説明

液晶表示装置およびそれに用いられる光学フィルム

【課題】本発明の目的は、表示品位に優れるIPSモードの液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】第1の偏光板、液晶セル、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム、第2の偏光板、の順でこれらが積層されてなるノーマリブラックモードのインプレーンスイッチングモードの液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視野角特性に優れた液晶表示装置、およびそれに好適な光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置の性能は向上し、特に垂直配向モードとインプレーンスイッチング(以下IPSと称する)モードは性能に優れているため、これらを用いた液晶テレビは従来のブラウン管テレビに置き換わる可能性を秘めている。光学的異方性を有する光学フィルムである位相差フィルムは、これらの液晶表示装置の性能向上、特に視野角拡大に対して重要な役割を演じている。IPSモードは、従来から視野角拡大のための位相差フィルムを使用しなくても視野角が広いことが1つの特長であったものの、昨今の位相差フィルムを用いた光学設計技術に基づいた広視野角化技術の進歩により、他のモードとの差別化が困難になってきている。そのような背景の中で、IPSモードにおいてもより一層の視野角拡大を目指した、位相差フィルムを用いた光学設計技術の開発の必要性が高まっている。例えば、2軸性の位相差フィルムを用いて光学補償を行う方式が非特許文献1に記載されている。
【0003】
また、正の1軸性のAプレートと正の1軸性のCプレートを組み合わせることによる下記の非特許文献2に記載の偏光板の視野角拡大技術を、IPSの視野角拡大に用いることも知られている。
【0004】
【非特許文献1】Yukita Saitoh, Shinichi Kimura, Kaoru Kusafuka, Hidehisa Shimizu著、Japanese Journal of Applied Physics 37巻 1998年 4822〜4828頁
【非特許文献2】J. Chen, K. -H. Kim, J.-J. Jyu, J. H. Souk, J. R. Kelly, P. J. Bos著Society for Information Display ’98 Digest, 1998年 315頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1および2の技術を検討した結果、これらの方法をIPSモードの液晶表示装置の視野角拡大に利用した場合、黒表示のカラーシフトが1つの問題であることがわかった。ここでいう黒表示のカラーシフトとは、黒表示時の液晶表示装置を法線方向ではなく、斜め方向から観察した場合に、方位角によって黒の色調が変化することを意味する。本発明ではこの問題を、斜め入射時におけるカラーシフトの方位角依存性問題と呼ぶ。わかり易く言えば、斜め方向から液晶表示装置を観察した場合に、見る方向によって、例えば赤味の強い黒色から青味の強い黒色に変化するような状態を指すものとする。また、一般に黒表示におい上記カラーシフトを生じるものは、中間調表示でもカラーシフト問題を引き起こす。ここで、方位角とは液晶表示装置表面内において設定される角度である。一方、極角は液晶表示装置の表面の法線を0°として設定される角度であり、したがって、入射角は極角と方位角で定義される。
【0006】
ノーマリブラックモードのインプレーンスイッチングモードにおける液晶セルの位相差値は、視野角だけではなく透過率や応答速度等も勘案して設計されるため、最適な位相差値は必ずしも2分の1波長とはならない。ここで液晶セルの位相差値とは液晶を含んだ液晶セルの位相差値のことである。したがって、ノーマリブラックモードのインプレーンスイッチングモードにおける液晶表示装置の視野角は、主として位相差フィルムと液晶セルとの光学異方性により決定される。上記非特許文献1では2軸性光学フィルムを用いるが、液晶セルの位相差値と2軸性光学フィルムの位相差値の関係が開示されていない。同様に、非特許文献2においても、液晶セルと位相差フィルムの関係が開示されていない。
【0007】
さらに、上記非特許文献1および2で用いられる2軸性光学フィルムや正の1軸性のCプレートは、製法が複雑であるために、光学軸精度や位相差精度を大面積で得ることが難しいといった問題点を有している。その結果、これらを液晶表示装置に用いた場合には、表示ムラ等の欠陥が生じ易く、表示品位を高めることが難しいといった問題もある。
【0008】
本発明の目的は、表示品位に優れるIPSモードの液晶表示装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、IPS液晶セルの位相差値が変化しても、広視野角かつ上記カラーシフト問題を解決した表示品位に優れる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムは、例えば、分子分極率異方性が負の高分子材料をフィルム化し、通常の1軸延伸工程により得ることがでいる。したがってかかるフィルムは製造工程が非常に簡便であり、液晶テレビ等に要求される光学異方性の均一性にも優れる。また、厚さ方向の屈折率が面内方向のいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムは、例えば、原材料である分子分極率異方性が負の高分子材料をフィルム化し、通常の2軸延伸工程等により得ることが可能であり、簡便な製造工程で得ることができる。
【0010】
本発明者らは、これらの光学フィルムを用いて光学設計を行い、IPSモード液晶表示装置の視野角拡大の方式について鋭意検討したところ、液晶セルの位相差値が設計の都合により変化しても、広視野角かつ斜め入射時におけるカラーシフトの方位角依存性を抑制したIPSモードの液晶表示装置が実現できることを見出した。
【0011】
すなわち本発明は以下の通りのものである。
〔1〕第1の偏光板、液晶セル、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム、第2の偏光板、の順でこれらが積層されてなるノーマリブラックモードのインプレーンスイッチングモードの液晶表示装置であって、第1の偏光板の吸収軸と黒状態における液晶セルの面内遅相軸とのなす角が略90°、黒状態における液晶セルの面内遅相軸と負の略1軸性光学フィルムの遅相軸とのなす角が略90°、負の略1軸性光学フィルムの遅相軸と2軸性光学フィルムの面内遅相軸とのなす角が略90°、かつ2軸性光学フィルムの面内遅相軸と第2の偏光板の吸収軸とのなす角が略0°である液晶表示装置。
〔2〕負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、2軸性光学フィルムの面内位相差値をそれぞれΓ1(λ)、ΓLC(λ)、Γ2(λ)とし、そして、第1および第2の偏光板が液晶セル側にそれぞれ偏光層用保護フィルムを有する場合には、偏光層用保護フィルムの厚さ方向の位相差値をそれぞれ、Rth(λ)およびRth(λ)とすると、下記式(1)および(2)の関係を満足することを特徴とする上記記載の液晶表示装置。
−120<Γ2(λ)+Rth(λ)/2<30nm (1)
45<ΓLC(λ)+Rth(λ)<155nm (2)
(ただし、λ=550nmとする。)
〔3〕負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、2軸性光学フィルムの面内位相差値をそれぞれΓ1(λ)、ΓLC(λ)、Γ2(λ)とした場合、下記式(3)および/または(4)の関係を満足することを特徴とする上記記載の液晶表示装置。
|Γ2(λ1)|<|Γ2(λ2)| (3)
|ΓLC1)+Γ(λ1)|<|ΓLC2)+Γ(λ2)| (4)
(ただし、λは測定波長を表しており、400nm≦λ1<λ2≦700nmである。)
〔4〕上記の液晶表示装置に用いる面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム。
