説明

液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルム

【課題】薄型でも剛性(自己支持性)が飛躍的に向上する液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムを提供する。また、優れた面発光性を有し、高輝度で発光面の輝度ムラの少ない優れた反射光拡散フィルムを提供する。
【解決手段】液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルム3は、A層およびB層を交互にそれぞれ2層以上積層して形成されるポリエステルフィルムであって、B層は、ポリエステルに非相溶な樹脂を実質的に含有しないポリエステル層であり、A層は、ポリエステルおよびポリエステルに非相溶な樹脂とを含有し、かつ気泡を有する層であり、該フィルムの最外層にはB層が設けられ、さらにA層の平均厚みに対するB層の平均厚み比が、B/A=2/1以上20/1未満であることを満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた面発光性を有し、高輝度で発光面の輝度ムラの少ない優れた反射光拡散用の白色ポリエステルフィルムに関する。更に詳しくは、液晶ディスプレイのバックライトに好適に用いられる液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、テレビ、携帯電話などの表示装置として、液晶を用いたディスプレイが数多く用いられている。これらの液晶ディスプレイはそれ自体は発光体でないために、裏側からバックライトを使用して光を反射させることにより表示する構造を採用しているものである。また、単に光を反射するだけでなく、バックライトは画面全体を均一に照射させなければならないという要求に応えるため、サイドライト型もしくは直下型と呼ばれる面光源の構造をとっている。なかでも高輝度化が望まれるTVモニタ等に使用される液晶ディスプレイ用途には、光量が多く光損失の少ない直下型、つまり画面に対し背面から多数の陰極線菅(光源)によって照射する高輝度タイプが適用されている。
【0003】
しかし、この直下型バックライトでは、画面に対し背面から直接発光させるため、画面上で光源の直上に当たる位置と、そうでない位置で大きな輝度差が生じやすく、輝度ムラとして認識される。このため、(1)光反射板をランプ配置にあわせて変形させて、光の出射方向を制御したもの(特許文献1,2参照)、(2)光拡散板に直接遮光パターンを施したものや、透明フィルムに遮光パターンを印刷したものを光拡散板に重ねることによって、光源の上部から透過する光を部分的に遮り、面全体の輝度を均一化させたもの(特許文献3参照)、(3)光拡散板をプリズム形成したもの(特許文献4)、および(4)内部光拡散性フィルムが積層されてなるシート(特許文献5)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−318614公報
【特許文献2】特開2002−82624公報
【特許文献3】特開平11−212090号公報
【特許文献4】特開平5−333333号公報
【特許文献5】特開2004−271567号公報 上記の(2)や(3)の直下型バックライトでは、光拡散板として光散乱物質を混入した場合厚さ数mmの樹脂(アクリルやポリカーボネートなど)が用いられている。しかし、最近では直下型バックライト市場においても薄型化や軽量化が求められているため、樹脂形成の光拡散板では、薄型化、軽量化には限界がある。また、光源から発する熱量の多い直下型バックライトでは、熱による光拡散板のたわみや変形が起こりやすく、その結果遮光パターンの位置がずれて輝度が低下したり、さらには樹脂形成加工や遮光パターンの形成が難しいこと、さらに高コストであることなどの問題があった。さらには、薄型化のため光源と光拡散板との距離を狭めると、輝度ムラがより強調されるという問題があった。
【0005】
また、上記(4)の特許文献5では、輝度ムラを改善するための光拡散性シートが開示されている。このシートは内部光拡散性フィルムが積層されて構成されているシートであり、拡散性が向上し、輝度ムラは改善されるものの、全光線反射率が低く、輝度向上が不十分であった。また、この内部拡散性フィルムは接着剤を介してポリエステルフィルムと積層されているため、膜厚をより薄くするのが困難であった。このことは、とくに直下型バックライトに適合させるのに必要な薄型化に問題を有していた。同時に製造コストが高くなることも問題であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑み、薄型でも剛性(自己支持性)が飛躍的に向上するフィルムを提供することを目的とするものである。
【0007】
また、高輝度で薄型、かつ軽量であり、加工性が良く、寸法安定性と強度に優れている上に、優れた面発光性を有し、発光面の輝度ムラの少ない優れた反射光拡散フィルムを提供せんとするものであり、特に、直下型バックライト方式の液晶ディスプレイの反射光拡散フィルム等に有用な優れた面発光性を有し、高輝度で発光面の輝度ムラが少なく高輝度な反射光拡散フィルム、特に大型液晶テレビの直下型バックライト方式の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムは、A層およびB層を交互にそれぞれ2層以上積層して形成されるポリエステルフィルムであって、B層は、ポリエステルに非相溶な樹脂を実質的に含有しないポリエステル層であり、A層は、ポリエステルおよびポリエステルに非相溶な樹脂とを含有し、かつ気泡を有する層であり、該フィルムの最外層にはB層が設けられ、さらにA層の平均厚みに対するB層の平均厚み比が、B/A=2/1以上20/1未満であることを満たすことを特徴とするものである。
