説明

液滴吐出装置

【課題】複数のノズルの一部から液滴を吸引した場合でも、吸引されないノズルからの気泡の侵入を抑制する。
【解決手段】インクジェット記録ヘッド20Yの複数のノズルのうち吸引対象となる対象ノズルを露出させる開口部74と、複数のノズルのうち吸引対象とならない対象外ノズルを封止する封止部72と、を有するマスキング部材70を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置としては、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置としては、特許文献1に開示されるインクジェット記録装置が公知である。
【0003】
特許文献1のインクジェット記録装置では、ノズル開口の少なくとも一つに選択的に接続されて所定のチャンバ内を吸引する吸引手段を設け、且つチャンバの一部を構成する第1及び第2の基板の少なくとも何れか一方を、透光性を有する誘電体で形成している。これにより、チャンバ内の気泡を視認することができ、その気泡が存在するチャンバに選択的に吸引手段を接続して吸引することができる。したがって、チャンバ内を比較的強い吸引力で吸引することができ、且つ無駄なインクを吸引して廃棄する必要がなく、効率的に気泡を除去することができる。
【特許文献1】特開2001−334689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数のノズルの一部から液滴を吸引した場合でも、吸引されないノズルからの気泡の侵入を抑制できる液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る液滴吐出装置は、液滴を吐出するノズルがノズル面に複数形成された液滴吐出ヘッドと、前記複数のノズルのうち吸引対象となる対象ノズルを露出させる開口部と、前記複数のノズルのうち吸引対象とならない対象外ノズルを封止する封止部と、を有するマスキング部材と、前記開口部を覆って前記対象ノズルとの間に密閉空間を形成する吸引キャップと、前記吸引キャップに接続され、前記密閉空間を介して前記対象ノズル内の液滴を吸引する吸引手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る液滴吐出装置は、請求項1の構成において、前記ノズル面と前記マスキング部材との間に配置され、前記ノズルと通じる貫通孔が複数形成された中継部材を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る液滴吐出装置は、請求項1又は請求項2の構成において、前記マスキング部材を移動させ、前記対象ノズルの変更に伴って前記開口部の位置を変える移動機構を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る液滴吐出装置は、請求項1〜3のいずれか1項の構成において、前記マスキング部材は、無端状のベルト体で構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る液滴吐出装置は、請求項1〜4のいずれか1項の構成において、前記マスキング部材は、複数の前記開口部が形成された第1区間と、一つの前記開口部が形成された第2区間とを有し、前記吸引キャップは、複数の吸引キャップで構成され、前記第1区間で前記封止部が前記対象外ノズルを封止し、前記複数の吸引キャップが前記複数の開口部の各々を覆うと共に、前記第2区間で前記封止部が前記対象外ノズルを封止し、前記複数の吸引キャップのうちのいずれかが前記一つの開口部を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の構成によれば、本構成を有していない場合に比して、複数のノズルの一部から液滴を吸引した場合でも、吸引されないノズルからの気泡の侵入を抑制できる。
【0011】
本発明の請求項2の構成によれば、本構成を有していない場合に比して、液滴吐出ヘッドに形成された複数のノズルの一部を吸引する部分吸引を行った場合でも、ノズル面が保護できる。
【0012】
本発明の請求項3の構成によれば、本構成を有していない場合に比して、吸引対象となる対象ノズルの位置が変更された場合であっても、吸引されないノズルからの気泡の侵入を抑制できる。
【0013】
本発明の請求項4の構成によれば、本構成を有していない場合に比して、省スペース化が図れる。
【0014】
本発明の請求項5の構成によれば、本構成を有していない場合に比して、複数の吸引キャップによる吸引と、一つの吸引キャップによる吸引の使い分けが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0016】
本実施形態では、液滴を吐出する液滴吐出装置の一例として、インク滴を吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置について説明する。
【0017】
なお、液滴吐出装置は、インクを吐出する装置に限定されるものではない。液滴吐出装置としては、例えば、フィルムやガラス上にインク等を吐出してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置、溶解状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置、金属を含む液体を吐出して配線パターンを形成する装置及び液滴を吐出して膜を形成する各種の成膜装置であってもよく、液滴を吐出するものであればよい。
【0018】
(本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成)
