説明

液滴吐出装置

【課題】ジャム処理や保守点検時の作業性を低下させることなく装置を小型化でき、また、ケースからの液体の流出を抑制できる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、インク滴をシートに吐出して画像記録を行う記録ヘッドからインク及び異物を吸引除去するパージ機構と、パージ機構により吸引除去されたインクがチューブを通って流れ込むケース70とを備えている。ケース70は、一面に開口73を有する箱形状に形成されており、開口73が上側となる倒伏姿勢及び開口73が水平面に対して起立する起立姿勢に回動可能に装置筐体に設けられている。ケース70内には、インクを吸収するインク吸収部材29が充填されている。起立姿勢において重力の影響によりインク吸収部材29から漏れ出したインクは、ケース70に設けられた第1インク受け部120に貯留される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パージやフラッシングにより生じた廃液をケース内の液体吸収部材に吸収させて保持する液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被記録媒体を搬送し、搬送する被記録媒体に記録ヘッドから液滴を吐出する液滴吐出装置が提供されている。液滴吐出装置の一例として、インク滴を吐出して画像記録を行うインクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置には、記録ヘッドのノズルからインクを吸引し、インクと共にノズル内の異物等を除去するパージ機構と、パージ機構により吸引した廃インクが流し込まれるケースと、を備えたものがある。ケース内には、装置が動かされたときなどにインクがケースから出るのを防ぐため、インクを吸収するスポンジやフェルトなどのインク吸収部材が配置される。
【0003】
この種のインクジェット記録装置では、ケースは、ジャム処理や保守点検において邪魔にならないように、装置筐体の側壁や底に寄せて配置され、固定されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−35662号公報
【特許文献2】特開2010−155411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置を小型化すると、装置筐体の側壁や底の近傍にケースを配置する為の十分な空間が確保できなくなる場合がある。この場合、装置筐体内の上部などには空いた空間が形成されている為、ケースを装置筐体内の上部に配置することが考えられる。しかし、装置筐体内の上部にケースを配置すると、ジャム処理や保守点検においてケースが邪魔になる。
【0006】
そこで、空いた空間にケースを配置してもジャム処理や保守点検を容易に行えるように、ケースを回動可能に設けることが考えられる。ケースを回動させることにより、ジャム処理や保守点検を行う為の空間が確保される。しかしながら、ケースを回動可能に設けると、次のような問題が生じることが考えられる。
【0007】
インク吸収部材に吸収されたインクの量が多い場合にケースが回動されると、重力の影響によりインクがインク吸収部材の下端部に集中し、インク吸収部材からインクが漏れ出すおそれがある。一方、ケースを合成樹脂により一部材として成型しようとすると、一面が開口する箱形状にケースを成型する必要がある。そうすると、ケースが回動されてインク吸収部材からインクが漏れ出した場合に、ケースの開口からインクが流出してしまう。流出したインクは、記録ヘッドやプラテンなどの部材に付着して被記録媒体を汚したり、電子部品等に付着して故障の原因となったりする。
【0008】
上述の問題は、記録ヘッドから空吐出されたインクを受けるケースを回動可能に設けた場合にも生じることが考えられる。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ジャム処理や保守点検の作業性を低下させることなく装置を小型化でき、また、ケースからの液体の流出を抑制できる機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の液滴吐出装置は、装置の外形を呈している装置筐体と、上記装置筐体内に配置され、液滴を被記録媒体へ吐出する記録ヘッドと、上記記録ヘッドから液体を排出させる排出手段と、一面が開口する箱形状の外形を呈しており、上記排出手段によって上記記録ヘッドから排出された液体が流入されるケースと、上記ケースに充填された液体吸収部材と、を備えている。上記ケースは、上記一面が上面となる第1姿勢と、上記一面が水平方向に対して起立する第2姿勢とに回動可能に上記装置筐体に支持されている。上記第2姿勢において上記ケースの開口周縁における下側となる箇所に、液体を貯留可能な第1液体受け部が設けられている。
【0011】
ケースが第1姿勢から第2姿勢に回動されることにより、第1姿勢においてケースが占有していた空間が開放され、ジャム処理や保守点検のための空間が確保される。ケースが第1姿勢にあるときは、開口が上側となっており、ケースに流れ込んだ液体は液体吸収部材及びケースにより貯留される。ケースが第1姿勢から第2姿勢に回動され、重力の影響により液体吸収部材の下端部から液体が漏れ出した場合、漏れ出した液体は、ケースの開口周縁における下側となる箇所に設けられた第1液体受け部に貯留される。
【0012】
(2) 上記第1液体受け部は、上記第2姿勢において貯留された液体を、上記第1姿勢において上記ケース内へ流出するものであってもよい。ジャム処理や保守点検が終了してケースが第2姿勢から第1姿勢に戻されると、第1液体受け部に貯留されていた液体は、ケース内に戻されて液体吸収部材に吸収される。
【0013】
(3) 上記第1液体受け部は、上記開口周縁から突出されており、上記第2姿勢における上側が開口する箱形状であってもよい。
【0014】
(4) 上記ケースは、上記第2姿勢において上記第1液体受け部の液体を下方へ流す第1流路を有しており、上記ケースより下側に、上記第1流路を流れた液体を受ける受け部材が設けられていてもよい。第1液体受け部に貯留可能な量を越えた量の液体が液体吸収部材から漏れ出したとしても、漏れ出した液体は、第1液体受け部及び受け部材に保持される。
【0015】
(5) 上記装置筐体と上記ケースとの一方は回動軸を有し、他方は当該回動軸を受ける軸受けを有しており、上記ケースは、内部空間において上記回動軸に沿って延びる壁を有しており、上記壁における上記ケースの開口側の端部に、液体を貯留可能な第2液体受け部が設けられていてもよい。
