説明

液滴吐出制御装置及び液滴吐出制御方法

【課題】 様々な特性の液体を使用し、液滴の状態を適切に調整することの可能な液滴吐出制御装置及び液滴吐出制御方法を提供すること。
【解決手段】 吐出口から液滴を吐出させる駆動波形WBを電気駆動素子に供給する。ユーザーが駆動波形WB自体のパラメータを入力することにより駆動波形WBの編集を行う操作パネルと、パラメータを保持するパラメータ保持部と、駆動波形WBの基本単位となる基本波形を蓄積する波形記憶部とを有する。繰返し周期t1毎に基本波形を利用して駆動波形WBを生成する波形生成部と、変更パラメータを波形生成部に反映させるタイミングの制御を行うタイミング制御部とを備える。繰返し周期t1毎に駆動波形WBが生成され、パラメータの変更が反映された駆動波形WBが、パラメータの変更後に発生するいずれかの繰返し周期t1に同期したタイミングで供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液滴を吐出させる駆動波形を電気駆動素子に供給するための液滴吐出制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の液滴吐出制御装置としては、例えばインクジェットプリンタのように液滴吐出装置と一体化したものが知られている。また、駆動波形を生成するに当たり、特許文献1に記載の如く、全ての時間領域において電圧を座標化して割り付け、これにより波形のプロフィルを詳細に決定している。インクジェットプリンタでは、使用される液体が条件の特定されたインクである。よって、印刷品質を向上させるために、特定のインクに対して細かな加圧条件を設定して固定し、その固定された条件の波形をユーザーの介入する余地なしに決められた繰返し周期で電気駆動素子に供給している。
【0003】
一方、特許文献2に記載の発明では、インク吐出特性の違いに拘わらず最適な記録を行うことを目的とし、また、特許文献3に記載の発明では、ユーザーによりインクの吐出スピードをアップして印刷速度の改善を図ることを目的としている。そして、これらいずれの発明においても、固定的に準備された基本波形を選択信号により選択している。
【0004】
このように、吐出される液体が限定されると共に駆動波形が固定化されたもののみからの選択に制限される条件下では、様々な特性の液体を使用することができなかった。これに対し、本願発明者らは、異なる種類の液体でも最適な液滴の飛翔を達成できるように、駆動波形のパラメータをユーザーが自ら調整することの可能な液滴吐出制御装置を開発した。
【0005】
ところが、このようにユーザーが駆動波形のパラメータを変更したり、駆動波形の基本波形自身を切り替えるために電気駆動素子の駆動を停止すると、乾燥等によって液滴の飛翔状態が変化したり、吐出口の目づまりで液滴が吐出不能に陥る虞があり、更に、連続的なパラメータの変化に対する、液滴飛翔状態の変化過程が確認できない。また、駆動波形の供給中に、パラメータや基本波形の変更により、供給波形が変更されると、吐出口からの気泡巻き込み、電気駆動素子が機械的な歪みや特許文献4で指摘されるような温度上昇により破壊される虞がある。
【特許文献1】特開2001−260330号
【特許文献2】特開2000−263818号
【特許文献3】特開2006− 95764号
【特許文献4】特開2003−291349号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明の目的は、様々な特性の液体を使用し、液滴の状態を適切に調整することの可能な液滴吐出制御装置及び液滴吐出制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る液滴吐出制御装置の特徴は、吐出口から液滴を吐出させる駆動波形を電気駆動素子に供給するための構成であって、
