説明

液晶配向剤及びこの液晶配向剤で製造された液晶配向膜、液晶表示素子

【課題】残像の発生を低減することができる液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーと、有機溶媒と、を含み、25℃において5〜40cpsの範囲の粘度を有することを特徴とする液晶配向剤を提供する。
【化1】


[ここで、PとQはそれぞれ二価の有機基である。]
また、この液晶配向剤により製造された液晶配向膜、そしてこの液晶配向膜を備える液晶表示素子も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤に関し、特に残像の発生を低減して、保存安定性が向上した液晶配向剤に関する。また、本発明は、この液晶配向剤で製造された液晶配向膜、及びこの液晶配向膜を備える液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子はコンピュータのモニターやカメラのビュー・ファインダー、投写型ディスプレイ、テレビなどに広く用いられている。
【0003】
ネマチック液晶表示素子は一般的な液晶表示素子に広く使用されている。実際に利用されているネマチック液晶表示素子の具体例としては、(1)一方の基板の液晶配向方向が他方の基板の液晶の配向方向に対して90度ツイストした、TN(ツイストネマチック)液晶表示素子、(2)一方の基板の液晶配向方向が他方の基板の液晶の配向方向に対して180度以上ツイストした、STN(スーパーツイストネマチック)液晶表示素子、そして、(3)薄膜トランジスタを使用した、TFT(薄膜トランジスタ)液晶表示素子が挙げられる。
【0004】
液晶表示素子の表示性能向上のため、液晶配向膜の改善は当該技術分野において継続的に試みられてきた。
【0005】
液晶配向膜は液晶配向剤を用いて製造される。従来、液晶配向剤はポリアミック酸や可溶性ポリイミドを有機溶媒に溶かすことで調合され、その後基板上に塗布して硬化させることで液晶配向膜を形成する。
【0006】
ポリアミック酸やポリイミドから調合された従来の液晶配向剤により形成された液晶配向膜は、優れた耐熱性を有するが、プレチルト角の経時的安定性が十分でない。
【0007】
特許文献1には、文献中に記載された繰り返し単位を有するポリマーを含んだ液晶配向膜であって、安定して高いプレチルト角や、良好な液晶配向性が得られるとともに、良好な電気‐光学特性が得られる液晶配向膜が開示されている。
【0008】
特許文献2には、文献中で定義された特定の繰り返し単位を有するポリマーを含むことによって、安定して高いプレチルト角と、良好な電気‐光学特性を有する液晶配向膜が開示されている。
【0009】
これらの液晶配向膜を製造するための液晶配向剤として、ポリアスパルトイミドを使用しているが、従来の合成方法で得られた液晶配向剤中には、予想された量のポリアスパルトイミド重合体以外にも未反応物が多く含まれているため、液晶配向剤の保存安定性が悪く、また、その液晶配向剤を用いて製造された液晶配向膜は残像現状が起こりやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7‐110484号公報
【特許文献2】特開平7‐43725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、残像の発生を低減することができ、保存安定性が向上した液晶配向剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーと、有機溶媒と、を含み、25℃において5〜40cpsの範囲の粘度を有することを特徴とする液晶配向剤を提供する。
【0013】
【化1】

【0014】
[ここで、PとQはそれぞれ二価の有機基である。]
【0015】
また、前記液晶配向剤からなる配向膜を提供する。
【0016】
そして、前記液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、残像の発生を低減することができ、保存安定性が向上した液晶配向剤及びこの液晶配向剤で製造された液晶配向膜、液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の液晶配向剤は、ポリマー、有機溶媒、及び、任意で加えられる添加剤を含んでいる。ポリマーは、下記の化学式(I)で表される繰り返し単位を有する。
【0019】
【化2】

