説明

液晶表示素子

【課題】有彩色を背景色とし、温度に関わらず所要の表示を確実に行えるネガ型液晶表示素子を提供する。
【解決手段】ネガ型液晶表示素子1は、透明基板2a,2bと、透明電極3a,3bと、互いに直交する配向方向を備える配向膜5a,5bと、90°のねじれ配向を備えるネマチック液晶層7と、配向膜5a,5bの配向方向と同一方向の偏光軸を備える偏光板10a,10bと、バックライト11とを備える。偏光板10a,10bは特定の有彩色の透過率が高く、液晶層7はリターデーション値Δndが2.0〜3.0μmであり、バックライト11は前記特定の有彩色に対応する波長の光成分を含む白色発光を行う。青色を背景色とするときは、偏光板10a,10bは青色の透過率が高く、液晶層7はリターデーション値Δndが2.04〜2.26μmに設定されており、バックライト11は450nmの波長の光成分を含む白色発光を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型液晶表示素子に関し、さらに詳しくは背景色が有彩色であるネガ型液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ネガ型液晶表示素子として、互いに対向して配置された1対の透明基板と、各透明基板の対向する面に形成された1対の透明電極と、各透明電極を覆うように各透明基板の対向する面に形成された1対の配向膜と、各配向膜に挟持されたネマチック液晶層とを備えるものが知られている。前記ネガ型液晶表示素子では、前記各透明電極は、例えば、互いに直交する方向にストライプ状に設けられており、平面視したときに互いに交わる部分が画素となるマトリクス電極を形成している。また、前記各配向膜は、互いに直交する配向方向を備えるようにラビング処理が施されており、この結果、前記ネマチック液晶層の液晶分子が90°のねじれ配向を備えるようになっている。
【0003】
前記各透明基板の各透明電極と反対側の面には、それぞれ偏光板が配置されており、各偏光板は各透明基板の透明電極上に形成された配向膜の配向方向と同一方向の偏光軸を備えている。そして、前記透明基板の一方に配置された偏光板に対向してバックライトが配置されている。
【0004】
前記ネガ型液晶表示素子では、前記液晶層を挟んで対向する前記透明電極のうち、電圧が印加された部分が白色の表示部分となる一方、該電極のうち電圧が印加されない部分や、該透明電極の対向しない部分が黒色の背景領域となることにより、文字や画像等の表示を行う。このとき、前記文字や画像等の表示のコントラストを良好にするために、前記背景領域は黒色となっていて有彩色による着色の無いことが望ましく、このためリターデーション値Δndを所定の範囲に規制することが行われている。尚、前記リターデーション値Δndは、液晶分子の屈折率異方性Δnと液晶層の厚さ(セルギャップ)dとの積で表される量である。
【0005】
一般に、前記構成を備える前記ネガ型液晶表示素子では、前記リターデーション値Δndは、いわゆるファーストミニマムにおいては0.6μm付近の値に、セカンドミニマムにおいては1.3μm付近の値に設定されている。
【0006】
ところが、前記液晶分子の屈折率異方性Δnは温度依存性を有し、温度の上昇に従って小さくなることが知られている。そこで、前記リターデーション値Δndを0.6μm付近の値または1.3μm付近の値に設定した前記ネガ型液晶表示素子では、温度の上昇に伴って、前記背景領域の黒色に赤色の混色が生じるという問題がある。
【0007】
前記問題を解決するために、前記背景領域が黒色となっている前記ネガ型液晶表示素子において、前記リターデーション値Δndを2.3〜2.5μmに設定することが提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
一方、前記ネガ型液晶表示素子を自動車等の車両に搭載し、所要の表示を行う場合に、前記背景領域を有彩色とすることが検討されている。前記背景領域を有彩色とするには、例えば、前記偏光板として背景色としようとする特定の有彩色の透過率が他の色よりも高いものを用いると共に、前記バックライトとして前記特定の有彩色に対応する波長の光成分を含む白色発光を行うものを用いる。
【0009】
しかしながら、自動車等の車室内は非常に高温になる場合があり、この場合には前述のように、温度の上昇に従って前記液晶分子の屈折率異方性Δnが小さくなり、リターデーション値Δndもまた小さくなるので、前記背景色に前記特定の有彩色以外の他の色が混色し、所要の表示が困難になるという不都合がある。
【特許文献1】特開2002−107765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる不都合を解消して、特定の有彩色を背景色とすると共に、温度に関わらず所要の表示を確実に行うことができるネガ型液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明は、互いに対向して配置された1対の透明基板と、各透明基板の対向する面に形成された1対の透明電極と、各透明電極を覆うように各透明基板の対向する面に形成され互いに直交する配向方向を備える1対の配向膜と、各配向膜に挟持され90°のねじれ配向を備えるネマチック液晶層と、各透明基板の各透明電極と反対側の面に形成され各透明基板の透明電極上に配置された配向膜の配向方向と同一方向の偏光軸を備える偏光板と、前記透明基板の一方に配置された偏光板に対向して配置されたバックライトとを備えるネガ型液晶表示素子において、前記偏光板は、特定の有彩色の透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は、液晶分子の屈折率異方性Δnと該液晶層の厚さdとの積で表されるリターデーション値Δndが2.0〜3.0μmの範囲に設定されており、前記バックライトは前記特定の有彩色に対応する波長の光成分を含む白色発光を行い、前記特定の有彩色を背景色とすることを特徴とする。