【0016】
第2姿勢にあるケースの上下方向の長さが長いほど、重力の影響によって液体吸収部材から漏れ出す液体の量は多くなる。ケースに設けられた壁により、液体吸収部材から漏れ出す液体の量が抑えられる。また、第1液体受け部に加えて第2液体受け部が設けられたことにより、液体吸収部材から漏れ出す液体を確実に貯留することができる。
【0017】
(6) 上記第2液体受け部は、上記第2姿勢において内部空間に貯留された液体を、上記第1姿勢において上記ケース内へ流出するものであってもよい。ジャム処理や保守点検が終了してケースが第2姿勢から第1姿勢に戻されると、第2液体受け部に貯留されていた液体は、ケース内に戻されて液体吸収部材に吸収される。
【0018】
(7) 上記第2液体受け部は、上記壁の端から突出されており、上記第2姿勢における上側が開口する箱形状であってもよい。
【0019】
(8) 上記ケースは、上記第2姿勢において上記第2液体受け部から溢れた液体を下方へ流す第2流路を有しており、上記ケースの下側に、上記第2流路を流れた液体を受ける受け部材が設けられていてもよい。第2液体受け部に貯留可能な量を越えた量の液体が液体吸収部材から漏れ出したとしても、漏れ出した液体は、第2液体受け部及び受け部材に貯留される。
【0020】
(9) 上記記録ヘッドは、液体を吐出するノズルが開口する下面を有しており、上記排出手段は、上記ノズルの開口を覆って上記記録ヘッドの下面に密接可能なキャップと、上記キャップ内に吸引圧を付与するポンプと、を有していてもよい。
【0021】
ポンプにより液体をケースに流入させるので、上下方向におけるケースの配置位置を自由に選択することができる。
【0022】
(10) 上記ケースは、上記記録ヘッドの上側に配置されたものであってもよい。ケースを回動可能に設けない従来構成では、記録ヘッドの上側にケースを配置すると記録ヘッドの保守点検の際にケースが邪魔になるが、ケースを回動可能に設けたことにより、記録ヘッドの上側の空いた空間にケースを配置しても、記録ヘッドの保守点検の際にケースが邪魔になることがない。
【0023】
(11) 上記装置筐体は、上側に開口を有する本体筐体を含み、上記ケースは、上記本体筐体の開口に配置されたものであってもよい。ケースを回動させて本体筐体の開口を開放し、当該開口においてジャム処理や保守点検が行われる。
【0024】
(12) 上記装置筐体は、上記本体筐体に回動可能に設けられて上記本体筐体の開口を開閉する蓋を更に備えており、上記ケースは、上記蓋と共に回動可能に設けられたものであってもよい。蓋を回動させることによりケースも回動され、蓋とケースとを個別に回動させる必要がないので、ジャム処理や保守点検が容易である。
【0025】
(13) 上記蓋としてスキャナ部が挙げられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ケースを回動可能に設けたことにより、ジャム処理や保守点検の作業性を低下させることなく装置を小型化でき、また、ケースに第1液体受け部を設けたことにより、回動されたケースからの液体の流出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】インクジェット記録装置10の斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置10の模式的な縦断面図である。
【図3】(A)は記録ヘッド51の下面図であり、(B)はパージ機構60の模式的な側面図である。
【図4】(A)はプリンタ部11の一部の平面図であり、(B)はプリンタ部11の一部の斜視図である。
【図5】ケース70及びインク吸収部材29を示す図面であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は斜視図、(D)は右側面図である。
【図6】(A)は起立姿勢のケース70の斜視図であり、(B)は(A)のB−B段面図であり、(C)は(A)のC−C断面図である。
【図7】変形例1のケース70、廃インクトレイ154,164、及びインク吸収部材155,165の斜視図である。
【図8】変形例2のインクジェット記録装置10の模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明がされる。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲において実施形態が適宜変更されてもよい。以下の説明においては、インクジェット記録装置10を使用可能に設置した状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義されている。また、操作部13がインクジェット記録装置10の前面(正面)側に設けられているものとして前後方向8が定義されている。また、インクジェット記録装置10を前側から見て左右方向9が定義されている。
【0029】
[インクジェット記録装置10の概要]
図1に示されるインクジェット記録装置10は、シート6(図2)に画像を記録するプリンタ部11と、原稿(不図示)に記録された画像を取り込むスキャナ部12(スキャナ部に相当する)とを備えており、プリント、スキャン、コピー等を実行可能である。
【0030】
[スキャナ部12の概要]
スキャナ部12は、図2の実線に示される閉姿勢及び破線に示される開姿勢に回動可能にプリンタ部11に支持されている。閉姿勢にあるスキャナ部12は、プリンタ部11のプリンタ筐体11A(本体筐体に相当する)の上部の開口15(開口に相当する)を閉塞している。スキャナ部12が開姿勢に回動されると、プリンタ筐体11Aの開口15が開放される。スキャナ部12は、ジャム処理時や保守点検時に回動される。プリンタ筐体11Aとスキャナ部12のスキャナ筐体12Aとが装置筐体に相当する。なお、スキャナ部12の代わりに単なる蓋が用いられてもよいので、スキャナ部12の詳細な説明は省略される。
【0031】
[プリンタ部11の概要]
プリンタ部11は、パーソナルコンピュータなどの外部機器や操作部13により印刷指示を受けてシート6への画像記録を行う。シート6は、記録用紙や、光沢紙や、葉書等であり、給紙カセット40に保持されている。
【0032】
シート6への画像記録は、給紙カセット40に載置されたシート6を給送部20により搬送路30へ送り出し、搬送路30においてローラ対34,37によりシート6を搬送し、搬送するシート6に記録部50からインク滴を吐出することにより行われる。給送部20、ローラ対34,37及び記録部50は、不図示の駆動モータにより駆動される。この駆動モータの駆動制御は、制御基板18に実装された不図示のマイクロコンピュータにより行われる。以下、プリンタ部11の各構成について説明がされる。
