説明

液晶レンズ及びその製造方法

【課題】 平坦な基板を用いることで透明電極の形状・寸法を精度良く形成できて、焦点距離が広く取れる液晶レンズを提供する。
【解決手段】 可撓性を有する上透明基板12に円形電極13a、環状電極13b1、13b2、13b3等の複数の透明電極と上配向膜14とを設けた上基板11に、レンズ領域の中心部Cにシール材7の厚みよりも1〜20μm大きい粒径の第1のスペーサ16をUV硬化型樹脂17を介して接着固定し、剛性を有する下透明基板2に下透明電極3と下配向膜4とを設けた下基板1とをシール材7を介して接合し、上基板11と下基板1との間隙に液晶5を封止して液晶レンズ20を形成する。上基板11が凸型に反った液晶レンズが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置やカメラ、携帯電話などに用いられる液晶レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶を用いた液晶レンズは今までに色々な技術開発が成されてきている。その中で、液晶レンズの構造の一つとして下記の特許文献1に開示された構造の技術を見ることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−272646号公報
【0004】
上記特許文献1に示された液晶レンズの構造を図7、図8を用いて説明する。ここで、図7は上記特許文献1に示されてところの液晶レンズの平面図で、図8は図7における液晶レンズのII−II断面図を示している。図7、図8より、液晶レンズ100はセル110に誘電率異方性が正のネマティック液晶150を封入したものから成っている。即ち、セル110は透明で凹面を有する凹面基板130と透明な平板基板120とをシール材140を介して貼合わせたものからなり、その内部の凸形状の空間に液晶150を封止した構造を取っている。
【0005】
ここでの凹面基板130は、凹面を有してガラスなどからなる板材132と、その凹面を含む表面に設けたアンダーコート(図示していない)と、その上に設けた2つの透明電極134a、134bと、これを覆う平行配向層136とから構成されている。
【0006】
また、平板基板120は、ガラスなどからなる平板状の板材122と、その上に形成したアンダーコート(図示していない)と、その上に形成した2つの透明電極124a、124bと、それを覆う平行配向層126とから構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、凹面基板130の2つの透明電極134a、134b、及び、平板基板120の2つの透明電極124a、124bは、酸化インジウム錫膜で形成し、異なる大きさの矩形形状をなして僅かな間隔をおいて平行に並んで配設した形状を取っている。
【0008】
一般に、酸化インジウム錫膜のITO膜からなる透明電極の形成方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などの方法によってITO膜をガラス面上に所要の厚みでもって一面に形成し、その後に、レジスト膜をITO膜上に形成して露光・現像により不要とするレジスト膜の部分を除去して所要の形状にレジスト膜を成形する。そして、エッチング方法でレジスト膜のない部分のITO膜を除去し、最後に残されているレジスト膜を除去することによって所要の形状のITO膜を形成する方法を取る。
【0009】
ITO膜を平坦な平板上に形成した場合、レジスト膜も均一な厚みに形成することができ、また、その露光・現像なども精度良くできることから精度の良い形状のITO膜を形成することができる。しかしなから、上記の凹面基板130の如く凹面形状を持つ面にITO膜を形成した場合は、レジスト膜を凹面に沿って均一な厚みに形成することは難しく厚みにバラツキが発生する。このため、露光・現像によって不要とするレジスト膜を剥離した時、剥離幅に寸法的なバラツキが発生する。そして、このバラツキが原因でITO膜の剥離幅に寸法的バラツキが現れる。また、レジスト膜を露光するのに用いるフォトマスクを凹面部分に載置したとき、フォトマスクと凹面との間に隙間が発生する。このため精度良い露光が行われない。精度良く露光するためには、フォトマスクの形状を凹面形状と同じ形状に形成するか、或いは、凹面とフォトマスクとの隙間によって発生する露光寸法の誤差分を予め見込んだ補正形状をフォトマスクに形成するかの方法を取らなければならない。何れの方法を取っても精度良くフォトマスクを形成するのは難しく、形状・寸法の誤差は大きく発生する。このようなことからITO膜の形状・寸法の精度は悪いものになってしまう。精度の高い形状・寸法が要求されるITO膜を形成するのは難しい。
【0010】
また、凹面基板130の配向層136、及び、平板基板120の配向層126は、ポリイミド樹脂でもって配向膜を形成し、その配向膜上にラビングなどの配向処理を施したものから成っている。
【0011】
配向膜の形成は、一般に、オフセット印刷法やスピンコート法などで形成する。また、ラビング処理はフェルトや木綿などの布材のローラを用いて配向膜上に一定の方向での筋目を設けることでラビング処理を行っている。
【0012】
平坦な平板上に形成する配向膜は均一な厚みに形成でき、また、ラビング処理も一定の筋目深さをもって均一に施すことができる。しかしなから、凹面を持つ基板の凹面に形成する配向膜は厚みもバラツキが発生し、また、ラビング処理も凹部を持つ面には布材の擦りが均一に当たらないことから、均一な筋目のラビング処理を施すことが難しい。
【0013】
以上のことから、上記の構造を取る液晶レンズ100にあっては、特に、凹面基板130側にある液晶150に液晶分子の配向の乱れなどが発生する危険を持つ。そして、焦点映像に乱れが発生するようになる。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、透明電極の形状・寸法を精度良く形成すると共に液晶分子の配向が正常に行われるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための手段として、本発明の液晶レンズは、平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止した液晶レンズにおいて、透明電極によって形成されたレンズ領域は一対の上下基板の少なくとも片方の基板が凸型又は凹型に反っていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の液晶レンズは、平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止した液晶レンズにおいて、透明電極によって形成されたレンズ領域の中心部にシール材の厚みより厚みの大きい第1のスペーサを有して、一対の上下基板の少なくとも片方の基板が凸型に反っていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の液晶レンズは、平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止した液晶レンズにおいて、透明電極によって形成されたレンズ領域の中心部にシール材の厚みより厚みの小さい第1のスペーサを有して、一対の上下基板の少なくとも片方の基板が凹型に反っていることを特徴とする。
【0018】
また、上記の本発明の液晶レンズにおいて、一対の上下基板の少なくとも片方の基板は可撓性を持っている。あるいはまた、一対の上下基板の少なくとも片方の基板は0.05〜0.3mmの厚みを持っていることを特徴とする。
【0019】
また、上記の本発明の液晶レンズにおいて、第1のスペーサは一対の上下基板のいずれか一方の基板に固着している。
【0020】
また、上記の本発明の液晶レンズにおいて、第1のスペーサはシール材の厚みより1〜20μm大きい。また、第1のスペーサはシール材の厚みより大きい粒径のスペーサボールであり、シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm大きいスペーサボールであることを特徴とする。
【0021】
また、上記の本発明の液晶レンズにおいて、第1のスペーサはシール材の厚みより1〜20μm小さい。また、第1のスペーサはシール材の厚みより小さい粒径のスペーサボールであり、シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm小さいスペーサボールであることを特徴とする。
【0022】
また、上記の本発明の液晶レンズにおいて、上記のスペーサボールは1〜3個であることを特徴とする。
【0023】
