説明

液晶表示装置

【課題】観察方向に浮き出すか、あるいは反対方向に凹んで見える、遠近感のある図形を表示することができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶層10を挟んで対向する一対の基板4,5の対向する内面それぞれに、行方向及び列方向に予め定めたピッチでマトリックス状に配列する複数の画素3を形成する電極6,7が設けられた液晶表示素子1と、液晶表示素子1の一方の基板の外面または内面に設けられ、前記画素3に対応する形状を有し、且つ可視光帯域の少なくとも一部の帯域の波長光を吸収する複数のドット13aが液晶表示素子1の画素ピッチよりも大きい予め定めたドットピッチで行方向及び列方向に配列させて形成されたドット状吸収層13と、液晶表示素子の複数の画素3のうち、表示パターンに対応する表示領域内の画素をドット状吸収層13のドットピッチとは異なるピッチで選択し、その選択画素の電極6,7間に点灯電圧を印加する表示駆動手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠近感のある図形を表示する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置として、液晶層を挟んで対向する一対の基板の対向する内面のうち、一方の基板の内面に、予め定めた形状の複数の主セグメント電極と、これらの主セグメント電極の半周の縁部に隣接させてその縁部の輪郭形状に形成された複数の副セグメント電極とを設け、他方の基板の内面に、前記複数の主セグメント電極及び副セグメント電極に対向するコモン電極を設けた液晶表示素子を備え、前記液晶表示素子に、前記主セグメント電極の形状に対応する主表示パターンと、前記副セグメント電極の形状に対応する副表示パターン(主表示パターンの半周に沿う影のような輪郭パターン)とからなる、前記副表示パターンにより厚みを表現した立体的な図形、つまり、厚みのある形状物を斜め方向から見たような図形を表示させるようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−201755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の液晶表示装置は、前記副表示パターンにより厚みを表現したな図形を表示するものであり、表示図形の遠近感は無い。
【0004】
この発明は、観察方向に浮き出すか、あるいは反対方向に凹んで見える、遠近感のある図形を表示することができる液晶表示装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の液晶表示装置は、液晶層を挟んで対向する一対の基板の対向する内面それぞれに、互いに対向する領域により行方向及び列方向に予め定めたピッチでマトリックス状に配列された複数の画素を形成する電極が設けられた液晶表示素子と、前記液晶表示素子の一方の基板の外面または内面に設けられ、前記画素に対応する形状を有し、且つ可視光帯域の少なくとも一部の帯域の波長光を吸収する複数のドットが前記液晶表示素子の画素ピッチよりも大きい予め定めたドットピッチで行方向及び列方向に配列させて形成されたドット状吸収層と、前記液晶表示素子の複数の画素のうち、表示パターンに対応する表示領域内の画素を前記ドット状吸収層のドットピッチとは異なるピッチで選択し、その選択画素の電極間に点灯電圧を印加する表示駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
この液晶表示装置において、前記表示駆動手段は、前記液晶表示素子の前記表示領域以外の領域の画素を前記ドット状吸収層のドットピッチと同じピッチで選択し、その選択画素に点灯電圧を印加するのが望ましい。
【0007】
また、この液晶表示装置において、前記ドット状吸収層の複数のドットは、前記液晶表示素子の選択画素の点灯色と実質的に同じ色の吸収材により形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
