説明

液状医薬組成物、及びこれを含有する軟カプセル剤

【課題】本発明は、メチルエフェドリン及び/又はその塩が、安定に分散している液状医薬組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、
(B)プソイドエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、並びに
(C)疎水性分散媒
を含有し、前記(A)成分及び(B)成分は、前記(C)成分中に分散している、液状医薬組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状医薬組成物、及びこれを含有する軟カプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルエフェドリン又はその塩、特にメチルエフェドリン塩酸塩は、エフェドリンと類似の作用機序、すなわちα作用、及びβ作用を有し、気管支拡張作用、中枢性の鎮咳作用を有することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
ところで、軟カプセル(ソフトカプセル)は、中身が液状のため、服用後比較的すばやく溶けて吸収され、また、弾力性を有し、しかも味、臭いをマスキングすることもできるので服用しやすい製剤である。
【0004】
軟カプセルは、通常、疎水性の液体を、軟カプセルに充填すること、具体的には、疎水性の液体を充填溶液として、主としてゼラチン等からなる皮膜(剤皮)で包み込み、一定の形状に成型することで製造される製剤である。したがって、軟カプセルに充填する有効成分が親水性成分又は粉末成分等である場合には、親水性成分又は粉末成分等を油脂等の疎水性の液体である分散媒中に懸濁した後に、カプセル剤皮に充填することになる。
【0005】
この際、充填溶液中で親水性成分又は粉末成分等の沈殿及び/又は分離がおこると、個々の軟カプセルの成分含量にばらつきが出る恐れがある。更に、製造後のカプセル中で成分の沈殿及び/又は分離が発生することにより、軟カプセルの剤皮が損傷する恐れや、軟カプセルの服用後における体内でのカプセル剤皮の崩壊挙動や有効成分の分散及び溶出挙動にばらつきが出る恐れがある。
【0006】
従って、軟カプセルに充填する液状医薬組成物においては、有効成分が疎水性液体分散媒中に安定して均一に分散していることが極めて重要である。
【0007】
このような分散性を確保する目的で、従来、グリセリン脂肪酸エステルやミツロウが使用されている(特許文献1)。しかし、分散剤にミツロウを使用した軟カプセル剤は、油脂(すなわち、疎水性液体)中での有効成分の分散については十分であるが、このような製剤を摂取した場合、生体内での有効成分の分散に難があり、有効成分の効果が生体内で十分に発揮されない恐れがあることが知られている。
【0008】
これに対し、グリセリン脂肪酸エステル及び水素添加加工油脂の組み合わせによって有効成分を懸濁化した製剤(特許文献2)や、反応モノグリセライド、蒸留モノグリセライド及びモノエステル体含有量50%以上のジグリセリン脂肪酸エステルを含有させる方法(特許文献3)のように、分散剤を用いる技術が提案されている。しかしながら、更なる有用な分散技術の開発が望まれている。
【0009】
一方、プソイドエフェドリンは、交感神経α作用による血管収縮作用を有し、鼻粘膜の充血や腫れを抑えることが知られている。しかしながら、これまで疎水性液体中での他成分の分散性を高める作用を有することは全く知られていない。
【0010】
これまで、メチルエフェドリンを配合した軟カプセル剤は上市されているが、プソイドエフェドリンとメチルエフェドリンを同時に配合した医薬組成物については、錠剤や、硬カプセル(ハードカプセル)(非特許文献2、特許文献4〜5)等が知られているのみであり、それらを配合した軟カプセル剤については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−138151号公報
【特許文献2】特開2005−112753号公報
【特許文献3】特開2009−242334号公報
【特許文献4】特表2005−522467号公報
【特許文献5】特表2006−501211号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】第15改正日本薬局方解説書、廣川書店、C-4291
【非特許文献2】「ダン鼻炎錠」添付文書、ダンヘルスケア(株)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、メチルエフェドリン又はその塩を疎水性分散媒に分散した場合、短時間で沈殿及び/又は分離が起こることを見出した。
