説明

液晶表示装置

【課題】大型の液晶表示装置において表示ムラと光漏れのない液晶表示装置を提供する。
【解決手段】バックライト光源、液晶セル、及び当該液晶セルの視認側及び前記バックライト光源側に配置される2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記視認側に配置される偏光板(PL1)の50℃・10%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE1とし、前記バックライト光源側に配置される偏光板(PL2)の50℃・80%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE2としたとき、E2が2〜10GPaの範囲内にあり、かつ当該E1とE2の差の絶対値|E1−E2|が0〜5.0GPaの範囲内にあることを特徴とする液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、更に詳しくは表示ムラが発生しない液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶テレビやパソコンの液晶ディスプレイ等の用途で、需要が拡大している。通常、液晶表示装置は、透明電極、液晶層、カラーフィルター等をガラス板で挟み込んだ液晶セルと、その両側に設けられた2枚の偏光板で構成されており、それぞれの偏光板は、偏光子(偏光フィルムともいう。)を2枚の光学フィルム(偏光板保護フィルムともいう。)で挟まれた構成となっている。
【0003】
しかし、昨今の液晶テレビ画面の大型化、薄膜化、更には光源にLEDのバックライトが使用されるようになり、液晶セルを挟んで上側偏光板(視認側偏光板)と下側偏光板(光源側偏光板)の組み合わせによっては、液晶表示装置の設計上、液晶パネル、若しくはバックライトユニット、又はその両者が変形し、部材同士が接触して局所的に表示ムラ(エッグ状のムラ、以下エッグムラともいう。)が発生するという問題が起こり、その改善が求められていた。特に画面サイズの大型化に伴う変形の寄与が大きく、30インチ以上の液晶テレビでは一層顕著な問題であった。
【0004】
エッグムラの発生機構は未だ明確には分かっていないが、解析の結果、高温高湿条件下でエッグムラが徐々に発生する場合があり、本発明者らは部材の変形に伴う液晶パネルと液晶表示装置を構成する拡散板との接触が原因であると考えるに至った。
【0005】
一方で、汎用のアクリル樹脂とセルロース樹脂を混合することで耐熱性を向上させ、さらにアクリル樹脂の脆さを改良する技術が提案されているが、(例えば特許文献1、2、3参照。)このフィルムを用いても表示ムラに関しては、十分効果的なものではなかった。
【0006】
また、特許文献4には液晶セルを挟んで上側偏光板(視認側偏光板)の寸法変化と、下側偏光板(光源側偏光板)の寸法変化との差が小さい構成が好ましいと記載されている。しかし、上下のバランスを取ったとしても、例えば上下共に大きく変化してバランスが取れる場合には、フィルムに大きな残留応力が残り、これにより設計された光学値からのズレを生じて、結果として、液晶表示装置の表示ムラや光漏れが発生してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/047924号
【特許文献2】特開2009−1744号公報
【特許文献3】特開2009−179731号公報
【特許文献4】特開2010−032718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その解決課題は、大型の液晶表示装置において表示ムラや光漏れのない液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、エッグムラの発生に関しては、高温高湿条件下での機械物性の寄与が大きく、特に湿度がこもり易いバックライト側偏光板の温湿度環境下の弾性率を適切な領域で制御することにより、エッグムラの発生と光漏れを抑制できることを見出し本発明に至った。すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段により解決することができる。
1.バックライト光源、液晶セル、及び当該液晶セルの視認側及び前記バックライト光源側に配置される2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記視認側に配置される偏光板(PL1)の50℃・10%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE1とし、前記バックライト光源側に配置される偏光板(PL2)の50℃・80%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE2としたとき、E2が2〜10GPaの範囲内にあり、かつ当該E1とE2の差の絶対値|E1−E2|が0〜5.0GPaの範囲内にあることを特徴とする液晶表示装置。
2.前記偏光板(PL2)を構成するフィルム部材であり、前記液晶セル側に配置されるフィルム部材(F3)の光弾性係数が、23℃・55%RH環境下、測定波長589nmでの測定において、−6.0×10−12〜6.0×10−12Pa−1の範囲内にあることを特徴とする前記第1項に記載の液晶表示装置。
3.前記フィルム部材(F3)が、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、及びセルロースエステル樹脂から選択されるいずれかの樹脂を含有していることを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、上記構成とすることにより、表示ムラのない液晶表示装置用の偏光板構成を提供し、それにより液晶表示装置、特に大型サイズの液晶テレビに用いても、表示ムラと光漏れのない液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】液晶表示装置の構成の一例を説明する概略図である。
【図2】溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、液晶テレビやパソコンの液晶ディスプレイ等に使用される液晶表示装置に関するもので、高温高湿条件下で発生するエッグムラとも呼ばれる表示ムラと光漏れを改善するものである。
【0013】