〔5〕上記の液晶表示装置に用いる厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム。
〔6〕フルオレン骨格を有するポリカーボネートからなることを特徴とする上記の光学フィルム。
〔7〕上記記載の光学フィルムと偏光板が一体となった積層偏光板であって、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム、偏光板の順番で積層されてなり、かつ、負の略1軸性光学フィルムの面内遅相軸と2軸性光学フィルムの面内遅相軸とのなす角が略90°、2軸性光学フィルムの面内遅相軸と偏光板の吸収軸が略0°であることを特徴とする積層偏光板。
【0012】
本発明では屈折率の異方性を有する光学的異方性フィルムのことを、位相差フィルムまたは光学フィルムと称している。1軸性光学フィルム、2軸性光学フィルムはその3次元屈折率によりそれぞれ分類されるが、これらも位相差フィルムの範疇である。位相差フィルムは屈折率楕円体で表現されるものとし、3つの主屈折率の方位はフィルム面内に平行か垂直である場合のみをここでは考えている。ここでは図3のように座標軸がフィルムの表面に平行または直交である直交座標系を考え、その座標の方位に対応した3つの屈折率をn、n、nと定義する。面内における遅相軸方位をx軸と設定すると、y軸は面内にz軸は厚さ方向と設定される。したがって、本発明における面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムとは、3つの屈折率を用いて、n≒n>nとなり、nがフィルム面内における遅相軸となる。2軸性光学フィルムは3つとも屈折率が異なる状態と定義される。したがって、厚さ方向の屈折率が面内のいずれの方向における屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムとは、n>n>nと定義される。先述した正の1軸性のAプレートとは、面内に光学軸を有する正の1軸性媒質(フィルムの場合は1軸性光学フィルム)のことであり、この定義ではn>n=nとなる。一方、正の1軸性のCプレートとは、厚さ方向に光学軸を有する正の1軸性媒質(フィルムの場合は1軸性光学フィルム)のことであり、この定義ではn=n<nとなる。
【0013】
また、本発明における面内の位相差値Γは、下記式(5)または(6)で定義されるものとする。
≧nの光学フィルムの場合には
Γ(λ)=(n−n)×d (5)
<nの光学フィルムの場合には
Γ(λ)=(n−n)×d (6)
ここでdはフィルムの厚さ(nm)である。
【0014】
本発明における面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムは、厳密にはn=n>nの関係を満足するものが好ましいが、n≒n>nであれば現実的には問題なく使用できる。また、実際の位相差フィルムには屈折率のばらつきもあるので、この3つの屈折率を用いた下記式(7)を用いて負の略1軸性という用語の範囲を定義する。
Nz=(n−n)/(n−n) (7)
【0015】
本発明における面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムとは
−0.4<Nz<0.1 (8)
であると定義され、好ましくは、
−0.35<Nz<0.05 (9)
であり、より好ましくは
−0.20<Nz<0.03 (10)
さらに好ましくは、
−0.10<Nz<0.02 (11)
である。また、Rthは下記のように定義される。
Rth(λ)={(n+n)/2−n}×d (12)
上記式(12)でd(nm)は光学フィルムの厚さである。本発明で位相差値Γ(λ)やRth(λ),Nz値は特に断りがない限り、550nmの波長で測定したものとする。
【0016】
また、本発明における厚さ方向の屈折率が面内のいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムとは、下記式(13)
−5≦Nz≦−0.4 (13)
であると定義され、好ましくは、下記式(14)
−4<Nz≦−0.5 (14)
である。Nzが−5より小さい場合には、2軸性に乏しくなり、正の1軸性であるCプレートに近くなるため、その結果、液晶セルを挟んだ上下対称構造が失われカラーシフトを抑制することが困難となる場合がある。また、Nzが0に近い場合も光学的に1軸性となり、本発明の範囲外となる。
【0017】
本発明における黒状態および黒表示とは、階調表示において最も暗い状態であり、具体的には、液晶表示装置の表面の法線方向から光を入射して測定した透過率が最も低くなる状態と定義される。
【0018】
光学異方性素子間の光学軸の合わせ角度の前記した角度であることが必要だが、許容範囲は、上記設定角度を中心として、±3°以内であり、好ましくは±2°以内、より好ましくは±1°以内、さらに好ましくは±0.5°以内である。すなわち、前記の略90°という表現は、90°±3°と定義される。
【0019】
本発明において、特に液晶セルの片側に2枚の位相差フィルムを用い、かつそれらの面内位相差値及び黒状態における液晶セルの面内位相差値を考慮した際に、特に優れた広視野角化が実現できる理由を以下に記す。ここでいう液晶表示装置の広視野角化とは、見る角度によってコントラストが変化する現象を改善し、コントラストの高い角度領域が広がることを指す。一般に液晶表示装置の広視野角化は、黒表示時の透過率が液晶表示装置への入射角度によらずにできるだけ0に近づけることが目標となる。本発明により、様々な入射角度を有する光に対して透過率を小さくすることが可能であることを以下に説明する。
【0020】
本発明における液晶表示装置の構成の一例を図1に記す。この図1を用いて本発明の広視野角化の原理を説明する。なお、図1では第2の偏光板が光源側にあるが、光源は第1または第2の偏光板のいずれの側に配置されていても良い。
【0021】
図1の構成は、ある条件の下では、図2と光学的にほぼ等価とみなすことができる。まず、本発明における液晶表示装置はIPSモードであるため、液晶セルは黒表示時において面内に光学軸を有する正の1軸性媒質とみなすことができる。そして、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムと液晶セルの遅相軸が直交し、かつ、液晶セルの面内位相差値の絶対値の方が、負の略1軸性光学フィルムの位相差値の絶対値よりも大きいという条件の下では、2つの素子の組み合わせは、図2に示す正の略1軸性光学フィルム[11]と光学的にほぼ等価とみなしうる。したがって、本発明の液晶表示装置における広視野角化は、図2の構成において広視野角化をまず検討し、その結果に基づいて、本発明において用いられる光学的異方性媒質の最適な位相差値およびその関係を求めればよいということになる。
【0022】
図2で広視野角化を実現するということは、あらゆる入射角を有する入射光に対して、透過率をできるだけ0に近づけることである。そこで、図2における正の略1軸性光学フィルム[11]と厚さ方向の屈折率が面内のいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム[12]の面内の位相差値をそれぞれ、Γ4(λ)、Γ3(λ)とし、最適な位相差値を検討したところ、下記式(15)、(16)を満足していることが好ましいことがわかった。下記式(15)および(16)を満足することにより、入射光の入射角が、極角0〜80°、方位角0〜360°の範囲において、透過率を小さくすることができる。
−120<Γ3(λ)<30nm (15)
45<Γ4(λ)<155nm (16)
【0023】
位相差値の好ましい範囲は好ましくは、下記式(17)および(18)を満足することであり、この場合には入射光の入射角が、極角0〜80°、方位角0〜360°の範囲において、透過率をより小さくすることができる。
−100<Γ3(λ)<10nm (17)
70<Γ4(λ)<140nm (18)
【0024】
位相差値のより好ましい範囲は、下記式(19)および(20)を満足することであり、この場合には入射光の入射角が、極角0〜80°、方位角0〜360°の範囲において、透過率をさらに小さくすることができる。
