液晶装置及び電子機器
【課題】配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な液晶装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】配向膜が形成された一対の基板間に液晶50aを挟持する液晶装置100であって、一対の基板の少なくとも一方の基板10に形成された配向膜16は、第1の膜161と、第1の膜161に積層して配置された第2の膜162と、を備え、第1の膜161の第1遅相軸と第2の膜162の第2遅相軸とは交差しており、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差は、概ね0になっている。
【解決手段】配向膜が形成された一対の基板間に液晶50aを挟持する液晶装置100であって、一対の基板の少なくとも一方の基板10に形成された配向膜16は、第1の膜161と、第1の膜161に積層して配置された第2の膜162と、を備え、第1の膜161の第1遅相軸と第2の膜162の第2遅相軸とは交差しており、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差は、概ね0になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に記載されるような液晶装置が知られている。特許文献1の液晶装置は、2枚の基板により液晶層を挟持し、各基板の内面側に、液晶層の配向を制御する配向膜を備えたものである。配向膜には、有機材料で形成された有機配向膜と、無機材料で形成された無機配向膜がある。特許文献1の液晶装置の配向膜は、斜方蒸着で形成された無機配向膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−45784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配向膜の表面の有機材料又は無機材料は、液晶層の配向制御を行うために、特定の方向性を持って配向している。そのため、配向膜自体に光学異方性が生じ、表示のコントラストを低下させる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な液晶装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の液晶装置は、配向膜が形成された一対の基板間に液晶を挟持する液晶装置であって、前記一対の基板の少なくとも一方の基板に形成された前記配向膜は、第1の膜と、前記第1の膜に積層して配置された第2の膜と、を備え、前記第1の膜の第1遅相軸と前記第2の膜の第2遅相軸とは交差しており、前記第1の膜と前記第2の膜との積層によって発現される位相差は、概ね0になっていることを特徴とする。
【0007】
この液晶装置によれば、第1の膜の第1遅相軸と第2の膜の第2遅相軸とが交差しており、第1の膜と第2の膜との積層によって発現される位相差が概ね0になっている。そのため、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な液晶装置を提供することができる。
【0008】
前記液晶装置において、前記第1遅相軸と前記第2遅相軸とは、概ね直交していてもよい。
【0009】
この液晶装置によれば、第1の膜の位相差と第2の膜の位相差とを確実に相殺することができる。
【0010】
前記液晶装置において、前記第1の膜及び前記第2の膜は、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有し、前記第1の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向きとし、前記第2の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第2の長軸の向きとしたときに、前記第1遅相軸は前記第1の長軸の向きと概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の長軸の向きと概ね直交していてもよい。
【0011】
第1の膜と第2の膜を柱状の結晶体で形成した場合、その結晶体の長軸の方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、結晶体の長軸方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜と第2の膜の結晶体の長軸方向を特定の関係に設定することで、第1の膜と第2の膜の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0012】
前記液晶装置において、前記第1の膜と前記第2の膜の間には、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有する第3の膜が配置され、前記第3の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向きとしたときに、前記第3の長軸の向きは、前記第1の長軸の向き及び前記第2の長軸の向きの双方の向きと異なる向きであってもよい。
【0013】
この液晶装置によれば、第3の膜がバッファ層として機能するので、第2の膜を第1の膜に積層して配置するときの結晶体の配列の乱れを緩和することができる。すなわち、第1の膜の上に直接第2の膜の結晶体を成長させようとした場合、下地の第1の膜の結晶体の成長方向が第2の膜の結晶体の成長方向と大きく異なるため、所望の方向にうまく第2の膜の結晶体が成長しない場合がある。その場合、第1の膜の上に、結晶体の成長方向が第1の膜と第2の膜の結晶体の成長方向の中間にある第3の膜を形成し、これを下地として第2の膜を形成すれば、第2の膜の結晶体の成長方向を所望の方向に制御し易い。
【0014】
前記液晶装置において、前記第1の長軸の向きと前記第3の長軸の向きのなす角度は、概ね45度であってもよい。
【0015】
この液晶装置によれば、第3の膜における第3の長軸の向きが第1の膜における第1の長軸の向きと第2の膜における第2の長軸の向きとのなす角度の概ね中央値となるので、第2の膜を第1の膜に積層して配置するときの結晶体の配列の乱れを緩和しやすくなる。
【0016】
前記液晶装置において、前記第1の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度と前記第2の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度とを概ね等しくすることで、前記第1の膜と前記第2の膜の屈折率異方性が概ね等しくなっていてもよい。
【0017】
この液晶装置によれば、第1の膜の結晶体の長軸が基板となす角度と第2の膜の結晶体の長軸が基板となす角度とが概ね等しいので、第1の膜の成膜条件(例えば蒸着角度)と第2の膜の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0018】
前記液晶装置において、前記第1の膜及び前記第2の膜は、有機材料を光配向処理することにより形成されたものであり、前記第1遅相軸は前記第1の膜の配向方向と概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の膜の配向方向と概ね直交していてもよい。
【0019】
第1の膜と第2の膜を有機材料を光配向処理することによって形成した場合、形成された膜の配向方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、形成された膜の配向方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜と第2の膜の配向方向を特定の関係に設定することで、第1の膜と第2の膜の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0020】
前記液晶装置において、前記配向膜は、前記一対の基板の双方の基板に形成されていてもよい。
【0021】
この液晶装置によれば、一対の基板の双方の基板に形成された配向膜全体の位相差が低減されることとなる。したがって、配向膜が一対の基板の一方の基板のみに形成されている構成に比べて、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することができる。
【0022】
前記液晶装置において、前記第1の膜と前記第2の膜は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じであってもよい。
【0023】
この液晶装置によれば、第1の膜の成膜条件(例えば材料、処理時間)と第2の膜の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0024】
本発明の電子機器は、上述した液晶装置を備えていることを特徴とする。
【0025】
この電子機器によれば、上述した液晶装置を備えているので、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る液晶装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。
【図3】同実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための模式図である。
【図4】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための斜視図である。
【図5】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。
【図6】同実施形態に係る配向膜の微視的構造を説明するための模式図である。
【図7】第2実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための模式図である。
【図8】第3実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。
【図9】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。
【図10】第4実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。
【図11】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。
【図12】同実施形態に係る配向膜を作製するための光配向処理を示す断面図である。
【図13】電子機器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、液晶装置100の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、液晶装置100の平面図、図1(b)は図1(a)のH−H’線に沿う断面図である。なお、本実施形態では、VA(Vertical Alignment)モードの液晶装置を例に挙げて説明する。
【0029】
液晶装置100は、素子基板10と対向基板20とを備えている。素子基板10と対向基板20とは、平面視略矩形枠状のシール材52を介して貼り合わされている。シール材52には、液晶を注入するための開口部55(液晶注入口)が形成されており、該開口部55が封止材54により封止されている。シール材52及び封止材54に囲まれた領域内には、液晶層50が封入されている。シール材52及び封止材54の内周側に沿って平面視矩形枠状の額縁53が形成されており、額縁53の内側の領域が表示領域11となっている。
【0030】
表示領域11の内側には、複数の画素12がマトリクス状に設けられている。画素12は、表示領域11の最小表示単位を構成している。シール材52の外側の領域には、素子基板10の1辺(図示下辺)に沿って、データ線駆動回路101および外部回路実装端子102が形成されており、この1辺に隣接する2辺に沿ってそれぞれ走査線駆動回路104が形成されて周辺回路を構成している。
【0031】
素子基板10の残る1辺(図示上辺)には、表示領域11の両側の走査線駆動回路104間を接続する複数の配線105が設けられている。また、対向基板20の各角部においては、素子基板10と対向基板20との間の電気的導通をとるための基板間導通材106が配設されている。
【0032】
素子基板10の液晶層50側には、複数の画素電極9が配列形成されている。画素電極9は、画素12ごとに設けられている。素子基板10には、複数のスイッチング素子(図示略)が設けられている。スイッチング素子は、例えば薄膜トランジスターにより構成され、画素12ごとに設けられている。スイッチング素子のソース領域は、図示略のデータ線を介してデータ線駆動回路101と電気的に接続されている。スイッチング素子のゲート電極は、図示略の走査線を介して走査線駆動回路104と電気的に接続されている。スイッチング素子のドレイン領域は、画素電極9と電気的に接続されている。
【0033】
画素電極9上には、第1配向膜16が形成されている。対向基板20の液晶層50側に、額縁53および遮光膜(図示略)が形成されている。額縁53および遮光膜(図示略)の上に表示領域11の全面を覆う共通電極21が形成されている。共通電極21上には、第2配向膜22が形成されている。液晶層50に電界が印加されていない状態の液晶層50の配向状態は、第1配向膜16および第2配向膜22により制御されている。
