚さe≒e+e=2.5mmである場合、シャッターに対して、ガラス(例えばBK7)製の第1の基板及び第2の基板によって形成されたセル17の17グラムの質量が得られる。右目23及び左目23’用に2つのシャッターを備えるゴーグルセットの場合、この値を2倍にしなければならず、シャッターのみで34グラムになることに気付かれよう。
【0094】
この値を超えると、セル17の質量、さらには視覚ゴーグルセット10の質量は、目標とする用途に関して高すぎる尺度となる。
【0095】
結論として、第1の構成C1のセルは第3の構成C3のセルより質量が小さいが、第1の構成C1を用いて、静電気力によって誘導される振動を第3の構成C3ほど多く吸収することはできない。
【0096】
次に、本発明の特定の実施形態による第2の構成C2について説明する。
【0097】
この第2の構成C2では、第1の基板14は、厚さe1が1.1mmに等しい最も厚い基板であり、第2の基板15は、厚さe2が0.5mmに等しい最も薄い基板である。従って、これは非対称構成である。この第2の構成C2において、(セル17に対して)測定された過剰ノイズは15.6dBa(電子的補正なし)である。
【0098】
従って、第3の構成C3で行われるノイズ測定を比較すると、厚さの異なる2つの基板(非対称構成)を使用することにより、液晶材料によって誘導される振動の一部を有利に吸収することができ、同時に、質量、厚さ及び堅牢性に関して最適化される構造の利益を得ることができる。小さい方の厚さe2のガラス基板を使用することにより、セル17の質量が低減し、同時に振動の低減が可能になる。実際には、音波又は振動の吸収は、基板が厚くなるほどいっそう効率的になる。その厚さにより、最も厚い基板である第1の基板が第1の基板及び第2の基板の振動のふれが制限され、従って、光シャッタリング装置によりその動作中に発生する音響ノイズのレベルが低下する。
【0099】
1つの好ましい実施形態では、最も薄い基板はゴーグルセットの外側に向かって配置され、最も厚い基板は目の横に、すなわち使用者の聴覚器に可能な限り近く配置される。
【0100】
例えば、ガラスの質量密度が2.5kg/lであり、(例えば、左目用であり各目に1つのセルを採用する)台形形状である通常のシャッターであり、総厚さe≒e+e=1.6mm(構成C2)の場合、ガラス(例えばBK7タイプ)製の第1の基板と、「薄い」タイプのガラス製の第2の基板によって形成されたセル17の11グラムの質量が得られる。2つのシャッター(右目及び左目)を有する一対のゴーグルの場合、この値を2倍しなければならない。こうした構成を、例えば、厚さe1が1.1mmに等しいガラス製の第1の基板14と、厚さe2が0.5mmに等しい、「薄い」タイプのガラス製の第2の基板15とにより得ることができる。
【0101】
従って、本発明の1つの特定の実施形態によれば、セル17の第1の基板14及び第2の基板15は、それぞれの厚さe1及びe2が異なり、かつ該厚さは、
−前記第1の基板及び前記第2の基板の累積された総厚さeは2.50mm以下であるようになっており、
−第1の基板及び第2の基板のうち最も厚い基板がガラス製であり、厚さが0.70mm以上であるようになっており、
−最も薄い基板はガラス製であり、厚さが1mm以下であるようになっている。
【0102】
実際には、厚さが0.70mm以上であるガラス基板を使用することにより、セルを十分に剛性にすることができ、従って、それによって第1の基板及び第2の基板の振動による屈曲が制限される。これには、音響ノイズをセル17のレベルまで低減すると同時に、セルの重量を制限するという有利な効果がある。
【0103】
本発明の別の実施形態によれば、最も薄い基板はプラスチック材料で作製され、厚さが0.50mm以下である。
【0104】
第2の基板を構成するプラスチック材料を使用することにより、装置の重量及び厚さが低減する。実際には、プラスチック製の可撓性基板は厚さが非常に小さく、相対密度(又は比重)がガラスより小さい。
【0105】
