説明

液晶媒体

本発明は、液晶混合物であって、特にポリイミド表面でプレチルトを増大させる目的のために、式(I)


で表され、式中X、L、L、L、LおよびAlkenylは請求項1で示される定義を有する少なくとも1種の化合物を含む、前記液晶混合物、ならびにまた電気光学的液晶ディスプレイおよびLCレンズにおける、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含む液晶媒体に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体(LC媒体)、電気光学的目的のためのその使用およびこの媒体を含むLCディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶は、そのような物質の光学特性を印加電圧によって修正することができるので、ディスプレイデバイスで主に誘電体として使用される。液晶に基づく電気光学デバイスは、当業者に極めてよく知られており、様々な効果に基づくことができる。そのようなデバイスの例は、動的散乱を有するセル、DAP(整列相の変形)セル、ゲスト/ホストセル、ねじれネマチック構造を有するTNセル、STN(超ねじれネマチック)セル、SBE(超複屈折効果)セルおよびOMI(光学モード干渉)セルである。最も一般的なディスプレイデバイスは、Schadt-Helfrich効果に基づいており、ねじれネマチック構造を有する。さらに、基板および液晶平面に平行な電場で作動するセル、例えばIPS(面内切換)セルがある。TN、STN、FFS(フリンジ領域切換)およびIPSセルは特に、現在、本発明の媒体のための適用の商業的に興味深い領域である。
【0003】
液晶材料は、良好な化学的および熱的安定性ならびに電場および電磁放射に対する良好な安定性を有していなければならない。さらに、液晶材料は、低い粘度を有し、セルにおける短いアドレス時間、低いしきい値電圧および高いコントラストを生じなければならない。
【0004】
それらはさらに、通常の作動温度で、すなわち室温前後の可能な限り広い範囲で前述のセルのための好適な中間相(mesophase)、例えばネマチックまたはコレステリック中間相を有しなければならない。液晶は一般的に複数種の構成成分の混合物として使用されるので、構成成分が互いに容易に混和性であることが重要である。さらなる特性、例えば電気伝導性、誘電異方性および光学異方性は、セルタイプおよび適用の領域に依存して様々な要件を満たさなければならない。例えば、ねじれネマチック構造を有するセルのための材料は、正の誘電異方性および低い電気伝導性を有しなければならない。
【0005】
例えば、個々の画素を切り換えるための集積非線形回路素子を備えたマトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ)のために、大きい正の誘電異方性、広いネマチック相、比較的低い複屈折、極めて高い比抵抗、良好なUVおよび温度安定性ならびに低い蒸気圧を有する媒体が、所望される。
【0006】
このタイプのマトリックス液晶ディスプレイは公知である。個々の画素を個別に切り換えるために使用することができる非線形回路素子の例は、能動的素子(すなわちトランジスタ)である。そして、用語「アクティブマトリックス」を使用して、2つのタイプの間で区別をすることができる:
1.基板としてのシリコンウェーハ上のMOS(金属酸化物半導体)または他のダイオード。
2.基板としてのガラス板上の薄膜トランジスタ(TFT)。
【0007】
様々な部分ディスプレイのモジュールアセンブリでさえも、接合部で問題を生じるので、単結晶シリコンの基板材料としての使用によりディスプレイの大きさが制限される。
【0008】
好ましいより有望なタイプ2の場合において、使用される電気光学的効果は通常はTN効果である。2つの技術の間で区別がなされる:化合物半導体例えばCdSeを含むTFT、または多結晶もしくは非晶質シリコンに基づくTFT。集中的な研究が、後者の技術に対して世界的に行われている。
【0009】
TFTマトリックスを、ディスプレイの一方のガラス板の内側に適用し、一方他方のガラス板は、透明な対電極をその内側上に担持する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは極めて小さく、画像に対する悪影響を事実上有しない。この技術をまた、赤色、緑色および青色フィルターのモザイクを、フィルター素子が対向する各々の切換可能な画素であるように配置される、フルカラーが可能なディスプレイに拡張することができる。
【0010】
TFTディスプレイは通常、透過に際し交差する偏光子を備えるTNセルとして作動し、背面照射される。
用語MLCディスプレイは、本明細書中で、集積非線形回路素子を備えるあらゆるマトリックスディスプレイ、すなわちアクティブマトリックスに加えて、また受動的素子、例えばバリスターまたはダイオードを備えるディスプレイを包含する(MIM=金属−絶縁体−金属)。
【0011】
このタイプのMLCディスプレイは、TV用途(例えば小型テレビ受像機)またはコンピューター用途(ラップトップ)のための、および自動車または航空機構築物における高度情報ディスプレイに特に適している。コントラストの角度依存性および応答時間に関する問題に加えて、液晶混合物の不十分に高い比抵抗が故に、困難がまたMLCディスプレイで発生する[TOGASHI, S., SEKIGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H., Proc. Eurodisplay 84, 1984年9月:A 210-288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings, pp. 141 ff., Paris;STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, 1984年9月:Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays, pp. 145 ff., Paris]。
【0012】
抵抗が低下するに伴い、MLCディスプレイのコントラストは悪化し、残像消去の問題が生じ得る。液晶混合物の比抵抗が一般的に、ディスプレイの内面との相互作用によってMLCディスプレイの寿命にわたって低下するので、高い(初期)抵抗が、許容し得る寿命を獲得するために極めて重要である。特に、低電圧混合物の場合において、極めて高い比抵抗値を達成することは、現在まで不可能であった。比抵抗が上昇する温度に伴って、ならびに加熱および/またはUV曝露後に可能な限り小さい増大を示すようにすることは、さらに重要である。従来技術からの混合物の低温特性はまた、特に不利である。結晶化および/またはスメクチック相が低温でさえも生じず、粘度の温度依存性が可能な限り低いことが、要求される。それゆえ、従来技術からのMLCディスプレイは、今日の要求を充足しない。
【0013】
背面照射を使用する、すなわち透過的に(transmissively)、および所望により透過反射的に(transflectively)作動する液晶ディスプレイに加えて、反射型液晶ディスプレイはまた、特に興味深い。これらの反射型液晶ディスプレイは、周囲光を情報表示のために使用する。したがって、それらは、対応する大きさおよび解像度を有する背面照射された液晶ディスプレイより顕著に少ないエネルギーを消費する。TN効果が極めて良好なコントラストによって特徴づけられるので、この種の反射型ディスプレイは、さらに明るい周囲条件で良好に読み取られ得る。これは、例えば腕時計および小型計算機で使用されているように、単純な反射型TNディスプレイについて既に知られている。
【0014】
しかし、原理はまた、高品質であり、より高い解像度のアクティブマトリックスでアドレスされたディスプレイ、例えばTFTディスプレイに適用され得る。ここで、既に一般的に慣用である透過型TFT−TNディスプレイにおけるように、低い複屈折(Δn)の液晶の使用は、低い光学的遅延(d・Δn)を達成するために必要である。この低い光学的遅延の結果、コントラストの通常許容し得る程度に低い視野角依存性がもたらされる(DE 30 22 818を参照)。反射型ディスプレイにおいて、低い複屈折の液晶の使用は、光が通過する有効な層の厚さが、反射型ディスプレイにおいて、同一の層の厚さを有する透過型ディスプレイにおける場合の約2倍大きいので、透過型ディスプレイにおけるよりも尚より重要である。
【0015】
テレビ受像機およびビデオ用途に対し、迅速な応答時間を有するディスプレイが、マルチメディアコンテンツ、例えば映画およびビデオゲームを現実に近い画質で再生することができるようにするために必要である。そのような短い応答時間を、特に、粘度、特に回転粘度γに関する低い値を有し、かつ高い光学異方性(Δn)を有する液晶媒体を使用する場合に達成することができる。
【0016】
TN(Schadt-Helfrich)セルの場合、セルにおいて以下の利点を容易にする媒体が所望される:
− 拡張されたネマチック相範囲(特に低温まで)
− 極めて低い温度(屋外での使用、自動車、航空電子機器)での切り替え能力
− UV放射線に対する増大した耐性(より長い寿命)
− 低いしきい値電圧。
【0017】
従来技術から入手可能な媒体は、他のパラメーターを同時に保持しながら、これらの有利を達成させることができない。
【0018】
超ねじれ(STN)セルの場合、より大きい多重性(multiplexability)および/またはより低いしきい値電圧および/またはより広いネマチック相範囲(特に低温における)を容易にする媒体が所望される。このために、有用なパラメーター自由度(透明点、スメクチック−ネマチック転移点または融点、粘度、誘電パラメーター、弾性パラメーター)のさらなる拡張が、至急に所望されている。
【0019】
特にテレビ受像機およびビデオ用途(例えばLCDテレビ、モニター、PDA、ノートパソコン、ゲーム機)のためのLCディスプレイの場合、応答時間の顕著な低減が所望される。LCセル中のLC媒体の層厚さd(「セルギャップ」)の低減の結果、理論的にはより迅速な応答時間がもたらされるが、適切な光学的遅延(d・Δn)を確実にするためにより高い複屈折Δnを有するLC媒体が要求される。しかし、従来技術から知られている高い複屈折のLC材料は、一般的にまた同時に高い回転粘度を有し、それは次に応答時間に対して悪影響を有する。
【0020】
ディスプレイでの高度に波状の表面構造または特定のポリイミド/ポリイミド加工条件(ラビング長さ)によって、ポリイミド表面における不適切なプレチルトに起因して、ディスプレイ欠陥、例えば逆ねじれまたはムラ(不均一なグレーシェード分布)がもたらされ得る。ここで体系的に、混合物のプレチルトを、他のパラメーターを顕著には損なわせずに、異なる材料を選択することによって増大させることが必要である。利用可能な液晶物質がしばしばプレチルトにわずかに影響するに過ぎないので、これには、しばしば混合物概念の転換が必要である。
【発明の概要】
【0021】
したがって、本発明の目的は、プレチルトを平均を上回って増大させる物質を含む液晶混合物を見出すことにある。さらに、当該混合物は、迅速な応答時間、低い回転粘度および極めて高い複屈折を有させしめなければならない。
【0022】
本発明は、上で示される所望の特性を有し、上記で述べた欠点を示さないかまたはより低い程度に示すに過ぎない、特にこのタイプのMLC、TN、STN、OCB、HT−VA、FFSまたはIPSディスプレイのための媒体を提供する目的に基づく。特に、LC媒体は、迅速な応答時間および低い回転粘度を高い複屈折と同時に有しなければならない。さらに、LC媒体は、高い透明点、高い誘電異方性および特に高い複屈折を有しなければならない。
【0023】
ここで、この目的を、式Iで表される1種または2種以上の化合物を含むLC媒体を使用した場合に達成することができることが見出された。式Iで表される化合物は、上で示される所望の特性を有する混合物を生じ、ポリイミド表面におけるプレチルトを不相応に増大させる。
【0024】
したがって、本発明は、式I
【化1】

