説明

液晶装置、電子機器、及び液晶装置の駆動方法

【課題】液晶装置において、消費電力を抑制しつつ長い書込期間を確保する。
【解決手段】液晶装置1を提供する。液晶装置1は、表示すべき階調に応じた大きさのデ
ータ信号を生成しデータ信号生成回路211と、プリチャージ信号Vpreを生成するプ
リチャージ信号生成回路20とを備え、プリチャージ期間Preではプリチャージ信号V
preをデータ線103及び105に供給し、データ期間Daではデータ信号をデータ線
103に供給する。ただし、データ信号生成回路211は、データ信号の極性を所定数の
ドット毎に反転する。また、液晶装置1は、データ線105へのプリチャージ信号Vpr
eの供給の開始からデータ線105の電圧が比較電圧に到達するまでの時間を計測し、計
測した時間に基づいて、データ期間Daにおいて、所定数のドットの各々に対応するデー
タ信号が均等な時間だけ生成されるようにデータ信号生成回路211を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置とその駆動方法と電子機器に関し、特にプリチャージと電圧書込と
の最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置の一種に、カラー画像を表示する液晶表示装置がある。液晶表示装置は、複数
の走査線と、複数のデータ線と、走査線とデータ線との交差に対応して設けられた複数の
ドットを備える。各ドットは、液晶素子と、液晶素子に印加する電圧の書き込みを制御す
る書込制御TFT(薄膜トランジスタ)とを備え、色味がR(赤)、G(緑)又はB(青
)の色を表示することができる。各ドットには、データ線から書込制御TFTを介してデ
ータ信号を供給することによって書き込まれた電圧に応じた階調が表示される。
【0003】
液晶表示装置には、書込制御TFTとして、アモルファスシリコンを用いて形成された
a−TFT(アモルファスTFT)を採用したものと、LTPS(低温ポリシリコン)を
用いて形成されたLTPS−TFTを採用したものとがある。a−TFTを採用した液晶
表示装置は、1画素を構成する3個のドット(R、G及びBの色を表示可能なドット)が
互いに異なるデータ線に対応するように構成されている。したがって、高精細化が進むと
配線の引き回しが困難となる。
【0004】
一方、LTPS−TFTを採用した液晶表示装置として、デマルチプレクス駆動方式を
採用したものが知られている。デマルチプレクス駆動方式では、1画素を構成する3個の
ドットが1本のデータ線に対応しており、これらのドットへの電圧の書き込みは、1本の
データ線を時分割で用いることによって行われる。したがって、a−TFTを採用した液
晶表示装置において、デマルチプレクス駆動方式を採用すれば、配線数が削減されるから
、上記の問題を解決することができる。
【0005】
しかし、1本のデータ線を時分割で用いると、ドットに電圧を書き込む書込期間が短く
なる虞がある。a−TFTは、LTPS−TFTよりも移動度が低いから、書込期間の短
縮は、書込不足を招く虞がある。また、液晶表示装置では、直流成分の残留による液晶素
子の劣化を抑制するために、データ信号の極性を周期的に反転させる必要がある。すなわ
ち、データ線の電圧を周期的に大きく変動させる必要がある。しかし、データ線は少なか
らぬ寄生容量を持ち、a−TFTの移動度は低いから、極性反転には長い時間を要する。
【0006】
例えば、図9に示すように、極性反転を1ドット毎に行う場合には、データ線の電圧を
大幅かつ頻繁に変動させる必要があり、各ドットの書込期間において書込不足が生じる虞
がある。これに対して、図10に示すように、極性反転を3ドット毎に行う場合には、デ
ータ線の電圧を大幅に変動させる回数が減る。しかし、1回の極性反転に要する時間は変
わらないから、極性反転を行う書込期間(図10では書込期間R1及びR2)において、
書込不足が生じる虞がある。
【0007】
一方、特許文献1には、プリチャージを行う液晶表示装置が開示されている。この装置
では、書込期間の直前のプリチャージ期間において、データ線に正電圧または負電圧のプ
リチャージ信号が供給される。これにより、データ線に正電荷または負電荷がチャージ(
注入)され、その上で書込期間を迎えることになる。したがって、書込不足の発生を抑制
することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−109705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
a−TFTを採用した液晶表示装置において、デマルチプレクス駆動方式を採用し、さ
らに、極性反転を行う書込期間の前にプリチャージ期間を設ければ、書込不足の発生を抑
制することができる。この場合、長い書込期間を確保するために、プリチャージ期間をで
きる限り短くするのが好ましい。短い期間において十分な量の電荷をチャージするために
は、プリチャージ信号を大きくする必要がある。
【0010】
しかし、図11に示すように、プリチャージ信号が大きすぎると、チャージした電荷の
多くが無駄になるから消費電力が増大してしまう。一方、プリチャージ信号が小さすぎる
と、不十分な量の電荷しかチャージされないから、書込不足の発生を十分に抑制すること
ができない。プリチャージ信号を大きくすることなく十分な量の電荷をチャージするため
には、プリチャージ期間を長くするかしかないが、これは、書込期間の短縮による書込不
足を招く虞がある。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みて為されたものであり、消費電力を抑制しつつ長い書込
期間を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の液晶装置は、複数の走査線と、複数のデータ線と、
前記走査線と前記データ線の交差に対応して設けられた複数の画素回路とを備える液晶装
置であって、表示すべき階調に応じた大きさのデータ信号を生成し、前記データ信号の極
