説明

液晶表示素子

【課題】導電性樹脂の膨張収縮によって生じる透明電極の導通不良や、ガラス基板へのストレスによる液晶配向不良をなくした液晶表示素子を提供する。
【解決手段】ガラス基板2に形成された透明電極5は、これと対向する位置に配置された回路基板3上の電極7と導電性シム材10を介して電気的に接続される。このとき、電極7上に導電性シム材10の下面の端辺のみを導電性樹脂10cを用いて固着し、該導電性シム材10の上面で前記導電性樹脂10cの塗布位置とは対辺に位置する端辺に導電性樹脂10bを塗布する構成でガラス基板2に形成された透明電極5と前記電極7を電気的に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、LCOSと呼ばれる液晶表示素子は、表面に画素電極が形成されたシリコン基板と、それに相対し表面に対向の透明電極が形成されたガラス基板を所定の位置関係で貼り合わせ、前記基板間に液晶を注入した液晶表示パネルを回路基板上に実装し、画素電極と対向透明電極間に電位差を与え、液晶の配向を制御することにより各種表示を得ている。
【0003】
前記液晶表示素子の画素電極と対向の透明電極間の電位差は、シリコン基板内に形成された駆動回路により作られ、画素電極への電位の供給は画素電極がシリコン基板内の駆動回路と直接接続され実現している。一方、対向透明電極への電位の供給は、シリコン基板の電極(ボンディングパッド)と回路基板電極(ボンディングパッド)をワイヤーボンディングで接続し、ついでガラス基板と回路基板間に熱硬化型導電性樹脂、例えば銀ペーストなどを塗布し、透明電極と回路基板上の電極を電気的に接続することで実現している。
【0004】
図4は前記液晶表示素子の正面断面図である。シリコン基板1とガラス基板2は回路基板3上の配線パターン(不図示)を介して導通をとるため、ガラス基板2がシリコン基板1より張り出した位置関係で、液晶9を介し貼り合わされている。シリコン基板1は、ワイヤー8によって回路基板3の電極6と接続されている。また、ガラス基板2に形成された透明電極5は、導電性樹脂10aによって回路基板3の電極7と接続され、画素電極4とはそれぞれ異なった電位をシリコン基板内の駆動回路より供給される。
【0005】
図4に示すような、ガラス基板2の透明電極5が、回路基板3の電極7と導電性樹脂10aによって接続される場合、前記ガラス基板2と前記回路基板3の間隔は、シリコン基板1の厚みとほぼ同程度の0.6mmから0.7mmとなり、大量の導電性樹脂を必要とする。この導電性樹脂10aは、周囲の温度及び湿度によって膨張収縮し、ガラス基板2にストレスを与えることになる。前記導電性樹脂10aは、例えばエポキシ系の接着樹脂であり、その熱膨張係数は数十ppm/度である。
【0006】
図5は、導電性樹脂の膨張によって不良が発生した液晶表示素子の正面断面図であり、図6は、導電性樹脂の収縮によって不良が発生した液晶表示素子の正面断面図である。図5に示すように、導電性樹脂が膨張した場合、図5の矢印で示すように、ガラス基板にストレスが掛かり基板変形をもたらし液晶の配向不良が生じてしまう。逆に導電性樹脂が収縮した場合、図6に示すように剥離や破断が生じガラス基板に形成された透明電極と回路基板の導通がとれなくなり、液晶表示素子は電気的な不良を生じる。
【0007】
図7は、導電性樹脂の塗布量を減らし導電性樹脂の膨張収縮による影響を減少させるために、ガラス基板の透明電極と回路基板の電極の間にシリコン基板の熱膨張係数に近い導電性シム材、例えば42アロイを配置した液晶表示素子を示す図で、(a)は正面断面図、(b)は右側面図である。ガラス基板2の透明電極5は導電性シム材10の上面に導電性樹脂10bにより接続され、ついで導電性シム材10の下面は回路基板の電極7と導電性樹脂10cにより接続され、ガラス基板の透明電極と回路基板の電極との導通を実現する。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−308824