【0020】
ここで、PとQはそれぞれ二価の有機基である。この液晶配向剤は25℃において5〜40cpsの範囲の粘度を有する。
【0021】
(1)ポリマー
ポリマーの合成方法については特に制限は無い。ポリマーは例えば、有機溶媒中でジアミン化合物とビスマレイミド化合物とを重合するといった一般的な合成方法により得られる。重合を促進するために、適当な量の触媒を用いることが好ましい。重合促進に適した触媒の例として、氷酢酸、酢酸、プロピオン酸などが挙げられる。
【0022】
ジアミン化合物1モルに対して、ビスマレイミド化合物の量は一般的には1〜2モル、好ましくは1〜1.5モル使用する。ジアミン化合物1モルに対してビスマレイミド化合物を2モルより多く使用した場合、得られるポリマーの重量平均分子量は大きくなりすぎ、ポリマーは有機溶媒に対する溶解度が低くなってしまう可能性がある。一方、ジアミン化合物1モルに対して、1モルよりも少ないビスマレイミド化合物を使用した場合、得られるポリマーの重量平均分子量は小さくなりすぎ、ポリマーで製造された液晶配向膜の耐熱性が損なわれる可能性がある。
【0023】
ポリマーを得るための重合反応は通常、0〜180℃の温度の範囲で行われ、好ましくは80〜120℃の温度の範囲で行われる。ポリマーの重量平均分子量はこの温度や重合反応の時間を制御することで調整することが可能である。当該重量平均分子量は、50000〜70000が好ましく、さらに好ましくは55000〜65000である。
【0024】
重合のための有機溶媒については特に制限はない。有機溶媒の例として、N‐メチル‐2‐ピロリドン、N,N‐ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ‐ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、などのような非プロトン性極性溶媒、メタクレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールのようなフェノール系溶媒、などが挙げられる。
【0025】
上述の有機溶媒は、ポリマーの沈殿が発生しない範囲でアルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素化合物、炭化水素化合物などの貧溶媒と組み合わせて用いることができる。
【0026】
貧溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、トリエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノ‐n‐プロピルエーテル、エチレングリコールモノ‐i‐プロピルエーテル、エチレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2‐ジクロロエタン、1,4‐ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o‐ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、などが挙げられる。
【0027】
得られたポリマーを含む反応溶液を大量の貧溶媒に注いで沈殿を生じさせ、この沈殿を減圧環境下で乾燥することでポリマーが得られる。この他に反応溶液を減圧環境下で蒸留器を用いて蒸留することによってもポリマーを得ることができる。このような処理を繰り返すことによってポリマーを精製することができる。
【0028】
(1)−1:ジアミン化合物
本発明に用いられるジアミン化合物は、脂肪族ジアミン化合物、脂環式ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物、又はその他のジアミン化合物を含む。
【0029】
脂肪族ジアミン化合物や脂環式ジアミン化合物の例として、1,3‐ジアミノプロパン、1,4‐ジアミノブタン、1,5‐ジアミノペンタン、1,6‐ジアミノヘキサン、1,7‐ジアミノヘプタン、1,8‐ジアミノオクタン、1,9‐ジアミノノナン、4,4‐ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4‐ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ‐4,7‐メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]‐ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルアミン)が挙げられる。
【0030】
芳香族ジアミン化合物の例としてp‐フェニレンジアミン、m‐フェニレンジアミン、o‐フェニレンジアミン、4,4’‐ジアミノジフェニルメタン、4,4’‐ジアミノジフェニルエタン、4,4’‐ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’‐ジアミノジフェニルスルホン、3,3’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル、4,4’‐ジアミノベンズアニリド、4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、1,5‐ジアミノナフタレン、2,2’‐ジメチル‐4,4’‐ジアミノビフェニル、5‐アミノ‐1‐(4’‐アミノフェニル)‐1,3,3‐トリメチルインダン、6‐アミノ‐1‐(4’‐アミノフェニル)‐1,3,3‐トリメチルインダン、3,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,3’‐ジアミノベンゾフェノン、3,4’‐ジアミノベンゾフェノン、4,4’‐ジアミノベンゾフェノン、2,2‐ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス(4‐アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[(4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、1,4‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(3‐アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9‐ビス(4‐アミノフェニル)‐10‐ヒドロアントラセン、2,7‐ジアミノフルオレン、9,9‐ビス(4‐アミノフェニル)フルオレン、4,4’‐メチレン‐ビス(2‐クロロアニリン)、2,2’,5,5’‐テトラクロロ‐4,4’‐ジアミノビフェニル、2,2’‐ジクロロ‐4,4’‐ジアミノ‐5,5’‐ジメトキシビフェニル、3,3’‐ジメトキシ‐4,4’‐ジアミノビフェニル、4,4’‐(p‐フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’‐(m‐フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’‐ビス[4‐(4‐アミノ‐2‐トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’‐ジアミノ‐2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’‐ビス[(4‐アミノ‐2‐トリフルオロメチル)フェノキシ]オクタフルオロビフェニルが挙げられる。
【0031】
その他のジアミン化合物の例として、2,3‐ジアミノピリジン、2,6‐ジアミノピリジン、3,4‐ジアミノピリジン、2,4‐ジアミノピリミジン、5,6‐ジアミノ‐2,3‐ジシアノピラジン、5,6‐ジアミノ‐2,4‐ジヒドロキシピリミジン、2,4‐ジアミノ‐6‐ジメチルアミノ‐1,3,5‐トリアジン、1,4‐ビス(3‐アミノプロピル)ピペラジン、2,4‐ジアミノ‐6‐イソプロポキシ‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐6‐メトキシ‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐6‐フェニル‐1,3,5‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐6‐メチル‐s‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐1,3,5‐トリアジン、4,6‐ジアミノ‐2‐ビニル‐s‐トリアジン、2,4‐ジアミノ‐5‐フェニルチアゾール、2,6‐ジアミノプリン、5,6‐ジアミノ‐1,3‐ジメチルウラシル、3,5‐ジアミノ‐1,2,4‐トリアゾール、6,9‐ジアミノ‐2‐エトキシアクリジンラクテート、3,8‐ジアミノ‐6‐フェニルフェナントリジン、1,4‐ジアミノピペラジン、3,6‐ジアミノアクリジン、ビス(4‐アミノフェニル)フェニルアミンが挙げられる。
【0032】
上述のジアミン化合物の例に加えて、本発明に好適なジアミン化合物は、下記の化学式(I−1)と(I−2)で表される化合物(すなわち、分子中に二つの第1級アミノ基と、第1級アミノ基以外の窒素原子を含むジアミン)であってもよい。
【0033】
【化3】