本発明は、バックライト光源、液晶セル、及び当該液晶セルの視認側及び前記バックライト光源側に配置される2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記視認側に配置される偏光板(PL1)の50℃・10%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE1とし、前記バックライト光源側に配置される偏光板(PL2)の50℃・80%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE2としたとき、E2が2〜10GPaの範囲内にあり、且つ当該E1とE2の差の絶対値|E1−E2|が0〜5.0GPaの範囲内にあることを特徴とする液晶表示装置であり、この特徴は、請求項1から請求項3までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0014】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記バックライト側に配置される偏光板(PL2)を構成するフィルム部材であり、前記液晶セル側に配置されるフィルム部材(F3)の光弾性係数が、23℃・55%RH環境下、測定波長589nmでの測定において、−6.0×10−12〜6.0×10−12Pa−1の範囲内にあることが光漏れ低減効果が得られることから好ましい。さらに、本発明においては、前記フィルム部材(F3)が、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、及びセルロース樹脂から選択されるいずれかの樹脂を含有していることがフィルムの透明性が得られることから好ましい。
【0015】
これにより、大型の液晶テレビに用いても表示ムラと光漏れのない液晶表示装置を得ることができる。
【0016】
本発明の液晶表示装置の構成の詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0017】
<液晶表示装置の構成>
従来の液晶表示装置の構成の例としては、直下型では、図1に示すように、光源側から、〔光源1a/拡散板(下拡散シート)3a/集光シート4a(プリズムシートなど)/上拡散シート5a/液晶パネル12a(偏光子10a/光学フィルム(位相差フィルムなど)9a、9b/基板8a/液晶セル7a/光学フィルム11a、11b)〕となっており、主にテレビ等大型の液晶表示装置に用いられている構成である。一方、モバイル用途などの小型液晶表示装置にはサイドライト型の構成(図示せず)のものが用いられている。
【0018】
拡散板(下拡散シート)は主にバックライト光源(BLU)6aの面内輝度ムラを低減するための光拡散性の強い光学シートであり、集光シートは拡散光を液晶表示装置の正面方向(表示装置平面の法線方向)に集光させるための光学シートであり、上拡散シートは集光シートであるプリズムシートや液晶セル中の画素など周期的構造により発生するモアレを低減するための、及び下拡散シートで除去しきれない面内輝度ムラを更に低減するために用いられる光学シートである。
【0019】
液晶セルの表示方法としては、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0020】
光源に用いられる発光光源(発光体)としては、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp、冷陰極管)、HCFL(Hot Cathode Fluorescent Lamp、熱陰極管)、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、OLED(Organic light−emitting diode、有機発光ダイオード[有機EL]無機ELなどを好ましく用いることができる。
【0021】
図1に示すように、液晶表示装置は一般にガラス板等の基板で挟み込んだ液晶セルとその液晶セルを挟んで両側に設けられた2枚の偏光板PL1、PL2で構成されている。この偏光板のうちひとつは視認側(上側)に配置された偏光板を視認側偏光板PL1、光源側(下側)に配置された偏光板を光源側偏光板PL2と呼ぶ。これらの偏光板は、偏光子(偏光フィルムともいう。)を2枚の光学フィルム(偏光板保護フィルム)で挾んで構成されている。偏光板PL1は偏光子を挟んで11a(F1)、9a(F2)の2枚の光学フィルム部材から構成されている。偏光板PL2は、同じく9b(F3)、11b(F4)の光学フィルム部材で偏光子を挟んで構成されている。ここで、光学フィルム部材F2とF3が液晶セル側に配置される構造になっている。
【0022】
(本発明の原理)
本発明の効果の発現機構に関しては、明確ではないが、本発明者らは前記表示ムラと光漏れの発生原因が、液晶表示装置を構成する部材の変形に伴う液晶パネルと拡散板との接触、離れが原因であると考えるに至った。
【0023】
すなわち、偏光板(PL1)と偏光板(PL2)の温湿度環境の変動によって、2枚の偏光板の特に長辺方向の寸法変化が大きくなり、かつ2枚の偏光板の環境差に違いがあるために寸法差が大きくなってしまう。そのため液晶パネルの変形が生じてしまう。
【0024】
本発明において表示ムラと光漏れが解決できる理由は、以下の理由によるものと考えられる。ここで、光漏れとは、フィルムに余分な応力がかかることによりフィルム位相差の設計値がズレ、これによって本来黒表示にて光が出ない設計になっていても、一部光が漏れてしまう現象をいう。
【0025】
表示ムラと光漏れの発生を抑制するためには、温湿度などの環境変動に対しても液晶セルを構成する上下2枚の偏光板の寸法変化が小さいことが要求される。このため上下2枚の偏光板の寸法変化率の差で表される膨潤歪みが小さいことが好ましい。しかし、上下2枚の寸法変化率の差が小さいだけでは十分ではなく、上下2枚の偏光板の寸法変化自体が小さくかつその差も小さいことが必要である。
【0026】
本発明においては、光源側の特に長辺方向の偏光板の弾性率E2を低く抑え、かつ上下の偏光板の長辺方向の弾性率の差|E1−E2|を小さく押さえることによって、環境変動によっても歪みの発生を低く抑えることが可能となり、その結果、変形を極小化し、表示ムラと光漏れの発生のない液晶表示装置を提供することが可能となった。
【0027】
さらに光源側偏光板(PL2)を構成する光学フィルムのうち液晶セルに接しているフィルム部材(F3)の光弾性係数を特定の範囲内に押さえることによって、偏光板の寸法変化による歪みが生じても、フィルムの余分な位相差発現を抑えることができ、表示ムラ(干渉縞)の発生を抑制する効果が得られる。
【0028】
以下、本発明の液晶表示装置を構成する、液晶セル、偏光板の構成について説明する。 <液晶セル>
本発明の液晶表示装置を構成する液晶パネルにおいて、液晶セルは任意のものを用いることができる。液晶セルは、図1に示すように、一対のガラス、プラスチック等からなる透明基板8aに挟まれており、透明基板と透明基板間に挟時された透明電極、液晶層、カラーフィルター等とから構成されることが好ましい。
【0029】
<偏光板>