この発明の液晶表示装置は、液晶層を挟んで対向する一対の基板の対向する内面それぞれに、互いに対向する領域により行方向及び列方向に予め定めたピッチでマトリックス状に配列された複数の画素を形成する電極が設けられた液晶表示素子の一方の基板の外面または内面に、前記液晶表示素子の画素に対応する形状を有し、且つ可視光帯域の少なくとも一部の帯域の波長光を吸収する複数のドットが前記液晶表示素子の画素ピッチよりも大きい予め定めたドットピッチで行方向及び列方向に配列させて形成されたドット状吸収層を設け、前記表示駆動手段により、前記液晶表示素子の複数の画素のうち、表示パターンに対応する表示領域内の画素を前記ドット状吸収層のドットピッチとは異なるピッチで選択し、その選択画素の電極間に点灯電圧を印加するようにしたものであるため、観察方向に浮き出すか、あるいは反対方向に凹んで見える、遠近感のある図形を表示することができる。
【0009】
この液晶表示装置において、前記表示駆動手段は、前記液晶表示素子の前記表示領域以外の領域の画素を前記ドット状吸収層のドットピッチと同じピッチで選択し、その選択画素に点灯電圧を印加するのが望ましく、このようにすることにより、前記液晶表示素子の前記表示領域以外の領域を、その領域内の非選択画素からの出射光と、前記ドット状吸収層のドットピッチと同じピッチの選択画素の点灯色と前記ドット状吸収層のドットの色との合成色の光とが混ざって見える色の背景部とし、その背景中に前記遠近感のある図形を表示することができる。
【0010】
また、この液晶表示装置において、前記ドット状吸収層の複数のドットは、前記液晶表示素子の選択画素の点灯色と実質的に同じ色の吸収材により形成するのが好ましく、このようにすることにより、前記遠近感のある図形を、前記液晶表示素子の選択画素の点灯色と実質的に同じ色で表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図7はこの発明の第1の実施例を示しており、図1は液晶表示装置の一部分の断面図、図2は液晶表示素子の画素配列図、図3はドット状吸収層のドット配列図、図4は表示制御手段のブロック図である。
【0012】
この液晶表示装置は、複数の画素3が図2のように行方向及び列方向に予め定めたピッチPでマトリックス状に配列された表示エリア2(図5参照)を有する液晶表示素子1と、前記液晶表示素子1の一方の基板の外面に設けられ、前記液晶表示素子1の画素3に対応する形状を有し、且つ可視光帯域の少なくとも一部の帯域の波長光を吸収する複数のドット13aが図3のように前記液晶表示素子1の画素ピッチPよりも大きい予め定めたドットピッチPnで行方向及び列方向に配列させて形成されたドット状吸収層13と、前記液晶表示素子1の観察側(図1において上側)とは反対側に配置され、前記液晶表示素子1の表示エリア2の全域に向けて無彩色光を出射する面光源14と、図4に示した表示駆動手段15とを備えている。
【0013】
前記液晶表示素子1は、液晶層10を挟んで対向する一対の透明基板4,5の対向する内面それぞれに、互いに対向する領域により行方向及び列方向にマトリックス状に配列する複数の画素を形成する透明電極6,7を設けたものであり、前記一対の基板4,5は、その外周部において図示しない枠状のシール材を介して接合されており、液晶層10は、前記一対の基板4,5間の前記シール材で囲まれた領域に設けられている。
【0014】
この液晶表示素子1は、一方の基板、例えば観察側とは反対側の基板(以下、後基板という)4の内面に、行方向及び列方向にマトリックス状に配列する複数の画素電極6を設け、他方の基板、つまり観察側の基板(以下、前基板という)5の内面に、前記複数の画素電極6に対向する一枚膜状の対向電極7を設けたアクティブマトリックス液晶表示素子であり、図1では省略しているが、前記後基板4の内面には、前記複数の画素電極6にそれぞれ接続された複数のTFT(薄膜トランジスタ)と、各行のTFTにゲート信号を供給する複数のゲート配線と、各列のTFTに画像データ信号を供給する複数のデータ配線が設けられている。
【0015】
また、この液晶表示素子1は、前記基板4,5間に、予め定めた色の二色性染料を添加した誘電異方性が負のネマティック液晶を封入し、その液晶分子及び染料分子を、両方の基板4,5の内面に前記電極6,7を覆って設けられた垂直配向膜8,9により基板4,5面に対して実質的に垂直に配向させたノーマリーホワイトモードのG・H(ゲスト・ホスト)型液晶表示素子であり、前記面光源14からの入射光のうち、非選択画素に入射した光を、無彩色光のまま透過させて観察側に出射し、電極6,7間に液晶分子を染料分子とともに基板4,5面に対して倒伏配向させる点灯電圧が印加された選択画素に入射した光を、前記二色性染料によりその色に着色して観察側に出射する。
【0016】
このG・H型液晶表示素子1は、その表示のコントラストを高くするために前記一対の基板4,5の外面にそれぞれ配置された後側偏光板11及び前側偏光板12を備えている。