【0034】
ここで、Rはピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジン、ピペラジンからなる群から選択される、窒素を含む環状構造を有する一価の有機基であり、Xは二価の有機基である。
【0035】
【化4】

【0036】
ここで、R4aとR4bはそれぞれピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジン、ピペラジンからなる群から選択される、窒素を含む環状構造を有する二価の有機基であり、Xは二価の有機基である。
【0037】
また、下記の化学式(I−3)〜(I−5)で表される化合物も含まれる。
【0038】
【化5】

【0039】
ここで、Rは、‐O‐、‐COO‐、‐OCO‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐CO‐からなる群から選択された二価の有機基であり、Rはステロイド骨格、トリフルオロメチル基、フルオロ基からなる群から選択される基を有する一価の有機基、または炭素数6〜30のアルキル基である。
【0040】
【化6】

【0041】
ここで、Rは、‐O‐、‐COO‐、‐OCO‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐CO‐からなる群から選択された二価の有機基であり、XとXはそれぞれ、脂環式基、芳香族基、複素環基からなる群から選択され、Rは炭素数3〜18のアルキル基、炭素数3〜18のアルコキシ基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のフルオロアルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子からなる群から選択される。
【0042】
【化7】

【0043】
ここで、R9a、R9b、R9c及びR9dはそれぞれ、炭素数1〜12の炭化水素基であり、pは1〜3の整数、qは1〜20の整数である。
【0044】
また、以下の化学式(1)〜(7)で表される化合物であってもよい。
【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
ここで、tは2〜12の整数を表し、uは1〜5の整数を表す。
【0053】
これらのジアミン化合物は単独であるいは二種類以上を混合して使用することができる。
【0054】
上述の化学式(I−1)で表される化合物の一例として、下記の化学式(8)で表される化合物が挙げられ、上述の化学式(I−2)で表される化合物の一例として、下記の化学式(9)で表される化合物が挙げられ、上述の化学式(I−3)で表される化合物の例として、下記の化学式(10)〜(21)で表される化合物が挙げられ、上述の化学式(I−4)で表される化合物の例として、下記の化学式(22)〜(33)で表される液晶性ジアミン化合物が挙げられる。
【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
【化19】

