説明

液晶表示装置

【課題】表示性能に優れた、特に黒表示時の着色が軽減された液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶セルの一対の基板の少なくとも一方の外側に偏光膜、前記偏光膜3との間に、光学異方性層4と支持体3とを有する光学補償シートが配置された液晶表示装置であって、前記光学異方性層4が、液晶化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物から形成され、前記光学異方性層4中の液晶化合物の分子はハイブリッド配向状態に固定され、液晶セル側に位置する液晶化合物の分子Dlc1の平均傾斜角θ1と、前記光学異方性層4の偏光膜側に位置する液晶化合物の分子Dlc2の平均傾斜角θ2とが互いに異なり、前記平均傾斜角θ1が、黒表示時の前記液晶層7の基板近傍に位置する液晶性分子Rlc1の傾斜角とほぼ等しく、且つ前記平均傾斜角θ2が、黒表示時の前記液晶層7の厚さ方向中央部に位置する液晶性分子Rlc2の傾斜角とほぼ等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学補償シート、ならびにそれを用いた偏光板及び液晶表示装置の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートは画像着色解消や視野角拡大のために、様々な液晶表示装置で用いられている。従来から光学補償シートとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、透明支持体上にディスコティック液晶化合物からなる光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。この光学異方性層は、通常、ディスコティック液晶化合物を含む組成物を配向膜上に塗布し、配向温度よりも高い温度に加熱してディスコティック液晶化合物を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。
【0003】
液晶化合物、特にディスコティック液晶化合物では、多様な配向形態が存在するため、所望の光学特性の発現には光学異方性層における液晶化合物の配向を制御する必要がある。特に光学補償性能の発現には、液晶化合物の傾斜角が、局所的にはランダム性をもちつつ、支持体面からの距離に伴って変化するように配向させる、いわゆる「ハイブリッド配向」の状態を実現することが重要であり、光学補償シートの性能、すなわち、視野角拡大、視角変化によるコントラスト低下、階調反転、黒白反転、および色相変化等を決める最も重要な因子となる。このハイブリッド配向は、液晶化合物の配向の方位角を規制する目的で支持体上に設けられる配向膜表面の傾斜角と光学補償シートの最外面である空気側界面の傾斜角との差を利用して実現されている。液晶化合物を用いて光学補償シートを塗設、乾燥した後、液晶化合物は、空気界面と配向膜界面の両方でそれぞれ安定な傾斜角でモノドメイン配向する。その結果、膜の厚さ方向に連続的に傾斜角が変化した配向状態が形成される。
【0004】
液晶パネルの少なくとも一方の外側に偏光板を有し、液晶パネルと偏光板との間に、光学補償シートが配置されている構成の液晶表示装置が種々提案されている。例えば、屈折率異方性を示す液晶分子をハイブリッド配向させた光学異方層と透明支持体を有するフィルムを光学補償板として使用して、前記光学補償板における液晶分子のダイレクタと前記光学補償板の法線とのなす角度が小さい方の面を、前記液晶パネルの一方の基板に対向させて、前記光学補償板を配置した液晶装置が提案されている(特許文献1参照)。しかし、本発明者が実際に、特許文献1に具体的に光学補償板として例示されているフィルム(富士写真フイルム(株)製のWVフィルム)を、特許文献1に記載の通り液晶表示装置に配置(具体的には、液晶パネル側に透明支持体、偏光板側に光学異方性層となるように配置)したところ、黒表示状態での視角による色味の変化が顕著となり、表示性能が悪化した。
【特許文献1】特開2005−196033号公報(特許請求の範囲及び第0032欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ディスコティック液晶の配向による光学異方性を有する光学補償シートを用いた液晶表示装置において、表示性能の良化、特に黒表示時の色味を改良することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
(1) 一対の基板と、該一対の基板に挟持される液晶層とを有する液晶セル、前記液晶セルの一対の基板の少なくとも一方の外側に偏光膜、及び前記少なくとも一方の基板と前記偏光膜との間に、光学異方性層と支持体とを有する光学補償シートが、該光学異方性層を前記液晶セル側にして、且つ前記支持体を前記偏光膜側にして配置された液晶表示装置であって、
前記光学異方性層が、液晶化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物から形成され、前記光学異方性層中、液晶セル側に位置する液晶化合物の分子の平均傾斜角θ1と、前記光学異方性層中、偏光膜側に位置する液晶化合物の分子の平均傾斜角θ2とが互いに異なり、
前記平均傾斜角θ1が、黒表示時の前記液晶層の基板近傍に位置する液晶性分子の傾斜角とほぼ等しく、且つ前記平均傾斜角θ2が、黒表示時の前記液晶層の厚さ方向中央部に位置する液晶性分子の傾斜角とほぼ等しいことを特徴とする液晶表示装置。
(2) 前記支持体がセルロースアシレートフィルムである(1)の液晶表示装置。
(3) 前記液晶化合物が、ディスコティック液晶化合物である(1)又は(2)の液晶表示装置。
(4) 前記光学補償シートが、前記偏光膜の保護膜としても機能している(1)〜(3)のいずれかの液晶表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ディスコティック液晶の配向による光学異方性を有する光学補償シートを用いることで、表示性能に優れた、特に黒表示時の着色が軽減された液晶表示装置を提供することができる。本発明では、光学異方性層の液晶セル側の液晶化合物分子の平均傾斜角を、該液晶セルの基板近傍に位置する液晶化合物分子の傾斜角とほぼ同等とし、該光学異方性層の偏光膜側の液晶化合物の平均傾斜角を、該液晶セルの厚み方向中央部の液晶化合物分子の傾斜角とほぼ同等とし、且つ光学異方性層と液晶セルとの間に透明支持体が配置しない構成とすることで、液晶表示装置の色味を著しく軽減している。なお、光学異方性層の液晶化合物の平均傾斜角と、液晶パネルの液晶化合物の傾斜角が±10°の範囲で一致することを、ほぼ同等とみなす。中でも、ディスコティック液晶の配向による光学異方性を有する光学異方性層と、セルロースアシレートフィルムからなる支持体とを組み合わせた光学補償シートを用いることで、特に、表示性能に優れた、特に黒表示時の着色が軽減された液晶表示装置を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。また、本明細書において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は該対称軸をいうが、厳密な意味で分子が回転対称性であることを要求するものではない。一般的には、分子対称軸は、円盤状液晶化合物では、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致し、また棒状液晶化合物では分子の長軸と一致する。
【0009】
円盤状化合物や棒状化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(円盤状化合物または棒状化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1および他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、実施例に記載の光学シミュレーション(シンテック社製のLCD Master Ver6.08を使用)を実施して算出し、効果の確認行う他に、別の算出の手法を開示する。この手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムが示す一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は円盤状化合物や棒状化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(円盤状化合物または棒状化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定および計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADHおよびKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメーターAEP−100((株)島津製作所製)、M150およびM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1および他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1およびθ2を算出する。
ここで、noおよびneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0010】
図1に、本発明の液晶表示装置の概略断面図の一例を示す。
図1に示す液晶表示装置は、一対の基板6及び8と、一対の基板6及び8に狭持される液晶層7とを有するTNモードの液晶セル、液晶セルの外側に配置される一対の偏光膜1及び12、ならびに液晶セルと偏光膜1及び12それぞれとの間に配置される光学補償シート14及び15を有する。光学補償シート14及び15はそれぞれ、セルロースアシレートフィルムからなる支持体3及び11と、ディスコティック液晶化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物からなる光学異方性層4及び9とを有する。偏光膜1及び12は、その偏光軸2及び13を互いに直交にして、且つより近くに位置する液晶セルの基板6及び8のそれぞれの内面に形成された配向膜(不図示)の配向軸(RD)と平行にして配置されている。また、光学補償シート14及び15は、それぞれの光学異方性層4及び9中に含有される液晶化合物の分子対称軸の配向平均方向5及び10(通常は、光学異方性層を作製される際に利用される配向膜のラビング方向によって決定される)をより近くに位置する液晶セルの基板6及び8それぞれの内面に形成された配向膜(不図示)の配向軸(RD)と平行にして配置されている。
