説明

液晶表示素子、表示装置、観察装置およびカメラ

【課題】配線の簡略化を図ることができる液晶表示素子を提供する。
【解決手段】基板に形成された電極930に電圧を印加して液晶の配向を制御することにより標識を表示する液晶表示素子において、電極930は、環状の閉じた形状を成す標識用電極931、標識用電極931の周囲に配置された周辺電極933、および標識用電極931によって囲まれた孤立電極932を有し、電極930と基板との間に配設され、標識用電極931、周辺電極933および孤立電極932に対応するスルーホールH1~H4がそれぞれ形成された電気的絶縁層920と、電気的絶縁層920と基板との間に配設され、スルーホールH2,H4を介して周辺電極933と孤立電極932とを電気的に接続する配線913が形成された配線層910とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を用いて文字やマーク等の標識を表示するための液晶表示素子、その液晶表示素子を用いた表示装置、観察装置およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリマーネットワーク液晶を用いて表示を行う表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来の表示装置では、透明電極と配線との間にスルーホールが形成された絶縁膜層を配置し、そのスルーホールを介して透明電極と配線とを電気的に接続することにより、切れ目の無い環状の閉じた透明電極による表示を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−125086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環状透明電極とそれに囲まれた領域の透明電極との両方に引出配線を設けているので、環状透明電極が多数ある場合には、液晶セル内を引き回される引出配線が多数となり、配線長さの増加によるパターン抵抗の上昇や、製造上の歩留まりの低下という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、基板に形成された電極に電圧を印加して液晶の配向を制御することにより標識を表示する液晶表示素子に適用され、電極は、環状の閉じた形状を成す標識用電極、標識用電極の周囲に配置された周辺電極、および標識用電極によって囲まれた孤立電極を有し、電極と基板との間に配設され、標識用電極、周辺電極および孤立電極に対応するスルーホールがそれぞれ形成された電気的絶縁層と、電気的絶縁層と基板との間に配設され、スルーホールを介して周辺電極と孤立電極とを電気的に接続する配線が形成された配線層とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、基板に形成された電極に電圧を印加して液晶の配向を制御することにより標識を表示する液晶表示素子に適用され、電極は、絶縁部によって囲まれた孤立電極、絶縁部によって囲まれた孤立電極を囲むように配置された複数の標識用電極、および標識用電極の周囲に配置された周辺電極を有し、電極と基板との間に配設され、孤立電極、標識用電極および周辺電極に対応するスルーホールがそれぞれ形成された電気的絶縁層と、電気的絶縁層と基板との間に配設され、スルーホールを介して周辺電極と孤立電極とを電気的に接続する配線が形成された配線層とを備えたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の液晶表示素子において、複数の標識用電極または孤立電極の内、同電位に制御する標識用電極同士または孤立電極同士をスルーホールを介して電気的に接続する配線を配線層に形成したものである。
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の液晶表示素子において、複数の標識用電極は、該標識用電極の組み合わせにより文字を表示するものである。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示素子において、スルーホールを介して標識用電極に接続される第1の引出配線と、スルーホールを介して周辺電極に接続される第2の引出配線とを配線層に形成したものである。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子において、液晶を高分子分散型液晶としたものである。
請求項7の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子において、標識用電極に対応する液晶の領域に、高分子分散型液晶でホログラムを形成したものである。