式中、
Xは、F、Cl、CN、OCN、SF、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルキルラジカル、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルコキシラジカル、2〜6個のC原子を有するフッ素化アルケニルラジカル、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルキルアルコキシラジカルを示し、
1〜4は、各々、互いに独立してHまたはFを示し、および
Alkenylは、2〜6個のC原子を有するアルケニルラジカルを示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体に関する。
【0025】
驚くべきことに、式Iで表される化合物を含むLC媒体は、回転粘度γおよび透明点の極めて良好な比率、光学異方性Δεについての高い値および極めて高い複屈折Δn、ならびに迅速な応答時間、低いしきい値電圧、高い透明点、高い正の誘電異方性および広いネマチック相範囲を有することが見出された。さらに、式Iで表される化合物は、液晶媒体に極めて容易に可溶である。
【0026】
本発明は同様に、式Iで表される化合物に関する。
式Iで表される化合物は、広範囲の用途を有する。置換基の選択に依存して、それらは、液晶媒体が主に構成される基材としての役割を果たし得る;しかし、他のクラスの化合物からの液晶基材もまた、式Iで表される化合物に添加して、例えばこの種の誘電体の誘電異方性および/もしくは光学異方性を修正し、かつ/またはそのしきい値電圧および/もしくはその粘度を最適化することができる。
【0027】
式Iで表される好ましい化合物は、特にXがフッ素、さらにOCFを示すものである。
式Iで表される化合物において、「Alkenyl」は、好ましくは2〜5個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカル、特にCHCH=CHC、さらにHC=CHC、CHCH=CH、HC=CHを示す。
1〜4は、好ましくはL=L=L=L=F、さらに、L=L=L=FおよびL=HまたはL=L=FおよびL=L=Hの意味を有する。
【0028】
式Iで表される好ましい化合物を、以下に示す:
【化2】