【0017】
一方、前記ドット状吸収層13は、図では簡略化しているが、透明フィルム面に前記複数のドット13aを印刷したものであり、これらのドット13aは、前記液晶表示素子1の選択画素からの出射光の色、つまり前記選択画素の点灯色(二色性染料の色)と実質的に同じ色の吸収材、例えば前記選択画素の点灯色が青の場合は青色顔料を混入した感光性樹脂または青色塗料等により、前記液晶表示素子1の画素3に対応する形状、つまり前記画素3の形状と実質的に同じ形状に印刷されている。
【0018】
このドット状吸収層13は、前記液晶表示素子1の一方の基板、例えば後基板4の外面に、その基板面に貼付けるか、あるいは前記後側偏光板11の前記後基板4に対向する面に貼付けられている。
【0019】
なお、前記ドット状吸収層13の複数のドット13aは、前記液晶表示素子1の後基板4の外面に印刷等の手段により形成してもよい。
【0020】
前記ドット状吸収層13の複数のドット13aは、図1及び図3に示したように、前記液晶表示素子1の画素ピッチPの整数倍のピッチ、例えば前記画素ピッチPの5倍のドットピッチPnで、前記液晶表示素子1の行方向及び列方向における4つ置きの画素3にそれぞれ対向させて配列されている。
【0021】
また、前記表示駆動手段15は、図4に示したように、前記液晶表示素子1の複数のゲート配線に順次ゲート信号を印加する走査ドライバ16と、前記ゲート信号の印加に同期させて前記複数のデータ配線に液晶表示素子1に表示させる表示パターンのデータ信号を印加するデータ書込みドライバ17と、前記走査ドライバ16と書込みドライバ17とを制御する制御部18とからなっている。
【0022】
この表示駆動手段15は、前記液晶表示素子1の複数の画素3のうち、前記表示パターンに対応する表示領域以外の領域(以下、非表示領域という)の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnと同じピッチで選択して、その選択画素に点灯電圧(液晶分子を染料分子とともに倒伏配向させる電圧)を印加し、前記液晶表示素子1の前記表示パターンに対応する表示領域内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnとは異なるピッチで選択し、その選択画素の電極4,5間に前記点灯電圧を印加する。
【0023】
図5は前記液晶表示素子1の表示例を示す正面図、図6は図5のVI部の拡大図であり、ここでは、液晶表示素子1の表示エリア2の一部に「A」の文字パターンの図形を、その表示領域a内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも小さいピッチ、例えば前記ドット状吸収層13のドットピッチPnの4/5のピッチPaで選択し、その選択画素の電極4,5間に前記点灯電圧を印加した例を示している。
【0024】
図5及び図6のように、前記液晶表示素子1の表示エリア2の非表示領域bは、前記液晶表示素子1の複数の画素3を、前記ドット状吸収層13のドットピッチPnと同じピッチで選択して点灯させた領域であり、前記ドットピッチPnは前記液晶表示素子1の画素ピッチPよりも大きく(この実施例では画素ピッチPの5倍のピッチ)、また、選択画素(図6においてハッチングを施した画素)3aの点灯色と前記ドット13aの色が同じであるため、前記非表示領域bは、その領域b内の非選択画素(図6においてハッチングの無い画素)3bからの出射光(無彩色光)と、前記ドット状吸収層13のドットピッチPnと同じピッチの選択画素3aの点灯色と前記ドット状吸収層13のドット13aの色(選択画素3aの点灯色と実質的に同じ色)との合成色の光とが混ざって見える色(例えば選択画素3aの点灯色とドット13aの色が青である場合は青味を帯びた白色)の背景部となる。
【0025】
一方、前記液晶表示素子1の表示エリア2の表示領域aは、前記液晶表示素子1の複数の画素3を、前記ドット状吸収層13のドットピッチPnとは異なるピッチPaで選択して点灯させた領域であるため、液晶表示素子1の選択画素3aとドット状吸収層13のドット13aとの行方向及び列方向への周期的なずれにより、前記表示領域a内の各部に、前記選択画素3aから出射した点灯色光と前記ドット13aにより着色された光との干渉による同心円状のモアレ縞ができ、そのモアレ縞からなる無数の点により前記表示パターンに対応する図形が表示される。
【0026】
