説明

液注入ノズル及びこのノズルを使用した液注入混合装置

【課題】液体に注入液の注入を精密に且つ連続的に行うことできる液注入ノズル及びこのノズルを使用して後段で混合撹拌を必要としない液注入混合装置を提供する。
【解決手段】注入液が注入される液体を送液する配管2に両端が接続されて注入液を液体に注入する液注入ノズル1において、液注入ノズル内に注入液が自吸により導入される注入液導入流路5と液体が流入し流出する複数の液体流路3とを備え、注入液導入流路5の流出側の注入液注入孔5bを囲んで液体流路3の流出側の液体流出孔3bが混合室4に開口し、混合室4が液体流出孔3bから流出する液体に注入液注入孔5bから流出した注入液が注入される注入室4aと、この注入室4aに連続して設けられるとともに、注入室4aより大径の、液体と注入液を撹拌する撹拌室4bを備えている液注入ノズル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液と液を混合する場合に、精密な微量注入を連続的に行うことができる液注入ノズル及びこのノズルを使用して液体に注入液を注入して混合する液注入混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬品の製造など溶液の混合量に厳密な精度が要求されるような製造工程において、液−液混合のための定量注入手段として、従来から様々な注入ポンプや注入装置が提案されている。
【0003】
例えば、引用文献1には減圧チャンバー内の容器に精度良く一定量の液体を注入するため、定量ポンプの突出圧を強くして注入液が封止されている逆止弁を開いて注入液を押し出すことにより注液する定量液体注液装置が開示されている。
【0004】
また、引用文献2には、定量ポンプ装置のピストンの動作を制御して変動時の吐出量の定量性を確保し、長時間に渡って一定量の流体を円滑に供給することができる定量ポンプ装置が開示されている。
【0005】
また、引用文献3には、超純水の供給路を形成する配管に薬液を供給する配管を、キャピラリーを介して接続して混合する薬液供給装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−20001号公報
【特許文献2】特開2006−52646号公報
【特許文献3】特開2000−265945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献に記載された従来の薬液を供給する手段では、正確に一定量注入するために構造が複雑となるだけでなく、装置が大掛かりとなってイニシャルコストが高くなる。また、注入量が微量の場合は間欠注入となり、後段に設けたタンク内で攪拌混合を行う必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、液体に注入液の注入を精密に且つ連続的に行うことができる液注入ノズル及びこのノズルを使用して後段で混合撹拌を必要としない液注入混合装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液注入ノズルは、注入液が注入される液体を送液する配管に両端が接続されて注入液を液体に注入する液注入ノズルにおいて、液注入ノズル内に前記注入液が自吸により導入される注入液導入流路と前記液体が流入し流出する複数の液体流路とを備え、前記注入液導入流路の流出側の注入液注入孔を囲んで前記液体流路の流出側の液体流出孔が混合室に開口し、前記混合室が前記液体流出孔から流出する前記液体に前記注入液注入孔から流出した前記注入液が注入される注入室と、この注入室に連続して設けられるとともに、注入室より大径の、液体と注入液を撹拌する撹拌室を備えていることを特徴とする。
【0009】
また本発明の液注入混合装置、注入液が注入される液体を収容する液体用タンクと、注入液を収容する注入液用タンクと、液体と注入液の混合液用タンクが配置され、前記液体用タンクと前記混合液用タンクが液送用のポンプを備えた接続管で接続され、接続管に請求項1〜3のいずれかに記載の液注入ノズルの両端が接続されるとともに、液注入ノズルが注入液導入量調整弁を備えた注入液導入管を介して注入液用タンクに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液注入ノズルでは、液注入ノズルの自吸作用による注入なので、微量でも脈動がなく安定した連続注入が可能であり、ppmオーダーまでの正確な微量連続注入が可能である。
【0011】
また、液注入ノズルを液体が通過する時に生じる安定した自吸作用を利用するので、機械的構造部を必要としないため、構造は極めてシンプルである。
【0012】
また、注入液体導入孔を複数設けることで、複数液体の同時注入が可能となる。
【0013】
