説明

液晶装置の製造方法

【課題】良好な表示特性の液晶装置を高い生産性で製造する製造方法を提供する。
【解決手段】画素電極9を備えた第1基板10と、これに対向配置される第2基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを備え、画素電極9に対応する位置が表示領域Pとされ、この表示領域P間が非表示領域BMとされる液晶装置の製造方法である。画素電極9を表示領域Pとなる位置に、その周縁部を非表示領域BMとなる位置に形成し、画素電極9上の表示領域Pとなる位置に垂直配向膜41を形成し、非表示領域BMの少なくとも画素電極9の周縁部上に水平配向膜42を形成する。このとき、基板10A上の配向膜42aにラビング処理し、レジストパターンRをマスクにして表面改質して、水平配向膜42を形成し、垂直配向膜41の材料を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置を用いて映像を大画面に表示する装置として液晶プロジェクターがある。プロジェクターにおいては高輝度、高コントラストが要求されており、その点、垂直配向方式の液晶装置は高コントラストの表示が可能で、近年、プロジェクター用の液晶装置の液晶配向方式として採用されつつある。
【0003】
しかし、垂直配向方式では液晶が基板表面に対して垂直に立っており、電圧印加時に倒れる方位方向での相互作用が弱い。しかも、画素電位を印加すると、画素電極端から基板面に平行な方向に、横方向の電界が発生する。そのため、この横方向の電界に起因して、液晶が様々な方向に倒れてしまい、ディスクリネーションを生じることがあった。ディスクリネーションが生じると、明暗のムラやコントラストの低下、残像等の表示欠陥が視認されてしまう。
【0004】
そのため、表示領域では液晶を垂直配向させて、良好なコントラスト特性を確保し、画素領域周辺の、主に非表示領域では液晶を水平配向させ、液晶の配向を規制することでディスクリネーションを防止することが考えられる。このような構成の液晶装置は、特許文献1に開示されており、特許文献1の液晶装置では、表示領域に垂直配向膜を形成し、非表示領域に有機材料からなる水平配向膜を形成することによって、液晶の配向を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−216739号公報
【特許文献2】特開2009−294544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の液晶装置では、表示領域と非表示領域に無機材料と有機材料という異種の配向膜を形成するため、表示領域と非表示領域に段差が生じやすくなり、段差に起因したディスクリネーションが発生しやすくなるという課題があった。
また、無機材料と有機材料では液晶中の不純物のひきつけやすさが異なるため、一方の材料に前記不純物が吸着しやすくなるという現象が発生した。そのため焼きつきや残像といった表示不良を抑制しづらいという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載の液晶装置では、真空紫外領域の紫外線照射をすることにより、表示領域と非表示領域に異なる配向膜を形成しているが、大面積を精度よく、かつ部分的に真空紫外領域の紫外線を照射する装置を製造することは技術的に困難な状況である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、精度よく、かつ効率的に配向膜をパターニングし、良好な表示品質の液晶装置を高い生産性で製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
[適用例1]本適用例に係る液晶装置の製造方法は、複数の画素電極を有してなる第1基板と、該第1基板に対向して配置される第2基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを備え、前記液晶層は初期配向状態が垂直配向を呈しかつ誘電率異方性が負の液晶によって形成され、前記画素電極に対応する位置が表示領域とされ、該表示領域間が非表示領域とされる液晶装置の製造方法であって、前記画素電極を、前記第1基板の表示領域となる位置に形成し、かつその周縁部を前記非表示領域となる位置に張り出して形成する工程と、前記画素電極上で、かつ少なくとも前記表示領域となる位置に、前記液晶を略垂直に配向させる第1の配向層を形成する工程と、前記第1基板の画素電極側で、かつ前記非表示領域における、少なくとも前記液晶を所定の方位角で配向させる第2の配向層を形成する工程と、を有し、前記第2の配向層を形成する工程は、前記画素電極が形成された第1基板の画素電極側に配向下地層を形成する工程と、前記配向下地層を覆って、前記第2の配向層を形成する工程と、前記非表示領域となる箇所にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクにして前記第2の配向層を表面改質する工程と、を有し前記第1の配向層を形成する工程は、前記レジストパターンを除去する工程と、前記配向下地層を覆って第1の配向層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、表示領域側から非表示領域側に張り出した画素電極の周縁部上(第2のエリア)には、液晶を所定の方位角で配向させる第2の配向層を形成しているので、周縁上の液晶は、画素電位を印加した際に、揃った方向に配向するようになる。