この表示図形は、前記表示領域aの単位面積内の選択画素3a及び前記ドット13aの分布密度が前記非表示領域bの分布密度よりも高いため、前記非表示領域bの背景色よりも濃い色(例えば選択画素3aの点灯色とドット13aの色が青である場合は、青味の強い色)である。
【0027】
すなわち、前記液晶表示素子1の複数の選択画素3aと前記ドット状吸収層13の複数のドット13aとをそれぞれ着色ドットと考え、その一方のドットが前記ピッチPaで並んだ層と、他方のドットが前記一方のドットのピッチPaとは異なるピッチPnで並んだ層とを重ねると、そのときの前記ドットの並び方向の各座標xにおける光強度Iは、Cを定数として、
I=cos2π(x/Pa)+cos2π(x/Pn)+C …(1)
で表される。
【0028】
ここで、前記ピッチPa,Pnの平均ピッチをPとして、
Pa=P+ΔP,Pn=P−ΔP
と表し、また、P>>ΔPとすると、前記(1)式は、
I=2cos2π(x/P)・cos2π(xΔP/P)+C …(1)
と表せる。
【0029】
つまり、P/ΔPで表される大きいピッチの明暗が生じ、このような大きなピッチで明暗が変化するため、前記表示領域aが非表示領域(背景部)bとは明るさが異なって見え、前記表示領域aの表示図形を肉眼で認識できる。
【0030】
そして、この液晶表示装置は、前記ドット状吸収層13を、前記液晶表示素子1の観察側とは反対側の後基板4の外面に設け、前記液晶表示素子1の表示領域a内の画素3を前記ドット状吸収層13の複数のドット13aのドットピッチPnよりも小さいピッチPaで選択して、その選択画素3aを電極4,5間への点灯電圧の印加により点灯させるようにしているため、前記表示領域aの表示図形が、観察方向に浮き出して見える。
【0031】
図7は、前記液晶表示装置の表示図形が見える位置を示す模式図であり、前記ドット状吸収層13は液晶表示素子1の液晶層10に対して観察側とは反対側に設けられているため、上記のように液晶表示素子1の表示領域a内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも小さいピッチPaで選択して点灯させると、前記ドット状吸収層13の各ドット13aとそれに対応する選択画素3aとが重なって見える角度方向が、液晶表示素子1の法線に対して斜め方向にずれる。そして、観察者の左右の眼で角度の異なる2つの方向(前記法線に対して一方の方向に傾いた方向とその反対方向に傾いた方向)から前記各ドット13aと選択画素3aとが重なった異なる2つの点を見るため、この異なる2つの点が観察者には、左右の眼で1つの点を見ているように感じられ、前記2つの方向の交点L、つまり液晶表示素子1の液晶層10に対して観察側にずれた点に表示図形があるように見え、その図形が観察方向に浮き出して見える。
【0032】
つまり、画素ピッチPとドットピッチPnよりも十分大きなピッチで明暗が変化するモアレによる多数の点が、実際の表示面から浮き上がって観察され、これらの浮き上がって観察される複数の点により表示領域が構成されるため、表示図形が観察方向に浮き出して見える。
【0033】
このように、前記液晶表示装置は、複数の画素3が行方向及び列方向に予め定めたピッチPでマトリックス状に配列された液晶表示素子1の後基板4の外面に、前記液晶表示素子1の画素3に対応する形状を有し、且つ可視光帯域の少なくとも一部の帯域の波長光を吸収する複数のドット13aが前記液晶表示素子1の画素ピッチPよりも大きい予め定めたドットピッチPnで行方向及び列方向に配列させて形成されたドット状吸収層13を設け、前記表示駆動手段15により、前記液晶表示素子1の複数の画素3のうち、表示パターンに対応する表示領域a内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも小さいピッチPaで選択し、その選択画素3aの電極6,7間に点灯電圧を印加するようにしたものであるため、観察方向に浮き出して見える遠近感のある図形を表示することができる。
【0034】
また、この液晶表示装置は、前記表示駆動手段15を、前記液晶表示素子1の非表示領域(表示領域a以外の領域)bの画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnと同じピッチで選択し、その選択画素3aに点灯電圧を印加するように構成しているため、前記液晶表示素子1の非表示領域bを、その領域b内の非選択画素3bからの出射光と、前記ドット状吸収層13のドットピッチPnと同じピッチの選択画素3aの点灯色と前記ドット状吸収層13のドット13aの色との合成色の光とが混ざって見える色の背景部とし、その背景中に前記遠近感のある図形を表示することができる。
