説明

液晶化合物およびLC媒体

【課題】高い複屈折率と同時に広いネマチック相、低い回転粘度及び高い比抵抗を有する液晶化合物およびLC媒体を提供する。
【解決手段】例えば下式で例示される新規な液晶化合物と、それを調製するための方法および中間体と、光学的、電気光学的および電子的目的のため、特に、液晶(LC)媒体およびLCディスプレイのためにそれらを使用することと、それに含まれるLC媒体およびLCディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な液晶化合物、それを調製するための方法および中間体、光学的、電気光学的および電子的目的のため、特に、液晶媒体(LC媒体)および液晶ディスプレイ(LCディスプレイ)のためのそれらの使用、並びにそれに含まれるLC媒体およびLCディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は、印加された電圧によって、そのような物質の光学的特性を変化させることができるため、主にディスプレイ装置の中の誘電体として使用されている。液晶に基づく電気光学的装置は当業者に極めて良く知られており、種々の効果に基づくことができる。そのような装置の例としては、動的散乱を有するセル、DAP(整列相の変形:Deformation of Aligned Phases)セル、ゲスト/ホストセル、ツイストネマチック構造を有するTNセル、STN(スーパーツイストネマチック:Supertwisted Nematic)セル、SBE(超複屈折効果:Superbirefringence Effect)セルおよびOMI(光学モード干渉:Optical Mode Interference)セルがある。最も一般的なディスプレイ装置はSchadt−Helfrich効果に基づき、ツイストネマチック構造を有する。加えて、例えばIPS(面内スイッチング:In−Plane Switching)セルなどの、基体および液晶面に平行な電界で動作するセルもある。現在のところ商業的には、特に、TN、STNおよびIPSセルが本発明による媒体のための用途において興味ある分野である。
【0003】
液晶材料としては、良好な化学的および熱的安定性および電界および電磁線放射に対して優れた安定性を有していなければならない。更に、液晶材料は低粘度であり、セル中で、短アドレス時間、低閾電圧および高コントラストを生み出すものでなければならない。
【0004】
液晶材料は、更に、通常の動作温度において、即ち、室温より上および下の出来る限り広い範囲において、適切な中間相、例えば上記のセル用のネマチック中間相を有していなければならない。液晶は一般に複数成分の混合物として使用されるため、成分が互いに容易に混和することが重要である。導電性、誘電異方性および光学異方性などの更なる特性は、セルの型および用途分野に応じて、種々の要求を満足しなければならない。例えば、ツイストネマチック構造を有するセル用の材料は、正の誘電異方性および低い導電率を有していなければならない。
【0005】
例えば、個々のピクセルのスイッチングのために集積非線形素子を有するマトリックス型液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)については、大きな正の誘電異方性、広いネマチック相、比較的小さな複屈折率、非常に高い比抵抗、優れたUVおよび温度安定性および低い蒸気圧を有する媒体が望まれる。
【0006】
この型のマトリックス型液晶ディスプレイは既知である。それぞれのピクセルを個々にスイッチングするために使用できる非線形素子の例は、アクティブ素子(即ち、トランジスター)である。そして、使用される用語「アクティブマトリックス」は、2つの型に区別できる:
1.基板としてのシリコンウエハー上のMOS(金属酸化物半導体:Metal Oxide Semiconductor)または他のダイオード、
2.基板としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT:Thin−Film Transistor)。
【0007】
基板材料として単結晶シリコンを使用すると、色々な部品ディスプレイのモジュール組み立て品であっても接続部での問題が生じるため、ディスプレイの大きさが制限される。
【0008】
好適であってより有望な第2の型の場合には、使用される電気光学的効果は、通常、TN効果である。区別される2つの技術がある:例えばCdSeなどの化合物半導体を含むTFTと、多結晶またはアモルファスシリコンに基づいたTFTである。後者の技術について、世界的に集中した研究がなされている。
【0009】
TFTマトリックスは、ディスプレイの一方のガラス板の内面に形成され、もう一方のガラス板は、内面に透明な対向電極を有する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。この技術は、フルカラー対応のディスプレイにも拡張でき、このディスプレイでは、フィルター素子がスイッチング可能なピクセルの各々に対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置される。
【0010】
TFTディスプレイは、通常、透過光に対して直交した偏光板を備えたTNセルとして作動し、バックライトで照らされる。
【0011】
本明細書において用語「MLCディスプレイ」は、集積非線形素子を備えた任意のマトリックスディスプレイを包含し、即ち、アクティブマトリックスに加えて、バリスターまたはダイオード(MIM、即ち、metal−insulator−metal)などのパッシブ素子を備えたディスプレイも包含する。
【0012】
この型のMLCディスプレイは、特にテレビ用途(例えばポケットテレビ)またはコンピュータ用(ラップトップ)および自動車または航空機内で使用される高度情報表示装置に適している。コントラストの角度依存性と応答時間に関する問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、液晶混合物の比抵抗が十分に高くないことに起因する問題もある[TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、第A210〜288号、「Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings」、第141ff頁、パリ(非特許文献1);STROMER,M.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、「Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays」、第145ff頁、パリ(非特許文献2)]。抵抗の低下に伴い、MLCディスプレイのコントラストが劣化し、また、残像消去の問題も生じ得る。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命に全体に渡って低下するので、許容される耐用年数を得るためには、高い(初期)抵抗を有することが非常に重要である。特に、低電圧用混合物の場合には、非常に高い抵抗値を達成することは従来不可能であった。更に、温度の上昇および加熱および/またはUV照射後に、比抵抗が可能な限り小さい低下を示すことも重要である。また、先行技術からの混合物の低温特性も特に不都合である。低温であっても、結晶および/またはスメクチック相が生じないことが要求され、粘性の温度依存性も可能な限り低いことが要求される。よって、先行技術からのMLCディスプレイは今日の必要条件を満たさない。
【0013】
テレビおよびビデオ用途向けには、応答時間が短いディスプレイが必要である。そのような短い応答時間は、特に低い値の粘度、特に回転粘度γを有する液晶媒体を使用することで達成できる。しかしながら、希釈添加剤は一般に透明点を低下させ、よって媒体の動作温度範囲が減少する。
【0014】
よって、非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、低温でも短い応答時間および低い閾電圧を有しており、これらの不都合を有していないか、有していたとしてもより少ない程度であるMLCディスプレイが引き続き強く要求されている。
【0015】
TN(Schadt−Helfrich)セルの場合、セル中で次の利点を容易にする媒体が望まれる:
−広げられたネマチック相範囲(特に、低い温度まで)、
−極度に低い温度でのスイッチ能力(屋外用途、自動車、航空)、
−UV照射に対する増大された抵抗(より長い寿命)、
−低い閾電圧。
【0016】
先行技術から入手可能な媒体では、これらの利点を、同時に他のパラメーターを保持しながら達成することはできない。
【0017】
スーパーツイスト型(STN)セルの場合には、より大きな時分割駆動および/またはより低い閾電圧および/またはより広いネマチック相範囲(特に、低温において)を容易にする媒体が望まれる。この目的のために、利用可能なパラメーターの範囲(透明点、スメクチック−ネマチック相転移または融点、粘度、誘電パラメーター、弾性パラメーター)を一層広げることが、至急望まれている。
【0018】
テレビおよびビデオ用途(例えば、LCD TV、モニター、PDA、ノート型パソコン、ゲーム器コンソール)用のLCディスプレイの場合、応答時間が著しく短縮されていることが望まれる。従って、応答時間の短縮を促進し、同時に、例えば、透明点、誘電異方性Δεまたは複屈折率ΔnなどのLC媒体の他の特性を損なわないLC媒体用の化合物に対する要求がある。この目的のためには、低い回転粘度が特に望まれる。
【0019】
正の誘電異方性を有するLC媒体の用途の場合、速い応答時間が一般に要求される。理論的にはLCセル中のLC媒体の層厚dを低減すると、結果として応答時間が短くなることが知られている。従って、この目的のためには、充分な光学遅延d・Δnを確保するために、比較的高い複屈折率の値Δnを有するLC媒体が要求される。しかしながら、一方で、典型的には、比較的高い複屈折率の値を有するLC媒体は回転粘度の値も比較的高く、結果として今度は応答時間がより長くなってしまう。よって、層厚を低減することで達成される応答時間の短縮は、使用されるLC媒体の比較的高い回転粘度によって、再び少なくとも部分的には相殺されてしまう。
【0020】
従って、高い複屈折率値および低い回転粘度を同時に有するLC化合物およびLC媒体に対する至急の要求がある。
【0021】
本発明は、特にこの型のMLC、TN、STNまたはIPSディスプレイ用で、上で示される望ましい特性を有し、上記の不具合を示さないか、示しても低減されているLC化合物およびLC媒体を提供する目的に基づいている。特に、本発明によるLC化合物およびLC媒体は、速い応答時間および低い回転粘度と同時に高い誘電異方性および複屈折率を有していなければならない。加えて、LC媒体は、高い透明点、広いネマチック相範囲および低い閾電圧を有していなければならない。
【0022】
今回、アルキニルフェニルビシクロヘキシル誘導体に基づくLC化合物をLC媒体およびLCディスプレイ中で使用すれば、この目的を達成できることが見出された。これらの化合物によって、上に示される所望の特性を有するLC媒体が結果として得られる。
【0023】
ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)には、以下の一般式のアルキニル化合物が開示されている。
【0024】
【化1】