まず、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を説明する。図1及び図2には、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成が概略図にて示されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、インクジェット記録装置10は、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を記録する画像記録部14と、記録媒体収容部12から画像記録部14へ記録媒体Pを搬送する搬送手段16と、画像記録部14によって画像が記録された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18と、を備えている。
【0020】
画像記録部14は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの一例として、インク滴を吐出して記録媒体Pに画像を記録するインクジェット記録ヘッド20Y、20M、20C、20K(以下、20Y〜20Kと示す)を備えている。
【0021】
このインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kは、記録媒体Pの搬送方向の上流側から、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色の順で配置されており、その各色に対応したインク滴を、サーマル方式や圧電方式等の手段によって、複数のノズルが形成されたノズル面20Aから吐出し、画像を記録する構成となっている。
【0022】
また、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kは、ぞれぞれ、画像記録が可能な幅が、記録媒体Pの被記録領域の幅以上とされている。なお、ここでいう幅とは、記録媒体Pの搬送方向と交差する交差方向の長さである。さらに、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kは、図3(A)に示すように、インク滴を吐出するノズル17が2次元状に配置された複数の液滴吐出ユニットとしてのヘッドユニット19を交差方向に沿って繋ぎ合わせて形成されており、交差方向に長く配設されている。
【0023】
なお、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kとしては、図3(B)に示すように、ノズル17が2列に配列された複数のヘッドユニット19を繋ぎ合わせて構成されたものであってもよい。また、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kとしては、図3(C)に示すように、ノズル17が1列に配列された複数のヘッドユニット19を繋ぎ合わせて構成されたものであってもよい。
【0024】
さらに、ヘッドユニット19の数は、2つに限られず、3つ以上で構成されていても良い。また、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kとしては、複数のヘッドユニット19で構成されたものでなくてもよく、一体で形成されたインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kであってもよい。
【0025】
また、図1に示す例では、画像記録部14は4つのインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kで構成されていたが、図9に示すように、画像記録部14はインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kの他に、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド20Lを備えた構成であっても良い。
【0026】
液滴吐出ヘッド20Lは、例えば、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kが吐出するインクと反応する反応性を有する液体、例えば、インクの滲みを防止してインク定着を促進させる処理液を吐出する構成となっている。
【0027】
インクジェット記録装置10には、インクを貯留するインクタンク21Y、21M、21C、21Kが設けられている。このインクタンク21Y、21M、21C、21Kから、各インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kへインクが供給される。なお、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kへ供給されるインクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等、各種インクの使用が可能である。
【0028】
更に、インクジェット記録装置10は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのメンテナンスをするメンテナンスユニット22を備えている。このメンテナンスユニット22は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル面20Aに対向する対向位置(図2参照)と、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル面20Aから退避した退避位置(図1参照)との間を移動可能に構成されている。
【0029】
メンテナンスユニット22は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル17のインクを吸引する等、各種のメンテナンスを行う。なお、メンテナンスユニット22に構成については後述する。
【0030】
搬送手段16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出しロール24と、送出しロール24によって送り出された記録媒体Pを挟持搬送する搬送ロール対25と、搬送ロール対25によって搬送された記録媒体Pの被記録面をインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kに対面させる無端状の搬送ベルト30と、を備えている。