【0009】
かかる液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの好ましい態様は、
[1]該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの全光線透過率T(%)が20%以上60%未満、全光線反射率R(%)が50%以上90%未満、全光線透過率T(%)と全光線反射率R(%)の合計が80%以上であること、
[2]該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの総厚みが、100μmから500μmの範囲にあること、
[3]該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムが、32インチ以下の液晶ディスプレイで好適に用いられること、
[4]該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムが、液晶画面に映される蛍光灯の明るさのムラを表す輝度の均一性の値が、5%未満であること、である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムは、薄型でも剛性(自己支持性)が飛躍的に向上するものである。
【0011】
また、優れた面発光性を有し、高輝度で発光面の輝度ムラが少なく高輝度な反射光拡散フィルムとして、特に大型液晶テレビの直下型バックライト方式の液晶ディスプレイ用として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】光拡散反射フィルムを組み込んだ液晶画面の概略断面図及び輝度測定法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムは、A層およびB層を交互にそれぞれ2層以上積層して形成されるポリエステルフィルムであって、B層は、ポリエステルに非相溶な樹脂を実質的に含有しないポリエステル層であり、A層は、ポリエステルおよびポリエステルに非相溶な樹脂とを含有し、かつ気泡を有する層で構成されている積層フィルムで構成されているもので、通常、白色ポリエステルフィルムといわれるものである。
【0014】
A層はポリエステルおよび、ポリエステルに非相溶な樹脂とを含有し、かつ気泡を有する層であり、該フィルムの最外層にはB層で構成されることが、高反射率、製膜性、光学特性および光安定性の点で好ましい。
【0015】
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、ジオールとジカルボン酸とから縮重合によって得られるポリマーであり、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などで代表されるものである。またジオールとは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキセングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどで代表されるものである。具体的には例えば、ポリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどがあげられる。本発明の場合、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。また、これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、共重合またはブレンドであってもよい。
【0016】
B層は、ポリエステルに非相溶な樹脂を実質的に含有しない。非相溶な樹脂を実質的に含有しないとは、空隙率が10%未満である層状態をいう。もし、非相溶な樹脂を含有していれば、延伸(たとえば二軸延伸)することにより、この非相溶な樹脂周りに微細な気泡が形成される。従って、A層とB層の厚みは、断面を電子顕微鏡観察したときに表面から実質的に気泡が含有されていない深さまでの厚みとして求まる。
【0017】
ポリエステルと非相溶な樹脂(以下、非相溶ポリマーと略すことがある)としては、例えば、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−ポリ−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリフルオロスチレン、ポリ−2−メチル−4−フルオロスチレン、ポリビニル−t−ブチルエーテル、セルロールトリアセテート、セルロールトリプロピオネート、ポリビニルフルオライド、非晶ポリオレフィン、環状オレフィン共重合樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレンなどから選ばれた融点180℃以上のポリマーであるのが好ましく、中でもポリエステル母材に対して、ポリオレフィン、特にポリメチルペンテン、環状オレフィン共重合樹脂が好ましく使用される。
【0018】