【0011】
図2に、光学補償シート14(又は15)の断面模式図を示す。光学補償シート14(又は15)は、セルロースアシレートフィルムからなる支持体3(又は11)と、ディスコティック液晶化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物からなる光学異方性層4(又は9)とを有する。支持体3(又は11)と、光学異方性層4(又は9)との間には、光学異方性層4(又は9)を形成する際に利用される配向膜が配置されていてもよい。光学異方性層4(又は9)中において、ディスコティック液晶性分子は、ハイブリッド配向状態に固定されている。光学異方性層4(又は9)中の支持体3(又は11)側(一般的には、配向膜側)に位置する液晶性分子Dlc1は、その円盤面を層平面に対して垂直にして配向し、その傾斜角θ2は90°近い値になっている。ディスコティック液晶性分子の傾斜角は厚み方向に減少していき、空気界面側に位置するディスコティック液晶性分子Dlc2は、その円盤面を層平面に対して平行にして配向していて、その傾斜角θ1は0°近い値になっている。光学補償シート14(又は15)は、光学異方性層4(又は9)の空気界面を液晶セル側に、支持体3(又は11)の裏面(光学異方性層が形成されていない側の表面)を偏光膜1(又は12)側にして配置される。
【0012】
図3に、液晶層7中の棒状液晶性分子の配向状態と、光学異方性層4(又は9)中のディスコティック液晶性分子の配向状態との関係を模式的に示す。なお、図3は、ノーマリーホワイトモードのTNモードの一例であって、電圧を印加された黒表示時の液晶性分子の状態を示している。
電圧無印加時又は低電圧印加時は、液晶層7中の棒状液晶性分子は、基板に対して分子の長軸を平行にしてねじれ配向している。電圧が印加されると、液晶性分子の配向のねじれ構造が徐々に解消し、印加電圧が所定の値に達すると、液晶性分子は基板に対して垂直に配向する。しかし、液晶層7の厚み方向中央部に位置する液晶性分子Rlc2は、基板に対してほぼ垂直に配向するが、液晶セルの基板近傍に位置する液晶性分子Rlc1は、基板に対してほぼ平行に配向したままである。本発明では、これらの液晶性分子をそれぞれ光学的に補償するため、ハイブリッド配向状態に固定されたディスコティック液晶性分子を含有する光学異方性層4(又は9)を利用している。光学異方性層4(又は9)中の液晶セル側に位置するディスコティック液晶性分子Dlc1の傾斜角θ1は、0°に近く、即ち、黒表示時の液晶層7中の基板近傍に位置する液晶性分子Rlc1の傾斜角とほぼ等しくなっている。一方、光学異方性層4(又は9)中の偏光膜1(又は12)側に位置するディスコティック液晶性分子Dlc2の傾斜角θ2は、90°に近く、即ち、黒表示時の液晶層7中の厚み方向中央部に位置する液晶性分子Rlc2の傾斜角とほぼ等しくなっている。
【0013】
光学異方性層4(又は9)中の液晶セル側に位置するディスコティック液晶性分子Dlc1は、光軸がほぼ互いに平行である、液晶層7中の厚み方向中央部に位置する液晶性分子Rlc2の光学補償に主に寄与し、光学異方性層4(又は9)中の偏光膜側に位置するディスコティック液晶性分子Dlc2は、光軸がほぼ互いに平行である、液晶層7中の基板近傍に位置する液晶性分子Rlc1の光学補償に主に寄与する。したがって、光学異方性層4(又は9)中の光学補償するディスコティック液晶性分子と、液晶層7中の光学補償される棒状液晶性分子との距離が全体として均一になり、より正確な光学補償が可能となる。その結果、液晶表示装置の黒表示時の色味を著しく軽減され、表示特性が改善される。
【0014】
なお、本発明では、光学異方性層中の液晶化合物の分子の傾斜角と、液晶層中の液晶化合物の分子の傾斜角との差が、±10°の範囲であれば、「ほぼ等しい」とみなす。また、光学異方性層中における所定の位置に存在する液晶性分子(偏光膜側(例えば、支持体もしくは配向膜界面)又は液晶セル側(例えば、空気界面)に位置する液晶性分子)の傾斜角θ1及びθ2は、エリプソメーター(APE−100、島津製作所(株)製)を用いて観察角度を変えてレターデーションを測定し、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.143−147に記載されている手法で算出した値を用いるものとする。測定波長は632.8nmとする。
【0015】
また、本発明の液晶表示装置では、光学補償シートの支持体(通常はポリマーフィルム)が、液晶セルと光学異方性層との間に配置されないことも特徴である。ハイブリッド配向状態に固定された光学異方性層を有する光学補償シートとしては、例えば、図4に示す様に、支持体界面(又は配向膜界面)に位置するディスコティック液晶分子が、その円盤面を層平面に対して平行に、即ち、その傾斜角をほぼ0°にして配向し、空気界面に向かうにしたがって、円盤面が層平面に対して傾斜して配向し、空気界面に位置する液晶性分子の傾斜角がほぼ90°となっているものもある。この光学補償シートを、上記液晶層7の光学補償に用いると、支持体3’の裏面(光学異方性層が形成されてない側の表面)を液晶セル側にして、光学異方性層4’を偏光膜側にして配置しなければならず、液晶セルと光学異方性層4’との間に支持体3’が配置されることになる。かかる場合は、支持体3’の光学特性が光学補償能に大きく影響するため、所望の効果が得られない場合がある。
【0016】
一方、本発明では、光学補償シートの支持体が常に偏光膜側に配置されるので、支持体が光学補償能を損なうことがないという利点があるのみならず、光学補償シートの支持体を偏光膜の保護膜としても利用できるという利点がある。
【0017】
本発明の液晶表示装置において、光学補償シートは一方の偏光膜と液晶セルとの間のみに1枚配置されていてもよい。また、本発明の液晶表示装置は、図1に示す構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、液晶セルと偏光膜との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、透過型として使用する場合は、冷陰極あるいは熱陰極蛍光管、あるいは発光ダイオード、フィールドエミッション素子、エレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面に配置することができる。
【0018】
また、本発明の液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。本発明は、TFTやMIMのような3端子又は2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。勿論、時分割駆動と呼ばれるSTN型に代表されるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
【0019】
次に、本発明の液晶表示装置に利用可能な光学補償シートの作製に用いられる種々の材料等について詳細に説明する。
[支持体]
前記光学補償シートは、支持体を有する。支持体は、ガラス、もしくは透明なポリマーフィルムであることが好ましく、ポリマーフィルムであるのがより好ましい。支持体は、光透過率が80%以上であることが好ましい。ポリマーフィルムを構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースのモノ、ジ及びトリアシレート体)、ノルボルネン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートが含まれる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、アートン及びゼオネックスいずれも商品名))を用いてもよい。又、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、WO’00/26705号明細書に記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、前記光学補償シートに用いることもできる。
【0020】
中でもセルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。特に、炭素原子数が2〜4のセルロースアシレートが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。又、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.0〜1.65であることがさらに好ましい。
【0021】
ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度は、57.0〜62.0%であることがさらに好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D-817-91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算によって求められる。
セルロースアセテートでは、セルロースの2位、3位、6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。本発明では、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度または多い方が好ましい。2位、3位、6位の置換度の合計に対する、6位の置換度の割合は、30〜40%であることが好ましく、31〜40%であることがさらに好ましく、32〜40%であることが最も好ましい。6位の置換度は、0.88以上であることが好ましい。