−80<Γ3(λ)<−10nm (19)
90<Γ4(λ)<130nm (20)
【0025】
2軸性光学フィルムのNz値や用いる光学フィルムの屈折率によって最適な値は変動するが、上記関係を満足することが好ましい。
先述したように、図1と図2の構成の比較から、両者が等価になるためには、下記式(21)および(22)を満足すればよいことが新たに見出される。
Γ3(λ)=Γ2(λ) (21)
Γ4(λ)=ΓLC(λ)+Γ(λ) (22)
【0026】
先述したように上記式(22)が成立する根拠は、液晶セルと面内に光学軸を有する第1の負の略1軸性光学フィルムは、いずれも光学的に略1軸性であり、かつ、遅相軸が互いに直交配置であるため、光学的に両者は1つの1軸性媒質とみなすことができるためである。ここで、全ての異方性媒質の屈折率が等しい場合には上記式(21)、(22)は等号とみなせるが、一般に液晶表示装置において光学異方性媒質として使用する材料は有機物であり、材料が異なっても屈折率は大きく違わないのでほぼ等しいとみなしても実用上は問題が少なく、上記式(21)および(22)を満足すれば図1と図2の構成は光学的に等価であるとみなし得る。
【0027】
一方、本発明における偏光板は、偏光層のみ、または偏光層の片面もしくは両面に偏光層の保護のために偏光層用保護フィルムが設置された形態を含む。偏光層用保護フィルムが偏光層の少なくとも片面に設置されておりかつ液晶セル側に当該偏光層用保護フィルムが存在する場合、この偏光層用保護フィルムは、一般に、面内の異方性については無視しうるほど小さいが、後述する厚さ方向の位相差Rth(λ)は、液晶表示装置の設計において無視することができない。そこでこの偏光層用保護フィルムの影響について検討した。その結果、図1と図2が光学的にほぼ等しくなるためには、上記式(21)、(22)の関係は概ね下記の通りであることがわかった。
Γ3(λ)≒Γ2(λ)+Rth(λ)/2 (23)
Γ4(λ)≒ΓLC(λ)+Γ1(λ)+Rth(λ) (24)
【0028】
ここでRth(λ)、Rth(λ)はそれぞれ、図1において第1の偏光板における液晶セル側の偏光層保護フィルムの厚さ方向の位相差値、第2の偏光板における位相差フィルム側の偏光層保護フィルムの厚さ方向の位相差値を表す。本発明の光学異方性の定義から、一般に用いられる偏光層保護フィルムのRth(λ)の値は正である。一方、本発明の面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムおよび本発明の2軸性光学フィルムの位相差値は負である。したがって、両者は互いに異方性を打ち消し合う。ΓLC(λ)が一定の条件で偏光層保護フィルムが無い場合と比較して、Γ1(λ)の値は、絶対値でRth(λ)分だけ大きくする必要があることを、上記式(22)と上記式(24)の関係が示している。一方、Γ2(λ)の値は、絶対値でRth(λ)/2分だけ大きくする必要があることを上記式(21)と上記式(23)の関係が示している。したがって、上記式(15)、(16)および上記式(23)、(24)の関係から、本発明における液晶表示装置において広視野角化を実現するためには、上記式(1)、(2)を満足することが好ましいことが導出される。
【0029】
また、一般にノーマリブラックモードのインプレーンスイッチングモードの液晶表示装置における液晶セルの位相差は通常、2分の1波長程度以上のものが使用され、それらは、輝度や応答速度等も勘案して決定される。本発明の液晶表示装置は、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムと正の1軸性媒質である液晶セルは、前記したように両者の組み合わせにより、1つの正の1軸性媒質とみなすことが可能であることから、光学設計の見通しが立て易く、設計の都合により液晶セルの位相差値が変化しても、上記式(1)、(2)を満足すれば広視野角の液晶表示装置を得ることが可能であるという点も他の方法には無い優れた点である。
【0030】
さらに性能を向上させるには、光学素子の位相差値の波長依存性をも考慮に入れることが好ましい。すなわち、図2でさらなる性能向上を目指して広視野角化かつ広帯域化を実現するということは、あらゆる入射角を有する可視光帯域の入射光に対して、透過率をできるだけ0に近づけることである。まず、広帯域化については、検討の結果、図2の2枚の位相差フィルムは、それぞれの位相差の波長分散が互いに補償されないので、これらの位相差フィルムの位相差値の波長分散は、少なくとも一方が、好ましくは両方が広帯域化していることが好ましいことがわかった。特に断りがない場合には位相差値は、長さの単位であるナノメートルで定義するものとする。ここでいう位相差値の広帯域化とは、位相差値を角度表示した際に、波長に依存せずに位相差値が一定となる状態に近づけるものと定義される。位相差値を長さの単位に換算して考えた場合には、波長に対して位相差値Γ(λ)の絶対値が単調増加になる状態となることが少なくとも必要で、好ましくは、下記式(25)の状態に近づけることと言い換えることができる。
Γ(λ)/λ=C (25)
ただし、Γ(λ)は測定波長λにおける位相差値(nm)であり、λは400〜700nmの範囲で、Cは定数である。
【0031】
したがって、図2における正の略1軸性位相差フィルムと2軸性光学フィルムの位相差値をそれぞれ、Γ4(λ)、Γ3(λ)とした場合、下記式(26)および/または(27)を満足することが好ましい。
|Γ(λ)|<|Γ(λ)| (26)
|Γ(λ)|<|Γ(λ)| (27)
ここでλは測定波長を表しており、400nm≦λ1<λ2≦700nmとする。
【0032】
より好ましくは上記式(26)および(27)を同時に満足することである。
したがって、上記式(26)、(27)と上記式(21)、(22)との関係から下記式(3)、(4)が導き出される。本発明の液晶表示装置で好ましくは、下記式(3)および/または(4)を満足することであり、より好ましくは両方を満足することである。
|Γ2(λ1)|<|Γ2(λ2)| (3)
|ΓLC1)+Γ(λ1)|<|ΓLC2)+Γ(λ2)| (4)
ここで、λは測定波長を表しており、400nm≦λ1<λ2≦700nmである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムと、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムを用いて光学設計された液晶表示装置は、電圧非印加時の液晶セルの位相差値が他の特性との兼ね合いでいろいろの値に変化してもその変化に応じた広視野角化の設計が容易であり、広視野角でかつ斜め入射時におけるカラーシフトの方位角依存性が小さいといった優れた性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
前記発明の効果を得るためには、第1の偏光板、液晶セル、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム(以下単に負の略1軸性光学フィルムということがある)、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム(以下単に2軸性光学フィルムということがある)、第2の偏光板の順でこれらが積層されてなるノーマリブラックモードのインプレーンスイッチングモードの液晶表示装置であって、第1の偏光板の吸収軸と黒状態における液晶セルの面内遅相軸とのなす角が略90°、黒状態における液晶セルの面内遅相軸と負の略1軸性光学フィルムの遅相軸とのなす角が略90°、負の略1軸性光学フィルムの遅相軸と2軸性光学フィルムの面内遅相軸とのなす角が略90°、かつ2軸性光学フィルムの面内遅相軸と第2の偏光板の吸収軸とのなす角が略0°であり、
かつ、
負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、2軸性光学フィルムの面内位相差値をそれぞれΓ1(λ)、ΓLC(λ)、Γ2(λ)とし、そして、第1および第2の偏光板の液晶セル側のそれぞれに偏光層用保護フィルムが配置された場合には、それら偏光層用保護フィルムの厚さ方向の位相差値をそれぞれ、Rth(λ)、Rth(λ)とすると、下記式(1)および(2)の関係を満足する液晶表示装置であることが好ましい。
