説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置に反射偏光板を組み込んで、反射型表示において表示視認性を向上させる。
【解決手段】2枚の基板間に液晶層11が封入された液晶パネル2と、液晶パネル2の表示視認側である上部に設置されて上偏光板3と、液晶パネル2の下部に設置された反射偏光板4と、反射偏光板4の下部に設置された選択波長吸収板5と、選択波長吸収板5の下部に設置された光散乱面12とから構成される液晶表示装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタティック駆動により表示動作を行う液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パーソナルコンピュータや携帯電話等に液晶表示装置が利用されている。液晶表示装置は、薄型軽量であり低消費電力の表示装置として広く実用化されている。近年、携帯電話等の携帯機器に使用される場合に、デザイン性が重視されてきており、特徴のある表示色が出せる液晶表示装置の要求が強くなってきている。
【0003】
図6は、表示面にミラー機能を付加した液晶表示装置の模式的な縦断面図である(例えば特許文献1を参照)。液晶表示装置50は、液晶セル51と、液晶セル51の表示視認側に設けた前偏光板55と、その上部に設けた反射偏光板56と、液晶セル51の下部に設けた後偏光板57と、その下部に設けた導光板52と、その下部に設けた反射板54と、導光板52の側面に設けた冷陰極管53から構成されている。液晶セル51は、後透明基板58と前透明基板60との間にシール材62を介して間隙が設けられ、当該間隙には液晶層Lcが封入されている。更に、後透明基板58の内面には画素電極59が、前透明基板60の内面には対向電極が形成され、液晶層Lcに電界を印加することができるように構成されている。
【0004】
ここで、反射偏光板56は、互いに直行する透過軸と反射軸を備えている。透過軸方向の電界ベクトルを有する光を透過し、反射軸方向の電界ベクトルを有する光を反射する。また、前偏光板55及び後偏光板57のそれぞれは、互いに直行する透過軸と吸収軸を備えている。透過軸方向の電界ベクトルを有する光を透過し、吸収軸方向の電界ベクトルを有する光を吸収する。図6に示す配置においては、反射偏光板56の透過軸、前偏光板55の透過軸、及び後偏光板57の透過軸を同一方向に設定している。液晶層Lcは前透明基板60の表面から後透明基板58の表面に向けて、液晶分子が例えば90°ツイストしている。この90°ツイスト状態のときは、上方から下方へ、あるいは下方から上方へ進む光の電界ベクトルを90°回転させる旋光性を備えている。液晶層Lcに電界が印加されて液晶分子が立ち上がると、この旋光性が失われる。
【0005】
この液晶表示装置50は、次のように動作する。まず、冷陰極管53が発光しておらず、対向電極61と画素電極59に電圧が印加されていないオフ状態の場合を説明する。上部から入射した光のうち、反射偏光板56の反射軸方向に電界ベクトルを有する光は反射偏光板56により反射される。反射偏光板56の表面は平滑であるために、入射した光は入射角度とほぼ同じ角度で反射される。上部から入射した光のうち、反射偏光板56の透過軸方向に電界ベクトルを有する光は、液晶セル51側に透過する。前偏光板55の透過軸は反射偏光板56の透過軸と方向が一致している。そのため、反射偏光板56を透過した光は液晶セル51に入射する。液晶層Lcに入射した光の電界ベクトルは90°回転する。しかし後偏光板57の透過軸は前偏光板55の透過軸と平行であるために、液晶層Lcを通過した光の電界ベクトルは、後偏光板57の吸収軸の方向となり、後偏光板57により吸収されて、遮断される。即ち、液晶層Lcを通過した光は、反射板54に到達する前に吸収され、液晶セル51側から上方に散乱されない。従って、観察者は、液晶表示装置50の表面に設置される反射偏光板56から反射される光を見ることになり、表示面はミラーとして機能することになる。
【0006】
