液滴形成器具、液滴形成方法および核酸増幅方法
【課題】基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を同時かつ簡易に形成すること。
【解決手段】液滴形成器具1は、分注細管部材11と液滴形成部材13とを備える。分注細管部材11は、上面に注入口111が形成される。また、下面には、基板3を連結したときに各スポット31と対応する位置にそれぞれ分注口113が形成され、注入口111から注入された核酸増幅用溶液を各分注口113に分注する。液滴形成部材13は、基板3を気密状態で着脱自在に連結し、分注細管部材11の各分注口113から分注された核酸増幅用溶液を案内し、隣接するスポット31間が仕切られた状態で基板3上面の各スポット31に液滴を形成する。
【解決手段】液滴形成器具1は、分注細管部材11と液滴形成部材13とを備える。分注細管部材11は、上面に注入口111が形成される。また、下面には、基板3を連結したときに各スポット31と対応する位置にそれぞれ分注口113が形成され、注入口111から注入された核酸増幅用溶液を各分注口113に分注する。液滴形成部材13は、基板3を気密状態で着脱自在に連結し、分注細管部材11の各分注口113から分注された核酸増幅用溶液を案内し、隣接するスポット31間が仕切られた状態で基板3上面の各スポット31に液滴を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具、この液滴形成器具を用いた液滴形成方法および核酸増幅方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医学分野において、DNAやRNAを活用した診断が注目を集めている。また、農業分野では、品種の判定や遺伝子組み換え作物の判定にDNA鑑定が活用されている。このような診断や品種の判定では、血液や組織、細胞等の生体試料や作物試料中に検出対象のDNAまたはRNAが存在するか否か、あるいはその塩基配列の変異等の判別を行うが、試料中に含まれる核酸(DNA/RNA)は微量である場合が多い。このため、事前に試料を増幅処理し、例えばPCR法によって検出対象の核酸をPCR増幅している。検出対象の核酸がRNAの場合には、試料を高温下で熱変性させ、逆転写酵素を用いてDNAに逆転写した後で、PCR増幅している。
【0003】
また、試料の微量化に伴い、増幅処理を基板上で行う方法が提案されている。例えば、基板上面の複数の液滴形成位置に微細な加工を施してスポットを形成し、各スポットに微量の試料や増幅用の試薬を分注して増幅処理するようにしたものが知られている。また、基板に核酸の抽出や増幅、電気泳動による検出等を行う機能部を設け、この基板上で一連の工程を行えるようにしたものも知られている(特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−95134号公報
【特許文献2】特許第3545158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板上面の複数の液滴形成位置にスポットを形成し、各スポットに試料や増幅用の試薬を分注して増幅処理する場合、各スポットそれぞれに対して個別に手作業で分注を行わなければならず、手間であった。また、多連のピペットを用いれば、複数のスポットに同時に試料や増幅用の試薬を分注することができるが、各スポットは密集して形成されており、分注時に隣接するスポットとの間で試料や試薬が混合してしまい、コンタミネーションが生じるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたものであって、基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を同時かつ確実に形成することができる液滴形成器具、液滴形成方法および核酸増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる液滴形成器具は、核酸分析の増幅工程で用いられる基板を気密状態で着脱自在に連結し、前記基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記流路は同一径で形成され、前記注入口と前記各開口との間の流路長がそれぞれ等しくなるように形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記流路は、前記注入口から注入される前記核酸増幅用溶液が前記各開口に同量ずつ供給されるように、前記注入口と開口との間の流路長に応じた径で形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記基板の各液滴形成位置には、親水性領域と撥水性領域のパターンによって形成された液滴形成部が形成されており、前記各開口は、前記液滴形成部と同じまたは前記液滴形成部より小さな径で形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記各開口の径は、0.05mmから5mmの範囲で形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記液滴形成部材は、シリコンゴム、フッ素ゴムまたはアクリルゴムで形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる液滴形成方法は、核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具を用いた液滴形成方法であって、前記液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる液滴形成方法は、上記の発明において、前記液滴形成工程の後、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記基板を前記液滴形成器具が連結された状態で増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記検体分注工程は、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ同一の検体を分注することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体および核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記検体を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体の液滴を形成するとともに、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体と混合された核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記検体と混合された核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体と混合された核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記液滴形成器具は、前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液、前記検体または前記検体と混合された核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されており、前記液滴形成工程の後、前記液滴形成部材から前記分注細管部材を分離する分離工程を含み、前記増幅工程では、前記基板を前記液滴形成部材が連結された状態で増幅装置に設置することを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記液滴形成工程の後であって前記分離工程の前に、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記分離工程の後、前記分注細管部材が分離された前記液滴形成部材の分離面を密封する密封工程を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程と、前記基板から前記液滴形成器具を取り外す取外工程と、前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、注入口から核酸増幅用溶液を注入することによって基板の各液滴形成位置と対応する位置に形成された各開口に核酸増幅用溶液を供給し、基板の各液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成することができる。またこのとき、基板を気密に連結した状態で各開口に核酸増幅用溶液を供給し、基板の各液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成することができるので、隣接する液滴形成位置にそれぞれ分注された核酸増幅用溶液が混合してしまうといった事態を防止できる。