説明

液晶配向剤および液晶表示素子

【課題】 保存安定性が良好であり、透明性に優れそして液晶配向性が良好な液晶配向膜を形成し得る液晶配向剤を提供する。
【解決手段】 [a]下記式(A)〜(C):
【化1】


式中、nは1〜3の整数でありそしてmは1〜20の整数である、のそれぞれで表される少なくとも一種の繰り返し単位を有しかつポリマー鎖中に存在する芳香環量がポリマーの全重量に対して25重量%以下であるポリイミド100重量部および
[b]下記式(D)〜(J);
【化2】


のそれぞれで表わされる化合物から選ばれる少なくとも一種のエポキシ基含有化合物0.5〜20.0重量部を含有する液晶配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、保存安定性が良好であり、透明性に優れ、液晶配向性が良好な液晶配向膜を形成し得る液晶配向剤および上記液晶配向膜を備える液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、透明導電膜が設けられている基板の当該表面に有機高分子などからなる液晶配向膜を形成して液晶表示素子用の基板とし、その2枚を対向配置してその間隙内に液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、この液晶表示素子をTFT駆動により動作させたいわゆるTFT液晶パネルが従来のブラウン管モニターにかわって広く普及しつつある。液晶表示素子としては、液晶として正の誘電異方性を有するネマティック型液晶を用い、液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子や、垂直配向型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマティック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。また、TN型液晶表示素子に比して視角依存性の少ないIPS(In‐Plane Switiching)型液晶表示素子や、垂直配向型液晶表示素子が開発されている。液晶配向膜は、これらの液晶表示素子において液晶の配向を制御する機能を有し、有機高分子などからなる液晶配向膜材料と溶剤などを含む液晶配向剤を、フレキソ印刷法などにより基板に塗布し、これを焼成して樹脂膜を形成し、これに液晶配向能を付与して得られる。
このような液晶表示素子に用いられる液晶配向剤は、従来は芳香環を有するモノマーを多量に用いて合成されたポリアミック酸およびこれを脱水閉環して得られる構造を有するポリイミドを用いて作製されてきた。芳香環を多量に含むポリマーは耐熱性に優れ剛直になる一方で、短波長光の吸光度が高く、着色するために透明性に劣る。このために芳香環を多量に含むポリマーを用いて配向膜を形成し液晶表示素子を作製すると、光の吸収が生じるために着色して色彩の美しい画像を得ることができなかった。
【0003】
特許文献1には、このような課題を解決するために、ポリマー中に存在する芳香環量がポリマーの全重量に対して25重量%以下であるポリアミック酸および/またはポリイミドを含有する液晶配向剤が開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されている液晶配向剤は、配向膜に対するラビング処理の条件によっては、配向膜が基板から剥離したり、配向膜の表面にラビング処理に伴う傷が生じたりするという問題があった。
特許文献2には、エポキシ基を含有する化合物とポリアミック酸および/またはポリイミドを含有することにより、ラビング条件によらず一定のプレチルト角を示す液晶配向剤が開示されている。また特許文献3には、特定構造のエポキシ基含有化合物とポリアミック酸および/またはポリイミドを含有することにより、剥離やラビング傷の生じない液晶配向剤が開示されている。
しかしながら、芳香環量が25重量%以下のポリイミドおよび/またはポリアミック酸とエポキシ基含有化合物をともに含有する液晶配向剤においては、ポリイミドおよび/またはポリアミック酸とエポキシ基含有化合物が、液晶配向剤の保管中に反応してしまい、液晶配向剤としての保存安定性が劣る場合があった。また、ポリアミック酸および/またはポリイミドとエポキシ基含有化合物を基板に塗布する直前に混合するという方法も考えられるが、これは液晶パネル製造工程における工数の増大につながること、混合時に異物が混入してしまい、基板への塗布時にピンホール状欠陥などの不良を生じさせる可能性があることから、望ましくない。
【特許文献1】特開2000−250047号公報
【特許文献2】特許第3049699号明細書
【特許文献3】特許第3206401号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の状況から、本発明の目的は、保存安定性が良好であり、透明性に優れそして液晶配向性が良好な液晶配向膜を形成し得る液晶配向剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記液晶配向膜を備えた液晶表示素子を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、[a]下記式(A)〜(C):
【0006】
【化1】