なお、かかるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリビニル−t−ブタン、1,4−トランス−2,3−ジメチルブタジエン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、酢酸ビニルポリマー、およびそれらの各種共重合体などを用いることができる。
【0019】
かかる環状オレフィン共重合樹脂としては、エチレンと、ビシクロアルケン及びトリシクロアルケンからなる群から選ばれた少なくとも1種の環状オレフィンとからなる共重合体を採用することができる。
【0020】
また、本発明において用いられるポリエステルや非相溶ポリマーには、公知の各種添加剤、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、離型剤、相溶化剤、あるいは蛍光増白剤などを本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0021】
また、微細な気泡を有する層(A層)中に用いられる非相溶ポリマーの添加量としては、A層に対して、1〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは2〜30重量%である。添加量が1重量%未満であると、非相溶な樹脂が微分散せず、生成するボイド(気泡)が大きくなり高反射率の反射光拡散フィルムを得ることが困難となる場合がある。また、逆に添加量が40重量%を超えると、本発明の反射光拡散フィルムの特性が劣ったものになるばかりか、熱寸法安定性にも劣り製膜時破れが多発するなどの問題が生じる方向となる。
【0022】
微細な気泡の形成は、フィルムの母材、たとえばポリエステル中に、ポリエステルと非相溶ポリマーを細かく分散させ、それを延伸(たとえば二軸延伸)することにより達成される。延伸に際して、この非相溶ポリマー粒子周りに微細な気泡が形成され、これが光りに散乱作用を発揮するため、白色化され、高反射率を得ることが可能となる。
【0023】
本発明にかかる反射光拡散フィルムの表層(B層)は、無機粒子を含有するポリエステルを主成分とすることが好ましい。具体的な無機粒子としては、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルミナ、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリンフッ化リチウム、フッ化カルシウム等がある。これらの無機粒子は単独でも2種類以上併用してもよい。
【0024】
また、無機系微粒子は多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、さらには本発明の効果を阻害しない範囲内において、ポリエステルに対する分散性を向上させるため、さらに表面処理が施されていてもよい。また、本発明では、少なくとも反射光拡散フィルムの表層(B層)には、上記のような無機系微粒子を0.01〜30重量%含んでいることが好ましい。また、その平均粒径としては約0.1〜10μmであることが好ましい。このように反射光拡散フィルムの少なくとも表層(B層)に無機粒子を含有するポリエステルを主成分とすることによって、反射率や隠蔽性が向上するほか、フィルムが滑りやすくなることから取り扱い性も向上する利点がある。
【0025】
なお、本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムを構成するフィルムは、A層およびB層を交互にそれぞれ2層以上積層して形成されるフィルムであることを特徴とする。A層およびB層の積層がそれぞれ2層未満であると、気泡を有する層を含有させた場合にフィルムの特性上、強度や剛性等が低下しやすく、結果として実用面でのフィルムの腰が弱くなり取り扱い性にかけるという問題が生じる。A層およびB層を交互に2層以上それぞれ積層することで、外力に座屈しても、座屈の伝播が抑制されるため、表層に折皺が発生しにくくなり、取り扱い性が大幅に向上させることが可能となる。またさらに、A層およびB層の界面では、気泡が微細化しやすくなるため、効率よく反射できるようになり、輝度ムラを効果的に抑制できることとなる。なお、層数の上限は特に設けられるものではないが、A層およびB層の積層がそれぞれ50層未満であることが好ましい。50層以上であると、A層の非相溶な樹脂を含有する層が薄く、非相溶な樹脂が微分散せず、生成するボイド(気泡)が大きくなり高反射率の反射光拡散フィルムを得ることが困難となる場合があるためである。
【0026】
また、必要に応じて反射光拡散フィルムの最外層に紫外線吸収層、易粘着層、平滑層、ハードコート層、高反射率層、あるいは低反射率層などが設けられていてもよい。
【0027】
本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムのA層の平均厚みに対するB層の平均厚み比は、B/A=2/1以上20/1未満であることが必要である。B/A=2/1未満であると、高反射率の反射光拡散フィルムを得ることになり、輝度が低下する。また、気泡を含有する積層比が増えると、フィルムの特性上、強度や剛性等が低下する。逆にB/A=20/1以上であると、強度や剛性等は向上するが、低反射率であるため、輝度ムラがより強調されるという問題がある。
【0028】
本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの全光線透過率T(%)が20%以上60%未満、全光線反射率R(%)が50%以上90%未満、全光線透過率T(%)と全光線反射率R(%)の合計が80%以上であることを満たしていることが好ましい。