次に、冷陰極管53が発光しておらず、対向電極61と画素電極59に電圧が印加されたオン状態の場合を説明する。オン状態になると液晶分子が立ち上がり、液晶層Lcにおいて旋光性が失われる。すると、前偏光板55を通過した光の電界ベクトルは液晶層Lc内で回転せず、そのまま後偏光板57に入射する。前偏光板55と後偏光板57の各透過軸は同じ方向に設定されているので、後偏光板57に入射した光は後偏光板57を透過することができる。従って、透過した透過光は反射板54に到達して散乱される。散乱光は、入射光と同じ経路をたどって反射偏光板56から外部に出射される。観察者は、この散乱光を観察することになる。
【0007】
反射偏光板56、前偏光板55及び後偏光板57は、通常波長依存性が少ない。反射偏光板56は、ほぼ鏡のような表面を備え、それ自体色彩を有していない。また、反射板54において反射される散乱光も、波長依存性が少ない。その結果、黒っぽい鏡の面にグレーの表示となり、同色系の表示となってしまう。また、反射板54に到達する光の強度は減衰しており、更に、上方へ散乱されるときに減衰し、この散乱光が後偏光板57、前偏光板55及び反射偏光板56を通過するときは、光強度は相当減少する。液晶表示装置50の最上面に鏡面が設置されているため反射光が邪魔して、光強度の弱い表示文字、図形等をほとんど視認することができない。
【0008】
次に、冷陰極管53をオンして発光した場合について説明する。冷陰極管53から出射した光は導光板52に導入され、導光板52の両表面において反射しながら導光板52内全体に広がる。そして、導光板52の上面、又は下面から漏れ出した光が反射板54に散乱されて、液晶セル51側に散乱光が出射される。画素電極と対向電極間に電圧が印加されていないオフ状態において、後偏光板57を通過した光の電界ベクトルは液晶層Lcにおいて90°回転される。そして、液晶層Lcから出射した光の電界ベクトルは、前偏光板55の吸収軸方向となり、前偏光板55により遮断されて外部へ出射されない。従って、表示面は暗いミラーとなる。
【0009】
画素電極59と対向電極61間に電圧を印加したオン状態においては、液晶層Lcの液晶分子は立ち上がり、旋光性が失われる。そのため、液晶層Lcを通過した光は前偏光板55及び反射偏光板56を通過することができる。従って、観察者は、ミラー表示面の中に、白色系の文字、画像を視認することができるようになる。
【特許文献1】特開2004-246004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のとおり、上記従来例においては反射偏光板56が最上部に設置されているために、表示面に入射する外光が常に反射される状態となる。そのために、冷陰極管53をオフにして反射型で表示させようとすると、ミラー状態の表示面に表示される文字や画像は、ミラー表示面と同色系となり、ほとんど視認することができない、という課題があった。また、冷陰極管53を点灯して透過型の表示を行う場合でも、最上部が常にミラーとして機能しているために、周囲の環境によっては表示が認識し難くなる、或いは、光源が冷陰極管53であるために、暗いミラーに同色系のグレーの表示となり、視認性が低い、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明においては、以下の対策を講じた。
【0012】
(1)2枚の基板間に液晶層が封入された液晶パネルと、前記液晶パネルの表示視認側である上部に設置された偏光板と、前記液晶セルの下部に設置された反射偏光板と、前記反射偏光板の下部に設置された選択波長吸収板と、前記選択波長吸収板の下部に設置された光散乱面とから構成される液晶表示装置とした。
【0013】
(2)上記(1)の液晶表示装置において、前記選択波長吸収板の下部に設置される導光板と、前記導光板に光を導入する光源とを更に備え、前記導光板の上面又は下面を前記光散乱面とした。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)の液晶表示装置において、前記選択波長吸収板は、電界制御複屈折型の液晶セルとした。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1の液晶表示装置において、前記光源は、互いに発光色を異にする複数の発光源とした。
【発明の効果】
【0015】