従って、この代替形態は、ガラス基板(部品の剛性を提供する)を、用途に適合された光学特性を有するプラスチック基板と組み合わせている。セル17の厚さeが課されたときに、ガラス基板をより薄いプラスチックに取り替えることにより、より厚いガラス基板を用いることによるノイズ源が理論的に低減する。プラスチック層はノイズが少ない(音響エネルギーの伝達が低い)だけでなく、プラスチック層の薄さによって、より厚いガラス層を有することが可能になり、この効果は、プラスチック層を剛性にし(かつ組立体を剛性にし)、従ってセル17の振動による屈曲を制限する。
【0106】
しかしながら、この実施形態により、特に、プラスチックフィルムの光学品質がガラスより低いので、光学セル17に対して可能な最低質量を探すことと、可能な最良の光学品質を得る必要性との間に一定の妥協を設ける必要がある。
【0107】
図4は、厚さeである第1の基板14が最も厚い基板であるとみなされる場合の、第1の基板14の厚さe及び第2の基板の厚さeの値(mm)の選択の範囲概略図を提供する。この例では、考慮される値の範囲は、陰付きとして示され、式e+e≦2.5mm及びe≧0.70mm及びe<eの直線の交点によって画定される多角形Pの表面に対応する。
【0108】
この例では、2つの基板のうちの最も厚いものが第1の基板であり、これは、条件e<eに対応する。しかしながら、本発明を、第2の基板が最も厚い基板である(e>e)場合にも適用することも可能である。この場合、厚さe及びeに対して考慮される値の範囲は、式e+e≦2.5mm及びe≧0.70mm及びe<eの直線の交点によって画定される多角形(図示せず)である。この多角形は、式e=eの直線に対して軸対称によって得られる、図4の多角形Pの対称多角形に対応する。
【0109】
図4において、音響ノイズの低減の感知は、以下でより十分に説明する3つの矢印F1、F2、F3によって表されている。
【0110】
従って、厚さe1及びe2の値が多角形P内に含まれる値に属する場合、音響ノイズ低減は、
−最も厚い基板の厚さe1が増大し(矢印F1)、
−値が式e1=e2の直線から、すなわち厚さの差の増大に従って逸れ(矢印F2)、
−値が式e1+e2=2.5mmの直線に近づく(矢印F3)
に従って増大する。
【0111】
表1に示すように、2dBaを上回るノイズ低減は、第1の構成C1から第2の構成C2(以下でより十分に説明する電子的補正なし)への移行で観察される。
【0112】
図5は、液晶18に基づくセル17の標準的な電子スイッチング回路30を概略的に示す。この回路は、DC電圧を供給する電源モジュール「Bat」を有している。液晶のスイッチングを得るために、このDC電圧は、その後、制御電圧22に変換され、この制御電圧22は、セル17の端子において交互に正及び負(+V、−V)となる。タイミングは、この場合、図3において説明したようにプロジェクタからもたらされる外部同期信号20によって得られるのはなく、電源モジュールとセル17との間に直列に配置されたスイッチング素子Sw(例えばトランジスタ)の開閉時間に応じて得られる。そして、得られる電圧は、交互に正(+V)及び負(−V)となる方形波電圧である。
【0113】
例えば、液晶18は、スイッチング素子Swが閉鎖される度に−Vボルトの制御電圧22により電力が供給され、スイッチング素子Swが開放される度に+Vボルトの制御電圧で電力が供給される。
【0114】
本発明で使用されかつ高速液晶ディスプレイの用途で非常に広まっている強誘電性型液晶の場合、スイッチング電圧の値は高く、概して10V/μmの範囲であり、波形は、高速スイッチング時間を得るように前縁及び後縁が可能な限り急峻な交流でなければならない。例えば、10V/μmという通常の閾値電圧は、Merck社によるFelix SCE19等、スメクチック材料の特徴である。これらの値は、ポリマーマトリックスがある場合には大幅に大きくなる。
【0115】
しかしながら、方形波制御電圧22によるセル17の液晶18の充電により、電源(通常50W、15Vの電圧に対して0.3Aを与える)の出力抵抗によってのみ制限される主衝撃電流が生成される。生成される音波は音響ノイズ源である。
【0116】
図6a〜図6dは、それぞれ、図5の電子スイッチング回路30によって供給される制御電圧22に応じてセル17の端子に現れる、電圧Vlc(図6a)及び電流Ilc(図6b)の進行を示す。図6cは光応答も示し、図6dはセル17の音響応答を示す。