性を所定数のドット毎に反転するデータ信号生成部と、プリチャージ信号を生成するプリ
チャージ信号生成部と、前記データ信号と前記プリチャージ信号とのうち、一方を選択し
て前記データ線に出力する選択部と、前記選択部が前記データ線に前記プリチャージ信号
を出力するプリチャージ期間において前記データ線の電圧を検出して検出電圧を出力する
電圧検出部と、前記検出電圧が予め定められた比較電圧に到達したことを検知して、前記
データ線へ出力する信号を前記プリチャージ信号から前記データ信号に切り替えるように
前記選択部を制御して前記プリチャージ期間を終了させる第1制御部と、前記プリチャー
ジ期間の長さを計測してプリチャージ時間を出力する時間計測部と、前記プリチャージ時
間に基づいて、前記選択部が前記データ信号を選択するデータ期間において、前記所定数
のドットの各々に対応するデータ信号が均等な時間だけ生成されるように前記データ信号
生成部を制御する第2制御部と、を備える。
【0013】
この発明では、プリチャージ期間ではプリチャージ信号が、データ期間ではデータ信号
がデータ線へ出力される。プリチャージ期間は、データ線の電圧が比較電圧に到達すると
終了する。したがって、プリチャージ信号を大きくても、余分な電荷がデータ線にチャー
ジされる虞がない。つまり、プリチャージ期間を短縮して消費電力を抑制することができ
る。また、本発明では、データ期間では、プリチャージ期間の長さ(プリチャージ時間)
に基づいて、所定数のドットの各々に対応するデータ信号が均等な時間だけ生成される。
つまり、プリチャージ期間を短縮した分だけ、画素回路への電圧の書込期間を長く確保す
ることができる。以上より、本発明によれば、消費電力を抑制しつつ長い書込期間を確保
することができる。
【0014】
ところで、データ線へのプリチャージ信号の出力の開始からデータ線の電圧が比較電圧
に到達するまでの時間は、プリチャージ信号生成部などの各部の特性の経時変化によって
変動する。したがって、プリチャージ期間が固定の場合には、チャージされる電荷の量が
不足して書込不足を招いたり、チャージされる電荷の量が過多となって消費電力の増大を
招いたりするケースが発生する。これに対して、本発明では、データ線の電圧が比較電圧
に到達するとプリチャージ期間が終了し、計測されたプリチャージ時間に基づいて書込期
間が定められるから、すなわち計測されたプリチャージ時間に基づいてプリチャージ期間
Preと書込期間R,G及びBとが動的に設定されるから、そのようなケースが発生しな
い。
【0015】
上記の液晶装置において、前記プリチャージ信号生成部が、正極性電位を供給する正極
性電位供給部と、負極性電位を供給する負極性電位供給部と、前記データ信号の極性反転
の周期に応じて、前記正極性電位と前記負極性電位とを選択して、前記プリチャージ信号
として出力する電位選択部とを備えることが好ましい。
【0016】
上記の各液晶装置において、前記第1制御部は、前記比較電圧を生成する比較電圧発生
部と、前記検出電圧と前記比較電圧とを比較する比較部とを備え、前記比較部の比較結果
に基づいて、前記プリチャージ信号から前記データ信号に切り替えるように前記選択部を
制御することが好ましい。
【0017】
上記の各液晶装置において、前記第2制御部は、前記データ信号が正極性又は負極性と
なる時間を単位時間としたとき、前記単位時間から前記プリチャージ時間を減算して得た
差分時間を前記所定数で除算して前記所定数のドットに割り当てる時間を決定することが
好ましい。
【0018】
ところで、計測されるプリチャージ時間は、プリチャージ期間の開始時の検出電圧と比
較電圧との差分が小さいほど短くなる。一方、表示に寄与するデータ線を検出対象とした
場合、プリチャージ期間の開始時の検出電圧は、このデータ線を用いて直前に書き込まれ
た電圧に依存する。つまり、この場合には、表示内容に応じた時間がプリチャージ時間と
して計測される。このプリチャージ時間に係るプリチャージ期間は、検出対象のデータ線
については十分に長いが、他のデータ線については短すぎる虞がある。そこで、上記の各
液晶装置において、前記電圧検出部が電圧を検出するデータ線は、前記複数のデータ線の
うち、表示に寄与しないダミーのデータ線であることが好ましい。表示に寄与しないダミ
ーのデータ線を検出対象とすれば、表示に影響を及ぼすことなく、プリチャージ期間の開
始時の検出電圧を、十分に長いプリチャージ期間を確保可能な電圧とすることができるか
らである。
【0019】
上記の各液晶装置において、前記画素回路が、画素電極と、対向電極と、前記画素電極
と対向電極との間に挟持された液晶と、前記走査線とゲートが接続され、前記データ線と
ソース又はドレインの一方が接続され、前記画素電極とソース又はドレインの一方が接続
されたa−TFTとを備えるようにすることができる。a−TFTはLTPS−TFTよ
りも移動度が低いから、a−TFTを介して電圧を書き込む場合には、より長い書込期間
を確保する必要があるが、前述したように、本発明では長い書込期間が確保されるから、
a−TFTを介して電圧を書き込む構成を採用することができる。
【0020】
また、本発明は、上記の各液晶装置を備えた電子機器として把握することもできる。ま
た、本発明は、液晶装置の駆動方法として把握することもできる。この場合、複数の走査
線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線の交差に対応して設けられた複数の
画素回路とを備える液晶装置を駆動対象とし、表示すべき階調に応じた大きさのデータ信
号を生成し、前記データ信号の極性を所定数のドット毎に反転し、前記データ信号とプリ
チャージ信号とのうち、一方を選択して前記データ線に出力し、前記データ線に前記プリ
チャージ信号を出力するプリチャージ期間において前記データ線の電圧を検出電圧として
検出し、前記検出電圧が予め定められた比較電圧に到達したことを検知して、前記データ
線へ出力する信号を前記プリチャージ信号から前記データ信号に切り替えるように制御し
て前記プリチャージ期間を終了させ、前記プリチャージ期間の長さを計測してプリチャー