【0031】
搬送ベルト30は、記録媒体Pの搬送方向下流側に配置された駆動ロール26と、記録媒体Pの搬送方向上流側に配置された従動ロール28とに巻き掛けられ、所定方向(図1においてA方向)に循環移動するように構成されている。
【0032】
また、従動ロール28の上部には、記録媒体Pを搬送ベルト30へ押え付ける押さえロール32が設けられている。この押さえロール32は搬送ベルト30に従動すると共に帯電ロールを兼ねており、この押さえロール32によって搬送ベルト30が帯電されることにより、記録媒体Pが搬送ベルト30に静電吸着されて搬送される構成である。
【0033】
この搬送ベルト30が記録媒体Pを搬送することにより、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kと記録媒体Pとが相対移動し、相対移動する記録媒体Pにインク滴が吐出されて画像が形成される。
【0034】
なお、記録媒体Pに対してインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kが移動する構成であっても良く、記録媒体Pとインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kとが相対移動する構成であればよい。
【0035】
また、搬送ベルト30は、記録媒体Pを静電吸着して保持する構成に限定されるものではなく、記録媒体Pとの摩擦により、あるいは記録媒体Pを吸引や粘着などの非静電的手段によって保持する構成にしてもよい。
【0036】
また、搬送ベルト30の下流側には、その搬送ベルト30から記録媒体Pを剥離する剥離爪が接近・離隔可能に配設されている。インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kにより画像が記録された記録媒体Pは、搬送ベルト30の曲率及び剥離爪により記録媒体Pが搬送ベルト30から剥離される構成となっている。なお、図1及び図2においては、剥離爪の図示を省略している。
【0037】
剥離爪の下流側には、記録媒体Pの被記録面側がスターホイールとされた複数の搬送ロール対38が設けられている。この搬送ロール対38により、画像記録部14で画像が記録された記録媒体Pが、記録媒体排出部18へ搬送される。
【0038】
また、搬送ベルト30の下方には、記録媒体Pを反転させる反転部36が設けられており、搬送ロール対38が記録媒体Pを下流に一旦搬送した後、搬送ロール対38が逆転して記録媒体Pが反転部36に送られる構成となっている。
【0039】
この反転部36には、記録媒体Pの被記録面側がスターホイールとされた複数の搬送ロール対39が設けられ、反転部36に送り込まれた記録媒体Pが再度、搬送ベルト30へ送られるようになっている。
【0040】
また、図示しないが、インクジェット記録装置10は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kの動作を制御する制御手段と、インクジェット記録装置10の全体の動作を制御するシステム制御手段とを備えている。
【0041】
制御手段は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kに接続され、外部から入力された画像データに応じてインク滴の吐出タイミングと、使用するインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル17を決定し、そのノズル17に駆動信号を印加する。
【0042】
次に、インクジェット記録装置10の画像記録動作について説明する。
【0043】
まず、送出しロール24により、記録媒体収容部12から記録媒体Pが送り出され、搬送ベルト30よりも上流側の搬送ロール対25により、搬送ベルト30へ送られる。
【0044】
搬送ベルト30へ送られた記録媒体Pは、その搬送ベルト30の搬送面に吸着・保持され、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kの記録位置へ搬送され、記録媒体Pの被記録面に画像が記録される。そして、その画像記録終了後、記録媒体Pは搬送ベルト30から剥離爪によって剥離される。
【0045】
記録媒体Pの片面へのみ画像を記録する場合は、搬送ベルト30よりも下流側の搬送ロール対38によって記録媒体排出部18へ排出される。
【0046】
記録媒体Pの両面へ画像を記録する場合には、片面に画像が記録された後、記録媒体Pは、反転部36で反転されて、再び搬送ベルト30に送られる。記録媒体Pの反対面側に上記と同様に画像が記録され、記録媒体Pの両面へ画像が記録され、記録媒体排出部18へ排出される。
【0047】
(本実施形態に係るメンテナンスユニット22の構成)
次に、本実施形態に係るメンテナンスユニット22の構成について説明する。
【0048】
本実施形態に係るメンテナンスユニット22は、図4及び図5に示すように、インクジェット記録ヘッド20Yの複数のノズル17のうち吸引対象となる対象ノズルを露出させる開口部74と、複数のノズル17のうち吸引対象とならない対象外ノズルを封止する封止部72と、を有するマスキング部材70を備えている。
【0049】
マスキング部材70の下方には、マスキング部材70の開口部74を覆って、対象ノズルとの間に密閉空間を形成する複数の吸引キャップ42が設けられている。
【0050】
マスキング部材70は、例えば、SUSで形成されたSUSシートが用いられる。また、マスキング部材70の厚さは、例えば、0.3mmとされる。
【0051】
マスキング部材70は、移動可能に設けられており、後述する移動機構によりマスキング部材70が移動することにより対象ノズルの変更に伴って開口部74の位置が変更される。
【0052】