反射偏光板を液晶パネルの視認側とは反対側に設置したことにより、表示面において、文字や画像を表示する表示部と、その背景部の一方が鏡面状の反射面となり、他方は鏡面状の反射面が解除されるので、反射型表示においても表示の視認性が向上する。また、反射偏光板と光散乱面との間に選択波長吸収板を設けたことにより、表示面が鏡面状の反射面となる以外の領域に色彩を付与することができるので、更に表示の視認性を向上させることができる、という利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の液晶表示装置は、2枚の基板間に液晶層が封入された液晶パネルと、この液晶パネルの表示視認側である上部に設けた上偏光板と、液晶パネルの表示視認側とは反対側の下部に設けた反射偏光板と、その反射偏光板の下部に設けた選択波長吸収板と、その選択波長吸収板の下部に設けた光散乱面とから構成されている。
【0017】
液晶パネルとしては、TN液晶パネル、STN液層パネル、TFT液晶パネル、インプレーンスイッチング方式液晶パネル等を使用することができる。選択波長吸収板としては、色素系の色フィルターを使用したカラーフィルタフィルム、コレステリック液晶を利用した選択透過フィルム、電界制御複屈折型の液晶セルなどを使用することができる。光散乱面としては、表面を粗面にした光拡散板、透明樹脂に光散乱粒子を混入した光拡散板、透明樹脂や透明ガラスの表面に凹凸を設けた光拡散板などを使用することができる。また、選択波長吸収板の下部に導光板を設置し、その導光板の上面または下面に凹凸を設けて、光散乱面としてもよい。
【0018】
本発明の液晶表示装置は反射型として表示動作を行うことができる。液晶パネルに電圧を印加しないときは、外部から入射した光が選択波長吸収板を通過して、光散乱面により散乱され、再び選択波長吸収板を通過して、最上面の偏光板から出射される。電圧を印加すると、反射偏光板の表面で反射された外光が最上部の偏光板から出射される。従って、表示面は、カラーの背景に鏡面の文字や図形が表示される。この場合に、表示面がカラーの背景の領域は、反射偏光板からの鏡面状の反射は遮断されている。また、偏光板又は反射偏光板のいずれかの偏光方向(透過軸)の向きを変えることにより、鏡面の背景にカラーの文字や図形を表示することができる。この場合も、カラーの文字や図形が表示されている領域は、反射偏光板からの鏡面状の反射は遮断されている。そのために、視認性の向上した表示を得ることができる。
【0019】
また、選択波長吸収板の下部に導光板を設けるとともに、導光板に光を導入するための光源を設けて、発光型の液晶表示装置とすることができる。液晶パネルに電圧を印加しないときは、選択波長吸収板を通過して光拡散面において散乱される外光と、導光板からの出射した光が選択波長吸収板を通過するので、表示面は明るいカラーの背景となる。液晶パネルに電圧を印加すると、反射面偏光板の表面で反射された外交が最上面の偏光板から出射される。しかし、導光板から出射された光は、最上面に設置した偏光板により遮断される。従って、表示面は、明るいカラーの背景に鏡面の文字や図形が表示される。また、偏光板又は反射偏光板のいずれかの偏光方向を変えることにより、鏡面の背景に明るいカラーの文字や図形を表示することができる。
【0020】
また、選択波長吸収板を電界制御複屈折型液晶セル(以下、ECB液晶セルという)にすることにより、液晶層に電圧を印加しないとき、又は液晶層に電圧を印加したときの背景色又は表示色を任意に変化させることができる。また、光源を互いに発光色が異なる複数の発光源とすることができる。更に、各発光源を独立に制御可能とすれば、表示面の背景色、又は表示色を適宜選択することができるので、変化に富んだ多様な表示を得ることができる。
【0021】
以下、図面を用いて、本発明について、詳細に説明する。
(実施例1)図1は、本発明の実施例1に係る液晶表示装置1の縦断面図である。液晶表示装置1は、液晶パネル2と、液晶パネル2の表示視認側に設けた上偏光板3と、液晶パネル2の表示視認側とは反対側の下部に設けた反射偏光板4と、その下部に設けた選択波長吸収板5と、その下部に設けた導光板6と、導光板6の側部に設けた光源7とから構成されている。導光板6の上面は凹凸処理が施され、光散乱面12をなしている。液晶パネル2は、下透明基板8と上透明基板9とをシール材10を介して張合わされており、内部に液晶層11が構成されている。下透明基板8の液晶層11側には、複数のストライプ状の下透明電極14が形成され、上透明基板9の液晶層11側にも、複数のストライプ状の上透明電極15が形成されている。下透明電極14と上透明電極15とは交差するように形成され、液晶層11に選択的に電界を印加することができる。液晶層11は90°ツイストのTN型である。選択波長吸収板5は、顔料又は染料を樹脂層に混入したフィルムから構成されており、特定の波長の光、例えば波長λ10を透過する。