【0060】
【化20】

【0061】
【化21】

【0062】
【化22】

【0063】
【化23】

【0064】
【化24】

【0065】
【化25】

【0066】
【化26】

【0067】
【化27】

【0068】
【化28】

【0069】
【化29】

【0070】
【化30】

【0071】
【化31】

【0072】
【化32】

【0073】
【化33】

【0074】
【化34】

【0075】
【化35】

【0076】
【化36】

【0077】
【化37】

【0078】
【化38】

【0079】
【化39】

【0080】
【化40】

【0081】
ここで、化学式中のvは3〜12の整数である。
【0082】
全ジアミン化合物100モル%に対し、化学式(I−1)〜(I−5)及び化学式(1)〜(7)で表されたジアミン化合物の総使用量は通常、1〜100モル%であり、好ましくは3〜100モル%であり、更に好ましくは5〜100モル%である。
【0083】
全ジアミン化合物100モル%に対し、化学式(I−1)〜(I−5)及び化学式(1)〜(7)で表されたジアミン化合物の総使用量が1〜100モル%であるとき、これによって製造された液晶配向剤は良好な保存安定性を有し、またこの液晶配向剤によって製造された液晶配向膜は良好なプレチルト角や残像の発生がないに関して、改善された配向性を有する。
【0084】
(1)−2:ビスマレイミド化合物
ビスマレイミド化合物の製造方法については特に限定は無い。ビスマレイミド化合物は通常、無水マレイン酸系誘導体とジアミン化合物を有機溶媒中で反応させ、更にイミド化処理を行うことによって合成される。
【0085】
無水マレイン酸系誘導体の例として、無水マレイン酸、2,3‐ジメチルマレイン酸無水物、2‐メチルマレイン酸無水物、2,3‐ジエチルマレイン酸無水物、2‐エチルマレイン酸無水物などが挙げられる。中でも無水マレイン酸が好ましい。
【0086】
ビスマレイミド化合物の製造のために好適なジアミン化合物の例は、上述のジアミン化合物と同じものが挙げられる。
【0087】
ビスマレイミド化合物の製造方法において、無水マレイン酸系誘導体の無水物基はジアミン化合物のアミノ基に対するモル比が通常1.0〜2.5の範囲になるように、好ましくは1.0〜2.0の範囲になるように、更に好ましくは1.0〜1.8の範囲になるように、無水マレイン酸系誘導体とジアミン化合物の分量を調節する。
【0088】
有機溶媒に無水マレイン酸系誘導体とジアミン化合物の反応温度は通常0〜100℃の範囲に、好ましくは0〜80℃の範囲に、更に好ましくは0〜70℃の範囲にある。反応時間は通常1〜5時間、好ましくは2〜4時間である。
【0089】
イミド化処理は例えば酸性触媒存在下で脱水/閉環反応を行うことにより実施される。イミド化処理の温度は通常40〜200℃の範囲に、好ましくは80〜150℃の範囲にある。イミド化処理に適した酸性触媒の例として、リン酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、p‐トルエンスルホン酸などが挙げられる。
【0090】
ビスマレイミド化合物の合成に用いる有機溶媒については特に制限はない。有機溶媒の例として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン、ジメチルスルホキシド等が含まれる。
【0091】
本発明に用いるビスマレイミド化合物の例として、N,N’‐m‐フェニレンビスマレイミド、N,N’‐p‐フェニレンビスマレイミド、N,N’‐m‐キシレンビスマレイミド、N,N’‐p‐キシレンビスマレイミド、N,N’‐2,4‐トリレンビスマレイミド、N,N’‐2,6‐トリレンビスマレイミド、 1,3‐ビス(3‐マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス(4‐マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3‐ビス[3‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェノキシ]ベンゼン、1,3‐ビス{3‐[3‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ}ベンゼン、1,3‐ビス{1‐[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]‐1‐メチルエチル}ベンゼン、1,3‐ビス{1‐[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]‐1‐メチルエチル}ベンゼン、1,4‐ビス{1‐[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]‐1‐メチルエチル}ベンゼン、N,N’‐3,3’‐ビフェニレンビスマレイミド、N,N’‐4,4’‐ビフェニレンビスマレイミド、N,N’‐4,4’‐(3,3’‐ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、 4,4’‐ビス(3‐マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4’‐ビス(4‐マレイミドフェノキシ)ビフェニル、N,N’‐3,3’‐ジフェニルメタンビスマレイミド、 N,N’‐4,4’‐ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’‐ジフェニルエタンビスマレイミド、ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐メチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐メトキシフェニル)メタン]ビスマレイミド、 N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐エチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3,5‐ジメチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3,5‐ジエチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐メチル‐5‐エチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐エチル‐5‐メチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3,5‐ジイソプロピルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐クロロフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐ジフェニルプロパンビスマレイミド、2,2‐ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2‐ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[3‐クロロ‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐ブロモ‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐メチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐メチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[3‐エチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐エチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[3‐プロピル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐イソプロピル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐ブチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐t‐ブチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐s‐ブチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3‐メトキシ‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3,5‐ジメチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2‐ビス[3,5‐ジメチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[3,5‐ジブロモ‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[4‐{1‐[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]‐1‐メチルエチル}フェニル]プロパン、N,N’‐3,3’‐ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’‐4,4’‐ジフェニルエーテルビスマレイミド、ビス[3‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、 ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス{3‐[3‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェノキシ]フェニル}エーテル、ビス(3‐マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4‐マレイミドフェニル)ケトン、ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス(3‐マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4‐マレイミドフェニル)スルフィド、ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス(3‐マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4‐マレイミドフェニル)スルホン、ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3‐メチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5‐ジメチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3‐エチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1‐ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2‐ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1‐ビス[3‐メチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1‐ビス[3‐クロロ‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1‐ビス[3‐ブロモ‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、3,3‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ペンタン、N,N’‐エチレンビスマレイミド、N,N’‐トリメチレンビスマレイミド、N,N’‐テトラメチレンビスマレイミド、N,N’‐ペンタメチレンビスマレイミド、N,N’‐ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’‐ヘプタメチレンビスマレイミド、N,N’‐オクタメチレンビスマレイミド、N,N’‐デカメチレンビスマレイミド、N,N’‐ドデカメチレンビスマレイミド、N,N’‐(4,4’‐ジシクロヘキシルメタン)ビスマレイミド、N,N’‐(1,3‐ジメチレンシクロヘキサン)ビスマレイミド、N,N’‐(1,4‐ジメチレンシクロヘキサン)ビスマレイミドなどが挙げられる。