ジ時間を取得し、前記プリチャージ時間に基づいて、前記データ信号を選択するデータ期
間において、前記所定数のドットの各々に対応するデータ信号が均等な時間だけ生成され
るように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液晶装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】液晶装置1内のデータ線駆動回路200の構成を示すブロック図である。
【図3】データ線駆動回路200内の駆動回路210の構成を示すブロック図である。
【図4】データ線駆動回路200内のタイミング制御回路220の構成を示すブロック図である。
【図5】液晶装置1の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】液晶装置1を採用したパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図7】液晶装置1を採用した携帯電話機の構成を示す斜視図である。
【図8】液晶装置1を採用した携帯情報端末の構成を示す斜視図である。
【図9】従来の液晶装置を説明するための図である。
【図10】従来の液晶装置を説明するための図である。
【図11】従来の液晶装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<A:実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶装置1の概略構成を示すブロック図である。
液晶装置1は、カラー画像を表示する液晶表示装置であり、電気光学パネルAAとデータ
線駆動回路200と制御回路300とを備える。電気光学パネルAAには、画素領域Aと
走査線駆動回路100とが形成されている。このうち、画素領域Aには、X方向と平行に
m本の走査線101が形成されている。mは3の倍数である。また、X方向と直交するY
方向と平行にn本のデータ線103が形成されている。そして、走査線101とデータ線
103との各交差に対応して画素回路400が各々設けられている。すなわち、画素領域
Aには、m行n列の画素回路400が配置されている。
【0023】
画素回路400は、ノーマリーブラック方式の液晶素子を備えたドットであり、色味が
R、G又はBの色を表示可能である。各行には、同一の色味の色を表示可能なドットが並
んでおり、各列には、R、G及びBの色を表示可能な3種のドット(R、G及びBドット
)が交互に並んでいる。各列においてR、G、Bの順に並ぶ3個のドット(R、G及びB
ドット)は、白色を表示可能な画素を構成している。つまり、画素領域Aには、m/3行
n列の画素が配置されている。
【0024】
液晶素子は、画素電極6と、図示しない対向電極と、両電極間に挟持されて両電極間の
電圧(駆動電圧)で駆動される液晶とを備える。液晶素子の透過率又は反射率は、駆動電
圧に応じて変化する。画素回路400は、液晶素子の他に、対応するデータ線103と画
素電極6との間に介挿されたNチャネルのTFT50と、駆動電圧を保持する容量素子5
1とを備え、駆動電圧に応じた階調を表示する。TFT50はa−TFTであり、そのゲ
ートは対応する走査線101に接続され、そのソースは対応するデータ線103と接続さ
れ、そのドレインは画素電極6と接続されている。なお、TFT50として、Pチャネル
のTFTを採用してもよいし、LTPS−TFTを採用してもよい。
【0025】
また、画素領域Aには、Y方向と平行にデータ線105が設けられている。データ線1
05はn本のデータ線103と同一のプロセスで形成された配線であり、その容量値はデ
ータ線103の容量値と等しい。データ線105には、表示に寄与しないm個のダミー回
路500が接続されている。つまり、データ線105は、表示に寄与しないダミー配線で
ある。ダミー回路500は、例えば容量素子で構成され、その容量値は、TFT50がオ
フ状態の画素回路400の入力容量値と等しい。
【0026】
つまり、データ線105に電荷をチャージする場合の負荷は、TFT50がオフ状態の
m個の画素回路400に対応するデータ線103に電荷をチャージする場合の負荷と等し
い。なお、データ線105及びm個のダミー回路500に代えて、電荷をチャージする場
合の負荷が、TFT50がオフ状態のm個の画素回路400に対応するデータ線103に
電荷をチャージする場合の負荷と等しい任意の回路を採用可能である。
【0027】
走査線駆動回路100は、クロック信号YCLKと、垂直走査期間を規定するスタート
パルスDYとに基づいて、走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymを生成する。iをm以下
の自然数としたとき、走査信号Yiは、第i行のn個の画素回路400に対応するデータ
線103に供給される。走査信号Y1、Y2、Y3、…、Ymは、m本の走査線101を
順次選択するためのパルス信号であり、排他的にHレベルとなる。第i行のn個の画素回
路400とこれらの画素回路400に対応する走査線101とは、この走査線101に供
給される走査信号YiがHレベルの期間(パルス幅に相当する期間)にわたって選択され
る。以降、この期間を「選択期間」と称する。
【0028】
データ線駆動回路200は、クロック信号CLKと、階調データDr,Dg及びDbと
、極性信号Vplと、後述のリセット信号XRESとに基づいて、n本のデータ線103
に対応するデータ線信号X1〜Xnと、後述の出力信号Voutを生成する。jをn以下
の自然数としたとき、データ線信号Xjは、第j列の画素回路400に対応するデータ線
103に供給される。また、出力信号Voutは、データ線105に供給される。
【0029】
階調データDrは、Rドットに表示させるべき階調を示す。これと同様に、階調データ
DgはGドットに、階調データDbはBドットに表示させるべき階調を示す。各階調デー
タが示す階調は、最高階調(白)から最低階調(黒)までの複数階調のうちのいずれか1
つである。データ線信号Xjは、供給先のデータ線103に対応するm個の画素回路40