【0012】
本発明のネガ型液晶表示素子は、前記液晶層を挟んで対向する前記透明電極のうち、電圧が印加された部分では、前記バックライトの白色発光が透過して白色の表示部分となる一方、該電極のうち電圧が印加されない部分や、該透明電極が対向しない部分が背景領域となることにより、文字や画像等の所要の表示を行う。このとき、前記偏光板は、特定の有彩色の透過率が他の色よりも高いので、前記背景領域の色、すなわち背景色を前記特定の有彩色とすることができる。
【0013】
ここで、本発明のネガ型液晶表示素子によれば、リターデーション値Δndが2.0〜3.0μmの範囲に設定されていることにより、温度の上昇に伴ってリターデーション値Δndが小さくなっても、前記背景色に対する前記特定の有彩色以外の他の色の混色を抑制して、前記所要の表示を確実に行うことができる。
【0014】
本発明のネガ型液晶表示素子では、前記リターデーション値Δndは、前記背景色となる特定の有彩色を具体的に何色にするかによって、さらに特定の範囲が選択される。
【0015】
例えば、青色を前記背景色とする場合には、前記偏光板は青色の透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.04〜2.26μmの範囲に設定されており、前記バックライトは450nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものとする。
【0016】
また、赤色を前記背景色とする場合には、前記偏光板は赤色の透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.18〜2.42μmの範囲に設定されており、前記バックライトは650nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものとする。
【0017】
また、緑色を前記背景色とする場合には、前記偏光板は緑色の透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.28〜2.52μmの範囲に設定されており、前記バックライトは550nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものとする。
【0018】
また、シアンを前記背景色とする場合には、前記偏光板はシアンの透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.0〜2.21μmの範囲に設定されており、前記バックライトは500nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものとする。
【0019】
また、マゼンタを前記背景色とする場合には、前記偏光板はマゼンタの透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.03〜2.27μmの範囲に設定されており、前記バックライトは450nm及び620nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものとする。
【0020】
また、イエローを前記背景色とする場合には、前記偏光板はイエローの透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが1.9〜2.1μmの範囲に設定されており、前記バックライトは590nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態のネガ型液晶表示素子の構成を示す説明的断面図である。図2はリターデーション値Δndと有彩色各色の光の透過率との関係を示すグラフ、図3はリターデーション値Δndと青色の光の透過率との関係を示すグラフ、図4はリターデーション値Δndと赤色の光の透過率との関係を示すグラフ、図5はリターデーション値Δndと緑色の光の透過率との関係を示すグラフ、図6はリターデーション値Δndとシアンの光の透過率との関係を示すグラフ、図7はリターデーション値Δndとマゼンタの光の透過率との関係を示すグラフ、図8はリターデーション値Δndとイエローの光の透過率との関係を示すグラフである。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のネガ型液晶表示素子1は、1対の平行且つ透明なガラス基板2a,2bと、ガラス基板2a,2bの相対向する内側面に所定のパターンに設けられた透明電極膜3a,3bと、透明電極膜3a,3bの相対向する内側面の表示部に設けられた絶縁膜4a,4bと、絶縁膜4a,4bの相対向する内側面に透明電極膜3a,3bとほぼ同一のパターンで設けられた配向膜5a,5bとを備える。透明電極膜3a,3bは、例えばITO等により互いに直交する方向にストライプ状に設けられており、平面視したときに互いに交わる部分が画素となるマトリクス電極を形成している。
