説明

液晶組成物およびこれを利用した液晶表示装置

【課題】TNモード液晶表示装置が提供される。
【解決手段】液晶表示装置は互いに対向して配置され、陽の誘電率異方性を有する液晶分子が第1表示板および第2表示板の間に介在された液晶層であって、電気場が生成されない場合、各液晶の長軸が第1表示板から第2表示板方向に螺旋形に配置される構造を有する液晶層を含み、液晶分子の誘電率異方性は4.5以上、5.7以下であり、液晶分子のスプレー弾性係数を表すK11は14以下であり、液晶分子のベンド弾性係数を表すK33は12以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶組成物およびこれを利用した液晶表示装置に関し、より詳細にはTNモード液晶組成物およびこれを利用した液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)はフラットパネル表示装置(Flat Panel Display)の一種で、電極が形成されている2枚の基板とその間に挿入されている液晶層とで形成されており、電極に電圧を印加し、液晶層の液晶分子を再配列させることによって透過される光の量を調節するようになっている。
【0003】
液晶表示装置は液晶層の液晶分子が配列された形態によって、TNモード(Twisted Nematic mode)、IPSモード(In−Plane Switching mode)およびVAモード(Vertically Aligned mode)など多様な形態で分類することができる。
【0004】
液晶表示装置が大型化されることによって、視野角、CR(Contrast ratio)、応答速度が向上された液晶表示装置に対する要求が台頭され、特に動画像と関連して向上された応答速度を有する液晶表示装置に対する要求がある。
【0005】
しかし、応答速度を向上させるために液晶分子の回転粘度、弾性係数などの物性を調節する場合、視野角、CRなどが低下される問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許出願公開第10−2006−083643号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は視野角、CRおよび応答速度が向上されたTNモード液晶表示装置を提供するものである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は視野角、CRおよび応答速度が向上されたTNモード液晶組成物を提供するものである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は次の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するための本発明の実施形態による液晶表示装置は、互いに配向して配置され、陽の誘電率異方性を有する液晶分子が第1表示板および第2表示板の間に介在された液晶層であって、前記第1表示板と前記第2表示板の間に電気場が生成されない場合は、各液晶の長軸が第1表示板から第2表示板の方向に螺旋形に配置される構造を有する液晶層を含み、液晶分子の誘電率異方性は4.5以上、5.7以下であり、K11は14以下であり、K33は12以上である。
【0011】
前記課題を達成するための本発明の実施形態による液晶組成物は、下記化学式2で表示される第1極性化合物を全体組成物に対して含み、液晶分子の誘電率異方性は4.5以上5.7以下であり、K11は14以下であり、K33は12以上である。
[化学式2]