式中、Bは1,4−フェニレンまたは1,4−シクロヘキサンを表し、Aは1〜3個の6員環を有する基を表す。Rは、とりわけ、1〜9個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基でよい。Rは、水素、シアノまたは1〜7個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基である。
【0025】
ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)によれば、特に好ましい化合物は骨格中に2個以下の環を有するものである。
【0026】
加えて、ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)では、環Bが基Aと共に、例えば以下の式の中央単位を構成してもよい好ましい化合物が開示されている。
【0027】
【化2】

式中、環A、AおよびBの一つは1,4−フェニレンを表し、残りは1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−二置換シクロヘキサンを表す。好ましい例として、ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)はサブ式XXVIの化合物を与えている。
【0028】
【化3】

式中、環BおよびCは1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−二置換シクロヘキサンを表し、RおよびRは上で示される意味を有する。しかしながら、具体的な例は開示されていない。
【0029】
更に、ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)には、以下の一般式中の基RがCNを表す多数のニトリル化合物が開示されている。
【0030】
【化4】

しかしながら、ニトリル化合物および特にアルキニルニトリル化合物では電圧保持率(VHR)に劣る結果となり、よって液晶混合物の信頼性に劣る結果となるため、最新のAMディスプレイで使用するには適さない。
【0031】
液晶化合物に要求される主なものは、透明点に対する回転粘度の良好な比である。更に、この要求と透明点の高い絶対値とを組み合わせた個々の化合物が要求される。しばしば、このことは、骨格が3個以上の環式単位を有する化合物(「3環式化合物」)によってのみ達成できる。
【0032】
しかしながら、ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)においては、骨格中に2環式単位を有する化合物が特に好ましい。このために示された例示化合物は、絶対透明点は十分に高い値を示さない。
【0033】
ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)において言及された所謂3環式化合物のわずかな例も、同様に比較的低い透明点を有し、加えて、相特性に劣る。よって、例えば、ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)において開示される以下の式の化合物は広い範囲にわたってスメクチックであり、透明点は比較的低い。
【0034】
【化5】

事実、ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)において開示される以下の式の化合物は、液晶挙動を全く示さない。
【0035】
【化6】

ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報(特許文献1)において好ましいサブ式XXVIより誘導される可能性のある化合物は、十分に安定な(特に、UV−安定な)液晶化合物または透明点に対する回転粘度の良好な比を有する化合物を与えるには適切でないか、適切性に劣るものであることが同様に見出された。
【0036】
【化7】

この式XXVIにおけるBが、例えば1,4−フェニレン単位を表す場合、ビフェニルアセチレンが得られる。これらの化合物は、例えばフェニルアセチレンよりもUV−安定性が著しく低く、このため信頼性に劣る結果となり、一般に最新のAM用途向けには使用できない。環BおよびがCが1,4−フェニレン単位を表すサブ式XXVIの化合物ですら、劣った安定性を示す。
【0037】
これとは対照的に、アルキニル基がトランス−1,4−シクロヘキシレン単位に結合していると、透明点が低く、透明点に対する回転粘度の比が全体として更に悪い化合物が得られる。
【0038】
欧州特許第0 501 268号明細書(特許文献2)には、下の一般式の化合物が記載されている。
【0039】
【化8】

式中、環Bは2,3−ジフルオロフェニレン単位を表す。環AおよびCは、互いに独立に、とりわけ、1,4−フェニレンと等しくなることができ、または、トランス−1,4−二置換シクロヘキサンを表すことができる。パラメータmおよびnは、0、1または2を表すことができ、ただし、m+nの合計は1または2である。基RおよびRは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル鎖を表すことができる。
【0040】
しかしながら、フッ素化されていない化合物と比較して、一般に、横方向のフッ素化により、場合によっては、絶対透明点の著しい低下が引き起こされることが見出され、それは、より狭いネマチック相が得られることを意味する。加えて、横方向のフッ素化により、一般に、回転粘度が追加的に増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第32 46 440号公報
【特許文献2】欧州特許第0 501 268号明細書
【非特許文献】
【0042】
【非特許文献1】TOGASHI,S.、SEKIGUCHI,K.、TANABE,H.、YAMAMOTO,E.、SORIMACHI,K.、TAJIMA,E.、WATANABE,H.およびSHIMIZU,H.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、第A210〜288号、「Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings」、第141ff頁、パリ
【非特許文献2】STROMER,M.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、「Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays」、第145ff頁、パリ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
よって、高い複屈折率と同時に広いネマチック相、低い回転粘度および高い比抵抗を有するLC化合物およびLC媒体に対する多大な要求が引き続いてある。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明は、式Iの化合物に関する。
【0045】
【化9】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
およびRは、H、F、Cl、Br、−CN、−SCN、−NCS、SFまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接つながらないようにして、−CH=CH−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはBrで置き換えられていてもよい。)、またはP−Sp−を表し、
Pは、重合性基を表し、
Spは、スペーサー基または単結合を表し、
は、それぞれの出現において、同一または異なって、フェニレン−1,4−ジイル(ただし、1個または2個のCH基はNで置き換えられていてもよく、1個以上のH原子は、ハロゲン、CN、CH、CHF、CHF、OCH、OCHFまたはOCFで置き換えられていてもよい。)、シクロヘキサン−1,4−ジイル(ただし、1個または2個の隣接していないCH基は、互いに独立に、Oおよび/またはSで置き換えられていてもよく、1個以上のH原子はFで置き換えられていてもよい。)、シクロヘキセン−1,4−ジイル、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを表し、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−C−、−C−、−CFCH−、−CHCF−、−CFHCFH−、−CFHCH−、−CHCFH−、−CFCFH−、−CFHCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−または単結合を表し、および
mは、0、1、2または3を表す。
【0046】
本発明は、更に、式Iの1種類以上の化合物を含むLC媒体に関し、好ましくは2種類以上化合物、好ましくは液晶性またはメソゲン性である化合物、を含む媒体に関する。LC媒体は、好ましくは、ネマチックである。
【0047】
本発明は、更に、式Iの化合物を調製するための新規な方法と、そこで得られるかまたは使用される中間体とに関する。
【0048】
本発明は、更に、電気光学的ディスプレイ、特にLCディスプレイにおける本発明による式Iの化合物およびLC媒体の使用に関する。
【0049】
本発明は、更に、本発明による式Iの1種類以上の化合物またはLC媒体を含有するLCディスプレイ、特に、MLC、TN、STNまたはIPSディスプレイに関する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
式Iの化合物において、mは、好ましくは、0、1または2、特に好ましくは、0または1、非常に特に好ましくは、0である。
【0051】
は、好ましくは、以下の基より選択される。
【0052】
【化10】

は、特に好ましくは、トランス−1,4−シクロヘキシレンを表す。
【0053】
およびZは、好ましくは、単結合を表す。ZおよびRの定義は、O原子が隣接しないように共同して選択される。
【0054】
は、好ましくは、H、F、Cl、Br、CN、NCS、SF、CF、OCF、OCHF、更には、1〜8個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシまたは2〜6個のC原子を有するアルケニルまたはアルキニルを表し、ただし、これらの基は、ハロゲン、好ましくはFにより単置換または多置換されていてもよく、加えて、これらの基において1個以上の隣接していないCH基はOまたはSで置き換えられていてもよい。
【0055】
は、特に好ましくは、H、1〜5個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシまたは2〜6個のC原子を有するアルケニルを表す。
【0056】
は、好ましくは、H、1〜8個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシまたは2〜6個のC原子を有するアルケニルまたはアルキニルを表し、ただし、これらの基は、ハロゲン、好ましくはFにより単置換または多置換されていてもよく、加えて、これらの基において1個以上の隣接していないCH基はOまたはSで置き換えられていてもよい。
【0057】
は、特に好ましくは、Hまたは1〜5個のC原子、特には1〜3個のC原子を有するアルキル、非常に特に好ましくは、メチルを表す。
【0058】
アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは、それぞれ直鎖状でも分岐状でもよい。特に好ましくは、直鎖状のアルキル基である。
【0059】
およびRは、特に好ましくは、それぞれ互いに独立に、アルキル、好ましくは、1〜5個のC原子を有する直鎖状のアルキルを表す。
【0060】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチルである。
【0061】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニルおよびペンテニルである。
【0062】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルおよびオクチニルである。
【0063】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプトキシおよびn−オクトキシである。
【0064】
ハロゲンは、好ましくは、FまたはClを表す。
【0065】
キラルドーパントが存在しなければアキラルなLC相を有するLC媒体、および、基Z1、2、A、R1、2がキラル中心を有していない式Iの化合物が一般に好ましい。
【0066】
重合性基Pは、例えば、フリーラジカルまたはイオン連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応、または、例えば主鎖上への縮合または付加などの高分子類似反応に適切な基である。連鎖重合のための基、特には、C=C二重結合またはC≡C三重結合を含有するもの、および、例えば、オキセタンまたはエポキシド基などの開環重合に適切な基が特に好ましい。
【0067】
好ましい基Pは、CH=CW−COO−、CH=CW−CO−、
【0068】
【化11】