【0014】
そこで、本発明は、メチルエフェドリン及び/又はその塩が、疎水性分散媒中で安定に分散している液状医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、鋭意検討の結果、
(A)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、
(B)プソイドエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、並びに
(C)疎水性分散媒
を混合することにより前記(C)成分中における前記(A)成分の沈殿及び/又は分離を抑制できること、すなわち、分散性を改善できることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明は、下記の項1〜7の態様などを提供するものである。
[項1]
(A)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、
(B)プソイドエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、並びに
(C)疎水性分散媒
を含有し、前記(A)成分及び(B)成分は、前記(C)成分中に分散している、液状医薬組成物。
[項2]
(C)成分として、脂肪酸トリグリセリド、又は動植物油を含有する、前記項1に記載の液状医薬組成物。
[項3]
前記動植物油が植物油である、前記項2に記載の液状医薬組成物。
[項4]
(C)成分として、中鎖脂肪酸トリグリセリド又はトウモロコシ油を含有する、前記項1〜3のいずれか1項に記載の液状医薬組成物。
[項5]
(C)成分の含有量が30〜99w/w%である前記項1〜4のいずれか1項に記載の液状医薬組成物。
[項6]
前記項1〜5のいずれか1項に記載の液状医薬組成物がカプセル剤皮に充填された軟カプセル剤。
[項7]
経口投与用である、前記項6に記載の軟カプセル剤。
[項8]
(A)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、
(B)プソイドエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、並びに
(C)疎水性分散媒
を混合することにより、前記(C)成分中における、前記(A)成分の分散性を改善する方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液状医薬組成物では、有効成分であるメチルエフェドリン及び/又はその塩が疎水性分散媒中で安定に分散しているため、軟カプセル剤の剤皮に充填する場合には充填溶液中のメチルエフェドリン及び/又はその塩の含量の製剤間におけるばらつきが少なく、その含量均一性の高い製剤が調製できるため、軟カプセル剤に好適に適用できる。
【0018】
また、本発明の軟カプセルは、カプセル中でも安定な分散が保たれるため、親水性成分の濃度の偏りにより生じ易い軟カプセルの剤皮の損傷が高度に防止される。さらに、本発明の軟カプセルは、軟カプセルの服用後における体内での軟カプセル剤皮の崩壊挙動や有効成分の分散及び/又は溶出挙動に個々の製剤間でのばらつきがなく、一定の崩壊及び/又は分散、溶出挙動を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】液状医薬組成物の分散状態(疎水性分散媒が中鎖脂肪酸トリグリセリド、25℃保存)を示す写真。
【図2】液状医薬組成物の分散状態(疎水性分散媒が中鎖脂肪酸トリグリセリド、60℃保存)を示す写真。
【図3】メチルエフェドリン塩酸塩の分散状態(60℃保存)を示すグラフ。(実施例1、比較例2)
【図4】液状医薬組成物の分散状態(疎水性分散媒がトウモロコシ油、60℃保存)を示す写真。
【図5】メチルエフェドリン塩酸塩の分散状態(60℃保存)を示すグラフ。(実施例2、比較例3)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の液状医薬組成物は、
(A)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、
(B)プソイドエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、並びに
(C)疎水性分散媒
を含有する。
【0021】
前述のように、メチルエフェドリン又はその塩、特にメチルエフェドリン塩酸塩は、エフェドリンと類似の作用機序、すなわちα作用、及びβ作用を有し、気管支拡張作用、中枢性の鎮咳作用を有することが知られている公知の化合物であり、市販品にて入手するか、又は公知の方法に従って製造することができる。