【0092】
上述のビスマレイミド化合物の中でも、N,N’‐m‐フェニレンビスマレイミド、N,N’‐p‐フェニレンビスマレイミド、N,N’‐3,3’‐ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’‐4,4’‐ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐エチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3,5‐ジメチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3,5‐ジエチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐メチル‐5‐エチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3‐エチル‐5‐メチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’‐[4,4’‐ビス(3,5‐ジイソプロピルフェニル)メタン]ビスマレイミド、ビス[3‐メチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5‐ジメチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3‐エチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、2,2‐ビス[4‐(3‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[3‐エチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2‐ビス[3,5‐ジメチル‐4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0093】
(2)有機溶媒
本発明の液晶配向剤に用いる有機溶媒の例として、N‐メチル‐2‐ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、γ‐ブチロラクタム、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、4‐ヒドロキシ‐4‐メチル‐2‐ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、3‐メトキシプロピオン酸メチル、3‐エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノ‐n‐プロピルエーテル、エチレングリコールモノ‐i‐プロピルエーテル、エチレングリコールモノ‐n‐ブチルエーテル(即ち、ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0094】
100重量部のポリマーに対して、有機溶媒は400〜10000重量部、好ましくは500〜5000重量部、更に好ましくは700〜3000重量部である。
【0095】
(3)添加剤
本発明の液晶配向剤には、基板に対する接着度、また摩耗抵抗を改善するために、液晶配向剤の好ましい特性を損なわない範囲で、官能性シランを含む化合物やエポキシ基を含む化合物のような添加剤を加えてもよい。
【0096】
官能性シランを含む化合物の例として、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、2‐アミノプロピルトリメトキシシラン、2‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3‐ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3‐ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N‐エトキシカルボニル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐エトキシカルボニル‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N‐トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10‐トリメトキシシリル‐1,4,7‐トリアザデカン、10‐トリエトキシシリル‐1,4,7‐トリアザデカン、9‐トリメトキシシリル‐3,6‐ジアザノニルアセテート、9‐トリエトキシシリル‐3,6‐ジアザノニルアセテート、N‐ベンジル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐ベンジル‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニル‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐ビス(オキシエチレン)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐ビス(オキシエチレン)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0097】
エポキシ基を含む化合物の例として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2‐ジブロモ‐ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6‐テトラグリシジル‐2,4‐ヘキサンジオール、N,N,N’,N’‐テトラグリシジル‐m‐キシレンジアミン、1,3‐ビス(N,N‐ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’‐テトラグリシジル‐4,4’‐ジアミノジフェニルメタン、3‐(N‐アリル‐N‐グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐(N,N‐ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0098】
(4)液晶配向剤の調製
本発明の液晶配向剤はポリマーと任意添加物を有機溶媒に溶解させることで得られる。
【0099】
本発明の液晶配向剤を調製するための好ましい温度は0〜100℃の範囲であり、更に好ましくは20〜60℃である。
【0100】
本発明の液晶配向剤の粘度は25℃において通常5〜40cps、好ましくは8〜35cps、更に好ましくは10〜30cpsである。液晶配向剤の粘度は、主に液晶配向剤に含有される前記ポリマーの重量平均分子量の制御により調整することが可能である。すなわち、当該重量平均分子量が大きくなると粘度も大きくなり、重量平均分子量が小さくなると粘度も小さくなる。ポリマーの重量平均分子量の主な調整手段としては、前述したように「ジアミン化合物とビスマレイミド化合物の使用量の割合の調整」と「重合反応の温度と時間の調整」が挙げられる。
【0101】
液晶配向剤の粘度が5cpsよりも小さい場合、液晶配向剤の膜形成能力が不十分となり、当該液晶配向剤から製造された液晶配向膜に残像問題が生じる。一方、液晶配向剤の粘度が40cpsよりも大きい場合、液晶配向剤の保存安定性が不十分となり、当該液晶配向剤から製造された液晶配向膜は厚くなりすぎたり、ピンホール欠陥を含んだりする。
【0102】
(5)液晶配向膜の構成
本発明の液晶配向剤は、透明導電膜が設けられている基板一面にロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの方法で塗布され、その後加熱して塗膜が形成される。
【0103】
本発明に適した基板の例として、無アルカリ性ガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなど、液晶ディスプレイデバイスに一般的に使用されているものや、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどで製造された透明プラスチック基板が挙げられる。基板の片面に形成される透明導電膜には酸化スズ(SnO)で作られたNESAフィルム(NESAは米国PPG社の登録商標)、酸化インジウム‐酸化スズ(In−SnO)で作られたITO(インジウムスズ酸化物)フィルムなどを使用することができる。
【0104】
液晶配向剤を塗布する前に、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性を良好にするため、官能性シランを含む化合物や官能性チタンを含む化合物を基板の表面に塗布しても良い。
【0105】
液晶配向膜を形成するための加熱過程は、液晶配向剤で塗布した後のプレベーク処理及びその後のポストベーク処理を含む。プレベーク処理によって有機溶媒が揮発し、塗膜が形成される。プレベーク処理の温度は通常、30〜120℃であり、好ましくは40〜110℃、更に好ましくは50〜100℃である。
【0106】
更に、塗膜が形成された後、塗膜を安定させるために、ポストベーク処理が施される。ポストベーク処理の温度は通常150〜300℃であり、好ましくは180〜280℃であり、更に好ましくは200〜250℃である。
【0107】
形成された塗膜の膜厚は、0.001〜1μmが好ましく、0.005〜0.5μmが更に好ましい。
【0108】
形成された塗膜には、必要に応じてナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻きつけたロールで所定方向に擦るラビング処理を行い、これにより、液晶分子の配向性を塗膜上に付与されて、液晶配向膜が構成される。また、液晶分子の配向能の付与方法は、例えば、形成された配向膜の少なくとも一枚の基板上に突起形状又はパターン形状を形成させて達成し、この方法はMVA(Multi−domain Vertical Alignment)やPVA(Patterned Vertical Alignment)が広く知られている。
【0109】
(6)液晶表示素子
二枚の基板にそれぞれ形成された上述の液晶配向膜は、互いに所定の間隔(セルギャップ)をおいて向き合うように配置される。二枚の基板の周辺部はシール剤で張り合わせて、これら基板の表面とシール剤で区画されたセルギャップに液晶が充填された後、注入口が封止されて液晶セルが形成される。そして、この液晶セルの外表面(すなわち、液晶セルを形成している基板の他面)に偏光板が貼り付けられ、液晶表示素子を得る。
【0110】
シール剤は一般的なエポキシ樹脂硬化剤でよく、スペーサーの材料はガラスビーズ、プラスチックビーズ、又は感光性エポキシ樹脂などでもよい。液晶の例として、ネマチック液晶、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などが挙げられる。上述の液晶に、コレステリルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶と、商品名C‐15、CB‐15(Merck社製)で販売されているカイラル剤を加えることもできる。更に、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【0111】
実施例
以下の実施例は本発明の好ましい実施形態を示すものであって、発明の範囲を限定するように解釈されるべきものではない。
【0112】
以下の実施例で用いられる、上述の化学式(7)の構造を有する化合物は特開2003‐96034号公報に開示された方法に基づいて合成したものであり、以下、C7CDAと称する。以下の実施例で用いられる、上述の化学式(6)の構造を有する化合物は特開2002‐162630号公報に開示された方法に基づいて合成したものであり、以下、BCDAと称する。
【0113】
[ポリマーの合成]
[合成例1]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、N,N’‐4,4’‐ジフェニルメタンビスマレイミド(以下、DPM−BMIと称する)を8.96g(0.025mol)とN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと称する)を50g加えた。DPM−BMIがNMPに溶解するまで室温(23〜25℃)で撹拌した。そして、p‐フェニレンジアミン(以下、PDAと称する)を2.57g(0.02375mol)、C7CDAを0.61g(0.00125mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で24時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlのメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−1−1)を得た。