したがって表示領域(第1のエリア)内の液晶は、周縁部上の液晶によって配向する方向が規制され、画素電極端から基板と略平行な方向に発生する横方向電界に影響されることなく、一定の方向に配向するようになる。よって、表示領域での液晶の配向不良が防止され、ディスクリネーションが防止された液晶装置を製造することができる。
【0011】
また、表示領域(第1のエリア)に配置された液晶は、画素電極周縁部上(第2のエリア)によって、配向する方向を規制されるようになるので、電圧が印加されていない状態で略0度に垂直配向させた場合にも、電圧を印加した際には揃った方向に倒れて配向するようになり、表示領域においてディスクリネーションが防止される。よって良好なコントラスト特性を有し、かつ表示不良が防止された液晶装置を製造することができる。
【0012】
また、液晶を所定の方位角で配向させる第2のエリアは、画素電極の非表示領域に張り出してなる周縁部上、すなわち、表示領域の外部のみに形成しているので、表示領域には、略0度に垂直配向された液晶のみが配置されるようになる。したがって画素の透過率は同一画素内で均一になり、所望の透過率とすることができる。よって透過率が所望のものとならないことに起因する各画素の表示コントラスト低下が防止された液晶装置を製造することができる。
【0013】
また、第2の配向層を形成する工程において、第2の配向層は画素電極の全面に形成されるため、容易に液晶への配向規制力を付与させることができる。
【0014】
また、レジストパターンの形成方法は、公知の技術を適用できるため、第1の配向層と第2の配向層を簡便に配置することができる。
【0015】
[適用例2]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法において、前記第1の配向層を形成する工程は、長鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第1の配向層となる長鎖アルキル鎖を形成する工程を有し、前記第2の配向層を形成する工程は、短鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第2の配向層となる短鎖アルキル鎖を形成する工程と、前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程と、を有することが好ましい。ここで、配向処理する工程としてはラビング、光配向、イオンビーム配向処理等の手段が挙げられる。
【0016】
このようにすれば、第1の配向層を形成した箇所と第2の配向層を形成した箇所の段差がほぼ無視できるものとなるため、段差に起因したディスクリネーションの発生を抑制することができる。
また、第1の配向層材料と第2の配向層材料は、どちらもシランカップリング剤であるため、液晶中の不純物は、一方だけの配向層材料に付着することが抑制される。そのため、焼き付きなどの表示不良を抑制することができる。
【0017】
[適用例3]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法において、前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程は、前記第1の配向層形成箇所と前記第2の配向層形成箇所のいずれにもレジストパターンが覆われていない状態で配向処理する工程を有することが好ましい。配向処理する工程としてはラビング、光配向、イオンビーム配向処理などの手段が挙げられる。
【0018】
このようにすれば、平坦な配向層に対して配向処理をすることができるので、配向規制力不足による表示不良を抑制することができる。
【0019】
[適用例4]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法において、前記長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜3とすることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、垂直配向膜に適した長さのアルキル鎖と、水平配向膜に適した長さのアルキル鎖とを適当に形成することができる。
【0021】