0のうちのいずれか一つの選択期間にあっては、当該一つの画素回路400に表示させる
べき階調に応じたレベル(電位)となる。
【0030】
画素回路400では、その選択期間にわたってTFT50がオン状態となる。したがっ
て、画素回路400の選択期間では、この画素回路400に対応するデータ線103から
供給されたデータ線信号がTFT50を介して画素電極6へ供給され、このデータ線信号
のレベルに応じた駆動電圧が容量素子51に保持される。つまり、画素回路400には、
その選択期間において、表示すべき階調に応じた駆動電圧が書き込まれる。
【0031】
ところで、1個の垂直走査期間(1F)は、m/3個の1H(1水平走査期間)を含む
。1Hでは、1行分の画素を構成する3×n個のドットに駆動電圧が書き込まれる。つま
り、1Hは3個の書込期間(選択期間)を含む。これらの書込期間は、先頭から順に、R
ドットの書込期間R、Gドットの書込期間G、Bドットの書込期間Bであり、以降の説明
では、これらを連ねた期間をデータ期間Daと称し、1Hの長さを単位時間と称する。
【0032】
また、データ線信号Xjの極性は、1H毎(単位時間毎)に反転する。この反転のタイ
ミングを指定するパルスが極性信号Vplであり、そのレベルは、正レベルと負レベルと
の間で1H毎に切り替わる。以降の説明では、極性信号Vplが正レベルの1Hを正単位
期間、負レベルの1Hを負単位期間と称する。
【0033】
また、データ線駆動回路200は、データ線を用いて駆動電圧を書き込む前に、当該デ
ータ線にプリチャージを行う。プリチャージは、正又は負の電荷をチャージしてデータ線
の電圧を基準電圧GNDとする処理であり、チャージ対象のデータ線にプリチャージ信号
Vpreを供給することによって行われる。以降の説明では、プリチャージが行われる期
間をプリチャージ期間Preと称する。つまり、1Hは、プリチャージ期間Preとデー
タ期間Daとを含む。プリチャージ信号Vpreのレベルは、正単位期間に含まれるプリ
チャージ期間Preでは正極性電位Vpとなり、負単位期間に含まれるプリチャージ期間
Preでは負極性電位Vnとなる。
【0034】
制御回路300は、図示しない上位装置から、m/3行n列の画素によって表示される
べき画像を示す画像データDinを入力して各種の信号を出力する。具体的には、スター
トパルスDYとクロック信号YCLKとを走査線駆動回路100に供給する一方、クロッ
ク信号CLKと、階調データDr,Dg及びDbと、極性信号Vplと、後述のリセット
信号XRESとをデータ線駆動回路200へ供給する。
【0035】
階調データDr,Dg及びDbの供給はパラレル方式で行われる。すなわち、ある1H
に注目すると、この1Hに対応する1行分の画素を構成するn×3個のドットに表示させ
るべき階調を示すn×3個の階調データ(n個の階調データDrと、n個の階調データD
gと、n個の階調データDb)は、それぞれ、この1Hにわたって供給される。なお、画
素に係る階調データDr、Dg及びDbは、その画素に白色を表示させる場合には共に最
高階調を示し、その画素に黒色を表示させる場合には共に最低階調を示す。
【0036】
図2は、データ線駆動回路200の構成を示すブロック図である。図2に示すように、
データ線駆動回路200は、駆動回路210と、タイミング制御回路220とを備える。
駆動回路210は、階調データDr,Dg及びDbと、選択信号SELと、イネーブル信
号XENBと、プリチャージ信号Vpreとに基づいて、データ線信号X1〜Xnを生成
する。選択信号SELは、書込期間R,G及びBを規定する信号である。イネーブル信号
XENBは、プリチャージ期間Pre及びデータ期間Daを規定する信号であり、プリチ
ャージ期間PreではLレベルを、データ期間DaではHレベルを維持する。
【0037】
タイミング制御回路220は、プリチャージ信号生成回路20を備え、クロック信号C
LKと、極性信号Vplと、後述のリセット信号XRESとに基づいて、選択信号SEL
と、イネーブル信号XENBと、プリチャージ信号Vpreと、出力信号Voutとを生
成する。出力信号Voutは、プリチャージ信号Vpreと後述のデータ信号Xwとを切
り替えて得られる信号であり、データ線105に供給される。
【0038】
図3は、駆動回路210の構成を示すブロック図である。図3に示すように、駆動回路
210は、n本のデータ線103に対応するn個の選択ユニットU1〜Unを備える。選
択ユニットU1〜Unの構成は互いに同様であり、第j列のドットに対応するデータ線1
03に対応する選択ユニットUjは、イネーブル信号XENBと、選択信号SELと、プ
リチャージ信号Vpreと、第j列のm個のドットに表示させるべき階調を示す階調デー
タDr,Dg及びDbとに基づいて、データ線信号Xjを生成する。
【0039】
選択ユニットUjは、データ信号生成回路211と、バッファ回路215と、選択回路
216とを備える。データ信号生成回路211は、選択信号SELと、第j列のm個の画
素回路400に表示させるべき階調を示す階調データDr,Dg及びDbとに基づいて、
データ信号X1r,X1g及びX1bを生成する回路であり、データ選択回路214と、
DAC213と、ボルテージフォロワ212とを備える。
【0040】
データ選択回路214は、選択信号SELに基づいて、階調データDr,Dg及びDb
のうち、1つの階調データを選択する。DAC213は、データ選択回路214によって
選択された階調データにDA変換を施してアナログ信号を生成する。そして、このアナロ
グ信号を、正単位期間においてはそのまま出力し、負単位期間においては極性を反転させ
てから出力する。DAC213の出力信号がボルテージフォロワ212の入力信号となり
、ボルテージフォロワ212の出力信号がデータ信号X1r,X1g又はX1bとなる。
データ信号X1r,X1g及びX1bの電圧は、正単位期間ではゼロ以上、負単位期間で
はゼロ以下となる。
【0041】
バッファ回路215は、プリチャージ信号Vpreを一時的に保持して出力する。選択