ユーザーが駆動波形自体のパラメータを入力することにより前記駆動波形の編集を行う編集用インターフェイスと、前記パラメータを保持するパラメータ保持部と、前記駆動波形の基本単位となる基本波形を蓄積する波形記憶部と、繰返し周期毎に前記基本波形を利用して前記駆動波形を生成する波形生成部と、前記編集用インターフェイスから入力され前記パラメータ保持部に保持された変更パラメータを前記波形生成部に反映させるタイミングの制御を行うタイミング制御部とを備え、繰返し周期毎に前記駆動波形が生成され、前記パラメータの変更が反映された前記駆動波形が、前記パラメータの変更後に発生するいずれかの繰返し周期に同期したタイミングで供給されることにある。
【0008】
同特徴によれば、ある駆動波形の供給中にこの駆動波形に対してパラメータが変更されたり基本波形が変更になることがない。また、これらの変更が反映された新たな駆動波形の供給までに駆動波形が維持されるため、吐出口の吐出状態はこれらの変更に拘わらず維持され、電気駆動素子を破壊することがない。
【0009】
望ましくは、前記パラメータが、駆動電圧及び/又は駆動周期よりなる。
そして、前記パラメータが、さらに駆動波形の繰返し周期を含んでもよい。これにより、駆動波形の繰返し周期を変更しつつ、駆動波形自体もそのパラメータの変更により編集が可能である。
【0010】
さらに、前記パラメータ保持部は、通常吐出としての前記パラメータと予備吐出としての前記パラメータを個別に保持可能としてもよい。これにより、予備吐出のパラメータ条件により目詰まりを回復及び防止することができる。
【0011】
前記波形記憶部及び前記波形生成部を複数組備え、ある波形生成部による駆動波形の供給中に他の波形生成部及び/又は他の波形記憶部より生じる駆動波形を新たに編集し、前記波形生成部を前記タイミングで切換えて新たに編集された駆動波形を供給することが望ましい。同構成によれば、基本波形自体を切り替えても、駆動波形を途絶えることなく供給することができる。
【0012】
他の複数の液滴吐出制御装置との接続が可能であり、ひとつの装置からの前記駆動波形出力に同期して他の装置から前記駆動波形を出力することが可能とするように構成してもよい。同構成によれば、複数の吐出制御装置を同期させて液滴を複数箇所に同時に供給することができる。
【0013】
また、液滴観察用のストロボ光源駆動部を備え、ストロボ光源駆動部の発光タイミング、発光ピーク値及び発光時間は記憶可能に構成してもよい。これにより、最適な発光状態で液滴の観察が可能となる。また、前記ストロボ光源駆動部は発光ピーク値及び発光時間よりなる光量を前記繰返し周期に連動させて変更可能とすることで、液滴の状態変化と観察時の発光条件とを連動させることができる。
【0014】
一方、本発明に係る液滴吐出制御方法の特徴は、吐出口から液滴を吐出させる駆動波形を電気駆動素子に供給する方法において、
ユーザーが駆動波形自体のパラメータを入力することにより前記駆動波形の編集を行う編集用インターフェイスと、前記パラメータを保持するパラメータ保持部と、前記駆動波形の基本単位となる基本波形を蓄積する波形記憶部と、繰返し周期毎に前記基本波形を利用して前記駆動波形を生成する波形生成部と、前記編集用インターフェイスから入力され前記パラメータ保持部に保持された変更パラメータを前記波形生成部に反映させるタイミングの制御を行うタイミング制御部とを備え、繰返し周期毎に前記駆動波形が生成され、前記パラメータの変更が反映された前記駆動波形を、前記パラメータの変更後に発生するいずれかの繰返し周期に同期したタイミングで供給することにある。
【0015】
また、前記波形記憶部及び前記波形生成部を複数組備え、ある波形生成部による駆動波形の供給中に他の波形生成部及び/又は他の波形記憶部より生じる駆動波形を新たに編集し、前記波形生成部を前記タイミングで切換えて新たに編集された駆動波形を供給するとよい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の特徴によれば、ユーザー自身が液滴吐出のためのパラメータを変更でき、しかも、そのパラメータの変更を行うために液滴吐出が一定以上中断されて液滴の飛翔状態が定常と変わるようなことがなく、また、前記パラメータの変更により電気駆動素子を破壊することがない。したがって、様々な特性の液体を使用し、液滴の状態を適切に調整できる液滴吐出制御装置及び液滴吐出制御方法を提供することが可能となった。