[適用例5]本適用例に係る液晶装置の製造方法は、複数の画素電極を有してなる第1基板と、該第1基板に対向して配置される第2基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを備え、前記液晶層は初期配向状態が垂直配向を呈しかつ誘電率異方性が負の液晶によって形成され、前記画素電極に対応する位置が表示領域とされ、該表示領域間が非表示領域とされる液晶装置の製造方法であって、前記画素電極を、前記第1基板の表示領域となる位置に形成し、かつその周縁部を前記非表示領域となる位置に張り出して形成する工程と、前記画素電極上で、かつ少なくとも前記表示領域となる位置に、前記液晶を略垂直に配向させる第1の配向層を形成する工程と、前記第1基板の画素電極側で、かつ前記非表示領域における、少なくとも前記液晶を所定の方位角で配向させる第2の配向層を形成する工程と、を有し、前記第2の配向層を形成する工程は、前記画素電極が形成された第1基板の画素電極側に配向下地層を形成する工程と、前記配向下地層を覆って、前記第1の配向層を形成する工程と、前記第1の配向層形成箇所にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクにして前記第1の配向層に対して表面改質を行う工程と、前記レジストパターンを覆って第2の配向層を形成する工程と、その後に前記レジストパターンを除去する工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
本適用例によれば、第2の配向層を形成する工程において、第2の配向層材料を第1基板に配する際に、第1の配向層上はレジストパターンに覆われており、レジストパターンに付着した第2の配向層材料はレジストパターンを除去すると該レジストパターンとともに除去される。したがって、第2の配向層材料を前記レジストパターン上も含めた全面に配しても、第1の配向層上に第2の配向層材料が付着されることが防止され、第1の配向層の配向性が損なわれることが防止される。よって、液晶に電圧を印加した際に、表示領域周縁部の液晶を良好に配向させることができ、良好な表示特性の液晶装置とすることができる。また、第1の配向膜材料を前記レジストパターン上も含めて全面に配することができるので、第1の配向層を効率よく形成することができる。
【0023】
[適用例6]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法において、前記第1の配向層を形成する工程は、長鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第1の配向層となる長鎖アルキル鎖を形成する工程を有し、前記第2の配向層を形成する工程は、短鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第2の配向層となる短鎖アルキル鎖を形成する工程と、前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程と、を有することが好ましい。ここで、配向処理する工程としてはラビング、光配向、イオンビーム配向処理等の手段が挙げられる。
【0024】
このようにすれば、第1の配向層を形成した箇所と第2の配向層を形成した箇所の段差がほぼ無視できるものとなるため、段差に起因したディスクリネーションの発生を抑制することができる。
また、第1の配向層材料と第2の配向層材料は、どちらもシランカップリング剤であるため、液晶中の不純物は、一方だけの配向層材料に付着することが抑制される。そのため、焼き付きなどの表示不良を抑制することができる。
【0025】
[適用例7]上記適用例に記載の液晶装置において、前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程は、前記第1の配向膜形成箇所にレジストパターンが覆われた状態で配向処理する工程を有することが好ましい。配向処理する工程としてはラビング、光配向、イオンビーム配向処理などの手段が挙げられる。
【0026】
このようにすれば、画素電極上を前記レジストパターンで覆った状態で配向処理することができるので、画素電極が直接配向処理されることを防止できる。したがって画素電極が直接配向処理されることによる配向処理ムラが視認される等の表示不良が防止され、また、第1の配向層が直接配向処理されないため、第1の配向層が有する配向規制力が損なわれることがなく、良好なコントラスト特性を有することができる。
【0027】
[適用例8]上記適用例に記載の液晶装置の製造方法において、前記長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜3とすることが好ましい。
【0028】
このようにすれば、垂直配向膜に適した長さのアルキル鎖と、水平配向膜に適した長さのアルキル鎖とを適当に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る液晶装置の等価回路図。
【図2】液晶装置の表示部要部を平面視した模式図。
【図3】図2のX−X線断面図。
【図4】電圧を印加したときの液晶の配向を模式的に示す図。
【図5】本発明に係る実施形態1における液晶装置の製造方法の説明図。
【図6】本発明に係る実施形態1における液晶装置の製造方法の説明図。