また、上記の本発明の液晶レンズにおいて、シール材の厚みは5〜100μmであり、レンズ領域の中心部における一対の上下基板のギャップは6〜120μmである。あるいは、一対の上下基板のギャップは4〜80μmであることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の液晶レンズの製造方法は、平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止する液晶レンズの製造方法において、一対の上下基板のいずれか片方の基板にスクリーン印刷法で第1のスペーサを印刷する工程と、第1のスペーサを基板に固着する工程と、一対の上下基板のいずれか片方の基板にシール材を印刷する工程と、第1のスペーサを固着し、シール材を印刷した上下の基板を重ね合わせ、加圧・加熱処理を行って上下の基板を接合する工程と、シール材の液晶注入口から真空注入方法で液晶を注入する工程と、シール材の液晶注入口を封口する工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
また、上記の本発明の液晶レンズの製造方法において、第1のスペーサの印刷は、透明電極によって形成されたレンズ領域の中心部であることを特徴とする。
【0026】
また、上記の本発明の液晶レンズの製造方法において、一対の上下基板の少なくとも片方の基板は可撓性を持っている。あるいはまた、一対の上下基板の少なくとも片方の基板は0.05〜0.3mmの厚みを持っていることを特徴とする。
【0027】
また、上記の本発明の液晶レンズの製造方法において、第1のスペーサはシール材の厚みより大きい粒径のスペーサボールであり、シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm大きいスペーサボールであることを特徴とする。
【0028】
また、上記の本発明の液晶レンズの製造方法において、第1のスペーサはシール材の厚みより小さい粒径のスペーサボールであり、シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm小さいスペーサボールであることを特徴とする。
【0029】
また、上記の本発明の液晶レンズの製造方法において、上記のスペーサボールは1〜3個であることを特徴とする。
【0030】
また、上記の本発明の液晶レンズの製造方法において、シール材の厚みは5〜100μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
発明の効果として、本発明においては、レンズ領域の一対の上下基板の少なくとも片方の基板が凸型又は凹型に反っている。これにより、基板が凸曲面(凸レンズ)形状または凹曲面(凹レンズ)形状になる。このため、基板の凸曲面または凹曲面になった部分で光が屈折を起こす(レンズ効果)。更に、その屈折した光が液晶の層で液晶分子の配向方向に沿って進む。基板の凸曲面または凹曲面での屈折光や液晶分子の配向方向に向かって進む光は何れもレンズ領域中心部の中心軸に向かって進むことから、光の屈折する角度を大きくすることができる。そして、集光する焦点の位置を液晶レンズに近づけることができる。即ち、焦点距離を短くすることができる。また、本発明においては、基板を凸型または凹型に反らす構造は、レンズ領域の中心部にシール材の厚みより厚みの大きい、或いは、厚みの小さい第1のスペーサを配設することで達成する。形成方法が容易で、しかも簡単な構造であるので製作が容易で安いコストで製作できる。
【0032】
また、本発明においては、可撓性のある基板を使用する。また、可撓性のある好適な厚みとして0.05〜0.3mmに設定する。可撓性を有すると基板が凸型または凹型に容易に反ることができ、凸曲面形状または凹曲面形状の構造が容易に得られる。また、0.05mmより薄いと基板が割れやすくなり破損が生じ、0.3mmより厚くなると剛性が強くなって容易に撓まなくなる。好適な範囲として0.05〜0.3mmを選択する。
【0033】
また、第1のスペーサは一対の上下基板のいずれか一方の基板に固着する。第1のスペーサに移動がないので得られる凸曲面形状または凹曲面形状に安定した形状が得られる。
【0034】
また、第1のスペーサはシール材の厚みより1〜20μm大きい。シール材の厚みより1〜20μm大きくすることで凸型の反りが発生し、凸曲面(凸レンズ)形状が得られる。1μmより小さくすると凸型の反りが小さくなり光屈折角度が小さくなって凸レンズ効果が余り得られない。また、20μmより大きくすると基板の割れなどの発生危険度が増し液晶レンズの破損を招く。また、第1のスペーサにシール材の厚みより大きい粒径のスペーサボールを用い、そして、シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm大きいスペーサボールを用いることによって、凸型の反り量を精度良く設定できて安定した寸法の反り量が得られる。そして、凸レンズの効果を出すと共に破損危険度を減らす効果を得る。
【0035】
また、第1のスペーサはシール材の厚みより1〜20μm小さい。シール材の厚みより1〜20μm小さくすることで凹型の反りが発生し、凹曲面(凹レンズ)形状が得られる。1μmより小さくすると凹型の反りが小さくなり光屈折角度が小さくなって凹レンズ効果が余り得られない。また、20μmより大きくすると基板の割れなどの発生危険度が増し液晶レンズの破損を招く。また、第1のスペーサにシール材の厚みより小さい粒径のスペーサボールを用い、そして、シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm小さいスペーサボールを用いることによって、凹型の反り量を精度良く設定できて安定した寸法の反り量が得られる。そして、凹レンズの効果を出すと共に破損危険度を減らす効果を得る。
【0036】
また、第1のスペーサをスペーサボールで形成する場合は、スペーサボールは1〜3個に制限する。1個であることが望ましいわけであるが、スペーサボールの材質によっては1個であると内圧によって割れる危険性がある。2個又は3個に増やすことにより内圧を分散しボールの割れを防止できる。4個以上配設すると曲面形状の均一性に影響を及ぼし、セルギャップのバラツキを大きくして液晶分子の配向性に影響を与える。
【0037】
また、シール材の厚みを5〜100μmに制限する。シール材の厚みはセルギャップに直接的に影響を与える。シール材の厚みを5μmより小さくすると焦点距離の調整範囲が狭くなり、映像が不鮮明になったり、映像範囲が狭くなったりする問題が起きる。また、シール材の厚みを100μmより大きくすると焦点距離の調整範囲を広く取ることはできるが、反面、液晶の応答速度が遅くなると云う問題が起きる。
【0038】
また、本発明の液晶レンズの製造方法では、最初に、平板なる透明基板上に透明電極や配向膜を設ける。そして、シール材の厚みよりも厚みの大きい、あるいは、シール材の厚みよりも厚みの小さい第1のスペーサを印刷し、一対の上下基板を貼合わせる。そして、液晶を注入して封止する。透明電極や配向膜を平板状態の透明基板に形成するので、透明電極の形状・寸法は精度良く形成することができる。また、配向膜に筋目の整った均一なラビング処理を施すことができる。そして、シール材の厚みよりも厚みの大きい第1のスペーサを印刷して設けた場合は凸型の反りが発生した液晶レンズが得られ、シール材の厚みよりも厚みの小さい第1のスペーサを印刷して設けた場合は凹型の反りが発生した液晶レンズが得られる。凸型の反りは凸曲面形状が得られ、基板に入射した光はそこで屈折角度を変える。同様に、凹型の反りは凹曲面形状が得られ、基板に入射した光はそこで屈折角度を変える。
【0039】
また、第1のスペーサの印刷は、透明電極によって形成されたレンズ領域の中心部に設けることにより、レンズ領域の中心部を基点になだらかで反り量が均一な凸曲面形状や凹曲面形状が得られる。これにより、レンズ領域において、中心部から等距離離れた位置にあっては同一量のセルギャップが得られる。
【0040】
本発明の液晶レンズの製造方法は、レンズ領域の中心部にシール材の厚みよりも厚みの大きい、あるいは、シール材の厚みよりも厚みの小さい第1のスペーサを印刷することで凸曲面形状、あるいは、凹曲面形状の液晶レンズが得られる。製造方法が簡単で、しかも、少ない追加工程数でできることから製造コストも安くできる。そして、可変量の大きな、精度の高い液晶レンズが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1、図2を用いて説明する。ここで、図1は本発明の実施形態に係る液晶レンズの平面図を示しており、図2は図1における液晶レンズの要部断面図を示している。尚、図2は分かり易くするために少し誇張して描いてある。
【0042】
最初に、図1、図2を用いて本発明の実施形態に係る液晶レンズの構成を説明する。本実施形態に係る液晶レンズ20は、上基板11と下基板1からなる一対の上下基板を対向して配置し、シール材7を介して内部に液晶5を封止した構成を取っている。また、レンズ領域B(図1において、Bで示す鎖線丸枠内の領域)の一点鎖線で示した中心部Cの位置にシール材7の厚みよりも大きい粒径の第1のスペーサ16が配設されて上基板11が凸型に反った構造を取っている。尚、本実施形態の液晶レンズの大きさは、シール材7が形成された部分でもって5mm角の大きさになっており、レンズ領域は直径2.0〜2.5mmの大きさになっている。
【0043】