−120<Γ2(λ)+Rth(λ)/2<30nm (1)
45<ΓLC(λ)+Γ1(λ)+Rth(λ)<155nm (2)
【0035】
上記範囲は、より好ましくは、
−100<Γ(λ)+Rth(λ)/2<10nm (28)
70<ΓLC(λ)+Γ(λ)+Rth(λ)<140nm (29)
さらにより好ましくは、
−80<Γ(λ)+Rth(λ)/2<−10nm (30)
90<ΓLC(λ)+Γ(λ)+Rth(λ)<130nm (31)
である。
【0036】
さらに好ましくは、負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、2軸性光学フィルムの面内位相差値をそれぞれΓ1(λ)、ΓLC(λ)、Γ2(λ)とし、そして、第1および第2の偏光板が液晶セル側に偏光層用保護フィルムを有している場合には、それら偏光層用保護フィルムの厚さ方向の位相差値をそれぞれ、Rth(λ)、Rth(λ)とした場合、下記式(3)および/または(4)の関係を満足することである。下記式(3)、(4)においては、波長依存性に関すればRth(λ)の影響は小さいので無視している。
|Γ(λ)|<|Γ(λ)| (3)
|ΓLC(λ)+Γ(λ)|<|ΓLC(λ)+Γ(λ)| (4)
ただし、λは測定波長を表しており、400nm≦λ1<λ2≦700nmとする。
好ましくは、上記式(3)および(4)の関係を同時に満足することである。
【0037】
2軸性光学フィルムの位相差絶対値の波長分散は、上記式(3)については好ましくは、下記式(32)かつ(33)を満足することであり、
0.4<Γ2(450)/Γ2(550)<0.98 (32)
1.01<Γ2(650)/Γ2(550)<1.50 (33)
より好ましくは、下記式(34)かつ(35)を満足することである。
0.6<Γ2(450)/Γ2(550)<0.95 (34)
1.03<Γ2(650)/Γ2(550)<1.40 (35)
上記式(32)〜(35)において、Γの後ろの()内の数字は、測定波長(nm)を表す。
【0038】
上記式(4)については好ましくは、下記式(36)かつ(37)を満足することであり、
0.4<(ΓLC(450)+Γ(450))/(ΓLC(550)+Γ(550))
<0.98 (36)
1.01<(ΓLC(650)+Γ(650))/(ΓLC(550)+Γ(550))
<1.50 (37)
より好ましくは、下記式(38)かつ(39)を満足することである。
0.6<(ΓLC(450)+Γ(450))/(ΓLC(550)+Γ(550))
<0.95 (38)
1.03<(ΓLC(650)+Γ(650))/(ΓLC(550)+Γ(550))
<1.40 (39)
上記式(36)〜(39)において、Γの後ろの()内の数字は、測定波長(nm)を表す。
【0039】
一般にIPSモードの黒状態における液晶セルの位相差値は波長増大に伴い減少し、正の位相差値を有する。したがって、上記式(4)、(36)〜(39)を満足するためには、面内に光学軸を有する第1の負の略1軸性光学フィルムの位相差絶対値は波長増大に伴い減少するものであることが好ましい。より具体的には、上記式(4)の関係を満足するために、下記式(40)および(41)を満足することが好ましい。
ΓLC(450)/ΓLC(550)<Γ(450)/Γ(550) (40)
ΓLC(650)/ΓLC(550)>Γ(650)/Γ(550) (41)
【0040】
上記負の略1軸性光学フィルム、2軸性光学フィルムは、それぞれ、必要な特性を有していれば、1枚単独または2枚以上のフィルムを積層させて構成されていてもよいが、それぞれ1枚からなるものの方が液晶表示装置全体の厚さが薄くでき、フィルム同士の積層工程も不要であり生産性の点からも好ましい。
【0041】
IPSは横電界により液晶ダイレクターが面内で変化するモードである。電圧が略非印加状態で黒表示となるノーマリブラックモードと、印加状態で黒表示となるノーマリホワイトモードが考えられるが、IPSモードにおいては電圧印加時の液晶配向の乱れを制御すること等が困難であることから、高コントラストを得るためにはノーマリブラックモードである必要がある。
【0042】
本発明における液晶セルの位相差としては、200〜450nmであることが好ましく、より好ましくは250〜400nm、さらに好ましくは270〜390nmである。液晶セルの位相差値は非電圧印加状態での正面入射時の値(面内の値)である。液晶セルの位相差値は、セル構造、駆動条件や目的の透過率の設定等により変化するが、これらの値を満足することが好ましい。液晶に用いる材料は公知の誘電率異方性が正で屈折率異方性も正のネマチック液晶、スメクチック液晶等が用いられるが、好ましくはネマチック液晶である。また、IPSモードにおいて液晶を駆動させるためには、面内に横電界を発生させる必要があるが、公知の櫛型電極配置や電極形成方法等が利用できる。
【0043】
本発明に用いられる負の略1軸性光学フィルムと2軸性光学フィルムは材料が同じであることが好ましく、その場合、量産効果により生産性を向上させることができる。
面内に光学軸を有する負の1軸性光学フィルム及び2軸性光学フィルム(以下、併せて単に光学フィルムということがある)を与える材料としては、熱可塑性、硬化性の高分子、例えばポリカーボネート、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、アモルファスポリオレフィン、ノルボルネン骨格を有するポリマー、有機酸置換セルロース系、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエステル、オレフィンマレイミド、フェニル基を有する共重合オレフィンマレイミド、液晶性高分子が挙げられる。また重合性液晶を配向させた後硬化させたもの等のうち、分子分極率異方性が負であるものも挙げられる。これらの材料は、例えばフィルム化した後、これを例えば1軸延伸することにより面内に光学軸を有する負の1軸性光学フィルムとすることができる。また、これらの材料を用いてフィルム化し、2軸延伸することにより厚さ方向の屈折率が面内方向のいずれの屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムを作製することができる。
【0044】
上記材料として好ましいのはフルオレン骨格を有するポリカーボネートである。フルオレン骨格は延伸操作等により高分子主鎖に対して垂直に配向するため、大きな負の分子分極率異方性を取りうる。
【0045】
フルオレン骨格を有するポリカーボネートの好ましい化学構造は下記式(I)で表される繰返し単位を含有するポリマーまたはポリマー混合物からなる。
【化1】

ここで、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6の炭化水素基および炭素数1〜6の炭化水素−O−基よりなる群から選ばれる基であり、そしてXは下記式(1)−1
【化2】

で表わされる基であり、R30およびR31は、互いに独立に、ハロゲン原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、そしてnおよびmは互いに独立に、0〜4の整数である。
【0046】
ここで該ポリマーおよびポリマー混合物は上記式(I)で表される繰返し単位をそれぞれポリマーまたはポリマー混合物の全繰返し単位の50〜95モル%含有するものが好ましく、より好ましくは60〜95モル%、さらに好ましくは70〜90モル%である。
これらのフルオレン骨格を有するポリカーボネートは高いガラス転移点温度、ハンドリングや延伸成形性等の点で、本発明における光学フィルムとして優れた物性を有する。
【0047】
より好ましいポリカーボネートとしては、上記式(I)で示される繰返し単位および下記式(II)
【化3】

で示される繰返し単位からなり、かつ上記式(I)および(II)の合計に基づき上記式(I)で表される繰返し単位は50〜95モル%含有する共重合体または混合物が好ましく、より好ましい範囲は60〜95モル%、さらに好ましくは70〜90モル%である。
【0048】
