説明

液晶表示素子

【課題】 コストの増加を抑えつつ液晶表示素子の引き回し線間における液晶表示の誤動作を抑制する。
【解決手段】 液晶表示素子は、セグメント電極パターンと、引き回し線パターンとが形成された第1のガラス基板と、前記第1のガラス基板に対向配置され、コモン電極パターンと、前記第1のガラス基板上に形成された引き回し線パターンの間隔が100μm以下である場合に、当該引き回し線パターン間に対向する領域に形成されたダミーパターンとを有する第2のガラス基板と、前記第1及び第2のガラス基板上に形成されるパターンを覆って形成された配向膜を含む膜構成と、前記第1及び第2のガラス基板間に挟持された液晶層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の液晶表示素子のセグメント電極パターン基板の引き回し線間における液晶の誤動作を表す顕微鏡写真を基にした概念図である。本図において、液晶層中央部における液晶の配向方位は上下方向となっている。
【0003】
図に示すように、セグメント電極パターン基板の複数の本の引き回し線のそれぞれの間の液晶が誤動作し、当該領域が表示して見えることがある。2本の引き回し線間の領域が表示して見えるのは、当該2本の引き回し線のそれぞれに例えば、ON/OFFの異なる電圧を印加した場合である。
【0004】
DUTY駆動でON/OFF状態が異なるとしても、その電圧差は非常にわずかである。例えば、電圧差は概ね2V以下である。なお、ここで用いている引き回し線の線間距離は30μm以上である。このように広い線間距離であり、かつ僅かな電圧差でありながら横電界により誤動作する理由として、液晶層の液晶配列状態が電界方向に対し傾いているためと考えられる。
【0005】
これを裏付けるものとして、液晶層中央部の液晶配向方位と該引き回し線間で生じる横電界の方向が概ね45°ずれている部分(図5中、一点鎖線で囲んだ引き回し線2Wが3つに折れている中央部分)で誤動作が目立ちやすく、横電界方向と平行もしくは垂直に液晶層中央部の液晶が配向されている部分(図5中、二点鎖線で囲んだ引き回し線2Wが3つに折れている一番下の部分)では目立ちにくい傾向が見られる。
【0006】
つまり、液晶層のセル中央付近の液晶配列状態が横電界方向に対し45°にずれている場合に最も誤動作が目立ち、横電界方向に対し平行もしくは直交している場合に最も目立たないことがわかる。
【0007】
従来、電界方向に対しセル中央付近の液晶分子の配列状態が平面方向に予め傾いていると閾値の無い電気光学特性を示すことが知られている。また、液晶の挙動は電界強度ではなく電圧差により応答することが知られている。ただし、理想的な場合であり、実際には概ね100μm以上電極間距離が離れると僅かな電圧差では応答しなくなる。図5を参照して説明したような誤動作は、上記のような条件がそろったため生じたものと考えられる。
【0008】
ここで、誤動作の部分は、非常に細いため、通常では顕微鏡を持ち無ければ観察されず、問題にならない。しかし、図5に示すように引き回し線が密になり、誤動作の部分がある程度集まっている場合や、背景がネガ表示でバックライトが明るい場合には、目立ちやすくなってしまう傾向がある。
【0009】
上述したような誤動作を解消するための対策としては、引き回し線間の距離を広くすることも考えられ、概ね100μm以上離すと誤動作は生じなくなる。しかし、配線の設計上、どうしても密に配線しなければならない場合があり、そのような対策を常に採れるとは限らない。また、液晶が90°ツイストでラビング方向が45°、135°、225°、315°より選択される構成の場合においては、配線を密にする部分の配線方向をラビング方向に対して45°の角度をなすようにすれば誤動作による表示は目立たなくなるが、設計上確実にその方向にあわせることは非常に困難である。
【0010】
さらに、上述したような誤動作を解消するための対策として、セグメント電極の引き回し線上に遮光膜等を設けることが提案されている(特許文献1及び2参照)。しかし、遮光膜等を設けることは、製造コストの増加を招くという問題がある。また、遮光膜を設けることでは、ノーマリー・ブラック(ノーマリーオフ)型の液晶表示装置における誤動作にしか対応することができない。
【0011】
【特許文献1】特開平5−241144号公報