【0029】
前記化合物の中で、特に好ましいのは、式I2およびI5で表される化合物、極めて特に式中X=Fである化合物である。
【0030】
特に好ましい化合物を、以下に示す:
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
特に好ましいのは、式I2−1およびI5−1で表される化合物である。
純粋な状態において、式Iで表される化合物は無色であり、電気光学的使用のために好ましく位置する温度範囲内で液晶中間相を形成する。それらは、化学的に、熱的に、および光に対して安定である。
【0034】
式Iで表される化合物を、文献(例えば標準的学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [有機化学の方法], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)に記載されている自体公知の方法によって、正確には知られており、前記反応に適している反応条件の下で製造する。ここで、自体公知であり、本明細書中でより詳細に述べない変法をまた、使用することができる。
【0035】
好ましくは、式Iで表される化合物を、以下のように製造する:
スキーム1
【化6】

【0036】
スキーム2
(R=Hまたはアルキル残基)
【化7】

【0037】
スキーム3
(R=Hまたはアルキル残基)
【化8】

【0038】
スキーム4
【化9】

【0039】
本発明の混合物の他の好ましい態様を、以下に示す:
− 媒体はさらに、式IIおよび/またはIIIで表される1種または2種以上の中性の化合物を含む:
【化10】

【0040】
式中、
Aは、1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−シクロヘキシレンを示し、
aは、0または1を示し、
は、2〜9個のC原子を有するアルケニルを示し、および
は、1〜12個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルまたは2〜9個のC原子を有するアルケニルラジカルを示す、
【0041】
− 式IIで表される化合物は、好ましくは以下の式から選択される:
【化11】

【0042】
式中、R3aおよびR4aは、各々、互いに独立してH、CH、CまたはCを示し、「alkyl」は、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示す。特に好ましいのは、式IIaおよびIIfで表され、特に式中R3aがHまたはCHを示す化合物、ならびに式IIcで表され、特に式中R3aおよびR4aがH、CHまたはCを示す化合物である。
【0043】
好ましいのは、さらに、アルケニル側鎖中に末端でない二重結合を有する式IIで表される化合物である:
【化12】

【0044】
式IIで表される極めて特に好ましい化合物は、式
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

で表される化合物である。
【0047】
式Iで表される1種または2種以上の化合物に加えて、本発明の液晶媒体は、特に好ましくは5〜70重量%の式
【化16】

で表される化合物を含む。
【0048】
− 式IIIで表される化合物は、好ましくは以下の式から選択される:
【化17】

式中、「alkyl」およびR3aは、上で示される意味を有し、R3aは、好ましくはHまたはCHを示す。特に好ましいのは、式IIIbで表される化合物である;
【0049】
− 媒体は、好ましくはさらに、以下の式IV〜VIIIから選択される1種または2種以上の化合物を含む:
【化18】

【0050】
式中
は、式Iで示される意味を有し、また
は、F、Cl、各場合で1〜6個のC原子を有する一フッ素化または多フッ素化されたアルキルまたはアルコキシラジカル、各場合で2〜6個のC原子を有する一フッ素化または多フッ素化されたアルケニルまたはアルケニルオキシラジカルを示し、
1〜6は、各々、互いに独立してHまたはFを示し、
は、−C−、−(CH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−CFO−または−OCF−、式VおよびVIではまた単結合を示し、および
rは、0または1を示す。
【0051】
上記の式において、Xは、好ましくはF、Clまたは1、2もしくは3個のC原子を有する一フッ素化もしくは多フッ素化されたアルキルもしくはアルコキシラジカルまたは2もしくは3個のC原子を有する一フッ素化もしくは多フッ素化されたアルケニルラジカルもしくはアルケニルオキシラジカルである。Xは、特に好ましくはF、Cl、CF、CHF、OCF、OCHF、OCFHCF、OCFHCHF、OCFHCHF、OCFCH、OCFCHF、OCFCHF、OCFCFCHF、OCFCFCHF、OCFHCFCF、OCFHCFCHF、OCH=CF、OCF=CF、OCFCHFCF、OCFCFCF、OCFCFCClF、OCClFCFCF、CF=CF、CF=CHF、OCH=CF、OCF=CFまたはCH=CFである。Xは、極めて特に好ましくはFまたはOCFを示す。
【0052】
式IV〜VIIIで表される化合物において、Xは、好ましくはFまたはOCF、さらにOCHF、CF、CFH、Cl、OCH=CFを示す。Rは、好ましくは6個以下のC原子を有する直鎖状アルキルまたはアルケニルである。
【0053】
− 式IVで表される化合物は、好ましくは以下の式から選択される:
【化19】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。
【0054】
好ましくは、式IV中のRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、F、Cl、OCHFまたはOCF、さらにOCH=CFを示す。式IVbで表される化合物において、Rは、好ましくはアルキルまたはアルケニルを示す。式IVdで表される化合物において、Xは、好ましくはCl、さらにFを示す。
【0055】
− 式Vで表される化合物は、好ましくは以下の式Va〜Vjから選択される:
【化20】