【0034】
液晶装置100は、反射型の液晶装置として構成されている。画素電極9は、アルミニウム(Al)や銀(Ag)等の高反射率の金属材料からなる反射電極として構成されている。共通電極21は、インジウム錫酸化物(以下、ITOという)等の透明導電性材料からなる透明電極として構成されている。
【0035】
表示すべき画像の画像信号は、液晶装置100の外部から外部回路実装端子102を介して供給される。データ線駆動回路101は、画像信号に含まれる画素ごとの階調値を示す画像データに基づいて、液晶層50を駆動する駆動電圧波形をスイッチング素子に出力する。走査線駆動回路104は、画像信号に含まれる画素の表示タイミングを示すデータに基づいて、スイッチング素子のゲート電極に電圧を印加し、スイッチング素子のオンオフを制御する。
【0036】
スイッチング素子がオンになると、上記の駆動電圧波形が画素電極9に供給され、画素電極9に電圧が印加される。共通電極21の電位は、例えば複数の画素12で共通の共通電位に保持されている。液晶層50には、画素電極9と共通電極21との間の電位差に相当する電圧が印加される。この電圧により生じる電界によって、液晶層50の配向状態が変化する。液晶層50に入射した光は、液晶層50の配向状態に応じて画素12ごとに偏光状態が変化する。液晶層50から射出された光を偏光板(図示略)に通すことにより、画像データに応じた階調値の光が偏光板から射出される。このようにして、画像データに対応する画像を表示することが可能になっている。
【0037】
図2は、第1実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。なお、図2においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0038】
液晶装置100は、第1配向膜16が形成された素子基板10と第2配向膜22が形成された対向基板20との間に液晶50aを挟持した構成となっている。液晶50aは、第1配向膜16を構成する第2の膜162と第2配向膜22を構成する第2の膜222とによって所定のプレチルト角が付与されている。
【0039】
第1配向膜16は、素子基板10上に配置された第1の膜161と、第1の膜161に積層して配置された第2の膜162と、を備えている。第1の膜161及び第2の膜162は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0040】
第1の膜161の厚みと第2の膜162の厚みとは、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜161及び第2の膜162の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。ここで、「概ね同じ厚み」とは、第1の膜161の厚みと第2の膜162の厚みとが完全に同一ではなく、わずかな厚みの差があっても、本発明の許容範囲であることを意味している。具体的には、第2の膜162の厚みは、第1の膜161の厚みに対して、例えば±5%程度の厚みの差は許容されることを意味している。
【0041】
第2配向膜22は、対向基板20上に配置された第1の膜221と、第1の膜221に積層して配置された第2の膜222と、を備えている。第1の膜221及び第2の膜222は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0042】
第2配向膜22について、第1の膜221の厚みと第2の膜222の厚みとは、第1配向膜16における第1の膜161の厚みと第2の膜162の厚みとの関係と同様、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜221及び第2の膜222の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。
【0043】
図3は、第1実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための模式図である。なお、図3において、符号Va1は素子基板10側の第1配向膜16を構成する第2の膜162の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向き、符号Va2は対向基板20側の第2配向膜22を構成する第2の膜222の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向きである。また、図3においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、第1配向膜16、第2配向膜22、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0044】
一対の基板10,20には、シリコン酸化物又は金属酸化物を物理蒸着することにより、配向膜を構成する第1の膜及び第2の膜が形成されている。物理蒸着を行う方法としては、斜方蒸着法やスパッタ法等が好適である。本実施形態では、配向膜を構成する第1の膜及び第2の膜は、真空蒸着法によってSiO2が斜方蒸着されて形成されている。
【0045】
斜方蒸着については、例えば基板面から所定の角度だけ傾いた方向から蒸着を行うことにより、蒸着と同じ方位に所望の角度傾いた方向に、SiO2のカラムを成長させ、これによって配向膜を構成する第1の膜及び第2の膜のそれぞれに異方性を付与している。すなわち、一対の基板10,20の配向膜における第2の膜は、カラムの長軸を基板上に投影したときの基板の上面上における長軸の向きに沿うように、配向規制力を有している。
【0046】
素子基板10側の第1配向膜16を構成する第2の膜162の蒸着の向きVa1と対向基板20側の第2配向膜22を構成する第2の膜222の蒸着の向きVa2とは、互いに平行であって反対の向きとなっている。したがって、これら第1配向膜16を構成する第2の膜162と第2配向膜22を構成する第2の膜222とは、互いに平行であって反対の向きに配向規制方向を有している。
【0047】
図6は、第1実施形態に係る配向膜の微視的構造を説明するための模式図である。ここでは、第1配向膜16と第2配向膜22のうち第1配向膜16を構成する第1の膜161及び第2の膜162の微視的構造を例に挙げて説明する。なお、図6においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、基板上面における所定の方向をX軸方向、基板上面においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向とY軸方向のそれぞれの直交する方向(基板上面の法線方向)をZ軸方向とする。また、図6において、図6(a)は第1の膜161の微視的構造を示す図(Y軸方向から視た図)、図6(b)は図6(a)を基板の法線の周りに90度だけ回転した図(X軸方向から視た図)、図6(c)は第1の膜161及び第2の膜162の微視的構造を示す図(X軸方向から視た図)である。
【0048】
第1の膜161は、図6(a)に示すように微視的に見て、無機材料が斜め方向161Dに沿って成長したカラム161aを有している。ここで、斜め方向161Dは、XZ平面に対して略平行な方向となる。第1の膜161は、微視的には、素子基板10上において、無機材料が斜方蒸着される斜め方向161Dに沿って延びた、カラム(柱状部分)161aを有している。カラム161aは、素子基板10の上面に対して所定の傾斜角度θ1をなして配置されている。ここで、傾斜角度θ1は、第1の膜161の結晶体161aの長軸が基板となす角度である。このような構造からなる第1の膜161は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。
【0049】
第2の膜162は、図6(b)に示すように、第1の膜161が形成された素子基板10を基板の法線の周りに90度だけ回転した後、第1の膜161の上に形成することができる。
【0050】
第2の膜162は、図6(c)に示すように微視的に見て、無機材料が斜め方向162Dに沿って成長したカラム162aを有している。ここで、斜め方向162Dは、YZ平面に対して略平行な方向となる。第2の膜162は、微視的には、第1の膜161上において、無機材料が斜方蒸着される斜め方向162Dに沿って延びた、カラム(柱状部分)162aを有している。カラム162aは、第1の膜161の上面(素子基板10の上面)に対して所定の傾斜角度θ2をなして配置されている。ここで、傾斜角度θ2は、第2の膜162の結晶体162aの長軸が基板となす角度である。このような構造からなる第2の膜162は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。
【0051】
本実施形態では、第1の膜161におけるカラム161aの傾斜角度θ1と第2の膜162におけるカラム162aの傾斜角度θ2とを概ね等しくすることで、第1の膜161と第2の膜162の屈折率異方性が概ね等しくなっている。ここで、「傾斜角度が概ね等しい」とは、第1の膜161におけるカラム161aの傾斜角度θ1と第2の膜162におけるカラム162aの傾斜角度θ2とが完全に同一ではなく、わずかな角度の差があっても、本発明の許容範囲であることを意味している。具体的には、第2の膜162におけるカラム162aの傾斜角度は、第1の膜161におけるカラム161aの傾斜角度θ1に対して、例えば±5%程度の角度の差は許容されることを意味している。
【0052】
図4は、第1実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための斜視図である。図5は、第1実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。ここでは、第1配向膜16と第2配向膜22のうち第1配向膜16を構成する第1の膜161及び第2の膜162の光学的異方性を例に挙げて説明する。なお、図4において、図4(a)は第1の膜161の光学的異方性を説明するための斜視図、図4(b)は第2の膜162の光学的異方性を説明するための斜視図である。また、図5において、図5(a)は第1の膜161の光学的異方性を説明するための平面図、図5(b)は第2の膜162の光学的異方性を説明するための平面図である。
【0053】
図4には、第1配向膜16を構成する第1の膜161及び第2の膜162の屈折率楕円体における光軸方向の主屈折率が示されている。本実施形態では、第1の膜161において主屈折率nx、ny、nxはnx<ny<nzなる関係、第2の膜162において主屈折率nx’、ny’、nx’はnx’<ny’<nz’なる関係を満たす構成(二軸性の屈折率楕円体)とされている。すなわち、第1の膜161において、基板の法線方向から傾いた方向の屈折率nzが他の方向の屈折率nx、nyより大きく、屈折率楕円体では米粒型となる。第2の膜162においても、基板の法線方向から傾いた方向の屈折率nz’が他の方向の屈折率nx’、ny’より大きく、屈折率楕円体では米粒型となる。このように、第1の膜161及び第2の膜162の屈折率楕円体を二軸性の屈折率楕円体としてもよいし、これに替えて、第1の膜161において主屈折率nx、ny、nxはnx=ny<nzなる関係、第2の膜162において主屈折率nx’、ny’、nx’はnx’=ny’<nz’なる関係を満たす構成(一軸性の屈折率楕円体)としてもよい。
【0054】
本実施形態では、第1の膜161における主屈折率nx、ny、nxと第2の膜162における主屈折率nx’、ny’、nx’とは、それぞれ互いに概ね同じになっている。つまり、第1の膜161の屈折率異方性と第2の膜162の屈折率異方性とは、概ね同じ屈折率異方性となっている。ここで、「概ね同じ屈折率異方性」とは、第1の膜161の屈折率異方性と第2の膜162の屈折率異方性とが完全に同一ではなく、わずかな屈折率異方性の差があっても、本発明の許容範囲であることを意味している。具体的には、第2の膜162の屈折率異方性は、第1の膜161の屈折率異方性に対して、例えば±5%程度の屈折率異方性の差は許容されることを意味している。
【0055】
第1の膜161は、カラム161aを形成した無機膜により、第1遅相軸161Lを有したものとなっている。第1遅相軸161Lは、図4(a)に示した楕円体を、基板の法線方向から視て基板上面に投影した楕円形の長軸の長さ方向に一致する。
【0056】
第2の膜162は、カラム162aを形成した無機膜により、第2遅相軸162Lを有したものとなっている。第2遅相軸162Lは、図4(b)に示した楕円体を、基板の法線方向から視て基板上面に投影した楕円形の長軸の長さ方向に一致する。
【0057】
図5に示すように、第1遅相軸161Lの方向は、カラム161aの長軸方向と一定の関係性を持って配置されている。カラム161aの長軸方向と第1遅相軸161Lとの間には一対一の関係があり、カラム161aの長軸方向が決まると、第1遅相軸161Lの方向が決まる。図5では、例えば、カラム161aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向き161Daとしたときに、第1遅相軸161Lは第1の長軸の向き161Daと概ね直交している。
【0058】