請求項8の発明による表示装置は、請求項5〜7のいずれか一項に記載の液晶表示素子と、第1および第2の引出配線を介して各電極に電圧を印加する電源と、電源による印加電圧を制御して液晶表示素子に標識を表示させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
請求項9の発明による観察装置は、請求項8に記載の表示装置と、液晶表示素子を透過した光による像を形成する光学素子とを備えたことを特徴とする。
請求項10の発明による観察装置は、請求項1に記載の液晶表示素子と、液晶表示素子を透過した光による像を形成する光学素子とを備えたことを特徴とする。
請求項11の発明によるカメラは、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶表示素子を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、周辺電極と孤立電極とを配線により電気的に接続したことにより、孤立電極の引出配線を必要とせず、配線の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による表示装置をファインダー内表示に利用したカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図2】液晶表示素子9の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A断面図である。
【図3】液晶表示素子9の各層の詳細を説明する図であり、(a)は透明電極層930を、(b)は絶縁膜層920を、(c)は配線層910をそれぞれ示す。
【図4】従来の液晶表示素子における配線の一例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態におけるファインダー内表示の一例を示す図である。
【図6】一文字分の表示に関して、電極、スルーホールおよび配線を重ねて示した図である
【図7】図6のB−B断面図である。
【図8】図6に示す液晶表示素子9の透明電極層930を示す平面図である。
【図9】図6に示す液晶表示素子9の絶縁膜層920を示す平面図である。
【図10】図6に示す液晶表示素子9の配線層910を示す平面図である。
【図11】標識用電極934E〜934Gの近接部の拡大図である。
【図12】図6に示す液晶表示素子9による表示例を示す図であり、(a)は標識M1の場合、(b)は標識M2の場合を示す。
【図13】液晶表示素子9に表示される標識の他の例を示す図であり、(a)はオートホワイトバランス機能のオンオフを表示する標識、(b)はバッテリ残量を表示する標識、(c)はメモリカードの装着・非装着を表示する標識である。
【図14】標識M3による表示例を示す図である。
【図15】表示部M31の電極、配線、スルーホールを示す図である。
【図16】表示部M32の電極、配線、スルーホールを示す図である。
【図17】構図枠を表示する標識を示す図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。
【図18】配線電極950を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は本発明の第1の実施の形態を示す図であり、本発明による表示装置をファインダー内表示に利用したカメラの概略構成を示すブロック図である。カメラボディ1には、撮影レンズ2を備えるレンズ鏡筒3が交換可能に装着されている。4は記録媒体として設けられたフィルムである。図1では銀塩フィルムを用いる一眼レフカメラを例に示したが、例えば、一眼レフ方式のデジタルカメラであれば、記録媒体としてCCDやCMOS等の撮像素子が用いられる。
【0009】
撮影レンズ2とフィルム4との間には、被写体光をファインダー光学系へと反射するミラー5が配設されている。なお、図示していないが、フィルム4とミラー5との間にはシャッタが設けられている。フィルム4の感光材料面と光学的に等価な位置には、ファインダースクリーン6が配置されている。被写体11からの被写体光はミラー5で反射され、ファインダースクリーン6上に結像する。ファインダースクリーン6上に結像された被写体像は、ペンタプリズム7および接眼レンズ8を介してファインダー接眼部14から観察することができる。なお、撮影の際にはミラー5が被写体光の光路上から光路外へと移動され、フィルム4上に被写体像が結像される。
【0010】
また、カメラボディ1内には、ファインダー内表示装置として用いられる液晶表示素子9がファインダースクリーン6に隣接して配置されている。液晶表示素子9には高分子分散型液晶が用いられている。高分子分散型液晶には大きく分けてポリマーネットワーク液晶とホログラフィック高分子分散液晶とがあるが、本発明の液晶表示素子にはいずれの液晶も用いることができる。さらには、高分子分散型液晶に限らず、ゲストホスト液晶なども使用することができる。以下では、ポリマーネットワーク液晶を用いた場合を例に説明する。