【0033】
[プリンタ筐体11A]
図2に示されるように、プリンタ筐体11Aは、ジャム処理及び保守点検用の開口15を上端部に有しており、給紙カセット40の挿抜用の挿抜口16を前後方向8における前端部に有している。また、図1に示されるように、プリンタ筐体11Aは、開閉蓋17を前面側に有している。この開閉蓋17の奥側に、不図示のカートリッジ装着部が配置されている。このカートリッジ装着部には、後述の記録部50へインクを供給するインクカートリッジが装着される。また、プリンタ筐体11Aは、後述のケース70の回動軸75を回動可能に支持する軸受け14(軸受けに相当する)を開口15の下側に備えている。
【0034】
[給紙カセット40]
図1に示されるように、給紙カセット40は、プリンタ筐体11Aの下部に収容されている。給紙カセット40は、プリンタ筐体11Aの挿抜口16を通じてプリンタ筐体11Aに脱着される。給紙カセット40は、図2に示されるように、画像記録前のシート6を保持するメイントレイ41と、画像記録後のシート6を保持する排紙トレイ48と、を備えている。
【0035】
メイントレイ41は、底板42と、底板42の左右方向9における両端部から上向きへ突出された左右一対の側板43と、底板42の前後方向8における前端部から上向きへ突出された前板45と、前後方向8における底板42の後端部に設けられた後板46と、を備えている。
【0036】
底板42は、上面に載置されたシート6を支持している。一対の側板43及び前板45は、上端面に載置された排紙トレイ48を支持している。後板46は、シート6を搬送路30へ案内する傾斜面47を有している。傾斜面47は、底板42の前後方向8における後端から後方斜め上へ向かって延びている。後述されるように、底板42から給送部20によって送り出されるシート6は、傾斜面47により搬送路30へ案内される。
【0037】
[フレーム90]
プリンタ筐体11A内には、図4に示されるフレーム90が設けられている。フレーム90は、後述される給送部20や、プラテン33や、記録部50や、パージ機構60を保持するものであり、給紙カセット40の上側に配置されている。
【0038】
フレーム90は、メインフレーム91と、一対のガイドレール92,93と、を備えており、矩形枠状の外形を呈している。メインフレーム91は、鋼板の左右方向9における両端部を折り曲げることにより形成されており、底板94と、左右方向9において互いに対向する左側板95及び右側板96と、を備えている。一対のガイドレール92,93は、左側板95の上端と右側板96の上端とにそれぞれ連結されており、前後方向8において互いに対向している。
【0039】
フレーム90は、一対のガイドレール92,93において、後述の記録部50を左右方向8へ往復動可能に支持している。ガイドレール92,93は、メインフレーム91の右側板96を越えて右側板96の右方まで延ばされている。ガイドレール92,93が右側板96を越えて延ばされているのは、記録部50をパージ機構60の上側まで移動可能とするためである。詳しくは後述される。
【0040】
[給送部20]
図2に示されるように、給送部20は、フレーム90の底板94(図4(B))に回転可能に支持された支軸21と、支軸21に一端部が回動可能に支持されたアーム22と、アーム22の他端部に回動可能に支持された給送ローラ23と、を備えている。
【0041】
アーム22は、支軸21から後方斜め下へ向かって延びるように設けられている。アーム22は、支軸21周りに回動されることにより、メイントレイ41の底板42に載置されたシート6に給送ローラ23を当接させる。
【0042】
アーム22には、支軸21の回転を給送ローラ23へ伝達する複数個のギア24が設けられている。支軸21が不図示の駆動モータにより回転されると、複数個のギア24を介して給送ローラ23が回転される。回転された給送ローラ23は、当接するシート6を前後方向8における後向きへ送り出す。後ろ向きへ送り出されたシート6は、メイントレイ41の後板46により搬送路30へ案内される。
【0043】
[搬送路30]
搬送路30は、図2において1点鎖線により示される湾曲路31と、2点鎖線により示される直線路32と、を備えている。湾曲路31は、メイントレイ41の後板46の上端を基端として上方へ向かって湾曲して延びている。直線路32は、湾曲路31の終端から前方へ向かって直線状に延びている。搬送路30は、複数個のガイド部材(不図示)及びプラテン33により区画された空間である。プラテン33は、フレーム90(図4(B))の左側板95と右側板96との間に配置されて給紙カセット40の上側に位置しており、直線路32の下面の一部を区画している。
【0044】
[ローラ対34,37]
図2に示されるように、第1のローラ対34は、プラテン33の前後方向8における後側に配置されている。第1のローラ対34は、フレーム90に回転可能に支持された搬送ローラ35と、搬送ローラ35の下側に配置されてプラテン33に回転可能に支持された従動ローラ36と、を備えている。第1のローラ対34は、搬送ローラ35が不図示の駆動モータにより回転されることにより、搬送路30にあるシート6を挟み、図2の矢印に示される搬送向きへシート6を搬送する。
【0045】
第2のローラ対37は、前後方向8におけるプラテン33の前側に設けられている。第2のローラ対37は、プラテン33に回転可能に支持された排紙ローラ38と、排紙ローラ38の上側に配置されてフレーム90に回転可能に支持された拍車ローラ39と、を備えている。第2のローラ対37は、排紙ローラ38が不図示の駆動モータにより回転されることにより、搬送路30にあるシート6を挟み、図2の矢印に示される搬送向きへシート6を搬送する。シート6は、ローラ対34、37により、プラテン33上において間欠搬送され、記録部50により画像が記録される。画像が記録されたシート6は、第2のローラ対37により、給紙カセット40の排紙トレイ48に排出される。
【0046】
[記録部50]
図2に示されるように、記録部50は、キャリッジ57と、キャリッジ57に搭載された記録ヘッド51(記録ヘッドに相当する)と、を備えている。
【0047】