したがって、基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を同時かつ確実に形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における液滴形成器具1の構成を説明する模式図である。この液滴形成器具1は、分注細管部材11と、液滴形成部材13とを備え、基板3の上面に着脱自在に取り付けられて基板3上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する。また、液滴形成器具1は、蓋部材15を備えている。この蓋部材15は、分注細管部材11および液滴形成部材13を用いて核酸増幅用溶液の液滴を形成した後の増幅処理時に用いられるものであり、図1では破線で示している。ここで、基板3は、大きさが約750×250mmのスライドガラスで構成され、その上面の複数の液滴形成位置に液滴形成部である複数のスポット31が配列されて形成される。各スポット31は、1.5mm〜2.0mm程度の径を有し、例えば親水−撥水パターンによって形成される。図2は、基板3上面のスポット31の構成を説明する図である。図2に示すように、基板3上面には、親水性領域331,335と撥水性領域333,337とが交互に形成されており、核酸増幅用溶液L1が供給される親水性領域331および核酸増幅用溶液L1を被膜するオイルL3が供給される親水性領域335と、これら親水性領域331,335の間に介在する撥水性領域333とによってスポット31が形成される。
【0027】
分注細管部材11は、図1に示すように、上面に注入口111が形成され、下面に複数の分注口113が形成されて構成されている。この分注細管部材11は、例えばガラス基板やプラスチック基板等で形成される。ガラス基板は、公知のガラス材料を用いて形成することができる。また、プラスチック基板の材料としては、例えばポリプロピレンやアクリル、ポリカーボネート等を用いることができる。
【0028】
注入口111には、例えばシリンジが接続され、このシリンジによって核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が順次注入される。図3は、注入口111に接続されるシリンジ5の構成を説明する図である。図3に示すように、シリンジ5は、先端に吐出口52が設けられ、内部に核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が充填されたシリンダ51と、シリンダ51の後端にスライド自在に挿入されるピストン53とで構成される。シリンダ51先端の吐出口52は、分注細管部材11の注入口111と接続され、ピストン53を押圧することによって注入口111から核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が注入される。ここで、核酸増幅用溶液L1は、例えばプライマーや核酸の伸長反応のための基質であるdNTP、増幅用酵素、酵素を活性化させるためのマグネシウム塩等を緩衝液中に添加したものである。また、シリンジ5内に充填されるオイルL3は、実際に注入口111から注入する量よりも多く充填される。これは、核酸増幅用溶液L1やオイルL3を各分注口113に押し出して所定量ずつ分注し、基板3上の各スポット31にこれらを供給するためであり、シリンダ51にはオイルL3の注入量を規定するための注入量マーカMKが付されている。このシリンジ5によって核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を注入する際には、シリンダ51内に残存するオイルL3の上面が注入量マーカMKの位置と一致するまでピストン53を押圧して核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を順次注入する。
【0029】
一方、分注細管部材11の下面に形成された各分注口113は、この基板3上面の各スポット31と対応する位置にそれぞれ形成される。図4は、分注細管部材11の内部構成を説明する図である。また、図5は、分注細管部材11の側面図である。図4に示すように、分注細管部材11の内部には、注入口111と各分注口113との間をそれぞれ接続する流路112が形成されている。この流路112は、注入口111と各分注口113との間の流路長がそれぞれ等しくなるように、段階的に分流されて形成される。これにより、図5に示すように、各分注口113からそれぞれほぼ同量の液体L(具体的には核酸増幅用溶液L1およびオイルL3)を分注することが可能である。
【0030】
液滴形成部材13は、基板3とほぼ同様の大きさに形成された平面部131と、この平面部131の下面に一体形成された複数の筒状部133とを備える。この液滴形成部材13の材料としては、基板3を気密状態で着脱自在に連結可能であり、耐熱性や耐油性を有する例えばシリコンゴムやフッ素ゴム、アクリルゴム等を用いることができる。図6は、液滴形成部材13の側面図であり、図7は液滴形成部材13の下面図である。図6に示すように、平面部131には、上下方向に貫通する複数の貫通孔132が形成されている。各貫通孔132は、基板3上面の各スポット31と対向する位置に形成され、スポット31と同程度の径を有する。一方、図7に示すように、各筒状部133は、その内径が貫通孔132と同程度の径に形成され、それぞれ各貫通孔132の下端開口に設けられる。液滴形成部材13は、この貫通孔132および筒状部133によって分注細管部材11の各分注口113から同量ずつ分注された核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を案内し、隣接するスポット31間が仕切られた状態で基板3上面の各スポット31に液滴を形成する。
【0031】
蓋部材15は、液滴形成部材13の平面部131上面に形成された各貫通孔132の上端開口を密封するためのものであり、分注細管部材11の注入口111から核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を注入して基板3上面の各スポット31に分注した後、分注細管部材11を分離した液滴形成部材13の平面部131上面に装着される。例えば、基板3上面の全域を被覆可能なサイズに形成され、平面部131上面をシールするシール部材で形成される。あるいは、液滴形成部材13の平面部131上面に装着されたときに、各貫通孔132の上端開口とそれぞれ対向する位置に、この貫通孔132の上端開口と嵌合する凸部が形成された板状の部材を蓋部材15としてもよい。材料としては、例えばシリコンゴムやフッ素ゴム、アクリルゴムといった液滴形成部と同一の材料を用いることができる。
【0032】
次に、液滴形成器具1を用いた核酸増幅用溶液L1およびオイルL3の分注手順について、図8〜図11を参照して説明する。なお、液滴形成器具1を用いた核酸増幅用溶液L1およびオイルL3の分注に先立って、基板3上面の各スポット31に、例えば血液検体から作成したDNA試料またはRNA試料等の核酸試料を所定量ずつ分注し、乾燥させてはり付けておく。各スポット31に分注する核酸試料は、同一の検体から作成したものであってもよいし、異なる検体から作成したものであってもよい。
【0033】
先ず、図8に示すように、基板3上面に液滴形成部材13を対向配置し、各筒状部133の下端開口と基板3上面の各スポット31との間がそれぞれ連通するようにこれらを連結するとともに、液滴形成部材13の平面部131上面に分注細管部材11を対向配置し、各貫通孔132の上端開口と分注細管部材11下面の各分注口113との間がそれぞれ連通するようにこれらを連結する。また、分注細管部材11の注入口111に、図3に示して説明したように核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が充填されたシリンジ5を接続する。
【0034】
続いて、シリンジ5のピストン53を押圧し、図9に示すように、分注細管部材11の注入口111から先ず核酸増幅用溶液L1を注入する。これにより、注入された核酸増幅用溶液L1が分注細管部材11によって各分注口113から所定量ずつ分注され、分注された核酸増幅用溶液L1が液滴形成部材13の平面部131に形成された各貫通孔132およびこの貫通孔132の下端開口と連通する筒状部133に案内されて基板3上面の各スポット31に液滴を形成する。続いて、図10に示すように、注入口111からオイルL3を注入する。これにより、注入されたオイルL3が分注細管部材11によって各分注口113から所定量ずつ分注され、分注されたオイルL3が液滴形成部材13を構成する貫通孔132および筒状部133によって案内されて基板3上面の各スポット31に形成された核酸増幅用溶液L1の液滴を被膜する。