【0022】
図1において、液晶表示装置1の左側の液晶層11には電界が印加されておらず、オフ状態である。右側の液晶層11には電界が印加されており、オン状態である。オフ状態の場合は、表示視認側から入射した入射光Iは、上偏光板3、液晶パネル2、反射偏光板4、選択波長吸収板5を通過して光散乱面12に到達する。更に、光散乱面12から散乱された散乱光の一部は、選択波長吸収板5、反射偏光板4、液晶パネル2及び上偏光板3を通過して、反射光Roffとして視認することができる。反射光Roffは選択波長吸収板5を2回通過しているので、選択波長吸収板5の色となる。
【0023】
一方、オン状態の場合は、表示視認側から入射した入射光Iは、上偏光板3、液晶パネル2を通過した光は、反射偏光板4において鏡面反射される。そして、液晶パネル2、上偏光板3を通過して反射光Ronとして視認することができる。反射光Ronは、選択波長吸収板5を通過していないので、上偏光板3及び反射偏光板4の色調となる。ただし、上偏光板3及び反射偏光板4の透過光又は反射光は波長依存性が少なく、反射偏光板4の表面は平滑なので、反射光Ronは無着色の鏡面反射となる。従って、液晶層11に電圧が印加されない領域が選択波長吸収板5の色の着色領域となり、電圧が印加された文字又は図形の領域が鏡面となる。選択波長吸収板5のカラーを選択することにより、多様なデザインの反射型表示を得ることができる。
【0024】
また、上偏光板3の透過軸と反射偏光板4の反射軸の相対角度を変更する(例えば、いずれか一方を90°回転させる)ことにより、上記表示状態を反転させることができる。即ち、液晶層11に電圧を印加しない領域を鏡面反射とし、電圧を印加した領域を選択波長吸収板5の着色領域とすることができる。いずれの表示方式においても、選択波長吸収板5の着色領域に、反射偏光板4の鏡面反射光がかぶることがないので、反射型表示の表示視認性が向上する。
【0025】
図2は、光源7をオフにして反射型表示とした場合の、動作原理の説明図である。図2(a)が図1の左側に対応し、液晶層11に電界を印加しないオフ状態の説明図であり、図2(b)が図1の右側に対応し、液晶層11に電界を印加したオン状態の説明図である。まず、図2(a)において、波長λ1〜λ10の入射光Iが−z方向に入射する。上偏光板3の透過軸はxy平面内においてP方向(例えばx軸から45°)に設定されている。上偏光板3を通過した光は電解ベクトルがP方向の偏光光線となる。液晶層11の液晶分子13は、上面から下面に向けて90°回転するようにネジレ配向している。液晶層11は、入射した光の電界ベクトルが90°回転するように光学的に設定されている。従って、液晶層11に入射した光は、電界ベクトルが90°回転してQ方向の偏光光線として出射される。反射偏光板4は、透過軸がQ方向に、反射軸がこれに直行するP方向に向けて設置されている。液晶層11から出射したQ方向の偏光光線は、反射偏光板4の透過軸方向の電界ベクトルを有しているので、反射偏光板4を通過する。選択波長吸収板5は波長λ10を透過し、その他の波長λ1〜λ9を吸収する。従って、光散乱面12には波長λ10の光Ix(λ10)が到達する。
【0026】
光散乱面12において波長λ10の散乱光S(λ10)は上方に散乱される。光の偏光方向はほとんど影響を受けないので、散乱光S(λ10)の電界ベクトルはQ方向となる。散乱光S(λ10)は、再び選択波長吸収板5を通過し、反射偏光板4の透過軸がQ方向なのでこれを通過し、液晶層11において電界ベクトルが90°回転してP方向の偏光光線として出射される。上偏光板3はP方向の透過軸を有するので、この上偏光板3も通過して波長λ10の反射光Rx(λ10)が上方に反射される。
【0027】
