液晶表示装置
【課題】表示の指向性の問題を生じないで、表示装置の明るさを向上した液晶表示装置の実現。
【解決手段】積層した異なる選択反射波長を有する反射型の複数のコレステリック液晶パネル10B、10G、10Rを備え、複数のコレステリック液晶パネルのうち観察側に最も近いパネル10Bは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱い液晶表示装置。配向性は、ラビング処理の有無および密度、光配向膜の光照射の有無および強度に関係し、パネルの散乱性と相関がある。
【解決手段】積層した異なる選択反射波長を有する反射型の複数のコレステリック液晶パネル10B、10G、10Rを備え、複数のコレステリック液晶パネルのうち観察側に最も近いパネル10Bは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱い液晶表示装置。配向性は、ラビング処理の有無および密度、光配向膜の光照射の有無および強度に関係し、パネルの散乱性と相関がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源が無くても表示保持可能で、電気的に書換えが可能な電子ペーパーの技術分野が急速に発展している。電子ペーパーは、電源を切断してもメモリ表示可能な超低消費電力と目にやさしく、疲れない反射型の表示と紙のような可撓性のあるフレキシブルで薄型の表示体の実現を目指している。電子ペーパーの電子ブック、電子新聞、電子ポスター等への応用が進められている。表示方式としては、帯電粒子を空気中や液体中で移動させる電気泳動方式、二色に色分けした帯電粒子を回転させるツイストボール方式、有機EL方式、液晶層の干渉反射を利用した双安定性のある選択反射型のコレステリック液晶方式の開発が進められている。
【0003】
このような各種方式の中で、コレステリック液晶方式は、「メモリ機能」、「低電力化」、「カラー化」などの面で優位である。特に、コレステリック液晶方式は、カラー表示においては、圧倒的に有利である。コレステリック液晶方式以外の方式は、画素ごとに3色に塗り分けたカラーフィルタを配置させなければならないため、明るさが最大でも3分割に相当した1/3になり、現実的とはいえない。これに対して、コレステリック液晶方式は、液晶の干渉で色を反射するため、積層するだけでカラー表示が可能であり、50パーセントに近い又はそれ以上の明るさが得られるという利点がある。
【0004】
コレステリック液晶パネルを積層した電子ペーパーを代表とする反射型液晶表示装置では、表示面の明るさおよびコントラスト比、色純度の向上が求められている。高明度化を実現する方法の一つとして、液晶界面に液晶分子の配向を規制する配向規制力を加える方法がある。配向規制力を加えて配向性を強めることで、プレーナ状態での螺旋ピッチの螺旋軸が揃って選択反射光の方向性が高くなるため、特定方向(観察方向)への反射率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−147444号公報
【特許文献2】特開2002−287166号公報
【特許文献3】WO2007/007384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、液晶の配向性を強めることでプレーナ状態での明るさが増加する一方で、明るさが見る方向により大きく変化するようになるという表示の指向性の問題を生じる。また、表示の指向性の問題を生じないように液晶の配向性を弱くした場合、表示装置の明るさが十分に得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の一観点によれば、積層した異なる選択反射波長を有する反射型の複数のコレステリック液晶パネルを備え、複数のコレステリック液晶パネルのうち観察側に最も近いパネルは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱い液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記の観点によれば、液晶表示装置において、見る方向による明るさの差を増加せずに、すなわち表示の指向性の問題を悪化させずに、表示の明るさが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの断面図を示す図である。
【図2】図2は、コレステリック液晶層の指向性を測定する測定条件を示す図である。
【図3】図3は、ラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルの指向性を示す図である。
【図4】図4は、ラビング処理を施したパネルの指向性を、単層で測定した結果および積層パネルの指向性を示す図である。
【図5】図5は、下層パネルで反射された光が、上層パネルで散乱される様子を示す図である。
【図6】図6は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。
【図7】図7は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図である。
【図8】図8は、異なる条件でラビング処理したパネルの散乱性を示す図である。
【図9】図9は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの製造方法を示す図である。
【図10】図10は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの製造方法を示す図である。
【図11】図11は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。
【図12】図12は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1について、図1から図9を参照して説明する。
【0012】
図1の(A)は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの断面図を示す図であり、図1の(B)は、1枚のパネルの断面を拡大して示す図である。
【0013】