【0035】
さらに、この液晶表示装置は、前記ドット状吸収層13の複数のドット13aを、前記液晶表示素子1の選択画素3aの点灯色と実質的に同じ色の吸収材により形成しているため、前記遠近感のある図形を、前記液晶表示素子1の選択画素3aの点灯色と実質的に同じ色で表示することができる。
【0036】
なお、上記実施例では、液晶表示素子1の表示パターンに対応する表示領域a内の画素3をドット状吸収層13のドットピッチPnよりも小さいピッチPaで選択しているが、前記液晶表示素子1の表示領域a内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも大きいピッチで選択し、その選択画素3aの電極6,7間に点灯電圧を印加してもよい。
【0037】
図8は、前記ドット状吸収層13を液晶表示素子1の液晶層10に対して観察側とは反対側に設け、液晶表示素子1の表示領域a内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも大きいピッチPbで選択して点灯させたときの表示図形が見える位置を示す模式図であり、この場合は、観察者に左右の眼で1つの点を見ているように感じられるドット状吸収層13のドット13aとそれに対応する選択画素3aとが重なって見える2つの点の角度方向の交点Lが、液晶表示素子1の液晶層10に対して観察側とは反対側にずれ、表示図形が観察方向とは反対方向に凹んで見える。
【0038】
上記液晶表示装置において、前記表示駆動手段15は、液晶表示素子1に表示させる複数の図形のうち、一部の図形を、その表示領域内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも小さいピッチで選択して点灯させ、他の図形を、その表示領域内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも大きいピッチで選択して点灯させるように構成してもよく、このようにすることにより、観察方向に浮き出して見える図形と、反対方向に凹んで見える図形とを同時に表示することができる。
【0039】
また、前記表示駆動手段15は、液晶表示素子1に表示させる図形の予め定めた部分を、その表示領域内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも小さいピッチで選択して点灯させ、前記図形の他の部分を、その表示領域内の画素3を前記ドット状吸収層13のドットピッチPnよりも大きいピッチで選択して点灯させるように構成してもよく、このようにすることにより、前記予め定めた部分が観察方向に浮き出して見え、他の部分が反対方向に凹んで見える図形を表示することができる。
【0040】
さらに、上記実施例の液晶表示装置は、前記ドット状吸収層13を、液晶表示素子1の後基板(観察側とは反対側の基板)4の外面に設けているが、前記ドット状吸収層13を、前記液晶表示素子1の前基板(観察側の基板)5の外面に設け、前記ドット状吸収層13のドットピッチPnに対する液晶表示素子1の表示領域aの選択画素3aのピッチ大小と、表示図形の遠近感との関係を上記実施例と逆にしてもよい。
【0041】
また、上記実施例の液晶表示装置は、前記表示駆動手段15を、液晶表示素子1の非表示領域bの画素3をドット状吸収層13のドットピッチPnと同じピッチで選択し、その選択画素3aに点灯電圧を印加するように構成したものであるが、前記表示駆動手段15は、前記液晶表示素子1の非表示領域bの全ての画素3を非選択とするように構成してもよい。
【0042】
さらに、上記液晶表示装置は、ドット状吸収層13を液晶表示素子1の一方の基板(上記実施例では後基板4)の外面に設けたものであるが、前記ドット状吸収層13は、図9に示した第2の実施例のように、液晶表示素子1の一対の基板4,5の外面に配置された偏光板11,12のいずれか一方の外面(図では前偏光板12の外面)に設けてもよく、また、図10に示した第3の実施例のように、液晶表示素子1の一対の基板4,5のいずれか一方の内面(図では前基板5の内面)に前記ドット状吸収層13を設けてもよい。
【0043】
