説明

液滴噴射装置及び液滴噴射方法

【課題】印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させる。
【解決手段】検査用噴射部61に噴射されたインクを検査用噴射部61を移動させて噴射ヘッド20の移動可能範囲の外部領域で撮像することによってノズルのインク噴射状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴噴射装置及び液滴噴射方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴噴射装置では、インクを噴射するノズルが形成された噴射ヘッドを備えており、この噴射ヘッドと被噴射物とを相対移動させることによって、被噴射物の広い範囲にインクを噴射配置する。
【0003】
このような液滴噴射装置には、例えば、特許文献1及び特許文献2に示すように、ノズルのインク噴射状態を検査するための検査部が設置されている。
そして、液滴噴射装置は、検査部にてノズルのインク噴射状態が異常であると検出された場合には、ノズルに対するクリーニング等を行うことによってノズルのインク噴射状態を回復させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−76067号公報
【特許文献2】特開2009−255086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2においては、検査部における検査が描画の際に噴射ヘッドが移動される領域で行われるように構成されている。
具体的には、特許文献1及び特許文献2においては、噴射ヘッドの移動可能範囲の下方に検査用噴射部が配置されており、検査用カメラを移動させて検査用噴射部に噴射された検査パターンを撮像し、この撮像データに基づいてインク噴射状態を判断している。
つまり、特許文献1及び特許文献2では、検査用カメラが検査用噴射部の上方すなわち噴射ヘッドの移動可能範囲を移動することとなり、被噴射物に対するインクの噴射とノズル噴射状態の検査とを同時に行うことができない。
このため、特許文献1及び特許文献2では、良好なノズル噴射状態を維持するためのノズル噴射状態の検査を行うほど、被噴射物へのインクの噴射を行うことができない待機時間が発生してしまい、印刷品質の向上のために印刷速度を犠牲にする必要がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能な液滴噴射装置及び液滴噴射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、被噴射物に対してインクを噴射するノズルを有すると共に上記被噴射物に対して移動可能とされる噴射ヘッドと、上記ノズルのインク噴射状態を検査する検査部とを備える液滴噴射装置であって、上記検査部が、移動可能とされると共に上記噴射ヘッドの上記ノズルから上記インクが噴射される検査用噴射部と、上記噴射ヘッドの移動可能範囲の外部領域に配置されると共に上記噴射ヘッドの移動可能範囲の外部領域にて上記検査用噴射部に噴射された上記インクを撮像する撮像部とを備えるという構成を採用する。
【0009】
このような構成を採用する本発明によれば、撮像部が噴射ヘッドの移動可能範囲の外部領域に配置されており、また検査用噴射部が移動可能に構成されている。
このため、噴射ヘッドの下方にて検査用噴射部にインクを噴射した後、検査用噴射部を移動させて撮像部で噴射されたインクを撮像することが可能となり、噴射ヘッドの移動可能範囲で撮像部を移動させる必要がなくなる。
したがって、本発明によれば、ノズル噴射状態の検査の際に噴射ヘッドを移動させることが可能となり、被噴射物に対するインクの噴射とノズル噴射状態の検査とを並行して行うことが可能となる。
よって、本発明によれば、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【0010】
次に、第2の発明は、上記第1の発明において、上記検査用噴射部が水平移動可能とされ、上記撮像部が固定されているという構成を採用する。
【0011】
このような構成を採用する本発明によれば、検査用噴射部を水平移動させるのみで撮像部での撮像が可能となる。
つまり、検査用噴射部の移動を1軸のみとすることができ、検査部の移動機構を簡素化することができる。
【0012】
次に、第3の発明は、上記第1の発明において、上記検査用噴射部が少なくとも垂直移動可能とされ、上記検査用噴射部あるいは上記撮像部のいずれか一方が水平移動可能とされているという構成を採用する。
【0013】
このような構成を採用する本発明によれば、撮像部を鉛直方向にずらすことによって噴射ヘッドの移動可能領域の外部に配置することができる。
このため、平面視における液滴噴射装置の大きさを大型化させることなく、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【0014】
次に、第4の発明は、上記第1〜第3のいずれかの発明において、上記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら上記被噴射物に対して上記ノズルから上記インクを噴射させ、1回目の往移動の際に上記検査用噴射部に上記ノズルから上記インクを噴射させる制御を行うという構成を採用する。
【0015】
本発明によれば、1つの描画パターンを印刷するにあたり、最も早いタイミングでインク噴射状態を検査することができる。
したがって、インク噴射状態に異常が存在する場合には、最も早いタイミングで被噴射物に対するインクの噴射を停止することができ、インクの消費量を低減させることが可能となる。
【0016】
次に、第5の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら上記被噴射物に対して上記ノズルから上記インクを噴射させ、連続する往移動と復移動との際に上記検査用噴射部に上記ノズルから上記インクを噴射させる制御を行うという構成を採用する。
【0017】
本発明によれば、検査用噴射部に対して2回インクが噴射されることとなり、1つのノズルに対するインク噴射状態を2箇所に噴射されたインクから判断することができる。
したがって、検査用噴射部に対して異物が付着する等に起因するインク噴射状態の誤検出を抑止し、より正確にインク噴射状態を検出することが可能となる。
【0018】
次に、第6の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら上記被噴射物に対して上記ノズルから上記インクを噴射させ、複数の往復移動の際に上記検査用噴射部に上記ノズルから上記インクを噴射させる制御を行うという構成を採用する。
【0019】
本発明によれば、検査用噴射部に対して複数回インクが噴射されることとなり、1つのノズルに対するインク噴射状態を複数箇所に噴射されたインクから判断することができる。
したがって、検査用噴射部に対して異物が付着する等に起因するインク噴射状態の誤検出を抑止し、より正確にインク噴射状態を検出することが可能となる。
【0020】
次に、第7の発明は、上記被噴射物を上記被噴射物の送り方向へ搬送する供給排出機構部を有し、上記被噴射物に対して第1の描画パターンを形成した後に、上記供給排出機構部によって上記被噴射物を上記被噴射物の送り方向へ搬送し、該搬送の後に、上記被噴射物に対して第2の描画パターンを形成する際に、上記第2の描画パターンの形成が開始される前までに上記検査が完了するように、上記第1の描画パターンを上記被噴射物へ形成するために上記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させる際のいずれかの移動の際に、上記検査用噴射部に上記ノズルから上記インクを噴射させる制御を行うという構成を採用する。
【0021】
本発明によれば、第2の描画パターンを形成する前にインク噴射状態の検査を行うことができ、第2の描画パターンの印刷品質を向上させることが可能となる。
【0022】
次に、第8の発明は、上記第1〜第7いずれかの発明において、上記検査部にて上記ノズルのインク噴射状態に異常が検出された際に、異常が検出されたノズルから上記インクの噴射が行われた領域を示すマーキングを行うマーキング部を備えるという構成を採用する。
【0023】
このような構成を採用する本発明によれば、インク噴射状態が異常とされたノズルからインクが噴射された領域にマーキングがなされるため、後工程において、不良の可能性が高い領域を予め知ることができ、例えば当該領域について重点的に検査を行うことによって正確に印刷品質を判断することが可能となる。
【0024】
次に、第9の発明は、上記第1〜第8いずれかの発明において、上記検査部にて上記ノズルのインク噴射状態に異常が検出された際に、上記インクの噴射によって描画されている1つのパターンの描画が完了してから上記ノズルのクリーニングを行う制御を行うという構成を採用する。
【0025】
本発明によれば、ノズル噴射状態の異常が検出された場合であっても、このタイミングで描画されているパターンの描画が完了するまでは被噴射物へのインクの噴射を行う。
ノズル噴射状態の異常が、許容される程度の印刷品質の低下しか引き起こしていない可能性もある。このため、このような構成を採用する本発明によれば、不良と判定する必要ないパターンを不良と判定してしまう可能性を低下し、歩留まりの向上が図れる可能性がある。
【0026】
次に、第10の発明は、上記第1〜第9いずれかの発明において、上記検査部にて上記ノズルのインク噴射状態に異常が検出された際に、異常が検出されたノズルの使用頻度を確認し、当該使用頻度に応じて上記ノズルに対するクリーニングの開始タイミングを決定する制御を行うという構成を採用する。
【0027】
本発明によれば、インク噴射状態に異常が検出された場合であっても、その異常が検出されたノズルの使用頻度によっては、クリーニングの開始タイミングを遅らせることが可能となる。