【0035】
そして、図11に示すように、液滴形成部材13の平面部131上面の分注細管部材11を分離するとともに、蓋部材15を装着して平面部131上面に露出した貫通孔132の上端開口を密封し、増幅装置であるPCR増幅装置に設置して増幅処理を行う。ここで、PCR増幅装置は、PCR法による核酸試料の増幅を行う装置であり、例えば基板3上の温度制御が可能なスライドサイクラー等を用いることができる。PCR法は、核酸試料中に含まれるDNAやRNAのうち、所定の塩基配列を有するDNAやRNAの一部(特定部分)を繰り返し合成・増幅する手法であり、高温下での熱変性と低温下でのアニーリングを繰り返し行うことによって、核酸中の特定部分を合成・増幅させる。
【0036】
増幅処理後、液滴形成部材13は廃棄され、分注細管部材11は洗浄されて再利用される。このとき、再利用時に異なる組成の核酸増幅用溶液を用いる場合等、必要に応じてオートクレーブ滅菌(高温高圧蒸気滅菌)による消毒を行うこととしてもよい。
【0037】
(実験例1)
事前に、核酸試料として、6人の被検者からそれぞれ採取した2ngの血液検体をもとに2ng/ulのDNA試料を作成する。また、核酸増幅用溶液を、例えば次のようにして調整する。すなわち、一の塩基配列を有する第1のプライマーおよび一の塩基配列とは異なる他の塩基配列を有する第2のプライマーを、それぞれその濃度が0.25Mとなるように、dNTPの濃度が0.2mMとなるように緩衝液と混合し、混合溶液を50ul作成する。そして、この混合溶液に例えばTaqポリメラーゼを1.25units添加して核酸増幅用溶液を調整する。
【0038】
先ず、基板3上の各スポット31にDNA試料を1ulずつ手作業で分注する。続いて、この基板3を例えば37℃に温度制御されたPCR増幅装置に設置し、DNA試料を乾燥させる。なお、室温で乾燥させることとしても構わない。DNA試料を乾燥させたならば、基板3上面に液滴形成部材13を連結するとともに、液滴形成部材13の平面部131上面に分注細管部材11を連結し、核酸増幅用溶液およびオイルを順番に分注して基板3上面の各スポット31に核酸増幅用溶液の液滴を形成してオイルで被膜する。そして、PCR増幅装置に設置して基板3上面の各スポット31上に貼り付けられたDNA試料の増幅処理を行う。このPCR増幅の反応条件は、例えば、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で30秒間を1サイクルとして30サイクル行う。
【0039】
そして、増幅処理を終えた基板3上面の各スポット31のDNA増幅液を被検体毎に回収し、得られた6人の被検体毎のDNA増幅液をマーカー試料とともに電気泳動させ、DNAをサイズ毎に分離することによってDNA増幅液を分析する。図12は、分析結果を示す図である。図12に示す分析結果では、各被検体のバンドB11〜B16は、それぞれマーカーM10の200(bp)のバンド位置に近傍に分離されている。
【0040】
(実験例2)
事前に、核酸試料として、ある被検者から採取した血液検体をもとに、2ng/ulのDNA試料を基板3上での増幅用と従来のマイクロチューブ内での増幅用にそれぞれ作成する。また、核酸増幅用溶液についても同様に、実験例1と同様にして基板3上での増幅用と従来のマイクロチューブ内での増幅用にそれぞれ調整する。
【0041】
そして、基板3上の各スポット31に基板3上での増幅用に作成したDNA試料を分注して貼り付け、液滴形成器具1を用いて各スポット31に基板3上での増幅用に作成した核酸増幅用溶液の液滴を形成し、PCR増幅装置に設置して増幅処理を行う。また、従来のマイクロチューブに、このマイクロチューブ内での増幅用に作成したDNA試料および核酸増幅用溶液を収容して混合し、このマイクロチューブを設置可能な例えばサーマルサイクラー等のPCR増幅装置に設置して増幅処理する。増幅処理は同一の反応条件で行い、例えば、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で30秒間を1サイクルとして30サイクル行う。
【0042】
そして、増幅処理を終えた基板3上面の各スポット31のDNA増幅液を回収し、得られたDNA増幅液およびマイクロチューブ内のDNA増幅液をマーカー試料とともに電気泳動させ、DNAをサイズ毎に分離することによってDNA増幅液を分析する。図13は、分析結果を示す図である。図13に示す分析結果では、各DNA増幅液のバンドB21,B23は、マーカーM20に対してそれぞれほぼ同一のバンド位置に分離されているが、マイクロチューブ内のDNA増幅液のバンドB23はその濃さ(太さ)にムラがある。これに対し、基板3上で増幅させたDNA増幅液のバンドB21はその濃さ(太さ)が均一に得られ、複数のスポット31に分散させて増幅処理を行った場合の方が、1つのマイクロチューブ内で増幅処理を行った場合よりも濃くはっきりとバンドが検出される。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、分注細管部材11によって各分注口113から核酸増幅用溶液を同量ずつ分注するとともに、核酸増幅用溶液を液滴形成部材13によって基板3上面の各スポット31に供給し、その液滴を形成することができる。またこのとき、液滴形成部材13は基板3を気密状態で連結しており、基板3上面の隣接するスポット31間が仕切られた状態で核酸増幅用溶液を供給することができるので、隣接するスポット31間でのコンタミネーションを防止できる。したがって、基板3上面の複数のスポット31に核酸増幅用溶液の液滴を同時かつ確実に形成することができ、核酸試料が微量であっても増幅処理が可能である。また、基板3としてスライドガラスを加工して用いることができるので、核酸試料として細胞等を用いる場合には、顕微鏡下で細胞の観察を行いながら各スポット31に核酸試料を確実に固定することが可能である。
【0044】
なお、上記した実施の形態では、分注細管部材11の内部に段階的に分流された流路が形成される場合について説明したが、注入口と各分注口との間をそれぞれ個別に接続する流路を形成することとしてもよい。例えば、分注口および流路を、注入口との距離が遠い分注口およびこの分注口までの流路ほど大きい径で形成することとしてもよい。このとき、各分注口およびこの分注口までの流路の径を、0.05mm〜5mmの範囲で形成すると好ましい。このように構成した場合も上記した実施の形態と同様に、各分注口からそれぞれほぼ同量の核酸増幅用溶液およびオイルを分注することができる。
【0045】
また、液滴形成部材13の構成は、上記した実施の形態の構成に限定されるものではない。図14は、液滴形成部材13の構成の変形例を示す図である。図14に示すように、液滴形成部材14を板状の部材で形成し、基板3上の各スポット31の位置と対する位置に貫通孔141を形成した構成としてもよい。
【0046】
また、上記した実施の形態では、基板3上面の各スポット31に核酸増幅用溶液の液滴を形成し、この液滴をオイルで被膜した後、分注細管部材11を分離して蓋部材15を装着し、PCR増幅装置に設置して増幅処理を行う場合について説明したが、分注細管部材11だけでなく液滴形成部材13も取り外し、基板3のみをPCR増幅装置に設置する構成としてもよい。
【0047】
また、基板3上面の各スポット31に形成した核酸増幅用溶液の液滴をオイルで被膜することとしたが、オイルによる被膜を行わないこととしてもよい。この場合には、基板3上面の各スポット31に核酸増幅用溶液を分注して基板3上面の各スポット31に液滴を形成した後、分注細管部材11を分離して蓋部材15を装着し、PCR増幅装置に設置して増幅処理を行う。
【0048】
また、上記した実施の形態では、分注細管部材11の上面の1箇所に注入口111を設けた場合について説明したが、注入口を複数個所設ける構成としてもよい。この場合には、分注細管部材の下面に形成された各分注口がいずれかの注入口と接続されるように、分注細管部材の内部に流路を形成する。そして、各注入口にシリンジを接続して各分注口にそれぞれ核酸増幅用溶液やオイルを分注する。
【0049】
また、基板3上面の各スポット31に分注する検体は、それぞれ異なる被検体から採取した検体であってもよい。また、各スポット31に予め別のプライマーを分注し、乾燥させてはり付けておくこととしてもよい。この場合には、核酸増幅用溶液としてプライマーを含有しない溶液を調整し、液滴形成器具1によって基板3上面の各スポット31に分注すればよい。また、基板3上面の各スポット31で同一のDNA試料についてPCR増幅を行う場合には、DNA試料を核酸増幅用溶液と混合し、この混合溶液を液滴形成器具1を用いて基板3上面の各スポット31に分注することも可能である。この場合には、DNA試料を基板3上面の各スポット31に予め分注しておく必要がない。
【0050】