上記式(II)において、R〜R16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭素数1〜22の炭化水素基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基であり、Yは下記式群のそれぞれで表わされる基:
【化4】

よりなる群から選ばれる少なくとも一種の基である。ここで、Y中のR17〜R19、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基、アリール基の如き炭素数1〜22の炭化水素基であり、R20およびR23はアルキル基、アリール基の如き炭素数1〜20の炭化水素基であり、また、Ar〜Arは、それぞれ独立に、フェニル基の如き炭素数6〜10のアリール基である。
【0049】
また、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムであって、かつその位相差絶対値が波長増大に伴い増大するものとしては、下記式(III)で表わされる繰返し単位を含有するポリマーまたはポリマー混合物であることが好ましい。ここで該ポリマーおよびポリマー混合物は下記式(III)で表される繰返し単位をそれぞれポリマーまたはポリマー混合物の全繰返し単位の50〜95モル%含有する共重合体または混合物が好ましく、より好ましい範囲は60〜95モル%、さらに好ましくは70〜90モル%である。さらに好ましくは下記式(III)および上記式(II)で示される繰返し単位からなり、かつ上記式(III)および(II)の合計に基づき下記式(III)で表される繰返し単位は50〜95モル%含有するものが好ましく、より好ましくは60〜95モル%、さらに好ましくは70〜90モル%である。
【0050】
【化5】

ここでR40、R41は炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基、またはニトロ基またはハロゲン原子を表し、そしてlおよびkは互いに独立に、0〜3の整数である。
【0051】
上記したポリカーボネートはジヒドロキシ化合物とホスゲンとの重縮合による方法、溶融重縮合法、固相重合法等により好適に製造される。ポリマー混合物(ブレンド)の場合は、相溶性ブレンドが好ましいが、完全に相溶しなくても成分間の屈折率を合わせれば成分間の光散乱を抑え、透明性を向上させることが可能である。
【0052】
さらに2軸性光学フィルムの材料として好ましい別の材料としては、ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンのブレンド物を用いることである。ポリスチレンの立体規則性はアタクチック、シンジオタクチック、アイソタクチックのいずれでもよい。ポリフェニレンオキサイドとポリスチレンのブレンド物はそのブレンド比率により、厚さ方向の屈折率が面内方向のいずれの屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムで、かつ位相差絶対値が波長に対して単調に増加するものを作製することが可能である。
【0053】
本発明における光学フィルム中にはさらに、フェニルサリチル酸、2−ヒドロキシベンゾフェノン、トリフェニルフォスフェート等の紫外線吸収剤や、色味を変えるためのブルーイング剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0054】
光学フィルムの厚さとしては、1μmから400μmであることが好ましい。なお、本発明における光学フィルムは「シート」、「板」といわれるいずれのものも含む意味で用いられている。フィルムのハンドリングを含めて考えると、厚さは20〜130μmが好ましく、より好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは40〜90μmである。
【0055】
偏光板は一般に、前記した偏光層を保護するためのフィルム(以下偏光層用保護フィルムということがある)としてセルロースアセテート等からなる一対のフィルムの間に、偏光層を挟持した構成のものが好適に用いられている。偏光板の偏光層としては、所定の偏光状態の光を得ることができる適宜なものを用いうる。就中、直線偏光状態の透過光を得ることのできるものが好ましい。偏光層の例としては、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素および/または二色性染料を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルム等からなる偏光層などがあげられる。
【0056】
偏光板に偏光層用保護フィルムが存在する場合には、その光学異方性はできるだけ小さいことが好ましく、具体的には面内位相差で10nm以下、より好ましくは7nm以下であり、最も好ましくは5nm以下である。また、Rthは70nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、最も好ましくは40nm以下である。さらに、偏光層用保護フィルムのフィルム面内における遅相軸は偏光板の吸収軸と直交または平行であることが好ましく、平行であることが偏光板の連続生産を行う上でより好ましい。偏光層用保護フィルムとしは、例えばポリカーボネート系、ポリスチレン系、シンジオタクチックポリスチレン、アモルファスポリオレフィン系、ノルボルネン骨格を有するポリマー、有機酸置換セルロース系、ポリエーテルスルホン系、ポリアリレート系、ポリエステル系、オレフィンマレイミド系、フェニル基を有する共重合オレフィンマレイミド系有機酸置換セルロース等が用いられるが、好ましくはセルロースアセテートである。
【0057】
本発明においては、前述の、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムと面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムとが偏光板と一体となり、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム、偏光板の順番で積層されてなり、かつ、負の略1軸性光学フィルムの面内遅相軸と2軸性光学フィルムの面内遅相軸とのなす角が略90°、2軸性光学フィルムの面内遅相軸と偏光板の吸収軸が略0°である積層偏光板が提供される。
【0058】
かかる本発明の積層偏光板においては、2軸性光学フィルムに接する側の偏光層用保護フィルムを省き、2軸性光学フィルムが偏光層用保護フィルムを兼ねてもよい。このようにすることでより光学設計が容易になるといった利点も有する。この場合には上記式(1)においてRth(λ)は0と考えれば良い。また、同様に第1の偏光板の液晶セル側の偏光層用保護フィルムを用いない場合には、上記式(2)においてRth(λ)は0と考えれば良い。
【0059】
本発明の積層偏光板の形成は液晶表示装置の製造過程で位相差フィルムと偏光板を順次別個に積層する方式や、予め積層物としてそれを用いる方式などの適宜な方式で行うことができる。後者の事前積層化方式が、品質の安定性や積層作業性に優れて液晶表示装置の製造効率を向上させうる利点などがある。
【0060】
面内に光学軸を有する負の1軸性光学フィルムの製造方法としては、分子分極率異方性が負の材料を1軸延伸により製造することが好ましい。分子分極率異方性が負の材料からなるフィルムを横1軸延伸の連続生産をすることにより、フィルム幅方向に対して面内の平行方向に光学軸が、それに直交する方位に遅相軸が存在することになる。同様に、2軸性光学フィルムは分子分極率異方性が負の材料からなるフィルムを2軸延伸または1軸延伸することにより得られるが、遅相軸方位は延伸条件によって制御され、偏光板とのロールツウロール貼合も可能となる。また、分子分極率異方性が負の材料を例えば高分子液晶とし、配向処理を施したものや、重合性液晶を配向させた後、硬化させたものも本発明の光学フィルムとして使用してもよい。
【0061】