図1の(A)に示すように、表示面側から順に、青色(B)のパネル10B、緑色(G)のパネル10G、赤色(R)のパネル10Rを積層し、カラー表示を可能にしている。図示していないが、3枚のパネル10B、10G、10Rは、例えばフレキシブルケーブルを介して駆動回路に接続され、駆動回路が各パネルの電極に駆動電圧を印加することにより、各パネルの電極に対応したセルを明状態と暗状態にすることができ、画像を表示できる。各パネルは、マトリクス電極を備え,ドットマトリクス表示が可能である。
【0014】
各パネル10B、10G、10Rは、透明な基板3及び4の間にそれぞれ液晶層1B、1G、1Rを挟持した構成を有し、液晶層はシール6で封止されている。パネル10B、10G、10Rは、表示面側からこの順に配置され、パネル10B、10Gは第1の接着層7で接着され、パネル10G、10Rは、第2の接着層8で接着されている。パネル10Rの表示面側と反対側の基板の外側の面には、黒色の光吸収層5が設けられている。なお、第1の接着層7を、青色の光を遮断し、緑色および赤色の光を透過するBカットフィルタとし、第2の接着層8を、緑色の光を遮断し、赤色の光を透過するGカットフィルタとしてもよい。
【0015】
さらに、図1の(B)に示すように、各パネルは、透明な基板3及び4上に形成された電極層11および12と、電極層11および12上に形成された配向層13および14と、を有する。液晶層1は、配向層13および14の間に挟持される。
【0016】
パネル10Bを明(反射)状態にし、パネル10Gおよび10Rを暗(透過)状態にすると青色の表示が行われる。同様に、パネル10Gを明(反射)状態にし、パネル10Bおよび10Rを暗(透過)状態にすると緑色の表示が行われ、パネル10Rを明(反射)状態にし、パネル10Bおよび10Gを暗(透過)状態にすると赤色の表示が行われる。更に、パネル10Bおよび10Gを明(反射)状態にし、パネル10Rを暗(透過)状態にするとシアン色の表示が行われ、パネル10Gおよび10Rを明(反射)状態にし、パネル10Bを暗(透過)状態にすると黄色の表示が行われ、パネル10Bおよび10Rを明(反射)状態にし、パネル10Gを暗(透過)状態にするとマゼンタ色の表示が行われる。また、パネル10B、10Gおよび10Rをすべて明(反射)状態にすると、白色の表示が行われ、パネル10B、10Gおよび10Rをすべて暗(透過)状態にすると、黒色の表示が行われる。
【0017】
コレステリック液晶による反射型液晶表示方式では、上記のようにプレーナ状態を「明状態」、フォーカルコニック状態を「暗状態」として表示に利用する。表示特性としての明度は、プレーナ状態(明状態)の反射率が大きいほど良好となり、コントラストはフォーカルコニック状態(暗状態)での透明度が高いほど良好となる。
【0018】
実施例1の液晶表示装置の積層パネルでは、観察側にある2枚のパネル10Bおよび10Gの配向性が弱く、観察側からもっとも遠いパネル10Rの配向性が強い。実施例1では、2枚のパネル10Bおよび10Gにはラビング処理を施さず、パネル10Rにのみラビング処理を施している。
【0019】
配向性を異ならせる方法としては、例えば基板の液晶側に配向膜を形成し、配向膜の表面にラビング処理を施す方法や、基板の液晶側に光配向膜を形成し、光配向膜の表面に紫外光を照射する方法、又はそれらを組み合わせたハイブリッド方法がある。配向膜又は光配向膜を設けるか設けないかでも配向性が異なり、配向膜のラビング処理の密度又は光配向膜への紫外光の照射強度によっても配向性が異なる。実施例1では、ラビング処理の有無で配向性を異ならせているが、他の方法を適用して配向性を異ならせてもよい。
【0020】
このような方法で、コレステリック液晶層の配向性を高めると、言い換えれば配向膜とコレステリック液晶層との界面に配向規制力を加えることで、プレーナ状態での液晶は、配向膜との界面側で同じ方向に配向し、モノドメインとなる。モノドメインになると、選択反射光はより指向性を持つようになる。まず、指向性について説明する。
【0021】
図2は、コレステリック液晶層の指向性を測定する測定条件を示す図であり、(A)は測定条件を斜視図で、(B)は断面図で示す。
【0022】
指向性の測定は、例えば回転可能なステージを利用する。ここで、X軸とY軸が規定する平面がステージの載置面に対応し、Z軸は載置面に垂直であるとする。そして、ステージの回転角度θは、X軸からの角度で表す。
【0023】
プレーナ状態のパネル10をステージに載置し、例えばZ軸から30°傾いた方向Iから入射光を照射し、Z軸方向の反射光の強度Y値を測定する。この測定をステージの回転角度θを変えながらステージを1回転して行う。
【0024】
図3は、ラビング処理を施していない3枚のパネル10B、10Gおよび10Rを積層した積層パネルの指向性を示す図である。このグラフは、3枚のパネル10B、10Gおよび10Rをプレーナ状態(明状態)にして、図2の測定条件で白色光を照射して測定した結果である。明るさは、最大値が1となるように変換している。明るさの最大値と最小値の差は、約0.2である。ここでは、最大値と最小値の差の最大値に対する比率で指向性を表し、この比率が小さいほど指向性が低く良好であるとする。
【0025】
図4の(A)は、ラビング処理を施したパネル10B、10Gおよび10Rの指向性を、単層で測定した結果を示し、Bがパネル10Bの指向性を、Gがパネル10Gの指向性を、Rがパネル10Rの指向性を、示す。パネル10Bは反射の中心波長が480nmであり、パネル10Gは反射の中心波長が550nmであり、パネル10Rは反射の中心波長が650nmである。Y値は、各パネルの最大値が1となるように変換している。したがって、パネル10B、10Gおよび10Rは、それぞれ青色、緑色および赤色に見える。
【0026】
図4の(A)に示すように、Y値は、θ=30および210°付近で極大値をとり、120および300°付近で極小値をとる。そして、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10B、10G、10Rの順に大きくなり、パネル10Rでは最大値は最小値の2倍である。
【0027】
図4の(B)は、上記のパネル10B、10Gおよび10Rを、図1に示す10R、10G、10Bの順に積層した積層パネルの指向性を示す。Bはパネル10Bをプレーナ状態(明状態)にしてパネル10Gおよび10Rをフォーカルコニック状態(暗状態)にした時の指向性を、Gはパネル10Gをプレーナ状態にしてパネル10Bおよび10Rをフォーカルコニック状態にした時の指向性を、Rはパネル10Rをプレーナ状態にしてパネル10Bおよび10Gをフォーカルコニック状態にした時の指向性を、それぞれ示す。したがって、積層パネルは、Bで示す指向性を測定している時には青色に見え、Gで示す指向性を測定している時には緑色に見え、Rで示す指向性を測定している時には赤色に見える。