ここで、Xは


あるいは


であり、Yはアルカン、シクロアルカンあるいは水素である。
【0012】
具体的な事項は詳細な説明および図に含まれている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、TNモード液晶組成物および液晶表示装置は視野角、CR、応答速度が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による液晶表示装置の配置図である。
【図2】図1のII−II’に沿って切断された断面図である。
【図3】本発明の実施形態による液晶表示装置で画素構造の動作状態を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態による液晶表示装置で画素構造の動作状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は添付される図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すれば明確になるであろう。しかし本発明は以下で開示される実施形態に限定されるものではなく互いに異なる多様な形態で具現されるものであり、単に本実施形態は本発明の開示を完全にし、当業者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。本発明は特許請求の範囲等によって定義される。明細書全体において同一の参照符号は同一の構成要素を示すものである。
【0016】
以下、図1および図2を参考にし、本発明の実施形態による液晶表示装置について説明する。
【0017】
図1は本発明の実施形態による液晶表示装置の配置図である。図2は図1のII−II’に沿って切断された断面図である。
【0018】
図1および図2を参考にすれば、本発明の実施形態による液晶表示装置は、第1表示板133、第1表示板133に対向して配置された第2表示板134および第1表示板133と第2表示板134の間に介在した液晶層3を含む。また液晶表示装置は、第1表示板133および第2表示板134の外側に各々積層配置された補償フィルム210および偏光フィルム212を含む。
【0019】
第1表示板133は第1基板10、第1基板10の上に形成された薄膜トランジスタ300、薄膜トランジスタ300の上に形成された保護膜70および薄膜トランジスタ300と電気的に連結された画素電極82を含む。ここで第1基板10は、例えば、ガラスなどの透明な絶縁物質である。
【0020】
薄膜トランジスタ300は行方向に配置されたゲート線22と列方向に配置されたデータ線62が交差する部分に配置され、ゲート線22に印加されるゲート信号によって、データ線62から提供されるデータ信号を画素電極82に印加する。薄膜トランジスタ300はゲート電極326、ゲート絶縁膜30、半導体層340、抵抗性接触層355、356、ソース電極365およびドレーン電極366を含む。
【0021】
ゲート電極326は第1基板10の上に形成され、ゲート線22と電気的に連結する。ゲート電極326は、例えば、アルミニウム(Al)やアルミニウム合金などのアルミニウム系列の金属、銀(Ag)や銀合金などの銀系列の金属、銅(Cu)や銅合金などの銅系列の金属、モリブデン(Mo)やモリブデン合金などのモリブデン系列の金属、クロム(Cr)、チタニウム(Ti)、タンタル(Ta)などで形成され得る。
【0022】
ゲート絶縁膜30はゲート電極326あるいはゲート線22の上に形成される。ゲート絶縁膜30は、例えば、窒化ケイ素あるいは酸化ケイ素などの絶縁物質である。
【0023】
半導体層340はゲート絶縁膜30上に形成され、水素化非晶質ケイ素(hydrogenated amorphous silicon)あるいは多結晶ケイ素などから形成される。図では半導体層340を島型で例示したが、これに限定するものではなく、線形など多様な形態としてよい。
【0024】
抵抗性接触層355、356は、半導体層340の上に形成され、半導体層340、ソース電極365およびドレーン電極366の電気的抵抗を小さくする役割を担っている。抵抗性接触層355、356は、例えば、シリサイドあるいはn型ドウパントが高濃度でドーピングされているn+水素化非晶質ケイ素などの物質で形成される。
【0025】
ソース電極365およびドレーン電極366は抵抗性接触層355、356の上に形成され、各々データ線62および画素電極82と電気的に連結する。ここでソース電極365は半導体層340と少なくとも一部分が重畳されて形成され、ドレーン電極366はゲート電極326を中心にソース電極365と対向し、半導体層340と少なくとも一部分が重畳されて形成される。
【0026】
保護膜70は第1基板10および薄膜トランジスタ300の上に形成される。保護膜70は、例えば、窒化ケイ素あるいは酸化ケイ素から成る無機物、平坦化特性が優れ感光性(photosensitivity)を有する有機物あるいはPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)で形成されるa−Si:C:O、a−Si:O:Fなどの低誘電率絶縁物質などで形成される。
【0027】
画素電極82は保護膜70の上に形成され、ゲート信号によってデータ線62から提供されたデータ信号を液晶層3に提供する役割をする。画素電極82は保護膜70内に形成されたコンタクトホールを介して、ドレーン電極366と電気的に連結する。ここで画素電極82は、例えば特に好ましくはITO(Indium Tin Oxide)あるいはIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電体あるいはアルミニウムなどの反射性導電体で形成される。
【0028】
図面には図示していないが、画素電極82の上には液晶層3を配向できる配向膜が形成され得る。
【0029】
第2表示板134は第1表示板133と対向されて配置され、第2基板96、ブラックマトリックス94、色フィルタ98および共通電極90を含む。ここで第2基板96は第1基板10と類似にガラスなどの透明な絶縁物質で形成される。
【0030】
ブラックマトリックス94は第2基板96の上に配置され、光が漏れるのを防止する役割を果たす。具体的には、ブラックマトリックス94は第1表示板133のゲート線22、データ線62および薄膜トランジスタ300の一部を覆うように形成される。
【0031】
色フィルタ98は各画素電極82に対応して第2基板96およびブラックマトリックス94の一部の上に順次に配列される。色フィルタ98は、例えば、赤色、緑色、青色フィルタである。
【0032】
共通電極90は色フィルタ98およびブラックマトリックス94の上に形成され、画素電極82と共にデータ信号に対応される電圧を液晶層3に印加する。ここで共通電極90は多数の画素に対して一体型で形成され得る。
【0033】
図面には図示していないが、共通電極90の上には液晶層3を配向する配向膜が形成され得る。
偏光フィルム212は第1表示板133および第2表示板134の外側に各々配置され、光を偏光させる役割を果たす。ここで各偏光フィルム212の偏光軸(あるいは透過軸)は互いに直交するよう配置され得る。また各偏光フィルム212の偏光軸は、配向膜のラビング方向と45゜あるいは135゜を成すように配置され得る。
【0034】
補償フィルム210は第1表示板133と偏光フィルム212あるいは第2表示板134と偏光フィルム212の間に配置され、液晶表示装置の視野角を向上させる役割を果たす。補償フィルム210は、例えば、ティスコティク(discotic)液晶層をハイブリッド配向させた液晶ポリマー補償フィルムである。例えば、補償フィルム210として富士フイルム社製のWVフィルムを用いてもよい。
【0035】
液晶層3は第1表示板133および第2表示板134の間に介在され、画素電極82および共通電極90の間に印加される電圧によって光透過率を変化させる役割を果たす。
【0036】
本発明の実施形態による液晶層3は陽の誘電率異方性を有するツイストネマチック(Twisted Nematic;以下TNという)液晶分子31を含む。液晶層3の液晶組成物は非極性化合物および極性化合物を含む。
【0037】
非極性化合物は液晶組成物に対して、下記化学式1で表記される化合物を25ないし40重量%含む。
[化学式1]