異常が検出されたノズルの使用頻度が極めて低いような場合には、実質的に被噴射物に描画されるパターンの品質への影響はほとんど存在しないことが考えられる。このため、本発明によれば、このような場合にはクリーニングの開始タイミングを遅らせて待機時間が発生することを防止し、印刷速度を向上させることが可能となる。
【0028】
次に、第11の発明は、上記第1〜第10いずれかの発明において、上記撮像部の長さが、複数の上記噴射ヘッドが設けられるヘッドユニットよりも短く設定されているという構成を採用する。
【0029】
本発明によれば、検査用噴射部が移動可能に構成されていることから、撮像部の長さがヘッドユニットよりも短い場合であっても、検査用噴射部を移動させることによって噴射ヘッドの全域から噴射されたインクを撮像することができる。
このため、本発明のように、撮像部の長さを噴射ヘッドユニットよりも短く設定することができ、装置コストを削減することが可能となる。
【0030】
次に、第12の発明は、上記第1〜第11のいずれかの発明において、上記ノズルから上記インクが噴射されるごとに上記検査用噴射部の上記噴射ヘッドの下方における配置位置が変位される制御を行うという構成を採用する。
【0031】
検査用噴射部において先に噴射されたインクの上に後から噴射されるインクが重なると、正確な検査が行えないため、後から噴射されるインクは先に噴射されたインクと異なる領域に噴射される必要がある。このためには、検査用噴射部の配置位置を変位させるか、噴射位置を示すビットマップデータを変更させるかのいずれかの手法が考えられる。しかしながら、ビットマップデータを変更することは容易ではなく、多数のビットマップデータを有するかその都度新たなビットマップデータを生成する必要が生じ、結果として装置のランニングコストを増加させる要因となる。
これに対して、本発明によれば、検査用噴射部の配置位置を変位させるため、ビットマップデータを変更する必要はなく、装置のランニングコストが増大することを防止することが可能となる。
【0032】
次に、第13の発明は、被噴射物に対して移動可能とされる噴射ヘッドに形成されるノズルから上記被噴射物に対してインクを噴射する液滴噴射方法であって、上記噴射ヘッドの上記ノズルから検査用噴射部に上記インクを噴射し、上記検査用噴射部に噴射された上記インクを上記検査用噴射部を移動させて上記噴射ヘッドの移動可能範囲の外部領域で撮像することによって上記ノズルのインク噴射状態を検査するという構成を採用する。
【0033】
このような構成を採用する本発明によれば、噴射ヘッドの下方にて検査用噴射部にインクを噴射した後、検査用噴射部を移動させて撮像部で噴射されたインクを撮像する。このため、噴射ヘッドの移動可能範囲で撮像部を移動させる必要がなくなる。
したがって、本発明によれば、ノズル噴射状態の検査の際に噴射ヘッドを移動させることが可能となり、被噴射物に対するインクの噴射とノズル噴射状態の検査とを並行して行うことが可能となる。
よって、本発明によれば、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置の概略構成を示す模式図であって、(a)は液滴噴射装置の平面図、(b)は液滴噴射装置の側面図である。
【図2】(a)〜(c)は噴射ヘッドの概略構成を示す図である。
【図3】噴射ヘッドの噴射面(下面)を示す平面図である。
【図4】ヘッドユニットの概略構成を示す底面図である。
【図5】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置が備える検査部6を含む模式図である。
【図6】検査用噴射部の配置位置を変位させる様子を示す模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置の変形例を示す模式図である。
【図9】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置の変形例を示す模式図である。
【図10】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置の変形例を示す模式図である。
【図11】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置の変形例を示す模式図である。
【図12】本発明の第1実施形態における液滴噴射装置の変形例を示す模式図である。
【図13】本発明の第2実施形態における液滴噴射装置の概略構成を示す模式図であって平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態における液滴噴射装置が備える検査用噴射部及び検査用スキャナーを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して、本発明に係る液滴噴射装置及び液滴噴射方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0036】
図1(a)、(b)は、本発明における液滴噴射装置の第1の実施形態の概略構成を示す模式図であって、(a)は液滴噴射装置の平面図、(b)は液滴噴射装置の側面図である。なお、図1(a)、(b)では、本発明の液滴噴射装置を、連続した長尺な記録媒体10(被噴射物)に対して印刷を行う、印刷装置に適用した場合について示している。図1(a)、(b)において符号1は液滴噴射装置であり、この液滴噴射装置1は、インクとして紫外線硬化型のインクを液滴噴射する噴射ヘッド20と、この噴射ヘッド20から噴射された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する照射装置80(図4参照)とを備えている。
そして、本実施形態の液滴噴射装置1は、噴射ヘッド20を有するヘッド機構部2と、供給排出機構部3と、インク供給部(図示せず)と、メンテナンス部5と、検査部6と、制御部60と、を備えて構成されている。
【0037】
噴射ヘッド20は、インクジェット方式の噴射ヘッドであって、紫外線硬化性を有する成分を含むインク、すなわち紫外線硬化型インクを液滴として、連続した長尺な帯状の記録媒体10の被記録箇所となる表面に向けて噴射するものである。ここで、記録媒体10としては、本実施形態では紫外線硬化型インクによる記録が可能な媒体が用いられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)などのフレキシブルフィルムが用いられる。
【0038】
供給排出機構部3は、記録媒体10を噴射ヘッド20による記録位置に供給(搬送)し、また、この記録位置から排出(搬送)するものである。インク供給部は、貯留タンク(図示せず)に貯留したインクを噴射ヘッド20に供給するためのものである。メンテナンス部5は、噴射ヘッド20の保守を行うものであり、本実施形態においては噴射ヘッド20のクリーニング等を行うことによってノズル噴射状態を回復させる。
【0039】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取リール32と、吸着ユニット33と、アイドラローラー37と、アイドラローラー38と、Y軸走査機構42と、を備えて構成されている。
Y軸走査機構42は、Y軸ガイドレール42aとY軸スライダー42bとを、それぞれ二組ずつ備えて構成されている。吸着ユニット33は、吸着テーブル33aと、テーブル台43と、テーブル昇降機構44と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、を備えて構成されている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回転軸まわりに回転可能になっており、それぞれの回転軸は互いに略平行になっている。
記録媒体10が送られる方向は、互いに略平行な各リール、及び各ローラーの回転軸に略直交する方向となっている。なお、各リール、及び各ローラーの回転軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、記録媒体10の送り方向をY軸方向と表記している。
【0040】
Y軸走査機構42のY軸ガイドレール42aは、吸着テーブル33aを挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1つずつ配設されており、Y軸方向に延在している。Y軸スライダー42bは、テーブル台43の底面に設けられ、その状態でY軸ガイドレール42a上に配設されたもので、Y軸駆動モーター(図示せず)によってY軸ガイドレール42a上をその延在方向に摺動するように構成されたものである。
【0041】
吸着ユニット33の吸着テーブル33aは、テーブル台43上に固定されたテーブル昇降機構44に固定されたものである。この吸着テーブル33aは、その上面上に記録媒体10を保持するようになっており、したがってその上面は、記録媒体10を保持する側の面、すなわち保持面となっている。このような構成のもとに、保持面上に記録媒体10が保持された状態で、上記噴射ヘッド20から紫外線硬化型インクが噴射され、このインクの液滴が記録媒体10上に着弾するようになっている。
【0042】
この吸着テーブル33aには、図示しない負圧源に接続する吸着用孔又は吸着用溝からなる吸着用凹部(図示せず)が設けられ、該吸着用凹部は上記保持面に開口している。これにより、記録媒体10はその所定部位が保持面上に位置決めされた状態で、上記負圧源に接続する吸着用凹部によって吸引・吸着されることにより、保持面上に保持固定されるようになっている。
【0043】
上記テーブル昇降機構44は、吸着テーブル33aをZ軸方向に昇降させるもので、吸着テーブル33aの保持面(吸着面)をZ軸方向における所定の位置となる吸着位置、及びこの吸着位置よりテーブル台43に近い退避位置との間で昇降させ、かつ、各位置にて保持固定するようになっている。吸着位置にあるときの吸着テーブル33aの保持面の位置は、後述する供給ローラー34の外周、及び媒体送りローラー36の外周のそれぞれの上端の位置に、略一致している。ここでZ軸方向とは、吸着テーブル33aの保持面における法線方向を指す。