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6に示す液晶表示素子の導電性樹脂10b、10cの使用量は、図3に示す液晶表示素子より少量化しているため、図3に示す構造の液晶表示素子よりも不具合の発生率は低いが、導電性樹脂10b、導電性シム材10、そして導電性樹脂10cは垂直方向(基板の厚み方向)の直線上に重なり合っているため、導電性樹脂10b、導電性シム材10、そして導電性樹脂10cの膨張収縮による応力も直線上で働くことになる。したがって応力を逃がすことが出来ず、導電性樹脂の接続部での剥離や破断、そしてガラス基板へのストレスを引き起こす可能性は依然として残る。
【0010】
本発明は、導電性シム材、導電性樹脂の膨張収縮によって生じる透明電極の導通不良や、ガラス基板へのストレスによる液晶配向不良をなくした液晶表示素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液晶表示素子は、少なくとも、回路基板と、複数の画素電極を有する第一基板と該第一基板に相対する対向電極を有する第二基板を備え、前記第二基板の一辺が前記第一基板より張り出すように所定の位置及び間隔で貼り合わされる液晶表示パネルを有し、前記液晶表示パネルが電気的配線パターンを有する回路基板上に、前記第一基板が前記回路基板に接するよう実装され、前記第二基板に形成された電極と前記回路基板の前記第二基板に対向する面に形成された電極を、導電性シム材と導電性樹脂を用いて電気的に接続する液晶表示素子であって、
前記導電性シム材の上面に塗布され前記第二基板と前記導電性シム材を接続する第一の導電性樹脂と、前記導電性シム材の下面に塗布され前記導電性シム材と前記回路基板を接続する第二の導電性樹脂とを有し、前記第一の導電性樹脂と前記第二の導電性樹脂の位置関係が平面的に重ならない位置関係であることを特徴とする。
【0012】
前記第一の導電性樹脂が前記導電性シム材の上面の一端辺部に位置し、前記第二の導電性樹脂が、前記導電性シム材の下面で前記第一の導電性樹脂が位置する前記導電性シム材の端辺とは対向する辺に位置する構成とすることができる。
【0013】
また、前記第一の導電性樹脂が前記導電性シム材の上面の一角部に位置し、前記第二の導電性樹脂が前記導電性シム材の下面の角部であって、前記第一の導電性樹脂とは対角の位置にある構成とすることができる。
【0014】
さらに、前記導電性シム材は、前記第一基板の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有する材料で構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液晶表示素子によれば、導電性シム材の上面に塗布された導電性樹脂と前記導電性シム材の下面に塗布された導電性樹脂の位置関係が平面的に重なる位置関係になく、垂直線上からずれているため、前記第二基板の透明電極と前記導電性シム材と前記回路基板の電極と導電性樹脂の膨張収縮による応力を逃がすことができ、前記第二基板、導電性シム材、回路基板、ならびに導電性樹脂の膨張収縮によって生じる液晶の配向不良、ならびに導通不良といった不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施例の液晶表示素子を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面断面図、(c)は右側面図
【図2】図1に示す液晶表示素子の右側面図であり、(a)は導電性樹脂が収縮した状態を示す図、(b)は導電性樹脂が膨張した状態を示す図
【図3】他の実施例の液晶表示素子を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面断面図、(c)は右側面面図
【図4】従来技術における液晶表示素子の正面断面図
【図5】従来技術における導電性樹脂の膨張状態を示す液晶表示素子の正面断面図
【図6】従来技術における導電性樹脂の収縮状態を示す液晶表示素子の側面断面図
【図7】従来技術における導電性シム材を用いた液晶表示素子を示す図で、(a)は正面断面図、(b)は右側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
回路基板と、第一基板と第二基板が前記第二基板の一辺が前記第一基板より張り出すように所定の位置及び間隔で貼り合わされた液晶表示パネルとを有し、前記第二基板の電極と前記回路基板の対向する面に設けた電極とが、対辺に導電性樹脂が塗布された導電性シム材を介して接続された液晶表示素子とする。該構成により、導電性樹脂の膨張収縮による不具合を防止した液晶表示素子を実現する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本実施例の液晶表示素子の構造を説明するための図で、液晶表示素子の平面図(a)と正面断面図(b)、そして右側面図(c)である。