【0029】
ここで、該反射光拡散フィルムの全光線透過率Tは、より好ましくは22〜57%、さらに好ましくは25〜55%である。全光線透過率Tが下限値未満であれば該反射光拡散フィルムをバックライトに組み込んだ際、輝度が不十分であり、上限値を越えると光拡散性が不十分となり、輝度ムラが生じる。また、該反射光拡散フィルムの全光線反射率Rは、より好ましくは60〜85%、さらに好ましくは65〜80%である。下限値未満では必要以上に透過光が増加するため輝度ムラが生じ、上限値を越えると、光透過性が不十分となり輝度が低下する。さらに、全光線透過率Tと全光線反射率Rの合計は好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であるのが好ましい。全光線透過率Tと全光線反射率Rの合計が下限値以下の場合、フィルム内での光損失が大きく、輝度低下の原因となるので好ましくない。
【0030】
本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの総厚みは、100μmから500μmの範囲にあることが好ましい。100μm未満であると、液晶ディスプレイ内でフィルムの自己支持性に欠ける。また、500μmを超えると、薄型化、軽量性が失われる。
【0031】
また、本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムは32インチ以下の液晶ディスプレイで好適に用いられる。より好ましくは20インチ以下である。32インチを超えると、フィルムの自己支持性に欠けるという問題がある。
【0032】
本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムが、液晶画面に映される蛍光灯の明るさのムラを表す輝度の均一性の値が、5%未満であることが好ましい。輝度の均一性の値が5%以上であると、輝度ムラが発生し、画面の輝度の均一性が失われる。
【0033】
輝度の均一性の値を5%未満とするためには、反射光拡散フィルムの全光線透過率Tは、全光線透過率T(%)が20%以上60%未満が好ましい。より好ましくは22〜57%、さらに好ましくは25〜55%である。全光線透過率Tが上限値を越えると光拡散性が不十分となり、輝度の均一性の値が5%以上となり輝度ムラが生じる。
【0034】
次に、本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの製造方法について説明するが、かかる例に限定されるものではない。
【0035】
すなわち、例えばポリエステルのチップ、および前記ポリエステルとは非相溶な熱可塑性樹脂チップ、無機系粒子を各々含む各マスターチップを準備し、主原料としてポリエステルが99〜65重量%および非相溶樹脂が1〜35重量%となるように混合し、また副原料としてポリエステルが99〜70重量%および無機系微粒子が1〜30重量%となるように混合して、それぞれ十分に真空乾燥する。また、この際必要に応じて耐光剤、相溶化剤等を各原料に投入しても構わない。
【0036】
以上の各混合原料チップをそれぞれ別の200〜300℃の温度に加熱された押出機に供給し、多層複合積層しダイより吐出せしめシート状に形成された溶融シートを得る。本発明の微細な気泡を有する層とそれらを隔てる層をそれぞれ2層以上有し、かつそれらが交互に厚み方向に積層されている微細気泡含有フィルムを得るには、主原料および副原料をフィードブロックや、パイプミキサー・スクエアーミキサーなどの配分ミキサーや、マルチマニホールドダイ等を用いて多層複合積層することが好ましい。また、これらは組み合わせて用いてもよい。いずれの多層複合積層技術を用いるかについては、必要とする層数にあわせて選択し、総数が100層以下の場合にはフィードブロックやマルチマニホールドダイが好ましい。また、層数が30層以上の場合には、分配ミキサーを用いることも好ましく、フィードブロックと組み合わせて使用するとさらに好ましい。
【0037】
このようにして得られた多層溶融複合シートをドラム表面温度10〜100℃に冷却されたドラム上で静電気力にて密着冷却固化し、該未延伸フィルムを50〜150℃に加熱したロール群に導き、長手方向に2.0〜5.0倍縦延伸し、20〜50℃のロール群で冷却する。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き50〜150℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に横延伸する。延伸倍率は、縦、横それぞれ2.0〜5.0倍に延伸するが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は6〜25倍であることが好ましい。面積倍率が6倍未満であると得られるフィルムの反射特性が不十分となり、逆に25倍を越えると延伸時に破れを生じやすくなり製膜性が不良となる傾向がある。こうして二軸延伸されたフィルムの平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で150〜230℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り本発明フィルムを得る。
【0038】
本発明の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムは、薄型でも剛性(自己支持性)が飛躍的に向上し、高輝度で薄型、かつ軽量であり、加工性が良く、寸法安定性と強度に優れているので、特に液晶ディスプレイ用の直下型バックライトに好適に用いられる。