CH=CW−(O)k3−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−より選択され、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルを表し、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Cl、1〜5個のC原子を有するアルキルを表し、Pheは、上に定義される通りの1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、k、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、kは、好ましくは、1を表す。
【0069】
特に好ましい基PはCH=CW−COO−で、特には、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−およびCH=CF−COO−、更には、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、
【0070】
【化12】

である。
【0071】
非常に特に好ましい基Pは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシドである。
【0072】
上および下において「Sp」とも言われる用語「スペーサー基」は当業者に既知であり、文献に記載されている、例えば、Pure Appl.Chem.第73巻(第5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、第116巻、第6340〜6368頁参照。他に示さない限り、上および下で用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、重合性液晶またはメソゲン化合物中のメソゲン基と重合性基(1個または複数個)を互いに連結する柔軟な基を表す。
【0073】
好ましいスペーサー基Spは、基P−Spが式P−Sp’−X’−に対応するように式Sp’−X’より選択され、
式中、
Sp’は、1〜20個のC原子、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレンを表し、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで単置換または多置換されていてもよく、ただし加えて、Oおよび/またはS原子が互いに直接つながらないようにして、それぞれ互いに独立に、1個以上の隣接していないCH基が、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00000−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR00−CO−O−、−O−CO−NR00−、−NR00−CO−NR00−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR00−、−NR00−CO−、−NR00−CO−NR00−、−OCH−、−CHO−、−SCH−,−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合を表し、
00およびR000は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、および
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表す。
【0074】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−または単結合である。
【0075】
典型的な基Sp’は、例えば、−(CHP1−、−(CHCHO)q1−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−、−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00000−O)p1−で、式中、p1は1〜12の整数であり、q1は1〜3の整数であり、R00およびR000は上で示される意味を有する。
【0076】
特に好ましい基−X’−Sp’−は、−(CHp1−、−O−(CHp1−、−OCO−(CHp1−、−OCOO−(CHp1−である。
【0077】
特に好ましい基Sp’は、例えば、それぞれの場合で直鎖状のエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0078】
式Iの特に好ましい化合物は、以下のサブ式より選択される。
【0079】
【化13】

式中、RおよびRは上および下で示される意味を有し、Rは、Hまたは1〜4個のC原子を有するアルキルを表す。そこにおいて、RおよびRは、好ましくは、1〜12個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシ、特に好ましくは、1〜5個のC原子を有するフッ素化されていてもよいアルキル、アルケニルまたはアルキニルを表す。
【0080】
式Iの化合物は、当業者に既知の方法、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載される方法に類似して調製できる。
【0081】
式Iの化合物を調製するための特に好ましい方法を下に示す。そこで示されるスキームは、これらの方法を制限することなく、これらの方法を図解することを意図している。そこで、R、A、Zおよびmは、式Iで示される意味を有する。
【0082】
式Iの化合物の好ましい合成のための中心的な中間体は化合物6である。これらの中間体は、好ましくは、スキーム1で記載される通りに調製される。
【0083】
【化14】

1,4−ジブロモベンゼン1より得られる有機リチウム化合物2をケトン3上に付加し、アルコール4を与える。脱水後に形成されるアルケン5を水素化し、結果として得られる混合物をNMP中でカリウムtert−ブトキシドを使用して異性化し、化合物6の好ましい異性体を与える。
【0084】
次いで、スキーム2に例として示される通り、適切なアルキン7に対する薗頭カップリングによって、アルキニル側鎖を導入する。
【0085】
【化15】

また、トリメチルシリルアセチレンを用いて薗頭カップリングを行うこともできる。次いで、スキーム3に例として示される通り、化合物9より出発して更なる官能化が可能である。
【0086】
【化16】

メタノール中でアセチレン9を炭酸カリウムと反応させて、化合物10を与える(Zが単結合で、RがHであるI化合物に対応)。これは、形式的には、アセチレンに対する化合物6の薗頭カップリング生成物に対応している。適切な塩基を使用して、これらの末端アセチレンを脱プロトン化でき、対応するアセチリド11を与える(ここでは、化合物10のリチウムアセチリド)。例えば、適切なアルキル化剤を使用するアルキル化により、これらの中間体を更に官能化できる。スキーム4に例として示される通り、例えば、ヨウ化アルキル(R−I)を使用する適切な条件下で、これを行うことができる。
【0087】
【化17】

スキーム5に例として示される通り、化合物10のハロゲン化アルキルを使用する更に可能な官能化は熊田−コリュー反応である。変法が文献に記載されている(L.−M−Yang、L.−F.Huang、T.−Y.Luh、Org.Lett.2004年、第6巻、第1461〜1463頁)。
【0088】
【化18】

示されている反応スキームは、単に例示と見なされるべきである。提示されたスキームの対応する変法を当業者は実行でき、式Iの化合物を得るための他の適切な合成経路に従うこともできる。
【0089】
本発明は、更に、上および下で記載される方法およびそこで生成または使用される新規の中間体に関し、本発明による式Iの化合物を調製するために、それらを使用することに関する。
【0090】
以下の工程(a〜f1、またはa〜eおよびf2〜i2、またはa〜eおよびf2〜h2およびi3)を含む、式Iの化合物を調製するための方法が特に好ましい:
a)1,4−ジハロベンゼン、好ましくは、1,4−ジブロモベンゼンの一方のハロゲン位を、好ましくは、有機金属反応剤、例えば、アルキルリチウム化合物を使用してメタル化する工程と、
b)工程a)で得られた有機金属化合物を、式:
【0091】
【化19】

のケトン上に付加する工程と、
c)工程b)で得られたアルコールを脱水する工程と、
d)工程c)で得られたアルケンを水素化する工程と、
e)任意工程として、工程d)で得られた混合物を異性化して、式:
【0092】
【化20】

の好ましい異性体(ビシクロヘキシル基のトランス−トランス異性体)を与える工程と、
f1)工程e)で得られたハロゲン化合物を、RおよびZが式Iで示される意味を有する式HC≡C−Z−Rの適切なアルキンに対して薗頭カップリングする工程と、
または
f2)工程e)で得られたハロゲン化合物を、トリアルキルシリルアセチレンに対して薗頭カップリングする工程と、
g2)工程f2)で得られたアセチレンを脱シリル化する工程と、
h2)塩基を使用して、工程g2)の末端アセチレンを脱プロトン化する工程と、
i2)工程h2)で得られたアセチリドを、アルキル化剤、例えば式R−Iのヨウ化アルキルを使用してアルキル化する工程と、
または
i3)工程h2)で得られたアセチリドを、熊田−コリュー反応において、ハロアルカンと反応させる工程とを含み、
ただし、R、AおよびZは式Iで示される意味を有し、Halはハロゲンを表す。
【0093】
本発明による特に好ましいLC媒体を下に述べる。
【0094】
−式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0095】
【化21】

式中、
Aは、1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−シクロヘキシレンを表し、
aは、0または1であり、
は、2〜9個のC原子を有するアルケニルを表し、および
は、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接つながらないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキルまたは2〜9個のC原子を有するアルケニルを表す。
【0096】
式IIの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0097】
【化22】

式中、R3aおよびR4aは、それぞれ互いに独立に、H、CH、CまたはCを表し、および「alkyl」は、1〜8個、好ましくは、1個、2個、3個、4個または5個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。特に好ましくは、式IIaおよびIIfの化合物、特に式中、R3aがHまたはCH、好ましくはHを表すもの、および式IIcの化合物、特に式中、R3aおよびR4aがH、CHまたはCを表すものである。
【0098】
式IIIの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0099】
【化23】

式中、「alkyl」およびR3aは上で示される意味を有し、R3aは、好ましくは、HまたはCHを表す。式IIIbの化合物が特に好ましい。
【0100】
−以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0101】
【化24】

式中、
は、1〜15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接つながらないようにして、−C≡C−、−CFO−、−CH=CH−、
【0102】
【化25】

−O−、−CO−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子はハロゲンによって置き換えられていてもよく、
は、F、Cl、CN、SF、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
1〜6は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、
は、−C−、−(CH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−CFO−または−OCF−を表し、式VおよびVI中では単結合を表してもよく、および
bおよびcは、互いに独立に、0または1を表す。
【0103】
式IV〜VIIIの化合物において、Xは、好ましくは、FまたはOCF、更には、OCHF、CF、CFH、Cl、OCH=CFを表す。Rは、好ましくは、それぞれ6個までのC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルケニルである。
【0104】
式IVの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0105】
【化26】


式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。
【0106】
好ましくは、式IV中のRは1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、Xは、F、Cl、OCHFまたはOCF、更には、OCH=CFを表す。式IVbの化合物において、Rは、好ましくは、アルキルまたはアルケニルを表す。式IVdの化合物において、Xは、好ましくは、Cl、更には、Fを表す。
【0107】
−式Vの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0108】
【化27】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、式V中のRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、XはFを表す。
【0109】
−式VI−1の1種類以上の化合物を含むLC媒体。
【0110】
【化28】