【0017】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
図1に示すように、本発明に係る液滴吐出システム1は、各ユニットU1〜3にそれぞれヘッド2,LED3,液滴吐出制御装置10を備えている。各ユニットU1〜3は後述するように同期接続され、ヘッド2に設けられたノズル等の吐出口から液滴を同期して吐出する。ヘッド2に収納される電気駆動素子2aは、本実施形態では、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を用いた圧電素子として構成され、ユーザーによりパラメータ入力される液滴吐出制御装置10からの駆動波形を供給されて収縮・伸長する。これにより、図示しない圧力室の体積を増減させて、吐出口から液滴を所望の状態で吐出する。吐出する液体は着脱交換可能なカートリッジ2bから圧力室に供給され、各液体に適したパラメータや波形が選定される。観察装置4は顕微鏡やカメラであり、LED3との連携により液滴の飛翔状態を観察することが可能である。
【0019】
図5に繰返し波形、駆動波形及びLED点灯波形の関係を示すタイミングチャートを示す。駆動波形は本例では三角波であり、同じく三角波である基本波形のパラメータ設定により、繰返し波形(信号)WAの繰返し周期t1(繰返し周波数、パラメータP1)、駆動波形WBの駆動周期t2(駆動周波数、パラメータP2)及び駆動電圧h1(パラメータP3)、LED点灯波形WCの点灯関係時間がそれぞれ設定される。
【0020】
繰返し周波数は「駆動波形間のパラメータ」であり、吐出の安定性を中心に調整し、駆動電圧は吐出速度及び液滴径などを中心に調整する。駆動周波数及び駆動電圧は「駆動波形自体のパラメータ」である。また、吐出回数は液滴の量を調整する。本実施形態では、駆動波形が立ち上がる圧力室の膨張時間t2aと、駆動波形が立ち下がる圧力室の収縮時間t2bとを個別に設定可能としてもよい。繰返し周期t1から駆動周期t2を減じた時間は液体のメニスカス振動が収まる時間となる。なお、基本波形は数種類が保存され、各パラメータは相互に作用するため、基本波形に対応させて総合的に調整し、パラメータのセットとして記憶することにより液滴吐出状態を再現することが可能となる。
【0021】
図2に液滴吐出制御装置10のブロック図を示す。この液滴吐出制御装置10は、メモリ15,19a,19bと連携してプログラムを動作させ全体をコントロールするCPUボード11と、液晶ユニット12及び編集用I/F13の一例である操作パネル13aと、液滴をコントロールするパラメータ保持部23,タイミング制御部24,D/Aコンバータ16、電圧制御部17及び出力増幅用アンプ16aと、LED3をコントロールするLEDコントローラ18及びその出力増幅用アンプ18aとよりなる。編集用I/F13としては、他のPC13bや、シーケンサ、マイコン等のコントローラを用いることができる。以下の実施形態では操作パネル13aを例示するが、勿論他の種類のデバイスを用いてもよい。
【0022】
ヘッド出力端子T1にはヘッド2が、LED出力端子T2にはLED3が、外部同期出力端子T3及びT4にはストレートケーブル5a,クロスケーブル5bがそれぞれ接続される。波形メモリ用ワークRAM15は高速RAMであり、フラッシュメモリ等により構成される基本波形保存用メモリ19aに保存された複数の基本波形を読み込み、駆動波形を生成する。また、パラメータメモリ19bはパラメータを保存する。基本波形保存用メモリ19a,パラメータメモリ19bには外部メモリのデータを外部メモリカードI/F19cを介して読み込み、また、書き出すことが可能である。
【0023】
図3は波形生成のための構成を示すブロック図であり、各信号や波形との関係を図6を参照しつつ説明する。編集用I/F13からのパラメータ入力は波形編集生成制御部14で編集され、波形メモリ用ワークRAM15から所望の駆動波形が送出される。波形編集生成制御部14は、パラメータ保持部23と、タイミング制御部24と一対のメモリ制御部26a,26bとよりなる。
【0024】