これらの具体的なアシル基、及びセルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行 発明協会)の9ページに詳細に記載されている。
【0022】
前記光学補償シートの支持体としてポリマーフィルムを用いる場合、ポリマーフィルムは、所望のレターデーション値を有することが好ましい。
支持体として用いられるポリマーフィルムのレターデーション値は光学補償フィルムが用いられる液晶セルやその使用の方法に応じて好ましい範囲が異なるが、Reレターデーション値は0〜200nmであり、そして、Rthレターデーション値は10〜400nm範囲に調節することが好ましい。
【0023】
液晶表示装置に二枚の光学補償シートを使用する場合、支持体として用いられるポリマーフィルムのRthレターデーション値は、10〜250nmの範囲にあることが好ましい。液晶表示装置に一枚の光学補償シートを使用する場合、支持体として用いられるポリマーフィルムのRthレターデーション値は、150〜400nmの範囲にあることが好ましい。
なお、支持体として用いられるポリマーフィルム(好ましくはセルロースアセテートフィルム)の複屈折率(Δn:nx−ny)は、0.00028〜0.020の範囲にあることが好ましい。また、支持体として用いられるポリマーフィルム(好ましくはセルロースアセテートフィルム)の厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.001〜0.04の範囲にあることが好ましい。
なお、nxは、フィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率である。
【0024】
ポリマーフィルムのレターデーションを調整するためには延伸のような外力を与える方法が一般的であるが、又、光学異方性を調節するためのレターデーション上昇剤が、場合により添加される。セルロースアシレートフィルムのレターデーションを調整するには、芳香族環を少なくとも二つ有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアシレート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。また、二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。例えば、欧州特許0911656A2号明細書、特開2000−111914号、同2000−275434号公報等記載の化合物等が挙げられる。
【0025】
更には、前記光学補償シートに支持体として用いるポリマーフィルム(好ましくはセルロースアセテートフィルム)の吸湿膨張係数は、30×10-5/%RH以下であるのが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下であるのがより好ましく、10×10-5/%RH以下であるのがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を上記範囲とすることで、光学補償シートの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇(歪みによる光漏れ)を防止することができる。
吸湿膨張係数の測定方法について以下に示す。作製したポリマーフィルムから幅5mm、長さ20mmの試料を切り出し、片方の端を固定して25℃、20%RH(R0)の雰囲気下にぶら下げた。他方の端に0.5gの重りをぶら下げて、10分間放置し長さ(L0)を測定した。次に、温度は25℃のまま、湿度を80%RH(R1)にして、長さ(L1)を測定した。吸湿膨張係数は下式により算出した。測定は同一試料につき10サンプル行い、平均値を採用した。
吸湿膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0)
【0026】
ポリマーフィルムの吸湿による寸度変化を小さくするには、疎水基を有する化合物或は微粒子等を添加することが好ましい。疎水基を有する化合物としては、分子中に脂肪族基や芳香族基のような疎水基を有する可塑剤や劣化防止剤の中で該当する素材が特に好ましく用いられる。これらの化合物の添加量は、調整する溶液(ドープ)に対して0.01〜10質量%の範囲にあることが好ましい。又、ポリマーフィルム中の自由体積を小さくすればよく、具体的には、後述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量が少ない方が自由堆積が小さくなる。セルロースアセテートフィルムに対する残留溶剤量が、0.01〜1.00質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。
【0027】
ポリマーフィルムに添加する上記した添加剤或は種々の目的に応じて添加できる添加剤(例えば、紫外線防止剤、剥離剤、帯電防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)、赤外吸収剤を等)は、固体でもよく油状物でもよい。また、フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。これらの詳細は、上記の公技番号 2001−1745号技報の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されないが、ポリマーフィルム全組成物中、0.001〜25質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい
【0028】
[ポリマーフィルムの製造方法]
支持体として用いるポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマー材料を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0029】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
これらのソルベントキャスト方法の製造工程については、前記の公技番号 2001−1745の22頁〜30頁に詳細に記載され、溶解、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0030】
支持体として用いるポリマーフィルムの厚さは、15〜120μmであることが好ましく、30〜80μmであるのがより好ましい。
【0031】
[ポリマーフィルムの表面処理]
支持体として用いるポリマーフィルムは、表面処理を施すことが好ましい。表面処理には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理および紫外線照射処理が含まれる。これらについては、詳細が前記の公技番号 2001−1745の30頁〜32頁に詳細に記載されている。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0032】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液中に浸漬、鹸化液を塗布する等何れでもよいが、塗布方法が好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理液は、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0Nの範囲にあることが好ましい。更に、アルカリ処理液として、フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒(例、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、メタノール、エタノール等)、界面活性剤、湿潤剤(例えば、ジオール類、グリセリン等)を含有することで、鹸化液の透明支持体に対する濡れ性、鹸化液の経時安定性等が良好となる。具体的には、例えば、特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に内容の記載が挙げられる。
【0033】
表面処理の代わりに、または表面処理に加えて下塗り層(特開平7-333433号公報記載)、或は疎水性基と親水性基との両方を含有するゼラチン等の樹脂層を一層のみ塗布する単層法第1層として高分子フィルムによく密着する層(以下、下塗第1層と略す)を設け、その上に第2層として配向膜とよく密着するゼラチン等の親水性の樹脂層(以下、下塗第2層と略す)を塗布する所謂重層法(例えば、特開平11−248940号公報記載)の内容が挙げられる。
【0034】
[液晶化合物]
本発明の光学補償シートは、液晶化合物の配向によって発現された光学異方性を有する。本発明においては、光学異方性層中において液晶化合物の分子は、ハイブリッド配向状態に固定されている。本発明に用いられる液晶化合物については特に制限はなく、種々の化合物を用いることができる。棒状液晶化合物又はディスコティック液晶化合物を用いるのが好ましく、ディスコティック液晶化合物を用いるのがより好ましい。また、液晶化合物は、高分子液晶でも低分子液晶であってもよい。さらに、低分子液晶化合物が層を形成する際に架橋され、もはや液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0035】
[棒状液晶化合物]
棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、本発明の棒状液晶化合物として用いることができる。言い換えると、棒状液晶化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。棒状液晶化合物については、例えば、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載のものを採用できる。
棒状液晶化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
【0036】