【0056】
【化21】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、式VにおけるRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、Fを示す;
【0057】
− 媒体は、式VI−1
【化22】

で表される1種または2種以上の化合物、
【0058】
特に好ましくは以下の式:
【化23】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、式VI中のRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、F、さらにOCFおよびCFを示す、
から選択される化合物を含む。
【0059】
− 媒体は、式VI−2
【化24】

で表される1種または2種以上の化合物、
【0060】
特に好ましくは以下の式:
【化25】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する、
から選択される化合物を含む。
【0061】
好ましくは、式VI中のRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、およびXは、Fを示す;
【0062】
− 媒体は、好ましくは式VIIで表され、式中Zが−CFO−、−CHCH−または−COO−を示す1種または2種以上の化合物、特に好ましくは以下の式:
【化26】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する、
から選択される化合物を含む。好ましくは、式VII中のRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、F、さらにOCFを示す。
【0063】
式VIIIで表される化合物は、好ましくは以下の式から選択される:
【化27】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。式VIII中のRは、好ましくは1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示す。Xは、好ましくはFを示す。
【0064】
− 媒体はさらに、以下の式で表される1種または2種以上の化合物を含む:
【化28】

式中、R、X、YおよびYは、上で示される意味を有し、また
【化29】

は、各々、互いに独立して
【化30】

を示し、
式中、環AおよびBは、両方同時にはシクロヘキシレンを示さない;
【0065】
− 式IXで表される化合物は、好ましくは以下の式から選択される:
【化31】

【0066】
【化32】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、式IX中のRは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、Fを示す。特に好ましいのは、式IXaで表される化合物である;
【0067】
− 媒体はさらに、以下の式から選択される1種または2種以上の化合物を含む:
【化33】

式中、R、XおよびY1〜4は、式Iで示される意味を有し、および
【化34】

は、各々、互いに独立して
【化35】

を示す;
【0068】
− 式XおよびXIで表される化合物は、好ましくは以下の式から選択される:
【化36】

【0069】
【化37】

式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、Rは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、Fを示す。特に好ましい化合物は、YがFを示し、YがHまたはF、好ましくはFを示すものである。
【0070】
− 媒体はさらに、以下の式で表される1種または2種以上の化合物を含む:
【化38】

式中、RおよびRは、各々、互いに独立して、各々9個以下のC原子を有するn−アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキル、アルケニルオキシまたはアルケニルを示し、好ましくは各々、互いに独立して1〜8個のC原子を有するアルキルを示す。Yは、HまたはFを示す。
【0071】
式XIIで表される好ましい化合物は、式
【化39】

で表される化合物であり、
【0072】
式中、
AlkylおよびAlkyl*は、各々、互いに独立して1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルを示し、また
AlkenylおよびAlkenyl*は、各々、互いに独立して2〜6個のC原子を有する直鎖状アルケニルラジカルを示す。
【0073】
特に好ましいのは、式XII−1およびXII−3で表される化合物である。
式XII−3で表される特に好ましい化合物は、式XII−3a:
【化40】

で表される化合物である。
式XIIで表される化合物を、好ましくは3〜30重量%の量で使用する。
【0074】
− 媒体はさらに、以下の式から選択される1種または2種以上の化合物を含む:
【化41】

式中、R、X、YおよびYは、上で示される意味を有する。好ましくは、Rは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、FまたはClを示す;
【0075】
− 式XIIIおよびXVで表される化合物は、好ましくは式
【化42】

で表される化合物から選択され、式中、RおよびXは、上で示される意味を有する。Rは、好ましくは1〜8個のC原子を有するアルキルを示す。式XIIIで表される化合物において、Xは、好ましくはFまたはClを示す。
【0076】
− 媒体はさらに、式D1、D2および/またはD3:
【化43】

式中、Y、Y、RおよびXは、上で示される意味を有する。好ましくは、Rは、1〜8個のC原子を有するアルキルを示し、Xは、Fを示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含む。
【0077】
特に好ましいのは、式
【化44】

式中、Rは、上で示される意味を有し、好ましくは1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキル、特にC、n−Cまたはn−C11を示す、
で表される化合物である。
【0078】
− 媒体はさらに、以下の式:
【化45】

式中、Y、RおよびRは、上で示される意味を有する、で表される1種または2種以上の化合物を含む。RおよびRは、好ましくは、各々、互いに独立して1〜8個のC原子を有するアルキルを示す。
【0079】
− 媒体はさらに、以下の式:
【化46】

式中、X、YおよびYは、上で示される意味を有し、「Alkenyl」は、C2〜7アルケニルを示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含む。特に好ましいのは、以下の式:
【化47】

式中、R3aは、上で示される意味を有し、好ましくはHを示す、
で表される化合物である;
【0080】
− 媒体はさらに、式XIX〜XXIX:
【化48】

【0081】
【化49】

【0082】
【化50】

式中、Y1〜4、RおよびXは、各々、互いに独立して上で示される意味の1つを有する、
から選択される1種または2種以上の四環式化合物を含む。Xは、好ましくはF、Cl、CF、OCFまたはOCHFである。Rは、好ましくは各々8個以下のC原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを示す。
【0083】
− 本明細書中で示される式において、
【化51】