同様に、第2遅相軸162Lの方向も、カラム162aの長軸方向と一定の関係性を持って配置されている。カラム162aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第2の長軸の向き162Daとしたときに、第2遅相軸162Lは第2の長軸の向き162Daと概ね直交している。
【0059】
第1の長軸の向き161Daと第2の長軸の向き162Daとは、概ね直交している。そのため、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとは、概ね直交している。
【0060】
ここで、「概ね直交する」とは、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとのなす角度が90度±5%、すなわち85.5度以上94.5度以下の範囲を意味している。つまり、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとが完全に90度ではなく、わずかに斜めに交差していても、本発明の許容範囲であることを意味している。
【0061】
このように90度に対して5%の範囲内でずれていても、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差を概ね0にすることができる。ここで、「概ね0」とは、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差が完全に相殺される場合だけでなく、製造誤差の範囲内で2つの膜の遅相軸が直交する方向から若干ずれて、配向膜全体の面内の位相差が完全には0とならない場合を含む意味である。
【0062】
ここで、第1の膜161の位相差Rは、以下の式によって定義される。
R=Δn×d
ただし、Δnは第1の膜161の屈折率異方性(例えば、図4(a)に示した第1の膜161の主屈折率nx、ny、nxを基板上面の法線方向から視て合成した屈折率)を示している。また、dは第1の膜161の厚みを示している。
【0063】
第2の膜162の位相差R’は、以下の式によって定義される。
R’=Δn’×d’
ただし、Δn’は第2の膜162の屈折率異方性(例えば、図4(b)に示した第2の膜162の主屈折率nx’、ny’、nx’を基板上面の法線方向から視て合成した屈折率)を示している。また、d’は第2の膜162の厚みを示している。
【0064】
上述したように、本実施形態では、第1の膜161と第2の膜162とは、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じである。そのため、第1の膜161の位相差Rと第2の膜162の位相差R’とは、概ね同じ位相差となる。
【0065】
本実施形態の液晶装置100によれば、第1の膜161の第1遅相軸161Lと第2の膜162の第2遅相軸162Lとが交差しており、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差が概ね0になっている。そのため、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な液晶装置100を提供することができる。
【0066】
また、この構成によれば、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとが概ね直交しているので、第1の膜161の位相差と第2の膜162の位相差とを確実に相殺することができる。
【0067】
第1の膜161と第2の膜162を柱状の結晶体で形成した場合、その結晶体の長軸の方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、結晶体の長軸方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜161と第2の膜162の結晶体の長軸方向を特定の関係に設定することで、第1の膜161と第2の膜162の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0068】
また、この構成によれば、第1の膜161のカラム161aの傾斜角度θ1と第2の膜162のカラム162aの傾斜角度θ2とを概ね等しくすることで、第1の膜161と第2の膜162の屈折率異方性が概ね等しくなっている。このため、第1の膜161の成膜条件(例えば蒸着角度)と第2の膜162の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0069】
また、この構成によれば、上述した配向膜が一対の基板の双方の基板10,20に形成されているので、一対の基板の双方の基板10,20に形成された配向膜全体の位相差が低減されることとなる。したがって、上述した配向膜が一対の基板の一方の基板のみに形成されている構成に比べて、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することができる。
【0070】
また、この構成によれば、第1の膜161と第2の膜162は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じである。そのため、第1の膜161の成膜条件(例えば材料、処理時間)と第2の膜162の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0071】
なお、本実施形態の液晶装置100では、第1の膜161と第2の膜162は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じである構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1の膜161と第2の膜162の一方の膜の屈折率異方性を他方の膜の屈折率異方性よりも大きくし、屈折率異方性を大きくした一方の膜の厚みを他方の膜の厚みよりも小さくしてもよい。この場合、例えば、一方の膜の形成材料としてタンタルオキサイドを用い、他方の膜の形成材料としてSiO2を用いることができる。
【0072】
(第2実施形態)
図7は、図3に対応した、本発明の第2実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための図である。本実施形態では、ツイストVAモードの液晶装置を例に挙げて説明する。なお、図7において、符号Vb1は素子基板10側の第1配向膜を構成する第2の膜(図示略)の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向き、符号Vb2は対向基板20側の第2配向膜を構成する第2の膜(図示略)の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向きである。また、図7においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、第1配向膜16、第2配向膜22、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0073】
図7に示すように、本実施形態に係る液晶装置200は、素子基板10側の第1配向膜を構成する第2の膜の蒸着の向きVb1と対向基板20側の第2配向膜を構成する第2の膜の蒸着の向きVb2とは、ツイスト角Tをなしている点で、上述の第1実施形態に係る液晶装置100と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0074】
このツイスト角Tは、120度である。したがって、素子基板10側の第1配向膜を構成する第2の膜と対向基板20側の第2配向膜を構成する第2の膜とは、ツイスト角Tが120度の向きに配向規制方向を有している。
【0075】
本実施形態の液晶装置200においても、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能となる。特に、ツイストVAモードにおいて、蒸着の向きVb1,Vb2に起因するツイスト角Tのばらつきによってコントラスト変動が助長されることを抑制することができる。
【0076】
(第3実施形態)
図8は、図2に対応した、本発明の第3実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。なお、図8においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0077】
図8に示すように、本実施形態に係る液晶装置300は、第1の膜と第2の膜との間には、バッファ層としての第3の膜が配置されている点で、上述の第1実施形態に係る液晶装置100と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0078】
液晶装置300は、第1配向膜17が形成された素子基板10と第2配向膜23が形成された対向基板20との間に液晶50aを挟持した構成となっている。液晶50aは、第1配向膜17を構成する第2の膜173と第2配向膜23を構成する第2の膜233とによって所定のプレチルト角が付与されている。
【0079】
第1配向膜17は、素子基板10上に配置された第1の膜171と、第1の膜171上に配置された第3の膜172と、第3の膜172上に配置された第2の膜173とを備えている。第1の膜171、第3の膜172及び第2の膜173は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0080】
第1の膜171の厚みと第2の膜173の厚みとは、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。第3の膜172の厚みは、第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みに対して、薄い厚みとなっている。第3の膜172の厚みは、例えば、第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みを30nm程度としたとき、10nm程度に設定することができる。
【0081】
第2配向膜23は、対向基板20上に配置された第1の膜231と、第1の膜231上に配置された第3の膜232と、第3の膜232上に配置された第2の膜233とを備えている。第1の膜231、第3の膜232及び第2の膜233は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0082】
第2配向膜23について、第1の膜231の厚みと第2の膜233の厚みとは、第1配向膜17と同様、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜231及び第2の膜233の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。第3の膜232の厚みは、第1の膜231及び第2の膜233の双方の厚みに対して、薄い厚みとなっている。第3の膜232の厚みは、例えば、第1の膜231及び第2の膜233の双方の厚みを30nm程度としたとき、10nm程度に設定することができる。
【0083】
図9は、図5に対応した、第3実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。ここでは、第1配向膜17と第2配向膜23のうち第1配向膜17を構成する第1の膜171、第3の膜172及び第2の膜173の光学的異方性を例に挙げて説明する。なお、図9において、図9(a)は第1の膜171の光学的異方性を説明するための平面図、図9(b)は第3の膜172の光学的異方性を説明するための平面図、図9(c)は第2の膜173の光学的異方性を説明するための平面図である。
【0084】
図9に示すように、第1の膜171、第3の膜172及び第2の膜173は、微視的には、基板上において、それぞれ無機材料が斜方蒸着される斜め方向に沿って延びた、カラム(柱状部分)171a,172a,173aを有している。
【0085】
第1遅相軸171Lの方向は、カラム171aの長軸方向と一定の関係性を持って配置されている。カラム171aの長軸方向と第1遅相軸171Lとの関係には一対一の関係があり、カラム171aの長軸方向が決まると、第1遅相軸171Lの方向が決まる。図9では、例えば、カラム171aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向き171Daとしたときに、第1遅相軸171Lは第1の長軸の向き171Daと概ね直交している。
【0086】
同様に、第3遅相軸172Lの方向も、カラム172aの長軸方向と一定の関係を持って配置されている。カラム172aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向き172Daとしたときに、第3遅相軸172Lは第3の長軸の向き172Daと概ね直交している。なお、第3の膜172は位相差を有しているものの、第3の膜172の厚みが第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みに比べて十分に薄いので、その位相差は無視できる程の大きさとなっている。
【0087】
同様に、第2遅相軸173Lの方向も、カラム173aの長軸方向と一定の関係を持って配置されている。カラム173aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向き173Daとしたときに、第3遅相軸173Lは第3の長軸の向き173Daと概ね直交している。