偏光板と光学フィルムの積層に際しては、必要に応じて接着剤等を介して固定することができる。軸関係のズレ防止等の点からは接着固定することが好ましい。接着には、例えばポリビニルアルコール系、変性ポリビニルアルコール系、有機シラノール系、アクリル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリウレタン系、ポリエーテル系やゴム系等の透明な接着剤を用いることができ、その種類については特に限定はない。光学特性の変化を防止する点などからは、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥処理を要しないものが望ましい。また、加熱や加湿条件下に剥離等を生じないものが好ましい。
【0062】
偏光層用保護フィルムとしてトリアセチルセルロース(TAC)を用いた場合、TACと位相差フィルムの接着剤としては、(メタ)アクリル酸ブチルや(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルや(メタ)アクリル酸の如きモノマーを成分とする質量平均分子量が10万以上で、ガラス転移温度が0℃以下のアクリル系ポリマーからなるアクリル系感圧接着剤が特に好ましく用いうる。またアクリル系感圧接着剤は、透明性や耐候性や耐熱性などに優れる点からも好ましい。
【0063】
接着剤には、必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填材や顔料、着色剤や酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。なお、上記の偏光子、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、接着剤層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などにより紫外線吸収機能をもたせることもできる。
【0064】
本発明の液晶表示装置を製造する方法は通常の方法でよい。すなわち、液晶表示装置は、液晶セルと偏光板と光学フィルム、および必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。
【0065】
液晶表示装置の形成部品は、積層一体化されていてもよいし、分離状態にあってもよい。また液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板やアンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板、カラーフィルタなどの適宜な光学素子を適宜に配置することができる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(評価法)
本明細書中に記載の材料特性値等は以下の評価法によって得られたものである。
(1)位相差値(Γ(λ)=Δn・d(nm))、Rth(λ)、Nz(λ)値の測定
複屈折Δnとフィルムの厚さdの積である位相差Γ値およびNzは、分光エリプソメータである日本分光(株)製の商品名『M150』により測定した。Γ(λ)値は入射光線とフィルム表面が直交する状態で測定した。また、Nz(λ)、Rth(λ)値(nm)は入射光線とフィルム表面の角度を変えることにより、各角度での位相差値を測定し、公知の屈折率楕円体の式でカーブフィッチングすることにより三次元屈折率であるn,n,nを求め、下記式(7)、(12)に代入することにより求めた。
Nz(λ)=(n−n)/(n−n) (7)
Rth(λ)={(n+n)/2−n}×d (12)
【0067】
(2)負の略1軸性光学フィルムおよび2軸性光学フィルムの作製方法1
光学フィルムの樹脂材料としては、フルオレン骨格を有する共重合ポリカーボネートを用いた。ポリカーボネートの重合は公知のホスゲンを用いた界面重縮合法によって行われた。攪拌機、温度計および還流冷却器を備えた反応槽に水酸化ナトリウム水溶液およびイオン交換水を仕込み、これに上記構造を有するモノマー[A]と[B]を86対14のモル比で溶解させ、少量のハイドロサルファイトを加えた。次にこれに塩化メチレンを加え、20℃でホスゲンを約60分かけて吹き込んだ。さらに、p−tert−ブチルフェノールを加えて乳化させた後、トリエチルアミンを加えて30℃で約3時間攪拌して反応を終了させた。反応終了後有機相分取し、塩化メチレンを蒸発させてポリカーボネート共重合体を得た。得られた共重合体の組成比は仕込み量比とほぼ同様であった。
【0068】
この共重合体をメチレンクロライドに溶解させ、固形分濃度18重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムの残留溶媒量は0.9重量%であった。このフィルムを延伸温度225℃とし、表1記載の位相差値が得られるように延伸倍率を設定して1軸延伸することにより、面内に光軸を有する第1の負の略1軸性光学フィルムを得た。また、同様に表1記載の位相差値が得られるように延伸倍率を設定して2軸延伸することにより、2軸性光学フィルムを得た。
【0069】
【化6】

【0070】
(3)2軸性光学フィルムの作製方法2
ポリスチレンとポリフェニレンオキサイドをそれぞれ重量比で74.5対25.5とし、クロロホルム溶媒に溶解して濃度23重量%のドープ溶液を作製した。このドープ溶液からキャストフィルムを作製し未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムの残留溶媒量は1.4重量%であった。このフィルムを延伸温度130℃とし、2軸延伸することにより実施例5で用いた2軸性光学フィルムを作製した。
【0071】
[実施例1〜3]
図4に示した構造を有する液晶表示装置において、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムの面内位相差値をそれぞれ、Γ1(λ)、ΓLC(λ)、Γ2(λ)、そして、第1および第2の偏光板の液晶セル側に偏光層用保護フィルムが存在する場合には、それら偏光層用保護フィルムの厚さ方向の位相差値をそれぞれ、Rth(λ)、Rth(λ)とし、さらに、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムと厚さ方向の屈折率が面内における方向の方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムのNz値をそれぞれ、Nz1、Nz2とし、それぞれの値を表1のように変化させ、ノーマリブラックモードのIPS液晶セルの黒状態における、波長450、550、650nmの透過率(漏光程度)の入射角依存性を計算し、実際の液晶表示装置と比較した。なお、ここでは視野角の拡大、カラーシフトの抑制が目的であり、その効果を示すため、極角60°で方位角を変えた場合の、透過率の波長依存性を計算した結果を示すことにする。実施例1〜3の計算条件は表1に示してあり、それらの結果はそれぞれ図5〜7に対応する。また、Rth(λ)が0のものは偏光層用保護フィルムを用いていない場合である。本計算においては、この位相差フィルムの位相差波長分散、位相差値は上記作製方法1にて重合したポリカーボネート共重合体からなる位相差フィルムの測定データを使用した。また、液晶セルの位相差波長依存性については、実施例1〜3については、市販のノーマリブラックモードでIPSモードの液晶テレビである株式会社日立製作所製の商品名『W32−L7000』の液晶セルの位相差波長分散を実測し、それらを計算に用いた。また、偏光板の偏光度は100%、各偏光板の透過率は50%とした。方位角の定義は図4に記す。
【0072】
上記の計算結果から、最も人間の目の視感度が高い550nmの透過率はいずれも0.2%未満と低く、また、その3波長における透過率が、すべて1%未満であり、広視野角化が実現できていることがわかる。また、方位角の変化に対して、光の三原色である青を代表する波長である波長450nmが常に大きく、方位角によって青、赤等と色変化が生じるものではないことがわかる。また、波長による入射角の方位角依存性の相違は後述する比較例と比べて格段に少ないことがわかる。この結果は、方位角によって、大きく色調が変化することが少ないことを示しており、カラーシフトが大幅に抑制されていることを示す。
【0073】