【0011】
ポリマーネットワーク液晶はネットワーク状のポリマーの中に屈折率異方性の液晶が存在するものであり、電圧非印加時には、入射した光が等方散乱を起こして全体的に白く濁って見える。一方、電圧を印加すると液晶分子が基板垂直方向に配向するようになり、入射光に対して透明状態となる。そのため、このような液晶表示素子9をファインダースクリーン6の上方に配置すると、被写体光が等方散乱される電圧非印加領域はファインダーから見ると電圧印加領域に比べて暗く(黒く)見えることになる。
【0012】
[液晶表示素子9の構造説明]
図2は液晶表示素子9の一例を示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A断面図である。ここでは、AFエリアに対応した矩形環状の標識として、図2に示すようなAFエリアマーク91a〜91eを表示する場合を例に説明する。通常は液晶表示素子9の全領域が透明状態とされ、ファインダースクリーン6上に結像された被写体像が液晶表示素子9を通して観察される。そして、カメラのレリーズボタンを半押し操作するなどしてピント位置確認の操作を行うと、最もピントの合っているAFエリアに対応するAFエリアマークが黒く表示され、被写体像の上にAFエリアマーク91a〜91eのいずれか一つが重畳表示されることになる。
【0013】
図2(b)の断面図に示すように、液晶表示素子9はガラス等からなる一対の透明基板900,960の間に液晶層940を挟持したものである。図示は省略したが、透明基板900,960間の周縁部分には封止材が設けられている。透明基板960には、透明電極層950が基板面全域に形成されている。一方、透明基板900には、配線層910、絶縁膜層920および透明電極層930が順に形成されている。
【0014】
配線層910および透明電極層930,950はいずれもインジウムティンオキサイド(ITO)でできた透明導電膜であり、後述するように、透明電極層930にはAFエリアマーク91a〜91eに応じた電極がパターニングされ、配線層910には配線がパターニングされている。透明電極層930の各電極および透明電極層950は、配線層910の配線を介して駆動回路13に接続されており、駆動回路13により印加電圧が制御される。
【0015】
絶縁膜層920は、透明電極層930と配線層910の不要な部分が導通しないように設けられた電気的な絶縁層であり、例えばアクリル系の材料が用いられる。絶縁膜層920には、透明電極層930の各電極に対応してスルーホールHが形成されている。したがって、透明電極層930を作成する際に、スルーホールHが形成された絶縁膜層920の上にITOの透明導電膜を形成すると、ITOがスルーホールH内に入り込み、透明電極層930の各電極は、スルーホールHを介して配線層910に形成された対応する配線と接続される。
【0016】
次に、図3を用いて液晶表示素子9の各層の詳細を説明する。図3(a)は透明電極層930を示す図であり、透明電極層930には、図2(a)の各AFエリアマーク91a〜91eに対応する5つの環状電極931と、閉じた各環状電極931の内側領域に形成された5つの孤立電極932と、環状電極931の周囲領域に形成された一つの周辺電極933とが設けられている。環状電極931と孤立電極932との境界および環状電極931と周辺電極933との境界には、絶縁のための微小隙間がそれぞれ形成されている。
【0017】
図3(b)は絶縁膜層920を示す図である。絶縁膜層920には、透明電極層930に形成された各環状電極931に対向する5つのスルーホールH1と、各孤立電極932に対向する5つのスルーホールH2と、周辺電極933に対向する1つのスルーホールH3および5つのスルーホールH4とが形成されている。なお、破線は各環状電極931の位置を示している。
【0018】
図3(c)は配線層910に形成された配線を示す図であり、図3(b)と同様に各環状電極931の位置を破線で示した。引出配線911,912は駆動回路13と電極931,933とを接続する配線であって、各引出配線911はスルーホールH1を介して各環状電極931に接続され、引出配線912はスルーホールH3を介して周辺電極933に接続されている。
【0019】
これらの引出配線911,912の図示右端部分は、駆動回路13に接続するための引出部として露出している。バイパス配線913は環状電極931の内側に配設された孤立電極932と周辺電極933とを接続するバイパス用の配線であり、これにより、各孤立電極932の電位は、常に周辺電極933と同電位に保たれている。
【0020】