パラメータ保持部23はパラメータラッチ保持回路20とパラメータラッチ回路21とよりなり、操作パネル13aから上記3種のパラメータP1〜P3が入力される。入力されたパラメータは、編集用I/F13からパラメータ保持信号WDが送信されることでパラメータラッチ回路21に保持される。タイミング制御部24はパラメータP1で入力された繰返し周期t1に従った間隔でパラメータラッチ信号WFをパラメータラッチ回路21に送信し、このパラメータラッチ信号WFによりパラメータP1〜P3をタイミング制御部24又は電圧制御部17にラッチする。
【0025】
「波形生成部」として動作するメモリ制御部26は2つのチャンネルを構成する第一、第二メモリ制御部26a,26bを備えている。また、先の波形メモリ用ワークRAM15は2つのチャンネルを構成する第一、第二メモリ27a,27bを備える「波形記憶部」としてのメモリ27と、第一、第二メモリ27a,27bを切り替える切替部28を備えている。
【0026】
第一チャンネルが選択されている状態では、タイミング制御部24から第一メモリ制御部26aにトリガー信号TG1及び第一メモリ27aの加算オフセット値OFFSET1とがパラメータラッチ信号WFの周期で設定(ラッチ)される。図6に示すように、繰返し信号WAはパラメータラッチ信号WFから時間t4だけ遅れて連動し、生成される。
【0027】
第一、第二メモリ制御部26a,26bはそれぞれ加算機を備え、加算オフセット値OFFSET1、2により第一、第二メモリ27a,27bの駆動周期を設定し、トリガTG1,2で加算を介して駆動信号を発生する。D/Aコンバータ16はデジタル信号を電気駆動素子(圧電素子)2a用のアナログ信号に変換し、駆動電圧信号21xに基づき電圧制御部17で先の駆動電圧h1の出力電圧に出力を調整する。これらにより所望の波形、周期で駆動波形がD/Aコンバータ16及びアンプ16aを介してヘッドに出力される。第二チャンネルが選択されている状態では、第一チャンネル選択時と同様、第二メモリ制御部26bにトリガー信号TG2及び第二メモリ27bの加算オフセット値OFFSET2とがパラメータラッチ信号WFの周期で設定(ラッチ)される。
【0028】
第一チャンネルの選択時におけるパラメータ編集の例を図6により説明する。初期状態ではパラメータaが設定されており、駆動波形WBaが送信されている。ユーザーの編集用I/F13の操作によりパラメータbが入力されるとパラメータ保持信号WD1が送信される。その後、パラメータラッチ信号WF1の検出で、パラメータbが有効となり、上記信号TG1、OFFSET1が設定され駆動波形WBbが生成される。次のパラメータcの編集完了によるパラメータ保持信号WD2は、パラメータラッチ信号WF2より遅いのでさらに次のパラメータラッチ信号WF3で有効となり、駆動波形WBcが生成される。これらはパラメータP1,2について行われるが、繰返し周期t1自体を変更するパラメータP1についても同様のタイミングで行うことができる。
【0029】
パラメータラッチ信号WFは、装置の内部的な繰返し周期t1の信号になるので、パラメータラッチ信号WF自らの周期パラメータも含めてラッチがなされる。その後、パラメータラッチ信号WFでラッチされたパラメータを利用して、繰返し信号WA及びトリガTG1,2は同一タイミングで出力される。また、OFFSET1,2はパラメータラッチ信号WFでラッチされた駆動周波数P2により、繰返し信号WA及びトリガTG1,2の出力から利用され、駆動波形WBが生成される。
【0030】
図2,3,7に示すように、第一、第二メモリ27a,27bには、それぞれ基本波形保存用メモリ19aに保存される複数の基本波形から選択された基本波形を組み込むことができる。図7の当初の状態では、A1波形を第一メモリ27aに組み込んだ状態で第一チャンネルが選択されている。第二メモリ27bにB波形を組み込み、その組み込み又は/及びパラメータ変更という編集作業が完了すると、経路24xより編集完了信号WEが送信される。その後パラメータラッチ信号WF1の到来と共に切替部28により第二チャンネルが選択され、B波形が生成される。この間、第一メモリ27aに対するA2波形の組み込み等による編集作業が完了すると、WE2,WF2の検出でA2波形が生成される。