【実施例】
【0039】
〔物性の測定ならびに効果の評価方法〕
本発明の物性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0040】
(1)フィルム厚み
光反射用フィルムの厚みは、定圧厚み測定器として、マイクロメーターM−30(SONY(株)製)を使用し、JIS C2151-2006に準じて測定した。
【0041】
(2)相対反射率
日立製分光光度計U−3310を用い、標準白色板用開口部と試験片開口部の相当ともに標準白色板として酸化アルミナを用いて560nmで試験片開口部の傾斜角度を10°付けて拡散反射率を測定し(T0)とし、そのときの反射率を100%とした。その後、試験片開口部を試験片に取り替え560nmで拡散反射率を測定した。その後、下記式により、相対反射率(R)に換算した。
【0042】
R(%)=T1/T×100
:標準白色板の反射率
:試験片の反射率。
【0043】
(3)透過率
JIS K−7105(1981/03/01制定)に従い、ヘーズメーター(HGM−2、スガ試験機株式会社製)を使用して測定した。
【0044】
(4)画面の明るさ(直下型方式輝度)(表1)
図1に示したように181BLM07(NEC(株)製)のバックライト内に貼り合わせてある拡散板を所定のフィルムサンプルに変更し、点灯させた。
【0045】
その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、液晶画面部をCCDカメラ(SONY製DXC−390)にて撮影し画像解析装置アイシステム製アイスケールで画像を取り込んだ。その後、撮影した画像の輝度レベルを3万ステップに制御し自動検出させ、輝度に変換した。輝度評価は、評価に用いたバックライトに付属していた拡散板を装着して同様の評価を行った場合を100%として、増減率で示した。
また、下記式に従って輝度均一性を評価した。目視でムラとして認識できないもの(○以上)を合格とした。
ばらつきの大きさ(%)=(最大値―最小値)/平均値×100
◎:ばらつきが2.5%未満
○:ばらつきが2.5%以上5%未満
△:ばらつきが5%以上10%未満
×:ばらつきが10%以上。
【0046】
(5)自己支持性
図1に示したように32インチおよび20インチのバックライトに張り合わせてある反射フィルムを所定のフィルムサンプルに変更し、点灯させた。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、フィルムの自重によるたわみ幅について測定した。
○:たわみ幅が3mm未満
△:たわみ幅が3mm以上6mm未満
×:たわみ幅が6mm以上
△および○が合格レベルである。
【0047】
(6)A層およびB層の層厚みの測定方法
フィルムを5mm×1cmにサンプリングし、凍結させミクロトームを用いてフィルム断面方向にカットした。透過型電子顕微鏡HU−12型((株)日立製作所製)を用い、カットしたサンプルのA層およびB層の断面を観察し2000倍に拡大した断面写真から積層厚みを換算し求めた。
【0048】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0049】
[実施例1]
A層の原料として、分子量4000のポリエチレングリコールを使用し、重合後のポリエチレンテレフタレートの色調(JIS−K7105)がL値62.8、b値0.5、ヘイズ0.2%であるポリエチレンテレフタレートを使用し、ポリエチレンテレフタレートを72重量部、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの(PBT/PTMG)共重合物を3重量部(商品名:東レデュポン社製ハイトレル(登録商標))、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸をジカルボン酸成分に対して10mol%と分子量1000のポリエチレングリコールをグリコール成分に対して5mol%をポリエチレンテレフタレートに共重合したもの(PET/I/PEG)を10重量部、ポリ−4−メチルペンテン−1を15重量部、を調整混合し、180℃で3時間乾燥させた後、270〜300℃に加熱された押出機Aに供給した(A層)。
【0050】
一方、B層の原料として、ポリエチレンテレフタレートのチップ90重量部、数平均粒径3.5μmのシリカ粒子マスター10重量部(マスターチップ総量に対してシリカ2重量%含有)を調整混合し、180℃で3時間真空乾燥した後、270〜300℃に加熱された押出機Bに供給した(B層)。
【0051】
反射光拡散用フィルム層におけるA層の平均厚みに対するB層の平均厚み比B/Aが10/1となるように、A層およびB層の原料を交互に計33層積層するフィードブロックにて多層複合積層し、Tダイよりシート状に押出して溶融シートとした。なお、この際、両表層がB層となるように積層せしめた。該溶融シートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.4倍縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後テンター内で200℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取り厚み120μmのフィルムを得た。