【0038】
ここでR1、R2はアルカン、シクロアルカンあるいはアールケンである。
【0039】
極性化合物は液晶組成物に対して、20ないし60重量%であり得る。
【0040】
また極性化合物は下記化学式2および化学式3で各々表記される第1極性化合物および第2極性化合物を含む。ここで第1極性化合物は液晶組成物に対して例えば15重量%以下であり、第2極性化合物は液晶組成物に対して例えば15重量%以下である。
[化学式2]



ここでXは


あるいは


である、Yはアルカン、シクロアルカンあるいは水素である。
[化学式3]


【0041】
ここでR3はアルカン、シクロアルカンあるいはアールケンである。
【0042】
図3および図4は本発明の実施形態による液晶表示装置における画素構造の動作状態を説明する図である。
【0043】
図3を参考にすれば、画素電極82と共通電極90の間に電圧差がなく、液晶層3に電気場が印加されない場合、液晶層3の液晶分子31はその長軸方向が第1表示板133および第2表示板134の表面に平行となるよう配列される。また各液晶分子31の長軸は第1表示板133から第2表示板134の方向に螺旋形に配置される構造を有する。
【0044】
偏光フィルム212の偏光軸が互いに垂直である場合、液晶層3を通過した光は第2表示板134の上に配置された偏光フィルム212をそのまま通過して明るい状態を具現し、液晶表示装置はノーマリーホワイトモード(normally white mode)で駆動されることとなる。これとは異なり、偏光フィルム212の偏光軸が互いに平行である場合、液晶層3を通過した光は第2表示板134の上に配置された偏光フィルム212によって遮断されて暗い状態を具現し、液晶表示装置はノーマリーブラックモード(normally black mode)で駆動されることとなる。
【0045】
図4を参考にすれば、画素電極82と共通電極90の間にデータ信号に対応する電圧差が形成されて液晶層3に電気場が印加され得る。この場合、液晶層3の液晶分子31はその長軸方向が第1表示板133および第2表示板134の表面に垂直に配列され、第1表示板133下部に配置された偏光フィルム212を通過した光は偏光せずに液晶層3を通過することができる。これによって、ノーマリーホワイトモードの場合、液晶層3を通過した光が第2表示板134上部に配置された偏光フィルム212によって遮断されて暗い状態を具現することができる。これとは異なり、ノーマリーブラックモードである場合、第1表示板133下部に配置された偏光フィルム212を通過した光が第2表示板134上部に配置された偏光フィルム212をそのまま通過して明るい状態を具現することができる。
【0046】
このような、TNモード液晶分子31は、前述したように、データ信号に対応する電圧によって第1表示板133と第2表示板134の間に形成された電気場の有無に応じ、電気場生成方向に配列されたり、再び本来の配列状態に戻たりすることが可能となる。この時液晶分子31が電気場生成方向に配列されるのに要する時間、すなわち上昇時間(rising time;τr)および再び元の配列状態に戻るのに要する時間、すなわち下降時間(falling time;τf)は液晶分子31の応答速度(τt)と密接な関係がある。すなわち、液晶分子31の上昇時間(τr)および下降時間(τf)が短ければ液晶の応答速度(τt)が速くなり得る。
【0047】
液晶分子31の上昇時間(τr)および下降時間(τf)は下記式1および式2によって表現される。
式1