【図7】本発明に係る実施形態1における液晶装置の製造方法の説明図。
【図8】本発明に係る実施形態2における液晶装置の製造方法の説明図。
【図9】本発明に係る実施形態2における液晶装置の製造方法の説明図。
【図10】本発明に係る電子機器について幾つかの例を示す斜視図。
【図11】本発明に係る投射型表示装置についての一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態1)
【0031】
以下、本発明の実施形態について、TFT(Thin−Film−Transistor)素子を用いたアクティブマトリックス型の透過型液晶装置の製造方法を例に説明するが、本発明の技術範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0032】
まず、本発明の製造方法の説明に先立ち図1〜4を用いて本発明の製造方法によって得られる液晶装置(透過型液晶装置)1の構成を説明する。
【0033】
図1は透過型液晶装置1のマトリクス状に配置された複数の画素におけるスイッチング素子、信号線等の等価回路図である。
図1に示すように、マトリクス状に配置された複数の画素には、画素電極9と画素電極9への通電制御を行うためのスイッチング素子であるTFT素子30がそれぞれ形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aがTFT素子30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給されるか、あるいは相隣接する複数のデータ線6aに対してグループ毎に供給される。
【0034】
また、走査線3aがTFT素子30のゲートに電気的に接続されており、複数の走査線3aに対して走査信号G1、G2,・・・、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。また、画素電極9はTFT素子30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT素子30を一定期間だけオンすることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snを所定のタイミングで書き込む。
【0035】
画素電極9を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、後述する共通電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ここで、保持された画像信号がリークすることを防止するために、画素電極9と共通電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。
【0036】
図2は、透過型液晶装置1の表示部を示す図であって、画素電極9が配された第1基板の配向膜(図示せず)が形成された面側から平面視した模式図である。液晶装置の表示部は、画素電極9(外周9aとする)に対応してその内側に設けられた表示領域Pと、この表示領域P間、すなわち表示領域Pに囲まれた位置に設けられた非表示領域BMとから構成されており、画素電極9は、その周縁部が非表示領域BMに張り出して配置されている。また、少なくとも表示領域P全体を含んで、第1のエリアA1が形成されており、非表示領域BMには第2のエリアA2が形成されている。
【0037】
図3は、図2のX−X線断面の模式図である。図3に示すように、透過型液晶装置1は、第1基板10と、第2基板20と、これら基板間に挟持された液晶層50とから構成されている。第1基板10は、ガラス等の透明な基板10Aと、この基板10A上に形成された画素電極9や遮光膜13、および第1の配向層(垂直配向膜)41、第2の配向層(水平配向膜)42、配向下地層43等から構成されている。TFT素子(図示せず)や配線(図示せず)等は遮光膜13上に形成されており、基板10A側から入射する光が、TFT素子等にあたることはない。また、遮光膜13が形成されていることにより、非表示領域BMが規定され、非表示領域BM間の画素開口部として表示領域Pが規定されている。
【0038】
また、第1基板10上には、少なくとも表示領域Pを含んで、第1のエリアA1が形成されており、非表示領域BMには、少なくとも画素電極9の非表示領域に張り出してなる周縁部9b上を含んで第2のエリアA2が形成されている。図3に示すように第1のエリアA1と第2のエリアA2とは連続して設けられている。また、第1のエリアA1に対応する画素電極9上には、第1の配向層(垂直配向膜)41が形成されており、第2のエリアA2に対応する画素電極9上および遮光膜13上には、第2の配向層(水平配向膜)42が形成されており、第1の配向層と第2の配向層の下地として配向下地層43が形成されている。
【0039】
第2基板20は、ガラス等からなる透明な基板20Aと、第1の配向層(垂直配向膜)61と、配向下地層63と共通電極21等から構成されている。なお、第2基板側にも遮光膜13を形成してもよい。