棒状液晶化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基またはエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基がさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基が最も好ましい。
【0037】
[ディスコティック液晶化合物]
ディスコティック液晶化合物には、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年))に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告(Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990))に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告(Angew.Chem.96巻、70頁(1984年))に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告(J.Chem.Commun.,1794頁(1985年))、J.Zhangらの研究報告(J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年))に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0038】
ディスコティック液晶化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶化合物から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物がディスコティック液晶化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0039】
ディスコティック液晶化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶化合物は、下記一般式(III)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0040】
一般式(III):D(−LQ)n
上記一般式(III)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
【0041】
円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0042】
【化1】

【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
ハイブリッド配向では、液晶化合物の長軸(ディスコティック液晶化合物では円盤面)と支持体の面との角度、すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ(すなわち、透明支持体に垂直な)方向に増加または減少している。本発明では、光学異方性層中のディスコティック液晶化合物の分子の傾斜角は、支持体面からの距離の増加と共に減少していることが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
【0051】
前記光学異方性層は、1,3,5−トリアジン環基を有する化合物の少なくとも一種を含有しているのが好ましい。該化合物は、液晶化合物、特にディスコティック液晶化合物の空気界面側の傾斜角を下げるのに寄与する。1,3,5−トリアジン環基を有する化合物は、光学異方性層を形成する際に用いる組成物中に含有させることができる。なお、本発明に使用可能な1,3,5−トリアジン環基を有する化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0052】
一般式(I)
【化9】

【0053】
[式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3はそれぞれ、単結合又は二価の連結基を表す。]
【0054】
1、R2、及びR3で各々表される置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0055】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
【0056】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0057】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、1,3,5−トリアジル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0058】
1、R2、及びR3で各々表される置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。
【0059】
1、X2及びX3で表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、−NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニル基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基及び二価の芳香族基は、可能であれば前述のR1、R2及びR3の置換基として例示された基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)によって置換されていてもよい。
【0060】
前記一般式(I)で表される化合物の中でも、下記一般式(Ia)又は(Ib)で表される化合物が特に好ましい。
【0061】
一般式(Ia)
【化10】

【0062】
[式中、R11、R22及びR33は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X11、X22及びX33は各々独立して、−NH−、−O−又は−S−を表し、m11、m22及びm33は各々独立して、1〜3の整数を表す。]
【0063】
一般式(Ib)
【化11】

【0064】
[式中、Rf1、Rf2及びRf3は各々独立して、末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表し、Y1、Y2及びY3は各々独立して、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表す。]
【0065】
まず、一般式(Ia)にて表される化合物について説明する。
11、R22及びR33で各々表される置換基は、前記一般式(I)におけるR1、R2及びR3と同義であり、その好ましい範囲も同一である。R11、R22及びR33で各々表される置換基としては、特に好ましくは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数4〜20であり、さらに好ましくは炭素数4〜16であり、特に好ましくは6〜16である。前記末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基は、アルコキシ基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルコキシ基である。アルコキシ基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。
以下に、R11、R22及びR33で表される末端にCF3基又はCF2H基を有するアルコキシ基の例を示す。
【0066】
R1:n−C817−O−
R2:n−C613−O−
R3:n−C49−O−
R4:n−C817−(CH22−O−(CH22−O−
R5:n−C613−(CH22−O−(CH22−O−
R6:n−C49−(CH22−O−(CH22−O−
R7:n−C817−(CH23−O−
R8:n−C613−(CH23−O−
R9:n−C49−(CH23−O−
R10:H−(CF28−O−
R11:H−(CF26−O−
R12:H−(CF24−O−
R13:H−(CF28−(CH2)−O−
R14:H−(CF26−(CH2)−O−
R15:H−(CF24−(CH2)−O−
R16:H−(CF28−(CH2)−O−(CH22−O−
R17:H−(CF26−(CH2)−O−(CH22−O−
R18:H−(CF24−(CH2)−O−(CH22−O−
【0067】
11、X22及びX33はそれぞれ、好ましくは、−NH−又は−O−を表し、最も好ましくは、−NH−を表す。m11、m22及びm33は、好ましくは2である。
【0068】
次に、一般式(Ib)にて表される化合物について説明する。
Rf1、Rf2及びRf3で各々表される末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基は、置換もしくは無置換のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数4〜20であり、さらに好ましくは炭素数4〜16であり、特に好ましくは6〜16である。前記末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。Rf1、Rf2及びRf3で表される末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基の例を以下に示す。
【0069】
Rf1:n−C817
Rf2:n−C613
Rf3:n−C49
Rf4:n−C817−(CH22
Rf5:n−C613−(CH22
Rf6:n−C49−(CH22
Rf7:H−(CF28
Rf8:H−(CF26
Rf9:H−(CF24
Rf10:H−(CF28−(CH2)−
Rf11:H−(CF26−(CH2)−
Rf12:H−(CF24−(CH2)−
【0070】
1、Y2及びY3はそれぞれ、好ましくは、アルキレン基、−NH−、−O−、−S−、及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し、特に好ましくは、アルキレン基、−NH−、−O−、及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し、最も好ましくは、−NH−、−O−、−NH(CH2n−O−(nは1〜8の整数を表す。最も好ましくは3である)を表す。