式2


【0048】
ここで、dは液晶層3の厚さ、すなわちセルギャップを表し、γ1は液晶分子31の回転粘度を表し、ε0は自由空間の遺伝率を表し、△εは誘電率異方性を表し、Kは弾性係数を表し、Vは駆動電圧、すなわち第1表示板133と第2表示板134の間に印加される電圧を表し、Vthはしきい電圧を表す。
【0049】
式1および式2に示したように、液晶分子31の上昇時間(τr)、下降時間(τf)および応答速度(τt)は液晶分子31の回転粘度(γ1)、誘電率異方性(△ε)、弾性係数(K)などの液晶の物性、駆動電圧(V)、セルギャップ(d)などによって決定され得る。例えば、回転粘度(γ1)を低くしたり、弾性係数(K)を増加させることで液晶分子31の応答速度(τt)が向上し得る。
【0050】
しかし、液晶分子31の弾性係数(K)が増加する場合、誘電率異方性(△ε)、しきい電圧(Vth)など他の物性が変化して液晶表示装置の視野角およびCRなどが劣化され得る。例えば、下記式3を参考にすれば、弾性係数(K)を増加させる場合、しきい電圧(Vth)が上昇し、ブラックとホワイトの中間グレー領域で液晶表示装置の視野角およびCRなどが低下し得る。
式3


【0051】
ここでK22は液晶分子31のツイスト(twist)弾性係数を表す。
【0052】
本発明の実施形態による液晶表示装置は視野角、CRの劣化を防止しつつ、応答速度を向上させるために、液晶層3に含まれる液晶分子31の誘電率異方性(△ε)が約4.5以上5.7以下となってもよい。誘電率異方性(△ε)が約4.5未満あるいは約5.7を超過する場合、視野角およびCRが劣化し得る。
【0053】
具体的には、第1表示板133と第2表示板134の両端に5.8V以上の電圧、好ましくは5.8V以上10.0V以下の電圧が印加されてブラックあるいはホワイトで液晶表示装置が駆動される場合、誘電率異方性(△ε)は4.5以上5.3以下となり得る。また第1表示板133と第2表示板134の両端に5.8V未満の電圧、好ましくは4.0V以上で5.8V未満の電圧が印加されてブラックあるいはホワイトで液晶表示装置が駆動される場合、誘電率異方性(△ε)は5.0以上、5.7以下となり得る。
【0054】
本発明の実施形態による液晶表示装置は視野角、CRの劣化を防止しつつ、応答速度(τt)を向上させるために、液晶分子31のスプレー(spray)弾性係数(以下K11ということ)が相対的に小さく、好ましくは約14pN以下であり、さらに好ましくは約10pN以上約14pN以下であってもよい。またベンド(bend)弾性係数(以下K33という)は相対的に大きく、好ましくは約12pN以上であり、さらに好ましくは約12pN以上約15pN以下であってもよい。すなわち、本発明の実施形態では、K11は相対的に小さくなるほど上昇時間(τr)が減少して応答速度(τt)が向上し、K33は相対的に大きくなるほど下降時間(τf)が減少して、応答速度(τt)が向上する。これについては後述する実験例を参考にしつつ詳細に説明する。
【0055】
ここでK11が14pNを超過する場合、液晶分子31の応答速度(τt)が劣化する一方、10pN未満である場合、誘電率異方性(△ε)など他の物性と関連して望む視野角、CRおよび応答速度(τt)が発生しないこともあり得る。またK33が12pN未満の場合、液晶分子31の応答速度(τt)が低下する一方、15pN超過の場合、誘電率異方性(△ε)など他の物性と関連して望む視野角、CRおよび応答速度(τt)が発生しないこともあり得る。
【0056】
また液晶層3のセルギャップは約2.5μm以上約4.0μm以下であり、複屈折率異方性(Δn)は約0.1以上約0.15以下であってもよい。液晶分子31のセルギャップが4.0μmを超過する場合、応答速度(τt)が低下し、2.5μm未満である場合、視野角およびCRが低下し得る。また複屈折率異方性(Δn)が0.1未満あるいは0.15超過の場合、望む視野角、CRおよび応答速度(τt)が発生しないこともあり得る。
【0057】
液晶分子3の回転粘度(γ1)は40mPa・s以上60mPa・s以下としてもよい。回転粘度(γ1)が40mPa・s未満の場合、応答速度(τt)が劣化し、60mPa・s超過の場合、視野角およびCRなどが劣化し得る。
【0058】
本発明に関するより詳細な説明は次の具体的な実験例を参照しつつ説明する。なおここに記載されていない内容については当業者ならば十分に推認できるものであるため説明を省略する。下記の実験例は本発明を例示するためのものであって本発明が実験例によって限定されるものではない。
実験例1−応答速度
【0059】
セルギャップは3.0μmとし、第1表示板と第2表示板の間に6Vの電圧を印加し、下記表1に表示された物性を有する液晶分子を使用し、上昇時間(τr)、下降時間(τf)および応答速度(τt)を測定した。比較例1ないし比較例3で使用された液晶組成物とは異なり、実施形態1ないし実施形態5で使用された液晶組成物は下記化学式2で表示される極性化合物を含む液晶組成物を使用した。ここで液晶組成物に対して化学式2で表記される極性化合物は15重量%以下であった。
[化学式2]