【0022】
メチルエフェドリンの塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩等を挙げることができ、なかでも塩酸塩が特に好ましい。
【0023】
本発明の液状医薬組成物においては、メチルエフェドリン及び/又はその塩は、その少なくとも一部(好ましくは50w/w%以上、より好ましくは80w/w%以上、更に好ましくは90w/w%以上)が微粒子として存在する。
【0024】
本発明の液状医薬組成物におけるメチルエフェドリン及び/又はその塩の含有量は、好ましくは0.01〜20w/w%、より好ましくは0.1〜15w/w%、さらに好ましくは1〜13w/w%である。
【0025】
前述したメチルエフェドリン及び/又はその塩の微粒子の粒子径は、分散状態の安定性や、体内での吸収性の観点から、小さいことが好ましい。当該粒子径の上限は、好ましくは、重量平均で、150μmである。一方、当該粒子径の下限は特に限定されないが、通常、重量平均で、0.1μmである。
【0026】
プソイドエフェドリン又はその塩、特にプソイドエフェドリン塩酸塩は、エフェドリンのジアステレオマーであり、交感神経α作用による血管収縮作用を有し、鼻粘膜の充血や腫れを抑えることが知られている公知の化合物であり、市販品にて入手するか、又は公知の方法に従って製造することができる。
【0027】
プソイドエフェドリンの塩としては、薬学上許容される塩であれば特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩等を挙げることができ、なかでも塩酸塩が特に好ましい。
【0028】
本発明の液状医薬組成物においては、プソイドエフェドリン及び/又はその塩は、その少なくとも一部(好ましくは50w/w%以上、より好ましくは80w/w%以上、更に好ましくは90w/w%以上)が微粒子として存在する。
【0029】
本発明の液状医薬組成物におけるプソイドエフェドリン及び/又はその塩の含有量は、好ましくは0.01〜30w/w%、より好ましくは0.1〜20w/w%、さらに好ましくは2〜15w/w%である。
【0030】
本発明の液状医薬組成物における、メチルエフェドリン及び/又はその塩1重量部に対するプソイドエフェドリン及び/又はその塩の含有割合は、好ましくは0.01〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜8.5重量部である。
【0031】
前述したプソイドエフェドリン及び/又はその塩の微粒子の粒子径は、メチルエフェドリン及び/又はその塩の分散状態の安定性や、体内での吸収性を高める観点から、小さいことが好ましい。また当該粒子径が小さいことによりプソイドエフェドリン及び/又はその塩自体の体内での吸収性も高めることができる。当該粒子径の上限は、好ましくは、重量平均で、150μmである。一方、当該粒子径の下限は特に限定されないが、通常、重量平均で、0.1μmである。
【0032】
本発明の液状医薬組成物においては、有効成分であるメチルエフェドリン及び/又はその塩の分散性を、同じく有効成分としても作用するプソイドエフェドリン及び/又はその塩によって、向上させることができるので、軟カプセル剤に通常用いられる分散剤を使用しないか、又はその使用量を少なくすることができる。これにより、本発明の液状医薬組成物は、有効成分を安定な分散状態で多量に含有することができ、具体的には、例えば、メチルエフェドリン及び/又はその塩の含有量が1〜13w/w%であり、かつ
プソイドエフェドリン及び/又はその塩の含有量が2〜15w/w%であることができる。
【0033】
本発明における「疎水性分散媒」は、メチルエフェドリン及び/又はその塩、並びにプソイドエフェドリン及び/又はその塩の一方又は両方を分散させる媒体である。ここで、「疎水性」とは、具体的には、当該「疎水性分散媒」に対する水の溶解性が、10g/100g以下、好ましくは1g/100g以下、さらに好ましくは0.1g/100g以下であることを意味する。この溶解性は、第15改正日本薬局方通則に記載の、溶解性の試験に準じて測定することができる。
【0034】
本発明における「疎水性分散媒」としては、50℃(好ましくは37℃、さらにこの好ましくは20℃)において液体であれば特に限定されず、通常軟カプセル剤の充填溶液に用いられる疎水性分散媒を用いることができる。
具体的には、例えば、
脂肪酸と多価アルコールのエステル類(例、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類及び脂肪酸トリグリセリド類(例、長鎖脂肪酸トリグリセリド、中鎖脂肪酸トリグリセリド));