は、好ましくは
【化52】

を示す。
【0084】
− 本明細書中で示される式中のRおよびR0*は、好ましくは2〜7個のC原子を有する直鎖状アルキルまたはアルケニルである;
− 本明細書中で示される式中のXは、好ましくはF、さらにOCF、ClまたはCFである;
【0085】
− 媒体は、好ましくは式Iで表される1種、2種または3種の化合物、特に式I2および/またはI5で表される少なくとも1種の化合物を含む;
− 媒体は、好ましくは式I、II、III、V、VI−1、VI−2、XII、XIII、XIV、XVII、XXIII、XXVで表される化合物の群から選択される1種または2種以上の化合物を含む;
【0086】
− 媒体は、好ましくは式VI−1で表される1種または2種以上の化合物を含む;
− 媒体は、好ましくは式VI−2で表される1種または2種以上の化合物を含む;
− 媒体は、好ましくは0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%、特に好ましくは1〜3重量%の式Iで表される化合物を含む;
【0087】
− 式II〜XXVIIで表される化合物の全体としての混合物中での比率は、好ましくは20〜99.5重量%である;
− 媒体は、好ましくは25〜80重量%、特に好ましくは30〜70重量%の式IIおよび/またはIIIで表される化合物を含む;
【0088】
− 媒体は、好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%の式Vで表される化合物を含む;
− 媒体は、好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは6〜25重量%の式VI−1で表される化合物を含む;
− 媒体は、好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは4〜25重量%の式VI−2で表される化合物を含む;
【0089】
− 媒体は、5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%の式XIIで表される化合物を含む;
− 媒体は、好ましくは1〜25重量%、特に好ましくは2〜15重量%の式XIIIで表される化合物を含む;
【0090】
− 媒体は、好ましくは5〜45重量%、特に好ましくは10〜35重量%の式XIVで表される化合物を含む;
− 媒体は、好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは2〜15重量%の式XVIで表される化合物を含む;
【0091】
− 媒体はさらに、式St−1〜St−3:
【化53】

式中、R、Y、YおよびXは、上で示される意味を有する、
で表される1種または2種以上の化合物を含む。Rは、好ましくは1〜6個のC原子を有する直鎖状アルキルを好ましくは示す。Xは、好ましくはFまたはOCFである。Yは、好ましくはFを示す。Yは、好ましくはFを示す。好ましいのは、さらにY=FでありY=Hである化合物である。式St−1〜St−3で表される化合物を、好ましくは、本発明の混合物中で、3〜30重量%、特に5〜25重量%の濃度で使用する。
【0092】
− 媒体はさらに、式Py−1〜Py−5:
【化54】