図3に示すような構造の液晶表示素子9では、例えば、図1の中央のAFエリアマーク91aを黒く表示する場合には、対応する中央の環状電極931の電位を対向する透明電極層950と同電位とし、その他の環状電極931および周辺電極933の電位を透明電極層950と異なる電位となるように制御する。その結果、中央の環状電極931部分の液晶は光を等方散乱する状態となり、ファインダーからみるとAFエリアマーク91aの部分が暗く見えることになる。
【0021】
第1の実施の形態の液晶表示素子9では、孤立電極932および周辺電極933の領域は常に透明状態で使用されるので、環状電極931に囲まれた孤立電極932を、それと同電位とされる周辺電極933にバイパス配線913で接続するようにした。そのため、孤立電極932に関する配線が簡略化され、配線抵抗の上昇を抑えることができるとともに、製造上の歩留まりの向上を図ることができる。
【0022】
図4は、従来の液晶表示素子における配線の一例を示したものであり、配線と電極931〜933とを重ねて表示した。従来は、各電極931〜933からそれぞれ引出配線911,912,914を引き出し、駆動回路13が接続される引出部まで配線を引き回すようにしていた。そのため、パターン引き回しによりパターン抵抗の上昇を招いたり、製造上の歩留まりが低下するという問題があった。図4と図3(c)とを比較すると分かるように、引出配線の数を従来の11本から6本へとほぼ半減させることができる。この引出配線の減る本数は、閉じた環状電極で表示される標識の数が増えるほど多くなる。
【0023】
上述した実施の形態では、以下のような作用効果を奏する。
(1)電気的絶縁層920と基板900と間に配設され、スルーホールH2,H4を介して周辺電極933と孤立電極932とを接続するバイパス配線913が形成された配線層910とを備えたことにより、引出配線の数を従来よりも低減させることができる。その結果、配線が簡略化され、配線抵抗の上昇を抑えることができるとともに、製造上の歩留まりの向上を図ることができる。
【0024】
(2)また、このような液晶表示素子9と、第1および第2の引出配線911,912を介して各電極931〜933に電圧を印加する電源13と、電源13による印加電圧を制御して液晶表示素子9に標識を表示させる制御手段13とを備えることにより、同様の効果を有する表示装置を得ることができる。
【0025】
−第2の実施の形態−
図5は、第2の実施の形態におけるファインダー内表示の一例を示したものである。ファインダー内の左下領域には、シャッタースピードを示す標識M1と、絞り値を示す標識M2とが被写体像に重畳して表示されている。シャッタースピードや絞り値は、複数のセグメントパターンを用いて表される数字やアルファベットにより表示される。
【0026】
図6は、液晶表示素子9の一文字分の表示部に関して、電極、スルーホールおよび配線を重ねて示したものである。図7は、図6のB−B断面を示したものである。第1の実施の形態と同様に、透明基板900上には、配線層910、絶縁膜層920および透明電極層930が順に形成されている。透明電極層930には、所定の形状の電極が複数形成されている。各電極間には、隣接する電極同士を電気的に絶縁する隙間が形成されている。以下では、この隙間のことを絶縁部と呼ぶことにする。
【0027】
図7では、透明電極層930に3つの電極が示されている。絶縁膜層920にはスルーホールHが形成されており、このスルーホールH内のITOを介して、中央の電極と配線層910の配線とが電気的に接続されている。一方、透明基板900の内側の表面には、全域に透明電極層950が形成されている。透明電極層930と透明電極層950との間には高分子分散型の液晶から成る液晶層940が設けられる。透明電極層930の標識用電極である中央の電極に対向する液晶層940の部分には、ホログラム941が形成されている。
【0028】
ホログラム941は、例えば、特開2006−330103号公報に記載されているような周知の技術により形成することができる。なお、第2の実施の形態では液晶表示素子9にホログラム941を用いているので、液晶表示素子9の側面から照明光を基板内に入射させるための照明光源を、図1のブロック図に追加する。
【0029】
図8〜図10は、図6に示す表示部に関して、図7に示す透明電極層930,絶縁膜層920および配線層910の平面図を示したものである。図8に示すように、透明電極層930には、標識を表示するために設けられた7つの標識用電極934A〜934Gと、2つの孤立電極932A,932Bと、標識用電極934A〜934Gの周囲に設けられた周辺電極とが形成されている。
【0030】