開口部74は、吸引キャップ42と同数形成されており、本実施形態においては、吸引キャップ42及び開口部74はそれぞれ4つ設けられている。また、開口部74の面積は、吸引キャップ42の吸引口56よりも小さくされており、また、吸引口56の相似形状に形成されている。
【0053】
また、封止部72は、開口部74が位置するヘッドユニット19のすべてのノズル17を封止する構成となっている。図3(A)に示す2点鎖線部分Eに開口部74が位置する場合、すなわち、ヘッドユニット19に跨って開口部74が配置される場合には、その2つのヘッドユニット19のすべてのノズル17を封止する。
【0054】
また、ノズル面20Aとマスキング部材70との間には、ノズル17と通じる貫通孔52が複数形成された中継部材40が配置されている。この中継部材40は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kに上面が接触可能とされると共に、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kから離間可能にされている。
【0055】
貫通孔52は、ノズル面20Aのノズル配置に対応して複数形成され、また、ノズル径より大きい幅を有しており、機械加工、エッチング、レーザー加工等により形成される。貫通孔52の直径は、例えば、250μmの垂直孔であり、ノズル17のノズル径は、例えば、20〜30μmで形成されている。
【0056】
また、貫通孔52は、円孔であっても、また、断面が楕円形状であっても、矩形状であってもよく、任意の断面形状に形成される。
【0057】
また、中継部材40がノズル面20Aに接触した際に、後述する位置決め部材68によりノズル面20Aのノズル17と中継部材40の貫通孔52とが位置あわせされることで、各ノズル17の下方に各貫通孔52を位置するようになっている。各ノズル17の下方に各貫通孔52が位置することで、各ノズル17と各貫通孔52が通じて、各ノズル17から各貫通孔52へインクの流通が可能となる。
【0058】
また、中継部材40は、ベース部材40A、ノズル面20A側に配置された弾性層40B及びマスキング部材70側に配置された弾性層40Cの3層構造で形成されている。
【0059】
ベース部材40Aは、弾性層40Bよりも硬い材料で形成され、例えば、SUSで形成されたSUSシートが用いられる。また、ベース部材40Aの厚さは、例えば、0.3mmとされる。
【0060】
弾性層40B及び弾性層40Cは、ベース部材40Aよりも弾性を有する材料で形成されており、例えば、ゴムやエラストマーで形成されている。また、弾性層40Bの厚さは、例えば、ベース部材40Aの0.1倍〜1.0倍とされる。
【0061】
なお、中継部材40としては、1層又は2層で形成された構造であってもよく、また、4層以上の多層構造で形成された構成であっても良い。なお、多層の弾性層は、例えば、塗布やスプレーなどのコーディングで形成される。
【0062】
また、図5に示す例では、一つのノズル17に対して、一つの貫通孔52が配置される構成であるが、複数のノズル17に対して、一つの貫通孔52が配置される構成であってもよい。
【0063】
吸引キャップ42には、図5に示すように、対象ノズルと吸引キャップ42との間に形成された密閉空間を介して、対象ノズル内のインク滴を吸引する吸引手段の一例としての吸引装置48が設けられている。
【0064】
吸引キャップ42の上面には、凹部が形成されており、その凹部の外周には縁部54が形成されている。この縁部54に囲まれた内周側の開口が、液滴を吸引するための吸引口56となる。
【0065】
ノズル面20Aに密着した中継部材40にマスキング部材70を密着させ、さらに、マスキング部材70の開口部74の周囲の封止部72に縁部54を密着させることで、吸引口56と貫通孔52とが通じて、貫通孔52から吸引口56インクの流通が可能となる。凹部の底面には、吸引孔58が形成されており、この吸引孔58の下端部に吸引管60を介して、吸引装置48が接続される。
【0066】
ここで、マスキング部材70を移動させる移動機構の一例を説明する。
【0067】
マスキング部材70は、図6に示すように、無端状のベルト体で構成されている。また、マスキング部材70は、インクジェット記録ヘッド20Yの長手方向一端部側の下方で上下に配置された巻掛けロール80、81及びインクジェット記録ヘッド20Yの長手方向他端部側の下方で上下に配置された巻掛けロール82、83に巻き掛けられている。
【0068】
巻掛けロール80、81、82、83のいずれかには、その巻掛けロール80、81、82、83を回転駆動する駆動部84が設けられている。なお、本実施形態では、巻掛けロール82に駆動部84が設けられている。また、マスキング部材70は、一対の巻掛けロールで巻き掛けられる構成であっても良い(図8参照)。
【0069】
駆動部84が巻掛けロール82を正転、逆転させることにより、マスキング部材70が移動し、開口部74の位置が変わる。
【0070】
駆動部84は、ステッピングモータ等の駆動モータで構成されており、巻掛けロール82の回転角度を制御することにより、マスキング部材70の移動量が調整される。これにより、吸引対象となる対象ノズルの変更に伴って、開口部74の位置が変わる。
【0071】
例えば、インクジェット記録ヘッド20Yの一端側から数えて奇数番目のヘッドユニット19に対向する位置に、開口部74及び吸引キャップ42の位置を移動させて吸引した後(図6(A)参照)、インクジェット記録ヘッド20Yの一端側から数えて偶数番目のヘッドユニット19に対向する位置に、開口部74及び吸引キャップ42の位置を移動させて吸引がなされる(図6(B)参照)。
【0072】
また、マスキング部材70は、図7に示すように、複数の開口部74が形成された第1区間A1と、一つの開口部74が形成された第2区間A2とを有する構成としても良い。
【0073】
第1区間A1で、封止部72が吸引対象とならない対象外ノズルを封止し、吸引キャップ42が開口部74の各々を覆い、上述と同様に吸引される。