【0040】
図4は、画素電極9と共通電極21との間に電圧を印加したときの液晶の配向を模式的に示す図である。画素電極9と共通電極21との間に電圧を印加すると、その間に電圧に応じて液晶層50の液晶が配向し、透過型液晶装置1の厚さ方向に透過する光が変調され、透過型液晶装置1は階調表示が可能なものとなる。
【0041】
このとき、本発明の透過型液晶装置1では、第2のエリアA2に位置する液晶52については、電圧無印加状態において所定のプレチルト角で配向させているので、電圧を印加した場合に、揃った方向に倒れて配向する。したがって、第1のエリアA1に位置する液晶51は、電圧を印加された場合に倒れる方向が液晶52に規制され、揃った方向に配向するようになる。すなわち、第1のエリアA1の、第2のエリアA2近傍に位置する液晶は、第2のエリアA2の外周部となる画素電極9の周縁部9b上の液晶52の動作に大きく影響を受け、特にその倒れる方向が周縁部9b上の液晶52の倒れる方向に規制される。
これにより、第1のエリアA1の液晶51は、全て揃った方向に倒れ、均一に配向するようになる。よって画素電極9の端部から第1基板10に平行な方向に横方向電界が生じても、表示領域Pの液晶51は、配向不良を生じることが防止される。
【0042】
また、表示領域Pに対応する液晶51と異なる配向となる液晶52は、非表示領域BM内のみに配置しているので、表示領域(画素開口部)Pに対応する画素の透過率は液晶51のみに規定され、均一なものとなる。したがって、画素の透過率を所望のものとすることができる。また、表示領域Pに対応する液晶51は、配向不良が防止されているので、電圧無印加状態で略垂直に配向させることができる。
【0043】
次に本発明に係る液晶装置の製造方法の一実施形態を、上記透過型液晶装置1の製造方法を例にして説明する。
【0044】
図5〜図7は、上記透過型液晶装置1(液晶装置)の製造方法を説明する図である。
まず、図5(a)に示すように、ガラス等からなる透明な基板10A上にCr(クロム)等からなる遮光膜13を格子状に形成し、この遮光膜13によって非表示領域BMを規定するとともに、この非表示領域BMに囲まれた領域を表示領域(画素開口部)Pとする。続いて、遮光膜13上に図1に示したTFT素子30やデータ線6a、走査線3a等の配線を形成する。次に、表示領域Pから非表示領域BMに張り出して、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電体を用いて画素電極9を形成する。これらの工程は、公知の方法を用いることができる。
【0045】
次に図5(b)に示すように、画素電極9が形成された基板10Aの画素電極9側に、例えばスピンコート法等の方法を用いて、ゾルゲル系のSiO2膜を形成し、配向下地層43を形成する。その後、低圧水銀ランプもしくはエキシマUVランプを用いて真空紫外光を配向下地層43に照射することで配向下地層43の表面改質をする。その後、短鎖シランカップリング剤をSiO2膜上に表面処理し、配向層42aを形成する。この短鎖シランカップリング剤の材料としては、例えばヘキサメチルジシラザン等を用いる。
【0046】
そして、図5(c)に示すように、ラビング布をローラーに巻きつけたラビング処理装置55により、配向層42aの全面にラビング処理を行い、配向層42aに配向性を付与する。この時、後述する垂直配向膜(第1の配向層)は形成されていないため、垂直配向膜に配向性が付与されてしまう等の不都合を生じることはない。
【0047】
次に、図6(a)に示すように、配向層42aの第2の配向層形成箇所にレジストパターンRを形成する。そして、このレジストパターンRをマスクにして、低圧水銀ランプもしくはエキシマUVランプを用いて真空紫外光を照射することによって、図6(b)に示すように、水平配向膜(第2の配向層)42を形成する。水平配向膜42が形成されたことにより、水平配向膜42上に第2のエリアA2が形成可能となる。また、第2のエリアA2間が第1のエリアA1として規定される。その後、水平配向膜42を覆っているレジストパターンRを剥離する。
【0048】
次に、水平配向膜42が形成された基板10Aの第1のエリアA1となる位置に垂直配向膜を形成する。まず、基板10Aに、例えばN2雰囲気にて150〜180℃程度の温度で3時間程度乾燥処理を行う。その後、基板10Aを、例えばデシルトリメトキシシラン溶液を有した容器とともに密閉容器内に放置する。そして、この容器を例えば150℃の温度で一時間加熱することによって、デシルトリメトキシシラン溶液の蒸気を基板10A上の配向下地層43に接触させ、図6(c)に示すように、垂直配向膜(第1の配向層)41を形成する。
【0049】
このとき、水平配向膜42は緻密に付着しているため、水平配向膜42上面に垂直配向膜の材料が付着することは抑制されている。
これにより、第1のエリアA1に垂直配向膜41を、第2のエリアA2に水平配向膜42を、それぞれ備えた第1基板10を形成する。
【0050】