また、上記した実施の形態では、液滴形成器具1を用いた核酸増幅用溶液L1およびオイルL3の分注に先立って、予め基板3上面の各スポット31に検体(DNA試料またはRNA試料等の核酸試料)を分注しておく場合について説明したが、検体についても液滴形成器具1を用いて分注してもよい。例えば、液滴形成器具1を用いて基板3上面の各スポット31に先ず検体を分注し、次いで、液滴形成器具1を用いて各スポット31に核酸増幅用溶液を分注することとしてもよい。この場合、DNA試料を基板3上面の各スポット31に予め分注しておく必要がない。なおこのとき、検体の分注および核酸増幅用溶液の分注に同一の液滴形成器具1を用いてもよいし、検体を分注した後で液滴形成器具1を別の液滴形成器具1と取り替えて用いることとしてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、基板3に液滴形成部材13と分注細管部材11とを装着して基板3上の各スポット31に液滴を形成することとしたが、これらを一体的に形成して液滴形成器具を構成してもよい。また、液滴形成器具を分注細管部材のみで構成してもよい。この場合には、分注細管部材11の各分注口113と基板3上面の各スポット31との間が連通するようにこれらを連結し、核酸増幅用溶液の分注・液滴の形成を行う。あるいは、分注細管部材11の各分注口113と基板3上面の各スポット31との間が連通するようにこれらを連結した後、先ず検体の分注・液滴の形成を行い、次いで核酸増幅用溶液の分注・液滴の形成を行う。この後、オイルの分注を必要に応じて行い、各スポット31の液滴を被膜する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】液滴形成器具の構成を説明する模式図である。
【図2】基板上面のスポットの構成を説明する図である。
【図3】注入口に接続されるシリンジの構成を説明する図である。
【図4】分注細管部材の内部構成を説明する図である。
【図5】分注細管部材の側面図である。
【図6】液滴形成部材の側面図である。
【図7】液滴形成部材の下面図である。
【図8】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図9】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図10】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図11】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図12】実験例1の分析結果を示す図である。
【図13】実験例2の分析結果を示す図である。
【図14】液滴形成部材の構成の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 液滴形成器具
11 分注細管部材
111 注入口
113 分注口
13 液滴形成部材
131 平面部
133 筒状部
15 蓋部材
3 基板
31 スポット
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具、この液滴形成器具を用いた液滴形成方法および核酸増幅方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医学分野において、DNAやRNAを活用した診断が注目を集めている。また、農業分野では、品種の判定や遺伝子組み換え作物の判定にDNA鑑定が活用されている。このような診断や品種の判定では、血液や組織、細胞等の生体試料や作物試料中に検出対象のDNAまたはRNAが存在するか否か、あるいはその塩基配列の変異等の判別を行うが、試料中に含まれる核酸(DNA/RNA)は微量である場合が多い。このため、事前に試料を増幅処理し、例えばPCR法によって検出対象の核酸をPCR増幅している。検出対象の核酸がRNAの場合には、試料を高温下で熱変性させ、逆転写酵素を用いてDNAに逆転写した後で、PCR増幅している。
【0003】
また、試料の微量化に伴い、増幅処理を基板上で行う方法が提案されている。例えば、基板上面の複数の液滴形成位置に微細な加工を施してスポットを形成し、各スポットに微量の試料や増幅用の試薬を分注して増幅処理するようにしたものが知られている。また、基板に核酸の抽出や増幅、電気泳動による検出等を行う機能部を設け、この基板上で一連の工程を行えるようにしたものも知られている(特許文献1,2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−95134号公報
【特許文献2】特許第3545158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板上面の複数の液滴形成位置にスポットを形成し、各スポットに試料や増幅用の試薬を分注して増幅処理する場合、各スポットそれぞれに対して個別に手作業で分注を行わなければならず、手間であった。また、多連のピペットを用いれば、複数のスポットに同時に試料や増幅用の試薬を分注することができるが、各スポットは密集して形成されており、分注時に隣接するスポットとの間で試料や試薬が混合してしまい、コンタミネーションが生じるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたものであって、基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を同時かつ確実に形成することができる液滴形成器具、液滴形成方法および核酸増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明にかかる液滴形成器具は、核酸分析の増幅工程で用いられる基板を気密状態で着脱自在に連結し、前記基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記流路は同一径で形成され、前記注入口と前記各開口との間の流路長がそれぞれ等しくなるように形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記流路は、前記注入口から注入される前記核酸増幅用溶液が前記各開口に同量ずつ供給されるように、前記注入口と開口との間の流路長に応じた径で形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記基板の各液滴形成位置には、親水性領域と撥水性領域のパターンによって形成された液滴形成部が形成されており、前記各開口は、前記液滴形成部と同じまたは前記液滴形成部より小さな径で形成されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記各開口の径は、0.05mmから5mmの範囲で形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる液滴形成器具は、上記の発明において、前記液滴形成部材は、シリコンゴム、フッ素ゴムまたはアクリルゴムで形成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる液滴形成方法は、核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具を用いた液滴形成方法であって、前記液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる液滴形成方法は、上記の発明において、前記液滴形成工程の後、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記基板を前記液滴形成器具が連結された状態で増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記検体分注工程は、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ同一の検体を分注することを特徴とする。
【0018】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体および核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記検体を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体の液滴を形成するとともに、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体と混合された核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記検体と混合された核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体と混合された核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記液滴形成器具は、前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液、前記検体または前記検体と混合された核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されており、前記液滴形成工程の後、前記液滴形成部材から前記分注細管部材を分離する分離工程を含み、前記増幅工程では、前記基板を前記液滴形成部材が連結された状態で増幅装置に設置することを特徴とする。