ポリエチレングリコール類(例、ポリエチレングリコール及びメトキシポリエチレングリコール);及び
動植物油類(例、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、小麦胚芽油、サフラワー油、硬化油)、多価アルコール類(例、グリセリン)等が挙げられる。
【0035】
当該「疎水性分散媒」は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明における「疎水性分散媒」として、なかでも好ましくは、例えば、脂肪酸トリグリセリド、又は動植物油であり、より好ましくは例えば、脂肪酸トリグリセリド、又は植物油であり、さらに好ましくは例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド(Medium chain fatty acid triglyceride;本明細書中、MCTと略記することもある)、トウモロコシ油、オリーブ油、ダイズ油、又はサフラワー油であり、更に好ましくは例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド又はトウモロコシ油であり、最も好ましくは中鎖脂肪酸トリグリセリドである。ここで「中鎖脂肪酸トリグリセリド」における「中鎖脂肪酸」としては、例えば、炭素数6〜12の脂肪酸(例、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸)が挙げられる。
【0037】
本発明における「中鎖脂肪酸トリグリセリド」としては、例えば、医薬品添加物規格2003で規格されている「中鎖脂肪酸トリグリセリド」を用いることができ、具体的には、ODO(商品名、日清オイリオ)、ココナード(商品名、花王)、及びパナセート(商品名、日本油脂)等が挙げられる。「トウモロコシ油」としては、例えば、第15改正日本薬局方で規格されている「トウモロコシ油」を用いることができ、具体的には、とうもろこし油(商品名、岡村精油)、トウモロコシ油(商品名、カネダ)、及び日食コーンサラダ油(商品名、日本食品化工)等が挙げられる。
【0038】
当該疎水性分散媒は、好ましくは、透明な液体である。
【0039】
本発明の液状医薬組成物における当該疎水性分散媒の含有量は、好ましくは、30〜99w/w%であり、より好ましくは40〜99w/w%であり、さらに好ましくは40〜97w/w%である。
【0040】
本発明の液状医薬組成物における、メチルエフェドリン及び/又はその塩1重量部に対する疎水性分散媒の含有割合は、好ましくは0.1〜500重量部、より好ましくは1〜200重量部、さらに好ましくは5〜100重量部である。
【0041】
本発明の液状医薬組成物における、プソイドエフェドリン及び/又はその塩1重量部に対する疎水性分散媒の含有割合は、好ましくは0.1〜500重量部、より好ましくは1〜300重量部、さらに好ましくは3〜200重量部である。
【0042】
本発明の液状医薬組成物は、本発明の効果が十分に奏される限りにおいて、他の有効成分(生理活性成分)を含有してもよい。
【0043】
このような有効成分としては、例えば
抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸プロメタジン、メチレンジサリチル酸プロメタジン、カルビノキサミン、アステミゾール、フマル酸クレマスチン、メキタジン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、イブジラスト、アンレキサノクス、シプロヘプタジン、フマル酸ケトチフェン、酒石酸アリメマジン、トラニラスト、ペミロラストカリウム、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、フマル酸エメダスチン、塩酸エピナスチン、塩酸イプロへプチン、塩酸ジフェテロール、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸プロメタジン、塩酸メトジラジン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、マレイン酸カルビノキサミン、メチレンジサリチル酸プロメタジン)、
副交感神経遮断成分(例えば、アトロピン、スコポラミン、ベラドンナ総アルカロイド、ベラドンナエキス、ヨウ化イソプロパミド、ダツラエキス、ロートエキスなど)、
メチルエフェドリン及びプソイドエフェドリンを除く他の交感神経興奮成分(例えばフェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、エフェドリン、エチレフリン、メトキサミン、ミドドリン、メトキシフェナミンなど)、