ここで、上基板11は、ガラスなどからなり板厚が薄くて可撓性のある上透明基板12と、上透明基板12の下面に設けた複数の透明電極と、この複数の透明電極の表面に設けた上配向膜14とから構成される。複数の透明電極は、図1に示すように、レンズ領域Bの中心部Cの領域に設けた透明な円形電極13aと、この円形電極13aを囲うようにして円形電極13aと同心円で設けた複数の透明な環状電極13b1、13b2、13b3と、それぞれの環状電極13b1、13b2、13b3に接続して円形電極13aにも接続した透明な接続電極13cと、中心の円形電極13aに接続した透明な接続電極13dとから構成されている。尚、図示はしていないが、この接続電極13cと13dはシール材7の外側にまで延設されており、その延設部分は図示していない上透明基板12の一部の延設部に配設されている。そして、接続電極13cと13dはその端部に端子部を形成し、その端子部に外部から所定の電圧を印加できるようになっている。Bで示した鎖線丸枠内がレンズ領域を形成する部分で、これは、一番外側に形成されている環状電極13b3を含む内側がレンズ領域Bになっている。そして、このレンズ領域Bの中心部Cの領域に円形電極13aが設けられている。
【0044】
図2において、第1のスペーサ16は粒子(ボール)状の形状を取っており、UV硬化型樹脂17を介して上基板11側のレンズ領域Bの中心部Cの所に接着固定されている。この中心部Cは円形電極13aの中心にもなっている所である。
【0045】
下基板1は、ガラスなどからなり板厚が厚くて剛性のある下透明基板2と、下透明基板2の上面に設けた下透明電極3と、この下透明電極3の表面に設けた下配向膜4とから構成されている。ここで、下透明電極3はレンズ領域Bの全面に渡って設けられ、その外周の一部分に、図示はしていないが、電圧印加するために引き出した引き出し電極がシール材7の外側にまで延設して設けられている。そして、その延設した端部に形成した端子部に外部から所定の電圧を印加できるようになっている。
【0046】
上記の上基板11と下基板1とを対向して配置して、シール材7でもって上基板11と下基板1とを接合している。シール材7は熱硬化型樹脂7aの中に第2のスペーサ7bを分散したものからなり、シール材7の厚みは第2のシール材7bの粒径によって決められる。
【0047】
尚、図示はしていないが、シール材7には一部分に開口部を有しており、上下基板11、1とを接合した後にその開口部から液晶5を真空注入する。そして、注入後にその開口部はUV硬化型接着剤でもって封口している。
【0048】
本実施形態においては、第1のスペーサ16はスペーサボールを用いており、シール材7に分散している第2のスペーサ7bより1〜20μm粒径の大きいスペーサボールを用いている。従って、中心部Cにおけるセルギャップ(上下基板11、1とのギャップ)は第2のスペーサ7bの粒径によって決められるシール材7の厚みよりも1〜20μm大きくなっている。そして、上基板11のレンズ領域Bはその中心部Cを頂点として凸型に反って、凸曲面形状をなしている。そして、液晶レンズ20は下面側がフラットで上面側が凸球面をなした凸レンズ形状をなしている。
【0049】
次に、上記構成部品のそれぞれの仕様について説明する。本実施形態においては、上基板11を構成する上透明基板12は透明なガラスを用い、可撓性を持たせるために0.05〜0.3mmの板厚のものを使用している。0.05mmより薄いものは割れ易く、0.3mmより厚いものは剛性が強く撓みづらいことから0.05〜0.3mmの厚みのものに制限する。ガラスの材質としてはソーダーガラス、ホウケイ酸ガラス、普通板ガラス、石英ガラスなどのものが使用できるが、本実施形態では0.2mm厚みのホウケイ酸ガラスを用いている。また、ガラスに代えてプラスチック板などを使用することもできる。下基板1を構成する下透明基板2は透明なガラスでもって形成している。剛性を持たせたいことから0.5〜1.1mm厚みのガラスを用いる。ガラスの材質としてはソーダーガラス、ホウケイ酸ガラス、普通板ガラス、石英ガラスなどのものが使用できるが、本実施形態では0.7mm厚のホウケイ酸ガラスを用いている。また、ガラスに代えてプラスチック板などを使用することもできる。本実施形態においては、上透明基板12は可撓性のある薄いガラスを使用し、下透明基板2は剛性のある厚いガラスを使用したが、上透明基板に剛性のある厚いガラスを使用し、下透明基板に可撓性のある薄いガラスを使用しても何ら支障はない。下透明基板に可撓性のある薄いガラスを使用した場合は下基板側に凸型の反りが現れてくる。また、上透明基板と下透明基板の両方を可撓性のある薄いガラスを用いても良い。この場合は両面が凸型に反った液晶レンズ得られる。
【0050】
上基板11を構成するところの複数の透明電極、即ち、円形電極13a、環状電極13b1、13b2、13b3、及び、接続電極13c、接続電極13d、と下基板1を構成するところの下透明電極3は、錫をドープした酸化インジウムのITO(Indium
Tin Oxide)膜や酸化亜鉛(ZnO)膜などで形成する。このITO膜や酸化亜鉛膜は真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などで形成し、その後、フォトリソグラフィなどの方法で所望の形状に仕上げる。
【0051】
上基板11を構成するところの上配向膜14、下基板1を構成するところの下配向膜4は、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などを用いてスクリーン印刷法、スピンコート法、などで数μmの厚みの配向膜を形成し、その後に、フェルトや木綿などの布材のローラを用いて配向膜上に一定の方向での筋目を付けるラビング処理を施している。また、上配向膜14の配向方向と下配向膜4の配向方向とは180°向きが異なるパラレル配向にして上下配向膜14、4を対面させて組合わせる。
【0052】
第1のスペーサ16は透明なシリカボールやプラスチックボールなどを用いることができる。本実施形態においては、第1のスペーサ16はUV硬化型樹脂17を介して上基板11側に接着固定したが下基板1側に接着固定しても構わない。この第1のスペーサ16にボールを用いた場合は1〜3個の範囲内の個数に制限する。これは、ボールの割れを防止する目的である。シリカボールなどは内圧によって割れることが発生するが、複数あると内圧が分散され割れが発生しなくなる。また、個数が多いと曲面形状の均一性に影響を及ぼし、セルギャップのバラツキを大きくして液晶分子の配向性に影響を与える。この第1のスペーサ16の形成方法は、UV硬化型のアクリル樹脂やエポキシ樹脂にシリカボールを10〜50重量%混ぜ合わせたインクを用いてスクリーン印刷法で形成し、その後に、UV照射によって接着固定する。本実施形態においてはUV硬化型の樹脂を用いたが、UV硬化型の樹脂に限るものではなく、熱硬化型の樹脂を用いても良いものである。また、第1のスペーサ16は必ずしもボールに限定するものではなく、単なる樹脂だけでもって目的を達成する大きさに印刷形成して第1のスペーサとしても良いものである。本発明においては、第1のスペーサ16は後述するシール材7の厚みよりも1〜20μm大きいものを設ける。即ち、シール材7に分散した第2のスペーサより1〜20μm大きい粒径のボールを用いている。
【0053】
シール材7は熱硬化型樹脂7aに第2のスペーサ7bを分散したものからなっている。熱硬化型樹脂7aとしてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。また、第2のスペーサ7bはシリカボール、プラスチックボール、ガラスファイバなどが用いられる。シール材7に分散する第2のスペーサ7bはシール材全体に対して2重量%程度とするのが良い。シール材7の厚みは第2のスペーサ7bの粒径によって決まる。本発明においては、シール材7の厚みを5〜100μmに制限する。シール材7の厚みはセルギャップに直接的に影響を与え、また、セルギャップは焦点距離の調整範囲に影響を及ぼす。シール材7の厚みを5μmより小さくすると焦点距離の調整範囲が狭くなり、映像が不鮮明になったり、映像範囲が狭くなったりする問題が起きる。また、セルギャップは液晶の応答速度、即ち、Ton時間(電圧をonにしてから液晶の光透過率が90%になるまでの時間)やToff(電圧をoffにしてから液晶の光透過率が10%になるまでの時間)に影響を及ぼし、シール材の厚みを100μmより大きくすると焦点距離の調整範囲を広く取ることはできるが、反面、液晶のTon時間やToff時間の応答速度が遅くなると云う問題が起きる。
【0054】
液晶5は誘電率異方性が正のネマティック液晶が用いられる。
【0055】