偏光板は、偏光子とその両側に配置された光学フィルムから構成されている。この偏光板は、自然光や偏光を直線偏光、円偏光、楕円偏光等の任意の偏光に変換する機能を有する。本発明においては、これら2枚の偏光板のうち、液晶表示装置内の視認側に構成される偏光板(PL1)の50℃・10%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE1とし、液晶表示装置内の光源側に構成される偏光板(PL2)の50℃・80%RHの環境下における長辺方向の弾性率E2としたときに、E2が2〜10GPaの範囲内にあり、且つ当該E1とE2の差の絶対値|E1−E2|が0〜5.0GPaの範囲であることを特徴としている。E2が2GPa以上10GPa以下であって、かつE1とE2の差の絶対値が、上記範囲であるときにパネルの反り抑制効果が得られる。E2が2GPa未満であるとフィルム自体が収縮してパネルが反ってしまう恐れがあり、10GPaを超えるとフィルム加工が困難になってしまう。また、E1とE2の差の絶対値が5.0を超えるとパネルを挟む上下の偏光板のバランスが悪くなり、パネルが反ってしまう。
【0030】
偏光板の弾性率E1、E2は使用する光学フィルムの膜厚や構成する素材及びそれらの組合せによって調整できる。光学フィルムの厚さを薄くすることで、偏光板の弾性率は大きくなり、逆に光学フィルムの厚さを厚くすることで、偏光板の弾性率を小さくすることができる。
【0031】
(偏光子)
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子(偏光膜ともいう。)は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0032】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0033】
(光学フィルム)
偏光子は2枚の光学フィルムで挟まれた構造となっており、視認側偏光板(PL1)は視認側に配置される光学フィルム部材(F1)と液晶セル側に配置される光学フィルム部材(F2)で偏光子を挟んで構成されている。光源側偏光板(PL2)は液晶セル側に配置される光学フィルム部材(F3)と光源側に配置される光学フィルム(F4)とで偏光子を挟んで構成されている。
【0034】
ここで、本発明においてはこの光学フィルム部材(F3)の光弾性係数が−6.0×10−12〜6.0×10−12Pa−1の範囲内であることが好ましい。光学フィルム部材F3の光弾性係数が上記範囲内であると光漏れ低減効果が得られるので好ましい。
【0035】
光弾性とは、等方性の物質に外力を加えて内部に応力を起こさせると、光学異方性を呈し、複屈折を示す現象をいう。物質に作用する応力(単位面積当たりの力)をσとし、複屈折をΔnとした場合に、応力σと複屈折Δnは理論的には比例関係にあって、Δn=Cσと表すことができ、このCが光弾性係数である。換言すれば、物質に作用する応力σを横軸に取り、その応力が作用したときの物質の複屈折Δnを縦軸にとると、理論的には両者の関係は直線となり、この直線の勾配が光弾性係数Cである。
【0036】
光学フィルムに用いられるフィルム部材としては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、及びシクロオレフィン樹脂が好ましく用いられる。これらの樹脂は透明性があり好ましい。
【0037】
<アクリル樹脂>
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0038】
アクリル樹脂、メタクリル樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体が使用できる。(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル;トリシクロデカンなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが例示できる。共重合性単量体には、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などが例示できる。これらの単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0039】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。好ましい(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキル、特にメタクリル酸メチルを主成分(50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%程度)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0041】
本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂は、特に光学フィルムとしての脆性の改善及びセルロースエステル樹脂と併用した際の透明性の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が80000以上である。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が80000を下回ると、十分な脆性の改善が得られず、セルロースエステル樹脂との相溶性が劣化する。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、80000〜1000000の範囲内であることが更に好ましく、100000〜600000の範囲内であることが特に好ましく、150000〜400000の範囲であることが最も好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限値は特に限定されるものではないが、製造上の観点から1000000以下とされることが好ましい形態である。
【0042】
本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
【0043】
<セルロースエステル樹脂>
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースエステル樹脂としては、特に限定されないが、エステル基は炭素数2〜22程度の直鎖又は分岐のカルボン酸エステルであることが好ましく、これらのカルボン酸は環を形成してもよく、芳香族カルボン酸のエステルでもよい。なお、これらのカルボン酸は置換基を有してもよい。セルロースエステルとしては、特に炭素数が6以下の低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0044】
好ましいセルロースエステル樹脂として、具体的には、セルロースアセテートの他に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートのようなアセチル基の他にプロピオネート基又はブチレート基が結合したセルロースの混合脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0045】