また、本発明の液注入混合装置では、注入液が液注入ノズル内の混合室の注入室に吸入されて液体に注入されると、後段の撹拌室にて発生する乱流によって均一にミキシングされるため、通常必要とされるミキシングタンクが不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の液注入ノズル及び液混合装置の実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0015】
図1(a)は本発明の第1の実施例に係る液注入ノズルの断面図、(b)は流入面を示す図、(c)は流出面を示す図、(d)流出側からみた拡大側面図である。
【0016】
本発明の液注入ノズル1は、その両端が液体を送液するための配管2に接続される。液注入ノズル1には配管2で送液される液体が流入し流出する液体流路3が形成され、液体の流入側には液体流入孔3aが形成され、液体流路3の流出側には混合室4へ液体流出孔3bが開口している。本実施例では3個の液体流路3が端面でそれぞれが点対称位置になるように形成されている。また液体流入孔3aの周囲は、流入する液体の流れを円滑にするためにアールを設けている。
【0017】
また、液注入ノズル1には、液体に混合する注入液を自吸により導入する注入液導入流路5が配置され、注入液導入流路5は、導入側に液注入ノズル1の外側面に注入液導入孔5aが開口し、流出側に注入液注入孔5bが開口している。注入液注入孔5bは、液体流出孔3bに囲まれる配置にする。この配置により、注入液が自吸により連続的に液体中に注入ができる。
【0018】
注入液導入孔5aは、注入液導入管6に接続され、注入液導入管6には逆止弁8、注入液導入量調整弁7が取り付けられている。逆止弁8より注入液の逆流を防止し、注入液導入量調整弁7の開度を調整して注入量を調整する。
【0019】
液体流路3の液体流出孔3bから流出する液体と、注入液導入流路5の液体注入孔5bから注入される注入液が混合される混合室4は、液体流出孔3bから流出する液体に注入液注入孔5bから流出した注入液が注入される注入室4aと、この注入室4aに連続して注入室4aより大きい径の撹拌室4bが形成される。
【0020】
注入室4aでは液体流出孔3bから流出した液体が大きく広がることなく合流し、合流した液体の流出により、オリフィス効果による自吸作用にて注入液が注入液注入孔5bから安定して連続的に吸入され混合される。注入室4aに続く撹拌室4bでは、注入室4aを出た液体と注入液の混合液は、撹拌室4b内に発生する乱流によって液体と注入液が均一に撹拌される。
【実施例2】
【0021】
図2(a)は本発明の第2の実施例に係る液注入ノズルの断面図、(b)は流入面を示す図、(c)は流出面を示す図、(d)流出側からみた拡大側面図である。
【0022】
本実施例は液体に複数の注入液を注入する液注入ノズルの例である。図1と同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0023】
本実施例の液注入ノズル1の基本的な構造は、実施例1の液注入ノズル1と同じであるが、実施例1では注入液が1本の注入液導入流路5が配置されているのに対して、本実施例は、複数の注入液導入流路5を設けて複数の注入液を混合室4で液体に同時に注入することができるようにしたものである。
【実施例3】
【0024】
図3は本発明の液注入ノズルを使用した混合装置の一実施例を示す概略図で、液体(A液)に注入液(B液)を注入してA+B混合液を得る例である。
【0025】
A液タンク9、B液タンク10及びA+B混合液タンク11が配置され、A液タンク9とA+B混合液タンク11が接続管12で接続され、接続管12に液注入ノズル1が組み込まれている。接続管12と液注入ノズル1の間には送液用のポンプ13が配置されている。ポンプは液注入ノズル1の出側に配置してもよい。また、接続管12には液注入ノズル1の前後に流量計14が配置される。液注入ノズル1の注入液導入管6には逆止弁8、ニードル弁等の注入液導入量調整弁7、流量計14が取り付けられている。
【0026】
なお、本実施例の場合、液注入ノズル1の後段の接続管が極端に長くなったり、接続管12の吐出口をタンクの水面下に設けたりして水頭圧が大きくなるなど、液注入ノズル後段の背圧が著しく大きくなることが予想される場合においては、液注入ノズル1の後段に補助ポンプ15を設け圧力損失を軽減する。
【0027】
また、注入液(B液)の液面が一定に維持されないとノズル1の自吸量が変動するため、一定の液位を維持するための注入液供給配管16に定液位維持手段17を併設する。
【0028】
本実施例において、ポンプ13を作動させると、A液タンク9のA液が接続管12に流れ、同時に液注入ノズル1の撹拌室4の注入液注入孔5b近傍に負圧が発生し、B液タンク10から注入液導入管6を通して注入液流入管5を介してB液が自動的に注入される。注入量は注入液導入管6に取り付けた注入液導入量調整弁7によって調整する。注入室4aでA液にB液が注入されたA+B混合液は撹拌室4bで撹拌されながら流出してA+B混合液タンク11へ送られる。