【0088】
第1の長軸の向き171Daと第2の長軸の向き173Daとは、概ね直交している。そのため、第1遅相軸171Lと第2遅相軸173Lとは、概ね直交している。
【0089】
第1の長軸の向き171Daと第3の長軸の向き172Daとは、概ね45度である。
ここで、「概ね45度」とは、第1の長軸の向き171Daと第2の長軸の向き172Daとのなす角度が45度±5%、すなわち42.25度以上47.25度以下の範囲を意味している。つまり、第1の長軸の向き171Daと第3の長軸の向き172Daとが完全に45度ではなく、第3の長軸の向き172Daが第1の長軸の向き171Da及び第2の長軸の向き173Daの双方の向きと異なっていても、本発明の許容範囲であることを意味している。
【0090】
本実施形態の液晶装置300によれば、第3の膜172がバッファ層として機能するので、第2の膜173を第1の膜171に積層して配置するときのカラム173aの配列の乱れを緩和することができる。すなわち、第1の膜171の上に直接第2の膜173のカラム173aを成長させようとした場合、下地の第1の膜171のカラム171aの成長方向が第2の膜173のカラム173aの成長方向と大きく異なるため、所望の方向にうまく第2の膜173のカラム173aが成長しない場合がある。その場合、第1の膜171の上に、カラムの成長方向が第1の膜171のカラム171aの成長方向と第2の膜173のカラム173aの成長方向の中間にある第3の膜172を形成し、これを下地として第2の膜173を形成すれば、第2の膜173のカラム173aの成長方向を所望の方向に制御し易い。
【0091】
また、この構成によれば、第3の膜172における第3の長軸の向き172Daが第1の膜171における第1の長軸の向き171Daと第2の膜173における第2の長軸の向き173Daとのなす角度の概ね中央値となるので、第2の膜173を第1の膜171に積層して配置するときのカラム173aの配列の乱れを緩和しやすくなる。
【0092】
なお、本実施形態の液晶装置300では、第3の膜172を第1の膜171の上に斜方蒸着により形成した斜方蒸着膜としたが、これに限らない。例えば、第3の膜を第1の膜の上に垂直に蒸着させて形成する垂直蒸着膜としてもよい。これにより、第3の膜自体の持つ光学的異方性は無視できることとなる。
【0093】
(第4実施形態)
図10は、図2に対応した、本発明の第4実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。ここでは、第1配向膜と第2配向膜のうち第1配向膜の構成を例に挙げて説明する。なお、図10においては、便宜上、画素電極、共通電極、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0094】
本実施形態に係る液晶装置は、有機材料を光配向処理することにより第1の膜及び第2の膜を形成している点で、上述の第1実施形態に係る液晶装置100と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0095】
図10に示すように、第1配向膜18は、素子基板10上に配置された第1の膜181と、第1の膜181に積層して配置された第2の膜182と、を備えている。第1の膜181及び第2の膜182は、有機材料を光配向処理することによって形成されている。
【0096】
第1の膜181は、微視的に見て、有機材料が斜め方向(図示略)に沿った構造となっている。このような構造からなる第1の膜181は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。第2の膜182は、微視的に見て、有機材料が斜め方向182Dに沿った構造となっている。このような構造からなる第2の膜182は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。第1の膜181の厚みと第2の膜182の厚みとは、概ね同じ厚みとなっている。
【0097】
図12は、第4実施形態に係る配向膜を作製するための光配向処理を示す断面図である。図12に示すように、配向膜は、偏光紫外線UVを基板10に設けられた塗膜18a(配向膜形成材料)に照射して、液晶配向を生じさせる光配向法によって形成することができる。
【0098】
例えば、先ず、配向膜形成材料を含む液滴を基板10上に塗布し、溶媒を乾燥させる。次に、光配向法によって所定の配向方向を持つよう基板10上に第1の膜を形成する。その後、第1の膜の配向方向と配向方向が概ね直交するよう第1の膜の上に第2の膜を形成する。これにより、第1の膜の配向方向と第2の膜の配向方向とが概ね直交した配向膜を形成することができる。
【0099】
この光配向法は、有機分子中の光配向機能を発現させる光配向性基、例えばアゾ基等の光異性化によるもの、シンナモイル基、クマリン基、カルコン基等の光二量化によるもの、ベンゾフェノン基等の光架橋やポリイミド樹脂等の光分解によるもの等がある。光異性化、光二量化や光架橋を利用した配向膜形成材料としては、基板10に塗布した際に均一な膜が得られるように、側鎖や主鎖に前記のような光配向性基を導入した高分子材料が用いられる。
【0100】
図11は、第4実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。ここでは、第1配向膜と第2配向膜のうち第1配向膜を構成する第1の膜181及び第2の膜182の光学的異方性を例に挙げて説明する。なお、図11において、図11(a)は第1の膜181の光学的異方性を説明するための平面図、図11(b)は第2の膜182の光学的異方性を説明するための平面図である。
【0101】
図11に示すように、第1遅相軸181Lの方向は、第1の膜181の配向方向181Daと一定の関係性を持って配置されている。第1の膜181の配向方向181Daと第1遅相軸181Lとの間には一対一の関係があり、第1の膜181の配向方向181Daが決まると、第1遅相軸181Lの方向が決まる。第1遅相軸181Lは第1の膜181の配向方向181Daと概ね直交している。
【0102】
同様に、第2遅相軸182Lの方向も、第2の膜182の配向方向182Daと一定の関係性を持って配置されている。第2遅相軸182Lは第2の膜182の配向方向182Daと概ね直交している。
【0103】
第1の膜181の配向方向181Daと第2の膜182の配向方向182Daとは、概ね直交している。そのため、第1遅相軸181Lと第2遅相軸182Lとは、概ね直交している。
【0104】
ここで、「概ね直交する」とは、第1遅相軸181Lと第2遅相軸182Lとのなす角度が90度±5%、すなわち85.5度以上94.5度以下の範囲を意味している。つまり、第1遅相軸181Lと第2遅相軸182Lとが完全に90度ではなく、わずかに斜めに交差していても、本発明の許容範囲であることを意味している。
【0105】
このように90度に対して5%の範囲内でずれていても、第1の膜181と第2の膜182とによって発現される第1の膜181と第2の膜182との積層によって発現される位相差を概ね0にすることができる。ここで、「概ね0」とは、第1の膜181と第2の膜182との積層によって発現される位相差が完全に相殺される場合だけでなく、製造誤差の範囲内で2つの膜の遅相軸が直交する方向から若干ずれて、配向膜全体の面内の位相差が完全には0とならない場合を含む意味である。
【0106】
第1の膜181と第2の膜182を有機材料を光配向処理することによって形成した場合、形成された膜の配向方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、形成された膜の配向方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜181と第2の膜182の配向方向を特定の関係に設定することで、第1の膜181と第2の膜182の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0107】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の実施形態について説明する。図13は、本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図である。図13に示す携帯電話1300は、本発明の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。これにより、本発明の液晶装置により構成されたコントラストが変動することを抑制した表示部を具備した携帯電話1300を提供することができる。
【0108】
上記各実施の形態の液晶装置は、上記携帯電話に限らず、液晶プロジェクターのライトバルブ、高温ポリシリコンTFT液晶(HTPS)、反射型高温ポリシリコンTFT液晶(R−HTPS)、LCOS(Liquid crystal on silicon)、デジタルサイネージ、EVF(Electronic View Finder)として用いることができる。また、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、テレビジョン受像機、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができ、かかる構成とすることで、表示品質が高く、信頼性に優れた表示部を備えた電子機器を提供できる。
【符号の説明】
【0109】
10…素子基板、16,17,18…第1配向膜、20…対向基板、22,23…第2配向膜、50…液晶層、50a…液晶、100,200,300…液晶装置、161,171,181,221,231…第1の膜、161a,162a,171a,172a,173a…カラム(結晶体)、161Da,171Da…第1の長軸の向き、161L,171L,181L…第1遅相軸、162,173,182,222,233…第2の膜、162Da,173Da…第2の長軸の向き、162L,173L,182L…第2遅相軸、172,232…第3の膜、172Da…第3の長軸の向き、181Da…第1の膜の配向方向、182Da…第2の膜の配向方向、1300…携帯電話(電子機器)、θ1…第1の膜の結晶体の長軸が基板となす角度、θ2…第2の膜の結晶体の長軸が基板となす角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に記載されるような液晶装置が知られている。特許文献1の液晶装置は、2枚の基板により液晶層を挟持し、各基板の内面側に、液晶層の配向を制御する配向膜を備えたものである。配向膜には、有機材料で形成された有機配向膜と、無機材料で形成された無機配向膜がある。特許文献1の液晶装置の配向膜は、斜方蒸着で形成された無機配向膜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−45784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配向膜の表面の有機材料又は無機材料は、液晶層の配向制御を行うために、特定の方向性を持って配向している。そのため、配向膜自体に光学異方性が生じ、表示のコントラストを低下させる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な液晶装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の液晶装置は、配向膜が形成された一対の基板間に液晶を挟持する液晶装置であって、前記一対の基板の少なくとも一方の基板に形成された前記配向膜は、第1の膜と、前記第1の膜に積層して配置された第2の膜と、を備え、前記第1の膜の第1遅相軸と前記第2の膜の第2遅相軸とは交差しており、前記第1の膜と前記第2の膜との積層によって発現される位相差は、概ね0になっていることを特徴とする。
【0007】
この液晶装置によれば、第1の膜の第1遅相軸と第2の膜の第2遅相軸とが交差しており、第1の膜と第2の膜との積層によって発現される位相差が概ね0になっている。そのため、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な液晶装置を提供することができる。
【0008】
前記液晶装置において、前記第1遅相軸と前記第2遅相軸とは、概ね直交していてもよい。
【0009】
この液晶装置によれば、第1の膜の位相差と第2の膜の位相差とを確実に相殺することができる。
【0010】
前記液晶装置において、前記第1の膜及び前記第2の膜は、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有し、前記第1の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向きとし、前記第2の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第2の長軸の向きとしたときに、前記第1遅相軸は前記第1の長軸の向きと概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の長軸の向きと概ね直交していてもよい。
【0011】