【特許文献2】特開2007−114729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、コストの増加を抑えつつ液晶表示素子の引き回し線間における液晶表示の誤動作を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、液晶表示素子は、セグメント電極パターンと、引き回し線パターンとが形成された第1のガラス基板と、前記第1のガラス基板に対向配置され、コモン電極パターンと、前記第1のガラス基板上に形成された引き回し線パターンの間隔が100μm以下である場合に、当該引き回し線パターン間に対向する領域に形成されたダミーパターンとを有する第2のガラス基板と、前記第1及び第2のガラス基板上に形成されるパターンを覆って形成された配向膜を含む膜構成と、前記第1及び第2のガラス基板間に挟持された液晶層とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コストの増加を抑えつつ液晶表示素子の引き回し線間における液晶表示の誤動作を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例によるセグメント電極パターン基板及びコモン電極パターン基板を用いた液晶表示素子101の断面図である。
【0016】
パターニングしたITO付きセグメント電極パターン基板1A及びコモン電極パターン基板1B(以降、両基板をあわせて単にガラス基板1と呼ぶ)を洗浄し、該ガラス基板1上にフレキソ印刷にて絶縁膜(有機系酸化シリコン膜)4を500〜2000Åの厚さで形成する。この絶縁膜4は必須では無いが、上下基板間の短絡防止のため形成することが望ましい。フレキソ印刷の他に、メタルマスクを用い、蒸着やスパッタなどの方法で絶縁膜を形成してもよい。
【0017】
絶縁膜4の上に絶縁膜4とほぼ同じパターンの水平配向膜5をフレキソ印刷等で形成する。TN−LCDの場合、プレチルト角が低い(基板平面に対して2°以下である)ことが好ましい。例えば、水平配向膜5hを日産化学より入手可能なSE−410で500〜800Åの厚さで形成し、ラビング処理を施す。ラビングは布を巻いた円筒状のロールを高速に回転させ、水平配向膜5h上を擦る工程である。上下基板間の液晶3xの捩れ角が90°(左捩れ)になるようラビング処理の方向を設定する。
【0018】
セグメント電極パターン基板1A上に、シール材6を所定のパターンにスクリーン印刷する。シール材6の形成にはスクリーン印刷の代わりにディスペンサを用いてもよい。シール材には、例えば三井化学より入手可能な熱硬化性のES−7500を用いる。光硬化性のものや、光・熱併用型シール材でもよい。このシール材6は直径6μmの大きさのグラスファイバー2wt%と直径6.5μmのAu鍍金を施したスチレンボール1wt%とを含んでいる。
【0019】
コモン電極パターン基板1Bにはギャップコントロール材を乾式散布法にて散布する。ギャップコントロール材には6μmのプラスチックボールを用いる。シリカから成る真絲球を用いてもよい。
【0020】
2つの基板1A、1Bを、水平配向膜5hが内側になるよう所定の位置で重ね合わせてセル化し、プレスした状態で熱処理を行なって、シール材6を硬化する。なお、光硬化性のシール材を用いる場合は光処理を行って、シール材6を硬化する。
【0021】
スクライバー装置によりガラス基板に傷をつけ、ブレイキングにより所定の大きさ、形に分割して空セルを作成する。
【0022】
空セルに液晶3xを真空注入する。ここでは、例えば、大日本インキ化学工業製のΔεが正のネマティック液晶(ミクスチャー:Δn=0.082)を用いる。その後エンドシール材で注入口を封止する。その後ガラス基板の面取りと洗浄を行い、液晶セル101cを作成する。液晶セル101cに偏光板8をクロスニコル配置で貼り付けTNモードのノーマリー・ホワイト(ノーマリーオン)型の液晶表示素子101を完成する。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施例によるセグメント電極パターン基板及びコモン電極パターン基板の構成及び作製方法を説明するための液晶表示素子101の概略断面図である。
【0024】