【0019】
1は、複数の画素電極4を有する第一基板で、例えばシリコン基板である。2は、前記シリコン基板1に相対する透明電極5を有する第二基板で、例えばガラス基板である。シリコン基板1とガラス基板2は回路基板3上の電極6、電極7と導通をとるため、液晶(不図示)を狭持し、一辺が他方の一辺より張り出すようにずれた位置関係で貼り合わされて液晶表示パネルを構成している。前記液晶表示パネルは、前記シリコン基板1の裏面をもって前記回路基板3上に配置固定されている。
【0020】
前記シリコン基板1に形成された画素電極4は、前記シリコン基板1の内部に形成された駆動回路(不図示)を介しワイヤー8によって回路基板3の電極6と電気的に接続される。また、ガラス基板2に形成された透明電極5は、これと対向する位置に配置された回路基板3上の電極7と導電性シム材10を介して電気的に接続される。
【0021】
ここで、本発明の特徴は、電極7上に導電性シム材10の下面の端辺のみを導電性樹脂10cを用いて固着し、該導電性シム材10の上面で前記導電性樹脂10cの塗布位置とは対辺に位置する端辺に導電性樹脂10bを塗布しガラス基板2に形成された透明電極5と前記電極7を電気的に接続したことにある。
【0022】
即ち、本発明の液晶表示素子を上方から見た場合、図1の平面図(a)において、該導電性シム材10の上面の前記導電性樹脂10bと、前記導電性シム材10の下面の前記導電性樹脂10cが重ならない位置関係になっている。
【0023】
このような構成によれば、一方の導電性樹脂に対し導電性シム材を挟んで(垂直線上に)対向する側には、他方の導電性樹脂がない構成となるので、必然的に導電性シム材と第二基板、導電性シム材と回路基板の間には一定の間隙ができることになる。
図2は、図1に示す液晶表示素子の右側面図であり、(a)は導電性樹脂が収縮した状態を示す図で、(b)は導電性樹脂が膨張した状態を示す図である。この図2に示すように、前記した導電性シム材10とガラス基板2(第二基板)、導電性シム材10と回路基板3の間隙を導電性シム材10の可動スペースとして、それぞれの導電性樹脂10b、10cと導電性シム材10の接続箇所が、互いに力点支点の関係となり可動することで導電性樹脂や導電性シム材の伸縮に対応できるのである。よって、導電性樹脂の伸縮による応力をガラス基板や回路基板に直接伝播させることがなくなる。
【0024】
さらには、前記導電性シム材10は弾性を有する部材で構成することもできる。このような構成にすれば、導電性樹脂10b、10cの伸縮により導電性シム材10に応力がかかっても、導電性シム材10自体が変形(撓む)することによっても応力吸収できる。よって、導電性樹脂の伸縮による応力をガラス基板や回路基板に直接伝播させることがなくなる。
【0025】
前記導電性シム材は、前記第一基板の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有する材料が望ましく、例えば30度雰囲気で熱膨張係数が4.5×10−6/K程度の42アロイがある。そして透明電極5と電極7との間隙(間隔)は、約0.6mmであり、この間隙に介在する前記導電性シム材10の高さは、その材質ならびに弾性特性から0.1mmから0.5mmのものを用いることができる。
【実施例2】
【0026】
図3は、他の実施例である液晶表示素子の構造を説明するための図で、平面図(a)と正面断面図(b)、そして右側面図(c)である。
【0027】
1は、複数の画素電極4を有する第一基板で、例えばシリコン基板である。2は、前記シリコン基板1に相対する透明電極5を有する第二基板で、例えばガラス基板である。シリコン基板1とガラス基板2は回路基板3上の電極6、電極7と導通をとるため、液晶(不図示)を狭持し、一辺が他方の一辺より張り出すようにずれた位置関係で貼り合わされて液晶表示パネルを構成している。前記液晶表示パネルは、前記シリコン基板1の裏面をもって前記回路基板3上に配置固定されている。
【0028】