第1の膜と第2の膜を柱状の結晶体で形成した場合、その結晶体の長軸の方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、結晶体の長軸方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜と第2の膜の結晶体の長軸方向を特定の関係に設定することで、第1の膜と第2の膜の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0012】
前記液晶装置において、前記第1の膜と前記第2の膜の間には、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有する第3の膜が配置され、前記第3の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向きとしたときに、前記第3の長軸の向きは、前記第1の長軸の向き及び前記第2の長軸の向きの双方の向きと異なる向きであってもよい。
【0013】
この液晶装置によれば、第3の膜がバッファ層として機能するので、第2の膜を第1の膜に積層して配置するときの結晶体の配列の乱れを緩和することができる。すなわち、第1の膜の上に直接第2の膜の結晶体を成長させようとした場合、下地の第1の膜の結晶体の成長方向が第2の膜の結晶体の成長方向と大きく異なるため、所望の方向にうまく第2の膜の結晶体が成長しない場合がある。その場合、第1の膜の上に、結晶体の成長方向が第1の膜と第2の膜の結晶体の成長方向の中間にある第3の膜を形成し、これを下地として第2の膜を形成すれば、第2の膜の結晶体の成長方向を所望の方向に制御し易い。
【0014】
前記液晶装置において、前記第1の長軸の向きと前記第3の長軸の向きのなす角度は、概ね45度であってもよい。
【0015】
この液晶装置によれば、第3の膜における第3の長軸の向きが第1の膜における第1の長軸の向きと第2の膜における第2の長軸の向きとのなす角度の概ね中央値となるので、第2の膜を第1の膜に積層して配置するときの結晶体の配列の乱れを緩和しやすくなる。
【0016】
前記液晶装置において、前記第1の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度と前記第2の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度とを概ね等しくすることで、前記第1の膜と前記第2の膜の屈折率異方性が概ね等しくなっていてもよい。
【0017】
この液晶装置によれば、第1の膜の結晶体の長軸が基板となす角度と第2の膜の結晶体の長軸が基板となす角度とが概ね等しいので、第1の膜の成膜条件(例えば蒸着角度)と第2の膜の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0018】
前記液晶装置において、前記第1の膜及び前記第2の膜は、有機材料を光配向処理することにより形成されたものであり、前記第1遅相軸は前記第1の膜の配向方向と概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の膜の配向方向と概ね直交していてもよい。
【0019】
第1の膜と第2の膜を有機材料を光配向処理することによって形成した場合、形成された膜の配向方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、形成された膜の配向方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜と第2の膜の配向方向を特定の関係に設定することで、第1の膜と第2の膜の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0020】
前記液晶装置において、前記配向膜は、前記一対の基板の双方の基板に形成されていてもよい。
【0021】
この液晶装置によれば、一対の基板の双方の基板に形成された配向膜全体の位相差が低減されることとなる。したがって、配向膜が一対の基板の一方の基板のみに形成されている構成に比べて、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することができる。
【0022】
前記液晶装置において、前記第1の膜と前記第2の膜は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じであってもよい。
【0023】
この液晶装置によれば、第1の膜の成膜条件(例えば材料、処理時間)と第2の膜の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0024】
本発明の電子機器は、上述した液晶装置を備えていることを特徴とする。
【0025】
この電子機器によれば、上述した液晶装置を備えているので、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る液晶装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。
【図3】同実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための模式図である。
【図4】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための斜視図である。
【図5】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。
【図6】同実施形態に係る配向膜の微視的構造を説明するための模式図である。
【図7】第2実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための模式図である。
【図8】第3実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。
【図9】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。
【図10】第4実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。
【図11】同実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。
【図12】同実施形態に係る配向膜を作製するための光配向処理を示す断面図である。
【図13】電子機器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、液晶装置100の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、液晶装置100の平面図、図1(b)は図1(a)のH−H’線に沿う断面図である。なお、本実施形態では、VA(Vertical Alignment)モードの液晶装置を例に挙げて説明する。
【0029】
液晶装置100は、素子基板10と対向基板20とを備えている。素子基板10と対向基板20とは、平面視略矩形枠状のシール材52を介して貼り合わされている。シール材52には、液晶を注入するための開口部55(液晶注入口)が形成されており、該開口部55が封止材54により封止されている。シール材52及び封止材54に囲まれた領域内には、液晶層50が封入されている。シール材52及び封止材54の内周側に沿って平面視矩形枠状の額縁53が形成されており、額縁53の内側の領域が表示領域11となっている。
【0030】
表示領域11の内側には、複数の画素12がマトリクス状に設けられている。画素12は、表示領域11の最小表示単位を構成している。シール材52の外側の領域には、素子基板10の1辺(図示下辺)に沿って、データ線駆動回路101および外部回路実装端子102が形成されており、この1辺に隣接する2辺に沿ってそれぞれ走査線駆動回路104が形成されて周辺回路を構成している。
【0031】
素子基板10の残る1辺(図示上辺)には、表示領域11の両側の走査線駆動回路104間を接続する複数の配線105が設けられている。また、対向基板20の各角部においては、素子基板10と対向基板20との間の電気的導通をとるための基板間導通材106が配設されている。
【0032】
素子基板10の液晶層50側には、複数の画素電極9が配列形成されている。画素電極9は、画素12ごとに設けられている。素子基板10には、複数のスイッチング素子(図示略)が設けられている。スイッチング素子は、例えば薄膜トランジスターにより構成され、画素12ごとに設けられている。スイッチング素子のソース領域は、図示略のデータ線を介してデータ線駆動回路101と電気的に接続されている。スイッチング素子のゲート電極は、図示略の走査線を介して走査線駆動回路104と電気的に接続されている。スイッチング素子のドレイン領域は、画素電極9と電気的に接続されている。
【0033】
画素電極9上には、第1配向膜16が形成されている。対向基板20の液晶層50側に、額縁53および遮光膜(図示略)が形成されている。額縁53および遮光膜(図示略)の上に表示領域11の全面を覆う共通電極21が形成されている。共通電極21上には、第2配向膜22が形成されている。液晶層50に電界が印加されていない状態の液晶層50の配向状態は、第1配向膜16および第2配向膜22により制御されている。
【0034】
液晶装置100は、反射型の液晶装置として構成されている。画素電極9は、アルミニウム(Al)や銀(Ag)等の高反射率の金属材料からなる反射電極として構成されている。共通電極21は、インジウム錫酸化物(以下、ITOという)等の透明導電性材料からなる透明電極として構成されている。
【0035】
表示すべき画像の画像信号は、液晶装置100の外部から外部回路実装端子102を介して供給される。データ線駆動回路101は、画像信号に含まれる画素ごとの階調値を示す画像データに基づいて、液晶層50を駆動する駆動電圧波形をスイッチング素子に出力する。走査線駆動回路104は、画像信号に含まれる画素の表示タイミングを示すデータに基づいて、スイッチング素子のゲート電極に電圧を印加し、スイッチング素子のオンオフを制御する。
【0036】
スイッチング素子がオンになると、上記の駆動電圧波形が画素電極9に供給され、画素電極9に電圧が印加される。共通電極21の電位は、例えば複数の画素12で共通の共通電位に保持されている。液晶層50には、画素電極9と共通電極21との間の電位差に相当する電圧が印加される。この電圧により生じる電界によって、液晶層50の配向状態が変化する。液晶層50に入射した光は、液晶層50の配向状態に応じて画素12ごとに偏光状態が変化する。液晶層50から射出された光を偏光板(図示略)に通すことにより、画像データに応じた階調値の光が偏光板から射出される。このようにして、画像データに対応する画像を表示することが可能になっている。
【0037】
図2は、第1実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。なお、図2においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0038】
液晶装置100は、第1配向膜16が形成された素子基板10と第2配向膜22が形成された対向基板20との間に液晶50aを挟持した構成となっている。液晶50aは、第1配向膜16を構成する第2の膜162と第2配向膜22を構成する第2の膜222とによって所定のプレチルト角が付与されている。
【0039】
第1配向膜16は、素子基板10上に配置された第1の膜161と、第1の膜161に積層して配置された第2の膜162と、を備えている。第1の膜161及び第2の膜162は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0040】
第1の膜161の厚みと第2の膜162の厚みとは、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜161及び第2の膜162の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。ここで、「概ね同じ厚み」とは、第1の膜161の厚みと第2の膜162の厚みとが完全に同一ではなく、わずかな厚みの差があっても、本発明の許容範囲であることを意味している。具体的には、第2の膜162の厚みは、第1の膜161の厚みに対して、例えば±5%程度の厚みの差は許容されることを意味している。
【0041】
第2配向膜22は、対向基板20上に配置された第1の膜221と、第1の膜221に積層して配置された第2の膜222と、を備えている。第1の膜221及び第2の膜222は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0042】
第2配向膜22について、第1の膜221の厚みと第2の膜222の厚みとは、第1配向膜16における第1の膜161の厚みと第2の膜162の厚みとの関係と同様、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜221及び第2の膜222の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。
【0043】