図4に示されるように、キャリッジ57は、左右方向9へ往復動可能にガイドレール92,93に支持されている。キャリッジ57は、無端環状のベルト98に固着されている。ベルト98は、駆動モータ97の軸に設けられた駆動プーリ99A、及び従動プーリ99Bに巻き付けられており、駆動プーリ99Aの歯及び従動プーリ99Bの歯に噛み合う歯を内周面側に備えている。ベルト98は、駆動モータ97が駆動されることにより周運動される。ここにおいて、駆動プーリ99Aは、ガイドレール93の左右方向9における右端部に配置されており、従動プーリ99Bは、ガイドレール93の左右方向9における左端部に配置されている。よって、キャリッジ57は、ガイドレール93の左右方向9における左端部と右端部との間において移動可能である。
【0048】
記録ヘッド51は、キャリッジ57がガイドレール93の左端部の上側にあるとき、後述される廃インクトレイ28の上側に位置しており、この位置(以下、フラッシング位置と称される)において、フラッシングを行う。記録ヘッド51は、キャリッジ57がガイドレール93の右端部の上側にあるとき、後述されるパージ機構60の上側に位置しており、この位置(以下、パージ位置と称される)において、パージ処理を受ける。記録ヘッド51は、フラッシング位置とパージ位置との間にあるとき、プラテン33の上側に位置しており、この位置において、シート6(図2)への画像記録を行う。
【0049】
図4(A)に示されるように、記録ヘッド51は、4本のインクチューブ25により、上述のカートリッジ装着部に装着された4つのインクカートリッジ(不図示)と接続されている。4つのインクカートリッジに貯留されたブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクが、インクチューブ25を通って記録ヘッド51へ供給される。インクチューブ25がキャリッジ57の移動を阻害しないように、可撓性を有する樹脂チューブがチューブ25に用いられている。
【0050】
記録ヘッド51は、インクが流入される複数のノズルを備えている。図3(A)に示されるように、各ノズルは、記録ヘッド51の下面側に吐出口52(ノズルの開口に相当する)をそれぞれ有している。複数のノズルの吐出口52は、4つの吐出口列53〜56を構成している。吐出口列53〜56は、それぞれ前後方向8に沿って1列に並んでいる 。吐出口列53を構成する各ノズルには、ブラックのインクが流入される。吐出口列54〜56を構成する各ノズルには、それぞれシアン、マゼンタ、イエローのうちのいずれかのインクが流入される。
【0051】
記録ヘッド51には、各ノズルを変形させて吐出口52からインク滴を吐出させる不図示の圧電素子と、この圧電素子の駆動を制御する不図示のヘッド基板と、が設けられている。このヘッド基板は、図4(A)に示されるフレキシブルフラットケーブル27により制御基板18(図2)と電気的に接続されている。なお、圧電素子によりインク滴を吐出させる記録ヘッド51に代えて、ヒータによりノズル内のインクを局所的に突沸させてインク滴を吐出口52(図3(A))から吐出させる記録ヘッドが用いられてもよい。
【0052】
[廃インクトレイ28]
図4に示されるように、廃インクトレイ28は、左右方向9におけるフレーム90の左側板95とプラテン33との間に配置されており、フラッシング位置にある記録ヘッド51の下側に位置している。廃インクトレイ28は、記録ヘッド51のノズルから空吐出されたインク滴を受ける。廃インクトレイ28には、フェルトやスポンジ等からなる不図示のインク吸収部材が載置されている。空吐出されたインクは、このインク吸収部材に吸収されて保持される。
【0053】
[パージ機構60]
図4に示されるように、パージ機構60(排出手段に相当する)は、左右方向9におけるフレーム90の右側板96の右側に配置され、パージ位置にある記録ヘッド51の下側に位置している。図3(B)に示されるように、パージ機構60は、可動部61と、可動部61を上下方向7へ移動させるカム機構62と、インクが流れる2本のチューブ66,67と、インクを吸引するポンプ63(ポンプに相当する)と、を備えている。カム機構62は、不図示の駆動モータにより駆動され、可動部61を上下方向7へ移動させる。
【0054】
可動部61は、ゴム材料からなるキャップ64,65(キャップに相当する)を備えている。一方のキャップ64は、パージ位置にある記録ヘッド51の黒色インク用の吐出口列53の下方となる位置に設けられている。キャップ64は、可動部61が上下方向7へ移動されることにより、記録ヘッド51の下面に密着されて吐出口列53の吐出口52を覆い、または記録ヘッド51の下面から離間されて吐出口列53の吐出口52を開放する。他方のキャップ65は、パージ位置にある記録ヘッド51の吐出口列54〜56の下方となる位置に設けられている。キャップ65は、上下方向7へ移動されることにより、記録ヘッド51の下面に密着されて吐出口列54〜56の吐出口52を覆い、または記録ヘッド51の下面から離間されて吐出口列54〜56の吐出口52を開放する。
【0055】
チューブ66,67は、キャップ64、キャップ65にそれぞれ一端が接続されおり、後述のケース70に他端が接続された構成を有している。チューブ66,67をプリンタ筐体11A内において引き回せるように、可撓性を有する樹脂チューブがチューブ66,67に用いられている。
【0056】
ポンプ63には、不図示の駆動モータにより駆動されるロータリ式のチューブポンプが用いられている。キャップ64,65が吐出口列53〜56を閉塞した状態においてポンプ63が駆動されると、キャップ64,65内が負圧となり、インクがノズルからキャップ64,65内を通じてチューブ66,67へ流出する。チューブ66,67に流出されたインクは、ケース70に流れ込む。
【0057】
[ケース70]
図2に示されるように、ケース70(ケースに相当する)は、プリンタ筐体11A内の空いたスペースであるプリンタ筐体11Aの開口15に配置されている。ケース70は、ジャム処理において邪魔にならないように配置されている。詳細には、ケース70は、ガイドレール92(図4)の上側及びパージ機構60(図4)の上側となる位置に配置されている。よって、ケース70は、プラテン33の露出された部分と上下方向7において重ならず、ジャム処理の邪魔にならない。なお、ケース70がパージ機構60の上側に配置されることにより、ケース70を廃インクトレイ28の上側に配置するよりもチューブ66,67(図3(B))の長さが短くなる。
【0058】
また、ケース70が配置される高さ位置は、左右方向9へ往復動される記録ヘッド51とケース70とが当接しないように、記録ヘッド51よりも上側とされている。つまり、ケース70は、パージ位置にある記録ヘッド51の上側となる位置に配置されている。
【0059】