特に好ましくは、以下の式から成る群より選択されるものである。
【0111】
【化29】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、式VI中のRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、Xは、F、更にはOCFを表す。
【0112】
−式VI−2の1種類以上の化合物を含むLC媒体。
【0113】
【化30】

特に好ましくは、以下の式から成る群より選択されるものである。
【0114】
【化31】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。
【0115】
好ましくは、式VI中のRは1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、XはFを表す。
【0116】
−好ましくは、Zが−CFO−、−CHCH−または−COO−を表す式VIIの1種類以上の化合物を含み、特に好ましくは、以下の式から成る群より選択されるものであるLC媒体。
【0117】
【化32】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、式VII中のRは1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、XはF、更にはOCFを表す。
【0118】
式VIIIの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0119】
【化33】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。Rは、好ましくは、1〜8個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、Xは、好ましくは、Fを表す。
【0120】
−以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0121】
【化34】


式中、R、X、YおよびYは、上で示される意味を有し、および
【0122】
【化35】

は、それぞれ互いに独立に、
【0123】
【化36】

を表し、
ただし、環AおよびBは同時にはシクロヘキシレンを表さない。
【0124】
式IXの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0125】
【化37】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、Rは1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、XはFを表す。式IXaの化合物が特に好ましい。
【0126】
−以下の式からなる群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0127】
【化38】

式中、R、XおよびY1〜4は上で示される意味を有し、および
【0128】
【化39】

は、それぞれ互いに独立に、
【0129】
【化40】

を表す。
【0130】
式XおよびXIの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0131】
【化41】

【0132】
【化42】

式中、RおよびXは上で示される意味を有する。好ましくは、Rは1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、XはFを表す。特に好ましい化合物は、YがFを表し、YがHまたはF、好ましくはFを表すものである。
【0133】
−以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0134】
【化43】

式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、それぞれ9個までのC原子を有するn−アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜8個のC原子を有するアルキルを表す。Yは、HまたはFを表す。
【0135】
式XIIの好ましい化合物は、以下の式から成る群より選択されるものである。
【0136】
【化44】

式中、
alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、および
alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0137】
−以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0138】
【化45】

式中、R、X、YおよびYは上で示される意味を有する。好ましくは、Rは1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、XはFまたはClを表す。
【0139】
式XIII〜XVの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0140】
【化46】


式中、RおよびXは上で示される意味を有する。Rは、好ましくは、1〜8個のC原子を有するアルキルを表す。式XIIIの化合物中、Xは、好ましくは、FまたはClを表す。
【0141】
−式D1および/またはD2の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0142】
【化47】

式中、Y、Y、RおよびXは上で示される意味を有する。好ましくは、Rは1〜8個のC原子を有するアルキルを表し、XはFを表す。以下の式の化合物が、特に好ましい。
【0143】
【化48】

式中、Rは上で示される意味を有し、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルを表し、特には、C、n−Cまたはn−C11である。
【0144】
−以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0145】
【化49】

式中、Y、RおよびRは上で示される意味を有する。RおよびRは、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜8個のC原子を有するアルキルを表す。
【0146】
−以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0147】
【化50】

式中、X、YおよびYは上で示される意味を有し、「alkenyl」はC2〜7アルケニルを表す。以下の式の化合物が、特に好ましい。
【0148】
【化51】

式中、R3aは上で示される意味を有し、好ましくはHを表す。
【0149】
−式XIX〜XXVから成る群より選択される1種類以上の四環化合物を追加的に含むLC媒体。
【0150】
【化52】


式中、Y1〜4、RおよびXは、それぞれ互いに独立に、上で示される意味の1つを有する。Xは、好ましくは、F、Cl、CF、OCFまたはOCHFである。Rは、好ましくは、それぞれ8個までのC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表す。
【0151】
−以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0152】
【化53】

式中、R、XおよびY1〜4は上で示される意味を有する。以下の式の化合物が特に好ましい。
【0153】
【化54】

−以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0154】
【化55】

式中、RおよびY1〜3は上で示される意味を有する。以下の式の化合物が特に好ましい。
【0155】
【化56】

式中、Rは上で示される意味を有し、好ましくは、それぞれ8個までのC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表す。
【0156】
−以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体。
【0157】
【化57】

式中、Rは上で示される意味を有し、好ましくは、2〜5個のC原子を有する直鎖状のアルキルであり、dは0または1、好ましくは、1を表す。好ましい混合物は、この(これらの)化合物(1種類または多種類)を3〜30質量%、特には、5〜20質量%で含む。
【0158】