まず、周知の方法により、セグメント電極パターン基板1Aを作製する。一方、コモン電極パターン基板1Bを作製する際には、セグメント電極パターン基板1Aの電極面上に形成されるセグメント電極パターン2のうち引き回し線2Wの電極間距離が100μm以下(なお、実際には線幅100μm、線間距離30μmで作製した)であり、かつラビング方向と引き回し線方向のなす角Φが−30°<Φ<30°若しくは60°<Φ<120°である領域(すなわち、液晶層中央部付近において液晶配列状態が、2本の隣接する引き回し線間の電圧差に起因する横電界方向に対して、45°又は135°前後(±30°程度)ずれている領域であり、ラビング方向と引き回し線方向のなす角Φが45°前後の方向を除く領域)において、対向するコモン電極パターン基板1B上の当該引き回し線2Wの電極間に相当する部分に、ダミーの透明電極膜2D(以下、単にダミー電極パターン2Dとする)をアイランド状に形成する。すなわち、上述したように、電極間距離が100μm以下であり液晶層101qのセル中央付近の液晶配列状態が2本の隣接する引き回し線間の電圧差に起因する横電界方向に対して45°ずれている場合に最も誤動作が目立つという傾向があるため、当該領域にダミー電極パターン2Dを形成する。
【0025】
ダミー電極パターン2Dのパターンは、コモン電極パターンのフォトマスクパターン設計時にパターンを追加し、コモン電極パターン作成時に同時に作製できるため、工程の追加を必要としない。なお、ダミー電極パターン2Dのパターンはセグメント電極パターン基板1Aとコモン電極パターン基板1Bとを重ねて基板平面上方から見た場合に、引き回し線2Wのパターンと重なっていないことが望ましく、重ね合わせの精度を考慮して、5〜20μmほど引き回し線2Wのパターンから離して作製されることが望ましい。また、たとえ重なったとしても、重なり量を0〜20μmとすることにより、誤動作が起きた場合にも、この寸法範囲の応答による点灯は目視での観察が甚だこんなんであり、また、静電気による誤動作は一時的なものであるため実用上の問題は無いと考えられる。
【0026】
以下に、セグメント電極パターン基板1A及びコモン電極パターン基板1Bの作成方法の一例を説明する。
【0027】
まず、無アルカリガラス(白板ガラス)もしくはソーダライムガラス(青板ガラス)を用いたガラス基板の表面に透明電極膜であるインジウム錫オキサイド(ITO)膜をCVD、蒸着、スパッタなどにより形成し、その後、所定のパターンにITO膜をフォトリソグラフィーを用いてパターニングする。パターニングは、まずロールコーターもしくはスリットコーターを用いてフォトレジスト材料をITO膜上に数ミクロンの厚さで形成する。ここでは、ロールコーターを用いて東京応化製のポジレジスト(OFPR−800)を1.5μmの厚さで形成する。次に、ホットプレートにて110℃、3分間のプリベーク処理を行い、露光機を用いて所定パターンのマスクを介して紫外線を100mJ/cm照射する。その後、アルカリ溶液(1wt%KOH)を用いて現像を行い、ホットプレートにて130℃、3分間のポストベーク処理を行う。さらに、その後、ITO用エッチャント(関東科学製ITOシリーズ(ITO−02、ITO−06N、ITO−07N)などの硝酸・塩素系、第2塩化鉄系(FeCl)他)を用いてウェットエッチングを行い、最後に強アルカリ溶液(3wt%NaOH)を用いてレジスト材を除去する。なお、ここでは一般的な露光機を用いるが、レーザを用いたマスクレス露光方式を用いても良い。
【0028】
以上のようにして作製した本発明の第1の実施例による液晶表示素子をスタティック駆動で5Vの交流電圧を印加して駆動し、目視したところ、図5で観察された引き回し線による誤作動は確認されなかった。
【0029】
以下、誤作動の解消の理由について考察する。
【0030】
図3に示すように、引き回し線2W間にダミーパターンが無い状態では、当該引き回し線2W間に電位差が生じた場合、図中矢印で示すように、電界は液晶層101qを横切る形で横方向にかかる。TNの液晶配列に対し横方向に電圧がかかると液晶分子は敏感に動作し、わずかな電圧差であっても電界方向に傾き、誤動作が生じるものと考えられる。
【0031】