【0052】
得られたフィルムの全光線透過率は41%、全光線反射率は73%であり、輝度均一性は合格レベルであった。反射光拡散フィルムとしての物性を表1に示す。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同様の手法で厚み150μmのフィルムを得た。
【0054】
得られたフィルムの全光線透過率は39%、全光線反射率は74%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、最も良好なものであった。
【0055】
[実施例3]
実施例1と同様の手法で厚み300μmのフィルムを得た。
【0056】
得られたフィルムの全光線透過率は36%、全光線反射率は76%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、良好なものであった。
【0057】
[実施例4]
実施例1のB/Aを18/1とした以外は実施例1と同様の手法で厚み300μmのフィルムを得た。
【0058】
得られたフィルムの全光線透過率は38%、全光線反射率は74%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、良好なものであった。
【0059】
[実施例5]
実施例1のB/Aを2/1とした以外は実施例1と同様の手法で厚み150μmのフィルムを得た。
【0060】
得られたフィルムの全光線透過率は36%、全光線反射率は77%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、良好なものであった。
【0061】
[実施例6]
A層の厚みを各7.7μm、B層の厚みを各34.7μmとして、B/A/B/A/Bの5層の構成(B/A=4.5/1)とする以外は、実施例1と同様の手法で厚み120μmのフィルムを得た。
【0062】
得られたフィルムの全光線透過率は39%、全光線反射率は75%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、良好なものであった。
【0063】
[実施例7]
実施例1のA層の原料として、ポリエチレンテレフタレートを47.5重量部、シクロヘキサジメタノール共重合物(イーストマンケミカル社製PET−G6763)を18重量部、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(東レデュポン(株)製 ハイトレル(登録商標))を10.5重量部、ガラス転移温度(Tg)が190℃のエチレンとノルボルネンのシクロオレフィン共重合体(ポリプラスチック社製 TOPAS(登録商標)6018)を23.5重量部とした以外は実施例1と同様の手法で厚み150μmのフィルムを得た。
【0064】
得られたフィルムの全光線透過率は38%、全光線反射率は75%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、良好なものであった。
【0065】
[比較例1]
A層の原料として、分子量4000のポリエチレングリコールを使用し、重合後のポリエチレンテレフタレートの色調(JIS−K7105)がL値62.8、b値0.5、ヘイズ0.2%であるポリエチレンテレフタレートを使用し、ポリエチレンテレフタレート98wt%と、グリコール成分に対し1,4−シクロヘキサンジメタノールが33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(33mol%CHDM共重合PET)2wt%入った原料82重両部に対して、ポリエチレンテレフタレートが18重両部を調整混合し、180℃で3時間乾燥させた後、270〜300℃に加熱された押出機Aに供給(A層)した。
【0066】
一方、B層の原料として、ポリエチレンテレフタレートのチップ90重量部、数平均粒径3.5μmのシリカ粒子マスター10重量部(マスターチップ総量に対してシリカ2重量%含有)を調整混合し、180℃で3時間真空乾燥した後、270〜300℃に加熱された押出機Bに供し、反射光拡散用フィルム層厚み比でB/A=10/1となるように、各々の原料を交互に計33層積層するフィードブロックにて多層複合積層し、Tダイよりシート状に押出して溶融シートとした。なお、この際、両表層がB層となるように積層せしめた。その後は、実施例1と同様の手法で厚み100μmのフィルムを得た。
【0067】
得られたフィルムの全光線透過率は92%、全光線反射率は12%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、全光線透過率が高いため、液晶画面上に写し出される蛍光灯の陰が見えた。
【0068】
[比較例2]
実施例1と同じ組成のA層およびB層を用いた。B/Aを1/1とした以外は、実施例1と同様の手法で厚み300mのフィルムを得た。
【0069】
得られたフィルムの全光線透過率は33%、全光線反射率は80%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、全光線反射率が高いため、輝度が低下した。
【0070】
[比較例3]