式中、Rは、好ましくは2〜5個のC原子を有する直鎖状アルキルを示す、
で表される1種または2種以上のピリミジンまたはピリジン化合物を含む。xは0または1を示し、好ましくはx=1である。好ましい混合物は、3〜30重量%、特に5〜20重量%のこれらのピリ(ミ)ジン化合物(単数または複数)を含む。
【0093】
慣用の液晶材料と、しかし特に式II〜XXVIIで表される1種または2種以上の化合物と混合した、比較的小さい比率の式Iで表される化合物さえも、光安定性の顕著な増大および低い複屈折値、これと共に同時に観察される低いスメクチック−ネマチック転移温度を有する広いネマチック相をもたらし、保存寿命を改善することが見出された。同時に、当該混合物は、極めて低いしきい値電圧およびUVに曝露した際のVHRに対し極めて良好な値を示す。
【0094】
本出願における用語「Alkyl」または「Alkyl*」は、1〜7個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状アルキル基、特に直鎖状基メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。1〜6個の炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0095】
本出願における用語「Alkenyl」または「Alkenyl*」は、2〜7個の炭素原子を有する直鎖状および分枝状アルケニル基、特に直鎖状基を包含する。好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特にC〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個以下の炭素原子を有する基が、一般的に好ましい。
【0096】
本出願における用語「フルオロアルキル」は、少なくとも1個のフッ素原子、好ましくは末端フッ素を有する直鎖状基、すなわちフルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルを包含する。しかし、他の位置のフッ素は、除外されない。
【0097】
本出願における用語「オキサアルキル」または「アルコキシ」は、式C2n+1−O−(CHで表され、式中nおよびmは各々互いに独立して1〜6を示す直鎖状ラジカルを包含する。mはまた、0を示してもよい。好ましくは、n=1およびm=1〜6またはm=0およびn=1〜3である。
【0098】
およびXの意味の好適な選択によって、アドレス時間、しきい値電圧、伝達特性線の急峻度などを、所望の様式で修正することができる。例えば、1E−アルケニルラジカル、3E−アルケニルラジカル、2E−アルケニルオキシラジカルなどは、一般的に、アルキルおよびアルコキシラジカルと比較して短いアドレス時間、改善されたネマチック傾向および弾性定数k33(ベンド)とk11(スプレー)との間の高い比率をもたらす。4−アルケニルラジカル、3−アルケニルラジカルなどは、一般的に、アルキルおよびアルコキシラジカルと比較して低いしきい値電圧およびk33/k11の低い値を生じる。本発明の混合物は、特に高いK値によって識別され、したがって従来技術からの混合物より顕著に迅速な応答時間を有する。
【0099】
前述の式で表される化合物の最適の混合比は、実質的に所望の特性、前述の式で表される構成成分の選択および存在し得るあらゆる他の構成成分の選択に依存する。
上で示される範囲内の好適な混合比を、場合ごとに容易に決定することができる。
【0100】
前述の式で表される化合物の本発明の混合物中での合計量は、重大ではない。したがって、当該混合物は、1種または2種以上の他の構成成分を様々な特性の最適化の目的のために含むことができる。しかし、当該混合物の特性の所望の改善に関する観察された効果は、一般的に前述の式で表される化合物の合計濃度が高いほど大きい。
【0101】
特に好ましい態様において、本発明の媒体は、式IV〜VIIIで表され、式中XがF、CF、OCF、OCHF、OCH=CF、OCF=CFまたはOCF−CFHを示す化合物を含む。式Iで表される化合物との好ましい相乗作用によって、特に有利な特性がもたらされる。特に、式IおよびVIまたはIおよびXIまたはIおよびVIおよびXIで表される化合物を含む混合物は、それらの低いしきい値電圧によって識別される。
【0102】
本発明の媒体で使用することができる前述の式およびその従属式で表される個々の化合物は、知られているか、または既知の化合物と同様にして製造することができる。
【0103】
本発明はまた、2つの面平行な外板を有し、それがフレームと共にセルを形成する電気光学的ディスプレイ、例えばTN、STN、TFT、OCB、IPS、FFS、HT−VAまたはMLCディスプレイ、当該外板上の個々のピクセルを切り換えるための集積された非線形素子、ならびに正の誘電異方性および高い比抵抗を有し、セル中に位置し、このタイプの媒体を含むネマチック液晶混合物、ならびに電気光学的目的のためのこれらの媒体の使用に関する。
【0104】
さらに、本発明の混合物はまた、HT−VA用途とも称される正のVA用途に適している。これらは、平面内駆動電極構造および正の異方性を有する液晶媒体のホメオトロピック整列を有する電気光学的ディスプレイを意味するものと解釈される。
本発明の混合物は、低い作動電圧を有するTN−TFTディスプレイ用途に、すなわち特に好ましくはノートブック用途に特に適している。
【0105】
本発明の液晶混合物によって、利用可能なパラメーター自由度の顕著な拡張が可能になる。透明点、低温における粘度、熱安定性およびUV安定性ならびに高い光学異方性の達成可能な組み合わせは、従来技術からの以前の材料よりはるかに優れている。
本発明の混合物は、携帯電話機用途および高いΔnのTFT用途、例えばPDA、ノートパソコン、LCDテレビ受像機およびモニターに、ならびにまたそれらの高い複屈折に起因して3Dレンズ用途に特に適している。
【0106】
本発明の液晶混合物は、〜−20℃のおよび好ましくは〜−30℃の、特に好ましくは〜−40℃のネマチック相、ならびに≧70℃、好ましくは≧75℃の透明点を保持する一方、同時に≦120mPa・s、特に好ましくは100mPa・sの回転粘度γを達成することを可能にし、迅速な応答時間を有する優れたMLCディスプレイを達成することを可能にする。
【0107】
本発明の液晶混合物の誘電異方性Δεは、好ましくは≧+8、特に好ましくは≧+12である。さらに、当該混合物は、低い作動電圧によって特徴づけられる。本発明の液晶混合物のしきい値電圧は、好ましくは≦1.5V、特に≦1.2Vである。
本発明の液晶混合物の複屈折Δnは、好ましくは≧0.08、特に≧0.10および特に好ましくは≧0.11である。
【0108】
本発明の液晶混合物のネマチック相範囲は、好ましくは少なくとも90°、特に少なくとも100°の幅を有する。この範囲は、好ましくは−25℃〜+70℃に少なくとも及ぶ。
【0109】
本発明の混合物をFFS用途で使用する場合には、混合物は、好ましくは3〜12の誘電異方性の値および0.07〜0.13の光学異方性の値を有する。
【0110】
本発明の混合物の構成成分の好適な選択によって、より高い透明点(例えば100℃より高い)をより高いしきい値電圧にて達成するか、またはより低い透明点をより低いしきい値電圧にて達成し、これと共に他の有利な特性を保持することがまた可能であることは、言うまでもない。相応してわずかに増大するに過ぎない粘度にて、より高いΔεおよびしたがって低いしきい値を有する混合物を得ることは、同様に可能である。
【0111】
本発明のMLCディスプレイは、好ましくは第一のGoochおよびTarry透過率極小値で作動し[C.H. GoochおよびH.A. Tarry, Electron. Lett. 10, 2-4, 1974;C.H. GoochおよびH.A. Tarry, Appl. Phys., Vol. 8, 1575-1584, 1975]、ここで特に好ましい電気光学的特性、例えば特性線の高い急峻度およびコントラストの低い角度依存性(ドイツ国特許第30 22 818号)に加えて、より低い誘電異方性が、第二極小値における類似ディスプレイにおけるのと同一のしきい値電圧にて十分である。
【0112】
これによって、シアノ化合物を含む混合物の場合におけるよりも顕著に高い比抵抗値を、本発明の混合物を第一極小値にて使用して達成することが可能になる。個々の構成成分および重量によるそれらの比率を好適に選択することによって、当業者は、MLCディスプレイのあらかじめ特定した層の厚さに必要な複屈折を、簡単な常習的方法を使用して設定することができる。
【0113】
偏光子、電極基板および表面処理した電極からの本発明のMLCディスプレイの構造は、この種のディスプレイについての通常の設計に相当する。通常の設計の用語は、本明細書中で広く引用され、また、特にポリSi TFTまたはMIMに基づくマトリックス表示素子を含むMLCディスプレイのすべての派生および修正を包含する。
【0114】
しかし、本発明のディスプレイと、ねじれネマチックセルに基づく現在までの慣用のディスプレイとの間の重要な差異は、液晶層の液晶パラメーターの選択にある。
【0115】
本発明で使用することができる液晶混合物を、自体慣用の方式で、例えば式Iで表される1種または2種以上の化合物を式II〜XXVIIで表される1種もしくは2種以上の化合物と、または他の液晶化合物および/もしくは添加剤と混合することにより製造する。一般的に、少ない方の量で使用する所望の量の構成成分を、主な構成成分を構成する構成成分に、有利には高められた温度で溶解する。また、構成成分を有機溶媒、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノールに溶解した溶液を混合し、十分に混合した後に溶媒を再び例えば蒸留によって除去することが、可能である。
【0116】
誘電体はまた、当業者に知られており、文献に記載されている他の添加剤、例えばUV安定化剤、例えばCiba ChemicalsからのTinuvin(登録商標)、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、ナノ粒子などを含んでいてもよい。例えば、0〜15%の多色性染料またはキラルなドーパントを加えることができる。好適な安定化剤およびドーパントを、以下に表CおよびDで述べる。
【0117】
所望のチルト角を局所的に設定するために、重合性化合物をまた、追加的に本発明の混合物に加えてもよい。好ましい重合性化合物を、表Eに列挙する。
【0118】
本出願において、および以下の例において、液晶化合物の構造を、頭字語によって示し、化学式への変換を、表Aに従って行う。すべてのラジカルC2n+1およびC2m+1は、それぞれn個よびm個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルである;n、mおよびkは整数であり、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す。表Bにおけるコーディングは自明である。表Aで、基本構造についての頭字語のみを示す。個々の場合、基本構造についての頭字語に、長音記号で分離して、置換基R1*、R2*、L1*およびL2*に対するコードが続く:
【0119】
【表1】