図11は、標識用電極934E,934F,934Gが近接している部分の拡大図である。各電極932A,932B,933,934E〜934G間には絶縁部935、すなわち絶縁のための隙間、が形成されている。図8では、各電極の輪郭を表す太い実線が図11の絶縁部935に対応している。図11では、標識用電極934F上にのみホログラム941を示したが、実際には、各標識用電極934A〜934Gに対向する部分にそれぞれ形成されている。なお、平面図で見た場合のホログラム941の形状は、対応する標識用電極の形状とほぼ同一となっている。
【0031】
図9は絶縁膜層920の平面図である。絶縁膜層920には、上下の層に貫通するスルーホールH11〜H17,H21〜H25が形成されている。なお、図9では、各スルーホールと電極との位置関係が分かり易いように標識用電極を二点差線で示し、各電極に括弧付きの符号を付した。各標識用電極934A〜934Gに対応する位置には、スルーホールH11〜H17が形成されている。孤立電極932Aに対応する位置にはスルーホールH21が形成されており、孤立電極932Bに対応する位置には二つのスルーホールH22,H23が形成されている。また、周辺電極933に対応する位置には二つのスルーホールH24,H25が形成されている。
【0032】
図10は配線層910の平面図である。なお、図10では、各配線とスルーホールおよび電極との位置関係が分かり易いように標識用電極を二点差線で示し、スルーホールを点線で示すとともに各スルーホールに括弧付きの符号を付した。引出配線911は各標識用電極934A〜934G(図8参照)と駆動回路13(図1参照)とを接続する配線であり、それぞれスルーホールH11〜H17を介して透明電極層930の各標識用電極934A〜934Gに接続される。引出配線912は周辺電極933と駆動回路13とを接続する配線であり、スルーホールH25を介して周辺電極933に接続される。図3(c)の場合と同様に、これらの引出配線911,912の図示右端部分は、駆動回路13に接続するための引出部として露出している。
【0033】
一方、標識用電極によって囲まれた孤立電極932A,932Bは、バイパス配線915により互いに接続されている。さらに、孤立電極932Bはバイパス配線913により周辺電極933と接続されている。バイパス配線915は、スルーホールH21,H22を通ることにより、標識用電極934Gをバイパスするように孤立電極932A,932B同士を接続している。同様に、バイパス配線913は、スルーホールH23,H24を通ることにより、標識用電極934Dをバイパスするように孤立電極932Bと周辺電極933とを接続している。その結果、孤立電極932A,932Bおよび周辺電極933は、常に同電位に保たれている。
【0034】
なお、図10では、バイパス配線915により孤立電極932Aを孤立電極932Bに接続して、孤立電極932Aが周辺電極933と同電位になるようにしたが、孤立電極932Aと周辺電極933との間にバイパス配線913を設けて、孤立電極932Aを周辺電極933に直接に接続しても良い。いずれの場合でも、配線の長さは同程度となる。
【0035】
図12は、図6に示す液晶表示素子9による表示例を示したものであり、(a)は図5の標識M1(シャッタースピード)を表示した場合、(b)は図5の標識M2(絞り値)を表示した場合を示す。図12(a)の場合、図6に示した構造の表示部を4つ設けて4文字の標識M1を表示する。なお、図12(a)に示す例では、3桁の数字で表されるシャッタースピード表示「640」が表示されている。
【0036】
図6に示す液晶表示素子9においては、周辺電極933および孤立電極932A,932Bに対向する部分の液晶が常に透明状態となるように、それらの電極は対向する透明電極950と異なる電位に制御される。図12(a)では、左端の表示部M14は非表示状態となっており、表示部M14の標識用電極934A〜934G(図6参照)は、対向する透明電極950と異なる電位に制御される。そのため、標識用電極934A〜934Gに対応して設けられた各ホログラム941は、基板側面から入射された照明光を回折しない。その結果、標識用電極934A〜934Gの部分の液晶は透明状態となる。
【0037】
図12(a)の左から2番目の表示部M13には、数字「6」が表示されている。この場合、図6の標識用電極934A,934B,934C,934D,934Fおよび934Gは、対向する透明電極950と同電位に制御される。その結果、標識用電極934A〜934D,934Fおよび934Gに対応して設けられた各ホログラム941は、基板側面から入射された照明光を回折し、標識用電極が設けられている領域が点灯して見える。同様に、表示部M12の場合には標識用電極934C,934E〜934Gが、表示部M11の場合には標識用電極934A〜934Fが、それぞれ対向する透明電極950と同電位となるように制御される。
【0038】