【0031】
このように、上記パラメータ保持部23,タイミング制御部24の制御より、パラメータの入力とその出力への反映が独立しているので、ある波形の使用中に急激に条件が変更されたり、出力が途切れたりすることもない。また、第一メモリ27a,第二メモリ27bと二系統のメモリを切り替えることにより、波形の変更が行われても、使用中の波形に他の波形が割り込むことなく、また、波形が途切れることもない。
【0032】
図1,2,5に示すように、LED出力端子T2に接続されるLED3の発光タイミングt6は、操作パネル13a、波形編集生成制御部14、パラメータメモリ19b、LEDコントローラ18及びアンプ18aによって制御される。繰返し周波数が上がれば単位時間当たりの光量が多くなり、繰返し周波数が下がれば単位時間当たりの光量が少なくなる。したがって、繰返し周波数に対する光量変化に伴い、発光時間t5又は発光ピーク値h2を変化させることが必要となる。
【0033】
液滴が観察装置4の視野内に位置する際に発光する必要があり、液滴の吐出は駆動波形WBの頂部P0から開始するため、繰返し信号WAの出力からLED点灯波形WC開始までの発光タイミングt6は液滴のスピードと観察装置4の視野内の液滴位置とを勘案して定められる。
【0034】
光量を上げるために発光時間を長くすると残像が多くなって液滴のエッジがぼやける。そこで、後続で映像を捕らえる場合は、発光時間を短くし、発光ピーク値h2を高くして光量を獲得することが望ましい。
【0035】
発光タイミングt6を既定時間に設定し、その条件での撮影時における液滴の吐出口からの距離を測定することで、吐出速度を求めることが可能となる。また、各繰返し周期t1毎に発光タイミングt6をずらすことにより、連続的な飛翔状態の観察が可能となる。繰返し周波数に応じて発光時間t5及び発光ピーク値h2が連動して変化するように自動制御することも可能である。これら各発光パラメータは上記液滴の吐出パラメータと共に操作パネル13aを通じて入力・記憶が可能である。
【0036】
図1,4に示すように、第一ユニットU1と第二ユニットU2及び第二ユニットU2と第三ユニットU3とは、それぞれストレートケーブル5aにより接続される。また、第一ユニットU1と第三ユニットU3とはクロスケーブル5bにより終端接続される。これにより、第一ユニットU1は入出力切替部30でマスター(出力)設定され、第二、第三ユニットU2,U3は入出力切替部30でスレーブ(入力)設定され、第一ユニットU1の吐出タイミングに合わせて第二、第三ユニットU2,U3から同時に液滴が吐出される。各ユニット毎にパラメータの条件設定が可能であり、複数のヘッド2から多種・多条件の液滴を同時に吐出でき、特にステージを動かして複数箇所に同時に液滴を供給する場合に有用である。ネットワークコントローラ11aは相互に又は他のデバイスとの間でデータを交換するためのイーサネット(登録商標)等のネットワークをコントロールするためのものである。
【0037】
使用に際しては、電源スイッチをONにし、操作パネル13aから吐出及び発光のパラメータを入力することで、液滴がヘッド2から吐出され、LED3が駆動波形WBに同期して発光する。パラメータは操作パネル13aからの入力のみならず、パラメータメモリ19bまたは外部メモリカードI/F19cに挿入した外部メモリ、外部PC13bからも読み込んで利用することができる。ヘッド2は単独使用することもでき、また、第一〜第三ユニットU1〜U3の同期により、複数のヘッド2を同期させて複数箇所に液滴を供給することも可能である。
【0038】
ところで、ヘッド2の吐出口周辺での液体乾燥や異物、気泡の混入により吐出不良が発生した場合に、通常吐出よりも大きな駆動電圧を加えることで、吐出状態が回復される場合がある。そこで、このような吐出不良を解消する駆動電圧及び駆動回数を設定し、予備吐出として別途パラメータメモリ19bに記憶する。予備吐出のパラメータを設定する場合は、不良吐出になった状態から徐々に駆動電圧を上げ、吐出可能になった電圧を記録する。再度、通常の安定吐出の電圧に戻し、吐出の再現性を確認する。再現性に問題がある場合は、再度駆動電圧の微調整を行い、再現性を確保する。そして、通常吐出の前に予備吐出を選択可能とし、または、通常吐出後に一定時間以上の間隔が開いた場合に予備吐出を自動実行させることで、安定した液滴の吐出が可能となる。