実際に、実施例1〜3の液晶セルとほぼ同じ位相差値を有する市販の液晶テレビである株式会社日立製作所製の商品名『W32−L7000』の液晶セルを用いて、表1記載の計算と同じ各構成、各位相差値を有する液晶表示装置を作製し、目視にて黒状態の視野角およびカラーシフトを確認したところ、後述する比較例と比べて計算結果とほぼ同様に広い視野角とカラーシフトが格段に少ないことを確認した。また、これらの液晶表示装置は中間調、白表示においてもカラーシフトが少ないことがわかった。
【0074】
[実施例4]
実施例1〜3と同様に、図8に示した構造を有する液晶表示装置において、面内に光学軸を有する第1の負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルムの位相差値に関するパラメータを表1のように設定し、ノーマリブラックモードのIPS液晶セルの黒状態における、波長450、550、650nmの透過率(漏光程度)の入射角依存性を計算し、実際の液晶表示装置と比較した。本計算においては、これら光学フィルムの位相差波長分散、位相差値は上記作製方法1にて重合したポリカーボネート共重合体からなる光学フィルムの測定データを使用した。また、市販の液晶テレビである株式会社日立製作所製の商品名『W28−L5000』の液晶セルの位相差波長分散を実測し、それらを計算に用いた。結果を図9に示す。最も人間の目の視感度が高い550nmの透過率は0.1%未満と低く、また、その3波長における透過率が、すべて0.5%未満であり、広視野角化が実現できていることがわかる。また、方位角の変化に対して、光の三原色である青を代表する波長である波長450nmが常に大きく、方位角によって青、赤等と色変化が生じるものではないことがわかる。また、波長による入射角の方位角依存性の相違は後述する比較例と比べて格段に少ないことがわかる。この結果は、方位角によって、大きく色調が変化することが少ないことを示しており、カラーシフトが大幅に抑制されていることを示す。
【0075】
次に計算した液晶セルとほぼ同じ位相差値を有する市販のノーマリブラックモードでIPSモードの液晶テレビである株式会社日立製作所製の商品名『W28−L5000』の液晶セルを用いて、表1記載の計算と同じ各構成、各位相差値を有する液晶表示装置を実際に作製し、目視にて黒状態の視野角およびカラーシフトを確認したところ、後述する比較例と比べて計算結果とほぼ同様に広い視野角で、かつカラーシフトが格段に少ないことを確認した。また、この液晶表示装置は中間調、白表示においてもカラーシフトが少ないことがわかった。
【0076】
[実施例5]
計算に用いた液晶セルおよび実測に用いた液晶セルとして市販のノーマリブラックモードでIPSモードの液晶テレビである株式会社日立製作所製の商品名『W32−L7000』を使用し図10の構成にし、2軸性光学フィルムとしては上記作製方法2で作製した光学フィルムの測定値を使用した以外は、実施例4と同様に評価を行った。計算結果を図11に示す。実施例1〜4、後述の比較例と比べて、3つの波長ともに透過率が格段に小さくなっていることがわかる。
【0077】
次に計算した液晶セルとほぼ同じ位相差値を有する市販のノーマリブラックモードでIPSモードの液晶テレビである株式会社日立製作所製の商品名『W32−L7000』の液晶セルを用いて、実施例4と同様に表1記載の計算と同じ各構成、各位相差値を有する液晶表示装置を作製し、目視にて黒状態の視野角およびカラーシフトを確認したが、後述する比較例1と比べて計算結果とほぼ同様に広い視野角で、かつカラーシフトが格段に少ないことを確認した。また、この液晶表示装置は中間調、白表示においてもカラーシフトが少ないことがわかった。図11では方位角による各波長の透過率の依存性は異なっているものの、それぞれの透過率が格段に低いため、カラーシフトが問題とならないと思われる。すなわち、広視野角かつ広帯域化が実現できることが確認された。
【0078】
【表1】

【0079】
[比較例]
図12の構成を有する市販の液晶テレビである株式会社日立製作所製の商品名『W28−L5000』において用いられている液晶セル、光学フィルムを実測し、これらの物性値を用いて実施例と同様に計算で求めた透過率の波長依存性の結果を図13に示す。計算に用いた物性値を表2に記す。方位角の定義は図12に記す。計算において、光学フィルムは該商品に使用されている位相差フィルムとほぼ同様にNz(λ)が0.3で、面内位相差値を135nmとした2軸性光学フィルムを用いた。なお、この2軸性光学フィルムの位相差の波長依存性は、Γ(450)/Γ(550)=1.08、Γ(650)/Γ(550)=0.98であった。図13から、波長によって透過率の最大値の方位角依存性が大きく異なっており、方位角によって、色調が異なることがわかる。この市販品を目視にて黒状態の視野角およびカラーシフトを確認した。斜め方向から見た際に、方位角によっては黒が、青味がかかった黒や赤味がかかった黒に変化し、カラーシフトが実施例に比べて極めて大きいことがわかった。
【0080】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の液晶表示装置は、表示品位特に視野角性能に優れており、例えば液晶テレビ、液晶モニター、携帯端末用デイスプレイ、携帯電話用デイスプレイ、カーナビゲーション用デイスプレイ等にとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のノーマリブラックモードインプレーンスイッチング方式の液晶表示装置の概略図の一例である。
【図2】本発明のノーマリブラックモードインプレーンスイッチング方式の液晶表示装置と光学的にほぼ等価な構成体の一例である。
【図3】本発明における位相差フィルムの三次元屈折率の定義のための直交座標を説明した図である。
【図4】実施例1〜3における液晶表示装置の光学素子の配置図である。
【図5】実施例1における極角60°の入射光の透過率の方位角および波長依存性を示した図である。
【図6】実施例2における極角60°の入射光の透過率の方位角および波長依存性を示した図である。
【図7】実施例3における極角60°の入射光の透過率の方位角および波長依存性を示した図である。
【図8】実施例4における液晶表示装置の光学素子の配置図である。
【図9】実施例4における極角60°の入射光の透過率の方位角および波長依存性を示した図である。
【図10】実施例5における液晶表示装置の光学素子の配置図である。
【図11】実施例5における極角60°の入射光の透過率の方位角および波長依存性を示した図である。
【図12】比較例における液晶表示装置の光学素子の配置図である。
【図13】比較例における極角60°の入射光の透過率の方位角および波長依存性を示した図である。
【符号の説明】
【0083】
1 第1の偏光板
2 IPSモードの液晶セル
3 面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム
4 厚さ方向の屈折率が面内のいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム
5 第2の偏光板
6 偏光板の吸収軸
7 位相差フィルムの面内における遅相軸
8 黒状態におけるIPSモードの液晶セルの面内の遅相軸
9 光源から出射されて液晶表示装置に入射される光
10 第1の偏光板
11 面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルムとIPSモードの液晶セルとの組み合わせと等価にみなせる面内に光学軸を有する正の略1軸性光学フィルム
12 厚さ方向の屈折率が面内のいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム
13 第2の偏光板
14 偏光板の吸収軸
15 位相差フィルムの面内における遅相軸
30 位相差フィルム
31 位相差フィルムの表面
41 第2の偏光板
42 2軸性光学フィルム側の偏光層用保護フィルム
43 2軸性光学フィルム
44 面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム
45 IPS液晶セル
46 IPS液晶セル側の偏光層用保護フィルム
47 第1の偏光板
48 光源から出射されて液晶表示装置に入射される光
49 偏光板の吸収軸
50 偏光層用保護フィルムの面内の遅相軸
51 位相差フィルムの面内における遅相軸
52 黒状態におけるIPS液晶セルの面内の遅相軸