【0159】
【化58】

−Rは、好ましくは、2〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルケニルである。
【0160】
−Xは、好ましくは、F、更には、OCF、ClまたはCFである。
【0161】
−媒体は、好ましくは、式Iの1種類、2種類または3種類の化合物を含む。
【0162】
−媒体は、好ましくは、式I、II、III、VI−2、XI、XII、XIII、XIV、XXIVおよびXXVIの化合物群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0163】
−媒体は、好ましくは、それぞれの場合で、式VI−2、VII−1a/b、IX、X、XI、XXVおよびXXVIの1種類以上の化合物を含む。
【0164】
−媒体は、好ましくは、式Iの化合物を1〜25質量%、好ましくは1〜20質量%含む。
【0165】
−混合物全体における式II〜XXVIIIの化合物の割合は、好ましくは、20〜99質量%である。
【0166】
−媒体は、好ましくは、式IIおよび/またはIIIの化合物を25〜80質量%、特に好ましくは30〜70質量%含む。
【0167】
−媒体は、好ましくは、式IIaの化合物、特にR3aがHを表す化合物を20〜70質量%、特に好ましくは25〜60質量%含む。
【0168】
−媒体は、好ましくは、式VI−2の化合物を2〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%含む。
【0169】
−媒体は、式XIの化合物を2〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%含む。
【0170】
−媒体は、好ましくは、式XXVIの化合物を1〜25質量%、特に好ましくは2〜20質量%含む。
【0171】
たとえ比較的少ない割合であっても式Iの化合物を、従来の液晶材料、しかしながら特に式II〜XXVIIIの1種類以上の化合物と混合することにより、結果として光安定性が著しく増加し複屈折率の値が低くなり、同時に低いスメクチック−ネマチック転移温度を有する広いネマチック相が観察され、貯蔵安定性が改良されることが判明した。同時に、混合物は、非常に低い閾電圧およびUVに曝露した際に非常に優れるVHRの値を示す。
【0172】
用語「アルキル」または「アルキル」は、本出願において、1〜7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルキル基を包含し、特に、直鎖状の基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。1〜6個の炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0173】
用語「アルケニル」または「アルケニル」は、本出願において、2〜7個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状のアルケニル基、特に直鎖状の基を包含する。好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特にC〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までの炭素原子を有する基が、一般に好ましい。
【0174】
用語「フルオロアルキル」は、本出願において、少なくとも1個のフッ素を含有する直鎖状の基を包含し、好ましくは、末端フッ素であり、即ち、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルである。しかしながら、フッ素の他の位置を除外するものではない。
【0175】
用語「オキサアルキル」または「アルコキシ」は、本出願において、式C2n+1−O−(CHの直鎖状の基を包含し、ただし、nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6を表す。mは0を表してもよい。好ましくは、nが1でmが1〜6であるか、mが0でnが1〜3である。
【0176】
上および下において式中のRがアルキル基および/またはアルコキシ基を表している場合、これは直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、2個、3個、4個、5個、6個または7個のC原子を有しており、従って、好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシまたはヘプチルオキシを表し、更に、メチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、メトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシを表す。
【0177】
オキサアルキルは、好ましくは、直鎖状の2−オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2−(即ち、エトキシメチル)または3−オキサブチル(即ち、メトキシエチル)、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニル、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0178】
がアルキル基を表し、その中でCH基が−CH=CH−で置き換えられている場合、これは直鎖状または分岐状のいずれでも構わない。それは、好ましくは、直鎖状で、2〜10個のC原子を有している。従って、それは、特に、ビニル、プロパ−1−または−2−エニル、ブタ−1−、−2−または−3−エニル、ペンタ−1−、−2−、−3−または−4−エニル、ヘキサ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−エニル、ヘプタ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−エニル、オクタ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−または−7−エニル、ノナ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−エニル、デカ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−、−8−または−9−エニルを表す。また、これらの基は、単ハロゲン化または多ハロゲン化されていてもよい。
【0179】
がアルキルまたはアルケニル基を表し、それがハロゲンによって少なくとも単置換されている場合、この基は好ましくは直鎖状であり、ハロゲンは好ましくはFまたはClである。多置換の場合、ハロゲンは好ましくはFである。また、結果として得られる基は、ペルフルオロ化された基も含む。単置換の場合、フッ素または塩素置換基は何れの所望の箇所にあっても構わないが、好ましくはω位である。
【0180】
上および下の式において、Xは、好ましくは、F、Clまたは単フッ素化または多フッ素化された1個、2個または3個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基または単フッ素化または多フッ素化された2個または3個のC原子を有するアルケニル基である。Xは、特に好ましくは、F、Cl、CF、CHF、OCF、OCHF、OCFHCF、OCFHCHF、OCFHCHF、OCFCH、OCFCHF、OCFCHF、OCFCFCHF、OCFCFCHF、OCFHCFCF、OCFHCFCHF、OCH=CF、OCF=CF、OCFCHFCF、OCFCFCF、OCFCFCClF、OCClFCFCF、CF=CF、CF=CHFまたはCH=CFであり、非常に特に好ましくは、FまたはOCFである。
【0181】
およびXの意味の適切な選択を通して、アドレス時間、閾電圧、透過特性曲線の急峻性などを所望の様式に修正することができる。例えば、1E−アルケニル基、3E−アルケニル基、2E−アルケニルオキシ基などは、アルキルまたはアルコキシ基と比較して、一般に、より短いアドレス時間、ネマチック化傾向の改善および弾性定数k33(ベンド)およびk11(スプレイ)間のより高い比を与える。4−アルケニル基、3−アルケニル基などは、アルキルおよびアルコキシ基と比較して、一般に、低い閾電圧およびより低い値のk33/k11を与える。本発明による混合物は、特に高いk値で特徴付けられ、よって、先行技術からの混合物より極めて速い応答時間を有する。
【0182】
上述の式の化合物の最適な混合比は、所望の特性、上述の式の成分の選択、および存在する場合もある任意の更なる成分の選択に、実質的に依存する。
【0183】
上で示される範囲内での適切な混合比は、場合ごとに容易に決めることができる。
【0184】
本発明による混合物中の上述の式の化合物の総量は、決定的なものではない。従って、混合物は、様々な特性の最適化の目的のために、1種類以上の更なる成分を含むことができる。しかしながら、上述の式の化合物の総濃度が高くなるほど、混合物の特性の所望の改良の観測される効果は一般に大きくなる。
【0185】
特に好ましい実施形態において、本発明による媒体は、Xが、F、OCF、OCHF、OCH=CF、OCF=CFまたはOCF−CFHである式IV〜VIIIの化合物を含む。式Iの化合物との好ましい相乗効果により、特に有利な特性が結果として得られる。特に、式I、VIおよびXIの化合物を含む混合物は、その閾電圧が低いことで特徴づけられる。
【0186】
本発明による媒体で使用できる上述の式およびそれのサブ式の個々の化合物は既知であるか、既知の化合物に類似して調製できる。
【0187】
また、本発明は、外枠と共にセルを構成する2枚の平行な外板、各ピクセルをスイッチングするための外板上の集積非線形素子、およびセル中に配置されて正の誘電異方性および高い比抵抗を有するネマチック液晶混合物を有する、例えば、TN、STN、TFT、OCB、IPS、FFSまたはMLCディスプレイなどのこの型の媒体を含有する電気光学的ディスプレイに関し、およびこれらの媒体の電気光学的目的のための使用に関する。
【0188】
本発明による液晶混合物により、利用できるパラメータの範囲を著しく広げることができる。透明点、低温における粘度、熱的およびUV安定性および高い光学異方性の達成可能な組み合わせは、先行技術からの以前の材料より極めて優れている。
【0189】
本発明による混合物は、携帯用途および高ΔnTFT用途、例えばPDA、ノート型パソコン、LCDテレビおよびモニターなどに特に適切である。
【0190】
本発明による液晶混合物は、−20℃まで、好ましくは−30℃まで、特に好ましくは−40℃までネマチック相を保持し、70℃以上、好ましくは75℃以上の透明点を有し、同時に、100mPa・s以下、特に好ましくは70mPa・s以下の回転粘度γが達成可能となり、速い応答時間を有する優れたMLCディスプレイの実現が可能となる。
【0191】
本発明による液晶混合物の誘電異方性Δεは、好ましくは+5以上、特に好ましくは+10以上である。加えて、混合物は低い動作電圧で特徴付けられる。本発明による液晶混合物の閾電圧は、好ましくは1.5V以下、特には1.2V以下である。
【0192】
本発明による液晶混合物の複屈折率Δnは、好ましくは0.10以上、特に好ましくは0.11以上である。
【0193】
本発明による液晶混合物のネマチック相の範囲は、好ましくは少なくとも90°の幅であり、特には少なくとも100°である。この範囲は、好ましくは、少なくとも−25℃から+70℃に及んでいる。
【0194】
言うまでもなく、本発明による混合物の成分の適切な選択を通して、他の有利な性質を保持しながら、より高い閾電圧においてより高い透明点(例えば100℃を超え)を達成できるか、またはより低い閾電圧においてより低い透明点を達成することも可能である。粘度の対応する上昇を僅かにして、より高いΔεと、よってより低い閾電圧を有する混合物を得ることも同様に可能である。本発明によるMLCディスプレイは、好ましくは、グーチおよびタリーの第1次透過極小で動作し(C.H.GoochおよびH.A.Tarry、Electron.Lett.、第10巻、第2〜4頁、1974年;C.H.GoochおよびH.A.Tarry、Appl.Phys.、第8巻、第1575〜1584頁、1975年)、ここで、例えば特性線の高い急峻性およびコントラストの低視野角依存性(ドイツ国特許第30 22 818号明細書)などの特に好ましい電気光学的特性に加え、第2次極小で動作する類似するディスプレイと同じ閾電圧を得るのに、より低い誘電異方性で十分である。このため、第1次極小で本発明による混合物を使用することにより、シアノ化合物を含む混合物の場合に比べ、極めて高い比抵抗値を達成することが可能となる。個々の成分およびその質量比の適切な選択を通して、当業者は簡単な日常的方法を使用して、MLCディスプレイの予め指定された層厚に必要な複屈折率を設定することができる。
【0195】
電圧保持率(HR)の測定(S.Matsumotoら、Liquid Crystals、第5巻、第1320頁(1989年);K.Niwaら、Proc.SID Conference、サンフランシスコ、1984年6月、第304頁(1984年)、;G.Weberら、Liquid Crystals、第5巻、第1381頁(1989年))により、下式
【0196】
【化59】

のシアノフェニルシクロヘキサン類、または下式
【0197】
【化60】

のエステル類を式Iの化合物の代わりに含む類似混合物よりも、式Iの化合物を含む本発明による混合物の方が、UVの曝露によるHRの低下が著しく小さい挙動を示すことが示された。
【0198】
本発明による混合物の光安定性およびUV安定性は極めて優れており、即ち、それらは、光またはUVに暴露されてもHRの著しく小さい低下を示す。混合物中の式Iの化合物の濃度が低い(10質量%未満)場合においても、先行技術からの混合物と比較して、6%以上HRが増加する。
【0199】
また、LC媒体は、当業者に既知で文献に記載される、例えば、チバ社製Tinuvin(登録商標)などのUV安定化剤、酸化防止剤、フリーラジカル捕捉剤、ナノ微粒子などの更なる添加剤を含んでもよい。例えば、0〜15%の多色性色素またはキラルドーパントを加えることができる。適切な安定化剤およびドーパントは、表Cおよび表D中で下に述べられている。
【0200】
本発明によるLC媒体の上述の好ましい実施形態の個々の成分は既知であるか、それらの調製方法は文献に記載される標準的な方法に基づいているため、当業者によって先行技術より容易に導出できるかのいずれかである。
【0201】
当業者にとっては言うまでもなく、本発明によるLC媒体は、例えば、H、N、O、ClおよびFが対応する同位体で置き換えられた化合物も含むことができる。。
【0202】
本発明によって使用できる液晶混合物は、例えば、式Iの1種類以上の化合物を、式II〜XXVIIIの1種類以上の化合物と、または更なる液晶化合物および/または添加剤と混合して、それ自体従来の様式で調製される。一般に、より少ない量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中で、有利には加温して溶解する。また、有機溶媒中、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール中で成分溶液を混合し、完全に混合後、例えば蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。本発明は、更に、本発明によるLC媒体を調製する方法に関する。
【0203】
偏光板、電極基板および表面処理された電極からの本発明によるMLCディスプレイの構成は、この型のディスプレイの通常の設計に対応する。本明細書において、用語「通常の設計」は広義を指し、MLCディスプレイの全ての派生および改変も包含し、特に多結晶シリコンTFTまたはMIMに基づくマトリックスディスプレイ素子も含む。
【0204】
しかしながら、本発明によるディスプレイと、ツイストネマチックセルに基づくこれまでの従来ディスプレイとの大きな相違点は、液晶層の液晶パラメータの選択にある。
【0205】
以下の例は、本発明を限定することなく説明する。しかしながら、以下の例は、当業者に対して、好ましく用いられる化合物について好ましい混合の考え方、それらのそれぞれの濃度および互いにそれらの組み合わせを示す。加えて、例は、どの特性および特性の組み合わせが到達可能であるかを例示する。
【0206】
本出願中および下の例において、液晶化合物の構造は略号で示されており、化学式への変換は下の表AおよびBに従って行われる。全ての基C2n+1およびC2m+1は、nおよびm個のC原子をそれぞれ有する直鎖状のアルキル基であり、n、mおよびkは整数で、好ましくは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を表す。表Bにおけるコードは、それ自体で明らかである。表Aにおいては、親構造にかかわる略号のみが示されている。個々の場合において、この親構造の略号の後に、ダッシュにより分離されて、置換基R1*、R2*、L1*およびL2*のためのコードが続く。
【0207】
【表1】