消炎酵素類(例えば、リゾチーム、セラペプターゼ、ブロメライン、プロナーゼなど)、生薬、及び生薬由来成分(例えば、ショウキョウ、カンゾウ、ニンジン、マオウ、ケイヒ、ケイガイ、サイシン、シンイ、ナンテンジツ、オウヒ、ビャクシ、ゼンコ、キキョウ、シャゼンシ、ゴオウ、ガジュツ、ビャクジュツ、ソウジュツ、ゲンチアナ、ウイキョウ、オンジ、オウバク、オウレン、チクセツニンジン、チンピ、チョウジ、セネガ、シャゼンソウ、シャジン、グリチルリチン酸など)、
キサンチン誘導体(例えば、カフェイン、テオフィリン、アミノフィリン、テオブロミン、ジプロフェイリン、プロキシフィリン、ペントキシフィリンなど)、
解熱鎮痛薬成分(例えば、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、エテンザミド、サザピリン、サリチルアミド、サリチル酸ナトリウム、ラクチルフェネチジン、イブプロフェン、ケトプロフェンなど)、
鎮咳薬成分(例えば、アクロラミド、クロペラスチン、ペントキシベリン(カルベタペンタン)、チペピジン、ジブナート、デキストロメトルファン、コデイン、ジヒドロコデイン、ノスカピンなど)、
去痰薬(例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネシンなど)、
ビタミン類(例えば、ビタミンA類[例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピンなど]、ビタミンB類[例えば、チアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノコバラミン、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニルアルコール、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、コリン、イノシトールなど]、ビタミンC類[例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、又はその誘導体など]、ビタミンD類[例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロールなど]、ビタミンE類[例えば、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン誘導体など]、その他のビタミン類[例えば、ヘスペリジン、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリンなど]など)、及び
粘膜保護成分(例えば、アミノ酢酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ジヒドロキシアルミニウム・アミノ酢酸塩などのアルミニウム系粘膜保護剤;メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ヒドロタルサイト、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウムの共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸カルシウム・炭酸マグネシウムの共沈生成物、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウム・硫酸アルミニウムカリウムの共沈生成物などのマグネシウム系粘膜保護剤など)
などが挙げられる。
【0044】
これらの有効成分は、フリー体であっても、塩であってもよい。
【0045】
なかでも好ましくは、例えばジフェニルピラリン、ヨウ化イソプロパミド、メキタジン、クロルフェニラミン、グリチルリチン酸、ベラドンナ総アルカロイド、カフェイン又はそれらの塩である。
【0046】
このような有効成分としては、なかでも、本発明の液状医薬組成物中において微粒子として安定に分散できるものや、前記「疎水性分散媒」に溶解し得るものが好ましい。
【0047】
本発明の液状医薬組成物における当該「他の有効成分」の含有量は、本発明の効果が十分に奏される限り特に限定されないが、通常、0.001〜50w/w%、好ましくは、0.01〜40w/w%である。
【0048】
本発明の液状医薬組成物は、本発明の効果が十分に奏される限りにおいて、軟カプセル剤等に通常用いられる添加剤を含有してもよい。
【0049】