ケース70は、記録ヘッド51の保守点検時に邪魔にならないように、回動可能に設けられている。ケース70は、回動されることにより、図2の実線に示される倒伏姿勢(第1姿勢に相当する)、及び破線に示される起立姿勢(第2姿勢に相当する)になる。倒伏姿勢は、インクジェット記録装置10において画像記録等が行われる際の姿勢である。起立姿勢は、記録ヘッド51の保守点検が行われる際の姿勢である。ケース70が起立姿勢にされることにより、倒伏姿勢においてケース70に占有されていた空間が開放され、記録ヘッド51の保守点検のための空間が確保される。以下、図5を参照してケース70について詳細な説明がされる。なお、図5に示される上下方向7、前後方向8及び左右方向9は、ケース70が倒伏姿勢にあるときの方向である。以下では、特に言及されない限り、倒伏姿勢にあるものとしてケース70の形状等が説明がされる。
【0060】
ケース70は、平面視において略T字状の外形を呈する樹脂成型品であり、左右方向9に長い第1本体部71と、前後方向8に長い第2本体部72と、を有している。第1本体部71は、ガイドレール92(図4)の上側に位置している。第2本体部72は、パージ機構60(図4)の上側に位置している。
【0061】
第1本体部71及び第2本体部72は、上下方向7における長さ(高さ)が左右方向9における長さ(幅)及び前後方向8における長さ(奥行き)よりも短い扁平な直方体状の外形をそれぞれ呈している。第1本体部71及び第2本体部72がこのような外形とされるのは、インクジェット記録装置10の高さを低くするためである。
【0062】
ケース70は、後述のインク吸収部材29(液体吸収部材に相当する)を内部に挿入可能とし、且つ成型し易いように、上端部に開口73(開口に相当する)を有する箱状に成型されている。インク吸収部材29は、開口73からケース70内へ挿入される。
【0063】
第1本体部71の前後方向8における後面からは、突出部74が後向きへ突出されている。この突出部74に円柱状の回動軸75(回動軸に相当する)が設けられている。回動軸75は、中心軸線を左右方向9に一致させて設けられており、プリンタ筐体11Aに設けられた軸受け14(図2)に回動可能に支持されている。ケース70は、回動軸75において、プリンタ筐体11Aに回動可能に支持されている。ケース70は、回動軸75の中心軸線周りに回動されることにより、開口73が上側となる倒伏姿勢(図2の実線)及び開口73が水平面に対して起立する起立姿勢(図2の破線)になる。
【0064】
ケース70は、2本のチューブ66,67が接続される2つの接続部81を有している。接続部81は、第1本体部71の前後方向8における後壁の左右方向9における右端部から後方へ向かって突出されており、中空円筒状の外形を呈している。パージ機構60によりノズルから吸引されたインクは、チューブ66,67を通って接続部81からケース70内へ流れ込む。
【0065】
図6に示されるように、ケース70の底板76からは、インクが流れる流路80(図5(C)の破線の矢印)を区画する第1壁77(壁に相当する)、第2壁78、及び第3壁79(壁に相当する)が突出されている。以下では、ケース70が図6に示される起立姿勢にあるものとして、第1壁77、第2壁78、及び第3壁79等の説明がされる。
【0066】
第1壁77は、第2本体部72の左右方向9における右側壁から左右方向9における中央部まで延ばされている。第2壁78は、第1壁77の左右方向9における左端部から図6における下方へ向かって延ばされている。第2壁78の下端は、上下方向7における第1本体部71の中央部に位置している。第3壁79は、第2壁78の下端から左右方向9における左方へ向かって延ばされている。第3壁79の左右方向9における左端は、第1本体部71の左右方向9における左側壁85から離間されている。
【0067】
図5に示される接続部81からケース70内に流れ込んだインクは、インク吸収部材29に吸収され、図5の破線の矢印に示される流路80に沿って拡散され、第2本体部72の前後方向8における前端部に到達する。この前端部には、インクの有無を検知する検知電極82が設けられている。
【0068】
検知電極82の出力電圧は、インクが検知電極82に到達しているときと、検知電極82に到達していないときとにおいて相違する。制御基板18に実装されたマイクロコンピュータは、検知電極82の出力電圧の大きさにより、インクが検知電極82に到達したか否かを判断する。マイクロコンピュータは、例えば、インクが検知電極82に到達したと判断すると、音声や表示パネル19(図1)により、インク吸収部材29の交換を促す旨の報知を行う。または、マイクロコンピュータは、インク吸収部材29の交換を促す旨をパーソナルコンピュータのモニタに表示させる。
【0069】
また、ケース70が起立姿勢に回動されたときに廃インクがケース70から流出して記録ヘッド51のヘッド基板(不図示)等に付着しないように、第1インク受け部120(第1液体受け部に相当する)及び第2インク受け部130,140(第2液体受け部に相当する)がケース70に設けられている。
【0070】
図5に示されるように、第1インク受け部120は、第1本体部71の前後方向8における後端部に、前端部が開口する箱形状となるように設けられている。詳細には、第1インク受け部120は、第1本体部71の前後方向8における後壁83と、後壁83の上端部から前後方向8における前方へ向かって突出された上壁121と、上壁121の左右方向9における左端部から第1本体部71の左側壁85へ向かって延出された左側壁122と、上壁121の左右方向9における右端部から第1本体部71の側壁84へ向かって延ばされた右側壁123と、により構成されている。よって、ケース70が図6に示される起立姿勢にあるとき、第1インク受け部120は、上部が開口する箱形状であり、インク吸収部材29から漏れ出したインクを貯留できる。
【0071】
図5に示されるように、第2インク受け部130は、第3壁79(図6)を底として前端部が開口する箱形状となるように設けられている。詳細には、第2インク受け部130は、第3壁79と、第3壁79の上端部から前後方向8における前方へ向かって突出された上壁131と、上壁131の左端部からケース70の底板76(図6)へ向かって突出された左側壁132と、第2壁78と、により構成されている。よって、ケース70が図6に示される起立姿勢にあるとき、第2インク受け部130は、上部が開口する箱形状であり、インク吸収部材29から漏れ出したインクを貯留できる。
【0072】