次に、図2(b)において、波長λ1〜λ10の入射光I(λ1〜λ10)が−z方向に入射する。上偏光板3の透過軸はP方向なので、電界ベクトルがP方向の偏光光線が液晶層11に入射する。液晶層11は、電界が印加されて液晶分子が立ち上がるため旋光性を失う。従って、液晶層11を通過した光は、電界ベクトルがP方向となる。反射偏光板4の反射軸はP方向なので、波長λ1〜λ10の反射光R(λ1〜λ10)として上方へ反射され、下方には透過しない。反射光R(λ1〜λ10)は、旋光性が失われている液晶層11をそのまま通過して上偏光板3に達する。上偏光板3の透過軸もP方向なので、上偏光板3を通過して反射光Rx(λ1〜λ10)として上方に出射される。この場合、光の波長は入射光と同じで、λ1〜λ10を有している。
【0028】
以上のとおり、本実施例1における液晶表示装置1の表示面は、選択波長吸収板5により付与される色調、例えば波長λ10の色の背景に、反射偏光板4により反射される波長λ1〜λ10の色調を有し、鏡面反射光による文字、図形等が表示されることになる。また、上偏光板3の透過軸を90°回転させる、或いは、反射偏光板4の透過軸を90°回転させると、上記表示色は反転する。即ち、鏡面反射光の背景に、選択波長吸収板5により着色された文字、図形等を表示することができる。いずれの表示方式においても、入射光I(λ1〜λ10)が液晶層11を通過し、反射偏光板4を透過して光散乱面12に到達する場合は、液晶層11を通過した透過光に、反射偏光板4の反射軸方向の電界ベクトルを有する光が含まれないために、反射偏光板4から表示視認側に反射される光の強度は弱い。そのために、散乱光Sx(λ10)に反射偏光板4からの反射光R(λ1〜λ10)が重なることがない。
【0029】
図3は、図1に示した実施例1に係る液晶表示装置1において、光源7をオンして透過型表示とした場合の光路を追記した。液晶表示装置1の構成は図1と同じなので説明を省略する。光源7をオンして導光板6に光を導入する。導光板6の表面には光散乱面12が形成されている。散乱面から出射したバックライト光Bを破線で示している。まず、液晶層11に電界が印加されていない左側のオフ状態においては、光散乱面12から散乱したバックライト光Bは選択波長吸収板5を通過して着色され、反射偏光板4に入射する。反射偏光板4では、一部のバックライト光Bは反射され、一部のバックライト光Bは透過する。反射偏光板4を透過したバックライト光Bは液晶層11、上偏光板3を透過してバックライト光Boffとして出射される。従って、観察者は、外部から入射した入射光Iによる反射光Roffと、バックライト光Boffとが加法混色された光を観察することになる。バックライト光の色と選択波長吸収板5の色とを適宜選択することにより、多様な表示面と得ることができる。
【0030】
一方、オン状態の場合は、導光板6の光散乱面から出射したバックライト光は、選択波長吸収板5を通過し、反射偏光板4において一部の光が透過し、液晶パネル2を通過することができる。しかし、反射偏光板4の透過軸方向と上偏光板3の吸収軸方向とが同じ方向を向いているために、反射偏光板4を透過してきたバックライトは上偏光板3で遮断される。即ち、バックライト光Bは外部へ出射されない。従って、明るいカラーを背景に鏡面の文字又は図形が表示される。選択波長吸収板5の色及び光源7の発光色を選定することにより、多様なデザインの透過型表示を得ることができる。
【0031】
図4は、光源7をオンにして透過型表示とした場合の、動作原理の説明図である。図4(a)が図3の左側に対応し、液晶層11に電界を印加しないオフ状態の説明図であり、図4(b)が図3の右側に対応し、液晶層11に電界を印加したオン状態の説明図である。バックライト光B(λ1〜λ10)の経路を破線で示す。図4には、外部から入射する入射光I、これに伴う散乱光S(λ10)及び反射光R(λ1〜λ10)も示してあるが、図2と同じなので、説明は省略する。
【0032】