好ましい混合物成分は表Aおよび表Bで見出せる。
【0208】
【表2】

【0209】
【表3】

【0210】
【表4】

【0211】
【表5】

【0212】
【表6】

【0213】
【表7】

【0214】
【表8】

本発明の好ましい実施形態において、本発明によるLC媒体は、表AおよびBからの化合物より成る群から選択される1種類以上の化合物を含む。
【0215】
表Cは、本発明によるLC媒体に添加できる可能なドーパントを示す。
【0216】
【表9】

LC媒体は、好ましくは0〜10質量%、特には0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%のドーパントを含む。LC媒体は、好ましくは、表Cからの化合物より成る群から選択される1種類以上のドーパントを含む。
【0217】
表Dは、本発明によるLC媒体に添加できる可能な安定剤を示す(ここで、nは1〜12の整数を表す)。
【0218】
【表10】

【0219】
【表11】

【0220】
【表12】

【0221】
【表13】

LC媒体は、好ましくは0〜10質量%、特には0.01〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%の安定剤を含む。LC媒体は、好ましくは、表Dからの化合物より成る群から選択される1種類以上の安定剤を含む。
【0222】
加えて、以下の略称および記号を使用する。
【0223】
は20℃における容量閾電圧(V)であり、
10は20℃における10%相対コントラストに対する光学的閾値(V)であり、
は20℃および589nmにおける異常光屈折率であり、
は20℃および589nmにおける常光屈折率であり、
Δnは20℃および589nmにおける光学異方性であり、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに垂直な誘電率であり、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに平行な誘電率であり、
Δεは20℃および1kHzにおける誘電異方性であり、
cl.p.、T(N,I)は透明点(℃)であり、
γは20℃における回転粘度(mPa・s)であり、
は20℃における「スプレイ(splay)」変形に対する弾性定数(pN)であり、
は20℃における「ツイスト(twist)」変形に対する弾性定数(pN)であり、
は20℃における「ベンド(bend)」変形に対する弾性定数(pN)であり、
LTSは試験用セル中で決定される低温安定性(相)であり、
HR20は20℃における電圧保持率(%)であり、および
HR100は100℃における電圧保持率(%)である。
【0224】
他に明記されない限り本出願中の全ての濃度は質量%で示されており、溶媒を含まない対応する混合物全体に関する。
【0225】
他に明記されない限り、例えば、融点T(C,N)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの本出願中で示される全ての温度の値は摂氏度(℃)で示される。M.p.は融点を表し、cl.p.は透明点である。更に、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方相である。これらの記号の間のデータは、転移温度を表す。
【0226】
全ての物理的特性は「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月、ドイツ国ダルムスタット市メルク社に従って決定されるか決定され、それぞれの場合で他に明らかに示さない限り温度は20℃が適用され、Δnは589nmで決定され、Δεは1kHzで決定される。
【0227】
個々の化合物の液晶特性は、他に示されない限り、ネマチックホスト混合物ZLI−4792(ダルムスタット市メルク社より商業的に入手可能)中において10%の濃度で決定する。
【0228】
「室温」は、他に示されない限り、20℃を意味する。
【0229】
本発明において、用語「閾電圧」は、他に明らかに示されない限り、フレデリックス閾値としても知られる容量閾値(V)に関する。例において、一般的な慣習により、10%相対コントラストに対する光学的閾値(V10)も示される場合がある。
【0230】
容量閾電圧VおよびV10の測定のために使用される試験用セルは、Arch Chemicals社製ポリイミド配向層(Durimid32、希釈剤(70%のNMPおよび30%のキシレン)、1:4の比率)で被覆され、互いに逆平行にラビングされ、準0度の表面チルトを有するソーダ石灰ガラスからなる基体より構成する。透明で実質的に正方形のITO電極の面積は1cmである。標準的で商業的な高分解能LCRメーター(例えば、Hewlett Packard 4284A LCRメーター)を使用して、容量閾電圧を決定する。
【実施例】
【0231】
<例1: 4’−(4−ペンタ−1−イニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシル>
【0232】
【化61】

本発明による化合物4’−(4−ペンタ−1−イニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを、下記の通り調製する。
【0233】
4−(4−ブロモフェニル)−4’−プロピルビシクロヘキシル−4−オールの合成
【0234】
【化62】

最初、106g(0.45mol)の1,4−ジブロモベンゼンを400mlのEtOに−45℃において導入し、275ml(0.45mol)のn−BuLi(ヘキサン中15%溶液)を量り入れる。室温において30分後、200mlのEtO中の100g(0.45mol)の4’−プロピルビシクロヘキシル−4−オンの溶液を滴下により加え、混合物を0℃まで温める。1時間後、水および希塩酸をバッチに加え、有機相を分離する。水相をMTBEで抽出し、合わせた有機相を水洗し、引き続いて、硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶液を完全に濃縮し、更に精製することなく残渣を以下の反応で使用する。
【0235】
4−(4−ブロモフェニル)−4’−プロピルビシクロヘキシル−3−エンの合成
【0236】
【化63】

184g(約0.45mol)の粗精製4−(4−ブロモフェニル)−4’−プロピルビシクロヘキシル−4−オールを5.6g(29.2mmol)のp−トルエンスルホン酸一水和物と共に900mlのトルエン中で、水分離器上において加熱する。溶液を数回水洗し、硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶媒を除去した後に残る粗生成物を、−20℃において酢酸エチルより再結晶する。これにより、僅かに黄色の固体として、4−(4−ブロモフェニル)−4’−プロピルビシクロヘキシル−3−エンを与える。
【0237】
4’−(4−ブロモフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルの合成
【0238】
【化64】

86g(0.24mol)の4−(4−ブロモフェニル)−4’−プロピルビシクロヘキシル−3−エンを、5lのn−ヘプタン中、Pt/C(5%のPt)存在下、室温において、水素圧1barで水素化する。反応溶液を半分まで濃縮し、シリカゲル(SiO)を通して吸引濾過する。濾液を完全に濃縮する。
【0239】
残渣を200mlのNMP中に取り、13.4g(0.12mol)のカリウムtert−ブトキシドを加える。混合物を60℃で48時間温める。冷却後、バッチを氷に加え、希塩酸を使用して酸性とする。混合物をペンタンで数回抽出し、合わせた有機相を水洗する。溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、完全に濃縮する。粗生成物をイソプロパノールより再結晶する。これにより、ベージュ色の固体として、4’−(4−ブロモフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを与える。
【0240】
4’−(4−ペンタ−1−イニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルの合成
【0241】
【化65】

8.0g(22.0mmol)の4’−(4−ブロモフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを、4.4ml(44.0mmol)の1−ペンチンと共に、309mg(0.44mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよび42mg(0.22mmol)のヨウ化銅(I)の存在下において、60℃で60時間80mlのNEt中で撹拌する。バッチを氷水に加え、塩酸を使用して酸性とする。混合物をMTBEで抽出し、合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。溶液を完全に濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン)で精製する。n−ヘプタンからの再結晶(−20℃)により、更なる精製を行う。これにより、無色の固体(融点47℃)として、4’−(4−ペンタ−1−イニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを与える。
【0242】
H−NMR(300MHz、CHCl):δ=7.30(d、2H、J=8.4Hz、Harom.)、7.10(d、2H、J=8.4Hz、Harom.)、2.46〜2.33(m、3H、Hbenzyl、Hpropargyl)、1.93〜1.69(m、8H、Haliph.)、1.76〜1.55(m、2H、Haliph.)、1.47〜1.23(m、4H、Haliph.)、1.21〜0.98(m、12H、Haliph.)、0.95〜0.80(m、5H、Haliph.)。
【0243】
MS(EI):m/e(%)=350(100、M)。
【0244】
Δε=+2.3、
Δn=0.1620、
γ=782mPa・s、
C47SmB154SmA160N211I。
【0245】
また、本発明による化合物4’−(4−ペンタ−1−イニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルは、4’−(4−エチニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシル(合成については、例2参照)をヨウ化プロピルと熊田−コリュー反応(L.−M−Yang、L.−F.Huang、T.−Y.Luh、Org.Lett.2004年、第6巻、第1461〜1463頁)することでも調製できる。
【0246】
<例2: 4’−(4−エチニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシル>
【0247】
【化66】

本発明による化合物4’−(4−エチニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを、下記の通り調製する。
【0248】
トリメチル−[4−(4’−プロピルビシクロヘキシル−4−イル)フェニルエチニル]シランの合成
【0249】
【化67】