図5に示されるように、第2インク受け部140は、第1壁77(図6)を底として前端部が開口する箱形状に設けられている。詳細には、第2インク受け部140は、第1壁77と、第1壁77の上端部から前後方向8における前方へ向かって突出された上壁141と、上壁141の左右方向9における左端部からケース70の底板76(図6)へ向かって突出された左側壁142と、第2本体部72の左右方向9における右側壁86と、により構成されている。よって、ケース70が図6に示される起立姿勢にあるとき、第2インク受け部140は、上部が開口する箱形状であり、インク吸収部材29から漏れ出したインクを貯留できる。
【0073】
[インク吸収部材29]
図5に示されるように、インク吸収部材29は、スポンジやフェルトなどインクを吸収可能な材料により、ケース70の第1本体部71及び第2本体部72内に充填可能な形状に形成されている。図6に示されるように、インク吸収部材29は、第1インク受け部120、第2インク受け部130,140の上壁122,131,141から離間する厚みに形成されている。つまり、インク吸収部材29は、第1インク受け部120、第2インク受け部130,140内には充填されていない。
【0074】
[本実施形態の動作]
以下、図2を参照してインクジェット記録装置10の動作が説明される。制御基板18に実装されたマイクロコンピュータは、パーソナルコンピュータなどの外部機器や操作部13から印刷指示が入力されると、駆動モータの駆動及び圧電素子(不図示)の駆動を制御し、シート6への画像記録を行う。画像記録が終了すると、マイクロコンピュータは、駆動モータの駆動を制御し、記録ヘッド51をパージ位置へ移動させ、キャップ64,65(図3(B))を記録ヘッド51の下面に密着させるキャッピングを行い、インクの乾燥等を防止する。
【0075】
また、マイクロコンピュータは、外部機器や操作部13からフラッシングを行う旨の指示が入力されたり、一定の条件が満たされたと判断すると、フラッシングを行う。一定の条件が満たされた場合とは、例えば、予め設定された時間以上の時間が前回の画像記録から経過したと判断した場合などである。
【0076】
マイクロコンピュータは、フラッシングを行う旨の指示が入力されたり、上述の一定の条件が満たされていると判断すると、駆動モータ97(図4(B))の駆動を制御し、記録ヘッド51がフラッシング位置となるようにキャリッジ57を移動させる。その後、マイクロコンピュータは、圧電素子を駆動させ、記録ヘッド51にインク滴を空吐出させる。空吐出されたインク滴は、廃インクトレイ28(図4)に受けられ、不図示のインク吸収部材に吸われる。乾燥等により粘性の高くなったインクは、空吐出によってノズルから排出される。
【0077】
また、マイクロコンピュータは、外部機器や操作部13からパージを行う旨の指示が入力されたり、一定の条件が満たされたと判断すると、パージを行う。一定の条件が満たされた場合とは、例えば、記録ヘッド51から吐出されたインクの総量が予め設定された量を越えた場合などである。
【0078】
マイクロコンピュータは、印刷指示が入力されたときに上述の一定の条件が満たされていると判断すると、不図示の駆動モータを駆動させてポンプ63(図3(B))を駆動させ、ノズルからインクと共に異物や気泡を吸引除去する。また、マイクロコンピュータは、パージを行う旨の指示が入力されると、駆動モータ97(図4(B))の駆動を制御し、記録ヘッド51がパージ位置となるようにキャリッジ57を移動させる。その後、マイクロコンピュータは、上述のキャッピングを行った後、ポンプ63を駆動させ、ノズルからインクと共に異物や気泡等を吸引除去する。ポンプ63により吸引されたインクは、チューブ66,67(図4(A))を通って接続部81(図5)からケース70内に流れ込み、ケース70内のインク吸収部材29に吸収される。
【0079】
ところで、ケース70は、記録ヘッド51の保守点検において邪魔にならないように、保守点検の作業者により回動される。なお、ケース70は、プラテン33の露出する部分を避けて配置されているので、ジャム処理の際には回動される必要がない。以下、記録ヘッド51の保守点検におけるケース70の動作について説明がされる。
【0080】
記録ヘッド51の保守点検が行われるに当たっては、まず、スキャナ部12が回動され、プリンタ筐体11Aの開口15が開かれる。次に、ケース70が倒伏姿勢から起立姿勢へ回動され、記録ヘッド51の上側の空間が開放される。つまり、記録ヘッド51の保守点検のための空間が確保される。
【0081】
ケース70内に配置されたインク吸収部材29に吸収されたインクの量が多い場合にケース70を起立姿勢にすると、重力の影響によりインクがインク吸収部材29内を下方へ移動し、インク吸収部材29からインクが漏れ出すことが想定される。インクがインク吸収部材29から漏れ出す場合について説明がされる。なお、以下では、ケース70が図6に示される起立姿勢にあるものとして説明がされる。また、インク吸収部材29のうち、第2本体部72内に充填された部分を第1部29Aとし、第1本体部71に充填された部分のうち、第3壁79の上側の部分を第2部29Bとし、第3壁79より下側の部分及び第2壁78より右側の部分を第3部29Cとして説明がされる。
【0082】
ケース70が起立姿勢にされると、第1部29Aの左右方向9における右部内のインクは、重力の影響により破線の矢印に示されるように下方へ移動し、一部がインク吸収部材29から漏れて第2インク受け部140に溜まる。第1部29Aの左部内のインクは、重力の影響により点線の矢印に示されるように下方へ移動し、第2部29B内に侵入する。同様に、第2部29B内のインク及び第1部29Aから第2部29B内に侵入してきたインクは、一部が第2部29Bから漏れて第2インク受け部130に溜まり、一部が第3部29Cに侵入する。第3部29C内のインク及び第2部29Bから第3部29C内に移動してきたインクは、一部が第3部29Cから漏れて第1受け部120に溜まる。
【0083】
記録ヘッド51の保守点検が終了した後、ケース70は、起立姿勢(図6)から倒伏姿勢(図5)に回動される。ケースが70が倒伏姿勢に戻されると、第1インク受け部120、第2インク受け部130,140に貯留されていたインクはケース70内に戻され、インク吸収部材29に吸収される。
【0084】
[実施形態の効果]
プリンタ筐体11Aの空いた空間であるプリンタ筐体11Aの開口15にケース70を配置することにより、インクジェット記録装置10を小型化することができる。また、ケース70を回動可能に設け、記録ヘッド51の保守点検の際に起立させることにより、保守点検においてケース70が邪魔になることがない。
【0085】