【0044】
吸着テーブル33aのY軸方向における両側には、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとが配設されている。これら供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、支持部材(図示せず)を介してテーブル台43に固定され、その状態で吸着テーブル33aを挟んでその両側に配設されている。供給ローラー34及び従動ローラー34aは、吸着テーブル33aの上流側、すなわち供給リール31側に配設されており、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aは、吸着テーブル33aの下流側、すなわち巻取リール32側に配設されている。
【0045】
テーブル台43は、Y軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、かつ、Y軸方向における任意の位置に保持可能になっている。また、このテーブル台43上に配置された吸着テーブル33a、供給ローラー34及び従動ローラー34a、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aも、Y軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、かつ、Y軸方向における任意の位置に保持可能になっている。
【0046】
供給排出機構部3が備える供給リール31と、アイドラローラー37と、吸着ユニット33と、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、記録媒体10の供給方向であるY軸方向においてこの順に配置されており、供給リール31側が記録媒体10の供給方向における上流側、巻取リール32側が下流側になっている。
【0047】
また、吸着ユニット33において、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸方向においてこの順に配置されている。したがって、供給排出機構部3において、供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、Y軸方向においてこの順に配置されている。
【0048】
供給リール31には、帯状の記録媒体10が巻かれており、供給モーター(図示せず)によって供給リール31が回転させられることにより、記録媒体10が繰り出されるようになっている。従動ローラー34aは、その外周が供給ローラー34の外周に接して配置されており、付勢装置(図示せず)によって供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は、供給モーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、この供給ローラー34に直接又は間接的に接する従動ローラー34aは、供給ローラー34の回転に従動して回転するようになっている。このような構成のもとに、これら供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟持される記録媒体10は、供給ローラー34の回転によって送られるようになっている。
【0049】
アイドラローラー37は、その回転軸がZ軸方向に揺動可能になっており、かつ、揺動方向の一方(本実施形態では下方)に付勢されている。また、このアイドラローラー37は、記録媒体10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、上記付勢力によって当接させられている。このような構成のもとに記録媒体10は、アイドラローラー37によって付勢されることにより、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、弛み無く張られた状態になっている。
【0050】
したがって、記録媒体10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に供給されて挟持される際の状態が、略平坦に維持され易くなっている。なお、供給ローラー34における記録媒体10の供給速度と、供給リール31における記録媒体10の繰り出し速度との差によって、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー37の位置が変わることにより、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。また、吸着ユニット33の移動による、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間における記録媒体10の弛み量の変動についても、同様にして、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。
【0051】
従動ローラー36aは、その外周が供給ローラー36の外周に接して配置されており、付勢装置(図示せず)によって媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は、媒体送りモーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、この媒体送りローラー36に直接又は間接的に接する従動ローラー36aは、媒体送りローラー36の回転に従動して回転するようになっている。このような構成のもとに、これら媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟持される記録媒体10は、媒体送りローラー36の回転によって送られるようになっている。
【0052】
ここで、媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による送り量より多く設定されている。また、媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構には、トルク制御機構(図示せず)が組み込まれている。このような構成のもとに、媒体送りローラー36において供給ローラー34より速く送られる記録媒体10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、上記トルク制御機構で制御されたトルクに応じた張力で張られるようになっている。
【0053】
この張られた部分には、吸着テーブル33aの保持面が対向している。すなわち、記録媒体10における、吸着テーブル33aの保持面上に位置する部分は、上記トルク制御機構で制御されたトルクに応じた張力で張られている。ここで、前述した吸着位置に位置する吸着テーブル33aの保持面の位置は、媒体送りローラー36の外周上端と供給ローラー34の外周上端とがなす面の位置に略一致している。したがって、吸着位置に位置する吸着テーブル33aの保持面は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られた記録媒体10に接してこれを保持するようになっている。
【0054】
吸着テーブル33aは、その保持面上に記録媒体10を保持するようになっている。保持面は平坦な面であり、したがって記録媒体10における被保持面、すなわち被記録面と反対の側の面は、保持面によって平坦な状態に保持されるようなっている。また、この保持面には、図示しないものの、吸着用孔又は吸着用溝からなる吸着用凹部が設けられており、該吸着用凹部によって記録媒体10はその被保持面が吸着され、吸着テーブル33aの保持面上に吸着・保持されるようになっている。すなわち、吸着用凹部には、吸引ポンプ等の図示しない負圧源が配管等を介して接続されており、これによって吸着用凹部はその開口部上に位置する記録媒体10を吸着するようになっている。
【0055】
巻取リール32は、巻取モーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、これにより、媒体送りローラー36から送り出された記録媒体10は、巻取リール32に巻き取られるようになっている。
アイドラローラー38は、その回転軸がZ軸方向に揺動可能になっており、かつ、揺動方向の一方に付勢されている。また、このアイドラローラー38は、記録媒体10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取リール31との間の部分に、上記付勢力によって当接させられている。このような構成のもとに記録媒体10は、アイドラローラー38によって付勢されることにより、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと巻取リール31との間、及びアイドラローラー38と巻取リール32との間の部分が、弛み無く張られた状態になっている。
【0056】
したがって、記録媒体10は、巻取リール32に巻き取られる際の状態が、略平坦に維持され易くなっている。なお、媒体送りローラー36における記録媒体10の送り速度と、巻取リール32における記録媒体10の巻き取り速度との差によって、媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー38の位置が変わることにより、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。また、吸着ユニット33の移動による、媒体送りローラー36と巻取リール32との間における記録媒体10の弛み量の変動についても、同様にして、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。
【0057】