また、上記各実施例の液晶表示装置は、液晶表示素子1の観察側とは反対側に面光源14を配置したものであるが、前記面光源14に代えて、前記液晶表示素子1にその観察側から入射した光(例えば液晶表示装置の使用環境の光である外光)を反射する反射膜を配置し、反射表示により遠近感のある図形を表示するようにしてもよく、その場合は、液晶表示素子1の後側の偏光板11を省略し、前記反射膜を前記液晶表示素子1の後基板4の外面または内面に形成して、前側偏光板12に偏光子と検光子とを兼ねさせた1枚偏光板による反射表示を行なうようにしてもよい。
【0044】
さらに、上記各実施例の液晶表示装置は、表示のコントラストを高くするための偏光板11,12を備えたG・H型液晶表示素子1を用いたものであるが、液晶表示素子は、前記偏光板11,12を備えないG・H型液晶表示素子でもよい。
【0045】
また、液晶表示素子は、アクティブマトリックス液晶表示素子に限らず、単純マトリックス液晶表示素子でもよく、さらに、G・H型液晶表示素子に限らず、TN(ツイステッドネマティック)型液晶表示素子や、非ツイストのホモジニアス配向型液晶表示素子等でもよい。
【0046】
その場合は、液晶表示素子をノーマリーホワイトモードの白黒表示素子とし、その一方の基板の外面または内面に黒色の複数のドット状吸収層を設けても、あるいは、前記液晶表示素子を、表示エリアの全域にわたって背景部を着色背景にするための1色のカラーフィルタを備え、着色背景中に黒の図形を表示するノーマリーホワイトモードの表示素子とし、その一方の基板の外面または内面に黒色の複数のドット状吸収層を設けてもよい。
【0047】
また、前記G・H型液晶表示素子においても、前記TN型やホモジニアス配向型の液晶表示素子等においても、複数のドット状吸収層は、液晶表示素子の選択画素の点灯色とは異なる色の吸収材により形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の第1の実施例を示す液晶表示装置の一部分の断面図。
【図2】液晶表示素子の画素配列図。
【図3】ドット状吸収層のドット配列図。
【図4】表示制御手段のブロック図。
【図5】前記液晶表示素子の表示例を示す正面図。
【図6】図5のVI部の拡大図。
【図7】前記液晶表示装置の表示図形が見える位置を示す模式図。
【図8】前記液晶表示素子の表示領域内の画素をドット状吸収層のドットピッチよりも大きいピッチで選択して点灯させたときの表示図形が見える位置を示す模式図。
【図9】この発明の第2の実施例を示す液晶表示装置の一部分の断面図。
【図10】この発明の第3の実施例を示す液晶表示装置の一部分の断面図。
【符号の説明】
【0049】
1…液晶表示素子、2…表示エリア、3…画素、4,5…基板、6,7…電極、10…液晶層、11,12…偏光板、13…ドット状吸収層、13a…ドット、14…面光源、15…表示駆動手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を挟んで対向する一対の基板の対向する内面それぞれに、互いに対向する領域により行方向及び列方向に予め定めたピッチでマトリックス状に配列された複数の画素を形成する電極が設けられた液晶表示素子と、
前記液晶表示素子の一方の基板の外面または内面に設けられ、前記画素に対応する形状を有し、且つ可視光帯域の少なくとも一部の帯域の波長光を吸収する複数のドットが前記液晶表示素子の画素ピッチよりも大きい予め定めたドットピッチで行方向及び列方向に配列させて形成されたドット状吸収層と、
前記液晶表示素子の複数の画素のうち、表示パターンに対応する表示領域内の画素を前記ドット状吸収層のドットピッチとは異なるピッチで選択し、その選択画素の電極間に点灯電圧を印加する表示駆動手段とを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
表示駆動手段は、液晶表示素子の表示領域以外の領域の画素をドット状吸収層のドットピッチと同じピッチで選択し、その選択画素に点灯電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
ドット状吸収層の複数のドットは、液晶表示素子の選択画素の点灯色と実質的に同じ色の吸収材により形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−235315(P2006−235315A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50841(P2005−50841)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】