【0074】
また、第2区間A2で、封止部72が対象外ノズルを封止し、吸引キャップ42の内のいずれかが開口部74を覆い、上述と同様に吸引される。
【0075】
ここで、インクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部を接触、離間させるための構成の一例を説明する。
【0076】
本実施形態に係るメンテナンスユニット22は、図8に示すように、メンテナンスユニット本体23と、メンテナンスユニット本体23上に設けられ吸引キャップ42を支持する支持体43と、を備えている。
【0077】
メンテナンスユニット本体23上には、一対の巻掛けロール85に巻き掛けられた無端状のマスキング部材70が設けられている。
【0078】
マスキング部材70の一部が、吸引キャップ42上を通るようになっており、吸引キャップ42の上方へ開口部74が配置されている。
【0079】
巻掛けロール85は、支持体86に支持されており、支持体86は、メンテナンスユニット本体23の両端部上に立設された支柱87にスライド移動可能に取り付けられており、支柱87に沿って上下方向へ移動可能とされている。これにより、マスキング部材70は、下面が吸引キャップ42に接触する接触位置と、吸引キャップ42から離間する離間位置との間を移動可能とされている。支柱87には、支持体86を上方へ付勢するばね部材88が設けられている。
【0080】
中継部材40は、マスキング部材70の上方に配置されており、メンテナンスユニット本体23の両端部側に設けられた支持部材44に支持されている。支持部材44は、メンテナンスユニット本体23の両端部上に立設された支柱45にスライド移動可能に取り付けられており、支柱45に沿って上下方向へ移動可能とされている。
【0081】
これにより、中継部材40は、下面がマスキング部材70に接触する接触位置と、マスキング部材70から離間する離間位置との間を移動可能とされている。支柱45には、支持部材44を上方へ付勢するばね部材46が設けられている。
【0082】
中継部材40は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lのそれぞれに対応して複数配置されており、この各中継部材40に対応して吸引キャップ42が複数配置されている。
【0083】
また、中継部材40は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lのそれぞれに一方の面(上面)が接触可能とされると共に、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lのそれぞれから離間可能にされている。
【0084】
次に、インクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部を接触、離間させる接離動作を説明する。
【0085】
まず、図9に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lが記録媒体Pに画像を記録する画像記録位置から、図10に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lを所定高さ上昇させる。
【0086】
次に、図11に示すように、メンテナンスユニット22が対向位置へ移動し、図12に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lをメンテナンスユニット22へ下降させて、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lと中継部材40が接触する。
【0087】
なお、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lと中継部材40が接触する際に、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lが固定された固定部材66の両端部に設けられた位置決め部材68が、中継部材40を支持する支持部材44に接触して、中継部材40に対するインクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lの位置が所定の位置に位置決めされるようになっている。これにより、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lと中継部材40が接触する際に、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lのノズル面20Aのノズル17と、中継部材40の貫通孔52とが位置あわせされる。
【0088】
次に、図13に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lをメンテナンスユニット22へ、さらに下降させると、中継部材40がマスキング部材70と接触する。
【0089】
次に、図14に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lをメンテナンスユニット22へ、さらに下降させると、マスキング部材70が吸引キャップ42と接触する。この状態において、吸引装置48によるインク吸引が行われる。
【0090】
また、図15に示すように、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lを上昇させることにより、吸引キャップ42、マスキング部材70及び中継部材40はそれぞれ離間し、接触状態が解除される。
【0091】
また、図16に示すように、中継部材40に接触したインクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lを上昇させることにより、インクジェット記録ヘッド20Y〜20K及び液滴吐出ヘッド20Lと中継部材40は離間する。