20.0g(55.0mmol)の4’−(4−ブロモフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを200mlのNEtに溶解し、23.3ml(0.17mol)のトリメチルアセチレンと共に、1.55g(2.20mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよび0.84g(4.40mmol)のヨウ化銅(I)の存在下で、65℃で24時間撹拌する。更に、24ml(0.17mol)のトリメチルアセチレン、1.6g(2.2mmol)のビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドおよび0.8g(4.4mmol)のヨウ化銅(I)を引き続いて量り入れ、バッチを65℃で48時間温める。冷却後、反応バッチを氷水に加え、希塩酸を使用して酸性とする。混合物をMTBEで抽出し、合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。溶液を完全に濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン)で精製する。これにより、黄色の固体として、トリメチル−[4−(4’−プロピルビシクロヘキシル−4−イル)フェニルエチニル]シランを与える。
【0250】
4’−(4−エチニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルの合成
【0251】
【化68】

20.0g(52.5mmol)のトリメチル−[4−(4’−プロピルビシクロヘキシル−4−イル)フェニルエチニル]シランを、8.71g(63.0mmol)のKCOおよび1.5mlの水と共に、250mlのメタノール中で48時間撹拌する。混合物をMTBEで希釈し、希塩酸を使用して中和する。水相をMTBEで抽出し、合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。硫酸ナトリウムを使用して溶液を乾燥し、完全に濃縮する。粗生成物をn−ヘプタンより再結晶する。71℃の融点を有する無色の固体として、4’−(4−エチニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを得る。
【0252】
H−NMR(300MHz、CHCl):δ=7.40(d、2H、J=8.4Hz、Harom.)、7.15(d、2H、J=8.4Hz、Harom.)、3.00(s、1H、Halkynyl)、2.49〜2.38(m、1H、Hbenzyl)、1.94〜1.70(m、8H、Haliph.)、1.48〜1.25(m、4H、Haliph.)、1.20〜0.94(m、9H、Haliph.)、0.95〜0.80(m、5H、Haliph.)。
【0253】
MS(EI):m/e(%)=309(100、M)。
【0254】
Δε=+2.9、
Δn=0.1824、
γ=857mPa・s、
C71N235I。
【0255】
<例3: 4−プロピル−4’−(4−プロパ−1−イニルフェニル)ビシクロヘキシル>
【0256】
【化69】

本発明による化合物4−プロピル−4’−(4−プロパ−1−イニルフェニル)ビシクロヘキシルを、下記の通り調製する。
【0257】
4−プロピル−4’−(4−プロパ−1−イニルフェニル)ビシクロヘキシルの合成
【0258】
【化70】

最初、3.0g(9.7mmol)の4’−(4−エチニルフェニル)−4−プロピルビシクロヘキシルを25mlのTHF中に−20℃において導入し、7.3ml(11.7mmol)のn−BuLi(ヘキサン中15%溶液)を滴下により加える。この温度で1時間後、0.73ml(11.7mmol)のヨウ化メチルを量り入れ、バッチを冷却槽中に放置し3時間解凍する。水および希塩酸を加え、混合物をMTBEで数回抽出する。合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶媒を除去した後に得られる粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン)で精製する。n−ヘプタンからの再結晶により、更なる精製を行う。これにより、82℃の融点を有する無色の固体として、4−プロピル−4’−(4−プロパ−1−イニルフェニル)ビシクロヘキシルを与える。
【0259】
H−NMR(400MHz、CHCl):δ=7.29(d、2H、J=8.0Hz、Harom.)、7.10(d、2H、J=8.0Hz、Harom.)、2.45〜2.37(m、1H、Hbenzyl)、2.03(s、3H、≡−CH)、1.92〜1.80(m、4H、Haliph.)、1.79〜1.68(m、4H、Haliph.)、1.45〜1.25(m、4H、Haliph.)、1.20〜0.94(m、9H、Haliph.)、0.95〜0.80(m、5H、Haliph.)。
【0260】
MS(EI):m/e(%)=322(100、M)。
【0261】
Δε=+3.2、
Δn=0.1875、
γ=1720mPa・s、
C85N255I。
【0262】
比較例1および2からの構造的に類似している化合物よりも、例3からの本発明による化合物は、著しくより高い透明点、より広いネマチック相、より高い複屈折率およびより高い誘電異方性を示す。
【0263】
<比較例1: 4’−(4−プロピルフェニル)−4−プロパ−1−イニルビシクロヘキシル>
【0264】
【化71】

比較化合物4’−(4−プロピルフェニル)−4−プロパ−1−イニルビシクロヘキシルを、下記の通り調製する。
【0265】
4−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)−1−(4−プロピルフェニル)シクロヘキサノールの合成
【0266】
【化72】

600mlのTHF中の160g(0.67mol)の4−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)シクロヘキサノンの溶液を、147g(0.74mol)のp−ブロモプロピルベンゼンおよび18.0g(0.74mol)の削り屑状マグネシウム(400mlのTHF)から生成したグリニャール試薬の溶液に加える。添加が完了した時点で、混合物を還流下で1時間加熱し、飽和塩化アンモニウム溶液を加える。混合物を希塩酸を使用して酸性とし、MTBEで数回抽出する。合わせた有機相を水洗し、溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶媒を除去した後に得られる粗生成物を、更に精製することなく使用する。
【0267】
8−[4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキサ−3−エニル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンの合成
【0268】
【化73】

250g(約0.7mol)の粗精製4−(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカ−8−イル)−1−(4−プロピルフェニル)シクロヘキサノールを13.2g(69mmol)のp−トルエンスルホン酸一水和物および40.7ml(0.73mol)のエチレングリコールと共に800mlのトルエン中で、水分離器上において加熱する。溶液を数回水洗し、硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶媒を除去した後に残る粗生成物をクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:MTBE=5:1)で精製する。8−[4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキサ−3−エニル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンを無色の固体として得る。
【0269】
8−[4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンの合成
【0270】
【化74】

198g(0.57mol)の8−[4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキサ−3−エニル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンを、n−ヘプタン中、Pt/C(5%のPt)存在下で水素化する。反応溶液を完全に濃縮する。残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:MTBE=5:1)で精製する。
【0271】
上で得られた生成物をNMP中に取り、32g(0.29mol)のカリウムtert−ブトキシドを加える。混合物を60℃で18時間温める。冷却後、バッチを氷に加え、塩酸を使用して酸性とする。混合物をMTBEで数回抽出し、合わせた有機相を水洗する。溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、完全に濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:MTBE=5:1)で精製する。8−[4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンを茶色がかった固体として得る。
【0272】
4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシル−4オンの合成
【0273】
【化75】

190.5g(0.55mol)の8−[4−(4−プロピルフェニル)シクロヘキシル]−1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカンを、480mlのギ酸と共に900mlのトルエン中において、激しく19時間撹拌する。水を加え、有機相を分離する。水相をMTBEで抽出し、合わせた有機相を、水、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で順次洗浄する。溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、完全に濃縮する。粗生成物をn−ヘプタンより再結晶する。
【0274】
4−メトキシメチレン−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルの合成
【0275】
【化76】

250mlのTHF中の55.0g(0.50mol)のカリウムtert−ブトキシド溶液を、550mlのTHF中の170.0g(0.50mol)のメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリドの懸濁液に0℃で添加する。この温度で30分後、450mlのTHF中の4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシル−4オンの溶液を加え、混合物を室温で17時間撹拌する。バッチに水を加え、次いで、塩酸を使用して酸性とする。混合物をMTBEで数回抽出し、合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。溶液を完全に濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:MTBE=8:1)で精製する。
【0276】
4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシル−4−カルバルデヒドの合成
【0277】
【化77】

152.5g(0.45mol)の4−メトキシメチレン−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルを、275mlのギ酸と共に685mlのトルエン中において、激しく80時間撹拌する。水を加え、有機相を分離する。水相をMTBEで抽出し、合わせた有機相を、水、飽和炭酸水素ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で順次洗浄する。溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥し、完全に濃縮する。
【0278】
このようにして得られた生成物を1000mlのメタノールおよび25mlのTHF中に取り、17.5ml(0.11mol)の20%水酸化ナトリウム溶液を溶液に加える。2時間後、溶液を0℃に冷却し、析出した固体を吸引で濾別する。濾別後の残渣をメタノールで洗浄し、粗生成物をイソプロパノールより再結晶する。4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシル−4−カルバルデヒドを無色の固体として得る。
【0279】
4−(2,2−ジブロモビニル)−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルの合成
【0280】
【化78】

最初に34.0g(0.10mol)の四臭化炭素を120mlのジクロロメタン中に導入し、53.7g(0.21mol)のトリフェニルホスフィンを少しずつ分けて加える。添加を完了した時点で混合物を30分撹拌し、45mlのジクロロメタン中の16.0g(51.2mmol)の4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシル−4−カルバルデヒドの懸濁液をゆっくりと加える。混合物を22時間撹拌し、沈殿を濾過し除去する。濾液を完全に濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン)で精製する。4−(2,2−ジブロモビニル)−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルを、無色の固体として得る。
【0281】
4−エチニル−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルの合成
【0282】
【化79】