このような状態のもとで、記録媒体10は供給リール31から巻取リール32まで送られ、途中の吸着テーブル(媒体保持部)33aの保持面上に保持された部位に、記録(印刷)がなされるようになっている。
【0058】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11とを備えている。
X軸走査機構11は、X軸ガイドレール11aとX軸スライダー11bと支持台11dとをそれぞれ二組備え、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えて構成されている。支持台11dは、吸着テーブル33aのX軸方向に、該吸着テーブル33aを挟んでその両側にそれぞれ一つずつ配設されており、前述した一対のY軸ガイドレール42a、42aを間に挟む位置に配設されている。一方のY軸ガイドレール42aと支持台11dとの間には、メンテナンス部5が配設されている。
【0059】
二つの支持台11d、11dのそれぞれの上には、そのY軸方向おける両端部に、ガイドレール支持柱11cがそれぞれ1本ずつ、計2本立設されている。二つのX軸ガイドレール11aのうちの一方は、支持台11dの供給リール31の側の端部にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11c間に架け渡されて、吸着テーブル33aの上方にてX軸方向に延在した状態で配設されている。また、一対のX軸ガイドレール11aのうちの他方は、支持台11dの巻取リール32の側の端部にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11c間に架け渡されて、吸着テーブル33aの上方にてX軸方向に延在した状態で配設されている。
【0060】
X軸スライダー11bは、X軸ガイドレール11a上に配設されたもので、X軸駆動モーター(図示せず)によってX軸ガイドレール11a上をその延在方向に摺動するように構成されたものである。2本のX軸ガイドレール11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27の両端部がそれぞれ固定されている。両端部がそれぞれX軸スライダー11bに固定されたブリッジプレート27は、X軸スライダー11bに支持された状態で、2本のX軸ガイドレール11aの間に懸架されている。このような構成のもとに、ブリッジプレート27は、X軸駆動モーターによってX軸ガイドレール11a上をその延在方向に摺動するようになっており、また、X軸方向における任意の位置に保持されるようになっている。
【0061】
ヘッドキャリッジ22は、ブリッジプレート27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21とを備えて構成されている。サブキャリッジ28は、ブリッジプレート27の下面略中央部に設けられたもので、このサブキャリッジ28の下面側には、ヘッドユニット21が固定されている。ヘッドユニット21の下面側には噴射ヘッド20が備えられており、この噴射ヘッド20の底部側には、図2(a)に示すようにノズル24を形成したノズル基板25が配設されている。このような構成のもとに噴射ヘッド20は、上記の吸着テーブル33aの保持面上に位置させられるようになっており、その際、ノズル基板25を保持面に対向させるようになっている。
【0062】
ここで、吸着ユニット33はY軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、したがって吸着テーブル33aの保持面はY軸方向に移動可能になっている。すなわち、記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位を、Y軸方向に走査させることが可能になっている。
一方、サブキャリッジ28に固定されたヘッドユニット21の噴射ヘッド20は、X軸走査機構11によってサブキャリッジ28が設けられたブリッジプレート27がX軸方向に移動させられることにより、X軸方向に走査させられるようになっている。
なお、本実施形態においては、吸着テーブル33aの−X方向側に検査部6が設置されている。そして、X軸走査機構11は、噴射ヘッド20が後述する検査部6の検査用噴射部61に到達可能なようにX軸ガイドレール11aの長さが設定されている。
【0063】
このような構成のもとに、X軸走査機構11によってヘッドユニット21の噴射ヘッド20をX軸方向に走査させ、Y軸走査機構42によって記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位をY軸方向に走査させることができる。すなわち、記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位のほぼ全面に対して、噴射ヘッド20のノズル24を対向させることができるようになっている。
【0064】
よって、吸着テーブル33aの保持面上に吸着保持された記録媒体10の被記録部分を、Y軸方向の噴射位置まで移動させて停止させ、ヘッドユニット21のX軸方向の移動に同調させて、噴射ヘッド20から紫外線硬化型インクを液滴として噴射させることで、記録媒体10上の所望位置に紫外線硬化型インクの液滴(ドット)を配することができる。したがって、ヘッドユニット21をX軸方向に移動させる主走査と、吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された記録媒体10をY軸方向に移動させる副走査(改行)とを、後述するように制御部60で制御することにより、吸着テーブル33aの保持面に保持された記録媒体10上の任意の位置にヘッドユニット21の噴射ヘッド20を対向させ、その状態で紫外線硬化型インクを液滴として噴射させることができる。これにより、記録媒体10に所望の画像を形成(記録)することが可能になる。つまり、本実施形態においては、噴射ヘッド20を主走査方向(X方向)に繰り返し往復移動させながら記録媒体10に対して紫外線硬化型インクを噴射させ、さらに噴射ヘッド20の片道移動(往移動あるいは復移動)ごとに記録媒体10を副走査方向に改行し、これにより、記録媒体10に所望の画像を形成する。
【0065】
次に、噴射ヘッド20について、図2(a)〜(c)、図3を参照して説明する。図2(a)〜(c)は噴射ヘッド20の概略構成を示す図であり、図2(a)は噴射ヘッド20の概略構成を示す外観斜視図、(b)は噴射ヘッド20の内部構造を説明するための要部斜視図、(c)は噴射ヘッド20のノズル部分を示す要部側断面図である。また、図3は噴射ヘッド20の噴射面(下面)を示す平面図であって、ノズル列の概略構成を説明するための図である。なお、図2(a)、図3に示したX軸、Y軸、(Z軸)は、噴射ヘッド20が液滴噴射装置1に組み込まれた状態を示す図1(a)、(b)における、X軸、Y軸、(Z軸)に一致している。
【0066】
図2(a)に示すように噴射ヘッド20は、ノズル基板25を備えて形成されたもので、ノズル基板25には、多数のノズル24がY軸方向に沿って直線状に配列されてなるノズル列70が、X軸方向に複数列形成されている。本実施形態では、図3に示すようにノズル列70が8列形成されている。これらノズル列70は、本実施形態では色材を有する画像形成用のインク、すなわちカラーインクを噴射するノズルを配列した第1のノズル列71と、アンダーコート用又はオーバーコート用のインク、すなわち色材を有さないクリアインクや白色インク等を噴射するノズルを配列した第2のノズル列72と、からなっている。
【0067】
具体的には、図3中において左側から順に、第1のノズル列71として、カラーインクとしてのC(シアン)を噴射する第1のノズル列71C、M(マゼンタ)を噴射する第1のノズル列71M、Y(イエロー)を噴射する第1のノズル列71Y、黒(K)を噴射する第1のノズル列71Kが、それぞれ1列ずつ配置されている。さらに、第2のノズル列72として、アンダーコート用のクリアインクを噴射する第2のノズル列72CR、オーバーコート用の白色インクを噴射する第2のノズル列72Wが、それぞれ2列ずつ配置されている。すなわち、本実施形態では、第2のノズル列72CR、72Wの数が、カラーインクを噴射する第1のノズル列71C、71M、71Y、71Kのそれぞれの数より、多く配置されている。
【0068】
ここで、図3中において左側から奇数番目のノズル列、すなわち1番目の第1のノズル列71C、3番目の第1のノズル列71Y、5番目の第2のノズル列72CR、7番目の第2のノズル列72Wは、Y軸方向において対応するノズル24どうしの位置が各ノズル列間において同じに配置され、かつ、Y軸方向沿うノズル24間の間隔が全て同じに形成配置されている。したがって、各ノズル列の各ノズル24は等ピッチに配置されている。同様に、図3中において左側から偶数番目のノズル列、すなわち2番目の第1のノズル列71M、4番目の第1のノズル列71K、6番目の第2のノズル列72CR、8番目の第2のノズル列72Wも、Y軸方向において対応するノズル24どうしの位置が各ノズル列間において同じに配置され、かつ、Y軸方向に沿うノズル24間の間隔が全て同じに形成配置されている。したがって、各ノズル列の各ノズル24は等ピッチに配置されている。
【0069】
ただし、X軸方向において隣り合う二つのノズル列間、例えば第1のノズル列71Cと第1のノズル列71Mとの間、第1のノズル列71Yと第1のノズル列71Kの間、二つの第2のノズル列72CR間、二つの第2のノズル列72W間では、それぞれ、ノズル24の位置がY軸方向において半ピッチずれた千鳥状になっている。
なお、各ノズル列71、72は、本実施形態では全てノズル24を180個配列して形成されている。
そして、このようなノズル24から紫外線硬化型インクを液滴として噴射し、対向する記録媒体10の面上に着弾させることで、噴射ヘッド20は記録媒体10上の所望位置に紫外線硬化型インクを配することができるようになっている。
【0070】