式中、nは1〜3の整数でありそしてmは1〜20の整数である、のそれぞれで表される少なくとも一種の繰り返し単位を有しかつポリマー鎖中に存在する芳香環量がポリマーの全重量に対して25重量%以下であるポリイミド100重量部および
[b]下記式(D)〜(J);
【0007】
【化2】

のそれぞれで表わされる化合物から選ばれる少なくとも一種のエポキシ基含有化合物0.5〜20.0重量部を含有することを特徴とする液晶配向剤によって達成される。
【0008】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第二に、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性が良好であり、透明性に優れ、液晶配向性が良好な液晶配向膜を形成し得る液晶配向剤を提供することができる。さらに、本発明の液晶配向剤により形成される液晶配向膜を有する液晶表示素子は、種々の装置に有効に使用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、携帯電話、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶データプロジェクタ、液晶テレビなどの表示装置として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明で用いられるポリイミドは、上記式(A)〜(C)のそれぞれで表される繰り返し単位の少なくとも1つを有する。
上記式(A)の繰返し単位は、2,3,5−トリカルボキシシクロベンチル酢酸二無水物とシクロヘキサンビス(メチルアミン)に由来する。
上記式(B)の繰返し単位は、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物とノルボルナンビス(メチルアミン)に由来する。
また、上記式(C)の繰返し単位は、2,3,5−トリカルボキシシクロベンチル酢酸二無水物とジアミノオルガノシロキサンに由来する。
本発明で用いられるポリイミドは、上記式(A)、(B)、および(C)のそれぞれで表わされる繰返し単位を合計でポリマー鎖中に、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%で含有することができる。
【0011】
さらに、本発明で用いられるポリイミドは、ポリマー鎖中の全芳香環の含有量がポリマー全重量に対して25重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。ポリマー鎖中の全芳香環の含有量を減少させることでポリマーの吸光度を下げ、透明性に優れた配向膜を得ることができる。
芳香環の具体例としては、ベンゼン環;ナフタレン環、アントラセン環などの縮合ベンゼン環;ピリジン環、フラン環などの複素環などが挙げられる。本発明におけるポリマー鎖中の芳香環の含有量は、ポリマー中の芳香環の分子量(芳香環に結合された有機基の分子量は含まない)をポリマー全体の分子量で割った値として求められる。例えば、ポリマー中の環部分が下記式
【0012】
【化3】

で表わされる場合、芳香環の分子量はメチル基を除いた部分の分子量75となる。
【0013】
本発明で用いられるポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、開環重付加させて得られるポリアミック酸を脱水閉環させて得られる。 本発明で用いられるポリイミドの合成には、芳香環を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物およびとして、上記式(A)、(B)および(C)で表わされる繰返し単位から明らかなとおり、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が用いられまたジアミンとしてシクロヘキサンビス(メチルアミン)、ノルボルナンビス(メチルアミン)およびジアミノオルガノシロキサンの少なくとも1種のジアミンが用いられる。
またポリイミドのポリマー鎖中の芳香環の含有量を25重量%とするために、その他の芳香環を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物やジアミンをさらに用いることができる。
【0014】
<テトラカルボン酸二無水物>
上記ポリイミドの合成に用いられる芳香環を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、上記したものも含めて、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、下記式(I)および(II)で表される化合物を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0015】
【化4】

(式中、R1およびR3は、脂肪族環を有する2価の有機基を示し、R2およびR4は、水素原子またはアルキル基を示し、複数存在するR2およびR4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0016】
これらのうち、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物が好ましい。また特に好ましいものとして、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
また、上記の芳香環を有さない脂肪族テトラカルボン酸二無水物と併用してもよい、芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5,8−ジメチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物などの芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、下記式(1)〜(4)で表される化合物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0018】
【化5】