図4(a)において、波長λ1〜λ10のバックライト光B(λ1〜λ10)がz方向に出射される。光の波長λ10を透過する選択波長吸収板5を通過して、波長λ10の光が透過する。反射偏光板4は、xy平面上においてP方向が反射軸であり、Q方向が透過軸である。従って、電界ベクトルがP方向のバックライト光B(λ10)は反射され、電界ベクトルがQ方向のバックライト光B(λ10)は透過する。バックライト光B(λ10)は、液晶層11において光の電界ベクトルが90°回転して、電界ベクトルがP方向の偏光光線が上偏光板3に入射する。上偏光板3の透過軸はP方向なので、このバックライト光B(λ10)は上偏光板3を通過して上方に出射される。その結果、波長λ10のバックライト光B(λ10)とともに、外部から入射した入射光Iのうち、光散乱面12において散乱された散乱光Sx(λ10)とともに出射される。光源7の発光色、及び選択波長吸収板5の色を選定することにより、多様なデザインを構成することができる。なお、反射偏光板4により反射される光は、導光板6に戻されるので、この戻り光は再利用される。
【0033】
図4(b)において、波長λ1〜λ10のバックライト光B(λ1〜λ10)がz方向に出射される。光の波長λ10を透過する選択波長吸収板5を通過して、バックライト光B(λ10)は波長λ10の色調を帯びている。反射偏光板4は、P方向が反射軸なので、電界ベクトルがP方向の光は反射され、電界ベクトルがQ方向の光が透過する。液晶層11においては、旋光性が失われているので、Q方向に電界ベクトルを有するバックライト光B(λ10)が上偏光板3に入射する。上偏光板3の透過軸はP方向であり、吸収軸はQ方向なので、上偏光板3によりバックライト光B(λ10)は遮断されて、外部へ出射されない。即ち、液晶層11がオン状態のときは、外部から入射した入射光I(λ1〜λ10)に基づく反射光R(λ1〜λ10)が出射される。反射光は鏡面の色調を有する。従って、入射光に基づく散乱光S(λ10)とバックライト光B(λ10)が加法混色された、波長λ10の色調を背景に、反射光Rx(λ1〜λ10)の鏡面反射に基づく文字又は図形を見ることができる。なお、光源7の発光色、及び選択波長吸収板5の色を選定することにより、多様なデザインの表示面を構成することができる。また、上偏光板3及び反射偏光板4の透過軸を、相対的に90°回転させることにより、上記表示状態を反転させることができる。
【0034】
以上、図1〜図4を用いて説明した実施例1において、散乱光Sxは、上偏光板3、反射偏光板4、選択波長吸収板5及び光散乱面12において減衰するので、光強度が弱くなる。従って、光源7を点灯した透過型表示においては、背景は、バックライト光Bxが支配的となり、その色調は、バックライト光B(λ1〜λ10)と選択波長吸収板5の光透過特性により定まる。また、上記実施例1において、液晶層11が90°ツイストするTN液晶パネルについて説明したが、これを、180°以上ツイストするSTN液晶パネルや、IPS型の液晶パネルを使用することができる。また、液晶層11に電界を印加しないときが白レベルとなるノーマリーホワイト型の液晶表示装置1について説明したが、これに代えて、上偏光板3又は反射偏光板4の設置角度を90°回転させたノーマリーブラック型とすることができる。この場合は、既に説明したとおり、電圧印加状態と無印加状態が反転する。
【0035】
(実施例2)図5は、本発明の実施例2に係る液晶表示装置1の模式的な縦断面図である。本実施例においては、選択波長吸収板5としてECB液層セルを使用し、また、光源7として、赤(R)緑(G)青(B)の発光色を独立に制御可能としている。同一の部分又は同一の機能を有する部分については同一の符号を付した。
【0036】
図5に示すように、液晶表示装置1は、液晶パネル2と、液晶パネル2の上部の表示視認側に設けた上偏光板3と、反対側に設けた反射偏光板4と、その下部に設けた選択波長吸収板5と、その下部に設けた導光板6と、導光板6に光を導入するための光源7とから構成されている。液晶パネル2は、下透明基板8と上透明基板9とをシール材10を介して貼り合わせ、その間隙に液晶層11が構成されている。導光板6の上面又は下面には図示しない光散乱面12が形成されている。
【0037】