図2(b)、(c)に示すように噴射ヘッド20は、ノズル基板25上に圧力室プレート51を積層し、さらに圧力室プレート51上に振動板52を積層したものである。圧力室プレート51には、噴射ヘッド20に供給される紫外線硬化型インクが常に充填される液たまり55が形成されており、液たまり55は、振動板52とノズル基板25と、壁部(図示せず)とに囲まれた空間からなっている。紫外線硬化型インクは、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給されるようになっている。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区画された圧力室58が形成されている。
【0071】
圧力室58はノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数とノズル24の数とは同じになっている。圧力室58には、2つのヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液が供給されるようになっている。ヘッド隔壁57の圧力室58とノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだノズル24がノズル列24Aを形成している。図2(b)では図示を省略しているが、ノズル24を含むノズル列24Aに対して、その側方にもう1列のノズル列24Aが形成されている。
【0072】
図2(c)に示すように振動板52上には、それぞれの圧力室58に対応して、すなわち個々のノズル24に対応して圧電素子59が配置されている。圧電素子59は、下部電極と上部電極との間に圧電層を挟持したもので、電極間に駆動波形(駆動電圧)が印加されることで、対応するノズル24から紫外線硬化型インクを噴射させるようになっている。ここで、圧電素子59は、図1(a)、(b)に示した制御部60によって制御されるようになっている。
【0073】
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図4を参照して説明する。図4は、ヘッドユニットの概略構成を示す底面図である。なお、図4に示したX軸及びY軸は、図1に示したX軸及びY軸に一致している。
図4に示すようにヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下面に取り付けられたユニットプレート23と、ユニットプレート23の下面側に搭載された9個の噴射ヘッド20とを有し、さらにこれら9個の噴射ヘッド20のX軸方向における両側に、紫外線を照射する照射装置80をそれぞれ配設したものである。なお、図4では噴射ヘッド20を9個配設しているが、噴射ヘッド20の数についてはこれに限定されることなく、例えば15個配設した構成であってもよい。
【0074】
噴射ヘッド20は、ノズル基板25を下方に向けた状態で、保持部材(図示せず)によってユニットプレート23に固定されている。また、9個の噴射ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの噴射ヘッド20からなるヘッド組20Aを、3つ形成している。なお、各噴射ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が液滴噴射装置1に取り付けられた状態で、Y軸方向に沿って配列させられている。
【0075】
一つのヘッド組20Aを構成する3個の噴射ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う噴射ヘッド20の、一方の噴射ヘッド20の端のノズル24に対して、もう一方の噴射ヘッド20の端のノズル24が、1ノズルピッチずれて配置されている。このような構成のもとにヘッド組20Aが有する3個の噴射ヘッド20は、全てのノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、全てのノズル24がY軸方向に等ピッチで並ぶようになる。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの噴射ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成するノズル24から噴射される液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線に着弾するようになる。
【0076】
また、ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組20Aは、全てのノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、全てのノズル24がY軸方向に等ピッチで並ぶようになっている。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの噴射ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成するノズル24から噴射される液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線に着弾するようになっている。したがって、ヘッドユニット21が備える三つのヘッド組20Aにおける9個の噴射ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うことができる。
【0077】
照射装置80は、紫外線光源(図示せず)を備えて構成されたもので、紫外線光源を下方に向けた状態でサブキャリッジ28又はユニットプレート23に固定されている。照射装置80は、上記したように噴射ヘッド20のX軸方向における両側にそれぞれ配設されたものであり、これによって噴射ヘッド20から記録媒体10に向けて紫外線硬化型インクが噴射された直後に、記録媒体10に着弾した紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射できるようになっている。すなわち、噴射ヘッド20はX軸方向に走査(主走査)されつつ、紫外線硬化型インクを噴射する。したがって、ユニットプレート23がX軸方向に走査された際、移動方向に対して後側に位置する照射装置80から記録媒体10に向けて紫外線を照射することにより、記録媒体10上に着弾している紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射することができるようになっている。
【0078】
ここで、紫外線光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、紫外帯域で発光するLEDを用いることもできる。
【0079】
このような紫外線光源から照射される紫外線によって硬化する紫外線硬化型インクとしては、ビヒクル、光重合開始剤および顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合されたものが挙げられる。ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。したがって、インクを硬化させる目的で溶媒を揮発させることはない。
【0080】
ビヒクルとしては、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。より具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(プレポリマー)を例示でき、インクとしての粘度を調整する反応性希釈剤もこれらの材料を用いることができる。
【0081】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が広く用いられる。より具体的には、4−benzoyl−N,N,N−trimethyl benzene methaneannmonium chloride、2−hydroxy 3−(4−benzoyl−phenoxy)−N,N,N− trimethyl 1−propane annmonium chloride、4−benzoyl−N,N−dimethyl N−[2− (1−oxo−2−propenyloxy) ethyl] benzene methammonium bromide等、第4級アンモニウム塩型の水溶性有機物等を用いることができる。この種の光重合開始剤は、その組成に応じて、紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等が異なるので、インクとしての色等に応じて使い分けられる。
【0082】
重合禁止剤としては、ラジカル捕捉能力を有してラジカル重合を阻害する化合物であれば何れも使用できる。ただし、インクジェット式記録装置における噴射適性等を配慮すると、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類から選択された少なくとも1種類以上の化合物が好ましい。
【0083】
ハイドロキノン類としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等を例示できる。カテコール類としては、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等を例示できる。ヒンダードアミン類としては、テトラメチルピペリジニル基を有する化合物等を例示できる。
【0084】
また、フェノール類としては、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸アルキルエステル等を例示できる。フェノチアジン類としては、フェノチアジン等を例示できる。上記縮合芳香族環のキノン類としては、ナフトキノン等を例示できる。
【0085】
さらに、重合禁止剤は、カーボンブラックまたは表面に重合防止官能基を導入した無機・有機微粒子であってもよい。重合防止官能基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラメチルピペリジニル基、縮合芳香族環等を例示できる。