【0039】
最後に本発明の別実施形態の可能性について言及する。
上記実施形態では、駆動電圧h1の調整を電圧制御部17に対して行った。しかし、この電圧調整はD/Aコンバータ16後段のアンプ16aに対して行うことも可能である。また、発光ピーク値h2の調整をLEDコントローラ18の後段のアンプ18aに対する電圧制御又はLEDコントローラ18の出力段における電流制御により行ってもよい。
【0040】
上記実施形態では駆動波形WBとして三角波を用いた。この駆動波形は台形波や他の形のものを用いてもよく、パラメータ設定と液滴の吐出との相関を取りやすい形にすることが望ましい。
【0041】
上記実施形態では、電気駆動素子として圧電素子を用いた。しかし、電気駆動素子として、その他の種類の伸縮可能な素子の他、液体を沸騰させて吐出圧力を発生させる抵抗発熱素子を用いても構わない。伸縮可能な素子の場合は急激な条件変化による歪み破壊が防止される。抵抗発熱素子の場合は泡が大きくなってその表面に液体が接触せずに過度の昇温が発生することによる破壊が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、化学実験、バイオテクノロジー実験、医療診断、エレクトロニクス生産等に利用することができる。液体は多種類のものを用いることができる。例えば、DNA・蛋白質・菌類等の生体材料、蛍光微粒子、導電体微粒子、樹脂微粒子、セラミック微粒子、顔料染料等、微粒子を含む液体を用いることができる。また、蒸留水等、表面張力の高い液体や、高価な液体を少量用いるのにも適している。印刷により線画等を描く他、例えば、電極形成やマイクロレンズを作成することができる。さらに、液滴を吐出させることで、例えば生体材料チップ等所定の複数箇所に液滴を配置させる他、分注、散布による匂い発生、吐出量調整による配合調整、成膜等に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る液滴吐出システムの概略図である。
【図2】液滴吐出制御装置のブロック図である。
【図3】図2のさらに詳細なブロック図である。
【図4】複数の液滴吐出装置の接続例を示す図である。
【図5】繰返し波形、駆動波形及びLED点灯波形の関係を示すタイミングチャートである。
【図6】パラメータラッチの状況を示すタイミングチャートである。
【図7】波形メモリの切り替えを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1:液滴吐出システム、2:ヘッド、2a:電気駆動素子(圧電素子)、2b:カートリッジ、3:LED、4:観察装置、5a:ストレートケーブル、5b:クロスケーブル、10:液滴吐出制御装置、11:CPUボード、11a:ネットワークコントローラ、12:液晶ユニット、13:編集用I/F、13a:操作パネル、13b:外部PC、14:波形編集生成制御部、15:波形メモリ用ワークRAM、16:D/Aコンバータ、16a:アンプ、17:電圧制御部、18:LEDコントローラ、18a:アンプ、19a:基本波形保存用メモリ、19b:パラメータメモリ、19c:外部メモリカードI/F、20:パラメータラッチ保持回路、21:パラメータラッチ回路、21x:駆動電圧信号、23:パラメータ保持部、24:タイミング制御部、24x:メモリ選択信号、26:メモリ制御部(波形生成部)、26a:第一メモリ制御部、26b:第二メモリ制御部、27:メモリ(波形記憶部)、27a:第一メモリ、27b:第二メモリ、28:切替部、30:入出力切替部、T1:ヘッド出力端子、T2:LED出力端子、T3:外部同期出力端子、T4:外部同期入力端子、U1〜U3:第一〜第三ユニット、WA:繰返し波形(信号)、WB:駆動波形、WC:LED点灯波形、WD:パラメータ保持信号、WE:編集完了信号、WF:パラメータラッチ信号、h1:駆動電圧、h2:発光ピーク値、t1:繰返し周期、t2:駆動周期、t2a:膨張時間、t2b:収縮時間、t5:発光時間、t6:発光タイミング、P0:頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口から液滴を吐出させる駆動波形を電気駆動素子に供給するための液滴吐出制御装置であって、