図12(b)に示す標識M2の場合、表示部M21〜M23は図6に示した表示部と同一構造となっている。表示部M20は点を表示する表示部であり、正方形の標識用電極936と、標識用電極936と不図示の駆動回路13とを接続する引出配線911と、引出配線911を標識用電極936に接続するためのスルーホールとを有している。一方、表示部M24はアルファベット文字「F」を表示する表示部であり、F字形状を成す標識用電極937と、標識用電極937と不図示の駆動回路13とを接続する引出配線911と、引出配線911を標識用電極937に接続するためのスルーホールとを有している。
【0039】
図13は、液晶表示素子9に表示される標識の他の例を示したものである。図13(a)はオートホワイトバランス機能のオンオフを表示する標識であり、電極としてW字形状の孤立電極801と、B字形状の孤立電極802と、文字の周囲に設けられた標識用電極803,804とを備えている。標識用電極803の周囲には、周辺電極933が設けられている。
【0040】
孤立電極801はバイパス配線913により周辺電極933に接続され、さらに、孤立電極801と孤立電極802とはバイパス配線915によって接続されている。そのため、孤立電極801,802は常に周辺電極933と同電位に保たれ、これらの領域の液晶層は常に透明状態になっている。一方、標識用電極804同士、および、上側の標識用電極804と標識用電極803とは、それぞれバイパス配線915で接続されている。そして、標識用電極803は、引出配線911により不図示の駆動回路13に接続されている。そのため、標識用電極803および標識用電極804は同電位となるように制御される。
【0041】
液晶層940(図7参照)の標識用電極803,804に対向する領域には、標識用電極803,804と同一形状にホログラム941が形成されている。そのため、標識用電極803,804を対向する透明電極950と同電位に制御することで、図13(a)に示すような標識が表示される。逆に、標識用電極803,804を対向する透明電極950と異なる電位に制御することで、図13(a)に示す表示が消えて表示部は透明状態となる。
【0042】
図13(b)はバッテリ残量を表示する標識であり、電極として、周辺電極933と、標識用電極811,812と、孤立電極813とを有している。標識用電極811,812同士はバイパス配線915により接続され、標識用電極811は引出配線911により不図示の駆動回路13に接続されている。一方、孤立電極813は、バイパス配線913により周辺電極933と接続されている。標識用電極811,812を対向する透明電極950と同電位とすることにより、図13(b)のような表示が点灯する。逆に、標識用電極811,812を対向する透明電極950と異なる電位とすることにより、表示が消える。
【0043】
図13(c)は、カメラにメモリカードが装着されているか否かを表示する標識である。表示部には、電極として、標識用電極821,822と、孤立電極823と周辺電極933を有している。孤立電極823は、バイパス配線913により周辺電極933と接続されている。一方、標識用電極821と標識用電極822とはバイパス配線915により接続され、標識用電極822は引出配線911により不図示の駆動回路13に接続されている。そのため、標識用電極821,822は常に同一の電位に制御されており、標識用電極821,822を対向する透明電極950と同電位とすることにより図13(c)のように標識が表示される。逆に、標識用電極821,822を対向する透明電極950と異なる電位とすることで、標識の表示が消える。
【0044】
図14は、他の形態の標識M3による表示例を示す図である。標識M3は表示部M31,M32から成り、図14(a)では表示部31に文字「O」が表示され、表示部32に文字「K」が表示されている。図14(b)では、表示部31に文字「N」が表示され、表示部32に文字「G」が表示されている。
【0045】
図15は、表示部M31の電極、配線、スルーホールを重ねて表示したものである。表示部M31は、標識用電極830〜834、孤立電極835,836および周辺電極933と、孤立電極835,836を接続するバイパス配線915と、孤立電極836と周辺電極933とを接続するバイパス配線913と、各標識用電極830〜834と不図示の制御回路13とを接続する引出配線911と、9つのスルーホールHとを有している。
【0046】
標識用電極830〜833を対向する透明電極950と同電位に、他の標識用電極834を透明電極950と異なる電位にそれぞれ制御すると、図14(a)に示すように、表示部M31に文字「O」が点灯表示される。一方、標識用電極831,833を対向する透明電極950と同電位に、他の標識用電極830,832を透明電極950と異なる電位にそれぞれ制御すると、図14(b)に示すように、表示部M31に文字「N」が点灯表示される。