ここでXは


あるいは


であり、Yはアルカン、シクロアルカンあるいは水素である。
【0060】
また実施形態1ないし5で液晶組成物は化学式3で表示される極性化合物、他の極性化合物および非極性化合物の重量%を調節して実験した。
【0061】
実施形態および比較例に対する結果は下記表2に示した。
【表1】


【表2】

【0062】
表1および表2を参照すれば、K11が小さいほど上昇時間(τr)が減少され、K33(τf)が大きいほど下降時間(τf)が減少することが分かる。
【0063】
具体的には、比較例1ないし3および実施形態1で使用された液晶のK11、K33と上昇時間(τr)および下降時間(τf)との関係を回帰分析によって求めてみれば、各々下記式4および式5のようなる。ここで式4および式5で表現される回帰式の適合度値は各々約99.4%および約70.9%である。
式4



式5


【0064】
前記式4および式5を参考すれば、上昇時間(τr)の場合、K11の影響がK33の影響より約4倍程度大きくなることが分かる。一方、下降時間(τf)の場合、K33の影響がK11の影響より約2.6倍程度大きくなることが分かる。
【0065】
また実施形態1ないし5を参考すれば、例えば、K11が約14pN以下であり、K33が約12pN以上である場合、上昇時間(τr)および下降時間(τf)が減少して、全体的な応答速度(τt)が向上することが分かる。一方、実施形態1と比較例1を参考すれば、K33が約12pN以上であってもK11が約14pNを超過した場合、応答速度(τt)が劣化することが分かる。また実施形態1と比較例3を参考すれば、K33が約12pN未満である場合、応答速度(τt)が劣化することが分かる。
実験例2−視野角およびCR
【0066】
セルギャップは3.0μmとし、第1表示板と第2表示板の間に4.5ないし6.0の誘電率異方性を有する液晶分子を介在し、5.0ないし6.0Vの電圧を印加しつつ、CRおよび視野角を測定した。視野角は第1および第2表示板の垂直方向に対してCRが10:1となる地点の角度を第1および第2表示板の上、下、左、右方向から測定した。電圧および誘電率異方性の変化にともなう視野角およびCR測定結果は下記表3に示した。
【表3】