【0028】
図4の(B)に示すように、積層パネルでは、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10R、10G、10Bの順に大きいが、差は小さい。特に、赤色については、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10Rを単層で測定した時に比べて大幅に小さくなっている。緑色についても、赤色ほどではないが、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10Gを単層で測定した時に比べて小さくなっている。
【0029】
上記のような単層と積層の指向性の変化は、光が液晶パネルを透過する際、液晶層が光を散乱するためと考えられる。
【0030】
図5は、下層パネル10Yで反射された光が、上層パネル10Xで散乱される様子を示す。下層パネル10Yで反射された光は、上層パネル10Xを透過する際に、上層パネル10Xの液晶層で散乱される。上層パネル10Xを透過して下層パネル10Yに入射する光も、上層パネル10Xを透過する際に同様に散乱され、散乱された光が下層パネル10Yに入射することになる。したがって、下層パネル10Yをプレーナ状態にした時の指向性は、下層パネル10Y自体の指向性だけでなく、上層パネル10Xの散乱、言い換えれば上層パネル10Xの指向性に影響される。言い換えれば、上層パネル10Xの指向性が弱ければ、下層パネル10Yをプレーナ状態にした時の指向性も弱くなる。
【0031】
このように、下層パネルの配向性を強くしてパネルを明るくした場合でも、上層パネルの指向性を弱くすれば、下層パネルをプレーナ状態にした時の指向性はあまり悪化しない。そこで、上記のように、実施例1の液晶表示装置の積層パネルでは、観察側にある2枚のパネル10Bおよび10Gの配向性を弱く、観察側からもっとも遠いパネル10Rの配向性を強くしている。これにより、パネル10Rの反射率が高くなり明るさおよびコントラストが向上するが、指向性の悪化は少なく、問題にならない。
【0032】
図6は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。図4の(B)と比較して明らかなように、3枚のパネルにラビング処理を施して配向性を高くした場合に比べて、Y値の変化が小さくなっており、特にパネル10Bまたは10Gをプレーナ状態にした時の変化が小さくなっていることが分かる。また、白色光での測定値は、図6の3つのグラフB、GおよびRの平均にほぼ等しく、図3のラビング処理を施していない3枚のパネル10B、10Gおよび10Rを積層した積層パネルの指向性と同程度の指向性が得られることが分かる。
【0033】
図7は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図であり、Qが波長に対する反射率の変化を示し、Pがラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルの反射率の変化を示す。この測定は、3枚のパネル10B、10Gおよび10Rをすべてプレーナ状態にして測定した。
【0034】
図7に示すように、波長580nmから720nmの間で、実施例1の反射率が高くなっている。
【0035】
以上説明したように、実施例1の液晶表示装置の積層パネルは、ラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルと同程度の指向性を維持しながら、表示の明るさ、特に赤色の明るさが向上する。また、フォーカルコニック状態(暗状態)での明るさは変化しないので、表示の明るさが高くなった分コントラストが向上する。また、ラビング処理を施した3枚のパネルを積層した積層パネルと比べると、指向性が向上する。
【0036】
前述のように、コレステリック液晶層の配向性を高めると指向性が高くなる。次に、コレステリック液晶層の配向性と透過散乱性の関係を説明する。
【0037】
前述のように、配向性を異ならせる方法としては、例えば基板の液晶側に配向膜を形成し、配向膜の表面にラビング処理を施す方法や、基板の液晶側に光配向膜を形成し、光配向膜の表面に紫外光を照射する方法、又はそれらを組み合わせたハイブリッド方法がある。配向膜又は光配向膜を設けるか設けないかでも配向性が異なり、配向膜のラビング処理の密度又は光配向膜への紫外光の照射強度によっても配向性が異なる。
【0038】
図8は、異なる条件でラビング処理したパネルの散乱性を示す図である。JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」は、透明材料の曇り具合、言い換えれば散乱性を表す「ヘーズ値」の測定方法を規定しており、これに準拠した測定器が市販されている。ここでは、この規格に準拠した測定器を使用して、全透過率、散乱透過率および平行光透過率を測定した。図8では、全透過率、散乱透過率および平行光透過率を、点線、実線および破線で示す。
【0039】
配向性の“0”は、配向膜を設けたが、ラビング処理を行わないパネルである。配向性の“20”、“40”、“60”、“90”は、同一の押し込み量(0.4mm程度)およびステージ速度(300mm/s程度)で、ローラ回転数を20、40、60、90rpmと異ならせてラビング処理したパネルである。他の条件が同じで、ローラ回転数を増加すると配向性が高くなり、ある程度以上のローラ回転数では配向性が飽和することが知られている。同様のことが押し込み量およびステージ速度についても知られており、押し込み量が増加すると配向性が高くなり、ステージ速度が遅くなると配向性が高くなる。
【0040】
図8から、配向性と散乱性は、相関関係を有することが分かる。従って、実施例1の液晶表示装置の積層パネルは、観察側にある2枚のパネル10Bおよび10Gの散乱性を高くし、観察側からもっとも遠いパネル10Rの散乱性を低くしていることになる。
【0041】
次に、実施例1の液晶表示装置の積層パネル製造方法を説明する。
【0042】
図9及び図10は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの製造方法を示す図である。
【0043】