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースエステル樹脂は、特に脆性の改善やアクリル樹脂と相溶させたときに透明性の観点から、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度は、2.0〜3.0であることが好ましい。即ち、本発明に係るセルロースエステル樹脂は炭素数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースエステル樹脂であり、具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
【0046】
セルロースエステル樹脂のアシル基の総置換度が2.0〜3.0の範囲内である場合、すなわちセルロースエステル分子の2,3,6位のヒドロキシ基の残度が1.0を下回る場合には、セルロースエステル樹脂とアクリル樹脂との相溶性が高まり、光学フィルムとして用いた場合には透明性が高くなり好ましい。また、アシル基の総置換度が2.0を下回る場合でも、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2を上回る場合は、相溶性は向上し、脆性も高くなるので好ましい。例えば、アシル基の総置換度が2.0を下回る場合であっても、炭素数2のアシル基、すなわちアセチル基の置換度が低く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2を上回る場合は、相溶性が高くなり透明性が向上する。
【0047】
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースエステル樹脂のアシル基置換度は、総置換度(T)が2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であることが好ましく、更に炭素数が3〜7以外のアシル基、即ち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。
【0048】
また、セルロースエステル樹脂のアシル基の総置換度(T)は、2.5〜3.0の範囲であることが更に好ましい。
【0049】
本発明において前記アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していても良く、更に置換基を有してもよい。本発明におけるアシル基の炭素数は、アシル基の置換基を包含するものである。
【0050】
上記セルロースエステル樹脂が、芳香族アシル基を置換基として有する場合、芳香族環に置換する置換基Xの数は0〜5個であることが好ましい。この場合も、置換基を含めた炭素数が3〜7であるアシル基の置換度が1.2〜3.0であることが好ましい。
【0051】
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0052】
上記のようなセルロースエステル樹脂においては、炭素数3〜7の脂肪族アシル基の少なくとも1種を有する構造を有することが、本発明のセルロースエステル樹脂に用いる構造として用いられる。
【0053】
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースエステル樹脂の置換度は、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であることが好ましい。
【0054】
また、炭素数が3〜7のアシル基以外、即ちアセチル基と炭素数が8以上のアシル基の置換度の総和が1.3以下であることが好ましい構造である。
【0055】
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースエステル樹脂としては、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、即ち、炭素原子数3又は4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
【0056】
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースプロピオネートである。
【0057】
アシル基で置換されていない部分は通常ヒドロキシ基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
本発明に係る光学フィルムに用いられるセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂との相溶性、脆性の改善の観点から75000以上であり、75000〜300000の範囲であることが好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースエステル樹脂の重要平均分子量(Mw)が75000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が十分ではなく、本発明の効果が得られない。本発明では2種以上のセルロース樹脂を混合して用いることもできる。
【0058】
<シクロオレフィン系樹脂>
本発明に係る光学フィルムに用いられるシクロオレフィン系樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
【0059】
好ましいシクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基が好適である。
【0060】
好ましいシクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
【0061】
環状オレフィンは、付加重合反応あるいはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;あるいは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50〜100℃の重合温度、0〜490N/cmの重合圧力で重合させる。
【0062】
本発明に係る光学フィルムに用いるシクロオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合又は共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組合せからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
【0063】
あるいは、シクロオレフィン系樹脂として、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用できるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0065】
【化1】

前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。
【0066】
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)又は(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