【0021】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記液滴形成工程の後であって前記分離工程の前に、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、前記分離工程の後、前記分注細管部材が分離された前記液滴形成部材の分離面を密封する密封工程を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる核酸増幅方法は、上記の発明において、核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程と、前記基板から前記液滴形成器具を取り外す取外工程と、前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、注入口から核酸増幅用溶液を注入することによって基板の各液滴形成位置と対応する位置に形成された各開口に核酸増幅用溶液を供給し、基板の各液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成することができる。またこのとき、基板を気密に連結した状態で各開口に核酸増幅用溶液を供給し、基板の各液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成することができるので、隣接する液滴形成位置にそれぞれ分注された核酸増幅用溶液が混合してしまうといった事態を防止できる。したがって、基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を同時かつ確実に形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態)
図1は、本実施の形態における液滴形成器具1の構成を説明する模式図である。この液滴形成器具1は、分注細管部材11と、液滴形成部材13とを備え、基板3の上面に着脱自在に取り付けられて基板3上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する。また、液滴形成器具1は、蓋部材15を備えている。この蓋部材15は、分注細管部材11および液滴形成部材13を用いて核酸増幅用溶液の液滴を形成した後の増幅処理時に用いられるものであり、図1では破線で示している。ここで、基板3は、大きさが約750×250mmのスライドガラスで構成され、その上面の複数の液滴形成位置に液滴形成部である複数のスポット31が配列されて形成される。各スポット31は、1.5mm〜2.0mm程度の径を有し、例えば親水−撥水パターンによって形成される。図2は、基板3上面のスポット31の構成を説明する図である。図2に示すように、基板3上面には、親水性領域331,335と撥水性領域333,337とが交互に形成されており、核酸増幅用溶液L1が供給される親水性領域331および核酸増幅用溶液L1を被膜するオイルL3が供給される親水性領域335と、これら親水性領域331,335の間に介在する撥水性領域333とによってスポット31が形成される。
【0027】
分注細管部材11は、図1に示すように、上面に注入口111が形成され、下面に複数の分注口113が形成されて構成されている。この分注細管部材11は、例えばガラス基板やプラスチック基板等で形成される。ガラス基板は、公知のガラス材料を用いて形成することができる。また、プラスチック基板の材料としては、例えばポリプロピレンやアクリル、ポリカーボネート等を用いることができる。
【0028】
注入口111には、例えばシリンジが接続され、このシリンジによって核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が順次注入される。図3は、注入口111に接続されるシリンジ5の構成を説明する図である。図3に示すように、シリンジ5は、先端に吐出口52が設けられ、内部に核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が充填されたシリンダ51と、シリンダ51の後端にスライド自在に挿入されるピストン53とで構成される。シリンダ51先端の吐出口52は、分注細管部材11の注入口111と接続され、ピストン53を押圧することによって注入口111から核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が注入される。ここで、核酸増幅用溶液L1は、例えばプライマーや核酸の伸長反応のための基質であるdNTP、増幅用酵素、酵素を活性化させるためのマグネシウム塩等を緩衝液中に添加したものである。また、シリンジ5内に充填されるオイルL3は、実際に注入口111から注入する量よりも多く充填される。これは、核酸増幅用溶液L1やオイルL3を各分注口113に押し出して所定量ずつ分注し、基板3上の各スポット31にこれらを供給するためであり、シリンダ51にはオイルL3の注入量を規定するための注入量マーカMKが付されている。このシリンジ5によって核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を注入する際には、シリンダ51内に残存するオイルL3の上面が注入量マーカMKの位置と一致するまでピストン53を押圧して核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を順次注入する。
【0029】
一方、分注細管部材11の下面に形成された各分注口113は、この基板3上面の各スポット31と対応する位置にそれぞれ形成される。図4は、分注細管部材11の内部構成を説明する図である。また、図5は、分注細管部材11の側面図である。図4に示すように、分注細管部材11の内部には、注入口111と各分注口113との間をそれぞれ接続する流路112が形成されている。この流路112は、注入口111と各分注口113との間の流路長がそれぞれ等しくなるように、段階的に分流されて形成される。これにより、図5に示すように、各分注口113からそれぞれほぼ同量の液体L(具体的には核酸増幅用溶液L1およびオイルL3)を分注することが可能である。
【0030】
液滴形成部材13は、基板3とほぼ同様の大きさに形成された平面部131と、この平面部131の下面に一体形成された複数の筒状部133とを備える。この液滴形成部材13の材料としては、基板3を気密状態で着脱自在に連結可能であり、耐熱性や耐油性を有する例えばシリコンゴムやフッ素ゴム、アクリルゴム等を用いることができる。図6は、液滴形成部材13の側面図であり、図7は液滴形成部材13の下面図である。図6に示すように、平面部131には、上下方向に貫通する複数の貫通孔132が形成されている。各貫通孔132は、基板3上面の各スポット31と対向する位置に形成され、スポット31と同程度の径を有する。一方、図7に示すように、各筒状部133は、その内径が貫通孔132と同程度の径に形成され、それぞれ各貫通孔132の下端開口に設けられる。液滴形成部材13は、この貫通孔132および筒状部133によって分注細管部材11の各分注口113から同量ずつ分注された核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を案内し、隣接するスポット31間が仕切られた状態で基板3上面の各スポット31に液滴を形成する。
【0031】
蓋部材15は、液滴形成部材13の平面部131上面に形成された各貫通孔132の上端開口を密封するためのものであり、分注細管部材11の注入口111から核酸増幅用溶液L1およびオイルL3を注入して基板3上面の各スポット31に分注した後、分注細管部材11を分離した液滴形成部材13の平面部131上面に装着される。例えば、基板3上面の全域を被覆可能なサイズに形成され、平面部131上面をシールするシール部材で形成される。あるいは、液滴形成部材13の平面部131上面に装着されたときに、各貫通孔132の上端開口とそれぞれ対向する位置に、この貫通孔132の上端開口と嵌合する凸部が形成された板状の部材を蓋部材15としてもよい。材料としては、例えばシリコンゴムやフッ素ゴム、アクリルゴムといった液滴形成部と同一の材料を用いることができる。
【0032】