【0067】
前記表3を参考にすれば、第1表示板および第2表示板両端に5.8Vあるいは6.0Vの電圧が印加され、第1表示板および第2表示板の間に介在した液晶分子の誘電率異方性が4.5以上5.3以下である場合、上、下、左、右方向の視野角が約80°で優れ、CRは約1000:1以上で優れていることが分かる。
【0068】
第1表示板および第2表示板の両端に5.8V未満の電圧、例えば、5.0V、5.5Vなどの電圧が印加され、第1表示板および第2表示板の間に介在した液晶分子の誘電率異方性が5.0以上、5.7以下である場合、上、下、左、右方向の視野角が約80°で優れ、CRは約1000:1以上で優れていることが分かる。
【0069】
以上添付された図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、当業者は本発明の技術的思想や必須の特徴を変更しないで他の具体的な形態で実施され得ることを理解できるであろう。したがって以上で記述した実施形態はすべての面で例示的なものであり、限定されないものとして理解しなければならない。
【符号の説明】
【0070】
3 液晶層
10 第1基板
31 液晶分子
82 画素電極
90 共通電極
133 第1表示板
134 第2表示板
300 薄膜トランジスタ
326 ゲート電極
340 半導体層
355、356 抵抗性接触層
365 ソース電極
366 ドレーン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置され、陽の誘電率異方性を有する液晶分子が第1表示板および第2表示板の間に介在された液晶層であって、
前記第1表示板と前記第2表示板の間に電気場が生成されない場合、各液晶の長軸が前記第1表示板から前記第2表示板の方向に螺旋形に配置される構造を有する液晶層を含み、
前記液晶分子の誘電率異方性は4.5以上で5.7以下であり、K11は14pN以下であり、K33は12pN以上である液晶表示装置。ここでK11は液晶分子のスプレー弾性係数を表し、K33は液晶分子のベンド弾性係数を表す。
【請求項2】
前記液晶分子のK11は10pN以上、14pN以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶分子のK33は12pN以上、15pN以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶分子のK11とK33は同一である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1表示板および前記第2表示板の外面に形成された補償フィルムをさらに含み、
前記補償フィルムはティスコティク液晶がハイブリッド配向された液晶ポリマー補償フィルムである、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1表示板および前記第2表示板の両端に5.8V以上の電圧が印加され、前記誘電率異方性は4.5以上、5.3以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1表示板および前記第2表示板の両端に5.8V未満の電圧が印加され、前記誘電率異方性は5.0以上、5.7以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記液晶分子の回転粘度は40mPa・s以上、60mPa・s以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶分子の複屈折率異方性は0.1以上、0.15以下であり、セルギャップは2.5μm以上、4.0μm以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記液晶層を構成する液晶組成物は下記化学式1で表記される25ないし40重量%の非極性化合物を含む、請求項1に記載の液晶表示装置。
[化学式1]



ここで、R1、R2はアルカン、シクロアルカンあるいはアールケンである。
【請求項11】
前記液晶層を構成する液晶組成物は20ないし60重量%の極性化合物を含む、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶組成物の極性化合物は下記化学式2で表記される第1極性化合物を含む、請求項11に記載の液晶表示装置。
[化学式2]



ここで、Xは


あるいは


であり、Yはアルカン、シクロアルカンあるいは水素である。
【請求項13】
前記液晶組成物は15重量%以下の前記第1極性化合物および15重量%以下の第2極性化合物を含み、
前記第2極性化合物は下記構造式3で表記される化合物を含む、請求項12に記載の液晶表示装置。
[化学式3]



ここで、R3はアルカン、シクロアルカンあるいはアールケンである。
【請求項14】
下記化学式2で表記される第1極性化合物を全体組成物に対して含み、
液晶分子の誘電率異方性は4.5以上、5.7以下であり、K11は14pN以下であり、K33は12pN以上の液晶組成物。
[化学式2]



ここで、Xは


あるいは


であり、Yはアルカン、シクロアルカンあるいは水素である。
【請求項15】
前記液晶分子のK11は10pN以上、14pN以下である、請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項16】
前記液晶分子のK33は12pN以上、15pN以下である、請求項14に記載の液晶組成物。
【請求項17】
下記化学式3で表記される第2極性組成物をさらに含み、
前記第1極性化合物は全体組成物に対して15重量%以下であり、前記第2極性化合物は全体組成物に対して15重量%以下である、請求項14に記載の液晶組成物。
[化学式3]



ここで、R3はアルカン、シクロアルカンあるいはアールケンである。
【請求項18】
ツイストネマチック(Twisted Nematic)モード型である、請求項14に記載の液晶組成物。

【図2】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−211074(P2009−211074A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49641(P2009−49641)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】