【0067】
【化2】

前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、又は、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、A又はBとC又はDは単環又は多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
【0068】
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0069】
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0070】
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
【0071】
このほか、本発明で用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
【0072】
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア(ZEONOR23、ZEONOR40)、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
【0073】
本発明で使用されるシクロオレフィン系樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性が高度にバランスされて好適である。
【0074】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を混合して用いる場合は、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂は、95:5〜30:70の質量比で、かつ相溶状態で含有されるが、好ましくは95:5〜50:50であり、更に好ましくは90:10〜60:40である。
【0075】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の質量比が、95:5よりもアクリル樹脂が多くなると、セルロースエステル樹脂による効果が十分に得られず、同質量比が30:70よりもアクリル樹脂が少なくなると、耐湿性が不十分となる。
【0076】
本発明に係る光学フィルムにおいては、2種以上の樹脂を混合して用いる場合は、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂が相溶状態で含有されることが好ましい。光学フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことにより達成している。
【0077】
本発明においては、上記光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0078】
光学フィルム部材(F3)に用いられるフィルム部材としては、前述の光弾性係数を満たすものであれば特に制限されないが、本発明においては、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、セルロースエステル樹脂の少なくともいずれからなることが好ましい。
【0079】
本発明に係る光学フィルムは、光学フィルムとしての機能を損なわない限りは、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂や添加剤を含有して構成されていても良い。 アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂を含有する場合、添加される樹脂が相溶状態であっても、溶解せずに混合されていてもよい。
【0080】
本発明に係る光学フィルムにおけるアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、光学フィルムの55質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。
【0081】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂以外の樹脂や添加剤を用いる際には、本発明の光学フィルムの機能を損なわない範囲で添加量を調整することが好ましい。
【0082】
<添加剤>
(可塑剤)
本発明に係る光学フィルムにおいては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
【0083】
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
【0084】
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0085】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0086】
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸及びグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0087】
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が、可塑化効果が大きい。
【0088】
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000MPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0089】
可塑剤は本発明に係る光学フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
【0090】
(紫外線吸収剤)
本発明に係る光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0091】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0092】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0093】
(その他の添加剤)
さらに、本発明に係る光学フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0094】
本発明に係る光学フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
【0095】
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
【0096】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0097】
<光学フィルムの製膜方法>