次に、液滴形成器具1を用いた核酸増幅用溶液L1およびオイルL3の分注手順について、図8〜図11を参照して説明する。なお、液滴形成器具1を用いた核酸増幅用溶液L1およびオイルL3の分注に先立って、基板3上面の各スポット31に、例えば血液検体から作成したDNA試料またはRNA試料等の核酸試料を所定量ずつ分注し、乾燥させてはり付けておく。各スポット31に分注する核酸試料は、同一の検体から作成したものであってもよいし、異なる検体から作成したものであってもよい。
【0033】
先ず、図8に示すように、基板3上面に液滴形成部材13を対向配置し、各筒状部133の下端開口と基板3上面の各スポット31との間がそれぞれ連通するようにこれらを連結するとともに、液滴形成部材13の平面部131上面に分注細管部材11を対向配置し、各貫通孔132の上端開口と分注細管部材11下面の各分注口113との間がそれぞれ連通するようにこれらを連結する。また、分注細管部材11の注入口111に、図3に示して説明したように核酸増幅用溶液L1およびオイルL3が充填されたシリンジ5を接続する。
【0034】
続いて、シリンジ5のピストン53を押圧し、図9に示すように、分注細管部材11の注入口111から先ず核酸増幅用溶液L1を注入する。これにより、注入された核酸増幅用溶液L1が分注細管部材11によって各分注口113から所定量ずつ分注され、分注された核酸増幅用溶液L1が液滴形成部材13の平面部131に形成された各貫通孔132およびこの貫通孔132の下端開口と連通する筒状部133に案内されて基板3上面の各スポット31に液滴を形成する。続いて、図10に示すように、注入口111からオイルL3を注入する。これにより、注入されたオイルL3が分注細管部材11によって各分注口113から所定量ずつ分注され、分注されたオイルL3が液滴形成部材13を構成する貫通孔132および筒状部133によって案内されて基板3上面の各スポット31に形成された核酸増幅用溶液L1の液滴を被膜する。
【0035】
そして、図11に示すように、液滴形成部材13の平面部131上面の分注細管部材11を分離するとともに、蓋部材15を装着して平面部131上面に露出した貫通孔132の上端開口を密封し、増幅装置であるPCR増幅装置に設置して増幅処理を行う。ここで、PCR増幅装置は、PCR法による核酸試料の増幅を行う装置であり、例えば基板3上の温度制御が可能なスライドサイクラー等を用いることができる。PCR法は、核酸試料中に含まれるDNAやRNAのうち、所定の塩基配列を有するDNAやRNAの一部(特定部分)を繰り返し合成・増幅する手法であり、高温下での熱変性と低温下でのアニーリングを繰り返し行うことによって、核酸中の特定部分を合成・増幅させる。
【0036】
増幅処理後、液滴形成部材13は廃棄され、分注細管部材11は洗浄されて再利用される。このとき、再利用時に異なる組成の核酸増幅用溶液を用いる場合等、必要に応じてオートクレーブ滅菌(高温高圧蒸気滅菌)による消毒を行うこととしてもよい。
【0037】
(実験例1)
事前に、核酸試料として、6人の被検者からそれぞれ採取した2ngの血液検体をもとに2ng/ulのDNA試料を作成する。また、核酸増幅用溶液を、例えば次のようにして調整する。すなわち、一の塩基配列を有する第1のプライマーおよび一の塩基配列とは異なる他の塩基配列を有する第2のプライマーを、それぞれその濃度が0.25Mとなるように、dNTPの濃度が0.2mMとなるように緩衝液と混合し、混合溶液を50ul作成する。そして、この混合溶液に例えばTaqポリメラーゼを1.25units添加して核酸増幅用溶液を調整する。
【0038】
先ず、基板3上の各スポット31にDNA試料を1ulずつ手作業で分注する。続いて、この基板3を例えば37℃に温度制御されたPCR増幅装置に設置し、DNA試料を乾燥させる。なお、室温で乾燥させることとしても構わない。DNA試料を乾燥させたならば、基板3上面に液滴形成部材13を連結するとともに、液滴形成部材13の平面部131上面に分注細管部材11を連結し、核酸増幅用溶液およびオイルを順番に分注して基板3上面の各スポット31に核酸増幅用溶液の液滴を形成してオイルで被膜する。そして、PCR増幅装置に設置して基板3上面の各スポット31上に貼り付けられたDNA試料の増幅処理を行う。このPCR増幅の反応条件は、例えば、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で30秒間を1サイクルとして30サイクル行う。
【0039】
そして、増幅処理を終えた基板3上面の各スポット31のDNA増幅液を被検体毎に回収し、得られた6人の被検体毎のDNA増幅液をマーカー試料とともに電気泳動させ、DNAをサイズ毎に分離することによってDNA増幅液を分析する。図12は、分析結果を示す図である。図12に示す分析結果では、各被検体のバンドB11〜B16は、それぞれマーカーM10の200(bp)のバンド位置に近傍に分離されている。
【0040】
(実験例2)
事前に、核酸試料として、ある被検者から採取した血液検体をもとに、2ng/ulのDNA試料を基板3上での増幅用と従来のマイクロチューブ内での増幅用にそれぞれ作成する。また、核酸増幅用溶液についても同様に、実験例1と同様にして基板3上での増幅用と従来のマイクロチューブ内での増幅用にそれぞれ調整する。
【0041】
そして、基板3上の各スポット31に基板3上での増幅用に作成したDNA試料を分注して貼り付け、液滴形成器具1を用いて各スポット31に基板3上での増幅用に作成した核酸増幅用溶液の液滴を形成し、PCR増幅装置に設置して増幅処理を行う。また、従来のマイクロチューブに、このマイクロチューブ内での増幅用に作成したDNA試料および核酸増幅用溶液を収容して混合し、このマイクロチューブを設置可能な例えばサーマルサイクラー等のPCR増幅装置に設置して増幅処理する。増幅処理は同一の反応条件で行い、例えば、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で30秒間を1サイクルとして30サイクル行う。
【0042】
そして、増幅処理を終えた基板3上面の各スポット31のDNA増幅液を回収し、得られたDNA増幅液およびマイクロチューブ内のDNA増幅液をマーカー試料とともに電気泳動させ、DNAをサイズ毎に分離することによってDNA増幅液を分析する。図13は、分析結果を示す図である。図13に示す分析結果では、各DNA増幅液のバンドB21,B23は、マーカーM20に対してそれぞれほぼ同一のバンド位置に分離されているが、マイクロチューブ内のDNA増幅液のバンドB23はその濃さ(太さ)にムラがある。これに対し、基板3上で増幅させたDNA増幅液のバンドB21はその濃さ(太さ)が均一に得られ、複数のスポット31に分散させて増幅処理を行った場合の方が、1つのマイクロチューブ内で増幅処理を行った場合よりも濃くはっきりとバンドが検出される。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、分注細管部材11によって各分注口113から核酸増幅用溶液を同量ずつ分注するとともに、核酸増幅用溶液を液滴形成部材13によって基板3上面の各スポット31に供給し、その液滴を形成することができる。またこのとき、液滴形成部材13は基板3を気密状態で連結しており、基板3上面の隣接するスポット31間が仕切られた状態で核酸増幅用溶液を供給することができるので、隣接するスポット31間でのコンタミネーションを防止できる。したがって、基板3上面の複数のスポット31に核酸増幅用溶液の液滴を同時かつ確実に形成することができ、核酸試料が微量であっても増幅処理が可能である。また、基板3としてスライドガラスを加工して用いることができるので、核酸試料として細胞等を用いる場合には、顕微鏡下で細胞の観察を行いながら各スポット31に核酸試料を確実に固定することが可能である。
【0044】
なお、上記した実施の形態では、分注細管部材11の内部に段階的に分流された流路が形成される場合について説明したが、注入口と各分注口との間をそれぞれ個別に接続する流路を形成することとしてもよい。例えば、分注口および流路を、注入口との距離が遠い分注口およびこの分注口までの流路ほど大きい径で形成することとしてもよい。このとき、各分注口およびこの分注口までの流路の径を、0.05mm〜5mmの範囲で形成すると好ましい。このように構成した場合も上記した実施の形態と同様に、各分注口からそれぞれほぼ同量の核酸増幅用溶液およびオイルを分注することができる。
【0045】
また、液滴形成部材13の構成は、上記した実施の形態の構成に限定されるものではない。図14は、液滴形成部材13の構成の変形例を示す図である。図14に示すように、液滴形成部材14を板状の部材で形成し、基板3上の各スポット31の位置と対する位置に貫通孔141を形成した構成としてもよい。
【0046】
また、上記した実施の形態では、基板3上面の各スポット31に核酸増幅用溶液の液滴を形成し、この液滴をオイルで被膜した後、分注細管部材11を分離して蓋部材15を装着し、PCR増幅装置に設置して増幅処理を行う場合について説明したが、分注細管部材11だけでなく液滴形成部材13も取り外し、基板3のみをPCR増幅装置に設置する構成としてもよい。