以上の構成を取る液晶レンズ20は、第1のスペーサ16がシール材7より1〜20μm大きいために上基板11が1〜20μmの範囲で凸型に反る。レンズ領域Bを上下基板11、1の外周域を一周に渡ってシールしたシール材7のほぼ中央部に設け、第1のスペーサ16をレンズ領域Bの中心部Cに設けていることからレンズ領域B内にあっては中心部Cを基点にして対称な凸曲面(球面)が得られる。従って、中心部Cから同一距離離れた位置にあっては同一のセルギャップが得られる。これは、環状電極に電圧を印加し、液晶の分子に電界強度を与えると同一方向の配向が起き、配向方向が揃った均一な配向が得られる効果を生む。図2において、上部にある矢印は光の入射方向を示している。上基板11が凸曲面をなすことにより、上基板11に入射したときに液晶レンズ20の厚みの厚い方向に向かって、即ち、レンズ領域Bの中心部Cの中心軸の方向に向かって屈折を起こす。そして、その屈折した屈折光は上基板11を透過して次に液晶5に入射する。液晶5に入射した屈折光は液晶分子の配向の向きに沿って進み、更に、下基板1を透過して進み焦点の位置に集光する。従って、外から入射した光は凸曲面をなす上基板11に入射したときに屈折を起こし、更に、液晶5に入射したときに液晶分子の配向方向に沿って進むことによる屈折が起きる。従って、上基板11での屈折と液晶分子の配向方向に沿って進むことによる屈折とで光の屈折角度は大きくなる。何れも、レンズ領域Bの中心部Cの中心軸の方向に向かっての屈折となる。これにより、光が集光する焦点の距離を短くすることができる。このことは、焦点距離の調整範囲を広くする効果を得る。
【0056】
本発明においては、第1のスペーサ16の大きさ(厚み)をシール材7の厚みより1〜20μm大きくし、1〜20μmの凸型の反りが発生した液晶レンズを形成する。この1〜20μmの反り量によって光屈折による焦点距離の効果的な調整と透明基板の破損防止を図っている。反りが小さいと基板での光屈折角が小さくなって期待する焦点距離調整効果が得られない。反面、反りが大きくなると透明基板が割れ易くなり破損が起きる。
【0057】
次に、上記の構成を取る液晶レンズ20の製造方法を説明する。最初に、上透明基板12に円形電極13a、複数の環状電極13b1、13b2、13b3、接続電極13c、接続電極13dを形成する。これは、錫をドープした酸化インジウムのITO膜を真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などで形成する。例えば、真空蒸着法で行う場合は、蒸着機内の載品台上に上透明基板12を取り付けて、ITO粉末を用いて真空蒸着を行う。真空蒸着時のチャンバー内の圧力は、1×10−6〜5×10−5torr(1.33×10−4〜6.65×10−3Pa)の範囲位に設定して行う。真空蒸着の膜厚は蒸着時間で決まるので所要の時間行って所要の膜厚を得る。次に、全面に形成したITO膜をフォトリソグラフィなどの方法で円形電極13a、環状電極13b1、13b2、13b3、接続電極13c、接続電極13dの形状に成形する。これは、レジスト膜をITO膜上に形成して露光・現像により不要とするレジスト膜の部分を除去して所要の形状にレジスト膜を成形する。そして、エッチング方法でレジスト膜のない部分のITO膜を除去し、最後に残されているレジスト膜を除去することによって円形電極13a、複数の環状電極13b1、13b2、13b3、接続電極13c、接続電極13dの形状ができあがる。このようにして形成した円形電極13a、複数の環状電極13b1、13b2、13b3、接続電極13c、接続電極13d上に配向膜をオフセット印刷方法やスピンコート法などで形成し、フェルトや木綿などの布材のローラを用いて配向膜上に一定の方向での筋目を付けるラビング処理を行う。これによって上基板11が出来上がる。下基板1も同様な方法で下透明基板2の上面に下透明電極3を形成し、その上に下配向膜4を形成し、下配向膜4にラビング処理を行う。
【0058】
次に、上基板11のレンズ領域Bの中心部Cの部位に、スクリーン印刷方法でボールからなる第1のスペーサ16を分散したUV硬化型樹脂17のインクを用いて第1のスペーサ16を印刷する。ここで、ボールからなる第1のスペーサ16の粒径は後述するシール材7に分散している第2のスペーサ7bの粒径より1〜20μm大きいものを使用する。また、ボールからなる第1のスペーサは1〜3個の範囲で印刷する。これは、スクリーン印刷に使用するメタル版のインクを落とし込む穴径の大きさを調整することによって配設する個数を設定する。メタル版の穴径をボールの粒径に対して1.5〜1.8倍の大きさにすれば1個のボールを配設することができる。また、穴径をボールの粒径に対して1.8〜2.5倍の大きさにすれば2〜3個のボールを配設することができる。メタル版としてはニッケルやステンレス金属などで形成した金属膜の版が利用できる。UV硬化型樹脂としてはUV硬化型のエポキシ樹脂やアクリル樹脂が用いられるが、第1のスペーサ16を印刷した後に紫外線照射して樹脂分を硬化させ、第1のスペーサ16を上基板11に固着させる。尚、本実施形態においては、第1のスペーサを上基板11側に印刷形成したが、これは、上基板11側に円形電極13aや複数の環状電極13b1、13b2、13b3を形成していることでその中心部Cが設定しやすいと云う理由による。下基板1側で中心部Cが容易に設定可能であれば下基板1側に第1のスペーサ16を設けても何ら支障はない。また、本実施形態においてはUV硬化樹脂を用いたが、熱硬化型樹脂を用いて加熱方法によって第1のスペーサ16を接着固定しても構わない。
【0059】
次に、シール材7を下基板1側にスクリーン印刷して形成する。このシール材7は前述の熱硬化型樹脂7aに第2のスペーサ7bを分散したものからなる。本実施形態においては、シール材7は下基板1側に設けているが、これは、上基板11側に第1のスペーサを設けており印刷作業の中で第1のスペーサに悪い影響を及ぼしてはいけないと云う理由による。しかしながら、第1のスペーサに何ら影響を及ぼさないものであるならば上基板11側に設けても良く、特に下基板1側に限定するものではない。シール材7は基板の外周域一周に渡って形成するが、その中で一部分開口部を設けて形成する。この開口部は後工程での液晶の注入口として用いるものである。
【0060】
次に、上基板11と下基板1を対向して位置を合わせて重ね合わせ、加圧装置や加熱装置を用いて加圧の下で加熱してシール材7を硬化させ上基板11と下基板1とを接合する。加圧力と加熱温度は、例えば、シール材7の熱硬化型樹脂7aにエポキシ樹脂を用いた場合は、加圧力は200〜1.0kg/cm、加熱温度160°Cで30分〜1時間の焼成を行う。
【0061】
次に、真空注入機を用いて真空状態の下で液晶をシール材7の液晶注入口から注入する。
【0062】
次に、シール材7の液晶注入口にUV硬化型樹脂を塗布し、紫外線を照射してUV硬化型樹脂を硬化させて封口する。
【0063】
以上の工程を経ることによって図2に示すような上基板11側が凸型に反った本発明の液晶レンズ20が得られる。本発明の製造方法の下では、凸型に反った上基板11側の円形電極13aや複数の環状電極13b1、13b2、13b3、並びに、接続電極13c、13dは上透明基板12の平板状態の時に形成する。従って、レジスト膜も均一の厚みに形成でき、露光・現像も精度の高い形状で行うことができる。また、エッチングによる形状・寸法出しも精度良く行うことができる。そして、円形電極13aや複数の環状電極13b1、13b2、13b3などの形状・寸法に精度の良いものが得られる。また、凸型に反った上基板11側の上配向膜14の膜の形成やラビング処理も平坦面の状態で行うので、上配向膜14の厚みも均一になり、ラビングによる筋目の方向や深さも均一なものが得られる。そして、液晶の配向性に均一性が得られる。
【0064】
また、上基板11側の凸型の反りは、可撓性のある上透明基板12を用い、シール材7の第2のスペーサ7bより粒径の大きい第1のスペーサ16のボールを中心部Cに配設する構成で得られる。作業工程数も少なく、しかも、簡単な作業でできることから安い製造コストで本発明の液晶レンズの構造を作ることができる。
【0065】
以上述べた本発明の実施形態は第1のスペーサ16にシール材7の第2のスペーサ7bより粒径の大きいボールを用いて上基板11を凸型に反らした構造の液晶レンズであるが、第1のスペーサ16にシール材7の第2のスペーサ7bより粒径の小さいボールを用いて上基板11を凹型に反らした構造の液晶レンズを得ることもできる。何れも同様な効果を得ることができる。
【実施例1】
【0066】
次に、本発明の実施例1に係る液晶レンズを図3を用いて説明する。図3は本発明の実施例1に係る液晶レンズの要部断面図を示している。尚、図3は分かり易くするために少し誇張して描いてある。
【0067】
図3より、実施例1における液晶レンズ40は、上基板31と下基板21との間に液晶25をシール材27を介して封止した構造を取っている。また、レンズ領域の中心部Cにシール材27の厚みより大きい粒径の第1のスペーサ36が上基板31に固着して設けられて、上基板31、下基板21共に凸型に反った形状をなしている。即ち、両面凸曲面状なる凸レンズ形状をなしている。
【0068】
ここで、シール材27には第2のスペーサ27bが分散しており、この第2のスペーサ27bの粒径の大きさがシール材27の厚みになっている。また、中心部Cに設けたボールからなる第1のスペーサ36の粒径はシール材27の第2のスペーサ27bの粒径より1〜20μm大きいものを用いており、上下基板31、21の凸型反り量は共に0.5〜10μmの反り量になっている。従って、中心部Cにおける上下基板31、21のセルギャップはシール材27の厚みより1〜20μm大きくなっている。
【0069】