【0071】
前記一般式(Ia)又は(Ib)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0072】
【化12】

【0073】
【化13】

【0074】
トリアジン環基を有する化合物の添加量としては、液晶化合物(好ましくはディスコティック液晶化合物)に対して、0.01〜20質量%であるのが好ましく、0.05〜10質量%であるのがより好ましく、0.1〜5質量%であるのがさらに好ましい。
【0075】
液晶化合物の長軸(ディスコティック液晶化合物では円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般に液晶化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の液晶化合物の長軸(ディスコティック液晶化合物では円盤面)方向は、液晶化合物の種類を選択することによって、及び液晶化合物と共に使用する、上記一般式(I)で表される化合物の作用により調整することができる。
【0076】
光学異方性層中には、液晶化合物、上記一般式(I)で表される化合物、1,3,5−トリアジン環基を有する化合物以外に、他の添加剤を含有させてもよい。他の添加剤の例には、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどが含まれる。これらの添加剤は、液晶化合物等の必須成分に対し相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
【0077】
(オニウム塩)
前記光学異方性層を形成するための組成物は、オニウム塩を含有するのが好ましい。オニウム塩は、配向膜界面側の液晶化合物の傾斜角調整剤として機能する。本発明に用いられるオニウム塩は、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩等いずれであってもよいが、中でも4級オニウム塩が好ましく、第4級アンモニウム塩が特に好ましい。第4級アンモニウムは、一般に第3級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなど)、又は含窒素複素環(ピリジン環、ピコリン環、2,2’-ビピリジル環、4,4’-ビピリジル環、1,10-フェナントロリン環、キノリン環、オキサゾール環、チアゾル環、N-メチルイミダゾール環、ピラジン環、テトラゾール環など)をアルキル化(メンシュトキン反応)、アルケニル化、アルキニル化あるいはアリール化して得られる。
【0078】
第4級アンモニウム塩としては、含窒素複素環からなる第4級アンモニウム塩が好ましく、特に好ましくは第4級ピリジニウム塩である。中でも、下記一般式(2a)又は(2b)で表される第4級ピリジニウム塩が好適に用いられる。
【0079】
一般式(2a)
【化14】

【0080】
式(2a)中、R8は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基を表し、Dは水素結合性基を表し、mは1〜3の整数を表し、X―はアニオンを表す。
【0081】
一般式(2b)
【化15】

【0082】
式(2b)中、R9及びR10は各々置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基を表し、Xl―はアニオンを表す。
【0083】
まず、前記一般式(2a)についてより詳細に説明する。上記R8で表されるアルキル基は、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基好ましく、より好ましくは炭素数1〜8の置換もしくは無置換のアルキル基である。これらは、直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状であってもよい。これらの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル及びシクロプロピル等が挙げられる。
【0084】
アルキル基の置換基の例としては、以下のものを挙げることができる。炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルケニル基(例、ビニル);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルキニル基(例、エチニル);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、ナフチル);ハロゲン原子(例、F、Cl、Br等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例、フェノキシ、ビフェニルオキシ、p-メトキシフェノキシ);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ);炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリールチオ基(例、フェニルチオ);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル);
【0085】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p-トルエンスルホニル);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、プロピオニルオキシ);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル);炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基(例、ナフトキシカルボニル);無置換のアミノ基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n-ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メチルスルホニルアミノ);
【0086】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n-ブチルカルバモイル、t-ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル);無置換のスルファモイル基、もしくは炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル);シアノ基;ニトロ基;カルボキシ基;水酸基;ヘテロ環基(例、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾル環、ベンゾチアゾル環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、クマリン環)。アルキル基の置換基としては、特に好ましくは、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基である。
【0087】
上記R8で表されるアルケニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルケニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリール、1-プロペニル、1,3-ブタジエニル等が挙げられる。アルケニル基の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0088】
上記R8で表されるアルキニル基は、炭素数2〜18の置換もしくは無置換のアルキニル基が好ましく、より好ましくは炭素数2〜8の置換もしくは無置換のアルキニル基であり、例えば、エチニル、2-プロピニル等が挙げられる。アルキニル基の置換基は、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。
【0089】
上記R8で表されるアラルキル基は、炭素数7〜18の置換もしくは無置換のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル、メチルベンジル、ビフェニルメチル、ナフチルメチル等が好ましい。アラルキル基の置換基は前記アルキル基の置換基として挙げたものが挙げられる。
【0090】
上記R8で表されるアリール基は、炭素数6〜18の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル、ナフチル、フルオレニル等が挙げられる。アリール基の置換基は前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。またこれらの他に、アルキル基(例えば、メチル、エチル等)、アルキニル基、ベンゾイル基も好ましい。
【0091】
上記R8で表される複素環基は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、あるいは硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和又は不飽和の複素環であり、これらの例としては、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾル環、ベンゾチアゾル環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、インドレニン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環、及びクマリン環が挙げられる。複素環基は置換されていてもよく、その場合の置換基としては、前記アルキル基の置換基として挙げたものが好ましい。R8で表される複素環基としては、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾル環が特に好ましい。