本発明の第1の実施例では、図2に示すように、引き回し線2W間に電位差が生じたとしても、引き回し線2W間の距離よりも、各引き回し線2Wと対向基板(コモン電極パターン基板)1Aに形成されたダミーパターン2Dとの距離のほうが短い(引き回し線2W間の距離:30〜100μm、引き回し線2W−ダミーパターン2D間の距離:6〜30μm)。したがって、液晶の抵抗に対しITOの抵抗が圧倒的に低いので、電界方向は図中矢印で示すように、引き回し線2W−ダミーパターン2D間、すなわちほぼセル厚方向)にかかる。セル厚方向の液晶分子は電界方向に対してほぼ寝ている(電界方向に対してほぼ傾いていない)状態で配列しているため、閾値(2.16V)以下の電圧が印加されても、液晶は全く動作せず、誤動作が生じないと考えられる。すなわち、第1の実施例では、わずかな電圧差がかかっても液晶が誤動作しない方向に電界を逃すことにより、引き回し線2W間の液晶の誤動作を防止している。
【0032】
なお、外部の静電気などによりダミーパターン2Dに大きなチャージがかかった時に、引き回し線2W−ダミーパターン2D間の液晶が誤動作し、新たな表示不良が発生する恐れがある。これを回避するために、本実施例では、ダミーパターン2Dと引き回し線2Wとが基板平面を上から見た時に重なっていない状態にし、誤動作が生じたとしても目視では観察できないようにしている。基板平面を上から見た時のダミーパターン2Dと引き回し線2Wとの間隔は、理想的には0〜20μmである。たとえ重なったとしても目視では確認できない程度である0〜20μmであれば、静電気による誤動作は一時的な問題であるため、問題が無いと考えられる。
【0033】
図4は、本発明の第2の実施例によるセグメント電極パターン基板及びコモン電極パターン基板の構成及び作製方法を説明するための液晶表示素子102の概略断面図である。なお、第1の実施例と同様の部材には同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0034】
第2の実施例による液晶表示素子102の基本的な製造方法は上述した第1の実施例と同様である。第1の実施例と異なる点は、以下の3点である。
【0035】
(1)基板平面を上から見たときにコモン電極パターン基板1B上に、セグメント電極パターン基板上で誤動作が発生する恐れのある引き回し線2W間に各々細いダミーパターン2D2を形成する。
【0036】
(2)ダミーパターン2D2を取り出し端子まで接続し、回路と接続する。
【0037】
(3)ダミーパターン2D2に接続されている電圧は、アース、当該ダミーパターン2D2がその境界に形成される2本の引き回し線2Wのいずれかに印加されている電圧と同じか、両引き回し線2Wに印加されている電圧の中間のもののいずれかである。なお、複数のダミーパターン2D2に印加される電圧は同一のものである。
【0038】
第2の実施例において引き回し線2W間に形成されるダミーパターン2D2の幅は、5〜20μmであることが好ましい。こうするとダミーパターン2D2の線幅が非常に細くなり、十分な電圧がかからなくなる恐れがあるが、この電圧を用いて表示を行うわけではないので、問題とはならない。
【0039】
第2の実施例においてダミーパターン2D2を形成する部分は、第1の実施例と同様に、セグメント電極パターン基板1Aの電極面上に形成されるセグメント電極パターン2のうち引き回し線2Wの電極間距離が100μm以下(なお、実際には線幅100μm、線間距離30μmで作製した)であり、かつラビング方向と引き回し線方向のなす角Φが−30°<Φ<30°若しくは60°<Φ<120°である領域、換言すると引き回し線間の方位と液晶層中央部の液晶配向方位が45°±30°の角度をなす領域において、対向するコモン電極パターン基板1B上の当該引き回し線2Wの電極間に相当する部分である。第1の実施例との違いは、第1の実施例では、2本の隣接する引き回し線2Wに対して1本のダミーパターン2Dをアイランド状に形成したのに対して、第2の実施例では、2本の隣接する引き回し線2Wのそれぞれについて細いダミーパターン2D2を形成することである。
【0040】
ダミーパターン2D2に電圧を印加するための接続線は、セグメント電極パターン2の引き回し線2Wの電極間距離が100μmより大きい部分の引き回し線2W間に対応するコモン電極パターン基板1B上に引き回すこととする。なお、使用者が液晶表示の表示を観察できない部分(表示部外)であれば、ダミーパターン2D2に電圧を印加するための接続線は、コモン電極パターン基板1B上を自由に引き回すことができる。