ユーザーが駆動波形自体のパラメータを入力することにより前記駆動波形の編集を行う編集用インターフェイスと、
前記パラメータを保持するパラメータ保持部と、
前記駆動波形の基本単位となる基本波形を蓄積する波形記憶部と、
繰返し周期毎に前記基本波形を利用して前記駆動波形を生成する波形生成部と、
前記編集用インターフェイスから入力され前記パラメータ保持部に保持された変更パラメータを前記波形生成部に反映させるタイミングの制御を行うタイミング制御部とを備え、
繰返し周期毎に前記駆動波形が生成され、前記パラメータの変更が反映された前記駆動波形が、前記パラメータの変更後に発生するいずれかの繰返し周期に同期したタイミングで供給される液滴吐出制御装置。
【請求項2】
前記パラメータが、駆動電圧及び/又は駆動周期よりなる請求項1記載の液滴吐出制御装置。
【請求項3】
前記パラメータが、さらに駆動波形の繰返し周期を含む請求項1記載の液滴吐出制御装置。
【請求項4】
前記パラメータ保持部は、通常吐出としての前記パラメータと予備吐出としての前記パラメータを個別に保持可能である請求項1記載の液滴吐出制御装置。
【請求項5】
前記波形記憶部及び前記波形生成部を複数組備え、ある波形生成部による駆動波形の供給中に他の波形生成部及び/又は他の波形記憶部より生じる駆動波形を新たに編集し、前記波形生成部を前記タイミングで切換えて新たに編集された駆動波形を供給する請求項1記載の液滴吐出制御装置。
【請求項6】
他の複数の液滴吐出制御装置との接続が可能であり、ひとつの装置からの前記駆動波形出力に同期して他の装置から前記駆動波形を出力することが可能である請求項1記載の液滴吐出制御装置。
【請求項7】
液滴観察用のストロボ光源駆動部を備え、ストロボ光源駆動部の発光タイミング、発光ピーク値及び発光時間は記憶可能である請求項1記載の液滴吐出制御装置。
【請求項8】
前記ストロボ光源駆動部は発光ピーク値及び発光時間よりなる光量を前記繰返し周期に連動させて変更可能である請求項7記載の液滴吐出制御装置。
【請求項9】
吐出口から液滴を吐出させる駆動波形を電気駆動素子に供給する液滴吐出制御方法であって、
ユーザーが駆動波形自体のパラメータを入力することにより前記駆動波形の編集を行う編集用インターフェイスと、
前記パラメータを保持するパラメータ保持部と、
前記駆動波形の基本単位となる基本波形を蓄積する波形記憶部と、
繰返し周期毎に前記基本波形を利用して前記駆動波形を生成する波形生成部と、
前記編集用インターフェイスから入力され前記パラメータ保持部に保持された変更パラメータを前記波形生成部に反映させるタイミングの制御を行うタイミング制御部とを備え、
繰返し周期毎に前記駆動波形が生成され、前記パラメータの変更が反映された前記駆動波形を、前記パラメータの変更後に発生するいずれかの繰返し周期に同期したタイミングで供給する液滴吐出制御方法。
【請求項10】
前記波形記憶部及び前記波形生成部を複数組備え、ある波形生成部による駆動波形の供給中に他の波形生成部及び/又は他の波形記憶部より生じる駆動波形を新たに編集し、前記波形生成部を前記タイミングで切換えて新たに編集された駆動波形を供給する請求項9記載の液滴吐出制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−132772(P2008−132772A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277885(P2007−277885)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(597067404)クラスターテクノロジー株式会社 (17)
【Fターム(参考)】