第1の青色パネル10Bの表示面と反対側の基板4B、第2の緑色パネル10Gの表示面と反対側の基板4G及び第3の赤色パネル10Rの表示面と反対側の基板4Rの上に、透明電極層12及び配向膜14を形成する。なお、基板4Rの外面には黒色の光吸収層5を形成する。また、第1の青色パネル10Bの表示面側の基板3B、第2の緑色パネル10Gの表示面側の基板3G及び第3の赤色パネル10Rの表示面側の基板3Rの上に、それぞれ透明電極層11及び配向膜13を形成する。
【0044】
図示のように、ラビング装置のローラ31で、基板3Rの配向膜13および基板4Rの配向膜21の表面をラビング処理するが、基板3B、3G、4B及び4Gの表面はラビング処理しない。基板3Rおよび基板4Rの表面のラビング処理は、例えばローラ31を60rpm程度で回転させ、ローラ31の押し込み量を0.4mm程度、ステージ速度を300mm/s程度にして、1回処理する。ここで、ラビング密度を、例えば、ラビング密度=回数×押し込み量×(1+(2π×ローラ径×回転数/60×ステージ速度))で表す。基板3B、3G、4Bおよび4Gの表面はラビング処理しないので、これらの基板の配向規制力は、基板3Rおよび4Rの配向規制力より小さい。
【0045】
次の工程では、上記の基板4B、基板4G及び基板4Rの上にシール6を設け、スペーサ25を散布する。そして、基板3B、3G、3Rを、図示のように、基板4G及び基板4Rに貼り付ける。
【0046】
次の工程では、このようにして得られたパネル内の空間に各色に対応したコレステリック液晶を注入して、封止することにより、第1から第3のパネル10B、10G及び10Rが得られる。
【0047】
次に、図10に示すように、第1から第3のパネル10B、10G及び10Rを、各パネルの電極位置を合わせた上で、接着層7及び8を介して積層して固定する。以上のようにして、反射型液晶表示素子を製造する。
【0048】
上記の反射型液晶表示素子は、第1および第2の青色および緑色パネル10Bおよび10Gは、ラビング処理が施されていないので配向性が小さい。第3の赤色パネル10Rは、ラビング処理が施されているので配向性が大きい。
【実施例2】
【0049】
実施例2について、図11および図12を参照して説明する。
【0050】
実施例2の液晶表示装置の積層パネルは、図1に示した実施例1と同様の構成を有するが、実施例2では、観察側にある1枚のパネル10Bの配向性が弱く、観察側から遠い2枚のパネル10Gおよび10Rの配向性が強いことが、実施例1と異なる。具体的には、実施例2では、2枚のパネル10Gおよび10Rに、実施例1のパネル10Rと同じ条件でラビング処理を行い、パネル10Bにはラビング処理を施していない。
【0051】
図11は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。図6と比較して明らかなように、実施例1に比べて、緑色(550nm)の変化が大きくなっており、指向性が若干劣化している。
【0052】
図12は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図であり、Rが実施例2の積層パネルの反射率を示す。参考に、実施例1の反射率をQで、ラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルの反射率をPで示す。この測定は、3枚のパネル10B、10Gおよび10Rをすべてプレーナ状態にして測定した。
【0053】
図7に示すように、波長500nmから600nmの間で、実施例2の反射率が実施例1の反射率より高くなっている。
【0054】
以上、実施例1および2を説明したが、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。例えば、実施例1および2では、3枚のパネルを積層したが、2枚または4枚以上のパネルを積層した積層パネルに、実施例1および2の構成を適用してもよい。さらに、実施例1および2では、観察側からパネル10B、10G、10Rの順に配置したが、この順番を変更することも可能であり、その場合でも、観察側に配置するパネルの配向性を低くする。
【0055】
また、実施例1および2では、配向性の違いはラビング処理の有無で実現したが、ラビング処理の密度を異ならせるようにしてもよい。また、観察側から1番目のパネルにはラビング処理を施さず、2番目のパネルには弱いラビング処理を施し、3番目のパネルには強いラビング処理を施すようにしてもよい。
【0056】
さらに、前述のように、配向性を異ならせる方法としては、ラビング処理以外にも、光配向膜を形成して紫外光を照射する方法があり、これを利用して配向性を異ならせてもよい。また、光配向膜とラビング処理を組み合わせたハイブリッド処理で、配向性を異ならせてもよい。
【0057】
さらに、前述のように配向性と散乱性は相関を有し、散乱の大きなパネルを観察側に配置することにより同様の効果が得られると考えられるので、散乱性の高いパネル、言い換えればヘーズ値の大きなパネルを観察側に配置した積層パネルであればよい。
【0058】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0059】
1、1B,1G、1R 液晶層
10、10B,10G、10R コレステリック液晶パネル
3 、4 基板
11、12 電極層
13、14 配向層
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源が無くても表示保持可能で、電気的に書換えが可能な電子ペーパーの技術分野が急速に発展している。電子ペーパーは、電源を切断してもメモリ表示可能な超低消費電力と目にやさしく、疲れない反射型の表示と紙のような可撓性のあるフレキシブルで薄型の表示体の実現を目指している。電子ペーパーの電子ブック、電子新聞、電子ポスター等への応用が進められている。表示方式としては、帯電粒子を空気中や液体中で移動させる電気泳動方式、二色に色分けした帯電粒子を回転させるツイストボール方式、有機EL方式、液晶層の干渉反射を利用した双安定性のある選択反射型のコレステリック液晶方式の開発が進められている。
【0003】
このような各種方式の中で、コレステリック液晶方式は、「メモリ機能」、「低電力化」、「カラー化」などの面で優位である。特に、コレステリック液晶方式は、カラー表示においては、圧倒的に有利である。コレステリック液晶方式以外の方式は、画素ごとに3色に塗り分けたカラーフィルタを配置させなければならないため、明るさが最大でも3分割に相当した1/3になり、現実的とはいえない。これに対して、コレステリック液晶方式は、液晶の干渉で色を反射するため、積層するだけでカラー表示が可能であり、50パーセントに近い又はそれ以上の明るさが得られるという利点がある。