上基板31は、透明で0.2mm厚みのガラスからなる上透明基板32と、その上透明基板32の下面に設けた透明な円形電極33a、複数の透明な環状電極33b1、33b2、33b3、2つの透明な接続電極(図3には示していない)などの複数の透明電極と、これらの複数の透明電極の表面に設けた上配向膜34とから構成されている。ここで、円形電極33a、環状電極33b1、33b2、33b3、2つの接続電極の形状は前述の実施形態での図1に示した形状を取っており(図1参照)、中心部Cの領域に円形電極33a、その外周域に同心円状に設けた複数の環状電極33b1、33b2、33b3があり、その環状電極33b1、33b2、33b3の一部分に繋げて設けた通路状の開口部の所に設けた2つの接続電極がある。この2つの接続電極の内の1つの接続電極は複数の環状電極33b1、33b2、33b3と円形電極33aとを接続する接続電極であり、もう1つの接続電極は円形電極33aに接続する接続電極である。
【0070】
一番外側にある環状電極33b3を含む内側がレンズ領域になっており、そのレンズ領域の中心に円形電極33aがある。また、このレンズ領域は上下基板31、21の外周一周に渡ってシールしたシール材27のほぼ中央部に設けられるようになっている。また、上基板31の中心部Cの部分にボールからなる第1のスペーサ36がUV硬化型樹脂37を介して上基板31側に接着固定されている。尚、この液晶レンズ40は5mm角の大きさで、レンズ領域は直径2.0〜2.5mmの大きさをなしている。
【0071】
下基板21は、透明で0.2mm厚みのガラスからなる下透明基板22と、下透明基板22の上面に設けた下透明電極23と、この下透明電極23の表面に設けた下配向膜24とから構成されている。ここで、下透明電極23はレンズ領域Bの全面に渡って設けられ、その外周の一部分に、図示はしていないが、電圧印加するために引き出した引き出し電極がシール材27の外側にまで延設して設けられている。
【0072】
上記の上基板31と下基板21とを対向して配置して、シール材27でもって上基板31と下基板21とを接合している。尚このとき、上基板31の上配向膜34の配向方向と下基板21の下配向膜24の配向方向は180°向きが異なるパラレル配向になって組合わせられている。シール材27は熱硬化型樹脂27aの中に第2のスペーサ27bを分散したものからなり、シール材27の厚みは第2のスペーサ27bの粒径によって決められる。
【0073】
尚、図示はしていないが、シール材27には一部分に開口部を有しており、上下基板31、21とを接合した後にその開口部から液晶25を真空注入する。そして、注入後にその開口部はUV硬化型接着剤でもって封口している。
【0074】
次に、上記構成部品のそれぞれの仕様について説明する。実施例1においては、上基板31を構成する上透明基板32、及び、下基板21を構成する下透明基板22は透明で0.2mm厚みのガラスを用いている。実施例1の液晶レンズの構造は上基板31、下基板21共に凸型に反らす構造を取ることから、上透明基板32と下透明基板22は共に可撓性を持たせるために0.05〜0.3mmの板厚のものを使用する。0.05mmより薄いものは割れ易く、0.3mmより厚いものは剛性が強く撓みづらいことから0.05〜0.3mmの厚みのものに制限する。ガラスの材質としてはソーダーガラス、ホウケイ酸ガラス、普通板ガラス、石英ガラスなどのものが使用できるが、実施例1では0.2mm厚みのホウケイ酸ガラスを用いている。また、ガラスに代えてプラスチック板などを使用することも可能である。
【0075】
上基板31を構成するところの円形電極33a、環状電極33b1、33b2、33b3、及び、2つの接続電極などの複数の透明電極、及び、下基板21を構成するところの下透明電極23は、錫をドープした酸化インジウムのITO膜で形成している。真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法などでITO膜を形成し、その後に、フォトリソグラフィなどの方法で所望の形状に仕上げている。
【0076】
上基板31を構成するところの上配向膜34、下基板21を構成するところの下配向膜24は、ポリイミド樹脂などを用いてスクリーン印刷法、スピンコート法、などで数μmの厚みで形成し、その後に、フェルトや木綿などの布材のローラを用いて配向膜上に一定の方向での筋目を付けるラビング処理を施している。
【0077】
第1のスペーサ36は透明なポリスチレン樹脂からなるプラスチックボールを用いている。これは、実施例1では上下基板31、21を薄いガラスから構成しているのでガラスの割れを防止する目的でプラスチックボールを用いているものである。しかしながら、プラスチックボールに限定するものではなくシリカボールなども用いることができる。この第1のスペーサ36は、UV硬化型樹脂37に第1のスペーサ36を分散したインクを用いスクリーン印刷方法で1〜3個の範囲で形成し、その後に紫外線照射によって接着固定することによって形成する。この1〜3個の配設数はボールの割れ防止と液晶分子の配向乱れ防止のために数を制限している。スクリーン印刷版のインクを落とし込む穴径を、第1のスペーサ36の粒径に対して1.5〜1.8倍の大きさの穴径に設定すれば1個のスペーサが配設でき、第1のスペーサ36の粒径に対して1.8〜2.5倍の大きさの穴径に設定すれば2〜3個のスペーサを配設することができる。この第1のスペーサ36はシール材27の厚みよりも1〜20μm大きいものを設ける。即ち、シール材27に分散した第2のスペーサ27bより1〜20μm大きい粒径のボールを用いる。
【0078】
図3において、上部にある矢印は光の入射方向を示している。第1のスペーサ36にシール材27の厚みよりも1〜20μm大きい、即ち、シール材27に分散した第2のスペーサ27bより1〜20μm大きい粒径のボールを用いることにより、上基板31と下基板21は同じ厚みの透明基板を用いていることから双方共に凸型に同じ反り量でもって反る。即ち、上基板31は凸曲面形状に形成され、下基板21も凸曲面に形成され、両面に凸レンズ形状が形成される。上基板31側から上基板31に入射した光は凸曲面をなした上基板31により液晶レンズ40の厚みの厚い方向に向かって、即ち、レンズ領域の中心部Cの中心軸の方向に向かって屈折を起こす。そして、その屈折した屈折光は上基板31を透過して次に液晶25に入射する。液晶25に入射した屈折光は液晶分子の配向の向きに沿って進み、液晶25を抜ける。そして、下基板21を透過して抜ける時にまた中心部Cの中心軸の方向に向かって屈折を起こす。従って、両面凸レンズ形状をなしていると、上基板31に入射したときの屈折、液晶分子の配向方向に沿って進むことによる屈折、下基板21を抜けるときの屈折の3回の屈折を起こす。何れも中心部Cの中心軸の方向に向かっての屈折になり、集光する焦点はより液晶レンズ40に近づいた位置に来る。このように、凸レンズ形状にすると焦点距離を更に短くすることができる。このことは、焦点距離の調整範囲を広く取れる効果を得る。ここで、第1のスペーサ36の大きさ(粒径)をシール材27の厚みよりも1〜20μm大きい、即ち、シール材27に分散した第2のスペーサ27bより1〜20μm大きい大きさに制限する。これは、1μmより小さくすると上基板31に入射したときの屈折角と下基板21を抜けるときの屈折角とが小さくなって焦点の位置が余り短くならないことによる。また、20μmより大きくすると反り量が大きくなって可撓性のある上下基板21、31に割れなどの破損が発生することによる。
【0079】
シール材27は熱硬化型樹脂27aに第2のスペーサ27bを分散したものからなる。実施例1では、エポキシ樹脂なる熱硬化型樹脂7aを用い、第2のスペーサ27bにシリカボールを用いている。しかしながら、熱硬化型樹脂7aはエポキシ樹脂に限るものではなく熱硬化型のアクリル樹脂などを用いても良い。また、第2のスペーサ27bはシリカボールに限るものではなくプラスチックボールやガラスファイバなどを用いることもできる。このシール材27の厚みは第2のスペーサ27bの粒径で決まり、粒径と同じ大きさの厚みが得られる。このシール材27の厚みは5〜100μmの範囲に設定する。これは、シール材27の厚みを5μmより小さくすると焦点距離の調整範囲が狭くなり、映像が不鮮明になったり、映像範囲が狭くなったりする問題が起きるからである。また、シール材27の厚みを100μmより大きくするとセルギャップが大きくなり、液晶の応答速度が非常に遅くなると云う問題が起きる。このシール材27はエポキシ樹脂なる熱硬化型樹脂27aにシリカボールなる第2のスペーサ27bをシール材全体に対して2重量%混ぜ合わせたインクを用いてスクリーン印刷方法などで下基板21側に形成する。
【0080】
液晶25は誘電率異方性が正のネマティック液晶が用いられる。
【0081】
実施例1の液晶レンズ40の製造方法は前述の実施形態で説明した製造方法と同じ方法を取るのでここでの説明は省略する。
【0082】