【0114】
[合成例2]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、N,N’‐m‐フェニレンビスマレイミド(以下、P−BMIと称する)を6.71g(0.025mol)とNMPを50g加えた。P−BMIがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、4,4’‐ジアミノジフェニルメタン(以下、DDMと称する)を3.97g(0.02mol)、BCDAを2.26g(0.005mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で24時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlのメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−1−2)を得た。
【0115】
[合成例3]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、DPM−BMIを8.96g(0.025mol)とNMPを50g加えた。DPM−BMIがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと称する)を4.00g(0.02mol)、上述の化学式(16)で表される化合物(以下、VEDAと称する)を2.82g(0.005mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で24時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlのメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−1−3)を得た。
【0116】
[合成例4]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、DPM−BMIを13.62g(0.038mol)とNMPを50g加えた。DPM−BMIがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、PDAを2.57g(0.02375mol)、C7CDAを0.61g(0.00125mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で36時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlのメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−1−4)を得た。
【0117】
[合成例5]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、P−BMIを6.71g(0.025mol)とNMPを50g加えた。P−BMIがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、DDMを4.16g(0.021mol)、BCDAを2.49g(0.0055mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で24時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlのメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−1−5)を得た。
【0118】
[合成例6]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、DPM−BMIを8.96g(0.025mol)とNMPを50g加えた。DPM−BMIがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、ODAを4.00g(0.02mol)、VEDAを2.82g(0.005mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で6時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlのメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−1−6)を得た。
【0119】
[比較合成例1]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、DPM−BMIを8.96g(0.025mol)とNMPを50g加えた。DPM−BMIがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、PDAを5.14g(0.0475mol)、C7CDAを1.23g(0.0025mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で24時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlのメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−2−1)を得た。
【0120】
[比較合成例2]
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、DPM−BMIを26.88g(0.075mol)とNMPを50g加えた。DPM−BMIがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、PDAを2.16g(0.02mol)、BCDAを2.26g(0.005mol)、氷酢酸を5g、NMPを27g加え、100℃で48時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液をメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−2−2)を得た。
【0121】
[比較合成例3](特許文献1の技術)
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、DPM−BMIを26.88g(0.075mol)とm‐クレゾールを167g加えた。DPM−BMIがm‐クレゾールに溶解するまで室温で撹拌した。そして、DDMを14.87g(0.075mol)、酢酸を0.75ml加え、100℃で48時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液をメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(P−A−1)を得た。
【0122】
更に、窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えたもう一つの500mlの四つ口フラスコに、得られたポリマー(P−A−1)を10gとNMPを175g加えた。ポリマー(P−A−1)がNMPに溶解するまで室温で撹拌した。その後、温度を5℃よりも下げ、トリエチルアミンを5.3g、n−ドデカノイルクロリドを9.45g加え、24時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液をメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−2−3)を得た。
【0123】
[比較合成例4](特許文献2の技術)
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、2,2‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを28.53g(0.05mol)とm‐クレゾールを150g加えた。2,2‐ビス[4‐(4‐マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンがm‐クレゾールに溶解するまで室温で撹拌した。そして、オクチルアミンを6.46g(0.05mol)、酢酸を0.7g加え、100℃で30時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液をメタノールに注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−2−4)を得た。
【0124】
[比較合成例5](一般的従来技術)
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、VEDAを2.82g(0.005mol)、PDAを4.87g(0.045mol)、NMPを80g加えた。VEDAとPDAがNMPに溶解するまで室温で撹拌した。そして、ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAと称する)を10.91g(0.05mol)、NMPを20g加え、室温で2時間反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlの水に注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−2−5)を得た。
【0125】
[比較合成例6](一般的従来技術)
窒素ガス雰囲気の下で、窒素ガス導入口、撹拌器、加熱器、冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、VEDAを5.64g(0.01mol)、PDAを4.33g(0.04mol)、NMPを68g加えた。VEDAとPDAがNMPに溶解するまで60℃で撹拌した。そして、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−コハク酸二無水物(以下、TDAと称する)を15.01g(0.05mol)、NMPを30g加え、室温で6時間反応を行わせた。更に、NMPを97g、無水酢酸を5.61g、ピリジンを19.75g加えた。60℃で2時間撹拌し、イミド化反応を行わせた。その後、ポリマーを沈殿させるため、反応溶液を1500mlの水に注いだ。ろ過後に得られたポリマーを真空オーブンで60℃の温度で乾燥させ、ポリマー(A−2−6)を得た。
【0126】
[液晶配向剤と液晶表示素子の調製]
以下の実施例と比較例において、液晶配向剤と液晶表示素子を調製し、次の評価方法によって評価した。
【0127】
[評価方法]
1.粘度:
以下の実施例と比較例においてそれぞれ調製済みの液晶配向剤の粘度をE型回転粘度計(東機産業株式会社製、TV−22型粘度計)を用いて25℃で6rpmの条件で測定した。結果を表1に示す。なお、単位はcpsである。
【0128】
2.塗布特性:
各調製済み液晶配向剤を印刷法によって基板上に塗布するとともに、プレベーク処理とポストベーク処理を行った。ピンホールやその他の欠陥(例えば不均一な膜厚など)といった何らかの塗布欠陥の有無について、塗膜の表面を顕微鏡を用いて確認した。
【0129】
表1中の各記号の意味は以下の通りである。
○ :塗膜の表面が滑らかで、塗布欠陥も無い。
△ :塗膜の表面に少数のピンホール欠陥及び/又は軽微な塗布欠陥がある。
× :塗膜の表面に多数のピンホール欠陥及び/又は大きな塗布欠陥がある。
××:塗膜を形成できない、又は非常に多くのピンホール欠陥及び/又は極度に大きな塗布欠陥がある。
【0130】
3.保存安定性:
「T.J.Scheffer,et.al.,J.Appl.Phys.,vol.19,2013(1980)」に記載の方法に基づき、He−Neレーザー光を用いた結晶回転法で液晶配向膜のプレチルト角を測定した。該測定には、中央精機株式会社製、型番はOMS−CM4RDを使用した。
【0131】
調製した液晶配向剤で製造した液晶配向膜によって形成された液晶セルのプレチルト角と45℃で7日間保存後の液晶配向剤で製造した液晶配向膜によって形成された液晶セルのプレチルト角を測定した。調製した液晶配向剤で製造した液晶配向膜によって形成された液晶セルのプレチルト角を(a)、45℃で7日間保存後の液晶配向剤で製造した液晶配向膜によって形成された液晶セルのプレチルト角を(b)とすると、プレチルト角変動は以下の式で定められる。
【0132】
【数1】