【0086】
なお、このような紫外線硬化型インクとしては、顔料や染料等の色材(色成分)を含むカラーインクが挙げられるが、アンダーコート、オーバーコートを行うためのクリアインクを挙げることもできる。また、色材を含むものの、オーバーコートを行うために用いられる白色インクや、黒色インクも挙げることができる。
【0087】
続いて、図5を参照して、検査部6について説明する。図5は、検査部6を含む模式図であり、図1の+Y方向から見た側面図である。
検査部6は、ノズル24のインク噴射状態を検査するものであり、具体的には、ノズル24からインクが噴射されないことによって発生するドット抜けを主として検出するものである。
そして、図5に示すように検査部6は、検査用噴射部61と、検査用スキャナー62(撮像部)とを備えている。
【0088】
検査用噴射部61は、噴射ヘッド20のノズル24から検査用にインクを噴射するためのものであり、吸着テーブル33aのX方向における一方の側に配置されている。
なお、検査用噴射部61は、例えば、表面がインクの噴射領域となるフレキシブルフィルムと、インクが噴射されたフレキシブルフィルムの領域を巻き取る巻取り装置と、インクが噴射されてないフレキシブルフィルムの領域を送り出す送出し装置とを備えている。 このフレキシブルフィルムは、露出領域(インクが噴射可能な領域)の幅が噴射ヘッド20の幅の数倍程度に設定され、露出領域の長さがヘッドユニット21と同程度に設定されている。
つまり、検査用噴射部61では、Y方向にずらされて配置された噴射ヘッド20の各々から噴射されるインクをノズル列24Aごとに直線状に配列することができ、さらに検査用噴射部61をX方向に変位させることで、全てのノズル24からインクを噴射する動作を複数回繰り返すことが可能に構成されている。
なお、フレキシブルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネイト(PC)、ポリプロピレン(PP)などからなるフレキシブルフィルムを用いることができる。
【0089】
また、検査用噴射部61は、図5に示すように、X方向に移動可能なスライド装置63によって、水平方向に移動可能とされている。
そして、本実施形態においてスライド装置63は、噴射ヘッド20の下方位置から検査用スキャナー62の下方位置まで検査用噴射部61を移動可能に構成されている。
【0090】
検査用スキャナー62は、検査用噴射部61よりもさらに吸着テーブル33aからX方向における一方の側に離間して配置されており、噴射ヘッド20(ヘッドユニット21)の移動可能範囲の外部領域に固定配置されている。
そして、検査用スキャナー62は、噴射ヘッド20の移動可能範囲の外部領域にて検査用噴射部62に噴射されたインクを撮像する。
【0091】
このように、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査用噴射部61が水平移動可能とされ、検査用スキャナー62が固定されている。
そして、噴射ヘッド20の下方に配置された検査用噴射部61に対して噴射ヘッド20からインクが噴射され、その後、検査用噴射部61を検査用スキャナー62の下方位置まで移動させて噴射されたインクが撮像される。
【0092】
図1に戻り、制御部60は、本実施形態の液滴噴射装置1の動作全体を制御するものである。例えば、制御部60は、X軸走査機構11を制御することでX軸方向の移動である主走査をなさせるとともに、Y軸走査機構42を制御することでY軸方向の移動である副走査をなさせるようになっている。さらに、このようなX軸走査機構11及びY軸走査機構42の制御による走査制御とともに、各走査時でのノズル24(ノズル列70)からの噴射制御をなすようになっている。つまり、各走査に対応して噴射を制御する、噴射制御部としての機能も有している。
【0093】
そして、本実施形態の液滴噴射装置1において制御部60は、噴射ヘッド20を主走査方向に繰り返し往復移動させながら記録媒体10に対してノズル24からインクを噴射させ、1回目の往移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行う。
【0094】
また、制御部60は、ノズル24からインクが噴射されるごとに噴射ヘッド20の下方における配置位置が変位される制御を行う。
本実施形態においては、1つの描画パターンを形成するにあたり、最初の1回目の往移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる。このため、図6に示すように、ドット抜けが検出されない場合には、描画パターンごとに検査用噴射部61の配置位置をX方向に変位させる。なお、この際の変位量は、後から噴射されるインクが、先に噴射されたインクに重ならない量に設定されている。
なお、ドット抜けが検出された場合には、後述するように再度検査噴射が行われるため、1つの描画パターンの描画中であっても、検査用噴射部61の配置位置をX方向に変位させる。
【0095】
また、制御部60は、検査用スキャナー62で取得された画像データに基づいて、ノズル24のドット抜けが存在しているかの判定を行い、ドット抜けが存在している場合には、当該ドット抜けの原因となったノズル24のインク噴射状態が異常であると判断する。
【0096】
このような構成の液滴噴射装置1によって記録媒体10に対しインクを噴射し、所望の画像を印刷するには、まず、制御部60により、X軸走査機構11におけるX軸駆動モーターやY軸走査機構42におけるY軸駆動モーターを駆動させ、噴射ヘッド20と吸着テーブル33a上の記録媒体10との相対的位置を逐次変化させる。また、このような走査制御と並行して、噴射ヘッド20の圧電素子59に駆動波形(駆動電圧)を印加して駆動させ、噴射ヘッド20の各ノズル列70から紫外線硬化型インクを記録媒体10に向けて噴射し、着弾させる。
【0097】
ここで、1つの描画パターンを形成する際の液滴噴射装置1の動作について、図7のフローチャートを参照してより詳細に説明する。
なお、本動作では、検査用噴射部61を噴射ヘッド20からインクが噴射可能な位置に配置し、この状態から描画(記録媒体10へのインク噴射)を行うものとする。
そして、図7に示すように、まず噴射ヘッド20の1回目の往移動の際に、検査用噴射部61に対してノズル24からインクを噴射する検査噴射を行う(ステップS1)。
その後、噴射ヘッド20の復移動及び2回目以降の往復移動を行う(ステップS2)のと並行して、検査用噴射部61の移動と検査用スキャナー62による撮像が行われる(ステップS3)。
そして、ドット抜けが検出されなかった場合(ステップS4)には、描画を継続する(ステップS5)。一方、ドット抜けが検出された場合(ステップS4)には、描画を停止してからメンテナンス部5を用いて噴射ヘッド20のクリーニング(ステップS6)を行い、検査用噴射部61を噴射ヘッド20からインクが噴射可能な位置に配置した後、再度検査噴射(ステップS7)、検査用スキャナー62による撮像(ステップS8)及びドット抜けの判定(ステップS9)が行われる。
【0098】
このような本実施形態の液滴噴射装置1(液滴噴射方法)においては、検査用スキャナー62が噴射ヘッド20の移動可能範囲の外部領域に配置されており、また検査用噴射部61が移動可能に構成されている。
このため、噴射ヘッド20の下方にて検査用噴射部61にインクを噴射した後、検査用噴射部61を移動させて検査用スキャナー62で噴射されたインクを撮像することが可能となり、噴射ヘッド20の移動可能範囲で検査用スキャナー62を移動させる必要がなくなる。
したがって、本実施形態の液滴噴射装置1によれば、ノズル噴射状態の検査の際に噴射ヘッド20を移動させることが可能となり、記録媒体10に対するインクの噴射とノズル噴射状態の検査とを並行して行うことが可能となる。
よって、本実施形態の液滴噴射装置1によれば、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【0099】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、検査用噴射部61が水平移動可能とされ、検査用スキャナー62が固定されている。
このため、検査用噴射部61を水平移動させるのみで検査用スキャナー62での撮像が可能となる。
つまり、検査用噴射部61の移動を1軸のみとすることができ、検査部の移動機構(本実施形態においてスライド装置63)を簡素化することができる。
【0100】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、噴射ヘッド20を主走査方向に繰り返し往復移動させながら記録媒体10に対してノズル24からインクを噴射させ、1回目の往移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行っている。
このため、本実施形態の液滴噴射装置1によれば、1つの描画パターンを印刷するにあたり、最も早いタイミングでインク噴射状態を検査することができる。
したがって、インク噴射状態に異常が存在する場合には、最も早いタイミングで記録媒体10に対するインクの噴射を停止することができ、インクの消費量を低減させることが可能となる。
【0101】
また、本実施形態の液滴噴射装置1においては、ノズル24からインクが噴射されるごとに検査用噴射部61の噴射ヘッド20の下方における配置位置が変位される。
このため、ビットマップデータを変更することなく、検査用噴射部61に対するインクの噴射位置を変位させることができ、ビットマップデータを変更することによって生じるランニングコスト増大を防止することが可能となる。
【0102】
なお、本実施形態においては、検査用噴射部61が水平移動可能とされ、検査用スキャナー62が固定されている構成を採用した。