【0047】
図16は、表示部M32の電極、配線、スルーホールを重ねて表示したものである。表示部M32は、標識用電極840〜845、孤立電極846〜848および周辺電極933と、孤立電極846,947同士および孤立電極846,848同士を接続するバイパス配線915と、孤立電極847と周辺電極933とを接続するバイパス配線913と、各標識用電極840〜845と不図示の制御回路13とを接続する引出配線911と、12のスルーホールHとを有している。
【0048】
標識用電極841,843,845を対向する透明電極950と同電位に、他の標識用電極840,842,844を透明電極950と異なる電位にそれぞれ制御すると、図14(a)に示すように、表示部M32に文字「K」が点灯表示される。一方、標識用電極840〜842,844,845を対向する透明電極950と同電位に、他の標識用電極843を透明電極950と異なる電位にそれぞれ制御すると、図14(b)に示すように、表示部M32に文字「G」が点灯表示される。
【0049】
図17は、撮影の際の構図設定をアシストする構図枠を表示する場合の、表示部の構成を示す図である。標識用電極960の形状の違いにより、図17(a)では中央に円形のリング枠が表示され、図17(b)では矩形の枠が表示される。いずれの場合も、標識用電極960、5つの孤立電極961A〜961E、周辺電極933、孤立電極同士を接続する4つのバイパス配線915、孤立電極961Bと周辺電極933とを接続するバイパス配線913、標識用電極960と不図示の駆動回路13とを接続する引出配線911および複数のスルーホールHを有する。標識用電極960を対向する透明電極950(図7参照)と同電位とするか否かにより、枠の表示/非表示を切り替える。
【0050】
前述した第1の実施の形態では、環状電極931に囲まれた孤立電極932をバイパス配線913により周辺電極933と接続し、配線の簡略化を図るようにした。一方、第2の実施の形態では、図8に示すように孤立電極は932Aは、環状電極ではなく、複数の標識用電極934A,934B,934G,934Fにより周囲を囲まれている。
【0051】
ところで、標識用電極934A〜934Gは、文字や数字を表示するためのセグメント電極であるため、文字や数字の表示が不自然とならないように、各電極間の絶縁部935の幅は絶縁が可能な程度に極力小さく抑えられている。そのため、図18に示すように、標識用電極934Eと標識用電極934Fとの間の絶縁部935に配線電極950を形成し、孤立電極932Aと周辺電極933とを接続しようとすると、電極間の隙間が大きくなりすぎて表示が不自然となる。
【0052】
しかしながら、第2の実施の形態では、孤立電極932A,932Bをバイパス配線915で接続し、さらに、孤立電極932Bと周辺電極933とをバイパス配線913で接続しているので、標識用電極間の隙間を極力小さくすることができ、表示の品質が向上する。また、図13(c)の標識用電極821,822のように、常に同電位に制御される電極同士をバイパス配線915で接続することで、引出配線911の数を低減することができる。図16の孤立電極846,847,848の場合には、近接した孤立電極間をバイパス配線915で接続することにより、各孤立電極をバイパス配線913でそれぞれ周辺電極933と接続する場合に比べて配線の合計長さを低減することができる。
【0053】
上述した第1の実施の形態では、ポリマーネットワーク液晶を例に説明したが、ホログラフィック高分子分散液晶やゲストホスト液晶などを用いた液晶表示素子にも適用することができる。例えば、第2の実施の形態のようにホログラフィック高分子分散液晶を用いる場合には、AFエリアマーク91a〜91eの部分に液晶ホログラムを形成し、液晶表示素子の側面から照明光を基板内に入射させる。電圧非印加時は液晶ホログラムが動作して照明光が液晶ホログラムにより回折され、その回折光がペンタプリズム7方向へと出射されてAFエリアマークが点灯表示される。一方、電圧印加時には照明光に対する回折が起こらず、AFエリアマークは消灯状態となり表示が消える。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
1:カメラボディ、2:撮影レンズ、4:フィルム、5:ミラー、6:ファインダースクリーン、7:ペンタプリズム、8:接眼レンズ、9:液晶表示素子、13:駆動回路、91a〜91e:AFエリアマーク、900,960:透明基板、910:配線層、911,912,914:引出配線、913,915:バイパス配線、920:絶縁膜層、930,950:透明電極層、931:環状電極、801,802,813,823,835,836,846〜848,932,932A,932B,961A〜961E:孤立電極、803,804,811,812,821,822,830〜834,840〜845,934A〜934G,936,937,960:標識用電極、933:周辺電極、935:絶縁部、940:液晶層、941:ホログラム、H,H1〜H4,H11〜H17,H21〜H25:スルーホール、M1,M2,M3:標識