このような添加剤としては、分散剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、サラシミツロウ、ポリソルベートなど)、界面活性剤(例えば、硬化ヒマシ油、セスキオレイン酸ソルビタンなど)、懸濁化剤(例えば、各種界面活性剤やアラビアゴム、アラビアゴム末、キサンタンガム、大豆レシチンなど)、乳化剤、安定化剤、緩衝剤、溶解補助剤及び酸化防止剤等を挙げることができる。
【0050】
本発明の液状医薬組成物における当該添加剤の含有量の上限は、本発明の効果が十分に奏される限り特に限定されないが、通常、20w/w%、好ましくは、5w/w%である。
【0051】
なお、本発明の液状医薬組成物では、軟カプセル剤に通常用いられる分散剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、サラシミツロウ、ポリソルベートなど)を用いなくても、メチルエフェドリン及び/又はその塩、及びプソイドエフェドリン及び/又はその塩を、疎水性分散媒中に長期間(例えば、24時間以上)安定して分散させることができるが、分散性の更なる向上のために、このような分散剤を使用してもよい。本発明の液状医薬組成物における当該分散剤の含有量の上限は、特に限定されないが、通常、10w/w%、好ましくは5w/w%、さらに好ましくは3w/w%である。本発明の液状医薬組成物がこのような分散剤を含有する場合の当該分散剤の含有量の下限は、特に限定されないが、通常、0.01w/w%である。
【0052】
本発明の軟カプセル剤は、本発明の液状医薬組成物が軟カプセル剤皮内に充填されてなる。
【0053】
本発明における「軟カプセル」としては、特に限定されず、軟カプセル剤に汎用されている軟カプセル剤皮、例えば、ゼラチンを主成分とする軟カプセル剤皮を用いることができる。
【0054】
前述のように、本発明の液状医薬組成物は、軟カプセル剤に通常用いられる分散剤を使用しないか又はその使用量を少なくしてもよいので、有効成分を安定な分散状態で多量に含有することができる。このため、本発明の軟カプセル剤は、カプセル剤を大型化しなくても、1個のカプセル剤に多量のメチルエフェドリン及び/又はその塩、及びプソイドエフェドリン及び/又はその塩を含有させることができ、具体的には、例えば、剤皮重量を含めた、一個当りカプセル重量全量が350mgのカプセル剤の場合
メチルエフェドリン及び/又はその塩の含有量が3〜35mg/個であり、及び
プソイドエフェドリン及び/又はその塩の含有量が5〜35mg/個である
ことができる。
【0055】
[製造方法]
以下に、本発明の液状医薬組成物及び本発明の軟カプセル剤の製造方法を説明する。
【0056】
本発明の液状医薬組成物は、例えば、前記疎水性分散媒、メチルエフェドリン及び/又はその塩、プソイドエフェドリン及び/又はその塩、所望により配合されるその他の有効成分、及び所望により配合される添加剤を、当該技術分野で慣用の方法により混合及び撹拌することにより製造される。
【0057】
この際、メチルエフェドリン及び/又はその塩、プソイドエフェドリン及び/又はその塩は、それぞれ粒子状の100Mesh pass品(粒子経150μm以下)を使用することが好ましい。
【0058】
混合及び撹拌するための装置は、特に限定されず、例えば、市販のバイオミキサー、ホモジェッター等の高速撹拌機又は高速粉砕機を用いることができる。
【0059】
このようにして製造された本発明の液状医薬組成物においては、(A)メチルエフェドリン及び/又はその塩の少なくとも一部(好ましくは50w/w%以上、より好ましくは80w/w%以上、更に好ましくは90w/w%以上)、及び前記(B)プソイドエフェドリン及び/又はその塩の少なくとも一部(好ましくは50w/w%以上、より好ましくは80w/w%以上、更に好ましくは90w/w%以上)は、それぞれ微粒子として存在し、
かつこれらの微粒子は、前記(C)疎水性分散媒中に安定して分散している。
【0060】
ここで、「安定に分散している」とは、粒子を分散媒中に均一に分散させた状態で、25℃で6時間(好ましくは24時間)静置しても、透明な分散媒の層と不透明な分散媒の層との分離が、目視で観察されないことを意味する。
【0061】
本発明の軟カプセル剤は、前記の本発明の液状医薬組成物を、軟カプセル剤皮に充填することによって製造される。軟カプセル剤皮への充填方法は、特に限定されず、例えば、ロータリー法や、シームレス法などの公知の方法を採用することができる。
【0062】
[適用]
本発明の液状医薬組成物及び軟カプセル剤は、メチルエフェドリンの投与が望まれている任意の疾患の治療のために用いることができ、具体的には、例えば気管支拡張、鼻づまりの改善、鼻汁分泌抑制等の用途に用いることができる。本発明の液状医薬組成物及び軟カプセル剤は、例えば、内服用(経口投与用)に用いることができ、通常の液状医薬組成物及び軟カプセル剤と同様の方法で、経口投与することができる。