【0120】
好ましい混合物構成成分を、表AおよびBに示す。
表A
【化55】

【0121】
【化56】

【0122】
表B
【化57】

【0123】
【化58】

【0124】
【化59】

【0125】
【化60】

【0126】
【化61】

【0127】
【化62】

【0128】
【化63】

【0129】
特に好ましいのは、式Iで表される化合物に加えて、表Bからの少なくとも1種、2種、3種、4種または5種以上の化合物を含む液晶混合物である。
【0130】
表C
表Cは、本発明の混合物に一般的に加えられる可能なドーパントを示す。当該混合物は、好ましくは0〜10重量%、特に0.01〜5重量%および特に好ましくは0.01〜3重量%のドーパントを含む。
【化64】

【0131】
【化65】

【0132】
表D
例えば本発明の混合物に0〜10重量%の量で加えることができる安定化剤を、以下に述べる。
【化66】

【0133】
【化67】

【0134】
【化68】

【0135】
【化69】

【0136】
【化70】

【0137】
表E
例えば本発明の混合物に0.5〜5重量%の量で加えることができる重合性化合物を、以下に示す。所要に応じて、開始剤をまた、重合のために0〜1%の量で加えなければならない。
【化71】

【0138】
【化72】

【0139】
【化73】

【0140】
【化74】

【0141】
【化75】

【0142】
【化76】

【0143】
【化77】

【0144】
以下の例は、本発明を、それを限定せずに説明することを意図する。
【0145】
例:
「慣用の精製操作」は、以下のことを意味する:所要なら水を加え、混合物を、塩化メチレン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルまたはトルエンで抽出し、相を分離し、有機相を乾燥させ、蒸発させ、生成物を、減圧下での蒸留または結晶および/またはクロマトグラフィーによって精製する。以下の略語を使用する:
【0146】
DAST ジエチルアミノ硫黄三フッ化物
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DDQ ジクロロジシアノベンゾキノン
DIBALH 水素化ジイソブチルアルミニウム
KOT カリウム第三ブトキシド
RT 室温
THF テトラヒドロフラン
pTSOH p−トルエンスルホン酸
TMEDA テトラメチルエチレンジアミン
【0147】
例1
【化78】

ステップ1.1
【化79】

0.13molの塩化イソプロピルマグネシウム(THF中2mol)を、700mlの乾燥THF中の0.01molのマグネシウムに、20℃で加える。混合物をさらに20分間撹拌し、0.11molのを200mlのTHFに溶解した溶液を、次に20℃で滴加する。
【0148】
室温で1時間後、0.13molのホルミルピペリジンを100mlのTHFに溶解した溶液を、次に同一の温度で滴加する。混合物を室温でさらに1時間撹拌し、次に300mlの1N HClを使用して加水分解する。生成物を慣用の方式での抽出により単離し、n−ヘプタンから−20℃で再結晶化する。
【0149】
ステップ1.2
【化80】

0.053molの臭化エチルトリフェニルホスホニウムを、80mlのTHFに懸濁させ、50mlのTHFに溶解した0.05molのカリウム第三ブトキシドを、0℃で滴加する。0℃で30分後、THFに溶解した0.045molのを、この温度で滴加する。
【0150】
水を使用した加水分解の後、混合物を、慣用の方式での抽出により精製操作し、生成物(Z/E混合物)を、ヘキサンを使用したシリカゲル上のクロマトグラフィーにより単離する。
【0151】
このZ/E混合物を、40mlのブチロニトリルに溶解し、14mlの1M HClを加え、3部のベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩(各々0.005mol)を、4時間の間隔で60℃で加える。混合物をさらに8時間撹拌し、慣用の方式での抽出により精製操作し、生成物を、ヘキサンを使用したシリカゲル上のクロマトグラフィーで単離する。純粋なE生成物を、エタノールからの再結晶により得る。
【0152】

【化81】

で表される以下の化合物を、同様にして製造する:
【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
例2
【化82】

0.12molの削り屑状マグネシウム(magnesium turnings)を、最初に10mlのTHF中に導入し、0.12molのE−5−ブロモペンタ−2−エンをTHFに溶解した溶液を、沸点で加える。混合物を、沸騰にてさらに1時間加熱し、THFに溶解した0.13molの無水塩化亜鉛を、次に加える。THFに溶解した0.08molのを、その後冷却せずに滴加する。0.0024molのPd−DPPF触媒の添加後に、温度は約57℃に上昇する。混合物を、沸騰でさらに3h加熱し、水の添加によって加水分解し、慣用の方式における抽出によって精製操作する。生成物を、ペンタンを使用したシリカゲル上のクロマトグラフィーによって単離し、純粋なE材料を、アセトニトリル/水混合物を使用したRPシリカゲル上の分取HPLCによって得る。
C 25 I;Δn=0.0960;Δε=19.1;γ=38
【0156】