また、ケース70を、開口73を有する箱形状としたことにより、一部材としてケース70を樹脂材料を用いて成型することができる。また、ケース70に第1インク受け部120を設けたことにより、起立姿勢においてインク吸収部材29からインクが漏れ出したとしても、漏れ出したインクが記録ヘッド51のヘッド基板(不図示)等に付着することを防止できる。よって、小型であり、ジャム処理や保守点検がし易く、部品点数が少なく、且つ廃インクによって故障が生じることのないインクジェット記録装置10が実現される。
【0086】
また、第1壁77及び第3壁79により、起立姿勢において起立されたインク吸収部材29を上下方向7において分割して支持することができるので、インク吸収部材29から漏れ出すインクの量を低減することができる。また、第1壁77及び第3壁79を伝ってケース70から流出されたインクは、第1壁77及び第3壁79にそれぞれ設けられた第2インク受け部130,140により保持できる。よって、廃インクによって生じる故障を、第1インク受け部120のみがケース70に設けられた場合よりも、更に確実に防止できる。
【0087】
[変形例1]
図7に示されるように、本変形例では、流出口150及び第1流路151(第1流路に相当する)と、流出口160及び第2流路161(第2流路に相当する)と、がケース70に設けられた例が説明される。
【0088】
流出口150は、ケース70の第1本体部71の左側壁85に設けられている。起立姿勢においてインク吸収部材29から第1インク受け部120に流れ込んだインクの量が多い場合、図の破線の矢印に示されるように、インクは、流出口150から第1流路151へ流れ込む。
【0089】
第1流路151は、ケース70の第1本体部71の左側壁85の左右方向9における左側面から突出された前後一対のリブ153,154により構成されている。リブ153,154は、左側壁85に沿って下方へ向かって延びており、前後方向8において互いに対向して設けられている。
【0090】
流出口150から第1流路151に流れ込んだインクは、第1流路151を下方へ向かって流れ、ケース70の左右方向9における右端部の下端から滴下される。ケース70の下方には、インクを受ける廃インクトレイ154(受け部材に相当する)が配置されている。廃インクトレイ154は、プリンタ筐体11Aに設けられており、インク吸収部材155を保持している。ケース70から滴下されたインクは、インク吸収部材155に吸収される。
【0091】
流出口160は、ケース70の第2本体部72の右側壁86に設けられている。起立姿勢においてインク吸収部材29から第2インク受け部130に流れ込んだインクの量が多い場合、図の点線の矢印に示されるように、インクは、流出口160から第3流路161へ流れ込む。
【0092】
第2流路161は、ケース70の第2本体部72及び第1本体の右側壁86,87の左右方向9における右側面から突出された前後一対のリブ163,164により構成されている。リブ163,164は、右側壁86,87に沿って下方へ向かって延びており、前後方向8において互いに対向して設けられている。
【0093】
流出口160から第2流路161に流れ込んだインクは、第2流路161を下方へ向かって流れ、ケース70の左右方向9における左端部の下端から滴下される。ケース70の下方には、インクを受ける廃インクトレイ164(受け部材に相当する)が配置されている。廃インクトレイ164は、プリンタ筐体11Aに設けられており、インク吸収部材165を保持している。ケース70から滴下されたインクは、インク吸収部材165に吸収される。
【0094】
廃インクトレイ154,164及びインク吸収部材155,165は、インク吸収部材29が適切な交換時期に交換されない場合のバックアップであり、通常は使用されない。インク吸収部材29の交換が交換時期から長期間に渡って行われない場合に、廃インクトレイ154,164及びインク吸収部材155,165が有用となる。
【0095】
ケース70に流出口150,160、第1流路151及び第2流路161が設けられたことにより、インク吸収部材29の交換が交換時期から長期間に渡って行われない場合にも、ケース70の回動の際にインクが記録ヘッド51のヘッド基板等に付着することを防止できる。
【0096】
[変形例2]
上述の実施形態では、ケース70がプリンタ筐体11Aに回動可能に支持された例が説明された。しかしながら、ケース70は、図8に示されるように、スキャナ部12に取り付けられていてもよい。ケース70は、閉姿勢にあるスキャナ部12の下面に取り付けられており、スキャナ部12と一体に回動される。チューブ66,67は、スキャナ部12の回動基端からスキャナ部12の内部に引き込まれており、ケース70の接続部81に接続されている。また、ケース70は、インク吸収部材29の交換のため、着脱可能または回動可能にスキャナ部12に取り付けられている。
【0097】
本変形例においても、上述の実施形態と同様に、第1インク受け部120及び第2インク受け部130,140により、ケース70からのインクの流出を抑制できる。
【0098】
また、本変形例では、スキャナ部12と一体にケース70が回動されるので、ケース70をスキャナ部12とは別に回動させる場合に比べ、記録ヘッド51の保守点検が容易になる。
【0099】
[その他の変形例]
上述の実施形態や変形例では、第1インク受け部120に加え、第2インク受け部130,140がケース70に設けられた例が説明された。しかしながら、第1インク受け部120のみがケース70に設けられた構成でも、第1インク受け部120の容量の範囲内において、回動によるケース70からのインクの流出を抑制することができる。
【0100】
上述の実施形態や変形例では、パージ機構60により吸引されたインクを保持するケース70に本発明が用いられた例が説明された、しかしながら、フラッシングにより空吐出されたインクを保持する廃インクトレイ28に本発明が用いられてもよい。すなわち、廃インクトレイ28が配置された位置に廃インクトレイ28の代わりにケース70が回動可能に設けられてもよい。例えば、廃インクトレイ28の下方に保守点検が必要な部材が配置されている場合に、廃インクトレイ28の代わりにケース70が設けられる。この構成では、記録ヘッド51にフラッシングを行わせる制御基板18が排出手段に相当する。
【0101】
また、上述の実施形態や変形例では、ジャム処理の邪魔にならないように、ケース70をガイドレール92及びパージ機構60の上側に配置できる大きさとした例が説明された。しかしながら、ケース70の大きさを大きくし、ケース70をプラテン33の上側となる位置に配置してもよい。ケース70は、ジャム処理の際にも回動され、プラテン33の上側の空間を開放する。ケース70の大きさが大きくされることにより、インク吸収部材29の交換までの期間を長くすることができる。
【0102】