回路216は、イネーブル信号XENBに基づいて、データ信号生成回路211に生成さ
れたデータ信号と、バッファ回路215からのプリチャージ信号Vpreとのうち、いず
れか一方を、データ線信号Xjとして選択する。つまり、イネーブル信号XENBがLレ
ベルの期間(プリチャージ期間Pre)ではプリチャージ信号Vpreが選択され、イネ
ーブル信号XENBがHレベルの期間(データ期間Da)ではデータ信号が選択される。
【0042】
図4は、タイミング制御回路220の構成を示すブロック図である。図4に示すように
、タイミング制御回路220は、プリチャージ信号生成回路20と、データ信号生成回路
30と、比較電圧発生回路222と、選択回路221,223及び224と、コンパレー
タ225と、カウンター回路226と、演算回路227とを備える。プリチャージ信号生
成回路20は、極性信号Vplに基づいてプリチャージ信号Vpreを生成する回路であ
り、正極性電位供給部21と、負極性電位供給部22と、選択回路23と、ボルテージフ
ォロワ24とを備える。
【0043】
正極性電位供給部21は正極性電位Vpを選択回路23に供給し、負極性電位供給部2
2は負極性電位Vnを選択回路23に供給する。正極性電位Vpは、正単位期間において
ドットが最高階調を表示するときの当該ドットの駆動電圧と等しく、負極性電位Vnは、
正単位期間においてドットが最高階調を表示するときの当該ドットの駆動電圧と等しいが
、これに限るものではない。
【0044】
選択回路23は、極性信号Vplに基づいて、供給された二つの電位のうち、いずれか
一方を選択し、選択した電位の信号を出力する。正単位期間では正極性電位Vpが、負単
位期間では負極性電位Vnが選択される。選択回路23の出力信号がボルテージフォロワ
24の入力信号となり、ボルテージフォロワ24の出力信号がプリチャージ信号Vpre
となる。以上の説明から明らかなように、選択回路23は、データ信号の極性反転の周期
に応じて、正極性電位Vpと負極性電位Vnとを選択して、プリチャージ信号Vpreと
して出力する電位選択部として機能する。
【0045】
データ信号生成回路30は、特定のデータDに基づいてデータ信号Xwを生成する回路
であり、DAC31と、ボルテージフォロワ32とを備える。データDは、正単位期間に
おいてドットが最高階調を表示するときの当該ドットの駆動電圧を示すデータである。D
AC31はデータDにDA変換を施して、最高階調に応じた電圧のアナログ信号を生成す
る。そして、このアナログ信号を、正単位期間においてはそのまま出力し、負単位期間に
おいては極性を反転させてから出力する。DAC31の出力信号がボルテージフォロワ3
2の入力信号となり、ボルテージフォロワ32の出力信号がデータ信号Xwとなる。デー
タ信号Xwの電圧は、正単位期間では正電圧(正極性電位Vp)、負単位期間では負電圧
(負極性電位Vn)となる。
【0046】
選択回路221は、イネーブル信号XENBに基づいて、プリチャージ信号Vpreと
データ信号Xwとのうち、いずれか一方を選択する。つまり、イネーブル信号XENBが
Lレベルの期間(プリチャージ期間Pre)ではプリチャージ信号Vpreが選択され、
イネーブル信号XENBがHレベルの期間(データ期間Da)ではデータ信号Xwが選択
される。選択された信号は、出力信号Voutとして、データ線105に供給される。
【0047】
比較電圧発生回路222は、データ線105の電圧と比較する比較電圧を発生させる。
比較電圧は基準電圧GNDと等しいが、これに限るものではない。選択回路223及び2
24は、それぞれ、極性信号Vplに基づいて、比較電圧とデータ線105の電圧とのう
ち、いずれか一方を選択し、選択した電圧を出力する。具体的には、選択回路223は、
正単位期間ではデータ線105の電圧を選択し、負単位期間では比較電圧を選択する。一
方、選択回路224は、正単位期間では比較電圧を選択し、負単位期間ではデータ線10
5の電圧の電圧を選択する。つまり、選択回路223及び224は、データ線105の電
圧を検出する電圧検出部として機能する。
【0048】
コンパレータ225は、選択回路223の出力電圧と選択回路224の出力電圧とを比
較し、比較結果に基づいて、2値のイネーブル信号XENBを出力する。イネーブル信号
XENBは、選択回路223の出力電圧が選択回路224の出力電圧を上回る場合にはH
レベルとなり、他の場合にはLレベルとなる。すなわち、イネーブル信号XENBは、正
単位期間では、データ線105の電圧が比較電圧を上回る場合にはデータ期間Daを示し
、他の場合にはプリチャージ期間Preを示し、負単位期間では、データ線105の電圧
が比較電圧を下回る場合にデータ期間Daを示し、他の場合にプリチャージ期間Preを
示す。
【0049】
このことから明らかなように、コンパレータ225は、データ線105の電圧と比較電
圧とを比較する比較部として機能する一方、データ線105の電圧が比較電圧に到達した
ことを検知して、データ線105へ出力する信号をプリチャージ信号Vpreからデータ
信号Daに切り替えるように選択回路221を制御してプリチャージ期間Preを終了さ
せる第1制御部として機能する。
【0050】
カウンター回路226は、クロック信号CLKのパルスを計数する回路であり、イネー
ブル信号XENBがLレベルになるとカウントをスタートし、イネーブル信号XENBが
Hレベルになると、カウントをストップし、その時点のカウント値FBを演算回路227
に供給する。また、カウンター回路226は、リセット信号XRESで指定されるタイミ
ングでカウント値FBをリセットする。リセット信号XRESは、カウント値FBをリセ
ットするタイミングを指定する2値の信号であり、そのレベルは、1Hの終了の一定時間
前から1Hの終了までの期間においてLレベルを維持し、他の期間においてHレベルを維
持する。カウント値FBは、リセット信号XRESがLレベルになるとリセットされる。
【0051】
前述のように、液晶装置1では、1H毎に極性反転が行われ、1Hにおいては先ずプリ
チャージが行われる。したがって、データ線105の電圧は、正単位期間では、その開始