光学フィルムの製膜方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る光学フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から流延法による溶液製膜が好ましい。
【0098】
(有機溶媒)
本発明に係る光学フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0099】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0100】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0101】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂の2種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0102】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0103】
以下、本発明に係る光学フィルムの好ましい製膜方法について説明する。
(1)溶解工程
アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で該アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によって、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、あるいは該アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂溶液に、場合によって、その他の添加剤溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
【0104】
アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0105】
ドープ中のアクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂は、計15〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
【0106】
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
【0107】
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去できる。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
【0108】
図2は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程の一例を模式的に示した図である。
【0109】
必要な場合は、アクリル粒子仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へアクリル粒子添加液を添加する。
【0110】
その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
【0111】
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材にはアクリル粒子が含まれることがある、その場合には返材の添加量に合わせてアクリル粒子添加液の添加量をコントロールすることが好ましい。
【0112】
アクリル粒子を含有する添加液には、アクリル粒子を0.5〜10質量%含有していることが好ましく、1〜10質量%含有していることが更に好ましく、1〜5質量%含有していることが最も好ましい。
【0113】
上記範囲内であれば、添加液は低粘度で取り扱い易く、主ドープへの添加が容易であるため好ましい。
【0114】
返材とは、光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトした光学フィルム原反が使用される。
【0115】
また、予めアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によってアクリル粒子を混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0116】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
(3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0117】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0118】
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
(4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0119】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。尚、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
【0120】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
【0121】
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0122】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0123】
本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
(5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
【0124】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥はでき上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0125】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0126】
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0127】
尚、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0128】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0129】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに1.01〜1.5倍の範囲でとることができる。