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された電極に電圧を印加して液晶の配向を制御することにより標識を表示する液晶表示素子において、
前記電極は、環状の閉じた形状を成す標識用電極、前記標識用電極の周囲に配置された周辺電極、および前記標識用電極によって囲まれた孤立電極を有し、
前記電極と前記基板との間に配設され、前記標識用電極、前記周辺電極および前記孤立電極に対応するスルーホールがそれぞれ形成された電気的絶縁層と、
前記電気的絶縁層と前記基板との間に配設され、前記スルーホールを介して前記周辺電極と前記孤立電極とを電気的に接続する配線が形成された配線層とを備えたことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
基板に形成された電極に電圧を印加して液晶の配向を制御することにより標識を表示する液晶表示素子において、
前記電極は、絶縁部によって囲まれた孤立電極、前記絶縁部によって囲まれた孤立電極を囲むように配置された複数の標識用電極、および前記標識用電極の周囲に配置された周辺電極を有し、
前記電極と前記基板との間に配設され、前記孤立電極、前記標識用電極および前記周辺電極に対応するスルーホールがそれぞれ形成された電気的絶縁層と、
前記電気的絶縁層と前記基板との間に配設され、前記スルーホールを介して前記周辺電極と前記孤立電極とを電気的に接続する配線が形成された配線層とを備えたことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項3】
請求項2に記載の液晶表示素子において、
前記複数の標識用電極または前記孤立電極の内、同電位に制御する標識用電極同士または孤立電極同士を前記スルーホールを介して電気的に接続する配線を前記配線層に形成したことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項4】
請求項2または3に記載の液晶表示素子において、
前記複数の標識用電極は、該標識用電極の組み合わせにより文字を表示することを特徴とする液晶表示素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶表示素子において、
前記スルーホールを介して前記標識用電極に接続される第1の引出配線と、前記スルーホールを介して前記周辺電極に接続される第2の引出配線とを前記配線層に形成したことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子において、
前記液晶は高分子分散型液晶であることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶表示素子において、
前記標識用電極に対応する前記液晶の領域に、高分子分散型液晶でホログラムを形成したことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の液晶表示素子と、
前記第1および第2の引出配線を介して前記各電極に電圧を印加する電源と、
前記電源による印加電圧を制御して前記液晶表示素子に標識を表示させる制御手段とを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表示装置と、
前記液晶表示素子を透過した光による像を形成する光学素子とを備えたことを特徴とする観察装置。
【請求項10】
請求項1に記載の液晶表示素子と、
前記液晶表示素子を透過した光による像を形成する光学素子とを備えたことを特徴とする観察装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶表示素子を備えたことを特徴とするカメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−150504(P2012−150504A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84126(P2012−84126)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【分割の表示】特願2007−116867(P2007−116867)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】