A層の原料として、分子量4000のポリエチレングリコールを使用し、重合後のポリエチレンテレフタレートの色調(JIS−K7105)がL値62.8、b値0.5、ヘイズ0.2%であるポリエチレンテレフタレートを使用し、ポリエチレンテレフタレート90重量部、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの(PBT/PTMG)共重合物を1重量部(商品名:東レデュポン社製ハイトレル(登録商標))、ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸をジカルボン酸成分に対して10mol%と分子量1000のポリエチレングリコールをグリコール成分に対して5mol%をポリエチレンテレフタレートに共重合したもの(PET/I/PEG)を4重量部、ポリ−4−メチルペンテン−1を5重量部を調整混合し、180℃で3時間乾燥させた後、270〜300℃に加熱された押出機Aに供給(A層)した。
【0071】
一方、B層の原料としてポリエチレンテレフタレートのチップ34重量部に、数平均粒径0.25μmの二酸化チタン50重量%マスターチップ(マスターチップ総量に対して二酸化チタン50重量%含有)を36重量部と、数平均粒径3.5μmのシリカ粒子マスター10重量部、(マスターチップ総量に対してシリカ2重量%含有)ポリエチレンテレフタレートにイソフタル酸をジカルボン酸成分に対して18mol%共重合したもの(PET/I)を調整混合し、180℃で3時間真空乾燥した後、270〜300℃に加熱された押出機Bに供し、反射光拡散用フィルム層厚み比でB/A=10/1となるように、各々の原料を交互に計3層積層するフィードブロックにて多層複合積層し、Tダイよりシート状に押出して溶融シートとした。なお、この際、両表層がB層となるように積層せしめた。その後は、実施例1と同様の手法で厚み50μmのフィルムを得た。
【0072】
得られたフィルムの全光線透過率は18%、全光線反射率は90%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、全光線反射率が高いため、輝度が低下した。フィルムの厚みが薄く、気泡を有する層の割合が高くなったため自己支持性に欠ける結果となった。
【0073】
[比較例4]
実施例1と同じ組成のA層およびB層を用いた。A層の厚みを20μm、B層の厚みを各40μmとして、B/A/Bの3層の構成(B/A=2/1)とする以外は、実施例1と同様の手法で厚み100μmのフィルムを得た。
【0074】
得られたフィルムの全光線透過率は37%、全光線反射率は75%であった。反射光拡散フィルムとしての物性は表1の通りであり、良好ではあったが、気泡を有する層の割合が高くなったため、自己支持性に欠ける結果となった。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の反射光拡散フィルムは液晶ディスプレイのバックライトに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0077】
1.反射フィルム
2.蛍光管
3.反射光拡散フィルム
4.CCDカメラ
5.画像解析装置(アイスケール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層およびB層を交互にそれぞれ2層以上積層して形成されるポリエステルフィルムであって、
B層は、ポリエステルに非相溶な樹脂を実質的に含有しないポリエステル層であり、
A層は、ポリエステルおよびポリエステルに非相溶な樹脂とを含有し、かつ気泡を有する層であり、
該フィルムの最外層にはB層が設けられ、
さらにA層の平均厚みに対するB層の平均厚み比が、B/A=2/1以上20/1未満であることを満たすことを特徴とする液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルム。
【請求項2】
該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの全光線透過率T(%)が20%以上60%未満、全光線反射率R(%)が50%以上90%未満、全光線透過率T(%)と全光線反射率R(%)の合計が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルム。
【請求項3】
該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムの総厚みが、100μmから500μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルム。
【請求項4】
該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムが、32インチ以下の液晶ディスプレイで好適に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルム。
【請求項5】
該液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルムが、液晶画面に映される蛍光灯の明るさのムラを表す輝度の均一性の値が、5%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ディスプレイ用反射光拡散フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−231143(P2010−231143A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81408(P2009−81408)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】