【0117】
図6aに示すように、セル17の端子に現れる電圧Vlcは、制御電圧22bの前縁及び後縁によってタイミング調整される方形波の形態をとる。電圧Vlcの振幅は+Vlc−(−Vlc)=2×Vlcに等しい。
【0118】
液晶18の各スイッチングにおいて、衝撃電流Ilcが現れる(図6b)。この制御電圧に対する液晶17の光応答は、立上り時間及び立下り時間が短く略即時である(図6c)。
【0119】
その部分についての図6dは、液晶18の各スイッチング時の音響ノイズの生成を示す。
【0120】
図7に示す本発明の1つの特定の実施形態は、ガラス基板の振動によってもたらされるノイズを減衰させるように図5の標準的な電子スイッチング回路を適応させることを提案する。この減衰は、特に、セル17の液晶18の制御電圧22のパルス形状の制御によって達成される。そして、波形の最適化は、液晶18の応答のみでなく、可変静電気力の影響下でガラスが振動する状態も考慮しなければならない。
【0121】
従って、図5の電子スイッチング回路30の構成要素に加えて、制御電圧22のパルス形状を制御するために、本発明は、強誘電性液晶の場合に前縁の適合によってノイズを制限することができる電子スイッチング回路30を提案する。当然ながら、この技法を他の液晶に適用することも可能である。
【0122】
上述したように、方形波制御電圧22による液晶18のセル17の充電により、主衝撃電流が生成される。生成される音波は、音響ノイズ源を構成する。
【0123】
このノイズ源を低減するために、この特定の実施形態では、本発明は、例えばDC電流Idcを供給する電流源Sを配置し、この電流源Sがスイッチング素子Swと電源モジュール「Bat」との間に配置されることを提案する。図5のスイッチング回路30のこの単純かつ効率的な変更は、電流Idcがリミッターとして作用する電流源によってスイッチング(セルの充電及び放電)中に所定値に制限される場合、セルに発生する電圧が線形に(第一近似として)増大し、セルの光応答は同様の勾配を示すシグモイドであるということに基づく。セルによって吸収されるエネルギーは、その後、時間の経過によって広がり、図8a及び図8dを参照して例示するように、衝撃ノイズは大幅に低減する。
【0124】
図8a〜図8dは、それぞれ、図7の電子スイッチング回路30によって供給される制御電圧22に応答して、光学セル17の端子に現れる電圧Vlc(図8a)及び電流Ilc(図8b)の進行状況を示す。図8cはセルの光応答も示し、図8dはセル17の音響応答を示す。
【0125】
図8aに示すように、セル17の端子に現れる電圧Vlcは、時間の経過により広がる方形波の形態であり、制御電圧22の前縁及び後縁に対してタイミング調整される。電圧Vlcの振幅は+Vlc−(−Vlc)=2×Vlcに等しい。
【0126】
液晶18の各スイッチングにおいて、電流Ilcが現れる(図8b)。この電流は、リミッターとして作用する電流源Sの電流Idcの値によってさらに制限される。
【0127】
図8cは、液晶17の光応答を示し、液晶はこの場合、より低速である。実際には、スイッチング時間は、図6cの構成に比較してより低速である。従って、これは、衝撃電流によるノイズの制限と液晶のスイッチング速度との間でなされるべき妥協である。
【0128】
図8dは、液晶18の各スイッチング動作における音響ノイズの発生を示す。図6dと比較すると、主な低減は、セル17の液晶18のスイッチングによる音響ノイズにおいて観察される。
【0129】
例えば、印加電圧Vlcの値が+15ボルトと−15ボルトとの間で変化する場合で、かつ本発明による電流源によって供給される強度Idcが5mAで固定される(図8b)場合、電圧Vlcについて観察される立上り時間(図8a)及び光応答について観察される立上り時間(図8c)は、それぞれ500マイクロ秒及び300マイクロ秒に等しい。
【0130】
これらの立上り時間は、最大値(+15V)の10%から90%に移行するのに必要とされる立上り時間に対応する。
【0131】
表1はこれらの結果のすべてを示す。構成が等価である場合、ノイズの低減は、電流リミッターとして作用するこの電流源Sが存在する場合に顕著である。例えば、第2の構成C2では、過剰ノイズは、電子的補正なしの第2の構成から電子的補正ありの第2の構成に移行する際に6.2dBa低減する。