から上昇し、やがて基準電圧GNDを上回り、負単位期間では、その開始から低下し、や
がて基準電圧GNDを下回る。よって、カウンター回路226は、プリチャージ期間Pr
eの長さを計測する時間計測部として機能し、そのカウント値FBは、データ線105の
プリチャージ期間Preの長さを示す。
【0052】
演算回路227は、カウント値FBと、既知の単位時間とに基づいて、選択信号SEL
を生成する。詳細には、まず、単位時間から、カウント値FBで示されるプリチャージ時
間(プリチャージ期間Preの長さ)を減算して、差分時間を算出する。次に、この差分
時間を、1画素を構成する画素回路400の数、すなわち3で除算することにより、これ
らの画素回路400の各々に割り当てる時間を算出する。次に、この割り当てが達成させ
るように選択信号SELを生成する。
【0053】
演算回路227に生成された選択信号SELは、図3のデータ選択回路214に供給さ
れる。つまり、演算回路227は、カウンター回路226に計測されたプリチャージ時間
に基づいて、データ期間Daにおいて、R、G及びBドットの各々に対応するデータ信号
X1r,X1g及びX1bが均等な時間だけ生成されるように、データ信号生成回路21
1を制御する第2制御部として機能する。
【0054】
図5は、液晶装置1の動作を説明するためのタイミングチャートである。図5には、1
本のデータ線103の電圧の変動が示されているが、実際にはn本のデータ線103の電
圧が変動する。また、図5に示す2つの1Hのうち、前の1Hは、1番目の画素について
駆動電圧が書き込まれる正単位期間であり、後の1Hは、2番目の画素について駆動電圧
が書き込まれる負単位期間である。
【0055】
まず、極性信号Vplが正レベルとなり、正単位期間が開始する。すると、図4の選択
回路23では正極性電位Vpが選択され、プリチャージ信号生成回路20では、レベルが
正極性電位Vpのプリチャージ信号Vpreが生成され、選択回路223ではデータ線1
05の電圧が選択され、選択回路224では比較電圧が選択される。図5に示すように、
このときのデータ線105の電圧は比較電圧よりも低いから、コンパレータ225から出
力されるイネーブル信号XENBはLレベルとなる。
【0056】
イネーブル信号XENBがLレベルとなると、図4の選択回路221ではプリチャージ
信号Vpreが選択され、これが出力信号Voutとしてデータ線105に供給される。
つまり、データ線105に対するプリチャージが開始する。このときのプリチャージ信号
Vpreのレベルは正極性電位Vpであるから、このプリチャージにより、図5に示すよ
うに、データ線105の電圧が上昇し、やがて比較電圧に到達する。
【0057】
また、イネーブル信号XENBがLレベルとなると、図3の選択回路216では、レベ
ルが正極性電位Vpのプリチャージ信号Vpreが選択され、これがデータ線信号X1と
してデータ線103に供給される。つまり、データ線103に対するプリチャージが開始
する。このプリチャージにより、図5に示すように、データ線105の電圧は上昇し、や
がて基準電圧GNDに到達する。
【0058】
また、イネーブル信号XENBがLレベルとなると、カウンター回路226がカウント
をスタートする。したがって、時間の経過とともにカウント値FBが増加する。
【0059】
データ線105の電圧が比較電圧に到達して、図4の選択回路223の出力電圧が選択
回路224の出力電圧を上回ると、イネーブル信号XENBがHレベルとなる。イネーブ
ル信号XENBがHレベルとなると、選択回路221ではデータ信号Xwが選択され、こ
れが出力信号Voutとしてデータ線105に供給される。つまり、プリチャージ期間P
reが終了し、データ期間Daが開始する。
【0060】
データ期間Daにおけるデータ信号Xwの電圧は正電圧である。したがって、データ線
105の電圧は、図5に示すように、上昇を継続して当該正電圧に漸近する。したがって
、イネーブル信号XENBは、プリチャージ期間Preが終了してから正単位期間が終了
するまで、Hレベルを維持する。
【0061】
また、イネーブル信号XENBがHレベルとなると、図4のカウンター回路226がカ
ウントをストップし、このときのカウント値FBが演算回路227に供給される。カウン
ト値FBは、正単位期間の終了の一定時間前にリセット信号XRESがLレベルとなると
、リセットされる。演算回路227では、供給されたカウント値FBで示される時間を1
Hの長さから減算して得られる差分時間(データ期間Daの長さ)を3で除算してデータ
信号X1r、X1g及びX1bの各々に割り当てる時間が算出され、この割り当てが達成
されるように選択信号SELが生成される。図3のデータ選択回路214では、この選択
信号SELに基づいて、データ信号が選択される。すなわち、書込期間R1においてはデ
ータ信号X1rが選択され、書込期間G1においてはデータ信号X1gが選択され、書込
期間B1においてはデータ信号X1bが選択される。
【0062】
イネーブル信号XENBは、プリチャージ期間Preが終了してから正単位期間が終了
するまで、すなわち書込期間R1、G1及びB1にわたってHレベルを維持する。したが
って、選択回路216では、データ選択回路214に選択されたデータ信号が選択され、
これがデータ線信号X1としてデータ線103に供給される。つまり、データ線103に
は、書込期間R1ではデータ信号X1rが、書込期間G1ではデータ信号X1gが、書込
期間B1ではデータ信号X1bが供給される。これらのデータ信号の電位はいずれもゼロ
以上であるから、データ線103の電圧は図5に例示するように変化する。
【0063】
そして、極性信号Vplが負レベルとなる。すると、図4の選択回路23では負極性電
位Vnが選択され、プリチャージ信号生成回路20では、レベルが負極性電位Vnのプリ
チャージ信号Vpreが生成され、選択回路223では比較電圧が選択され、選択回路2
24ではデータ線105の電圧が選択される。図5に示すように、このときの比較電圧は