【0004】
コレステリック液晶パネルを積層した電子ペーパーを代表とする反射型液晶表示装置では、表示面の明るさおよびコントラスト比、色純度の向上が求められている。高明度化を実現する方法の一つとして、液晶界面に液晶分子の配向を規制する配向規制力を加える方法がある。配向規制力を加えて配向性を強めることで、プレーナ状態での螺旋ピッチの螺旋軸が揃って選択反射光の方向性が高くなるため、特定方向(観察方向)への反射率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−147444号公報
【特許文献2】特開2002−287166号公報
【特許文献3】WO2007/007384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、液晶の配向性を強めることでプレーナ状態での明るさが増加する一方で、明るさが見る方向により大きく変化するようになるという表示の指向性の問題を生じる。また、表示の指向性の問題を生じないように液晶の配向性を弱くした場合、表示装置の明るさが十分に得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の一観点によれば、積層した異なる選択反射波長を有する反射型の複数のコレステリック液晶パネルを備え、複数のコレステリック液晶パネルのうち観察側に最も近いパネルは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱い液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記の観点によれば、液晶表示装置において、見る方向による明るさの差を増加せずに、すなわち表示の指向性の問題を悪化させずに、表示の明るさが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの断面図を示す図である。
【図2】図2は、コレステリック液晶層の指向性を測定する測定条件を示す図である。
【図3】図3は、ラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルの指向性を示す図である。
【図4】図4は、ラビング処理を施したパネルの指向性を、単層で測定した結果および積層パネルの指向性を示す図である。
【図5】図5は、下層パネルで反射された光が、上層パネルで散乱される様子を示す図である。
【図6】図6は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。
【図7】図7は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図である。
【図8】図8は、異なる条件でラビング処理したパネルの散乱性を示す図である。
【図9】図9は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの製造方法を示す図である。
【図10】図10は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの製造方法を示す図である。
【図11】図11は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。
【図12】図12は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1について、図1から図9を参照して説明する。
【0012】
図1の(A)は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの断面図を示す図であり、図1の(B)は、1枚のパネルの断面を拡大して示す図である。
【0013】
図1の(A)に示すように、表示面側から順に、青色(B)のパネル10B、緑色(G)のパネル10G、赤色(R)のパネル10Rを積層し、カラー表示を可能にしている。図示していないが、3枚のパネル10B、10G、10Rは、例えばフレキシブルケーブルを介して駆動回路に接続され、駆動回路が各パネルの電極に駆動電圧を印加することにより、各パネルの電極に対応したセルを明状態と暗状態にすることができ、画像を表示できる。各パネルは、マトリクス電極を備え,ドットマトリクス表示が可能である。
【0014】
各パネル10B、10G、10Rは、透明な基板3及び4の間にそれぞれ液晶層1B、1G、1Rを挟持した構成を有し、液晶層はシール6で封止されている。パネル10B、10G、10Rは、表示面側からこの順に配置され、パネル10B、10Gは第1の接着層7で接着され、パネル10G、10Rは、第2の接着層8で接着されている。パネル10Rの表示面側と反対側の基板の外側の面には、黒色の光吸収層5が設けられている。なお、第1の接着層7を、青色の光を遮断し、緑色および赤色の光を透過するBカットフィルタとし、第2の接着層8を、緑色の光を遮断し、赤色の光を透過するGカットフィルタとしてもよい。
【0015】
さらに、図1の(B)に示すように、各パネルは、透明な基板3及び4上に形成された電極層11および12と、電極層11および12上に形成された配向層13および14と、を有する。液晶層1は、配向層13および14の間に挟持される。
【0016】
パネル10Bを明(反射)状態にし、パネル10Gおよび10Rを暗(透過)状態にすると青色の表示が行われる。同様に、パネル10Gを明(反射)状態にし、パネル10Bおよび10Rを暗(透過)状態にすると緑色の表示が行われ、パネル10Rを明(反射)状態にし、パネル10Bおよび10Gを暗(透過)状態にすると赤色の表示が行われる。更に、パネル10Bおよび10Gを明(反射)状態にし、パネル10Rを暗(透過)状態にするとシアン色の表示が行われ、パネル10Gおよび10Rを明(反射)状態にし、パネル10Bを暗(透過)状態にすると黄色の表示が行われ、パネル10Bおよび10Rを明(反射)状態にし、パネル10Gを暗(透過)状態にするとマゼンタ色の表示が行われる。また、パネル10B、10Gおよび10Rをすべて明(反射)状態にすると、白色の表示が行われ、パネル10B、10Gおよび10Rをすべて暗(透過)状態にすると、黒色の表示が行われる。