以上の構成を取った液晶レンズ40は、上下基板とも凸曲面形状をなし、両面凸レンズ形状になる。そして、集光の焦点の位置をより短くすることができる。また、構造がシンプルであり製造方法が容易であることから安いコストで製造することかできる。また、上基板31の円形電極33a、環状電極33b1、33b2、33b3、及び、2つの接続電極、及び、下基板21の下透明電極23などは平板の透明基板上に形成するので形状や寸法は精度良く形成することができる。また、上配向膜34、下配向膜24も平坦面上で形成することから均一な厚みでラビング処理品質も均一なものが得られる。
【実施例2】
【0083】
次に、本発明の実施例2に係る液晶レンズを図4を用いて説明する。図4は本発明の実施例2に係る液晶レンズの要部断面図を示している。実施例2の液晶レンズ50は前述の実施形態で説明した液晶レンズの構成と比較すると、第1スペーサの構成のみが異なり、他は同じ構成を取る。従って、同じ構成を取る部品は同一符号を付してある。尚、図4は分かり易くするために少し誇張して描いてある。
【0084】
図4より、実施例2に係る液晶レンズ50は、上基板11と下基板1からなる一対の上下基板を対向して配置し、シール材7を介して内部に液晶5を封止した構成を取っている。また、レンズ領域の中心部Cの位置にシール材7の厚みよりも1〜20μm厚い第1のスペーサ56を下基板1側に固着して設け、この第1のスペーサ56により上基板11が上方に押圧されて凸型に反った構造を取っている。この第1のスペーサ56のみが前述の実施形態における図2でもって説明したボールからなる第1のスペーサと異なる構成をとっている。他の構成部品は前述の実施形態での構成部品と同じ構成を取っているので、ここでは、構成の異なる第1のスペーサ56を主体にして説明する。
【0085】
実施例2では、この第1のスペーサ56はUV硬化型樹脂を下基板1側にスクリーン印刷方法またはポッティング方法などで形成したものからなり、形成後に紫外線照射によって硬化させたものである。この第1のスペーサ56の厚みはシール材7の厚みよりも1〜20μm厚く形成する。この第1のスペーサ56は、実施例2では下基板1側に形成したが、特に下基板1側に限るものではなく上基板11側に設けても良いものである。
【0086】
第1のスペーサ56をスペーサ7の厚みより1〜20μm厚くしているために、上基板11は1〜20μm凸型に反った凸曲面の形状になる。そして、前述の実施形態で説明した液晶レンズと同じ形状の液晶レンズが得られる。また、その効果も同じ効果が得られる。
【実施例3】
【0087】
次に、本発明の実施例3に係る液晶レンズを図5を用いて説明する。図5は本発明の実施例3に係る液晶レンズの要部断面図を示している。尚、図5は分かり易くするために少し誇張して描いてある。
【0088】
図5より、実施例3における液晶レンズ70は、上基板61と下基板51との間にシール材57を介して液晶55を封止した構造を取っている。また、レンズ領域の中心部Cの部位に粒径の小さい第1のスペーサ66がUV硬化型樹脂67を介して上基板61に固着して設けられて、下基板51は凹型に反った凹曲面形状をなしている。
【0089】
ここで、シール材57はエポキシ樹脂からなる熱硬化型樹脂57aにシリカボールからなる第2のスペーサ57bが分散したものからなり、シール材57の厚みはこの第2のスペーサ57bの粒径の大きさによって決まり、第2のスペーサ57bの粒径の大きさがシール材57の厚み寸法になっている。また、中心部Cに設けたプラスチックボールからなる第1のスペーサ66の粒径はシール材57の厚みより1〜20μm小さい、即ち、シール材57に分散している第2のスペーサ57bの粒径より1〜20μm小さいものを用いている。従って、下基板51は凹型に1〜20μm反った凹曲面形状をなしている。そして、中心部Cの部位における上下基板61、51のセルギャップはシール材57の厚みより1〜20μm小さくなっている。
【0090】
上基板61は、透明で0.7mm厚みのガラスからなる上透明基板62と、その上透明基板62の下面に設けた透明な円形電極63a、複数の透明な環状電極63b1、63b2、63b3、2つの透明な接続電極(図5には示していない)などの複数の透明電極と、これらの複数の透明電極の表面に設けた上配向膜64とから構成されている。ここでの円形電極63a、環状電極63b1、63b2、63b3、2つの接続電極の形状は前述の実施形態での図1に示した形状を取っており(図1参照)、中心部Cの領域に円形電極63a、その外周域に同心円状に設けた複数の環状電極63b1、63b2、63b3があり、その環状電極63b1、63b2、63b3の一部分に繋げて設けた通路状の開口部の所に設けた2つの接続電極がある。この2つの接続電極の内の1つの接続電極は複数の環状電極63b1、63b2、63b3及び円形電極63aとに接続する接続電極であり、もう1つの接続電極は円形電極63aに接続する接続電極になっている。この2つの接続電極は複数の環状電極や円形電極に電圧を印加するために設けているもので、図示はしていないが、シール材57の外側にまで延設されている。
【0091】
一番外側にある環状電極63b3を含む内側がレンズ領域になっており、そのレンズ領域の中心に円形電極63aがある。そして、レンズ領域の中心部Cは円形電極63aの中心部にもなっている。また、このレンズ領域は上下基板61、51の外周一周に渡ってシールしたシール材57のほぼ中央部に設けられるようになっている。また、上基板61側の中心部Cの部分にプラスチックボールからなる第1のスペーサ66がUV硬化型樹脂67を介して上基板61側に接着固定されている。
【0092】
下基板51は、透明で0.2mm厚の可撓性を有するガラスからなる下透明基板52と、下透明基板52の上面に設けた下透明電極53と、この下透明電極53の表面に設けた下配向膜54とから構成されている。ここで、下透明電極53はレンズ領域の全面に渡って設けられ、その外周の一部分に、図示はしていないが、電圧印加するために引き出した引き出し電極がシール材57の外側にまで延設して設けられている。下透明基板52は可撓性を持たせるために本実施例では0.2mm厚のものを用いているが、0.2mmの厚みに限らず0.05〜0.3mmの範囲の中で反り量も加味して適宜に設定するのが好ましい。
【0093】
上記の上基板61と下基板51とを対向して配置して、シール材57でもって上基板61と下基板51とを接合している。尚このとき、上基板61の上配向膜64の配向方向と下基板51の下配向膜54の配向方向とは180°向きが異なるパラレル配向になって組合わせられている。
【0094】
尚、図示はしていないが、シール材57には一部分に開口部を有しており、上下基板61、51とを接合した後にその開口部から液晶55を真空注入する。そして、注入後にその開口部はUV硬化型接着剤でもって封口している。液晶55の注入は真空注入機を用いて真空状態にして液晶を注入する。このとき、液晶レンズは負圧がかかっている状態であるので0.2mmと薄く可撓性を持った下透明基板52は上下基板61、51の隙間の内側に吸引されて凹型に反っていき、第1のスペーサ66に当接して反りが止まる。上基板61は厚みが厚く剛性を有することから反りが発生せずフラットの状態になっている。そして、下基板51が凹型に反った状態の中で液晶55が注入されて封口処理が行われる。
【0095】
第1のスペーサ66は透明なポリスチレン樹脂からなるプラスチックボールを用いている。この第1のスペーサ66は、UV硬化型樹脂67に第1のスペーサ66を分散したインクを用いスクリーン印刷方法で1〜3個の範囲で配設し、その後に紫外線照射によって上基板61に接着固定している。第1のスペーサ66を1〜3個配設する方法として、スクリーン印刷版のインクを落とし込む穴径を、第1のスペーサ66の粒径に対して1.5〜1.8倍の大きさの穴径に設定すれば1個のスペーサが配設でき、第1のスペーサ36の粒径に対して1.8〜2.5倍の大きさの穴径に設定すれば2〜3個のスペーサを配設することができる。この第1のスペーサ66の粒径はシール材57の厚みより1〜20μm小さい、即ち、シール材57に分散している第2のスペーサ57bの粒径より1〜20μm小さいものを用いる。これにより、下基板51に凹型の1〜20μm反った凹曲面形状が得られる。
【0096】
図5において、上部にある矢印は光の入射方向を示している。第1のスペーサ66にシール材57の厚みよりも1〜20μm小さい、即ち、シール材57に分散した第2のスペーサ57bより1〜20μm小さい粒径のボールを用いることにより、下基板51は凹型に1〜20μmの範囲で反る。上基板61に直交して入射した光は上基板61を透過して液晶55に入射する。液晶55に入射した光は液晶分子の配向方向の向きに沿って進み、液晶55を通過して抜ける。そして、下基板51に入射して下基板51を透過して抜ける。下基板51が凹曲面形状をなしていることから、光が下基板51を抜ける時に中心部Cの中心軸の方向に向かって屈折を起こす。従って、液晶分子の配向方向に沿って進むことによる屈折と下基板51を抜けるときの屈折との2回の屈折を起こし、屈折角度は大きくなる。何れも中心部Cの中心軸の方向に向かっての屈折になり、集光する焦点はより液晶レンズ70に近づいた位置に来る。このように、下基板51を凹曲面形状にすると焦点距離を短くすることができる。ここで、下基板51の反りを1μmより小さくすると下基板51を抜けるときの屈折角が小さくなって集光する焦点の位置が余り短くならない。また、反りを20μmより大きくすると可撓性のある下基板51に割れなどの破損が発生する。