上記R8は好ましくは、アルキル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基である。
【0092】
Dは水素結合性基を表す。水素結合は、電気的に陰性な原子(例えば、O,N,F,Cl)と、同じように電気的に陰性な原子に共有結合した水素原子間に存在する。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Jounal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、AngewanteChemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
【0093】
好ましい水素結合性基としては、メルカプト基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5-トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。
更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、ピリジル基を挙げることができ、特に好ましくは、アミノ基、カルバモイル基、ピリジル基を挙げることができる。
【0094】
X―で表されるアニオンは、無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸イオンなどが挙げられる。X―は、好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン又は水酸イオンである。
【0095】
mは好ましくは1である。
【0096】
次に、前記一般式(2b)について詳細に説明する。
9及びR10で各々表される置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は複素環基は、前記一般式(2a)中、R8で表される基と同義であり、その好ましい範囲も同一である。Xl―で表されるアニオンは、前記一般式(4a)中、X―で表されるアニオンと同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0097】
本発明に使用可能なオニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明に用いられるオニウム塩はこれらに限定されるものではない。下記の具体例中、No.II-1〜12は一般式(2b)、No.II-13〜32は一般式(2a)で表される化合物の例である。
【0098】
【化16】

【0099】
【化17】

【0100】
【化18】

【0101】
【化19】

【0102】
光学異方性層形成用組成物中における前記オニウム塩の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。
【0103】
前記光学異方性層は、セシウムイオン及びルビジウムイオンの少なくとも一種を含有しているのが好ましい。光学異方性層の形成時に配向膜を利用する場合は、配向膜中にセシウムイオン及びルビジウムイオンの少なくとも一種を含有させてもよいし、光学異方性層及び配向膜の双方にセシウムイオン及びルビジウムイオンの少なくとも一種を含有させてもよい。光学異方性層中又は配向膜中のセシウムイオン及びルビジウムイオンは、液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を配向規制し、安定的に傾斜角を増大させるのに寄与する。配向膜がセシウムイオン又はルビジウムイオンを含有する場合は、配向膜界面近傍の液晶性分子を特に配向規制し、安定的に傾斜角を増大させるのに寄与する。
【0104】
[セシウムイオン及びルビジウムイオン]
セシウムイオン又はルビジウムイオンの対アニオンについては特に制限はないが、フッ素、カルボン酸、水酸基、硫酸、スルホン酸、フェノール性水酸基及び炭酸のアニオンから選ばれるアニオンあるのが好ましい。中でも、フッ素、水酸基又はカルボン酸のアニオンがより好ましい。カルボン酸アニオンの中では、酢酸、クエン酸や置換及び無置換の安息香酸のアニオンが好ましい。一方、塩素、臭素、沃素、ニトロ基、過塩素酸基、チオシアン酸基等のアニオンは、垂直配向性を阻害する場合があるので、かかるアニオンを対アニオンとする場合は、セシウムイオン又はルビジウムイオンに対し、30%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。これらの対アニオンは用いないのが特に好ましい。
セシウムイオン又はルビジウムイオンと共に、4級アンモニウム塩やピリジニウム塩等を好ましく併用することができる。
【0105】
セシウムイオン又はルビジウムイオンは、対アニオンとの塩として、配向膜形成用組成物、又は光学異方性層形成用組成物に添加されてもよい。以下に、本発明に使用可能なセシウム化合物又はルビジウム化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例によってなんら限定されるものではない。
I−1 CsOH
I−2 RbOH
I−3 CsF
I−4 RbF
I−5 CH3COOCs
I−6 CH3COORb
I−7 クエン酸のセシウム塩
I−8 クエン酸のルビジウム塩
I−9 パラトルエンスルホン酸のセシウム塩
I−10 パラトルエンスルホン酸のルビジウム塩
I−11 CH3SO3Cs
I−12 CH3SO3Rb
I−13 CsCO3
I−14 RbCO3
【0106】
配向膜又は該配向膜と隣接する光学異方性層中における、セシウム又はルビジウムを含む化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0107】
[セルロースエステル]
前記光学異方性層中に、セルロースエステルを含有させると、組成物を支持体面上等に塗布した際のハジキの発生を軽減するのに寄与する。本発明に使用可能なセルロースエステルの好ましい例には、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが含まれる。中でも、セルロースアセテートブチレートが好ましい。前記セルロースエステルの添加量は、液晶化合物の総量に対して質量百分率で、好ましくは0.01〜8%、より好ましくは0.01〜4%、さらに好ましくは0.01〜2%である。
【0108】
[光学異方性層の製造方法]
本発明の光学補償シートは、液晶化合物及び所望により他の添加剤を含有する組成物(通常は塗布液)を、支持体表面、好ましくは配向膜表面に塗布して、液晶化合物の分子を配向させ、該配向状態に固定することで作製することができる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。均一性の高い光学フィルムを作製する場合には、塗布液の表面張力は、25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であることが更に好ましい。
【0109】
塗布液の塗布は、公知の塗布方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スロットダイコーティング法)により形成してもよい。塗布方式の中でもダイコーターを利用して光学異方性層を作製(特願2004−235411号、明細書の段落番号〔0013〕〜〔0023〕に記載)するのが好ましく、スロットダイコーターおよびスライドコーターがより好ましく、スロットダイコーターを用いることが特に好ましい。
【0110】
光学補償シートを、長尺状の形態で連続的に作製する場合、本発明では、光学異方性層形成用塗布液を、表面に配向膜を有する支持体(「ウェブ」又は「帯状可撓性支持体」という場合がある)上に塗布した後、好ましくは塗布した直後に、前記ウェブを囲むケーシングを有するドライヤにより、塗布面近傍の風の乱れを防止し乾燥中の塗布面側の溶剤蒸気を高い濃度で保ったまま乾燥を行うのが好ましい(特願2004−280058号、明細書の段落番号〔0162〕〜〔0197〕に記載)。
【0111】
固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。塗布液中には、液晶化合物の固定化に寄与する、重合性モノマーや重合開始剤を含有させるのが好ましい。重合性モノマーとしては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基およびメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。上記化合物の添加量は、液晶化合物に対して、一般に1〜50質量%であり、5〜30質量%であるのが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が3以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高めることができる。
【0112】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各公報記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各公報記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号、米国特許4239850号の各公報記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがさらに好ましい。
【0113】
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0114】
この様にして形成された光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。また、光学異方性層上に、保護層を設けてもよい。
【0115】
[配向膜]