【0019】
<ジアミン化合物>
上記ポリアミック酸の合成に用いられる、芳香環を有さない脂肪族のジアミン化合物としては、上記したものも含めて、例えば、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(エチル−1−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(エチル−2−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(プロピル−1−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(プロピル−2−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(プロピル−3−アミン)、1,2−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(エチル−1−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(エチル−2−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(プロピル−1−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(プロピル−2−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(プロピル−3−アミン)、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(エチル−1−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(エチル−2−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(プロピル−1−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(プロピル−2−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(プロピル−3−アミン)、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、2,3−ノルボルナンビス(メチルアミン)、2,5−ノルボルナンビス(メチルアミン)、2,6−ノルボルナンビス(メチルアミン)、2,7−ノルボルナンビス(メチルアミン)などの脂環式ジアミン;下記式(III)で表されるジアミノオルガノシロキサンを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0020】
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基を示し、複数存在するRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。)
【0021】
これらのうち、好ましいものとしては1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(エチル−1−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(エチル−2−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(プロピル−1−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(プロピル−2−アミン)、1’,3’−シクロヘキサンビス(プロピル−3−アミン)、1,2−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(エチル−1−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(エチル−2−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(プロピル−1−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(プロピル−2−アミン)、1’,2’−シクロヘキサンビス(プロピル−3−アミン)、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(エチル−1−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(エチル−2−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(プロピル−1−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(プロピル−2−アミン)、1’,4’−シクロヘキサンビス(プロピル−3−アミン)、2,3−ノルボルナンビス(メチルアミン)、2,5−ノルボルナンビス(メチルアミン)、2,6−ノルボルナンビス(メチルアミン)、2,7−ノルボルナンビス(メチルアミン)、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、上記式(III)で表されるジアミノオルガノシロキサンなどが挙げられる。特に好ましいものとしては、1,2−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ノルボルナンビス(メチルアミン)、2,6−ノルボルナンビス(メチルアミン)、ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサンが挙げられる。
【0022】
またポリマー中の全芳香環量がポリマー全重量に対して25%以下となる組成内で上記の脂肪族ジアミン化合物と併用してもよい芳香族ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,1−メタキシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;
2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミンおよび下記式(IV)〜(V)で表される化合物などの、分子内に2つの1級アミノ基および該1級アミノ基以外の窒素原子を有するジアミン;
【0023】
【化7】

(式中、R5は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する1価の有機基を示しそしてX1は2価の有機基を示す。)
【0024】
【化8】

(式中、X2は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する2価の有機基を示しそしてR6は2価の有機基を示す。但し複数存在するX2は、同一でも異なっていてもよい。)
下記式(VI)で表されるモノ置換フェニレンジアミン類;
【0025】
【化9】

(式中、Raは、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−および−CO−から選ばれる2価の有機基を示し、Rbは、ステロイド骨格、トリフルオロメチル基およびフルオロ基から選ばれる基を有する1価の有機基または炭素数6〜30のアルキル基を示す。)
下記式(9)〜(21)で表される化合物などを挙げることができる。これらのジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
【化10】