【0097】
また、実施例3において、シール材57の厚みは5〜100μmの範囲に設定する。これは、シール材57の厚みを5μmより小さくすると焦点距離の調整範囲が狭くなり、映像が不鮮明になったり、映像範囲が狭くなったりする問題が起きる。また、シール材57の厚みを100μmより大きくするとセルギャップが大きくなり、液晶の応答速度が非常に遅くなると云う問題が起きる。
【0098】
液晶55は誘電率異方性が正のネマティック液晶などが用いられる。
【0099】
実施例3の液晶レンズ70の製造方法は前述の実施形態で説明した製造方法と同じ方法を取るのでここでの説明は省略する。
【0100】
以上の構成を取った液晶レンズ70は、集光の焦点の位置をより短くすることができる。また、上基板61の複数の透明電極、及び、下基板51の透明電極は平板の透明基板上に形成するので形状・寸法は精度良く形成することができる。また、上配向膜34、下配向膜24も平坦面上で形成することから均一な配向処理が得られる。また、構造がシンプルであり製造方法も容易であることから安いコストで製造することかできる。
【実施例4】
【0101】
次に、本発明の実施例4に係る液晶レンズを図6を用いて説明する。図6は本発明の実施例4に係る液晶レンズの要部断面図を示している。尚、実施例4は誘電率異方性が負のネマティック液晶を使用した場合の液晶レンズを示したものである。図6は分かり易くするために少し誇張して描いてある。
【0102】
図6より、実施例4における液晶レンズ90は、上基板81と下基板71との間にシール材77を介して液晶75を封止した構造を取っている。また、レンズ領域の中心部Cの部位にプラスチックボールからなる第1のスペーサ76がUV硬化型樹脂78を介して下基板71に固着して設けられて、上基板81は凸型に反った凸曲面形状をなしている。
【0103】
ここで、シール材77はエポキシ樹脂からなる熱硬化型樹脂77aにシリカボールからなる第2のスペーサ77bが分散したものからなり、シール材77の厚みはこの第2のスペーサ77bの粒径の大きさによって決まり、第2のスペーサ77bの粒径の大きさがシール材77の厚み寸法になっている。また、中心部Cに設けたプラスチックボールからなる第1のスペーサ76の粒径はシール材77の厚みより1〜20μm大きい、即ち、シール材77に分散している第2のスペーサ77bの粒径より1〜20μm大きいものを用いている。従って、上基板81は凸型に1〜20μm反った凸曲面形状をなしている。そして、中心部Cの部位における上下基板81、71のセルギャップはシール材77の厚みより1〜20μm大きくなっている。
【0104】
上基板61は、透明で0.2mm厚の可撓性を有するガラスからなる上透明基板82と、その上透明基板82の下面に設けた透明な円形電極83a、複数の透明な環状電極83b1、83b2、83b3、2つの透明な接続電極(図5には示していない)などの複数の透明電極と、これらの複数の透明電極の表面に設けた上配向膜84とから構成されている。ここでの円形電極83a、環状電極83b1、83b2、83b3、2つの接続電極の形状は前述の実施形態での図1に示した形状を取っており(図1参照)、中心部Cの領域に円形電極83a、その外周域に同心円状に設けた複数の環状電極83b1、83b2、83b3があり、その環状電極83b1、83b2、83b3の一部分に繋げて設けた通路状の開口部の所に設けた2つの接続電極がある。この2つの接続電極の内の1つの接続電極は複数の環状電極83b1、83b2、83b3及び円形電極83aとに接続する接続電極であり、もう1つの接続電極は円形電極83aに接続する接続電極になっている。この2つの接続電極は複数の環状電極や円形電極に電圧を印加するために設けているもので、図示はしていないが、シール材77の外側にまで延設されている。ここで、上透明基板82は可撓性を持たせるために本実施例では0.2mm厚のものを用いているが、0.05〜0.3mmの範囲の中で反り量も加味して適宜に設定するのが好ましい。
【0105】
一番外側にある環状電極83b3を含む内側がレンズ領域になっており、そのレンズ領域の中心に円形電極83aがある。そして、レンズ領域の中心部Cは円形電極83aの中心部にもなっている。また、このレンズ領域は上下基板81、71の外周一周に渡ってシールしたシール材77のほぼ中央部に設けられるようになっている。
【0106】
下基板71は、透明で0.7mm厚の剛性を有するガラスからなる下透明基板72と、下透明基板72の上面に設けた下透明電極73と、この下透明電極73の表面に設けた下配向膜74とから構成されている。ここで、下透明電極73はレンズ領域の全面に渡って設けられ、その外周の一部分に、図示はしていないが、電圧印加するために引き出した引き出し電極がシール材77の外側にまで延設して設けられている。また、この下基板71には、レンズ領域の中心部Cの部位に当たる所にプラスチックボールからなる第1のスペーサ76がUV硬化型樹脂78を介して下基板71に固着して設けられている。
【0107】
ここで、上基板81の上配向膜84は、シランカップリング剤やレシチン、ポリシロキサン、クロム錯体、ポリイミド系垂直配向剤などで形成し、ラビングなどの配向処理を施しており、誘電率異方性が負の液晶分子を基板に対して垂直に配向させる機能を持つている。そして、その配向処理方向は矢印A84で示した方向となっている。一方、下基板71の下配向膜74は、上配向膜84と同様に、シランカップリング剤やレシチン、ポリシロキサン、クロム錯体、ポリイミド系垂直配向剤などで形成し、ラビングなどの配向処理を施しており、誘電率異方性が負の液晶分子を基板に対して垂直に配向させる機能を持つている。そして、その配向処理方向は矢印A74で示した方向となっている。そして、上配向膜84の配向処理方向A84と下配向膜74の配向処理方向A74とが180度異なるように、即ち、逆向きになるようにして上下基板81、71を接合している。また、液晶75は誘電率異方性が負のネマティック液晶が使用される。
【0108】
図6は電圧無印加の状態を示している。誘電率異方性が負のネマティックを用いた場合、電圧無印加の状態においては液晶分子の長軸は、図6に示すように、配向膜84、74の配向方向A84、A74に向かって立った状態になる。上下基板81、71の透明電極に電圧を印加していくと液晶分子の長軸は徐々に倒れていき、最後には基板と平行な状態に寝る状態になる。即ち、長軸の配向方向は基板と平行になる。今ここで、円形電極83aの印加電圧<環状電極83b1の印加電圧<環状電極83b2の印加電圧<環状電極83b3の印加電圧を与えたとき、液晶分子の長軸の立った状態からの傾き具合は円形電極83aの層が僅かな傾きとなり、環状電極83b3の層が一番大きく傾いた状態となる。即ち、液晶分子の長軸の傾き具合は、円形電極83aの層<環状電極83b1の層<環状電極83b2の層<環状電極83b3の層の順で傾きが大きくなる。従って、円形電極83a、環状電極83b1、環状電極83b2、環状電極83b3にそれぞれ異なる電圧を与え、しかも、外側電極に行くに従って電圧を高くすることによって、液晶75の層に入射した光は中心部cの中心軸の方向に向かって進み、焦点に集光する。
【0109】
図6において、上部にある矢印は光の入射方向を示している。第1のスペーサ76にシール材77の厚みよりも1〜20μm大きい、即ち、シール材77に分散した第2のスペーサ77bより1〜20μm大きい粒径のボールを用いることにより、上基板81は凸型に1〜20μm反った凸曲面形状をなす。上基板81に入射した光は上基板81が凸曲面をなしいることによって中心部Cの中心軸の方向に向かって屈折を起こす。そして、その屈折光は液晶75の層に入射する。液晶75に入射した屈折光は液晶分子の長軸の配向方向の向きに沿って進み、液晶75を通過して抜ける。そして更に、下基板71を透過して集光する。従って、上基板81に入射したときに起きる屈折と液晶分子の配向方向に沿って進むことによる屈折との2回の屈折が起き屈折角度は大きくなる。何れも中心部Cの中心軸の方向に向かっての屈折になり、集光する焦点はより液晶レンズ90に近づいた位置に来る。
【0110】
また、第1のスペーサ76はシール材77の厚みよりも1〜20μm大きい粒径のものを用いていることから、上基板81は1〜20μmの範囲で凸型に反る。ここで、反りを1μmより小さくすると上基板81での屈折角が小さくなって集光する焦点距離が余り短くならない。また、反りを20μmより大きくすると可撓性のある上基板81に割れなどの破損が発生する。
【0111】
また、実施例4において、シール材77の厚みは5〜100μmの範囲に設定する。これは、シール材77の厚みを5μmより小さくすると焦点距離の調整範囲が狭くなり、映像が不鮮明になったり、映像範囲が狭くなったりする問題が起きる。また、シール材77の厚みを100μmより大きくするとセルギャップが大きくなり、液晶の応答速度が非常に遅くなると云う問題が起きる。
【0112】