【0041】
ダミーパターン2D2及びダミーパターン2D2に電圧を印加するための接続線のパターンは、フォトマスクパターン設計時にパターンを追加するだけで、コモン電極パターン2形成時に同時に作製できるため工程の追加を必要としない。なお、ダミー電極パターン2D2のパターンはセグメント電極パターン基板1Aとコモン電極パターン基板1Bとを重ねて基板平面状から見たい場合に、引き回し線2Wのパターンと重なっていないことが望ましく、重ね合わせの精度を考慮して、5〜20μmほど引き回し線2Wのパターンから離して作製されることが望ましい。
【0042】
以上のようにして作製した本発明の第2の実施例による液晶表示素子をスタティック駆動で5Vの交流電圧を印加して駆動し、目視したところ、図5で観察された引き回し線による誤作動は確認されなかった。
【0043】
本発明の第2の実施例では、図4に示すように、引き回し線2W間に電位差が生じたとしても、引き回し線2W間の距離よりも、各引き回し線2Wと対向基板(コモン電極パターン基板)1Aに形成されたダミーパターン2D2との距離のほうが短い(引き回し線2W間の距離:30〜100μm、引き回し線2W−ダミーパターン2D2間の距離(セル厚):6〜30μm)。したがって、電界方向は図4のように、引き回し線2W−ダミーパターン2D2間、すなわちほぼセル厚方向)にかかる。セル厚方向の液晶分子は電界方向に対してほぼ寝ている(電界方向に対してほぼ傾いていない)状態で配列しているため、閾値(2.16V)以下の電圧が印加されても、液晶は全く動作せず、誤動作が生じないと考えられる。すなわち、第2の実施例でも、わずかな電圧差がかかっても液晶が誤動作しない方向に電界を逃すことにより、引き回し線2W間の液晶の誤動作を防止している。さらに、第2の実施例では、ダミーパターン2D2の全てに接続線を通じて引き回し線2Wのいずれかに印加されている電圧と同じか又は非常に近い電圧を印加することが可能なため、第1の実施例よりもさらに大きい誤動作の抑制機能が期待できる。
【0044】
なお、外部の静電気などによりダミーパターン2D2に大きなチャージがかかった時に、引き回し線2W−ダミーパターン2D2間の液晶が誤動作し、新たな表示不良が発生する恐れがある。これを回避するために、本実施例では、ダミーパターン2D2と引き回し線2Wとが基板平面を上から見た時に重なっていない状態にし、誤動作が生じたとしても目視では観察できないようにしている。基板平面を上から見た時のダミーパターン2D2と引き回し線2Wとの重なり量は、理想的には0〜20μmである。たとえ重なったとしても目視では確認できない程度である20μm以下であれば、静電気による誤動作は一時的な問題であるため、問題が無いと考えられる。
【0045】
さらに、第2の実施例では、ダミーパターン2D2は、接続線を介して回路に接続されているので、静電気がかかったとしても接続線を通じて回路に放電できると考えられる。なお、実際には、作製した液晶表示素子に、積極的に静電気を加えても誤動作は確認できなかった。
【0046】
以上、本発明の実施例によれば、セグメント電極パターン基板の電極面上に形成されるセグメント電極パターンのうち引き回し線の電極間距離が100μm以下であり、かつラビング方向と引き回し線方向のなす角Φが−30°<Φ<30°若しくは60°<Φ<120°である領域、換言すると引き回し線間の方位と液晶層中央部の液晶配向方位が45°±30°の角度をなす領域において、対向するコモン電極パターン基板上の当該引き回し線の電極間に相当する部分に、ダミーの透明電極膜(ダミー電極パターン)を形成することで、当該引き回し線間における液晶表示の誤動作を抑制することができる。
【0047】
また、ダミーの透明電極膜(ダミー電極パターン)は、フォトマスクパターン設計時にパターンを追加するだけで、コモン電極パターン形成時に同時に作製できるため工程の追加を必要としない。よって、コストの増加を抑制することができる。
【0048】
また、ダミーパターンと引き回し線とが基板平面を上から見た時に重なっていない状態にし、誤動作が生じたとしても目視では観察できないようにして、静電気による誤動作の影響を軽減することができる。さらに、ダミーの透明電極膜(ダミー電極パターン)を接続線を介して回路に接続することにより、静電気による誤動作の影響を防止できる。