前記光学異方性層の形成には、配向膜を用いるのが好ましい。前記光学異方性層の形成に用いられる配向膜については特に制限はなく、ポリビニルアルコール等のポリマー層を形成した後、該ポリマー層の表面を所定の方向にラビング処理することによって形成された配向膜などが利用できる。配向膜として好ましい例は、特開平8−338913号公報に記載されている。前記配向膜の膜厚は、10μm以下であるのが好ましい。なお、配向膜は光学異方性層の形成時のみに用い、光学異方性層を形成した後は、剥離可能な場合は剥離してもよい。かかる場合は、仮支持体上に配向膜を形成し、配向膜上で光学異方性層を形成した後に、該光学異方性層を、透明支持体に転写して、本発明の光学補償シートを作製してもよい。
【0116】
[光学補償シートの光学特性]
前記光学補償シートの光学特性は、黒表示における液晶セル中の液晶性分子を補償するように、決定するのが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なるので、前記光学異方性層の光学特性の好ましい範囲も、用途によって異なる。液晶セル中の液晶化合物の配向状態に関しては、IDW’00、FMC7−2のP411〜414等に記載されている。
【0117】
光学補償シートの光学特性は、前記した様に、その用途、例えば、いずれのモードの液晶セルの光学補償に用いられるかによって、好ましい範囲が異なる。ツイストネマチック配向及びベンド配向モードには、光学異方性層のReは0〜70nmであるのが好ましく、20〜70nmであるのがより好ましく、Rthは50〜400nmであるのが好ましく、100〜400nmであるのがより好ましい。かかる光学特性を示す光学異方性層を形成するには、例えば、ディスコティック液晶化合物を用い、ハイブリッド配向に固定して光学異方性層を形成する場合は、最小傾斜角(図2に示す態様では傾斜角θ1)0〜90°(より好ましくは0〜60°)で、且つ最大傾斜角(図2に示す態様ではθ2)が30〜90°(より好ましくは50〜90°)のハイブリッド配向とするのが好ましい。なお、本発明において、ハイブリッド配向とは、最大傾斜角と最小傾斜角の差(即ち|θ1−θ2|が10°〜90°のものをいうものとする。最大傾斜角と最小傾斜角の差は、好ましくは15〜85°であり、より好ましくは20〜80°である。
また、透明支持体のReは0〜70nmであるのが好ましく、0〜50nmであるのがより好ましく、Rthは、10〜400nmであるのが好ましく、40〜250nmであるのがより好ましい。但し、これらは一例であり、本発明において、光学補償シートの光学特性は、この範囲に限定されるものではない。
【0118】
本発明では、光学補償シートを偏光板と一体化して、偏光板中の一部材として液晶表示装置に組み込むことができる。光学補償シートが一体化された偏光板は、偏光機能を有するのみならず、液晶表示装置の視野角の拡大にも寄与する。さらに、偏光膜の保護フィルムとして前記光学補償シートを利用した偏光板を用いることは、液晶表示装置の薄型化にも寄与する。
【0119】
以下、本発明の光学補償シートを付加した偏光板について詳細に説明する。
[偏光板]
偏光板は一般に、基材フィルムに二色性物質を吸着、配向させて作製された偏光膜と、該偏光膜の少なくとも片面に貼合された保護膜とを有する。偏光膜の基材フィルムに使用されるポリマーとしては、ポリビニルアルコール(以下、PVA)系ポリマーが一般的である。二色性物質としてはヨウ素あるいは、二色性染料が単独、あるいは組み合わせて用いられる。保護膜としては、低複屈折性、透明性、適度な透湿性、寸度安定性等の物性が求められ、従来はセルロースアセテートフィルムが広く用いられ、その作製において塩素系有機溶媒であるメチレンクロライドを使用しており、環境保全の観点でその改良が望まれている。非塩素系有機溶媒を用いて作製されたセルロースアシレートフィルムは、その作製に際して非塩素系溶媒で流延しフィルム化することで、これらの改良したものである。
【0120】
ここで偏光膜に用いるPVAは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有しても構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性PVAも用いることができる。PVAのケン化度は特に限定されないが、溶解性、偏光性、耐熱、耐湿性等の観点から80〜100mol%が好ましく、90〜100mol%が特に好ましい。またPVAの重合度は特に限定されないが、フィルム強度や耐熱、耐湿性、延伸性などから1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。また、PVAのシンジオタクチシチーについては特に限定されず、目的に応じ任意の値をとることもできる。
【0121】
PVAを染色、延伸して偏光膜を作製する手順には、原反となるPVAフィルムを乾式または湿式で延伸した後、ヨウ素あるいは二色性染料の溶液に浸漬する方法、ヨウ素あるいは二色性染料の溶液中でPVAフィルムを延伸し配向させる方法、ヨウ素あるいは二色性染料にPVAフィルムを浸漬後、湿式または乾式で延伸し配向させる方法などがある。また、PVA原反を溶液製膜法により製膜する際、PVA溶液中に二色性物質をあらかじめ含有させる手法もとることができる。
【0122】
代表的な偏光板の湿式延伸による製造法を以下に述べる。まず、原反PVAフィルムを水溶液で予備膨潤する。次いで二色性物質の溶液に浸漬し、二色性物質を吸着させる。さらにホウ酸等のホウ素化合物の水溶液中で進行方向に一軸延伸する。必要に応じ色味調整浴、硬化浴等をこの後に設けても良い。ある程度乾燥したところでPVA等の接着剤を用い保護膜を貼合する。さらに乾燥して偏光板が得られる。
【0123】
予備膨潤液中には、各種有機溶媒、無機塩、可塑剤、ホウ酸類等を水溶液中に添加してもよい。
【0124】
染色液は、二色性物質としてヨウ素を用いる場合を例にすると、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液を用いる。ヨウ素は0.1〜20g/リットル、ヨウ化カリウムは1〜100g/リットル、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1〜100が好ましい。染色時間は30〜5000秒が好ましく、液温度は5〜50℃が好ましい。染色液中にホウ素化合物等PVAを架橋する化合物を含有させることも好ましい。延伸浴中のホウ素化合物は、ホウ酸が特に好ましい。ホウ酸濃度は、好ましくは1〜200g/リットルであり、さらに好ましくは10〜120g/リットルである。延伸浴には、ホウ素化合物の他にヨウ化カリウム等の無機塩、各種有機溶媒、あるいは二色性染料等を含むことができる。色味調整浴、硬化浴には二色性染料のほか、ヨウ化カリウム等の無機塩、ホウ素化合物等を必要に応じ含有させる。
【0125】
PVAの延伸工程としては、上に例示した如く連続フィルムの進行方向に張力を付与し、進行方向にフィルムを延伸、配向させる方法が一般的であるが、いわゆるテンター方式等の延伸手段でフィルムの幅手方向に張力を付与し、幅手方向に配向させる方法も適用可能である。延伸は一軸方向に3倍以上行うことが好ましく、4.5倍以上がより好ましい。偏光膜の使用目的により二軸延伸を行ってもよい。延伸後の膜厚は特に限定されないが、取り扱い性、耐久性、経済性の観点より、5〜100μmが好ましく、10〜40μmがより好ましい。延伸時の温度は延伸条件によって異なるが、通常10〜250℃である。100℃以上の温度で乾式延伸する場合は、窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。また、予め延伸したフィルムを染色する前には、100℃以上の温度で結晶化処理を行うことが好ましい。
【0126】
染色方法としては上に例示した浸漬法だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。また、既に述べた液層吸着のみでなく、既存の方法による吸着も必要に応じ行うことができる。二色性色素で染色することも好ましい。二色性色素の具体例としては、例えばアゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系化合物をあげることができる。水溶性のものが好ましいが、この限りではない。又、これらの二色性分子にスルホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基が導入されていることが好ましい。
【0127】
二色性分子の代表的なものとしては、例えばシー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ72、シー.アイ.ダイレクト.レッド28、シー.アイ.ダイレクト.レッド39、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド83、シー.アイ.ダイレクト.レッド89、シー.アイ.ダイレクト.バイオレット48、シー.アイ.ダイレクト.ブルー67、シー.アイ.ダイレクト.ブルー90、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、シー.アイ.アシッド.レッド37等が挙げられ、さらに特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開2000−48105号、特開2000−65205号、特開平7−261024号の各公報に記載の色素等を挙げることができる。特に、シー.アイ.ダイレクト.レッド28(コンゴーレッド)は古くよりこの用途に好ましいとして知られている。これらの二色性分子は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。
【0128】
これらの二色性分子は2種以上を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光素子または偏光板として偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)や黒色を呈するように各種の二色性分子を配合したものが単板透過率、偏光率とも優れており好ましい。
【0129】