実施例4の液晶レンズは誘電率異方性が負のネマティック液晶を用いたものであるが、前述した実施例1〜3での誘電率異方性が正のネマティック液晶を用いた場合と全く同じ効果を得る。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶レンズの平面図である。
【図2】図1における液晶レンズの要部断面図である。
【図3】本発明の実施例1に係る液晶レンズの要部断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係る液晶レンズの要部断面図である。
【図5】本発明の実施例3に係る液晶レンズの要部断面図である。
【図6】本発明の実施例4に係る液晶レンズの要部断面図である。
【図7】従来技術として特許文献1に示されてところの液晶レンズの平面図である。
【図8】図7における液晶レンズのII−II断面図である。
【符号の説明】
【0114】
1、21、51、71 下基板
2、22、52、72 下透明基板
3、23、53、73 下透明電極
4、24、54、74 下配向膜
5、25、55、75 液晶
7、27、57、77 シール材
7a、27a、57a、77a 熱硬化型樹脂
7b、27b、57b、77b 第2のスペーサ
11、31、61、81 上基板
12、32、62、82 上透明基板
13a、33a、63a、83a 円形電極
13b1、13b2、13b3、33b1、33b2、33b3、63b1、63b2、63b3、83b1、83b2、83b3 環状電極
13c、13d 接続電極
14、34、64、84 上配向膜
16、36、56、66、76 第1のスペーサ
17、37、67、78 UV硬化型樹脂
20、40、50、70、90 液晶レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止した液晶レンズにおいて、前記透明電極によって形成されたレンズ領域は前記一対の上下基板の少なくとも片方の基板が凸型又は凹型に反っていることを特徴とする液晶レンズ。
【請求項2】
平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止した液晶レンズにおいて、前記透明電極によって形成されたレンズ領域の中心部に前記シール材の厚みより厚みの大きい第1のスペーサを有して、前記一対の上下基板の少なくとも片方の基板が凸型に反っていることを特徴とする液晶レンズ。
【請求項3】
平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止した液晶レンズにおいて、前記透明電極によって形成されたレンズ領域の中心部に前記シール材の厚みより厚みの小さい第1のスペーサを有して、前記一対の上下基板の少なくとも片方の基板が凹型に反っていることを特徴とする液晶レンズ。
【請求項4】
前記一対の上下基板の少なくとも片方の基板は可撓性を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項5】
前記一対の上下基板の少なくとも片方の基板は0.05〜0.3mmの厚みであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項6】
前記第1のスペーサは前記一対の上下基板のいずれか一方の基板に固着していることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項7】
前記第1のスペーサは前記シール材の厚みより1〜20μm大きいことを特徴とする請求項2又は6に記載の液晶レンズ。
【請求項8】
前記第1のスペーサは前記シール材の厚みより大きい粒径のスペーサボールであることを特徴とする請求項2又は6に記載の液晶レンズ。
【請求項9】
前記第1のスペーサは前記シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm大きいスペーサボールであることを特徴とする請求項2、6、8のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項10】
前記第1のスペーサは前記シール材の厚みより1〜20μm小さいことを特徴とする請求項3又は6に記載の液晶レンズ。
【請求項11】
前記第1のスペーサは前記シール材の厚みより小さい粒径のスペーサボールであることを特徴とする請求項3又は6に記載の液晶レンズ。
【請求項12】
前記第1のスペーサは前記シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm小さいスペーサボールであることを特徴とする請求項3、6、11のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項13】
前記スペーサボールは1〜3個であることを特徴とする請求項8、9、11、12のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項14】
前記シール材の厚みは5〜100μmであることを特徴とする請求項1乃至3、及び請求項7乃至12のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項15】
前記シール材の厚みは5〜100μmであり、前記レンズ領域の中心部における前記一対の上下基板のギャップは6〜120μmであることを特徴とする請求項1又は2、又は請求項7乃至9のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項16】
前記シール材の厚みは5〜100μmであり、前記レンズ領域の中心部における前記一対の上下基板のギャップは4〜80μmであることを特徴とする請求項1又は3、又は請求項10乃至12のいずれか1項に記載の液晶レンズ。
【請求項17】
平板からなる透明基板上に少なくとも透明電極を設けた一対の上下基板の間にシール材を介して液晶を封止する液晶レンズの製造方法において、
前記一対の上下基板のいずれか片方の基板にスクリーン印刷法で第1のスペーサを印刷する工程と、
前記第1のスペーサを基板に固着する工程と、
前記一対の上下基板のいずれか片方の基板にシール材を印刷する工程と、
前記第1のスペーサを固着し、前記シール材を印刷した上下の基板を重ね合わせ、加圧・加熱処理を行って上下の基板を接合する工程と、
前記シール材の液晶注入口から真空注入方法で液晶を注入する工程と、
前記シール材の液晶注入口を封口する工程と、
を有することを特徴とする液晶レンズの製造方法。
【請求項18】
前記第1のスペーサの印刷は、前記透明電極によって形成されたレンズ領域の中心部であることを特徴とする請求項17に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項19】
前記一対の上下基板の少なくとも片方の基板は可撓性を有することを特徴とする請求項17に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項20】
前記一対の上下基板の少なくとも片方の基板は0.05〜0.3mmの厚みであることを特徴とする請求項17又は19に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項21】
前記第1のスペーサは前記シール材の厚みより大きい粒径のスペーサボールであることを特徴とする請求項17又は18に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項22】
前記第1のスペーサは前記シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm大きいスペーサボールであることを特徴とする請求項17又は18に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項23】
前記第1のスペーサは前記シール材の厚みより小さい粒径のスペーサボールであることを特徴とする請求項17又は18に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項24】
前記第1のスペーサは前記シール材の中に分散している第2のスペーサの粒径より1〜20μm小さいスペーサボールであることを特徴とする請求項17又は18に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項25】
前記スペーサボールは1〜3個であることを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載の液晶レンズの製造方法。
【請求項26】
前記シール材の厚みは5〜100μmであることを特徴とする請求項17又は請求項21乃至24のいずれか1項に記載の液晶レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−293241(P2006−293241A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117612(P2005−117612)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】