しかしながら、図8に示すように、検査用噴射部61が垂直移動可能とされ、検査用スキャナー62が固定されている構成を採用することもできる。また、図9に示すように、検査用噴射部61が垂直移動及び水平移動可能とされ、検査用スキャナー62が水平移動可能な構成を採用することも可能である。
つまり、検査用噴射部61が少なくとも垂直移動可能とされ、検査用噴射部61あるいは検査用スキャナー62のいずれか一方が水平移動可能とされている構成を採用することも可能である。
このような構成を採用することによって、図8及び図9に示すように、検査用スキャナー62を鉛直方向にずらすことによって噴射ヘッド20の移動可能領域の外部に配置することができる。このため、平面視における液滴噴射装置1の大きさを大型化させることなく、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【0103】
また、本実施形態においては、検査用噴射部61が水平移動可能とされ、検査用スキャナー62が検査用噴射部61よりもさらに吸着テーブル33aからX方向における一方の側に離間して配置されて固定されている構成を採用した。
しかしながら、図10に示すように、検査用スキャナー62が検査用噴射部61のY軸方向における一方の側に離間して配置されて固定されている構成を採用することもできる。
【0104】
もしくは、図11に示すように、フレキシブルフィルムの領域を巻き取る巻取り装置64と媒体送りローラー65との間にアイドラローラー66を介在させ、フレキシブルフィルムがZ軸方向に搬送される領域を有する構成とし、フレキシブルフィルムがZ軸方向に搬送される領域に検査用スキャナー62を配置する構成としても良い。
この場合、検査用スキャナー62は固定して配置しても良いし、Z軸方向に移動可能に配置しても良い。Z軸方向に移動可能に配置した場合は、検査する領域が、媒体送りローラーとアイドラローラーとの間に位置するようにフレキシブルフィルムを送り、その後に検査用スキャナー62をZ軸方向に移動して、検査用スキャナー62による読み取りを行うようにする。このような構成を採用することによって、ノズル噴射状態の検査の際に噴射ヘッド20を移動させることが可能となり、記録媒体10に対するインクの噴射とノズル噴射状態の検査とを並行して行うことが可能となる。このため、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【0105】
また、本実施形態においては、検査用噴射部61がX軸方向に水平移動可能とされ、検査用スキャナー62が検査用噴射部61よりもさらに吸着テーブル33aからX方向における一方の側に離間して配置されて固定されている構成を採用した。
しかしながら、図12に示すように、Y軸方向移動装置67によって検査用噴射部61をY軸方向に水平移動可能な構成とし、検査用スキャナー62が検査用噴射部61のY軸方向における一方の側に離間して配置されて固定されている構成を採用することもできる。このような構成を採用することによって、ノズル噴射状態の検査の際に噴射ヘッド20を移動させることが可能となり、記録媒体10に対するインクの噴射とノズル噴射状態の検査とを並行して行うことが可能となる。このため、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【0106】
また、本実施形態においては、1つの描画パターンを形成するにあたり、噴射ヘッド20の1回目の往移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行う構成を採用した。
しかしながら、連続する往移動と復移動との際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行ったり、複数の往復移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行ったりすることも可能である。
【0107】
例えば、連続する往移動と復移動との際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行う場合には、検査用噴射部61に対して2回インクが噴射されることとなり、1つのノズル24に対するインク噴射状態を2箇所に噴射されたインクから判断することができる。
したがって、検査用噴射部61に対して異物が付着する等に起因するインク噴射状態の誤検出を抑止し、より正確にインク噴射状態を検出することが可能となる。
【0108】
例えば、複数の往復移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行う場合には、検査用噴射部61に対して複数回インクが噴射されることとなり、1つのノズル24に対するインク噴射状態を複数箇所に噴射されたインクから判断することができる。
したがって、検査用噴射部61に対して異物が付着する等に起因するインク噴射状態の誤検出を抑止し、より正確にインク噴射状態を検出することが可能となる。
【0109】
また、1つの描画パターンを形成するにあたり、噴射ヘッド20の1回目の往移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行う構成に換えて、1つの描画パターンを形成する前に、噴射ヘッド20を移動させ、検査用噴射部61に対して紫外線硬化型インクの噴射を行い、インク噴射状態の検査を行いノズル抜けが無いことを確認してから印刷を行うように構成しても良い。
ここでドット抜けが検出された場合には、メンテナンス部5を用いて噴射ヘッド20のクリーニングを行った後に、描画パターンの形成を行うようにする。このようにすれば、本実施形態に比べて印刷速度は低下するものの、ノズル抜けをおこした噴射ヘッド20で描画パターンの形成を行い、記録媒体10を無駄にしてしまうことを防ぐことが出来る。
【0110】
また、1つの描画パターンを形成する前にインク噴射状態の検査を行う場合において、次の1つの描画パターンを形成する前の記録媒体10の送り時間の間に検査が完了するように、前の1つの描画パターンを形成する際の噴射ヘッド20の移動の際に検査用噴射部61にノズル24からインクを噴射させる制御を行う構成としても良い。
このようにすれば、次の1つの描画パターンを形成する前の記録媒体10の送り時間の間に検査を完了することが出来るため、本実施形態の印刷時間よりも印刷時間が増加するのを防ぎつつ、1つの描画パターンを形成する前にインク噴射状態の検査を行うことが可能となる。
【0111】
なお、記録媒体10に対して先の描画パターン(第1の描画パターン)を形成した後に、記録媒体10を供給排出機構部3によって副走査方向(被噴射物の送り方向)に搬送し、この搬送の後に記録媒体10に対して後の描画パターン(第2の描画パターン)を形成する場合には、後の描画パターンの形成が開始される前までにインク噴射状態の検査が完了するように先の描画パターンを記録媒体10へ形成するために噴射ヘッド20を主走査方向に繰り返し往復移動させる際のいずれかの移動の際に、検査用噴射部61にノズル24から紫外線硬化型インクを噴射させる制御を行うことが好ましい。
これによって、後の描画パターンを形成する前にインク噴射状態の検査を行うことができ、後の描画パターンの印刷品質を向上させることが可能となる。
【0112】
また、本実施形態においては、ドット抜けが検出された場合には、直ちに描画を停止してからメンテナンス部5を用いて噴射ヘッド20のクリーニングを行う制御を行った。
しかしながら、ドット抜けが検出された場合に、1つの描画パターンの描画が完了してからノズル24のクリーニングを行う制御を行ったり、異常が検出されたノズル24の使用頻度を確認して当該使用頻度に応じてノズル24に対するクリーニングの開始タイミングを決定する制御を行ったりすることもできる。
【0113】
例えば、ドット抜けが検出された際に、1つの描画パターンの描画が完了してからノズル24のクリーニングを行う制御を行う場合には、ノズル噴射状態の異常が検出された場合であっても、このタイミングで描画されている描画パターンの描画が完了するまでは記録媒体10へのインクの噴射を行う。
ノズル噴射状態の異常が、許容される程度の印刷品質の低下しか引き起こしていない可能性もある。このため、このような構成を採用する場合には、不良と判定する必要ない描画パターンを不良と判定してしまう可能性を低下させ、歩留まりの向上が図れる可能性がある。
【0114】
例えば、ドット抜けが検出された際に、異常が検出されたノズル24の使用頻度を確認して当該使用頻度に応じてノズル24に対するクリーニングの開始タイミングを決定する制御を行う場合には、その異常が検出されたノズル24の使用頻度によっては、クリーニングの開始タイミングを遅らせることが可能となる。
異常が検出されたノズル24の使用頻度が極めて低いような場合には、実質的に記録媒体10に描画される描画パターンの品質への影響はほとんど存在しないことが考えられる。このため、このような構成を採用する場合には、クリーニングの開始タイミングを遅らせて待機時間が発生することを防止し、印刷速度を向上させることが可能となる。
【0115】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0116】
図13は、本発明における液滴噴射装置の第2の実施形態の概略構成を示す模式図であって、液滴噴射装置1Aの平面図である。
そして、図10に示すように、本実施形態の液滴噴射装置1Aは、記録媒体10の縁部に対してマーキングを行うマーキング部81を備えている。
【0117】
マーキング部81は、巻取リール32の近傍に配置されており、検査部6にてノズル24のインク噴射状態に異常が検出された際に、異常が検出されたノズル24からインクの噴射が行われた領域を示すマーキングを当該領域に対応する記録媒体10の縁部に行う。
なお、このマーキング部81は、描画パターンへの影響を避けるために、記録媒体10の描画パターンの形成領域の外側(すなわち縁部)に対してマーキングを行う。マーキングは該当する領域の全域にわたって行っても良いし、該当する領域の開始点と終了点に対して行うようにしても良い。