【0133】
表1中の各記号の意味は以下の通りである。
○:プレチルト角変動 < 5%
△:プレチルト角変動が5〜10%
×:プレチルト角変動 > 10%
【0134】
4.プレチルト角の経時的安定性
「T.J.Scheffer,et.al.,J.Appl.Phys.,vol.19,2013(1980)」に記載の方法に基づき、He−Neレーザー光を用いた結晶回転法で液晶配向膜のプレチルト角を測定した。該測定には、中央精機株式会社製、型番はOMS−CM4RDを使用した。
【0135】
調製した液晶配向剤で製造した液晶配向膜によって形成された液晶セルのプレチルト角と、60℃で100時間おいた後の液晶セルのプレチルト角を測定した。調製した液晶配向剤で製造した液晶配向膜によって形成された液晶セルのプレチルト角を(c)、60℃で100時間おいた後の液晶セルのプレチルト角を(d)とすると、プレチルト角変動は以下の式で定められる。
【0136】
【数2】

【0137】
表1中の各記号の意味は以下の通りである。
○:プレチルト角変動 < 5%
×:プレチルト角変動 ≧ 5%
【0138】
5.残像
10.0V直流電圧を、製造した液晶セルに対し48時間印加した後、電圧を切り、残像が生じるか否か目視を行った。表1中の各記号の意味は以下の通りである。
○:残像現象が発生しなかった
×:残像現象が発生した
【0139】
[実施例1]
合成例1で得られた100重量部のポリマー(A−1−1)を785重量部のNMPと785重量部のエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(以下、BCと称する)の共溶媒に室温で溶解させ、配向剤溶液を得た。
【0140】
配向剤溶液をITO(インジウムスズ酸化物)ガラス基板上に印刷機(日本写真印刷株式会社製、型番はS15−036)を用いて塗布し、その後、配向剤溶液で塗布されたITOガラス基板を100℃のホットプレート上に5分間でプレベーク処理を行い、220℃のオーブンにおいて30分間でポストベーク処理を行い、ITOガラス基板に膜を形成した。膜厚測定装置(KLA−Tencor社製、型番はAlpha−step500)を用いて膜厚が約800±200Åであると測量した。
【0141】
液晶膜配向装置(株式会社飯沼ゲージ製作所製、型番はRM02−11)を用いて膜表面の配向処理を行った。ステージ移動速度50mm/sec、毛足押し込み長さ0.3mmで、一方へ一回ラビング処理を行った。二枚の液晶配向膜ガラス基板は上述の工程で製造した。熱圧接着剤が一枚のガラス基板に塗布され、もう一枚のガラス基板には4μmのスペーサーを付着した。二枚のガラス基板が相対し、かつ、ラビング方向が90度ねじれた状態で重ね合わせた。熱圧装置を用いて10kgの圧力をかけ、150℃で熱加圧処理を行った。液晶は液晶注入装置(株式会社島津製作所製、型番はALIS−100X−CH)を用いて注入し、液晶注入口を封止するため、紫外線光を用いて紫外線硬化剤を硬化させ、オーブンにおいて60℃で30分間アニール処理を行った。このようにして液晶表示素子を製造した。
【0142】
このようにして得られた液晶配向剤と液晶表示素子を上述の評価方法に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。
【0143】
[実施例2〜6]
実施例2〜6は、実施例1と同一の方法により、表1に示すポリマー、有機溶媒、及び/又は添加剤を用いて行われた。実施例2〜6によって得られた液晶配向剤と液晶表示素子を上述の評価方法に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。なお、実施例2、3、5、6においてはMVA型の液晶配向剤を使用しており配向処理は省略されている。
【0144】
[比較例1〜6]
比較例1〜6は、実施例1と同一の方法により、表1に示すポリマー、及び有機溶媒を用いて行われた。比較例1〜6によって得られた液晶配向剤と液晶表示素子を上述の評価方法に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。なお、比較例2と比較例6においては、MVA型の液晶配向剤を使用しており配向処理は省略されている。
【0145】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーと、
有機溶媒と、
を含み、25℃において5〜40cpsの範囲の粘度を有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