【0027】
【化11】

(式中、yは2〜12の整数でありそしてzは1〜5の整数である。)
【0028】
<ポリアミック酸>
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.4当量となる割合である。ポリアミック酸の合成反応は、有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。ここで、有機溶媒としては、原料となるジアミン化合物およびテトラカルボン酸二無水物と合成されるポリアミック酸をともに溶解できるものであれば特に制限はなく、好ましいものとして例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を例示することができる。また、有機溶媒の使用量(a)は、通常、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0029】
なお、前記有機溶媒には、ポリアミック酸の貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジアセトンアルコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、α−ピネンなどを挙げることができる。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することによりポリアミック酸を得ることができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出させる工程を1回または数回行うことにより、ポリアミック酸を精製することができる。
【0030】
<ポリイミド>
本発明の液晶配向剤を構成するポリイミドは、上記ポリアミック酸を脱水閉環することにより調製することができる。本発明で用いられるポリイミドは、イミド化率が低いものであってもよい。ここで、「イミド化率」とは、重合体におけるアミック酸を形成してなる繰返し単位とイミド環を形成してなる繰り返し単位の総数に対する、イミド環を形成してなる繰り返し単位の数の割合を%で表したものとする。このとき、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。脱水閉環反応の条件を調整することにより、イミド化率を調整することができる。
ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(II)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは100〜300℃であり、より好ましくは150〜250℃である。反応温度が100℃未満では脱水閉環反応が十分に進行し難く、反応温度が300℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。
【0031】
一方、上記(II)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。なお、脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。また、このようにして得られる反応溶液に対し、ポリアミック酸の精製方法と同様の操作を行うことにより、ポリイミドを精製することができる。これらポリイミドは、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上記ポリアミック酸および/またはポリイミドが、通常、有機溶媒中に溶解含有されて構成される。本発明の液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
本発明の液晶配向剤における固形分濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い。固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣り易くなる。また、本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0033】
本発明の液晶配向剤には、基板表面に対する接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
これら官能性シラン含有化合物の配合割合は、重合体100重量部に対して、好ましくは、40重量部以下、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0034】
<液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法などの方法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In23−SnO2)からなるITO膜などを用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。液晶配向剤塗布後の加熱温度は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。なお、ポリアミック酸を含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜を形成するが、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、よりイミド化された塗膜とすることもできる。形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0035】
(2)形成された塗膜面を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。また、本発明の液晶配向剤により形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような、紫外線を部分的に照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているような、ラビング処理を施した液晶配向膜表面にレジスト膜を部分的に形成し、先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去して、液晶配向膜の液晶配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0036】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
【0037】
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。液晶としては、ネマティック型液晶を挙げることができ、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。本明細書の実施例および比較例のポリマーの対数粘度、イミド化率、液晶配向剤の保存安定性、液晶配向膜の透明性、ラビング耐性、並びに作製した液晶表示素子の配向性、電圧保持率は以下の方法により評価した。
【0039】
<対数粘度>
本発明における対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、ポリマーの重量濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記式(i)によって求められるものである。得られるポリアミック酸およびポリイミドは、その対数粘度(ηln)の値が好ましくは0.05〜10dl/g、より好ましくは0.05〜5dl/gである。
【0040】
【数1】

【0041】
<イミド化率>
ポリイミドを室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温で1H−NMRを測定し、下記式(ii)で示される式により求めた。
イミド化率(%)=(1−A1/A2×α)×100 (ii)
1:NH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)
2:その他のプロトン由来のピーク面積
α :重合体の前駆体(ポリアミック酸)における、NH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合
【0042】
<液晶配向剤の保存安定性>
所定の組成で作成した液晶配向剤を40℃保管庫にて一ヶ月保管し、一ヵ月後の配向剤が均一に溶解していれば○、均一に溶解していなければ×とした。
<液晶配向膜の透明性>
石英基板に液晶配向膜を形成し、254nm光の透過率測定により評価し、50%以上を○、50%未満を×とした。なお、測定装置にはHITACHI U−2010形分光光度計(日立製作所(株)製)を用いた。
【0043】
<液晶配向膜のラビング耐性>
石英基板に液晶配向膜を形成し、レーヨン製の布を巻きつけたロールを備えたラビングマシーンを用い、毛足押込み長0.8mm、ロール回転数400rpm、ステージの移動速度3cm/秒、ラビング回数2回の条件にてラビング処理を行い、形成された液晶配向膜をイソプロピルアルコールにて洗浄し、配向膜に基板からの剥離がラビング傷の発生しているかを目視確認し、剥離および/またはラビング傷が発生していないものを○、しているものを×とした。
【0044】
<液晶の配向性>
液晶表示素子に電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判定した。
<液晶表示素子の電圧保持率>
液晶表示素子に5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.7ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から16.7ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
【0045】
合成例1
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224.17g(1モル)、ジアミン化合物として1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)99.58g(0.7モル)、4,4’−メチレンジアニリン59.48g(0.3モル)を、N−メチル−2−ピロリドン4500gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗滌し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度0.80dl/gのポリアミック酸(これを「ポリアミック酸(A1)」とする。)350gを得た。得られたポリアミック酸30gをN−メチル−2−ピロリドン570gに溶解させ、ピリジン23.4gおよび無水酢酸18.1gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗滌、減圧乾燥を行い、対数粘度0.85dl/g、イミド化率90%、芳香環量13重量%のポリイミド(これを「ポリイミド(B1)」とする。)17.0gを得た。
【0046】
合成例2〜11および比較合成例1〜3
テトラカルボン酸二無水物、ジアミンを表に記載のものに変更した以外は合成例1と同様にして、表1に示す対数粘度、イミド化率、芳香環量のポリイミドB2〜B10、b1、b2を得た。また、合成例1のイミド化処理を行わない条件にて比較合成例a3のポリマーを作成した。
【0047】
【表1】