偏光膜の耐熱、耐湿性を高める観点から、偏光膜の製造工程においてPVAに架橋させる添加物を含ませることが好ましい。架橋剤としては、米国再発行特許第232897号に記載のものが使用できるが、ホウ酸、ホウ砂が実用的に好ましく用いられる。また、亜鉛、コバルト、ジルコニウム、鉄、ニッケル、マンガン等の金属塩を偏光膜に含有させることも、耐久性を高めることが知られており好ましい。これら架橋剤、金属塩は、上に述べた予備膨潤浴、二色性物質染色浴、延伸浴、硬化浴、色調整浴等のいずれの工程に含有させても良く、工程の順序は特に限定されない。保護膜と偏光膜を接着する接着剤としては特に限定はなく、PVA系、変性PVA系、ウレタン系、アクリル系等、知られているものを任意に用いることができる。接着層の厚みは0.01〜20μmが好ましく、0.1〜10μmがさらに好ましい。
【0130】
偏光膜の一方の表面には、前記光学補償シートを(支持体の裏面(光学異方性層を形成していない側の表面)が偏光膜と接する様に)貼合し、その反対側の表面には、セルロースアシレート等からなるポリマーフィルムを配置する(光学異方性層/透明支持体/偏光膜/ポリマーフィルム)のが好ましい。
【実施例】
【0131】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。これらの実施例は本願発明の内容の具体例を示すものであり、本願発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0132】
[実施例1]
図1に示した構成と同様の構成の液晶表示装置について光学シミュレーションを実施し、効果の確認を行った。光学計算には、シンテック社製のLCD Master Ver6.08を用いた。液晶セルや電極、基板、偏光板等は、液晶ディスプレイ用に従来から用いられているものがそのまま使用できる。液晶材料にはLCD Masterに付属のZLI−4792を用いた。液晶セルの液晶層7中の液晶性分子の配向はプレチルト角5°でパラレル配向の水平配向とし、一対の基板6及び8のセルギャップを5.2ミクロンとし、正の誘電率異方性を有する液晶材料で液晶のレターデーション(即ち、記液晶層の厚さd(ミクロン)と屈折率異方性Δnとの積Δn・d)を400nmとした。偏光膜1及び12にはLCD Masterに付属のHLC2−5618を用いた。液晶層7に印加する電圧は白表示時における電圧を1.8V、黒表示時における電圧を5.6Vとしたところ、黒表示状態における液晶層7中の基板6又は8近傍に位置する液晶化合物分子の傾斜角は10°、液晶層7中の厚さ方向中央部に位置する液晶化合物分子の傾斜角は70°となった。光学異方性層4及び9中の液晶化合物分子の傾斜角については、該光学異方性層4及び9中の液晶セル側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ1が、該液晶層7中の基板6又は8近傍の液晶化合物分子の傾斜角とほぼ等しく、該光学異方性層4及び9中の偏光膜側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ2が、該液晶層7中の厚さ方向中央部に位置する液晶化合物分子の傾斜角とほぼ等しくした。具体的には、傾斜角θ2が67.3°、傾斜角θ1が15.7°となるように設定した。この時、偏光膜に隣接する支持体は、セルロースアシレートフィルムと仮定し、そのパラメータとして、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm、「TD80UF」、富士写真フイルム製)の実測値を使用した。光源にはLCD Masterに付属のC光源を用いた。このようにして、実施例1の液晶表示装置は図1に示す構成とした。
【0133】
[実施例2]
実施例2は、液晶層7中の基板近傍に位置する液晶化合物分子の傾斜角は21°、液晶層7中の厚さ方向中央部に位置する液晶化合物の傾斜角は65°となるように設定し、光学異方性層4及び9中の偏光膜側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ2が60.6°、液晶セル側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ1が30.1°となるように設定し、それ以外は、実施例1と全く同じ方法で液晶表示装置の光学特性をLCD Masterにより計算した。
【0134】
[比較例1]
本発明の効果との比較のため、比較例1は、光学異方性層において、偏光膜側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ2が15.7°、液晶セル側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ1が67.3°となるように設定し、それ以外は、実施例1と全く同じ方法で液晶表示装置の光学特性をLCD Masterにより計算した。
【0135】
[比較例2]
本発明の効果との比較のため、比較例2は、光学異方性層の支持体として、セルロースアシレートフィルムを光学異方性層と液晶セルとの間に配置し、それ以外は、実施例1と全く同じ方法で液晶表示装置の光学特性をLCD Masterにより計算した。
【0136】
[比較例3]
本発明の効果との比較のため、比較例2は、光学異方性層において、偏光膜側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ2が30.1°、液晶セル側に位置する液晶化合物分子の傾斜角θ1が60.6°となるように設定し、それ以外は、実施例2と全く同じ方法で液晶表示装置の光学特性をLCD Masterにより計算した。
【0137】
[比較例4]
本発明の効果との比較のため、比較例4は、光学異方性層の支持体として、セルロースアシレートフィルムを光学異方性層と液晶パネルの間に配置し、それ以外は、実施例2と全く同じ方法で液晶表示装置の光学特性をLCD Masterにより計算した。
【0138】
(液晶表示装置のコントラスト値及び色味変化)
これらの液晶表示装置に、白表示時における電圧および黒表示時における電圧を印加し、極角60°で方位角0°、90°、180°、270°視野角における白表示と黒表示の透過率の比、すなわちコントラスト値を求めた。また、黒表示時の方位角90°における極角0°〜60°での色味変化をu’v’色度座標におけるΔu’v’で示した。なお、Δu’v’<0.1であれば、一般的に色味変化が少ないといえる。結果は表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
表1に示した結果から、光学異方性層中の液晶化合物分子の傾斜角を、該光学異方性層中の液晶セル側に位置する液晶化合物分子の傾斜角が、該液晶セル中の基板近傍に位置する液晶化合物分子の傾斜角とほぼ等しく、該光学異方性層中の偏光板側に位置する液晶化合物分子の傾斜角が、該液晶セル中の厚さ方向中央部に位置する液晶化合物分子の傾斜角とほぼ等しくした実施例1及び2は、極角60°、方位角0、90、180、270°におけるコントラスト値がいずれも高かった。さらに、上記要件のいずれかを満足しない、又は支持体であるセルロースアシレートフィルムが液晶セルと光学異方性層の間に配置されている比較例1〜4と比較して、極角0〜60°における色味変化が格段に少なく、良好な表示性能が得られることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の液晶表示装置の構成の一例を説明する概略模式図である。
【図2】本発明に使用可能な光学補償シートの一例の断面模式図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一例における、黒表示時の液晶層中の液晶性分子の配向状態と、光学異方性層中の液晶性化分子の配向状態を説明するための概略模式図である。
【図4】一般的な光学補償シートの一例の断面模式図である。
【符号の説明】
【0142】
1 偏光膜
2 透過軸
3 支持体
4 光学異方性層
5 液晶化合物の分子対称軸の液晶セル側の配向平均方向
6 基板
7 液晶層
8 基板
9 光学異方性層
10 液晶化合物の分子対称軸の液晶セル側の配向平均方向
11 支持体
12 偏光膜
13 透過軸
14 光学補償シート
15 光学補償シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、該一対の基板に挟持される液晶層とを有する液晶セル、前記液晶セルの一対の基板の少なくとも一方の外側に偏光膜、及び前記少なくとも一方の基板と前記偏光膜との間に、光学異方性層と支持体とを有する光学補償シートが、該光学異方性層を前記液晶セル側にして、且つ前記支持体を前記偏光膜側にして配置された液晶表示装置であって、
前記光学異方性層が、液晶化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物から形成され、前記光学異方性層中において、前記液晶化合物の分子はハイブリッド配向状態に固定され、前記光学異方性層中、液晶セル側に位置する液晶化合物の分子の平均傾斜角θ1と、前記光学異方性層中、偏光膜側に位置する液晶化合物の分子の平均傾斜角θ2とが互いに異なり、
前記平均傾斜角θ1が、黒表示時の前記液晶層の基板近傍に位置する液晶性分子の傾斜角とほぼ等しく、且つ前記平均傾斜角θ2が、黒表示時の前記液晶層の厚さ方向中央部に位置する液晶性分子の傾斜角とほぼ等しいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記支持体がセルロースアシレートフィルムである請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶化合物が、ディスコティック液晶化合物である請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記光学補償シートが、前記偏光膜の保護膜としても機能している請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−156163(P2007−156163A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352165(P2005−352165)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】