【0023】
液晶表示装置1では、ガラス基板2a、透明電極膜3a、絶縁膜4a、配向膜5aにより上基板6aが形成されており、ガラス基板2b、透明電極膜3b、絶縁膜4b、配向膜5bにより下基板6bが形成されている。そして、上下基板6a,6b間に形成された液晶層7に、ネマチック液晶分子Lが封入されている。
【0024】
配向膜5a,5bは、互いに対向する面にラビング処理が施されて、互いに直交する配向方向を備えており、液晶セル7に封入された液晶分子Lの捩れ配向が、上下基板6a,6b間で90°になるようにしている。液晶層7は、メインシール剤層8により封止されており、メインシール剤層8の外側面には導通材パターン9が形成されている。
【0025】
また、ガラス基板2aの外側面には、偏光板10aが、その偏光軸を配向膜5aの配向方向と同一方向となるようにして貼りつけられており、ガラス基板2bの外側面には、偏光板10bが、その偏光軸を配向膜5bの配向方向と同一方向となるようにして貼りつけられている。偏光板10a,10bは、特定の有彩色の透過率が他の色よりも高くなっているものであり、前記特定の有彩色は、青色、赤色、緑色、シアン、マゼンタ、イエローから選択される1色である。
【0026】
ネガ型液晶表示素子1、下基板6b側に、偏光板10bに対向してバックライト11を備えている。バックライト11は、例えば、白色発光ダイオード等の白色発光を行う光源であり、該白色発光は前記特定の有彩色に対応する波長の光成分を含んでいる。
【0027】
そして、ネガ型液晶表示素子1は、液晶分子Lの屈折率異方性Δnと、液晶層7の厚さdとの積で表されるリターデーション値Δndが2.0〜3.0μmの範囲に設定されている。
【0028】
本実施形態のネガ型液晶表示素子1は、透明電極3a,3bにより形成されるマトリックス電極のうち、電圧が印加された部分では、バックライト11の白色発光が透過して白色の表示部分となる。一方、透明電極3a,3bにより形成されるマトリックス電極のうち電圧が印加されない部分や、透明電極3a,3bが対向していない部分は、背景領域となる。このとき、偏光板10a,10bは、特定の有彩色の透過率が他の色よりも高いので、該特定の有彩色を前記背景領域の色、すなわち背景色とすることができる。
【0029】
この結果、ネガ型液晶表示素子1では、前記特定の有彩色を背景色として、文字や画像等の所要の表示を行うことができる。また、このとき、ネガ型液晶表示素子1によれば、リターデーション値Δndが前記のように2.0〜3.0μmの範囲に設定されていることにより、温度の上昇に伴ってリターデーション値Δndが小さくなっても、前記背景色に対する前記特定の有彩色以外の他の色の混色を抑制して、前記所要の表示を確実に行うことができる。
【0030】
本実施形態のネガ型液晶表示素子1では、前記リターデーション値Δndは、前記背景色となる特定の有彩色を具体的に何色にするかによって、さらに特定の値が選択される。前記リターデーション値Δndは、ネガ型液晶表示素子1の製造時における液晶層7の厚さdのばらつきを考慮して、前記特定の値±5%に設定される。
【0031】
ネガ型液晶表示素子1は、例えば、青色を前記背景色とする場合には、偏光板10a,10bとして青色の透過率が他の色よりも高いものを用いると共に、液晶層7は前記リターデーション値Δndが2.04〜2.26μmの範囲、好ましくは2.15μmに設定され、バックライト11は450nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものが用いられる。
【0032】
図2に、リターデーション値Δndと、青色、赤色、緑色、シアン、マゼンタ、イエローの各有彩色に対応する、450nm、650nm、550nm、500nm、620nm、590nmの各波長の光の透過率との関係を示す。尚、マゼンタは450nmの波長の光と620nmの波長の光との混色である。
【0033】
また、図3に、リターデーション値Δndと、青色に対応する450nmの波長の光の透過率との関係を示す。図2及び図3から、リターデーション値Δndを2.04〜2.26μmの範囲とすることにより、温度上昇のためにリターデーション値Δndが前記範囲から低減しても、青色に対する他の色の混色を抑制することができることが明らかである。
【0034】
また、ネガ型液晶表示素子1は、赤色を前記背景色とする場合には、偏光板10a,10bとして赤色の透過率が他の色よりも高いものを用いると共に、液晶層7は前記リターデーション値Δndが2.18〜2.42μmの範囲、好ましくは2.3μmに設定され、バックライト11は650nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものが用いられる。
【0035】
図4に、リターデーション値Δndと、赤色に対応する650nmの波長の光の透過率との関係を示す。図2及び図4から、リターデーション値Δndを2.18〜2.42μmの範囲とすることにより、温度上昇のためにリターデーション値Δndが前記範囲から低減しても、赤色に対する他の色の混色を抑制することができることが明らかである。
【0036】