【0130】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0131】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃が更に好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
【0132】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
(6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってから光学フィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
【0133】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0134】
本発明の光学フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0135】
本発明の光学フィルムの膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
【0136】
<偏光板の作製方法>
本発明に係る光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
【0137】
もう一方の面には本発明の光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0138】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0139】
偏光子は、前述したようにポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0140】
(粘着剤層)
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
【0141】
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0142】
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
【0143】
また上記粘着剤は有機溶媒を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルション型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
【0144】
<弾性率の測定方法>
本発明における偏光板の弾性率とは、以下のようにして測定した値である。すなわち、テンシロン試験機「RTC−1225A」(ORIENTEC社製)を用いて、各偏光板を、120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、チャック間100mm(つかみ代上下10mmずつ)で上下を挟み、JIS−K7127に則り100mm/minの引張り速度にて3回測定を行い、その平均値を算出した。
【0145】
<光弾性係数の測定方法>
本発明におけるフィルム部材の光弾性率とは以下のようにして測定した値である。すなわち、各フィルムを70mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、リターデーション測定装置「KOBRA31PRW」(王子計測機器社製)を用いて、波長589nmにおける面内リターデーションRoを、1〜10Nの範囲で各10点の引張り荷重で測定し、引張り荷重に対してRo値をプロットして得られたデータを直線に近似し、その傾きより光弾性係数を求めた。
【0146】
<液晶表示装置>
本発明に係る光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができるが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
【0147】
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の液晶表示装置では、表示ムラの発生がなく、その効果が長期間維持される。
【実施例】
【0148】
以下、本発明の具体的な実施の形態について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明の実施の形態はこれらに限定されるものではない。
<光学フィルムの作製>
〈光学フィルム1の作製〉
(ドープ液の調製)
ダイヤナールBR85(三菱レイヨン(株)製アクリル樹脂)70質量部とCAP482−20(イーストマンケミカル社製セルロースアセテートプロピオネート樹脂)30質量部をメチレンクロライド252質量部とエタノール48質量部の混合溶媒に溶解した。 (光学フィルムの作製)
上記の組成で作製したドープ液を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100質量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
【0149】
剥離したウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンターで幅方向に1.1倍に延伸しながら、135℃の乾燥温度で乾燥させた。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は10質量%であった。テンターで延伸後130℃で5分間緩和を行った後、110℃、120℃の乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径6インチコアに巻き取り、光学フィルム1(4WA)を得た。
【0150】
ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.1倍であった。この光学フィルム1の残留溶剤量は0.1質量%であり、膜厚は40μm、巻数は4000mであった。
【0151】
〈光学フィルム2の作製〉
光学フィルム1の作製において、仕上がりの膜厚が20μmとなるよう、延伸倍率、搬送張力を制御して、光学フィルム2(2WA)を作製した。
【0152】
<その他、使用したフィルム部材>
4UY:コニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプトプロダクト(株)製トリアセチルセルロースフィルム 膜厚40μm)
4TD:フジタック4TD(富士フイルム(株)製トリアセチルセルロースフィルム 膜厚40μm)
6TD:フジタック6TD(富士フイルム(株)製トリアセチルセルロースフィルム 膜厚60μm)
ZEONOR40:ゼオノアフィルム(日本ゼオン(株)製シクロオレフィンフィルム膜厚40μm)
ZEONOR23:ゼオノアフィルム(日本ゼオン(株)製シクロオレフィンフィルム膜厚23μm)