【0118】
このような本実施形態の液滴噴射装置1Aによれば、インク噴射状態が異常とされたノズル24からインクが噴射された領域を示すマーキングがなされるため、後工程において、不良の可能性が高い領域を予め知ることができ、例えば当該領域について重点的に検査を行うことによって正確に印刷品質を判断することが可能となる。
【0119】
なお、本実施形態の液滴噴射装置1Aは、記録媒体10の縁部に対してマーキングを行うマーキング部81を備える構成としたが、異常が検出されていないノズル24を用いて、異常が検出されたノズル24からインクの噴射が行われた領域を示すマーキングを当該領域に対応する記録媒体10の縁部に対して行うよう噴射ヘッド20を制御しても良い。このようにしても、後工程において、不良の可能性が高い領域を予め知ることができ、例えば当該領域について重点的に検査を行うことによって正確に印刷品質を判断することが可能となる。
【0120】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0121】
図14は、本発明における液滴噴射装置の第3の実施形態が備える検査用噴射部61Aと、検査用スキャナー62Aとを模式的に示す平面図である。
この図に示すように、本実施形態の液滴噴射装置が備える検査用噴射部61A及び検査用スキャナー62Aは、その長さがヘッドユニット21の半分とされている。
【0122】
このような構成を採用する場合であっても、本実施形態の液滴噴射装置においては、検査用噴射部61Aが移動可能とされている。このため、検査用噴射部61Aが移動することによって、全てのノズル24から検査用噴射部61Aに対してインクを噴射することができ、その噴射されたインクを検査用スキャナー61Bで撮像することができる。
【0123】
そして、このような構成を採用する本実施形態の液滴噴射装置によれば、検査用スキャナー61Bの長さがヘッドユニット21よりも短く設定されており、検査用スキャナーをヘッドユニット21と同程度の長さとする場合と比較して、装置コストを削減することが可能となる。
【0124】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0125】
例えば、上記実施形態では、本発明の液滴噴射装置を、連続した長尺な記録媒体に対して印刷を行う印刷装置に適用したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば対象とする被噴射物としては長尺なものでなく矩形状の基板とすることもできる。また、このような基板としては、前述した樹脂以外に、ガラス基板を対象とすることもできる。
【0126】
また、上記実施形態では、照射装置80は、サブキャリッジ28又はユニットプレート23に固定され、X軸走査機構11によってヘッドユニット21をX軸方向に走査させるシリアル型の印刷装置に適用したが、本発明はこれに限定されることなく、ヘッドキャリッジの長さが記録媒体10の印刷領域の幅方向の長さ以上であるヘッドキャリッジ、いわゆるラインヘッドを採用してもよい。また、記録媒体10の印刷領域の幅方向の長さ以上の長さを有する照射装置、いわゆる、ライン状の照射装置を採用してもよい。
さらには、本発明は、照射装置80を備えない液滴噴射装置に適用することも可能である。その場合には、噴射するインクは、紫外線硬化型のインクである必要はない。
【0127】
また、上記実施形態では、本発明を主に工業的な用途の液滴噴射装置に適用した場合について説明したが、民生用途のプリンターに本発明を適用することもできる。
【0128】
また、上記実施形態では、検査用噴射部の全体が移動可能とされた構成について説明した。
しかしながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えば検査用噴射部のフレキシブルフィルムのみが移動(走行)する構成を採用しても良い。このような場合であっても、インクが噴射された領域を移動させることができ、当該領域を検査用カメラまで移動することができるのであれば、上記実施形態と同様に、印刷速度の低下を抑制しつつ印刷品質を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0129】
1,1A……液滴噴射装置、10……被噴射物、3……供給排出機構部、6……検査部、61,61A……検査用噴射部、62,62A……検査用スキャナー(撮像部)、20……噴射ヘッド、21……ヘッドユニット、23……ノズル、60……制御部、81……マーキング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被噴射物に対してインクを噴射するノズルを有すると共に前記被噴射物に対して移動可能とされる噴射ヘッドと、前記ノズルのインク噴射状態を検査する検査部とを備える液滴噴射装置であって、
前記検査部は、
移動可能とされると共に前記噴射ヘッドの前記ノズルから前記インクが噴射される検査用噴射部と、
前記噴射ヘッドの移動可能範囲の外部領域に配置されると共に前記噴射ヘッドの移動可能範囲の外部領域にて前記検査用噴射部に噴射された前記インクを撮像する撮像部と
を備えることを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項2】
前記検査用噴射部が水平移動可能とされ、前記撮像部が固定されていることを特徴とする請求項1記載の液滴噴射装置。
【請求項3】
前記検査用噴射部が少なくとも垂直移動可能とされ、前記検査用噴射部あるいは前記撮像部のいずれか一方が水平移動可能とされていることを特徴とする請求項1記載の液滴噴射装置。
【請求項4】
前記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら前記被噴射物に対して前記ノズルから前記インクを噴射させ、1回目の往移動の際に前記検査用噴射部に前記ノズルから前記インクを噴射させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項5】
前記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら前記被噴射物に対して前記ノズルから前記インクを噴射させ、連続する往移動と復移動との際に前記検査用噴射部に前記ノズルから前記インクを噴射させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項6】
前記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させながら前記被噴射物に対して前記ノズルから前記インクを噴射させ、複数の往復移動の際に前記検査用噴射部に前記ノズルから前記インクを噴射させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項7】
前記被噴射物を前記被噴射物の送り方向へ搬送する供給排出機構部を有し、
前記被噴射物に対して第1の描画パターンを形成した後に、前記供給排出機構部によって前記被噴射物を前記被噴射物の送り方向へ搬送し、該搬送の後に、前記被噴射物に対して第2の描画パターンを形成する際に、
前記第2の描画パターンの形成が開始される前までに前記検査が完了するように、前記第1の描画パターンを前記被噴射物へ形成するために前記噴射ヘッドを主走査方向に繰り返し往復移動させる際のいずれかの移動の際に、前記検査用噴射部に前記ノズルから前記インクを噴射させる制御を行うことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項8】
前記検査部にて前記ノズルのインク噴射状態に異常が検出された際に、異常が検出されたノズルから前記インクの噴射が行われた領域を示すマーキングを行うマーキング部を備えることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項9】
前記検査部にて前記ノズルのインク噴射状態に異常が検出された際に、前記インクの噴射によって描画されている1つのパターンの描画が完了してから前記ノズルのクリーニングを行う制御を行うことを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項10】
前記検査部にて前記ノズルのインク噴射状態に異常が検出された際に、異常が検出されたノズルの使用頻度を確認し、当該使用頻度に応じて前記ノズルに対するクリーニングの開始タイミングを決定する制御を行うことを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項11】
前記撮像部の長さが、複数の前記噴射ヘッドが備えられるヘッドユニットよりも短く設定されていることを特徴とする請求項1〜10いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項12】
前記ノズルから前記インクが噴射されるごとに前記検査用噴射部の前記噴射ヘッドの下方における配置位置が変位される制御を行うことを特徴とする請求項1〜11いずれかに記載の液滴噴射装置。
【請求項13】
被噴射物に対して移動可能とされる噴射ヘッドに形成されるノズルから前記被噴射物に対してインクを噴射する液滴噴射方法であって、
前記噴射ヘッドの前記ノズルから検査用噴射部に前記インクを噴射し、前記検査用噴射部に噴射された前記インクを前記検査用噴射部を移動させて前記噴射ヘッドの移動可能範囲の外部領域で撮像することによって前記ノズルのインク噴射状態を検査することを特徴とする液滴噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−223953(P2012−223953A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92744(P2011−92744)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】