また、ネガ型液晶表示素子1は、緑色を前記背景色とする場合には、偏光板10a,10bとして緑色の透過率が他の色よりも高いものを用いると共に、液晶層7は前記リターデーション値Δndが2.28〜2.52μmの範囲、好ましくは2.4μmに設定され、バックライト11は550nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものが用いられる。
【0037】
図5に、リターデーション値Δndと、緑色に対応する550nmの波長の光の透過率との関係を示す。図2及び図5から、リターデーション値Δndを2.28〜2.52μmの範囲とすることにより、温度上昇のためにリターデーション値Δndが前記範囲から低減しても、緑色に対する他の色の混色を抑制することができることが明らかである。
【0038】
また、ネガ型液晶表示素子1は、シアンを前記背景色とする場合には、偏光板10a,10bとしてシアンの透過率が他の色よりも高いものを用いると共に、液晶層7は前記リターデーション値Δndが2.0〜2.21μmの範囲、好ましくは2.1μmに設定され、バックライト11は500nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものが用いられる。
【0039】
図6に、リターデーション値Δndと、シアンに対応する500nmの波長の光の透過率との関係を示す。図2及び図6から、リターデーション値Δndを2.0〜2.21μmの範囲とすることにより、温度上昇のためにリターデーション値Δndが前記範囲から低減しても、シアンに対する他の色の混色を抑制することができることが明らかである。
【0040】
また、ネガ型液晶表示素子1は、マゼンタを前記背景色とする場合には、偏光板10a,10bとしてマゼンタの透過率が他の色よりも高いものを用いると共に、液晶層7は前記リターデーション値Δndが2.03〜2.27μmの範囲、好ましくは2.15μmに設定され、バックライト11は450nm及び620nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものが用いられる。
【0041】
図7に、リターデーション値Δndと、マゼンタに対応する450nm及び620nmの波長の光の透過率との関係を示す。図2及び図7から、リターデーション値Δndを2.03〜2.27μmの範囲とすることにより、温度上昇のためにリターデーション値Δndが前記範囲から低減しても、マゼンタに対する他の色の混色を抑制することができることが明らかである。
【0042】
また、ネガ型液晶表示素子1は、イエローを前記背景色とする場合には、偏光板10a,10bとしてイエローの透過率が他の色よりも高いものを用いると共に、液晶層7は前記リターデーション値Δndが1.9〜2.1μmの範囲、好ましくは2.0μmに設定され、バックライト11は590nmの波長の光成分を含む白色発光を行うものが用いられる。
【0043】
図8に、リターデーション値Δndと、イエローに対応する590nmの波長の光の透過率との関係を示す。図2及び図8から、リターデーション値Δndを1.9〜2.1μmの範囲とすることにより、温度上昇のためにリターデーション値Δndが前記範囲から低減しても、イエローに対する他の色の混色を抑制することができることが明らかである。
【0044】
次に、青色を前記背景色とする場合を例として、本実施形態のネガ型液晶表示素子1の作用効果について説明する。
【0045】
まず、実施例として、偏光板10aに株式会社ポラテクノ製ブルーイッシュ偏光板(商品名:V32−18240T)を用いると共に、偏光板10bに株式会社ポラテクノ製ブルーイッシュ偏光板(商品名:SHC23UL)を用いて、前記背景色が青色のネガ型液晶表示素子1を製造した。本実施例においては、リターデーション値Δndを2.25μmに設定した。
【0046】
次に、本実施例のネガ型液晶表示素子1について、25℃、40℃、60℃、70℃、80℃の各温度におけるL色度座標値と、40℃、60℃、70℃、80℃の各温度における25℃のときに対する色差ΔEとを測定した。結果を表1に示す。
【0047】
次に、比較例として、リターデーション値Δndを0.6μmに設定した以外は、前記実施例と全く同一にして前記背景色が青色のネガ型液晶表示素子1を製造し、前記実施例と全く同一にして、25℃、40℃、60℃、70℃、80℃の各温度におけるL色度座標値と、40℃、60℃、70℃、80℃の各温度における25℃のときに対する色差ΔEとを測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から、リターデーション値Δndを2.25μmとした実施例のネガ型液晶表示素子1では、25℃のときに対する色差ΔEが80℃のときにも5.1であるのに対し、リターデーション値Δndを0.6μmとした比較例のネガ型液晶表示素子1では、25℃のときに対する色差ΔEが80℃のときには38.7となっていることが明らかである。
【0050】
従って、前記実施例のネガ型液晶表示素子1によれば、温度に関わらず青色の背景色に対する他の色の混色を抑制することができ、青色を背景色として所要の表示を確実に行うことができることが明らかである。
【0051】