前記シリコン基板1に形成された画素電極4は、前記シリコン基板1の内部に形成された駆動回路(不図示)を介しワイヤー8によって回路基板3の電極6と電気的に接続される。また、ガラス基板2に形成された透明電極5は、これと対向する位置に配置された回路基板3上の電極7と導電性シム材10を介して電気的に接続される。
【0029】
ここで、本発明の特徴は、電極7上に導電性シム材10の下面の一角部のみを導電性樹脂10cを用いて固着し、該導電性シム材10の上面で前記導電性樹脂10cの塗布位置とは対角に位置する角部に導電性樹脂10bを塗布しガラス基板2に形成された透明電極5と電気的に接続したことにある。
【0030】
即ち、本発明の液晶表示素子を上方から観た場合、平面図(a)において、該導電性シム材10の上面の前記導電性樹脂10bと、前記導電性シム材10の下面の前記導電性樹脂10cが重ならない位置関係である。さらに、前記導電性シム材10の弾性を十分に利用するために、前記導電性樹脂10bと前記導電性樹脂10cの距離が十分に離れた構成としている。
【0031】
前記導電性シム材10は、前記シリコン基板1(第一基板)の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有する材料が望ましく、例えば30度雰囲気で熱膨張係数が4.5×10−6/K程度の42アロイがある。そして透明電極5と電極7との間隙(間隔)は、約0.6mmであり、この間隙に介在する前記導電性シム材10の高さは、その材質ならびに弾性特性から0.1mmから0.5mmのものを用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 シリコン基板
2 ガラス基板
3 回路基板
4 画素電極
5 透明電極
6 回路基板上の電極(ボンディングパッド)
7 回路基板上の電極
8 ワイヤー
9 液晶
10 導電性シム材
10a 導電性樹脂
10b 上部導電性樹脂
10c 下部導電性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
回路基板と、
複数の画素電極を有する第一基板と該第一基板に相対する対向電極を有する第二基板を備え、前記第二基板の一辺が前記第一基板より張り出すように所定の位置及び間隔で貼り合わされる液晶表示パネルを有し、
前記液晶表示パネルが電気的配線パターンを有する回路基板上に、前記第一基板が前記回路基板に接するよう実装され、
前記第二基板に形成された電極と前記回路基板の前記第二基板に対向する面に形成された電極を、導電性シム材と導電性樹脂を用いて電気的に接続する液晶表示素子であって、
前記導電性シム材の上面に塗布され前記第二基板と前記導電性シム材を接続する第一の導電性樹脂と、
前記導電性シム材の下面に塗布され前記導電性シム材と前記回路基板を接続する第二の導電性樹脂とを有し、前記第一の導電性樹脂と前記第二の導電性樹脂の位置関係が平面的に重ならない位置関係にあることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記第一の導電性樹脂が前記導電性シム材の上面の一端辺部に位置し、前記第二の導電性樹脂が、前記導電性シム材の下面で前記第一の導電性樹脂が位置する前記導電性シム材の端辺とは対向する辺に位置することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記第一の導電性樹脂が前記導電性シム材の上面の一角部に位置し、前記第二の導電性樹脂が前記導電性シム材の下面の角部であって、前記第一の導電性樹脂とは対角の位置にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記導電性シム材は、前記第一基板の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有する材料から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の液晶表示素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−145573(P2011−145573A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7689(P2010−7689)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】