また、第1基板10とは別に図7(a)に示すように第2基板20を形成する。この第2基板20は、ガラス等の透明な材料からなる基板20A上に、ITO等の透明導電体を用いて共通電極21を形成し、この共通電極21上に、配向下地層63と垂直配向膜61を形成する。共通電極21の形成にはスパッタ法等が用いられる。配向下地層63は例えば、ゾルゲル系のSiO2膜をスピンコートにより形成した後、低圧水銀ランプやエキシマUVランプを用いて真空紫外光を配向下地層63に照射して表面改質した後にデシルトリメトキシシランを配向下地層63上に表面処理し垂直配向膜61とする。
【0051】
次に、図7(b)に示すように、第1基板10と第2基板20とを、垂直配向膜(第1の配向層)41、61および水平配向膜(第2の配向層)42が内側になるように貼り合わせ、図7(c)に示すように、第1基板10と第2基板20との間に、液晶層50を封入することで、透過型液晶装置1を形成する。
【0052】
以上のような製造方法によれば、基板10A上の全面に第1の配向層材料を表面処理しても、第2の配向層上に第1の配向層材料が付着することが抑制される。このことから、良好な表示品質の液晶装置を製造できる。また、効率的に第2の配向層42と第1の配向層41とを形成することができ、よって高い生産性で液晶装置(透過型液晶装置)1を製造できる。
【0053】
なお、本実施形態では、第2のエリアA2を画素電極9の周縁部と画素電極9間とに連続して形成しているが、画素電極9の周縁部9bのみに形成しても良い。また、遮光膜13をCr等によって形成して非表示領域BMを規定しているが、例えば配線電極等によって非表示領域BMを規定しても良い。
(実施形態2)
【0054】
図8、図9は、実施形態2に係る上記透過型液晶装置(液晶装置)製造方法の説明図である。本実施形態に係る液晶装置について、これらの図を参照して説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を使用し、重複する説明は省略する。
図8(a)は実施形態1の図5(a)と同様であるため、説明を割愛する。
次に、図8(b)に示すように、画素電極9が形成された基板10Aの画素電極9側に、例えばスピンコート法等の方法を用いて、ゾルゲル系のSiO2膜を形成し、配向下地層43を形成する。その後、低圧水銀ランプもしくはエキシマUVランプを用いて真空紫外光を配向下地層43に照射することで配向下地層の表面改質をする。その後、長鎖シランカップリング剤をSiO2膜上に表面処理し、配向層41bを形成する。この長鎖シランカップリング剤の材料としては、例えばデシルトリメトキシシラン等を用いる。
【0055】
次に、図9(a)に示すように、配向層41bの第1の配向層形成箇所にレジストパターンRを形成する。そして、このレジストパターンRをマスクにして、低圧水銀ランプもしくはエキシマUVランプを用いて真空紫外光を照射することによって、図9(b)に示すように、垂直配向膜(第1の配向層)41を形成する。垂直配向膜41が形成されたことにより、垂直配向膜41上に第1のエリアA1が形成可能となる。また、第1のエリアA1間が第2のエリアA2として規定される。なお、垂直配向膜41を覆っているレジストパターンRについては、これを除去することなく、そのままに保持しておく。
【0056】
次に、垂直配向膜41が形成された基板10Aの第2のエリアA2となる位置に水平配向膜を形成する。基板10Aに、低圧水銀ランプもしくはエキシマUVランプを用いて真空紫外光を照射することにより第2のエリアA2となる位置に形成された垂直配向膜41は表面改質される。その後、短鎖シランカップリング剤でレジストパターンRを覆って表面処理し、配向層42bを形成する。この短鎖シランカップリング剤の材料としては、例えばヘキサメチルジシラザン等を用いる。
【0057】
このとき、垂直配向膜41の上面はレジストパターンRに覆われているので、垂直配向膜41上面に水平配向膜の材料が付着することが防止される。
【0058】
次に図9(c)に示すように、ラビング布をローラーに巻きつけたラビング処理装置55により、配向層42bの全面にラビング処理を行い、配向層42bに配向性を付与する。この時、垂直配向膜41をレジストパターンRで覆った状態でラビング処理しているので、垂直配向膜41はラビング処理から保護され、垂直配向膜41にラビング痕等のキズがつくことが防止され、また水平配向膜の材料が第1のエリアA1に転写されることが防止される。
【0059】
そして図9(d)に示すようにレジストパターンRを除去すると水平配向膜(第2の配向層)42が形成され、実施形態1の図6(c)で示した構造となる。
以降の工程である、第2基板形成方法、液晶封入方法などは実施形態1と同様の方法であるため、割愛する。
【0060】
以上のような製造方法によれば、配向層42bの全面にラビング処理しても、垂直配向膜41をレジストパターンRで覆った状態でラビング処理しているので、垂直配向膜41はラビング処理から保護され、垂直配向膜41にラビング痕等のキズがつくことが防止される。また水平配向膜の材料が第1のエリアA1に転写されることが防止される。このことから、良好な表示品質の液晶装置を製造できる。また、実施形態1と同様に、高い生産性で液晶装置(透過型液晶装置)1を製造できる。