【化83】

で表される以下の化合物を、同様にして製造する:
【0157】
【表4】

【0158】
【表5】

【0159】
【表6】

【0160】
以下の混合物例は、本発明を、それを限定せずに説明することを意図する。
本明細書中で、パーセンテージのデータは、重量パーセントを示す。すべての温度を、摂氏度で示す。m.p.は、融点を示し、cl.p.=透明点である。さらに、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相およびI=アイソトロピック相である。これらの記号の間のデータは、転移温度を表す。さらに、
【0161】
− Δnは、589nmおよび20℃における光学異方性を示し、
− γは、20℃における回転粘度(mPa・s)を示し、
− V10は、10%透過率(板表面に垂直な視野角)についての電圧(V)、(しきい値電圧)を示し、
− Δεは、20℃および1kHzにおける誘電異方性を示し(Δε=ε−ε、式中εは、分子の縦軸に平行な誘電率を示し、εは、それに垂直な誘電率を示す)。
【0162】
電気光学的データを、他に明確に示さない限り、TNセルで第一極小値にて(すなわち0.5μmのd・Δn値にて)20℃で測定する。光学的データを、他に明確に示さない限り20℃で測定する。すべての物性を、他に明確に示さない限り"Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals", ステータス1997年11月、Merck KGaA、ドイツ国に従って決定し、20℃の温度に対して適用する。
【0163】
例M1
【表7】

【0164】
TNセル中の混合物M1における単一10%のチルト
【表8】

【0165】
上記の例示により、式Iで表されるアルケニル化合物、例えばUQU−1V−Fが、対応するアルキル化合物と比較して、混合物M1におけるプレチルトを平均を上回って増大させることが示される。
【0166】
例M2
【表9】

【0167】
例M3
【表10】

【0168】
例M4
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

式中、
Xは、F、Cl、CN、OCN、SF、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルキルラジカル、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルコキシラジカル、2〜6個のC原子を有するフッ素化アルケニルラジカル、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルキルアルコキシラジカルを示し、
1〜4は、各々、互いに独立してHまたはFを示し、および
Alkenylは、2〜6個のC原子を有するアルケニルラジカルを示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする液晶媒体。
【請求項2】
さらに、式IIおよび/またはIII:
【化2】

式中、
Aは、1,4−フェニレンまたはトランス−1,4−シクロヘキシレンを示し、
aは、0または1を示し、
は、2〜9個のC原子を有するアルケニルを示し、および
は、1〜12個のC原子を有する直鎖状アルキルラジカルまたは2〜9個のC原子を有するアルケニルラジカルを示す、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶媒体。
【請求項3】
さらに、式
【化3】

【化4】

【化5】

式中、
3aおよびR4aは、各々、互いに独立してH、CH、CまたはCを示し、
「alkyl」は、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキル基を示す、
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶媒体。
【請求項4】
さらに、式IV〜VIII:
【化6】

式中、
は、1〜15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシラジカルを示し、ここでさらに、これらのラジカル中の1つまたは2つ以上のCH基は、各々、互いに独立して
【化7】

によって、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、またここでさらに、1個または2個以上のH原子は、ハロゲンによって置き換えられていてもよく、
は、F、Cl、1〜6個のC原子を有する一フッ素化または多フッ素化されたアルキルまたはアルコキシラジカル、2〜6個のC原子を有する一フッ素化または多フッ素化されたアルケニルまたはアルケニルオキシラジカルを示し、
1〜6は、各々、互いに独立してHまたはFを示し、
は、−C−、−(CH−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C−、−CHCF−、−CFCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−CFO−または−OCF−、式VおよびVIではまた単結合を示し、および
rは、0または1を示す、
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項5】
さらに、式Va〜Vj:
【化8】

【化9】

【化10】

式中、RおよびXは、請求項4で示される意味を有する、
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項6】
さらに、式VI−1a〜VI−1d:
【化11】

式中、RおよびXは、請求項4で示される意味を有する、
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項7】
さらに、式VI−2a〜VI−2f:
【化12】

式中、RおよびXは、請求項4で示される意味を有する、
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項8】
さらに、式Xおよび/またはXI:
【化13】

式中、
およびXは、請求項4で示される意味を有し、
1〜4は、各々、互いに独立してHまたはFを示し、
【化14】

は、各々、互いに独立して、
【化15】

を示す、
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項9】
さらに、式XII
【化16】

式中、
およびRは、各々、互いに独立して、各々9個以下のC原子を有するn−アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキル、アルケニルオキシまたはアルケニルを示し、Yは、HまたはFを示す、
で表される化合物から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項10】
さらに、以下の式:
【化17】

式中、R、X、YおよびYは、請求項4で示される意味を有する、
から選択される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項11】
0.5〜10重量%の式Iで表される化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項12】
さらに、1種または2種以上のUV安定化剤および/または酸化防止剤を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶媒体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の液晶媒体の、電気光学的目的のための使用。
【請求項14】
アクティブマトリクスおよびパッシブマトリックスディスプレイにおける、ならびに液晶レンズにおける、請求項13に記載の液晶媒体の使用。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の液晶媒体を含む、電気光学的液晶ディスプレイ。
【請求項16】
式Iで表される1種または2種以上の化合物を、少なくとも1つの他のメソゲン性化合物および随意に添加剤と混合することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の液晶媒体の製造方法。
【請求項17】
式I
【化18】

式中、
Xは、F、Cl、CN、OCN、SF、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルキルラジカル、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルコキシラジカル、2〜6個のC原子を有するフッ素化アルケニルラジカル、1〜6個のC原子を有するフッ素化アルキルアルコキシラジカルを示し、
1〜4は、各々、互いに独立してHまたはFを示し、および
Alkenylは、2〜6個のC原子を有するアルケニルラジカルを示す、
で表される化合物。
【請求項18】
式I1〜I5:
【化19】

式中、
XおよびL1〜4は、請求項17で示される意味を有する、
で表される化合物。

【公表番号】特表2013−521351(P2013−521351A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555320(P2012−555320)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000704
【国際公開番号】WO2011/107218
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】