データ線105の電圧よりも低いから、コンパレータ225から出力されるイネーブル信
号XENBはLレベルとなる。
【0064】
そして、イネーブル信号XENBがLレベルとなり、負単位期間が開始する。負単位期
間でも、上述と同様の動作が行われる。ただし、負単位期間においては、プリチャージ信
号Vpreのレベルが負極性電位Vnとなるから、プリチャージ期間Preにおいて、デ
ータ線105の電圧が低下して比較電圧に到達し、データ線103の電圧が低下して基準
電圧GNDに到達する。また、負単位期間においては、データ信号Xwの電圧が負電圧と
なるから、データ線105の電圧は、書込期間R2,G2及びB2を通じて低下を継続し
て当該負電圧に漸近する。また、負単位期間においては、データ信号X1r、X1g及び
X1bの電圧がいずれもゼロ以下となるから、データ線103の電圧は図5に例示するよ
うに変化する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態では、データ線105の電圧が比較電圧に到達すると
プリチャージ期間Preが終了する。したがって、プリチャージ期間Preを短縮するた
めにプリチャージ信号Vpreを大きくても、余分な電荷がデータ線103及び105に
チャージされる虞がなく、消費電力が抑制される。また、データ期間Daでは、プリチャ
ージ期間Preの長さ(プリチャージ時間)に基づいて、R,G及びBドットの各々に対
応するデータ信号が均等な時間だけ生成される。つまり、プリチャージ期間Preが短縮
された場合には、その分だけ長く、R,G及びBドットへの電圧の書込期間R,G及びB
が確保される。よって、本実施形態によれば、消費電力を抑制しつつ長い書込期間を確保
することができる。長い書込期間を確保可能であるからこそ、LTPS−TFTよりも移
動度が低いa−TFTをTFT50として採用することができる。
【0066】
ところで、プリチャージ時間は、プリチャージ信号生成回路20などの各部の特性の経
時変化によって変動する。したがって、プリチャージ期間が固定の場合には、チャージさ
れる電荷の量が不足して書込不足を招いたり、チャージされる電荷の量が過多となって消
費電力の増大を招いたりするケースが発生する。これに対して、本実施形態では、データ
線の電圧が比較電圧に到達するとプリチャージ期間Preが終了し、計測されたプリチャ
ージ時間に基づいて書込期間R,G及びBが定められるから、すなわち計測されたプリチ
ャージ時間に基づいてプリチャージ期間Preと書込期間R,G及びBとが動的に設定さ
れるから、そのようなケースは発生しない。
【0067】
<B:変形例>
なお、上述した実施形態を変形し、データ線105及びダミー回路500を設けずに、
複数のデータ線103のうちの1本の電圧と比較電圧とを比較するようにしてもよい。こ
の場合、プリチャージ期間Preの開始時の当該1本のデータ線103の電圧は、このデ
ータ線103を用いて直前に書き込まれた電圧に依存する。そして、この電圧と比較電圧
との差分が小さいほど、計測されるプリチャージ時間は短くなる。つまり、表示内容に応
じた時間がプリチャージ時間として計測される。このプリチャージ時間を長さとしたプリ
チャージ期間は、当該1本のデータ線103以外のデータ線103については短すぎる虞
がある。
【0068】
これに対して、上述した実施形態では、データ線105の電圧と比較電圧とが比較され
る。そして、データ線105には、データ期間Daにおいて、正単位期間にあってはレベ
ルが正極性電位Vpの、負単位期間にあってはレベルが負極性電位Vnのデータ信号Xw
が供給される。よって、複数のデータ線103のいずれについても短すぎることのないプ
リチャージ期間、すなわち十分に長いプリチャージ期間を設定することができる。また、
データ線105は表示に寄与しないダミー配線であるから、データ期間Daにおいてデー
タ信号Xwを供給しても、表示には影響が及ばない。
【0069】
また、上述した実施形態では、画素回路400がノーマリーブラック方式の液晶素子を
備えるが、これを変形し、画素回路400がノーマリーホワイト方式の液晶素子を備える
ようにしてもよい。また、上述した実施形態では、3個のドット毎に極性反転が行われる
が、これに限るものではない。すなわち、本発明は、1以上の所定数のドット毎に極性反
転が行われる形態を範囲に含みうる。また、上述した実施形態は、本発明を、カラー画像
を表示する液晶表示装置に適用したものであるが、本発明は、モノクローム画像を表示す
る液晶表示装置や、画像を表示しない液晶装置にも適用可能である。
【0070】
<C:応用例>
次に、液晶装置1を利用した電子機器について説明する。図6は、液晶装置1を表示装
置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パー
ソナルコンピュータ2000は、表示装置としての液晶装置1と本体部2010とを備え
る。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられて
いる。
【0071】
図7に、液晶装置1を表示装置として採用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3
000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装
置としての液晶装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、液
晶装置1に表示される画面がスクロールされる。
【0072】
図8に、液晶装置1を表示装置として採用した携帯情報端末(PDA:Personal Digit
al Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001お
よび電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての液晶装置1を備える。電源スイッ
チ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が液晶装置1に表