【0029】
(1)メイン流量(A液):23.76L/min、注入量(B液):0.23cc/min(9.68ppm)、(2)メイン流量(A液):17.91L/min、注入量(B液):0.10cc/min(5.58ppm)の条件で注入を実施した結果、所定の濃度のA+B混合液が得られた。
【実施例4】
【0030】
図4は本発明の液注入ノズルを使用した液注入混合装置の別実施例を示す概略図である。図3に示す液注入混合装置と同一の部材には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0031】
本実施例は複数の注入液として、B液、C液、D液及びE液の複数の注入液を注入する場合の実施例である。C液、D液及びE液は、実施例3のB液と同様に、液注入ノズル1の注入液導入管6には逆止弁8、注入液導入量調整弁7、流量計14が取り付けられ、また、各注入液の液面が一定に維持されないと液注入ノズル1の自吸量が変動するため、一定の液位を維持するための定液位維持手段17を併設する。同様に、A液タンク9にも液供給配管18に定液位維持手段17を設ける。
【0032】
本実施例において、ポンプ13を作動させると、A液タンク9のA液が接続管12に流れ、同時に液流入ノズル1の撹拌室4の注入液注入孔5b近傍に負圧が発生し、B液、C液、D液及びE液の各注入液流入管5を介してB液、C液、D液及びE液がそれぞれ自動的に注入される。注入量は注入液導入管6に取り付けた注入液導入量調整弁7によって調整する。注入室4aでA液にB液、C液、D液及びE液が注入されたA+B+C+D+Eの混合液は撹拌室4bで撹拌されながら流出してA+B+C+D+Eの混合液となり、混合液タンク19へ送られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は本発明の第1の実施例に係る液注入ノズルの断面図、(b)は同流入面を示す図、(c)は同流出面を示す図、(d)同流出側からみた拡大側面図である。
【図2】(a)は本発明の第2の実施例に係る液注入ノズルの断面図、(b)は流入面を示す図、(c)は流出面を示す図、(d)流出側からみた拡大側面図である。
【図3】本発明の混合装置の一実施例を示す概略図である。
【図4】本発明の混合装置の別実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1:液注入ノズル
2:配管
3:液体流路
3a:液体流入孔
3b:液体流出孔
4:混合室
4a:注入室
4b:撹拌室
5:注入液導入流路
5a:注入液導入孔
5b:注入液注入孔
6:注入液導入管
7:注入液導入量調整弁
8:逆止弁
9:A液タンク
10:注入液タンク
11:A+B混合液タンク
12:接続管
13:ポンプ
14:流量計
15:補助ポンプ
16:注入液供給配管
17:定液位維持手段
18:液供給配管
19:A+B+C+D+E混合液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入液が注入される液体を送液する配管に両端が接続されて注入液を液体に注入する液注入ノズルにおいて、
液注入ノズル内に前記注入液が自吸により導入される注入液導入流路と前記液体が流入し流出する複数の液体流路とを備え、
前記注入液導入流路の流出側の注入液注入孔を囲んで前記液体流路の流出側の液体流出孔が混合室に開口し、
前記混合室が前記液体流出孔から流出する前記液体に前記注入液注入孔から流出した前記注入液が注入される注入室と、この注入室に連続して設けられるとともに、注入室より大径の、液体と注入液を撹拌する撹拌室を備えていることを特徴とする液注入ノズル。
【請求項2】
前記注入液注入孔が一個であることを特徴とする請求項1記載の液注入ノズル。
【請求項3】
前記注入液注入孔が複数個であることを特徴とする請求項1記載の液注入ノズル。
【請求項4】
注入液が注入される液体を収容する液体用タンクと、注入液を収容する注入液用タンクと、液体と注入液の混合液用タンクが配置され、
前記液体用タンクと前記混合液用タンクが液送用のポンプを備えた接続管で接続され、
接続管に請求項1〜3のいずれかに記載の液注入ノズルの両端が接続されるとともに、液注入ノズルが注入液導入量調整弁を備えた注入液導入管を介して注入液用タンクに接続されていることを特徴とする液注入混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−296486(P2007−296486A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127511(P2006−127511)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(398005630)株式会社オ−ラテック (15)
【Fターム(参考)】