【0017】
コレステリック液晶による反射型液晶表示方式では、上記のようにプレーナ状態を「明状態」、フォーカルコニック状態を「暗状態」として表示に利用する。表示特性としての明度は、プレーナ状態(明状態)の反射率が大きいほど良好となり、コントラストはフォーカルコニック状態(暗状態)での透明度が高いほど良好となる。
【0018】
実施例1の液晶表示装置の積層パネルでは、観察側にある2枚のパネル10Bおよび10Gの配向性が弱く、観察側からもっとも遠いパネル10Rの配向性が強い。実施例1では、2枚のパネル10Bおよび10Gにはラビング処理を施さず、パネル10Rにのみラビング処理を施している。
【0019】
配向性を異ならせる方法としては、例えば基板の液晶側に配向膜を形成し、配向膜の表面にラビング処理を施す方法や、基板の液晶側に光配向膜を形成し、光配向膜の表面に紫外光を照射する方法、又はそれらを組み合わせたハイブリッド方法がある。配向膜又は光配向膜を設けるか設けないかでも配向性が異なり、配向膜のラビング処理の密度又は光配向膜への紫外光の照射強度によっても配向性が異なる。実施例1では、ラビング処理の有無で配向性を異ならせているが、他の方法を適用して配向性を異ならせてもよい。
【0020】
このような方法で、コレステリック液晶層の配向性を高めると、言い換えれば配向膜とコレステリック液晶層との界面に配向規制力を加えることで、プレーナ状態での液晶は、配向膜との界面側で同じ方向に配向し、モノドメインとなる。モノドメインになると、選択反射光はより指向性を持つようになる。まず、指向性について説明する。
【0021】
図2は、コレステリック液晶層の指向性を測定する測定条件を示す図であり、(A)は測定条件を斜視図で、(B)は断面図で示す。
【0022】
指向性の測定は、例えば回転可能なステージを利用する。ここで、X軸とY軸が規定する平面がステージの載置面に対応し、Z軸は載置面に垂直であるとする。そして、ステージの回転角度θは、X軸からの角度で表す。
【0023】
プレーナ状態のパネル10をステージに載置し、例えばZ軸から30°傾いた方向Iから入射光を照射し、Z軸方向の反射光の強度Y値を測定する。この測定をステージの回転角度θを変えながらステージを1回転して行う。
【0024】
図3は、ラビング処理を施していない3枚のパネル10B、10Gおよび10Rを積層した積層パネルの指向性を示す図である。このグラフは、3枚のパネル10B、10Gおよび10Rをプレーナ状態(明状態)にして、図2の測定条件で白色光を照射して測定した結果である。明るさは、最大値が1となるように変換している。明るさの最大値と最小値の差は、約0.2である。ここでは、最大値と最小値の差の最大値に対する比率で指向性を表し、この比率が小さいほど指向性が低く良好であるとする。
【0025】
図4の(A)は、ラビング処理を施したパネル10B、10Gおよび10Rの指向性を、単層で測定した結果を示し、Bがパネル10Bの指向性を、Gがパネル10Gの指向性を、Rがパネル10Rの指向性を、示す。パネル10Bは反射の中心波長が480nmであり、パネル10Gは反射の中心波長が550nmであり、パネル10Rは反射の中心波長が650nmである。Y値は、各パネルの最大値が1となるように変換している。したがって、パネル10B、10Gおよび10Rは、それぞれ青色、緑色および赤色に見える。
【0026】
図4の(A)に示すように、Y値は、θ=30および210°付近で極大値をとり、120および300°付近で極小値をとる。そして、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10B、10G、10Rの順に大きくなり、パネル10Rでは最大値は最小値の2倍である。
【0027】
図4の(B)は、上記のパネル10B、10Gおよび10Rを、図1に示す10R、10G、10Bの順に積層した積層パネルの指向性を示す。Bはパネル10Bをプレーナ状態(明状態)にしてパネル10Gおよび10Rをフォーカルコニック状態(暗状態)にした時の指向性を、Gはパネル10Gをプレーナ状態にしてパネル10Bおよび10Rをフォーカルコニック状態にした時の指向性を、Rはパネル10Rをプレーナ状態にしてパネル10Bおよび10Gをフォーカルコニック状態にした時の指向性を、それぞれ示す。したがって、積層パネルは、Bで示す指向性を測定している時には青色に見え、Gで示す指向性を測定している時には緑色に見え、Rで示す指向性を測定している時には赤色に見える。
【0028】
図4の(B)に示すように、積層パネルでは、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10R、10G、10Bの順に大きいが、差は小さい。特に、赤色については、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10Rを単層で測定した時に比べて大幅に小さくなっている。緑色についても、赤色ほどではないが、Y値の最大値と最小値の差は、パネル10Gを単層で測定した時に比べて小さくなっている。
【0029】
上記のような単層と積層の指向性の変化は、光が液晶パネルを透過する際、液晶層が光を散乱するためと考えられる。
【0030】
図5は、下層パネル10Yで反射された光が、上層パネル10Xで散乱される様子を示す。下層パネル10Yで反射された光は、上層パネル10Xを透過する際に、上層パネル10Xの液晶層で散乱される。上層パネル10Xを透過して下層パネル10Yに入射する光も、上層パネル10Xを透過する際に同様に散乱され、散乱された光が下層パネル10Yに入射することになる。したがって、下層パネル10Yをプレーナ状態にした時の指向性は、下層パネル10Y自体の指向性だけでなく、上層パネル10Xの散乱、言い換えれば上層パネル10Xの指向性に影響される。言い換えれば、上層パネル10Xの指向性が弱ければ、下層パネル10Yをプレーナ状態にした時の指向性も弱くなる。
【0031】
このように、下層パネルの配向性を強くしてパネルを明るくした場合でも、上層パネルの指向性を弱くすれば、下層パネルをプレーナ状態にした時の指向性はあまり悪化しない。そこで、上記のように、実施例1の液晶表示装置の積層パネルでは、観察側にある2枚のパネル10Bおよび10Gの配向性を弱く、観察側からもっとも遠いパネル10Rの配向性を強くしている。これにより、パネル10Rの反射率が高くなり明るさおよびコントラストが向上するが、指向性の悪化は少なく、問題にならない。