55 実施例1の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長450nmにおける透過率
56 実施例1の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長550nmにおける透過率
57 実施例1の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長650nmにおける透過率
61 実施例2の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長450nmにおける透過率
62 実施例2の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長550nmにおける透過率
63 実施例2の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長650nmにおける透過率
71 実施例3の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長450nmにおける透過率
72 実施例3の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長550nmにおける透過率
73 実施例3の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長650nmにおける透過率
81 第1の偏光板
82 IPSモードの液晶セル
83 面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム
84 厚さ方向の屈折率が面内のいずれの屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム
85 第2の偏光板
86 偏光板の吸収軸
87 位相差フィルムの面内における遅相軸
88 黒状態におけるIPSモードの液晶セルの面内の遅相軸
89 光源から出射されて液晶表示装置に入射される光
91 実施例4の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長450nmにおける透過率
92 実施例4の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長550nmにおける透過率
93 実施例4の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長650nmにおける透過率
101 第2の偏光板
102 厚さ方向の屈折率が面内のいずれの屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム
103 面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム
104 IPSモードの液晶セル
105 第1の偏光板
106 偏光板の吸収軸
107 位相差フィルムの面内における遅相軸
108 黒状態におけるIPSモードの液晶セルの面内の遅相軸
109 光源から出射されて液晶表示装置に入射される光
111 実施例5の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長450nmにおける透過率
112 実施例5の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長550nmにおける透過率
113 実施例5の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長650nmにおける透過率
141 偏光板
142 偏光層用保護フィルム
143 2軸性光学フィルム
144 IPS液晶セル
145 偏光層用保護フィルム
146 偏光板
147 光源から出射されて液晶表示装置に入射される光
148 偏光板の吸収軸
149 偏光層用保護フィルムの面内の遅相軸
150 2軸性光学フィルムの面内における遅相軸
151 黒状態におけるIPS液晶セルの面内の遅相軸
161 比較例の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長450nmにおける透過率
162 比較例の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長550nmにおける透過率
163 比較例の液晶表示装置の黒状態における極角60°、波長650nmにおける透過率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光板、液晶セル、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム、第2の偏光板、の順でこれらが積層されてなるノーマリブラックモードのインプレーンスイッチングモードの液晶表示装置であって、第1の偏光板の吸収軸と黒状態における液晶セルの面内遅相軸とのなす角が略90°、黒状態における液晶セルの面内遅相軸と負の略1軸性光学フィルムの遅相軸とのなす角が略90°、負の略1軸性光学フィルムの遅相軸と2軸性光学フィルムの面内遅相軸とのなす角が略90°、かつ2軸性光学フィルムの面内遅相軸と第2の偏光板の吸収軸とのなす角が略0°である液晶表示装置。
【請求項2】
負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、2軸性光学フィルムの面内位相差値をそれぞれΓ1(λ)、ΓLC(λ)、Γ2(λ)とし、そして、第1および第2の偏光板が液晶セル側にそれぞれ偏光層用保護フィルムを有する場合には、偏光層用保護フィルムの厚さ方向の位相差値をそれぞれ、Rth(λ)およびRth(λ)とすると、下記式(1)および(2)の関係を満足することを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
−120<Γ2(λ)+Rth(λ)/2<30nm (1)
45<ΓLC(λ)+Rth(λ)<155nm (2)
(ただし、λ=550nmとする。)
【請求項3】
負の略1軸性光学フィルム、黒状態における液晶セル、2軸性光学フィルムの面内位相差値をそれぞれΓ1(λ)、ΓLC(λ)、Γ2(λ)とした場合、下記式(3)および/または(4)の関係を満足することを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示装置。
|Γ2(λ1)|<|Γ2(λ2)| (3)
|ΓLC1)+Γ(λ1)|<|ΓLC2)+Γ(λ2)| (4)
(ただし、λは測定波長を表しており、400nm≦λ1<λ2≦700nmである。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置に用いる面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置に用いる厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム。
【請求項6】
フルオレン骨格を有するポリカーボネートからなることを特徴とする請求項4および5記載の光学フィルム。
【請求項7】
請求項4、5または6に記載の光学フィルムと偏光板が一体となった積層偏光板であって、面内に光学軸を有する負の略1軸性光学フィルム、厚さ方向の屈折率が面内におけるいずれの方向の屈折率よりも大きい2軸性光学フィルム、偏光板の順番で積層されてなり、かつ、負の略1軸性光学フィルムの面内遅相軸と2軸性光学フィルムの面内遅相軸とのなす角が略90°、2軸性光学フィルムの面内遅相軸と偏光板の吸収軸が略0°であることを特徴とする積層偏光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−330268(P2006−330268A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152401(P2005−152401)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】