【0092】
なお、メンテナンスユニット22には、図17に示すように、上面と下面の両面でノズル面20Aと中継部材40の上面を払拭して清掃する清掃部材89が設けられている。
【0093】
また、図18に示すように、中継部材40を備えない構成であっても良い。この構成においては、直接、マスキング部材70がインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面に接触することになるので、ノズル面20Aに接触する面側に弾性層70Aが形成されている。弾性層70Aは、例えば、ゴムやエラストマーで形成される。本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るインクジェット記録装置において、メンテナンスユニットがインクジェット記録ヘッドのノズル面に対向する対向位置にある状態を示す概略図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るインクジェット記録装置のノズル配列の例を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るメンテナンスユニットの主要部を示す斜視図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るメンテナンスユニットの主要部を示す断面図である。
【図6】図6は、無端状のベルト体で構成したマスキング部材を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態に係るマスキング部材が、複数の開口部が形成された第1区間と、一つの開口部が形成された第2区間を有する構成を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部を接触、離間させるための構成を示す図である。
【図9】図9は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図11】図11は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図12】図12は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図13】図13は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図14】図14は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図15】図15は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図16】図16は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図17】図17は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドのノズル面、中継部材、マスキング部材及び吸引キャップの各部の接離動作を示す図である。
【図18】図18は、本実施形態に係る中継部材を備えない構成を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
10 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
20Y〜20K インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
40 中継部材
42 吸引キャップ
48 吸引装置(吸引手段)
70 マスキング部材
72 封止部
74 開口部
80、81 巻掛けロール(移動機構)
82、83 巻掛けロール(移動機構)
84 駆動部(移動機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルがノズル面に複数形成された液滴吐出ヘッドと、
前記複数のノズルのうち吸引対象となる対象ノズルを露出させる開口部と、前記複数のノズルのうち吸引対象とならない対象外ノズルを封止する封止部と、を有するマスキング部材と、
前記開口部を覆って前記対象ノズルとの間に密閉空間を形成する吸引キャップと、
前記吸引キャップに接続され、前記密閉空間を介して前記対象ノズル内の液滴を吸引する吸引手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記ノズル面と前記マスキング部材との間に配置され、前記ノズルと通じる貫通孔が複数形成された中継部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記マスキング部材を移動させ、前記対象ノズルの変更に伴って前記開口部の位置を変える移動機構を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記マスキング部材は、無端状のベルト体で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記マスキング部材は、複数の前記開口部が形成された第1区間と、一つの前記開口部が形成された第2区間とを有し、
前記吸引キャップは、複数の吸引キャップで構成され、
前記第1区間で前記封止部が前記対象外ノズルを封止し、前記複数の吸引キャップが前記複数の開口部の各々を覆うと共に、前記第2区間で前記封止部が前記対象外ノズルを封止し、前記複数の吸引キャップのうちのいずれかが前記一つの開口部を覆うことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−260133(P2008−260133A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102403(P2007−102403)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】