【0061】
[電子機器]
上記実施形態の液晶装置を備えた電子機器の例について説明する。
図10(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10(a)において、符号500は携帯電話本体を示し、符号501は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0062】
図10(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図10(b)において、符号600は情報処理装置、符号601はキーボードなどの入力部、符号603は情報処理装置本体、符号602は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0063】
図10(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図10(c)において、符号700は時計本体を示し、符号701は上記実施形態の液晶装置を用いた液晶表示部を示している。
【0064】
このように図10に示す電子機器は、表示部に上述の本発明の一例たる液晶装置を適用したものであるので、高コントラストで、かつ表示品質が高い表示装置を備えた電子機器を提供できる。
【0065】
[投射型表示装置]
次に、上記実施形態の液晶装置を光変調手段として備えた投射型表示装置(プロジェクター)の構成について、図11を参照して説明する。図11は、上記実施形態の液晶装置を光変調装置として用いた投射型表示装置の要部を示す概略構成図である。図11において810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は液晶光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投写レンズを示す。
【0066】
光源810はメタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。青色光、緑色光反射のダイクロイックミラー813は、光源810からの光束のうちの赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた赤色光用液晶光変調装置822に入射される。
【0067】
一方、ダイクロイックミラー813で反射された色光のうち緑色光は緑色光反射のダイクロイックミラー814によって反射され、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた緑色光用液晶光変調装置823に入射される。なお、青色光は第2のダイクロイックミラー814も透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ818、リレーレンズ819、出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられ、これを介して青色光が上述の本発明の一例たる液晶装置を備えた青色光用液晶光変調装置824に入射される。
【0068】
各光変調装置により変調された3つの色光はクロスダイクロイックプリズム825に入射する。このプリズムは4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
【0069】
上記構造を有する投射型表示装置は、上述の本発明の一例たる液晶装置を備えたものであるので、高コントラストで、かつ表示品質が高い表示装置を提供できる。
【符号の説明】
【0070】
1…透過型液晶装置(液晶装置)、9…画素電極、10…第1基板、13…遮光膜、20…第2基板、21…共通電極、41,61…第1の配向層(垂直配向膜)、42…第2の配向層(水平配向膜)、43,63…配向下地層、50…液晶層、55…ラビング装置、A1…第1のエリア、P…表示領域(画素開口部)、BM…非表示領域、R…レジストパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素電極を有してなる第1基板と、該第1基板に対向して配置される第2基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを備え、前記液晶層は初期配向状態が垂直配向を呈しかつ誘電率異方性が負の液晶によって形成され、前記画素電極に対応する位置が表示領域とされ、該表示領域間が非表示領域とされる液晶装置の製造方法であって、
前記画素電極を、前記第1基板の表示領域となる位置に形成し、かつその周縁部を前記非表示領域となる位置に張り出して形成する工程と、
前記画素電極上で、かつ少なくとも前記表示領域となる位置に、前記液晶を略垂直に配向させる第1の配向層を形成する工程と、