上述の実施形態や変形例1では、スキャナ部12とケース70とがそれぞれ独立して回動可能な例が説明された。しかしながら、スキャナ部12の回動に連動してケース70が回動される構成が採用されてもよい。例えば、スキャナ部12の回動においてケース70の回動先端部に引っ掛かってケース70を連動して回動させる引っ掛け部がスキャナ部12に設けられる。ケース70がプラテン33の上側を覆うほど大きく形成され、ジャム処理及び保守点検においてスキャナ部12とケース70との双方を回動させる必要がある場合に有益である。つまり、スキャナ部12とケース70とを別個に回動させる必要がなく、ケース70を回動させる手間を省くことができる。
【0103】
上述の変形例2では、スキャナ部12の下面にケース70を取り付けた例が説明された。しかしながら、スキャナ部12の内部にケース70が配置されていてもよい。
【0104】
上述の実施形態では、インクをシート6に吐出して画像を形成するインクジェット記録装置10について説明された。しかしながら、本発明は、インク以外の様々な液滴を吐出する液滴吐出装置にも用いることができる。例えば、導電性材料を基板に吐出して配線基板を形成する液滴吐出装置に本発明を用いてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10・・・インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
11・・・プリンタ部
11A・・・プリンタ筐体(本体筐体)
12・・・スキャナ部
12A・・・スキャナ筐体
14・・・軸受け
15・・・開口
29・・・インク吸収部材(液体吸収部材)
51・・・記録ヘッド
52・・・吐出口(ノズルの開口)
63・・・ポンプ
64,65・・・キャップ
70・・・ケース
73・・・開口
75・・・回動軸
120・・・第1インク受け部(第1液体受け部)
130,140・・・第2インク受け部(第2液体受け部)
151・・・第1流路
154・・・廃インクトレイ(受け部材)
161・・・第2流路
164・・・廃インクトレイ(受け部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の外形を呈している装置筐体と、
上記装置筐体内に配置され、液滴を被記録媒体へ吐出する記録ヘッドと、
上記記録ヘッドから液体を排出させる排出手段と、
一面が開口する箱形状の外形を呈しており、上記排出手段によって上記記録ヘッドから排出された液体が流入されるケースと、
上記ケースに充填された液体吸収部材と、を備えており、
上記ケースは、上記一面が上面となる第1姿勢と、上記一面が水平方向に対して起立する第2姿勢とに回動可能に上記装置筐体に支持されており、
上記第2姿勢において上記ケースの開口周縁における下側となる箇所に、液体を貯留可能な第1液体受け部が設けられたものである液滴吐出装置。
【請求項2】
上記第1液体受け部は、上記第2姿勢において貯留された液体を、上記第1姿勢において上記ケース内へ流出するものである請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
上記第1液体受け部は、上記ケースの開口周縁から突出されており、上記第2姿勢における上側が開口する箱形状である請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
上記ケースは、上記第2姿勢において上記第1液体受け部の液体を下方へ流す第1流路を有しており、
上記ケースより下側に、上記第1流路を流れた液体を受ける受け部材が設けられた請求項1から3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
上記装置筐体と上記ケースとの一方は回動軸を有し、他方は当該回動軸を受ける軸受けを有しており、
上記ケースは、内部空間において上記回動軸に沿って延びる壁を有しており、
上記壁における上記ケースの開口側の端部に、液体を貯留可能な第2液体受け部が設けられたものである請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
上記第2液体受け部は、上記第2姿勢において内部空間に貯留された液体を、上記第1姿勢において上記ケース内へ流出するものである請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
上記第2液体受け部は、上記第2姿勢における上側が開口する箱形状である請求項5又は6に記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
上記ケースは、上記第2姿勢において上記第2液体受け部から溢れた液体を下方へ流す第2流路を有しており、
上記ケースの下側に、上記第2流路を流れた液体を受ける受け部材が設けられたものである請求項5から7のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
上記記録ヘッドは、液体を吐出するノズルが開口する下面を有しており、
上記排出手段は、
上記ノズルの開口を覆って上記記録ヘッドの下面に密接可能なキャップと、
上記キャップ内に吸引圧を付与するポンプと、を有するものである請求項1から8のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
上記ケースは、上記記録ヘッドの上側に配置されたものである請求項9に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
上記装置筐体は、上側に開口を有する本体筐体を含み、
上記ケースは、上記本体筐体の開口に配置されたものである請求項10に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
上記装置筐体は、上記本体筐体に回動可能に設けられて上記本体筐体の開口を開閉する蓋を更に備えており、
上記ケースは、上記蓋と共に回動可能に設けられたものである請求項11に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
上記蓋は、スキャナ部である請求項12に記載の液滴吐出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−56499(P2013−56499A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197151(P2011−197151)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】