【0032】
図6は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。図4の(B)と比較して明らかなように、3枚のパネルにラビング処理を施して配向性を高くした場合に比べて、Y値の変化が小さくなっており、特にパネル10Bまたは10Gをプレーナ状態にした時の変化が小さくなっていることが分かる。また、白色光での測定値は、図6の3つのグラフB、GおよびRの平均にほぼ等しく、図3のラビング処理を施していない3枚のパネル10B、10Gおよび10Rを積層した積層パネルの指向性と同程度の指向性が得られることが分かる。
【0033】
図7は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図であり、Qが波長に対する反射率の変化を示し、Pがラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルの反射率の変化を示す。この測定は、3枚のパネル10B、10Gおよび10Rをすべてプレーナ状態にして測定した。
【0034】
図7に示すように、波長580nmから720nmの間で、実施例1の反射率が高くなっている。
【0035】
以上説明したように、実施例1の液晶表示装置の積層パネルは、ラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルと同程度の指向性を維持しながら、表示の明るさ、特に赤色の明るさが向上する。また、フォーカルコニック状態(暗状態)での明るさは変化しないので、表示の明るさが高くなった分コントラストが向上する。また、ラビング処理を施した3枚のパネルを積層した積層パネルと比べると、指向性が向上する。
【0036】
前述のように、コレステリック液晶層の配向性を高めると指向性が高くなる。次に、コレステリック液晶層の配向性と透過散乱性の関係を説明する。
【0037】
前述のように、配向性を異ならせる方法としては、例えば基板の液晶側に配向膜を形成し、配向膜の表面にラビング処理を施す方法や、基板の液晶側に光配向膜を形成し、光配向膜の表面に紫外光を照射する方法、又はそれらを組み合わせたハイブリッド方法がある。配向膜又は光配向膜を設けるか設けないかでも配向性が異なり、配向膜のラビング処理の密度又は光配向膜への紫外光の照射強度によっても配向性が異なる。
【0038】
図8は、異なる条件でラビング処理したパネルの散乱性を示す図である。JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」は、透明材料の曇り具合、言い換えれば散乱性を表す「ヘーズ値」の測定方法を規定しており、これに準拠した測定器が市販されている。ここでは、この規格に準拠した測定器を使用して、全透過率、散乱透過率および平行光透過率を測定した。図8では、全透過率、散乱透過率および平行光透過率を、点線、実線および破線で示す。
【0039】
配向性の“0”は、配向膜を設けたが、ラビング処理を行わないパネルである。配向性の“20”、“40”、“60”、“90”は、同一の押し込み量(0.4mm程度)およびステージ速度(300mm/s程度)で、ローラ回転数を20、40、60、90rpmと異ならせてラビング処理したパネルである。他の条件が同じで、ローラ回転数を増加すると配向性が高くなり、ある程度以上のローラ回転数では配向性が飽和することが知られている。同様のことが押し込み量およびステージ速度についても知られており、押し込み量が増加すると配向性が高くなり、ステージ速度が遅くなると配向性が高くなる。
【0040】
図8から、配向性と散乱性は、相関関係を有することが分かる。従って、実施例1の液晶表示装置の積層パネルは、観察側にある2枚のパネル10Bおよび10Gの散乱性を高くし、観察側からもっとも遠いパネル10Rの散乱性を低くしていることになる。
【0041】
次に、実施例1の液晶表示装置の積層パネル製造方法を説明する。
【0042】
図9及び図10は、実施例1の液晶表示装置の積層パネルの製造方法を示す図である。
【0043】
第1の青色パネル10Bの表示面と反対側の基板4B、第2の緑色パネル10Gの表示面と反対側の基板4G及び第3の赤色パネル10Rの表示面と反対側の基板4Rの上に、透明電極層12及び配向膜14を形成する。なお、基板4Rの外面には黒色の光吸収層5を形成する。また、第1の青色パネル10Bの表示面側の基板3B、第2の緑色パネル10Gの表示面側の基板3G及び第3の赤色パネル10Rの表示面側の基板3Rの上に、それぞれ透明電極層11及び配向膜13を形成する。
【0044】
図示のように、ラビング装置のローラ31で、基板3Rの配向膜13および基板4Rの配向膜21の表面をラビング処理するが、基板3B、3G、4B及び4Gの表面はラビング処理しない。基板3Rおよび基板4Rの表面のラビング処理は、例えばローラ31を60rpm程度で回転させ、ローラ31の押し込み量を0.4mm程度、ステージ速度を300mm/s程度にして、1回処理する。ここで、ラビング密度を、例えば、ラビング密度=回数×押し込み量×(1+(2π×ローラ径×回転数/60×ステージ速度))で表す。基板3B、3G、4Bおよび4Gの表面はラビング処理しないので、これらの基板の配向規制力は、基板3Rおよび4Rの配向規制力より小さい。
【0045】
次の工程では、上記の基板4B、基板4G及び基板4Rの上にシール6を設け、スペーサ25を散布する。そして、基板3B、3G、3Rを、図示のように、基板4G及び基板4Rに貼り付ける。
【0046】
次の工程では、このようにして得られたパネル内の空間に各色に対応したコレステリック液晶を注入して、封止することにより、第1から第3のパネル10B、10G及び10Rが得られる。
【0047】
次に、図10に示すように、第1から第3のパネル10B、10G及び10Rを、各パネルの電極位置を合わせた上で、接着層7及び8を介して積層して固定する。以上のようにして、反射型液晶表示素子を製造する。
【0048】
上記の反射型液晶表示素子は、第1および第2の青色および緑色パネル10Bおよび10Gは、ラビング処理が施されていないので配向性が小さい。第3の赤色パネル10Rは、ラビング処理が施されているので配向性が大きい。
【実施例2】
【0049】
実施例2について、図11および図12を参照して説明する。
【0050】