尚、本実施形態では、青色を前記背景色とする場合についてのみ例を挙げて説明しているが、赤色、緑色、シアン、マゼンタ、イエローの各色を前記背景色とする場合についても、それぞれ前述の構成とすることにより、青色を前記背景色とする場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
また、本実施形態では、ネガ型液晶表示素子1の透明電極3a、3bがマトリックス電極を形成するものとして説明しているが、透明電極3a、3bはセグメント電極を構成するものであってもよい。さらに、本実施形態では、ネガ型液晶表示素子1が、透明電極3a、3bと配向膜5a,5bとの間に絶縁層4a,4bを備えるものとして説明しているが、絶縁層4a,4bは無くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のネガ型液晶表示素子の一構成例を示す説明的断面図。
【図2】リターデーション値Δndと有彩色各色の光の透過率との関係を示すグラフ。
【図3】リターデーション値Δndと青色の光の透過率との関係を示すグラフ。
【図4】リターデーション値Δndと赤色の光の透過率との関係を示すグラフ。
【図5】リターデーション値Δndと緑色の光の透過率との関係を示すグラフ。
【図6】リターデーション値Δndとシアンの光の透過率との関係を示すグラフ。
【図7】リターデーション値Δndとマゼンタの光の透過率との関係を示すグラフ。
【図8】リターデーション値Δndとイエローの光の透過率との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0054】
1…ネガ型液晶表示素子、 2a,2b…透明基板、 3a,3b…透明電極、 5a,5b…配向膜、 7…ネマチック液晶層、 10a,10b…偏光板、 11…バックライト、 L…液晶分子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された1対の透明基板と、各透明基板の対向する面に形成された1対の透明電極と、各透明電極上に形成され互いに直交する配向方向を備える1対の配向膜と、各配向膜に挟持され90°のねじれ配向を備えるネマチック液晶層と、各透明基板の各透明電極と反対側の面に形成され各透明基板の透明電極上に形成された配向膜の配向方向と同一方向の偏光軸を備える偏光板と、前記透明基板の一方に形成された偏光板に対向して配置されたバックライトとを備えるネガ型液晶表示素子において、
前記偏光板は、特定の有彩色の透過率が他の色よりも高く、
前記液晶層は、液晶分子の屈折率異方性Δnと該液晶層の厚さdとの積で表されるリターデーション値Δndが2.0〜3.0μmの範囲に設定されており、
前記バックライトは前記特定の有彩色に対応する波長の光成分を含む白色発光を行い、前記特定の有彩色を背景色とすることを特徴とするネガ型液晶表示素子。
【請求項2】
前記偏光板は青色の透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.04〜2.26μmの範囲に設定されており、前記バックライトは450nmの波長の光成分を含む白色発光を行い、青色を背景色とすることを特徴とする請求項1記載のネガ型液晶表示素子。
【請求項3】
前記偏光板は赤色の透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.18〜2.42μmの範囲に設定されており、前記バックライトは650nmの波長の光成分を含む白色発光を行い、赤色を背景色とすることを特徴とする請求項1記載のネガ型液晶表示素子。
【請求項4】
前記偏光板は緑色の透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.28〜2.52μmの範囲に設定されており、前記バックライトは550nmの波長の光成分を含む白色発光を行い、緑色を背景色とすることを特徴とする請求項1記載のネガ型液晶表示素子。
【請求項5】
前記偏光板はシアンの透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.0〜2.21μmの範囲に設定されており、前記バックライトは500nmの波長の光成分を含む白色発光を行い、シアンを背景色とすることを特徴とする請求項1記載のネガ型液晶表示素子。
【請求項6】
前記偏光板はマゼンタの透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが2.03〜2.27μmの範囲に設定されており、前記バックライトは450nm及び620nmの波長の光成分を含む白色発光を行い、マゼンタを背景色とすることを特徴とする請求項1記載のネガ型液晶表示素子。
【請求項7】
前記偏光板はイエローの透過率が他の色よりも高く、前記液晶層は前記リターデーション値Δndが1.9〜2.1μmの範囲に設定されており、前記バックライトは590nmの波長の光成分を含む白色発光を行い、イエローを背景色とすることを特徴とする請求項1記載のネガ型液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−139765(P2009−139765A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317654(P2007−317654)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】