示される。
【0073】
なお、本発明に係る液晶装置が適用される電子機器としては、図6から図8に示したも
ののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ペ
ージャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレ
ビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備
えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0074】
1…液晶装置、20…プリチャージ信号生成回路(プリチャージ信号生成部)、21…
正極性電位供給部、22…負極性電位供給部、23…選択回路(電位選択部)、216…
選択回路、30,211…データ信号生成回路(データ信号生成部)、101…走査線、
103,105…データ線、200…データ線駆動回路、210…駆動回路、220…タ
イミング制御回路、221…選択回路(選択部)、223,224…選択回路(電圧検出
部)、214…データ選択回路、222…比較電圧発生回路(比較電圧発生部)、225
…コンパレータ(第1制御部、比較部)、226…カウンター回路(時間計測部)、22
7…演算回路(第2制御部)、400…画素回路、500…ダミー回路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線の交差に対応して設け
られた複数の画素回路とを備える液晶装置であって、
表示すべき階調に応じた大きさのデータ信号を生成し、前記データ信号の極性を所定数
のドット毎に反転するデータ信号生成部と、
プリチャージ信号を生成するプリチャージ信号生成部と、
前記データ信号と前記プリチャージ信号とのうち、一方を選択して前記データ線に出力
する選択部と、
前記選択部が前記データ線に前記プリチャージ信号を出力するプリチャージ期間におい
て前記データ線の電圧を検出して検出電圧を出力する電圧検出部と、
前記検出電圧が予め定められた比較電圧に到達したことを検知して、前記データ線へ出
力する信号を前記プリチャージ信号から前記データ信号に切り替えるように前記選択部を
制御して前記プリチャージ期間を終了させる第1制御部と、
前記プリチャージ期間の長さを計測してプリチャージ時間を出力する時間計測部と、
前記プリチャージ時間に基づいて、前記選択部が前記データ信号を選択するデータ期間
において、前記所定数のドットの各々に対応するデータ信号が均等な時間だけ生成される
ように前記データ信号生成部を制御する第2制御部と、
を備えた液晶装置。
【請求項2】
前記プリチャージ信号生成部は、
正極性電位を供給する正極性電位供給部と、
負極性電位を供給する負極性電位供給部と、
前記データ信号の極性反転の周期に応じて、前記正極性電位と前記負極性電位とを選択
して、前記プリチャージ信号として出力する電位選択部とを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第1制御部は、
前記比較電圧を生成する比較電圧発生部と、
前記検出電圧と前記比較電圧とを比較する比較部とを備え、
前記比較部の比較結果に基づいて、前記プリチャージ信号から前記データ信号に切り替
えるように前記選択部を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第2制御部は、前記データ信号が正極性又は負極性となる時間を単位時間としたと
き、前記単位時間から前記プリチャージ時間を減算して得た差分時間を前記所定数で除算
して前記所定数のドットに割り当てる時間を決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記電圧検出部が電圧を検出するデータ線は、前記複数のデータ線のうち、表示に寄与
しないダミーのデータ線である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記画素回路は、画素電極と、対向電極と、前記画素電極と対向電極との間に挟持され
た液晶と、前記走査線とゲートが接続され、前記データ線とソース又はドレインの一方が
接続され、前記画素電極とソース又はドレインの一方が接続されたアモルファス薄膜トラ
ンジスタとを備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の液晶装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の液晶装置を備えた電子機器。
【請求項8】
複数の走査線と、複数のデータ線と、前記走査線と前記データ線の交差に対応して設け
られた複数の画素回路とを備える液晶装置の駆動方法であって、
表示すべき階調に応じた大きさのデータ信号を生成し、前記データ信号の極性を所定数
のドット毎に反転し、
前記データ信号とプリチャージ信号とのうち、一方を選択して前記データ線に出力し、
前記データ線に前記プリチャージ信号を出力するプリチャージ期間において前記データ
線の電圧を検出電圧として検出し、
前記検出電圧が予め定められた比較電圧に到達したことを検知して、前記データ線へ出
力する信号を前記プリチャージ信号から前記データ信号に切り替えるように制御して前記
プリチャージ期間を終了させ、
前記プリチャージ期間の長さを計測してプリチャージ時間を取得し、
前記プリチャージ時間に基づいて、前記データ信号を選択するデータ期間において、前
記所定数のドットの各々に対応するデータ信号が均等な時間だけ生成されるように制御す
る、
ことを特徴とする液晶装置の駆動方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−203612(P2011−203612A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72344(P2010−72344)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】