実施例2の液晶表示装置の積層パネルは、図1に示した実施例1と同様の構成を有するが、実施例2では、観察側にある1枚のパネル10Bの配向性が弱く、観察側から遠い2枚のパネル10Gおよび10Rの配向性が強いことが、実施例1と異なる。具体的には、実施例2では、2枚のパネル10Gおよび10Rに、実施例1のパネル10Rと同じ条件でラビング処理を行い、パネル10Bにはラビング処理を施していない。
【0051】
図11は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの指向性を示す図である。図6と比較して明らかなように、実施例1に比べて、緑色(550nm)の変化が大きくなっており、指向性が若干劣化している。
【0052】
図12は、実施例2の液晶表示装置の積層パネルの分光反射特性を示す図であり、Rが実施例2の積層パネルの反射率を示す。参考に、実施例1の反射率をQで、ラビング処理を施していない3枚のパネルを積層した積層パネルの反射率をPで示す。この測定は、3枚のパネル10B、10Gおよび10Rをすべてプレーナ状態にして測定した。
【0053】
図7に示すように、波長500nmから600nmの間で、実施例2の反射率が実施例1の反射率より高くなっている。
【0054】
以上、実施例1および2を説明したが、各種の変形例が可能であるのはいうまでもない。例えば、実施例1および2では、3枚のパネルを積層したが、2枚または4枚以上のパネルを積層した積層パネルに、実施例1および2の構成を適用してもよい。さらに、実施例1および2では、観察側からパネル10B、10G、10Rの順に配置したが、この順番を変更することも可能であり、その場合でも、観察側に配置するパネルの配向性を低くする。
【0055】
また、実施例1および2では、配向性の違いはラビング処理の有無で実現したが、ラビング処理の密度を異ならせるようにしてもよい。また、観察側から1番目のパネルにはラビング処理を施さず、2番目のパネルには弱いラビング処理を施し、3番目のパネルには強いラビング処理を施すようにしてもよい。
【0056】
さらに、前述のように、配向性を異ならせる方法としては、ラビング処理以外にも、光配向膜を形成して紫外光を照射する方法があり、これを利用して配向性を異ならせてもよい。また、光配向膜とラビング処理を組み合わせたハイブリッド処理で、配向性を異ならせてもよい。
【0057】
さらに、前述のように配向性と散乱性は相関を有し、散乱の大きなパネルを観察側に配置することにより同様の効果が得られると考えられるので、散乱性の高いパネル、言い換えればヘーズ値の大きなパネルを観察側に配置した積層パネルであればよい。
【0058】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0059】
1、1B,1G、1R 液晶層
10、10B,10G、10R コレステリック液晶パネル
3 、4 基板
11、12 電極層
13、14 配向層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層した異なる選択反射波長を有する反射型の複数のコレステリック液晶パネルを備え、
前記複数のコレステリック液晶パネルのうち観察側に最も近いパネルは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱いことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記複数のコレステリック液晶パネルは、3枚のパネルであり、
観察側に近い2枚のパネルは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱いことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記複数のコレステリック液晶パネルは、3枚のパネルであり、
観察側に近い1枚のパネルは、観察側から遠い2枚のパネルよりも配向性が弱いことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記複数のコレステリック液晶パネルの配向膜を備え、
前記配向膜にラビングを施したパネルは、前記配向膜にラビングを施していないパネルより配向性が強く、
前記配向膜に施したラビングが強いほど配向性が強い請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記配向性が強いパネルほど、ヘーズ値の小さい請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
積層した異なる選択反射波長を有する反射型の複数のコレステリック液晶パネルを備え、
前記複数のコレステリック液晶パネルのうち観察側に最も近いパネルは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱いことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記複数のコレステリック液晶パネルは、3枚のパネルであり、
観察側に近い2枚のパネルは、観察側から最も遠いパネルよりも配向性が弱いことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記複数のコレステリック液晶パネルは、3枚のパネルであり、
観察側に近い1枚のパネルは、観察側から遠い2枚のパネルよりも配向性が弱いことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記複数のコレステリック液晶パネルの配向膜を備え、
前記配向膜にラビングを施したパネルは、前記配向膜にラビングを施していないパネルより配向性が強く、
前記配向膜に施したラビングが強いほど配向性が強い請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記配向性が強いパネルほど、ヘーズ値の小さい請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−203448(P2011−203448A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70073(P2010−70073)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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