【0048】
表1におけるジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物は下記のとおり。
<ジアミン化合物>
D1:1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)
D2: 1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)
D3:1,4−シクロヘキサンジアミン
D4:2,6−ノルボルナンビス(メチルアミン)
D5:上記式(16)で表されるジアミン
D6:上記式(17)で表されるジアミン
D7:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
D8:p−フェニレンジアミン
D9:4,4’−メチレンジアニリン
D10:ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン
<テトラカルボン酸二無水物>
T1:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
T2:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
T3:1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン
【0049】
実施例1
合成例1で得られたポリイミド(B1)2gをγ−ブチロラクトンに溶解させて、固形分濃度4重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過し、本発明の液晶配向剤を調製した。得られた液晶配向剤の保存安定性を評価した。結果を表2に記す。
上記液晶配向剤を、厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、スピンナーを用いて塗布(回転数:2,000rpm,塗布時間:1分間)し、200℃で1時間乾燥することにより乾燥膜厚0.05μmの被膜を形成した。この被膜にレーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数400rpm、ステージの移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmでラビング処理を行った。上記液晶配向膜塗布基板を、イソプロピルアルコール中に1分間浸漬した後、100℃のホットプレート上で5分間乾燥した。次に、一対の透明電極基板の上記液晶配向膜塗布基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間に、ネマティック型液晶(メルク社製、MLC−6221)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を張り合わせ、液晶表示素子を作製した。得られた液晶表示素子の電圧保持率、配向性を評価した。厚さ1.5mmの石英基板上に、上記のようにして調製された本発明の液晶配向剤をスピンナーを用いて塗布し、液晶表示素子作製時と同様にして塗膜を形成し、ラビング耐性、透明性を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0050】
実施例2〜33および比較例1〜4
表2に示すポリイミドまたはポリアミック酸を用いた以外は実施例1と同様にして、液晶配向剤を調製し、これを用いて液晶表示素子を作製し、評価を行った。評価結果を表2、表3に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
表2、表3におけるエポキシ基含有化合物は下記のとおり。
E1:上記式(D)で表される化合物
E2:上記式(E)で表される化合物
E3:上記式(F)で表される化合物
E4:上記式(G)で表される化合物
E5:上記式(H)で表される化合物
E6:上記式(I)で表される化合物
E7:上記式(J)で表される化合物



【特許請求の範囲】
【請求項1】
[a]下記式(A)〜(C):
【化1】

式中、nは1〜3の整数でありそしてmは1〜20の整数である、のそれぞれで表される少なくとも一種の繰り返し単位を有しかつポリマー鎖中に存在する芳香環量がポリマーの全重量に対して25重量%以下であるポリイミド100重量部および
[b]下記式(D)〜(J);
【化2】

のそれぞれで表わされる化合物から選ばれる少なくとも一種のエポキシ基含有化合物0.5〜20.0重量部を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする液晶表示素子。



【公開番号】特開2006−23595(P2006−23595A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−202394(P2004−202394)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】