【0132】
これはまた、それぞれ5.1dBa及び7.6dBaのノイズが低減する第1の構成及び第3の構成にも当てはまる。
【0133】
液晶18のスイッチング時間を調整し、従って衝撃電流の振幅の値を低減するために、本発明の別の実施形態は、ポリマーによって安定化され、それにより、PSFLCとしてよりよく知られているポリマー安定化液晶ゲルを形成する強誘電性液晶FLCを液晶材料18として使用することを提案する。
【0134】
本発明の別の実施形態では、反強誘電性スメクチック液晶「AFLC」である液晶材料18と、PSAFLCとしてよりよく知られているポリマー安定化液晶ゲルをこのように形成するポリマーとを使用することを提案する。
【0135】
構造の安定性が高いこと及び欠陥が形成されないことを保証するポリマー鎖を使用することにより、これらの複合構造の電気光応答が変更され、スイッチング勾配値はポリマー濃度によって決まり、これにより、より段階的な立上り時間が得られる。
【0136】
ポリマー濃度の上昇には、分子の動きに対するポリマー鎖の抵抗によるスイッチング時間の低減が付随することに留意しなければならない。この機構には、分子の方向軸の回転運動に対する電気衝撃の影響を制限することにより、音響ノイズも低減するという効果がある。
【0137】
好ましくは、ポリマーの密度による濃度は、10%〜15%の範囲である。PLDCポリマーのようなPSFLC又はPSAFLCポリマーは、液晶及びポリマーの結合によって構成されるが、それらは、ポリマーが液滴の形態でその中に封入されていないという点でそれらとは異なることを想起することができる。PSFLC(又はPSAFLC)の場合、液晶及びポリマーは、液晶が封入されていない複合ゲルを形成する。
【0138】
PSFLC(又はPSALFC)構造は、混合物のポリマー含有量に応じて特徴が異なる。濃度が高い(ポリマーが10質量%を超える)場合、液晶の特徴に主に作用するのはポリマーネットワークの構造である。
【0139】
本発明の別の実施形態によれば、セル17は、音響エネルギー及び/又は機械エネルギーを吸収する粘弾性材料の少なくとも1つの層をさらに含む。例えばポリカーボネート、アクリル又はPMMA(ポリメタクリル酸メチル)タイプの材料で作製されたこの層は、特に、音響エネルギー又はこの音響エネルギーの一定の周波数を吸収する箔の形態をとることができる。粘弾性材料を、プラスチック箔又はガラス板によって閉じ込められた粘性液体とすることも可能である。この材料は、透明であり、非毒性であり、非揮発性であり、高粘性(好ましくは4.5Pa.sを上回る)でなければならない。例えば、1対3のPEG−4000及びPEG400の混合物からなる。
【0140】
上述したような視覚ゴーグルセット10用の画面11を作成するために用いられる液晶ベースセルの場合、この層は、用途に適合した指数及び等方性を有していなければならず、すなわち、寄生反射及び残留異方性を制限するために、吸収材料の層は、可視領域において透明であり、他の材料の層、すなわち、セル17の第1の基板及び第2の基板の材料に近い指数を有する。
【0141】
従ってこのように吸収材料の層を用いることにより、スイッチング電圧下で液晶のスイッチングによってもたらされる振動がより低減される。
【0142】
当然ながら、液晶18のスイッチング中に第1の基板及び第2の基板の振動によって発生する音響ノイズを低減するために、上述した2つの結合された解決法のうちの一方のみ、すなわち、
−第2の構成C2に関して上述したように、第1の基板及び第2の基板の非対称構成によるセル17の実施態様、又は
−液晶のスイッチング回路が、リミッターとして作用する追加の電流源を用いる電子的補正を含む、標準的なセル、すなわち対称構成のセルの実施態様のいずれか
を含む光シャッタリング装置を実施することができる。
【0143】
しかしながら、非対称構成とリミッターとして作用する追加の電流源を用いる電子的補正との結合された効果が、2つの個々の要素の並べて置かれる効果を超えることを留意することが重要である。これにより、それらの組合せが真に進歩性のある特徴を有することが証明される。