8PET:市販のPETフィルム 膜厚80μm
NRT(6TAC):タックフィルム(富士フイルム(株)製トリアセチルセルロースフィルム:膜厚60μm)
1C:メチルメタクリレート/2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル共重合体フィルム(特開2006−96960号公報の〔実施例6〕に記載の1Cと同様にして作製したもの:膜厚45μm)
MS2:メチルメタクリレート/スチレン共重合体フィルム(モノマー質量比(メチルメタクリレート:スチレン=40:60)(Mw100000)を用いて、上記光学フィルム1と同様にして作製したもの:膜厚40μm)
80N:アクリル樹脂フィルム(旭化成ケミカルズ(株)製アクリル樹脂(Mw100000)を用いて、上記光学フィルム1と同様にして作製したもの:膜厚40μm)
4WA:光学フィルム1
2WA:光学フィルム2
<ウレタン系粘着剤の調製>
ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂の水性エマルション「ハイドラン AP−20」(DIC(株)製)100部に、ポリイソシアネート化合物「ハイドラン アシスターC1」(DIC(株)製)5部を加えて、粘着剤とした。
<偏光板の作製>
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光子を作製した。
【0153】
次に、この偏光子の両面に上記調整した粘着剤を、乾燥後の厚さが3μmとなるようにワイヤーバーで塗布して、表1に記載の通りのフィルムと貼合した。その後、60℃で5分乾燥したのち、35℃で24時間エージングを行い、偏光板1〜22を作製した。
【表1】

(偏光板の弾性率評価)
テンシロン試験機「RTC−1225A」(ORIENTEC社製)を用いて、以下のような評価を行った。
【0154】
各偏光板を、120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、チャック間100mm(つかみ代上下10mmずつ)で上下を挟み、JIS K7127に則り100mm/minの引張り速度にて3回測定を行い、その平均値を算出した。
【0155】
(光学フィルム部材(F3)の光弾性係数の測定)
各フィルムを70mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、リターデーション測定装置「KOBRA31PRW」(王子計測機器社製)を用いて、23℃・55%RH環境下で、波長589nmにおける面内リターデーションRoを、1〜10Nの範囲で各10点の引張り荷重で測定し、引張り荷重に対してRo値をプロットして得られたデータを直線に近似し、その傾きより光弾性係数を求めた。
<液晶表示装置としての特性評価>
IPS型液晶表示装置である東芝社製42型テレビ「LEDREGZA42RE1」の予め貼合されていた偏光板を剥がして、上記で作製した偏光板1〜22を表1の構成に従って、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように貼合し、液晶表示装置1〜22を各々作製した。
【0156】
その後、上記表示装置を50℃・80%RHの環境下に72時間晒した後、23℃・55%RHの環境下に2時間放置したのち、電源(バックライト)を点灯させ、12時間後、24時間後の表示ムラ、光漏れを画面を黒表示にて観察し、それぞれ下記のような基準で評価を行った。
【0157】
(表示ムラ)
◎:画像表示が均一である
○:画像表示がほぼ均一である
△:中央部と周囲に僅かな輪郭がある
×:中央部と周囲にはっきりとした輪郭がある
(光漏れ)
◎:光漏れが全くない
○:光漏れが僅かにある
△:光漏れが一部あり、明るいと感じる
×:光漏れがあり、眩しいと感じる
以上の結果を表2に示した。
【0158】
【表2】

表2に示した結果から明らかなように、本発明の構成で使用した液晶表示装置は、表示ムラ、光漏れがない均一な画質を得ることができる。
【符号の説明】
【0159】
1a 光源
2a 発光光源
3a 拡散板(下拡散シート)
4a 集光シート(プリズムシート、レンズシート)
5a 上拡散シート
6a バックライトユニット
7a 液晶セル
8a 透明基板(ガラス、プラスチック)
9a 光学フィルム(F2)
9b 光学フィルム(F3)
10a 偏光子
11a 光学フィルム(F1)
11b 光学フィルム(F4)
12a 液晶パネル
PL1 視認側偏光板
PL2 光源側偏光板
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストックタンク
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 加圧ダイ
31 金属ベルト
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター延伸装置
35 ロール乾燥装置
37 巻き取り機
41 粒子仕込釜
42 ストック釜
43 ポンプ
44 濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライト光源、液晶セル、及び当該液晶セルの視認側及び前記バックライト光源側に配置される2枚の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記視認側に配置される偏光板(PL1)の50℃・10%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE1とし、前記バックライト光源側に配置される偏光板(PL2)の50℃・80%RHの環境下における長辺方向の弾性率をE2としたとき、E2が2〜10GPaの範囲内にあり、かつ当該E1とE2の差の絶対値|E1−E2|が0〜5.0GPaの範囲内にあることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記偏光板(PL2)を構成するフィルム部材であり、前記液晶セル側に配置されるフィルム部材(F3)の光弾性係数が、23℃・55%RH環境下、測定波長589nmでの測定において、−6.0×10−12〜6.0×10−12Pa−1の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記フィルム部材(F3)が、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、及びセルロースエステル樹脂から選択されるいずれかの樹脂を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−57706(P2013−57706A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194560(P2011−194560)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】