図3は、第1実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための模式図である。なお、図3において、符号Va1は素子基板10側の第1配向膜16を構成する第2の膜162の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向き、符号Va2は対向基板20側の第2配向膜22を構成する第2の膜222の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向きである。また、図3においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、第1配向膜16、第2配向膜22、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0044】
一対の基板10,20には、シリコン酸化物又は金属酸化物を物理蒸着することにより、配向膜を構成する第1の膜及び第2の膜が形成されている。物理蒸着を行う方法としては、斜方蒸着法やスパッタ法等が好適である。本実施形態では、配向膜を構成する第1の膜及び第2の膜は、真空蒸着法によってSiO2が斜方蒸着されて形成されている。
【0045】
斜方蒸着については、例えば基板面から所定の角度だけ傾いた方向から蒸着を行うことにより、蒸着と同じ方位に所望の角度傾いた方向に、SiO2のカラムを成長させ、これによって配向膜を構成する第1の膜及び第2の膜のそれぞれに異方性を付与している。すなわち、一対の基板10,20の配向膜における第2の膜は、カラムの長軸を基板上に投影したときの基板の上面上における長軸の向きに沿うように、配向規制力を有している。
【0046】
素子基板10側の第1配向膜16を構成する第2の膜162の蒸着の向きVa1と対向基板20側の第2配向膜22を構成する第2の膜222の蒸着の向きVa2とは、互いに平行であって反対の向きとなっている。したがって、これら第1配向膜16を構成する第2の膜162と第2配向膜22を構成する第2の膜222とは、互いに平行であって反対の向きに配向規制方向を有している。
【0047】
図6は、第1実施形態に係る配向膜の微視的構造を説明するための模式図である。ここでは、第1配向膜16と第2配向膜22のうち第1配向膜16を構成する第1の膜161及び第2の膜162の微視的構造を例に挙げて説明する。なお、図6においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係を説明する。この際、基板上面における所定の方向をX軸方向、基板上面においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向とY軸方向のそれぞれの直交する方向(基板上面の法線方向)をZ軸方向とする。また、図6において、図6(a)は第1の膜161の微視的構造を示す図(Y軸方向から視た図)、図6(b)は図6(a)を基板の法線の周りに90度だけ回転した図(X軸方向から視た図)、図6(c)は第1の膜161及び第2の膜162の微視的構造を示す図(X軸方向から視た図)である。
【0048】
第1の膜161は、図6(a)に示すように微視的に見て、無機材料が斜め方向161Dに沿って成長したカラム161aを有している。ここで、斜め方向161Dは、XZ平面に対して略平行な方向となる。第1の膜161は、微視的には、素子基板10上において、無機材料が斜方蒸着される斜め方向161Dに沿って延びた、カラム(柱状部分)161aを有している。カラム161aは、素子基板10の上面に対して所定の傾斜角度θ1をなして配置されている。ここで、傾斜角度θ1は、第1の膜161の結晶体161aの長軸が基板となす角度である。このような構造からなる第1の膜161は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。
【0049】
第2の膜162は、図6(b)に示すように、第1の膜161が形成された素子基板10を基板の法線の周りに90度だけ回転した後、第1の膜161の上に形成することができる。
【0050】
第2の膜162は、図6(c)に示すように微視的に見て、無機材料が斜め方向162Dに沿って成長したカラム162aを有している。ここで、斜め方向162Dは、YZ平面に対して略平行な方向となる。第2の膜162は、微視的には、第1の膜161上において、無機材料が斜方蒸着される斜め方向162Dに沿って延びた、カラム(柱状部分)162aを有している。カラム162aは、第1の膜161の上面(素子基板10の上面)に対して所定の傾斜角度θ2をなして配置されている。ここで、傾斜角度θ2は、第2の膜162の結晶体162aの長軸が基板となす角度である。このような構造からなる第2の膜162は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。
【0051】
本実施形態では、第1の膜161におけるカラム161aの傾斜角度θ1と第2の膜162におけるカラム162aの傾斜角度θ2とを概ね等しくすることで、第1の膜161と第2の膜162の屈折率異方性が概ね等しくなっている。ここで、「傾斜角度が概ね等しい」とは、第1の膜161におけるカラム161aの傾斜角度θ1と第2の膜162におけるカラム162aの傾斜角度θ2とが完全に同一ではなく、わずかな角度の差があっても、本発明の許容範囲であることを意味している。具体的には、第2の膜162におけるカラム162aの傾斜角度は、第1の膜161におけるカラム161aの傾斜角度θ1に対して、例えば±5%程度の角度の差は許容されることを意味している。
【0052】
図4は、第1実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための斜視図である。図5は、第1実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。ここでは、第1配向膜16と第2配向膜22のうち第1配向膜16を構成する第1の膜161及び第2の膜162の光学的異方性を例に挙げて説明する。なお、図4において、図4(a)は第1の膜161の光学的異方性を説明するための斜視図、図4(b)は第2の膜162の光学的異方性を説明するための斜視図である。また、図5において、図5(a)は第1の膜161の光学的異方性を説明するための平面図、図5(b)は第2の膜162の光学的異方性を説明するための平面図である。
【0053】
図4には、第1配向膜16を構成する第1の膜161及び第2の膜162の屈折率楕円体における光軸方向の主屈折率が示されている。本実施形態では、第1の膜161において主屈折率nx、ny、nxはnx<ny<nzなる関係、第2の膜162において主屈折率nx’、ny’、nx’はnx’<ny’<nz’なる関係を満たす構成(二軸性の屈折率楕円体)とされている。すなわち、第1の膜161において、基板の法線方向から傾いた方向の屈折率nzが他の方向の屈折率nx、nyより大きく、屈折率楕円体では米粒型となる。第2の膜162においても、基板の法線方向から傾いた方向の屈折率nz’が他の方向の屈折率nx’、ny’より大きく、屈折率楕円体では米粒型となる。このように、第1の膜161及び第2の膜162の屈折率楕円体を二軸性の屈折率楕円体としてもよいし、これに替えて、第1の膜161において主屈折率nx、ny、nxはnx=ny<nzなる関係、第2の膜162において主屈折率nx’、ny’、nx’はnx’=ny’<nz’なる関係を満たす構成(一軸性の屈折率楕円体)としてもよい。
【0054】
本実施形態では、第1の膜161における主屈折率nx、ny、nxと第2の膜162における主屈折率nx’、ny’、nx’とは、それぞれ互いに概ね同じになっている。つまり、第1の膜161の屈折率異方性と第2の膜162の屈折率異方性とは、概ね同じ屈折率異方性となっている。ここで、「概ね同じ屈折率異方性」とは、第1の膜161の屈折率異方性と第2の膜162の屈折率異方性とが完全に同一ではなく、わずかな屈折率異方性の差があっても、本発明の許容範囲であることを意味している。具体的には、第2の膜162の屈折率異方性は、第1の膜161の屈折率異方性に対して、例えば±5%程度の屈折率異方性の差は許容されることを意味している。
【0055】
第1の膜161は、カラム161aを形成した無機膜により、第1遅相軸161Lを有したものとなっている。第1遅相軸161Lは、図4(a)に示した楕円体を、基板の法線方向から視て基板上面に投影した楕円形の長軸の長さ方向に一致する。
【0056】
第2の膜162は、カラム162aを形成した無機膜により、第2遅相軸162Lを有したものとなっている。第2遅相軸162Lは、図4(b)に示した楕円体を、基板の法線方向から視て基板上面に投影した楕円形の長軸の長さ方向に一致する。
【0057】
図5に示すように、第1遅相軸161Lの方向は、カラム161aの長軸方向と一定の関係性を持って配置されている。カラム161aの長軸方向と第1遅相軸161Lとの間には一対一の関係があり、カラム161aの長軸方向が決まると、第1遅相軸161Lの方向が決まる。図5では、例えば、カラム161aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向き161Daとしたときに、第1遅相軸161Lは第1の長軸の向き161Daと概ね直交している。
【0058】
同様に、第2遅相軸162Lの方向も、カラム162aの長軸方向と一定の関係性を持って配置されている。カラム162aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第2の長軸の向き162Daとしたときに、第2遅相軸162Lは第2の長軸の向き162Daと概ね直交している。
【0059】
第1の長軸の向き161Daと第2の長軸の向き162Daとは、概ね直交している。そのため、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとは、概ね直交している。
【0060】
ここで、「概ね直交する」とは、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとのなす角度が90度±5%、すなわち85.5度以上94.5度以下の範囲を意味している。つまり、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとが完全に90度ではなく、わずかに斜めに交差していても、本発明の許容範囲であることを意味している。
【0061】
このように90度に対して5%の範囲内でずれていても、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差を概ね0にすることができる。ここで、「概ね0」とは、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差が完全に相殺される場合だけでなく、製造誤差の範囲内で2つの膜の遅相軸が直交する方向から若干ずれて、配向膜全体の面内の位相差が完全には0とならない場合を含む意味である。
【0062】
ここで、第1の膜161の位相差Rは、以下の式によって定義される。
R=Δn×d
ただし、Δnは第1の膜161の屈折率異方性(例えば、図4(a)に示した第1の膜161の主屈折率nx、ny、nxを基板上面の法線方向から視て合成した屈折率)を示している。また、dは第1の膜161の厚みを示している。
【0063】
第2の膜162の位相差R’は、以下の式によって定義される。
R’=Δn’×d’
ただし、Δn’は第2の膜162の屈折率異方性(例えば、図4(b)に示した第2の膜162の主屈折率nx’、ny’、nx’を基板上面の法線方向から視て合成した屈折率)を示している。また、d’は第2の膜162の厚みを示している。
【0064】
上述したように、本実施形態では、第1の膜161と第2の膜162とは、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じである。そのため、第1の膜161の位相差Rと第2の膜162の位相差R’とは、概ね同じ位相差となる。
【0065】
本実施形態の液晶装置100によれば、第1の膜161の第1遅相軸161Lと第2の膜162の第2遅相軸162Lとが交差しており、第1の膜161と第2の膜162との積層によって発現される位相差が概ね0になっている。そのため、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能な液晶装置100を提供することができる。
【0066】
また、この構成によれば、第1遅相軸161Lと第2遅相軸162Lとが概ね直交しているので、第1の膜161の位相差と第2の膜162の位相差とを確実に相殺することができる。
【0067】
第1の膜161と第2の膜162を柱状の結晶体で形成した場合、その結晶体の長軸の方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、結晶体の長軸方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜161と第2の膜162の結晶体の長軸方向を特定の関係に設定することで、第1の膜161と第2の膜162の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0068】
また、この構成によれば、第1の膜161のカラム161aの傾斜角度θ1と第2の膜162のカラム162aの傾斜角度θ2とを概ね等しくすることで、第1の膜161と第2の膜162の屈折率異方性が概ね等しくなっている。このため、第1の膜161の成膜条件(例えば蒸着角度)と第2の膜162の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0069】