[ここで、PとQはそれぞれ二価の有機基である。]
【請求項2】
25℃において8〜35cpsの範囲の粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記ポリマーはジアミン化合物とビスマレイミド化合物とを重合させて得られることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記ジアミン化合物は、式(I−1)〜(I−5)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項3に記載の液晶配向剤。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

[ここで、Rはピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジン、ピペラジンからなる群から選択される、窒素を含む環状構造を有する一価の有機基である。Xは二価の有機基である。R4aとR4bはそれぞれピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジン、ピペラジンからなる群から選択される、窒素を含む環状構造を有する二価の有機基である。RとRはそれぞれ、‐O‐、‐COO‐、‐OCO‐、‐NHCO‐、‐CONH‐、‐CO‐からなる群から選択された二価の有機基である。Rはステロイド骨格、トリフルオロメチル基、フルオロ基からなる群から選択される基を有する一価の有機基、または炭素数6〜30のアルキル基である。XとXはそれぞれ脂環式基、芳香族基、複素環基からなる群から選択される。Rは炭素数3〜18のアルキル基、炭素数3〜18のアルコキシ基、炭素数1〜5のフルオロアルキル基、炭素数1〜5のフルオロアルコキ基、シアノ基、ハロゲン原子からなる群から選択される。R9a、R9b、R9c及びR9dはそれぞれ炭素数1〜12の炭化水素基である。pは1〜3の整数、qは1〜20の整数である。]
【請求項5】
前記ジアミン化合物は、式(1)〜(7)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項3に記載の液晶配向剤。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

[ここで、tは2〜12の整数を表し、uは1〜5の整数を表す。]
【請求項6】
前記有機溶媒は、100重量部の前記ポリマーに対して、400〜10000重量部用いることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記有機溶媒は、100重量部の前記ポリマーに対して、500〜5000重量部用いることを特徴とする請求項6に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
請求項1に記載の液晶配向剤によって製造されたことを特徴とする液晶配向膜。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶配向膜を備えることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−8565(P2012−8565A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135839(P2011−135839)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(594006345)奇美實業股▲分▼有限公司 (19)
【Fターム(参考)】