【0144】
本発明は、当然ながら、非限定的な例として上述した好ましい実施形態には限定されない。本発明は、例えば、本発明による光シャッタリング装置を備えた任意の光学表示装置に関する。本発明は、また、以下の特許請求の範囲の枠組み内の当業者の知識の範囲内にある代替実施形態のすべてに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合って自由空間(16)を形成するように配置された第1の透明基板(14)と第2の透明基板(15)とによって形成された光学セル(17)と、
前記自由空間に配置された液晶材料(18)と、
前記セルをスイッチングする電子回路(30)であって、
制御電圧(22)を提供する電源モジュール(Bat)と、
前記電源モジュールと前記セルとの間に直列に取り付けられ、前記セルが通過状態と遮断状態との間でスイッチングされるのを可能にするスイッチング素子(SW)と、
を備えた電子回路(30)と、
を具備する光シャッタリグン装置であって、
前記電子スイッチング回路(30)は、前記電源モジュール(Bat)と前記スイッチング素子(Sw)との間に直列に取り付けられた電流源(S)をさらに備えることを特徴とする、光シャッタリング装置。
【請求項2】
前記第1の基板(14)及び前記第2の基板(15)は、それぞれ、厚さ(e1)及び(e2)を備え、該厚さe1及びe2が異なり、かつ該厚さは、
前記第1の基板及び前記第2の基板の累積した総厚さ(e)が2.50mm以下であるようになっており、
前記第1の基板及び前記第2の基板のうちの最も厚い基板がガラス製であり、厚さが0.70mmを上回るようになっている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
最も薄い基板はガラス製であり、厚さが1mm以下であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
最も薄い基板はプラスチック製であり、厚さが0.5mm以下であることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記液晶材料(18)は、少なくとも一つの液晶と一つのポリマーとを結合したものを含み、それにより、前記ポリマーによって安定化する液晶ゲルを形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記液晶材料(18)は、少なくとも一種の強誘電性スメクチック液晶FLC又は反強誘電性スメクチック液晶AFLCとポリマーとを結合したものを含み、それにより、それぞれPSFLC又はPSAFLCという名前でよりよく知られている、前記ポリマーによって安定化する液晶ゲルを形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも一つの液晶と一つのポリマーとを前記結合したものは、前記ポリマーの質量密度での濃度が10%〜15%の範囲であるようなものであることを特徴とする、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
粘弾性材料の少なくとも1つの透明層をさらに具備することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の光シャッタリング装置を具備する視覚ゴーグルセット。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の光シャッタリング装置を具備する光学表示装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−515361(P2012−515361A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545643(P2011−545643)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065257
【国際公開番号】WO2010/081573
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(510225247)
【Fターム(参考)】