選択波長吸収板5は、ECB液晶セルにより構成されている。ECB液晶セルは、2枚の透明基板21a、21bを、シール材23を介して貼り合わせ、その間隙に液晶層24が充填した構成を備えている。2枚の透明基板21a、21bの内面には、ITO、ZnO等からなる透明電極が全面に形成されている。2枚の透明基板21a、21bの外面には、偏光板20a、20bが貼り付けられている。液晶層24は、液晶分子が透明電極21bの上面から透明電極21aの下面に向けて、一様な方向、又は、ツイストするように配向している。液晶層24の上面の液晶分子の配列方向、及び、下面の液晶分子の配列方向に対して、偏光板20bの偏光方向(透過軸方向)、及び、偏光板20aの偏光方向は概ね45°の角度をなす。このECB液晶セルに光が入射すると、液晶分子の複屈折性により、透過光に波長選択性が現れる。更に、透明電極22a、22bに駆動電圧25を与えることにより、液晶層24内の複屈折率を変化させて、透過光の色を変化させることができる。
【0038】
更に、光源7は、RGBの発光源を備え、駆動電流26a、26g、26bを独立に制御可能としている。具体的には、R−LED7R、G−LED7G、B−LED7Bを備えている。
【0039】
液晶表示装置1を反射型表示として使用する場合に、駆動電圧25を変化させることにより、表示面の背景色を任意に変更することができる。また、発光型表示として使用する場合に、駆動電流26a、26g、26bを調整することにより、好みの色を発光させることができる。また、ECB液晶セルに与える駆動電圧25と、光源7に与える駆動電流26a、26b、26bを適宜選択することにより、利用者は、表示面を好みの色に設定することができ、変化に富んだ多様な表示を得ることができる。
【0040】
なお、以上説明した本発明による液晶表示装置1は上記構成に限定されず、例えば、液晶パネル2と反射偏光板4との間に、反射偏光板4の透過軸方向と同じ透過軸方向を有する偏光板を挿入してもよいし、液晶パネル2と導光板6との間に光学フィルム等を挿入する構成であってもよい。また、バックライトとして導光板6の側面に光源7を設置したサイドミラー型に代えて、エレクトロルミネッセンスや冷陰極管による光源とすることができることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係る液晶表示装置の模式的な縦断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る液晶表示装置の動作原理を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施例に係る液晶表示装置の模式的な縦断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る液晶表示装置の動作原理を説明する説明図である。
【図5】本発明の実施例に係る液晶表示装置の模式的な縦断面図である。
【図6】従来公知の液晶パネルの模式的な縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 液晶表示装置
2 液晶パネル
3 上偏光板
4 反射偏光板
5 選択波長吸収板
6 導光板
7 光源
8 下透明基板
10 シール材
11 液晶層
12 光散乱面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の基板間に液晶層が封入された液晶パネルと、前記液晶パネルの表示視認側である上部に設置された偏光板と、前記液晶パネルの下部に設置された反射偏光板と、前記反射偏光板の下部に設置された選択波長吸収板と、前記選択波長吸収板の下部に設置された光散乱面とから構成される液晶表示装置。
【請求項2】
前記選択波長吸収板の下部に設置される導光板と、前記導光板に光を導入する光源とを更に備え、前記導光板の上面又は下面が前記光散乱面であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記選択波長吸収板は、電界制御複屈折型の液晶セルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記光源は、互いに発光色を異にする複数の発光源からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−192961(P2009−192961A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35384(P2008−35384)
【出願日】平成20年2月16日(2008.2.16)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】