また、この構成によれば、上述した配向膜が一対の基板の双方の基板10,20に形成されているので、一対の基板の双方の基板10,20に形成された配向膜全体の位相差が低減されることとなる。したがって、上述した配向膜が一対の基板の一方の基板のみに形成されている構成に比べて、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することができる。
【0070】
また、この構成によれば、第1の膜161と第2の膜162は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じである。そのため、第1の膜161の成膜条件(例えば材料、処理時間)と第2の膜162の成膜条件とを同じ条件で行うことができる。よって、製造が容易になる。
【0071】
なお、本実施形態の液晶装置100では、第1の膜161と第2の膜162は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じである構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第1の膜161と第2の膜162の一方の膜の屈折率異方性を他方の膜の屈折率異方性よりも大きくし、屈折率異方性を大きくした一方の膜の厚みを他方の膜の厚みよりも小さくしてもよい。この場合、例えば、一方の膜の形成材料としてタンタルオキサイドを用い、他方の膜の形成材料としてSiO2を用いることができる。
【0072】
(第2実施形態)
図7は、図3に対応した、本発明の第2実施形態に係る配向膜の蒸着方向を説明するための図である。本実施形態では、ツイストVAモードの液晶装置を例に挙げて説明する。なお、図7において、符号Vb1は素子基板10側の第1配向膜を構成する第2の膜(図示略)の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向き、符号Vb2は対向基板20側の第2配向膜を構成する第2の膜(図示略)の蒸着方向を基板の上面に投影したときの基板の上面上における蒸着の向きである。また、図7においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、第1配向膜16、第2配向膜22、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0073】
図7に示すように、本実施形態に係る液晶装置200は、素子基板10側の第1配向膜を構成する第2の膜の蒸着の向きVb1と対向基板20側の第2配向膜を構成する第2の膜の蒸着の向きVb2とは、ツイスト角Tをなしている点で、上述の第1実施形態に係る液晶装置100と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図3と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0074】
このツイスト角Tは、120度である。したがって、素子基板10側の第1配向膜を構成する第2の膜と対向基板20側の第2配向膜を構成する第2の膜とは、ツイスト角Tが120度の向きに配向規制方向を有している。
【0075】
本実施形態の液晶装置200においても、配向膜自体の持つ位相差によってコントラストが低下することを抑制することが可能となる。特に、ツイストVAモードにおいて、蒸着の向きVb1,Vb2に起因するツイスト角Tのばらつきによってコントラスト変動が助長されることを抑制することができる。
【0076】
(第3実施形態)
図8は、図2に対応した、本発明の第3実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。なお、図8においては、便宜上、画素電極9、共通電極21、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0077】
図8に示すように、本実施形態に係る液晶装置300は、第1の膜と第2の膜との間には、バッファ層としての第3の膜が配置されている点で、上述の第1実施形態に係る液晶装置100と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0078】
液晶装置300は、第1配向膜17が形成された素子基板10と第2配向膜23が形成された対向基板20との間に液晶50aを挟持した構成となっている。液晶50aは、第1配向膜17を構成する第2の膜173と第2配向膜23を構成する第2の膜233とによって所定のプレチルト角が付与されている。
【0079】
第1配向膜17は、素子基板10上に配置された第1の膜171と、第1の膜171上に配置された第3の膜172と、第3の膜172上に配置された第2の膜173とを備えている。第1の膜171、第3の膜172及び第2の膜173は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0080】
第1の膜171の厚みと第2の膜173の厚みとは、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。第3の膜172の厚みは、第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みに対して、薄い厚みとなっている。第3の膜172の厚みは、例えば、第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みを30nm程度としたとき、10nm程度に設定することができる。
【0081】
第2配向膜23は、対向基板20上に配置された第1の膜231と、第1の膜231上に配置された第3の膜232と、第3の膜232上に配置された第2の膜233とを備えている。第1の膜231、第3の膜232及び第2の膜233は、シリコン酸化物又は金属酸化物によって形成された多数の柱状の結晶体(カラム)によって形成されている。結晶体の結晶成長方向は、基板の法線に対して斜めに傾いた方向である。
【0082】
第2配向膜23について、第1の膜231の厚みと第2の膜233の厚みとは、第1配向膜17と同様、概ね同じ厚みとなっている。第1の膜231及び第2の膜233の双方の厚みは、例えば、30nm以上80nm以下の範囲に設定することができる。第3の膜232の厚みは、第1の膜231及び第2の膜233の双方の厚みに対して、薄い厚みとなっている。第3の膜232の厚みは、例えば、第1の膜231及び第2の膜233の双方の厚みを30nm程度としたとき、10nm程度に設定することができる。
【0083】
図9は、図5に対応した、第3実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。ここでは、第1配向膜17と第2配向膜23のうち第1配向膜17を構成する第1の膜171、第3の膜172及び第2の膜173の光学的異方性を例に挙げて説明する。なお、図9において、図9(a)は第1の膜171の光学的異方性を説明するための平面図、図9(b)は第3の膜172の光学的異方性を説明するための平面図、図9(c)は第2の膜173の光学的異方性を説明するための平面図である。
【0084】
図9に示すように、第1の膜171、第3の膜172及び第2の膜173は、微視的には、基板上において、それぞれ無機材料が斜方蒸着される斜め方向に沿って延びた、カラム(柱状部分)171a,172a,173aを有している。
【0085】
第1遅相軸171Lの方向は、カラム171aの長軸方向と一定の関係性を持って配置されている。カラム171aの長軸方向と第1遅相軸171Lとの関係には一対一の関係があり、カラム171aの長軸方向が決まると、第1遅相軸171Lの方向が決まる。図9では、例えば、カラム171aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向き171Daとしたときに、第1遅相軸171Lは第1の長軸の向き171Daと概ね直交している。
【0086】
同様に、第3遅相軸172Lの方向も、カラム172aの長軸方向と一定の関係を持って配置されている。カラム172aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向き172Daとしたときに、第3遅相軸172Lは第3の長軸の向き172Daと概ね直交している。なお、第3の膜172は位相差を有しているものの、第3の膜172の厚みが第1の膜171及び第2の膜173の双方の厚みに比べて十分に薄いので、その位相差は無視できる程の大きさとなっている。
【0087】
同様に、第2遅相軸173Lの方向も、カラム173aの長軸方向と一定の関係を持って配置されている。カラム173aの長軸を基板の上面に投影したときの基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向き173Daとしたときに、第3遅相軸173Lは第3の長軸の向き173Daと概ね直交している。
【0088】
第1の長軸の向き171Daと第2の長軸の向き173Daとは、概ね直交している。そのため、第1遅相軸171Lと第2遅相軸173Lとは、概ね直交している。
【0089】
第1の長軸の向き171Daと第3の長軸の向き172Daとは、概ね45度である。
ここで、「概ね45度」とは、第1の長軸の向き171Daと第2の長軸の向き172Daとのなす角度が45度±5%、すなわち42.25度以上47.25度以下の範囲を意味している。つまり、第1の長軸の向き171Daと第3の長軸の向き172Daとが完全に45度ではなく、第3の長軸の向き172Daが第1の長軸の向き171Da及び第2の長軸の向き173Daの双方の向きと異なっていても、本発明の許容範囲であることを意味している。
【0090】
本実施形態の液晶装置300によれば、第3の膜172がバッファ層として機能するので、第2の膜173を第1の膜171に積層して配置するときのカラム173aの配列の乱れを緩和することができる。すなわち、第1の膜171の上に直接第2の膜173のカラム173aを成長させようとした場合、下地の第1の膜171のカラム171aの成長方向が第2の膜173のカラム173aの成長方向と大きく異なるため、所望の方向にうまく第2の膜173のカラム173aが成長しない場合がある。その場合、第1の膜171の上に、カラムの成長方向が第1の膜171のカラム171aの成長方向と第2の膜173のカラム173aの成長方向の中間にある第3の膜172を形成し、これを下地として第2の膜173を形成すれば、第2の膜173のカラム173aの成長方向を所望の方向に制御し易い。
【0091】
また、この構成によれば、第3の膜172における第3の長軸の向き172Daが第1の膜171における第1の長軸の向き171Daと第2の膜173における第2の長軸の向き173Daとのなす角度の概ね中央値となるので、第2の膜173を第1の膜171に積層して配置するときのカラム173aの配列の乱れを緩和しやすくなる。
【0092】
なお、本実施形態の液晶装置300では、第3の膜172を第1の膜171の上に斜方蒸着により形成した斜方蒸着膜としたが、これに限らない。例えば、第3の膜を第1の膜の上に垂直に蒸着させて形成する垂直蒸着膜としてもよい。これにより、第3の膜自体の持つ光学的異方性は無視できることとなる。
【0093】
(第4実施形態)
図10は、図2に対応した、本発明の第4実施形態に係る配向膜の概略構成を示す断面図である。ここでは、第1配向膜と第2配向膜のうち第1配向膜の構成を例に挙げて説明する。なお、図10においては、便宜上、画素電極、共通電極、各種配線及び各種駆動回路の図示を省略する。
【0094】
本実施形態に係る液晶装置は、有機材料を光配向処理することにより第1の膜及び第2の膜を形成している点で、上述の第1実施形態に係る液晶装置100と異なっている。その他の点は上述の構成と同様であるので、図2と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0095】
図10に示すように、第1配向膜18は、素子基板10上に配置された第1の膜181と、第1の膜181に積層して配置された第2の膜182と、を備えている。第1の膜181及び第2の膜182は、有機材料を光配向処理することによって形成されている。
【0096】
第1の膜181は、微視的に見て、有機材料が斜め方向(図示略)に沿った構造となっている。このような構造からなる第1の膜181は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。第2の膜182は、微視的に見て、有機材料が斜め方向182Dに沿った構造となっている。このような構造からなる第2の膜182は、その微細構造に起因して、大なり小なり位相差を生じさせるようになっている。第1の膜181の厚みと第2の膜182の厚みとは、概ね同じ厚みとなっている。
【0097】
図12は、第4実施形態に係る配向膜を作製するための光配向処理を示す断面図である。図12に示すように、配向膜は、偏光紫外線UVを基板10に設けられた塗膜18a(配向膜形成材料)に照射して、液晶配向を生じさせる光配向法によって形成することができる。
【0098】