【0049】
本発明の実施例は、車載用ディスプレイ、遊戯用表示、携帯電話・デジタルカメラ用表示、オーディオ機器用表示などの、情報表示関連全般に適用することができる。なお、ディスプレイ全面ではなく表示の一部に本実施例を適用する場合を含む。特に、ネガ型表示、バックライトが明るい表示に適用すると効果的である。
【0050】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0051】
例えば、引き回し線2Wと接地・非接地の関係は、上記実施例の組み合わせに限らない。また、ダミーパターンの形状、大きさは上記実施例のものに限らない。さらに、液晶セルのセル条件も実施例のものに限らない。
【0052】
また、セグメント電極パターン基板の電極面上に形成されるセグメント電極パターンのうち引き回し線の電極間距離が100μm以下であれば、ラビング方向と引き回し線方向のなす角Φが−30°<Φ<30°若しくは60°<Φ<120°でない領域においても、対向するコモン電極パターン基板上の当該引き回し線の電極間に相当する部分に、ダミーの透明電極膜(ダミー電極パターン)を形成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施例によるセグメント電極パターン基板及びコモン電極パターン基板を用いた液晶表示素子101の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例によるセグメント電極パターン基板及びコモン電極パターン基板の構成及び作製方法を説明するための液晶表示素子101の概略断面図である。
【図3】従来のセグメント電極パターン基板及びコモン電極パターン基板の構成を表す概略断面図である。
【図4】本発明の第2の実施例によるセグメント電極パターン基板及びコモン電極パターン基板の構成及び作製方法を説明するための液晶表示素子102の概略断面図である。
【図5】従来の液晶表示素子のセグメント電極パターン基板の引き回し線間における液晶の誤動作を表す顕微鏡写真を基にした概念図である。
【符号の説明】
【0054】
1A、1B…ガラス基板、2…電極、2W…引き回し線、2D、2D2…ダミーパターン、2L…配線、3…液晶、4…絶縁膜、5…配向膜、6…シール材、8…偏光板、101…液晶表示素子、101c…液晶セル、101q…液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント電極パターンと、引き回し線パターンとが形成された第1のガラス基板と、
前記第1のガラス基板に対向配置され、コモン電極パターンと、前記第1のガラス基板上に形成された引き回し線パターンの間隔が100μm以下である場合に、当該引き回し線パターン間に対向する領域に形成されたダミーパターンとを有する第2のガラス基板と、
前記第1及び第2のガラス基板上に形成されるパターンを覆って形成された配向膜を含む膜構成と、
前記第1及び第2のガラス基板間に挟持された液晶層と
を有する液晶表示素子。
【請求項2】
前記第1及び第2のガラス基板を重ね合わせた場合に、前記引き回し線パターンと前記ダミーパターンとが平面視上重なっている部分が20μm以下である請求項1記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記ダミーパターンは、接続線を介して回路と接続されている請求項1又は2記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記ダミーパターンは、前記第1のガラス基板上に形成された引き回し線パターンの間隔が100μm以下であり、かつ前記液晶層の中央において液晶配列状態が引き回し線パターン間の電圧差に起因する横電界方向に対し45°±30°にずれている場合に当該引き回し線パターン間に対向する領域に形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−128176(P2010−128176A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302660(P2008−302660)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】