23.7ml(38.0mmol)のn−BuLiを、40mlのTHF中の7.70g(16.4mmol)の4−(2,2−ジブロモビニル)−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルに−75℃で加える。添加が完了した時点で、この温度で混合物を2時間撹拌し、引き続いて−20℃まで温める。水および希塩酸を加え、混合物をMTBEで数回抽出する。合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶液を完全に濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:1−クロロブタン=95:5)で精製する。4−エチニル−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルを、無色の固体として得る。
【0283】
4’−(4−プロピルフェニル)−4−プロパ−1−イニルビシクロヘキシルの合成
【0284】
【化80】

最初に、3.5g(11.3mmol)の4−エチニル−4’−(4−プロピルフェニル)ビシクロヘキシルを30mlのTHF中に−20℃で導入し、8.6ml(13.6mmol)のn−BuLi(ヘキサン中15%溶液)を滴下により加える。この温度で1時間後、0.85ml(13.6mmol)のヨウ化メチルを量り入れ、バッチを冷却浴中に放置し3時間解凍する。水および希塩酸を加え、混合物をMTBEで数回抽出する。合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、溶液を硫酸ナトリウムを使用して乾燥する。溶媒を除去後に得られる粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、n−ヘプタン:1−クロロブタン=4:1)で精製する。n−ヘプタンからの再結晶により、更なる精製を行う。これにより、70℃の融点を有する無色の固体として、4’−(4−プロピルフェニル)−4−プロパ−1−イニルビシクロヘキシルを与える。
【0285】
H−NMR(300MHz、CHCl):δ=7.13〜7.06(m、4H、Harom.)、2.54(t、2H、J=8.0Hz、CH(ベンジル))、2.45〜2.35(m、1H、Hbenzyl)、1.85〜1.70(m、7H、≡−CHおよびHaliph.)、1.69〜1.52(m、4H、Haliph.)、1.48〜1.23(m、4H、Haliph.)、1.19〜0.90(m、12H、Haliph.)。
【0286】
MS(EI):m/e(%)=322(100、M)。
【0287】
Δε=+1.8、
Δn=0.139、
γ=1006Pa・s、
C70SmB103N191I。
【0288】
化合物は、例3の化合物より劣った特性を有する。透明点がより低く、透明点に対する回転粘度の比がより悪い。特に、比較例の化合物は、広い温度範囲にわたってスメクチックである。
【0289】
<比較例2: 1−(4−エチニルシクロヘキシル)−4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン>
【0290】
【化81】

1−ブロモ−4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼンおよび1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−8−オンより出発し、比較例1に類似して、1−(4−エチニルシクロヘキシル)−4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼンの合成を行う。上記の通り、対応する出発材料および中間体を使用する。
【0291】
【化82】

1−(4−エチニルシクロヘキシル)−4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼンを、143℃の融点を有する無色の固体として得る。
【0292】
H−NMR(300MHz、CHCl):δ=7.14〜7.08(m、4H、Harom.)、2.52〜2.36(m、2H、Hbenzyl)、2.34〜2.36(m、1H、Hpropargyl)、2.15〜2.05(m、3H、Halkynyl+Haliph.)、1.95〜1.80(m、6H、Haliph.)、1.61〜1.16(m、11H、Haliph.)、1.11〜0.96(m、2H、Haliph.)、0.90(t、3H、J=7.2Hz、CH)。
【0293】
MS(EI):m/e(%)=308(63、M)、280(100、M)。
【0294】
Δε=+1.7、
Δn=0.1209、
γ=480Pa・s、
C143N168I。
【0295】
化合物は、例3の化合物よりも低い透明点および著しくより狭いネマチック相を有する。高い融点は、ネマチック媒体中における、より低い溶解性を示唆する。
【0296】
<比較例3: 1−(4−プロピルシクロヘキシル)−4−(4−プロパ−1−イニルシクロヘキシル)ベンゼン>
【0297】
【化83】

1−ブロモ−4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼンより出発し、比較例1に類似して、1−(4−プロピルシクロヘキシル)−4−(4−プロパ−1−イニルシクロヘキシル)ベンゼンの合成を行う。
【0298】
【化84】

1−(4−プロピルシクロヘキシル)−4−(4−プロパ−1−イニルシクロヘキシル)ベンゼンを、134℃の融点を有する無色の固体として得る。
【0299】
H−NMR(400MHz、CHCl):δ=7.14〜7.07(m、4H、Harom.)、2.50〜2.36(m、2H、Hbenzyl)、2.27〜2.15(m、1H、Hpropargyl)、2.09〜2.01(m、2H、Haliph.)、1.92〜1.78(m、6H、Haliph.)、1.53〜1.16(m、14H、Haliph.)、1.09〜0.96(m、2H、Haliph.)、0.90(t、3H、J=7.2Hz、CH)。
【0300】
MS(EI):m/e(%)=322(48、M)、294(100、M)。
【0301】
Δε=+1.1、
Δn=0.1337、
γ=1003 Pa・s、
C134N193I。
【0302】
化合物は著しく低い透明点を有し、例3の化合物とほぼ同じ回転粘度を有する。更に、ネマチック相範囲は更に非常に小さい。高い融点は、ネマチック媒体中における、より低い溶解性を示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、個々の基は以下の意味を有する:
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、−CN、−SCN、−NCS、SFまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル(ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接つながらないようにして、−CH=CH−、−C≡C−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはBrで置き換えられていてもよい。)、またはP−Sp−を表し、
Pは、重合性基を表し、
Spは、スペーサー基または単結合を表し、
は、それぞれの出現において、同一または異なって、フェニレン−1,4−ジイル(ただし、1個または2個のCH基はNで置き換えられていてもよく、1個以上のH原子は、ハロゲン、CN、CH、CHF、CHF、OCH、OCHFまたはOCFで置き換えられていてもよい。)、シクロヘキサン−1,4−ジイル(ただし、1個または2個の隣接していないCH基は、互いに独立に、Oおよび/またはSで置き換えられていてもよく、1個以上のH原子はFで置き換えられていてもよい。)、シクロヘキセン−1,4−ジイル、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを表し、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−C−、−C−、−CFCH−、−CHCF−、−CFHCFH−、−CFHCH−、−CHCFH−、−CFCFH−、−CFHCF−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−C≡C−または単結合を表し、および
mは、0、1、2または3を表す。)
【請求項2】
mが0または1を表すことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が以下の基より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【化2】

【請求項4】
およびZが単結合を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
およびRが、それぞれ互いに独立に、1〜5個のC原子を有するアルキルを表すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
以下の式から成る群より選択される請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【化3】

(式中、RおよびRは請求項1で示される意味を有し、RはHまたは1〜4個のC原子を有するアルキルを表す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の1種類以上の化合物を含むLC媒体。
【請求項8】
式IIおよび/またはIIIの1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項7に記載のLC媒体。
【化4】

(式中、
Aは、1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−シクロヘキシレンを表し、
aは、0または1であり、
は、2〜9個のC原子を有するアルケニルを表し、および
は、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接つながらないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよい。)
【請求項9】
以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項7または8に記載のLC媒体。
【化5】

(式中、
は、1〜15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接つながらないようにして、−C≡C−、−CFO−、−CH=CH−、
【化6】

−O−、−CO−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子はハロゲンによって置き換えられていてもよく、
は、F、Cl、CN、SF、SCN、NCS、それぞれ6個までのC原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
1〜6は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、
は、−C−、−(CH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−CFO−または−OCF−を表し、式VおよびVI中では単結合を表してもよく、および
bおよびcは、互いに独立に、0または1を表す。)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のLC媒体または1種類以上の化合物を含有するLCディスプレイ。
【請求項11】
MLC、TN、STNまたはIPSディスプレイであることを特徴とする請求項10に記載のLCディスプレイ。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の式Iの化合物を調製する方法であって、
a)1,4−ジハロベンゼンの一方のハロゲン位をメタル化する工程と、
b)工程a)で得られた有機金属化合物を、式:
【化7】

のケトン上に付加する工程と、
c)工程b)で得られたアルコールを脱水する工程と、
d)工程c)で得られたアルケンを水素化する工程と、
e)任意工程として、工程d)で得られた混合物を異性化して、式:
【化8】

の好ましい異性体(ビシクロヘキシル基のトランス−トランス異性体)を与える工程と、
f1)工程e)で得られたハロゲン化合物を、RおよびZが請求項1で示される意味を有する式HC≡C−Z−Rの適切なアルキンに対して薗頭カップリングする工程と、
または
f2)工程e)で得られたハロゲン化合物を、トリアルキルシリルアセチレンに対して薗頭カップリングする工程と、
g2)工程f2)で得られたアセチレンを脱シリル化する工程と、
h2)塩基を使用して、工程g2)の末端アセチレンを脱プロトン化する工程と、
i2)工程h2)で得られたアセチリドを、アルキル化剤、例えば式R−Iのヨウ化アルキルを使用してアルキル化する工程と、
または
i3)工程h2)で得られたアセチリドを、熊田−コリュー反応において、ハロアルカンと反応させる工程とを含み、
ただし、R、AおよびZは請求項1で示される意味を有し、Halはハロゲンを表す方法。

【公開番号】特開2010−168380(P2010−168380A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8649(P2010−8649)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】