例えば、先ず、配向膜形成材料を含む液滴を基板10上に塗布し、溶媒を乾燥させる。次に、光配向法によって所定の配向方向を持つよう基板10上に第1の膜を形成する。その後、第1の膜の配向方向と配向方向が概ね直交するよう第1の膜の上に第2の膜を形成する。これにより、第1の膜の配向方向と第2の膜の配向方向とが概ね直交した配向膜を形成することができる。
【0099】
この光配向法は、有機分子中の光配向機能を発現させる光配向性基、例えばアゾ基等の光異性化によるもの、シンナモイル基、クマリン基、カルコン基等の光二量化によるもの、ベンゾフェノン基等の光架橋やポリイミド樹脂等の光分解によるもの等がある。光異性化、光二量化や光架橋を利用した配向膜形成材料としては、基板10に塗布した際に均一な膜が得られるように、側鎖や主鎖に前記のような光配向性基を導入した高分子材料が用いられる。
【0100】
図11は、第4実施形態に係る配向膜の光学的異方性を説明するための平面図である。ここでは、第1配向膜と第2配向膜のうち第1配向膜を構成する第1の膜181及び第2の膜182の光学的異方性を例に挙げて説明する。なお、図11において、図11(a)は第1の膜181の光学的異方性を説明するための平面図、図11(b)は第2の膜182の光学的異方性を説明するための平面図である。
【0101】
図11に示すように、第1遅相軸181Lの方向は、第1の膜181の配向方向181Daと一定の関係性を持って配置されている。第1の膜181の配向方向181Daと第1遅相軸181Lとの間には一対一の関係があり、第1の膜181の配向方向181Daが決まると、第1遅相軸181Lの方向が決まる。第1遅相軸181Lは第1の膜181の配向方向181Daと概ね直交している。
【0102】
同様に、第2遅相軸182Lの方向も、第2の膜182の配向方向182Daと一定の関係性を持って配置されている。第2遅相軸182Lは第2の膜182の配向方向182Daと概ね直交している。
【0103】
第1の膜181の配向方向181Daと第2の膜182の配向方向182Daとは、概ね直交している。そのため、第1遅相軸181Lと第2遅相軸182Lとは、概ね直交している。
【0104】
ここで、「概ね直交する」とは、第1遅相軸181Lと第2遅相軸182Lとのなす角度が90度±5%、すなわち85.5度以上94.5度以下の範囲を意味している。つまり、第1遅相軸181Lと第2遅相軸182Lとが完全に90度ではなく、わずかに斜めに交差していても、本発明の許容範囲であることを意味している。
【0105】
このように90度に対して5%の範囲内でずれていても、第1の膜181と第2の膜182とによって発現される第1の膜181と第2の膜182との積層によって発現される位相差を概ね0にすることができる。ここで、「概ね0」とは、第1の膜181と第2の膜182との積層によって発現される位相差が完全に相殺される場合だけでなく、製造誤差の範囲内で2つの膜の遅相軸が直交する方向から若干ずれて、配向膜全体の面内の位相差が完全には0とならない場合を含む意味である。
【0106】
第1の膜181と第2の膜182を有機材料を光配向処理することによって形成した場合、形成された膜の配向方向とその膜に形成される遅相軸との間には一定の関係が存在し、形成された膜の配向方向が決まると遅相軸の方向も決まる。そのため、第1の膜181と第2の膜182の配向方向を特定の関係に設定することで、第1の膜181と第2の膜182の面内の位相差を相殺し、配向膜全体として位相差の小さい配向膜を形成することができる。
【0107】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の実施形態について説明する。図13は、本発明に係る電子機器の一例を示す斜視図である。図13に示す携帯電話1300は、本発明の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。これにより、本発明の液晶装置により構成されたコントラストが変動することを抑制した表示部を具備した携帯電話1300を提供することができる。
【0108】
上記各実施の形態の液晶装置は、上記携帯電話に限らず、液晶プロジェクターのライトバルブ、高温ポリシリコンTFT液晶(HTPS)、反射型高温ポリシリコンTFT液晶(R−HTPS)、LCOS(Liquid crystal on silicon)、デジタルサイネージ、EVF(Electronic View Finder)として用いることができる。また、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、テレビジョン受像機、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等々の画像表示手段として好適に用いることができ、かかる構成とすることで、表示品質が高く、信頼性に優れた表示部を備えた電子機器を提供できる。
【符号の説明】
【0109】
10…素子基板、16,17,18…第1配向膜、20…対向基板、22,23…第2配向膜、50…液晶層、50a…液晶、100,200,300…液晶装置、161,171,181,221,231…第1の膜、161a,162a,171a,172a,173a…カラム(結晶体)、161Da,171Da…第1の長軸の向き、161L,171L,181L…第1遅相軸、162,173,182,222,233…第2の膜、162Da,173Da…第2の長軸の向き、162L,173L,182L…第2遅相軸、172,232…第3の膜、172Da…第3の長軸の向き、181Da…第1の膜の配向方向、182Da…第2の膜の配向方向、1300…携帯電話(電子機器)、θ1…第1の膜の結晶体の長軸が基板となす角度、θ2…第2の膜の結晶体の長軸が基板となす角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜が形成された一対の基板間に液晶を挟持する液晶装置であって、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板に形成された前記配向膜は、
第1の膜と、
前記第1の膜に積層して配置された第2の膜と、を備え、
前記第1の膜の第1遅相軸と前記第2の膜の第2遅相軸とは交差しており、
前記第1の膜と前記第2の膜との積層によって発現される位相差は、概ね0になっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第1遅相軸と前記第2遅相軸とは、概ね直交していることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第1の膜及び前記第2の膜は、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有し、
前記第1の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向きとし、前記第2の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第2の長軸の向きとしたときに、
前記第1遅相軸は前記第1の長軸の向きと概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の長軸の向きと概ね直交していることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第1の膜と前記第2の膜の間には、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有する第3の膜が配置され、
前記第3の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向きとしたときに、
前記第3の長軸の向きは、前記第1の長軸の向き及び前記第2の長軸の向きの双方の向きと異なる向きであることを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第1の長軸の向きと前記第3の長軸の向きのなす角度は、概ね45度であることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第1の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度と前記第2の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度とを概ね等しくすることで、前記第1の膜と前記第2の膜の屈折率異方性が概ね等しくなっていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第1の膜及び前記第2の膜は、有機材料を光配向処理することにより形成されたものであり、
前記第1遅相軸は前記第1の膜の配向方向と概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の膜の配向方向と概ね直交していることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記配向膜は、前記一対の基板の双方の基板に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記第1の膜と前記第2の膜は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
配向膜が形成された一対の基板間に液晶を挟持する液晶装置であって、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板に形成された前記配向膜は、
第1の膜と、
前記第1の膜に積層して配置された第2の膜と、を備え、
前記第1の膜の第1遅相軸と前記第2の膜の第2遅相軸とは交差しており、
前記第1の膜と前記第2の膜との積層によって発現される位相差は、概ね0になっていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第1遅相軸と前記第2遅相軸とは、概ね直交していることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第1の膜及び前記第2の膜は、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有し、
前記第1の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第1の長軸の向きとし、前記第2の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第2の長軸の向きとしたときに、
前記第1遅相軸は前記第1の長軸の向きと概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の長軸の向きと概ね直交していることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第1の膜と前記第2の膜の間には、前記基板の上面に対して傾斜した柱状の結晶体を有する第3の膜が配置され、
前記第3の膜の結晶体の長軸を前記基板の上面に投影したときの前記基板の上面上における長軸の向きを第3の長軸の向きとしたときに、
前記第3の長軸の向きは、前記第1の長軸の向き及び前記第2の長軸の向きの双方の向きと異なる向きであることを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第1の長軸の向きと前記第3の長軸の向きのなす角度は、概ね45度であることを特徴とする請求項4に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第1の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度と前記第2の膜の結晶体の長軸が前記基板となす角度とを概ね等しくすることで、前記第1の膜と前記第2の膜の屈折率異方性が概ね等しくなっていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第1の膜及び前記第2の膜は、有機材料を光配向処理することにより形成されたものであり、
前記第1遅相軸は前記第1の膜の配向方向と概ね直交しており、前記第2遅相軸は前記第2の膜の配向方向と概ね直交していることを特徴とする請求項2に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記配向膜は、前記一対の基板の双方の基板に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項9】
前記第1の膜と前記第2の膜は、屈折率異方性が概ね同じであって、厚みが概ね同じであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の液晶装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶装置を備えていることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−103313(P2012−103313A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249456(P2010−249456)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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