前記第1基板の画素電極側で、かつ前記非表示領域における、少なくとも前記液晶を所定の方位角で配向させる第2の配向層を形成する工程と、を有し、
前記第2の配向層を形成する工程は、前記画素電極が形成された第1基板の画素電極側に配向下地層を形成する工程と、前記配向下地層を覆って、前記第2の配向層を形成する工程と、前記非表示領域となる箇所にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクにして前記第2の配向層を表面改質する工程と、を有し、
前記第1の配向層を形成する工程は、前記レジストパターンを除去する工程と、前記配向下地層を覆って第1の配向層を形成する工程と、を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の配向層を形成する工程は、長鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第1の配向層となる長鎖アルキル鎖を形成する工程を有し、前記第2の配向層を形成する工程は、短鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第2の配向層となる短鎖アルキル鎖を形成する工程と、前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項3】
前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程は、前記第1の配向層形成箇所と前記第2の配向層形成箇所のいずれにもレジストパターンが覆われていない状態で配向処理する工程を有することを特徴とする請求項2に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項4】
前記長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜3とすることを特徴とする請求項2または3に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項5】
複数の画素電極を有してなる第1基板と、該第1基板に対向して配置される第2基板と、これら基板間に挟持された液晶層とを備え、前記液晶層は初期配向状態が垂直配向を呈しかつ誘電率異方性が負の液晶によって形成され、前記画素電極に対応する位置が表示領域とされ、該表示領域間が非表示領域とされる液晶装置の製造方法であって、
前記画素電極を、前記第1基板の表示領域となる位置に形成し、かつその周縁部を前記非表示領域となる位置に張り出して形成する工程と、
前記画素電極上で、かつ少なくとも前記表示領域となる位置に、前記液晶を略垂直に配向させる第1の配向層を形成する工程と、
前記第1基板の画素電極側で、かつ前記非表示領域における、少なくとも前記液晶を所定の方位角で配向させる第2の配向層を形成する工程と、を有し、
前記第2の配向層を形成する工程は、前記画素電極が形成された第1基板の画素電極側に配向下地層を形成する工程と、前記配向下地層を覆って、前記第1の配向層を形成する工程と、前記第1の配向層形成箇所にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクにして前記第1の配向層に対して表面改質を行う工程と、前記レジストパターンを覆って第2の配向層を形成する工程と、その後に前記レジストパターンを除去する工程と、を有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の配向層を形成する工程は、長鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第1の配向層となる長鎖アルキル鎖を形成する工程を有し、前記第2の配向層を形成する工程は、短鎖アルキル基を含むシランカップリング剤を気相処理により反応させて、前記第2の配向層となる短鎖アルキル鎖を形成する工程と、前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程と、を有することを特徴とする請求項5に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項7】
前記短鎖アルキル鎖が形成された面を一定方位方向に配向処理する工程は、前記第1の配向膜形成箇所にレジストパターンが覆われた状態で配向処理する工程を有することを特徴とする請求項6に記載の液晶装置の製造方法。
【請求項8】
前記長鎖アルキル鎖の炭素原子数を10〜20とし、前記短鎖アルキル鎖の炭素原子数を1〜3とすることを特徴とする請求項6または7に記載の液晶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−225973(P2012−225973A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90758(P2011−90758)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】