【0047】
また、基板3上面の各スポット31に形成した核酸増幅用溶液の液滴をオイルで被膜することとしたが、オイルによる被膜を行わないこととしてもよい。この場合には、基板3上面の各スポット31に核酸増幅用溶液を分注して基板3上面の各スポット31に液滴を形成した後、分注細管部材11を分離して蓋部材15を装着し、PCR増幅装置に設置して増幅処理を行う。
【0048】
また、上記した実施の形態では、分注細管部材11の上面の1箇所に注入口111を設けた場合について説明したが、注入口を複数個所設ける構成としてもよい。この場合には、分注細管部材の下面に形成された各分注口がいずれかの注入口と接続されるように、分注細管部材の内部に流路を形成する。そして、各注入口にシリンジを接続して各分注口にそれぞれ核酸増幅用溶液やオイルを分注する。
【0049】
また、基板3上面の各スポット31に分注する検体は、それぞれ異なる被検体から採取した検体であってもよい。また、各スポット31に予め別のプライマーを分注し、乾燥させてはり付けておくこととしてもよい。この場合には、核酸増幅用溶液としてプライマーを含有しない溶液を調整し、液滴形成器具1によって基板3上面の各スポット31に分注すればよい。また、基板3上面の各スポット31で同一のDNA試料についてPCR増幅を行う場合には、DNA試料を核酸増幅用溶液と混合し、この混合溶液を液滴形成器具1を用いて基板3上面の各スポット31に分注することも可能である。この場合には、DNA試料を基板3上面の各スポット31に予め分注しておく必要がない。
【0050】
また、上記した実施の形態では、液滴形成器具1を用いた核酸増幅用溶液L1およびオイルL3の分注に先立って、予め基板3上面の各スポット31に検体(DNA試料またはRNA試料等の核酸試料)を分注しておく場合について説明したが、検体についても液滴形成器具1を用いて分注してもよい。例えば、液滴形成器具1を用いて基板3上面の各スポット31に先ず検体を分注し、次いで、液滴形成器具1を用いて各スポット31に核酸増幅用溶液を分注することとしてもよい。この場合、DNA試料を基板3上面の各スポット31に予め分注しておく必要がない。なおこのとき、検体の分注および核酸増幅用溶液の分注に同一の液滴形成器具1を用いてもよいし、検体を分注した後で液滴形成器具1を別の液滴形成器具1と取り替えて用いることとしてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、基板3に液滴形成部材13と分注細管部材11とを装着して基板3上の各スポット31に液滴を形成することとしたが、これらを一体的に形成して液滴形成器具を構成してもよい。また、液滴形成器具を分注細管部材のみで構成してもよい。この場合には、分注細管部材11の各分注口113と基板3上面の各スポット31との間が連通するようにこれらを連結し、核酸増幅用溶液の分注・液滴の形成を行う。あるいは、分注細管部材11の各分注口113と基板3上面の各スポット31との間が連通するようにこれらを連結した後、先ず検体の分注・液滴の形成を行い、次いで核酸増幅用溶液の分注・液滴の形成を行う。この後、オイルの分注を必要に応じて行い、各スポット31の液滴を被膜する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】液滴形成器具の構成を説明する模式図である。
【図2】基板上面のスポットの構成を説明する図である。
【図3】注入口に接続されるシリンジの構成を説明する図である。
【図4】分注細管部材の内部構成を説明する図である。
【図5】分注細管部材の側面図である。
【図6】液滴形成部材の側面図である。
【図7】液滴形成部材の下面図である。
【図8】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図9】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図10】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図11】液滴形成器具を用いた核酸増幅用溶液およびオイルの分注手順を説明する図である。
【図12】実験例1の分析結果を示す図である。
【図13】実験例2の分析結果を示す図である。
【図14】液滴形成部材の構成の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 液滴形成器具
11 分注細管部材
111 注入口
113 分注口
13 液滴形成部材
131 平面部
133 筒状部
15 蓋部材
3 基板
31 スポット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板を気密状態で着脱自在に連結し、前記基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、
前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成されることを特徴とする液滴形成器具。
【請求項2】
前記流路は同一径で形成され、前記注入口と前記各開口との間の流路長がそれぞれ等しくなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴形成器具。
【請求項3】
前記流路は、前記注入口から注入される前記核酸増幅用溶液が前記各開口に同量ずつ供給されるように、前記注入口と開口との間の流路長に応じた径で形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴形成器具。
【請求項4】
前記基板の各液滴形成位置には、親水性領域と撥水性領域のパターンによって形成された液滴形成部が形成されており、
前記各開口は、前記液滴形成部と同じまたは前記液滴形成部より小さな径で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の液滴形成器具。
【請求項5】
前記各開口の径は、0.05mmから5mmの範囲で形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の液滴形成器具。
【請求項6】
前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の液滴形成器具。
【請求項7】
前記液滴形成部材は、シリコンゴム、フッ素ゴムまたはアクリルゴムで形成されることを特徴とする請求項6に記載の液滴形成器具。
【請求項8】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具を用いた液滴形成方法であって、
前記液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
を含むことを特徴とする液滴形成方法。
【請求項9】
前記液滴形成工程の後、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の液滴形成方法。
【請求項10】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、
前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記基板を前記液滴形成器具が連結された状態で増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項11】
前記検体分注工程は、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ同一の検体を分注することを特徴とする請求項10に記載の核酸増幅方法。
【請求項12】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体および核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記検体を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体の液滴を形成するとともに、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項13】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体と混合された核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記検体と混合された核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体と混合された核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項14】
前記液滴形成器具は、前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液、前記検体または前記検体と混合された核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されており、
前記液滴形成工程の後、前記液滴形成部材から前記分注細管部材を分離する分離工程を含み、
前記増幅工程では、前記基板を前記液滴形成部材が連結された状態で増幅装置に設置することを特徴とする請求項10〜13のいずれか一つに記載の核酸増幅方法。
【請求項15】
前記液滴形成工程の後であって前記分離工程の前に、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の核酸増幅方法。
【請求項16】
前記分離工程の後、前記分注細管部材が分離された前記液滴形成部材の分離面を密封する密封工程を含むことを特徴とする請求項14または15に記載の核酸増幅方法。
【請求項17】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、
前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程と、
前記基板から前記液滴形成器具を取り外す取外工程と、
前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項1】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板を気密状態で着脱自在に連結し、前記基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、
前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成されることを特徴とする液滴形成器具。
【請求項2】
前記流路は同一径で形成され、前記注入口と前記各開口との間の流路長がそれぞれ等しくなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴形成器具。
【請求項3】
前記流路は、前記注入口から注入される前記核酸増幅用溶液が前記各開口に同量ずつ供給されるように、前記注入口と開口との間の流路長に応じた径で形成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴形成器具。
【請求項4】
前記基板の各液滴形成位置には、親水性領域と撥水性領域のパターンによって形成された液滴形成部が形成されており、
前記各開口は、前記液滴形成部と同じまたは前記液滴形成部より小さな径で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の液滴形成器具。
【請求項5】
前記各開口の径は、0.05mmから5mmの範囲で形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の液滴形成器具。
【請求項6】
前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の液滴形成器具。
【請求項7】
前記液滴形成部材は、シリコンゴム、フッ素ゴムまたはアクリルゴムで形成されることを特徴とする請求項6に記載の液滴形成器具。
【請求項8】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置に核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成器具であって、前記基板を連結したときに前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、前記核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具を用いた液滴形成方法であって、
前記液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
を含むことを特徴とする液滴形成方法。
【請求項9】
前記液滴形成工程の後、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の液滴形成方法。
【請求項10】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、
前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記基板を前記液滴形成器具が連結された状態で増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項11】
前記検体分注工程は、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ同一の検体を分注することを特徴とする請求項10に記載の核酸増幅方法。
【請求項12】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体および核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記検体を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体の液滴を形成するとともに、前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項13】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、検体と混合された核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記検体と混合された核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記検体と混合された核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【請求項14】
前記液滴形成器具は、前記各開口が形成され、前記基板の各液滴形成位置に前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成部材と、前記注入口が形成され、前記液滴形成部材を介して前記核酸増幅用溶液、前記検体または前記検体と混合された核酸増幅用溶液を前記基板の各液滴形成位置に分注する分注細管部材とに分離可能に構成されており、
前記液滴形成工程の後、前記液滴形成部材から前記分注細管部材を分離する分離工程を含み、
前記増幅工程では、前記基板を前記液滴形成部材が連結された状態で増幅装置に設置することを特徴とする請求項10〜13のいずれか一つに記載の核酸増幅方法。
【請求項15】
前記液滴形成工程の後であって前記分離工程の前に、前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の核酸増幅方法。
【請求項16】
前記分離工程の後、前記分注細管部材が分離された前記液滴形成部材の分離面を密封する密封工程を含むことを特徴とする請求項14または15に記載の核酸増幅方法。
【請求項17】
核酸分析の増幅工程で用いられる基板上の複数の液滴形成位置にそれぞれ検体を分注する検体分注工程と、
前記基板の各液滴形成位置と対応する位置に開口が形成されるとともに、核酸増幅用溶液を注入する注入口が形成され、内部に前記各開口と前記注入口との間を接続する流路が形成された液滴形成器具に前記基板を気密状態で連結し、前記各開口と前記基板の各液滴形成位置との間を連通させる連結工程と、
前記注入口から前記核酸増幅用溶液を注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置にそれぞれ前記核酸増幅用溶液の液滴を形成する液滴形成工程と、
前記注入口からオイルを注入して前記各開口に供給し、前記基板の各液滴形成位置に形成された前記核酸増幅用溶液の液滴を前記オイルで被膜する被膜形成工程と、
前記基板から前記液滴形成器具を取り外す取外工程と、
前記基板を増幅装置に設置し、前記基板の各液滴形成位置の検体を増幅処理する増幅工程と、
を含むことを特徴とする核酸増幅方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−136219(P2009−136219A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316312(P2007−316312)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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