【実施例】
【0063】
(1)液状医薬組成物(比較例1、比較例2、実施例1)の調製
表1に従い、各成分を5倍量ずつ秤りとって乳鉢に入れ、乳棒にて均一に混和した。撹拌後速やかに各処方の1倍量分ずつを、それぞれのガラス容器に秤り入れ、キャップを閉め、25℃、60℃の各条件下にて24時間保存した。一般に、60℃、24時間の保存条件は、25℃、50日程度保存した場合に相当する。
【0064】
【表1】

*表中数値の単位はmgである。
【0065】
なお、プソイドエフェドリン塩酸塩及び、メチルエフェドリン塩酸塩はいずれも100Mesh pass品(粒子経150μm以下)である。また、プソイドエフェドリン塩酸塩は、日本薬局方外医薬品規格に適合するものであり、メチルエフェドリン塩酸塩は第15改正日本薬局方の規格に適合するものであり、中鎖脂肪酸トリグリセリドは「トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルであり、医薬品添加物規格2003の規格に適合するものである。
【0066】
25℃、60℃の各条件下で24時間保存後の状態を目視で観察した。このときの写真を図1(25℃保存。左から比較例1、比較例2、実施例1)、及び図2(60℃保存。
左から比較例1、比較例2、実施例1)に示す。これから明らかなように、いずれの保存温度で保存した場合にも、比較例1のプソイドエフェドリン塩酸塩では一様に白濁し、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)中における分散性が高いのに対し、比較例2のメチルエフェドリン塩酸塩では、薬物が下部に沈殿し、分散性が低いことが確認された。
【0067】
一方、メチルエフェドリン塩酸塩にさらにプソイドエフェドリン塩酸塩を配合した場合(実施例1)、全く意外なことに、薬物成分は一様に分散し、本発明の課題が解決されていることが確認された。
【0068】
次に、実施例1の処方で分散しているのが、プソイドエフェドリン塩酸塩のみではなく、メチルエフェドリン塩酸塩も分散していることを確認するために、60℃、24時間保存後の比較例2、及び実施例1において、それぞれの上部(液面から5分の1の部分)及び下部(底面から5分の1の部分)を50μLずつとり、常法によりメチルエフェドリン塩酸塩の定量を行い、メチルエフェドリン塩酸塩の分布について確認した。
【0069】
結果を図3のグラフに示す。これにより、実施例1の処方で分散しているのが、プソイドエフェドリン塩酸塩のみではなく、メチルエフェドリン塩酸塩も上部まで分散していることが確認された。
【0070】
(2)液状医薬組成物(比較例3、実施例2)の調製
表2に従い、各成分を5倍量ずつ秤りとって乳鉢に入れ、乳棒にて均一に混和した。撹拌後速やかに各処方の1倍量分ずつを、それぞれのガラス容器に秤り入れ、キャップを閉め、60℃の条件下にて24時間保存した。
【0071】
【表2】

*表中数値の単位はmgである。
【0072】
なお、プソイドエフェドリン塩酸塩及び、メチルエフェドリン塩酸塩はいずれも100Mesh pass品(粒子経150μm以下)である。また、プソイドエフェドリン塩酸塩は、日本薬局方外医薬品規格に適合するものであり、メチルエフェドリン塩酸塩及びトウモロコシ油は第15改正日本薬局方の規格に適合するものである。
【0073】
60℃の条件下で24時間保存後の状態を目視で観察した。このときの写真を図4(左から比較例3、実施例2)に示す。これから明らかなように、比較例3のメチルエフェドリンでは、薬物が下部に沈殿し、分散性が低いことが確認された。
【0074】
一方、メチルエフェドリン塩酸塩にさらにプソイドエフェドリン塩酸塩を配合した場合(実施例2)、全く意外なことに、薬物成分は一様に分散し、本発明の課題が解決されていることが確認された。
【0075】
次に、実施例2の処方で分散しているのが、プソイドエフェドリン塩酸塩のみではなく、メチルエフェドリン塩酸塩も分散していることを確認するために、60℃で24時間保存後、さらに室温において23日間保存した後、比較例3、及び実施例2において、それぞれの上部(液面から5分の1の部分)及び下部(底面から5分の1の部分)を50μLずつとり、常法によりメチルエフェドリン塩酸塩の定量を行い、メチルエフェドリン塩酸塩の分布について確認した。
【0076】
結果を図5のグラフに示す。これにより、実施例2の処方で分散しているのが、プソイドエフェドリン塩酸塩のみではなく、メチルエフェドリン塩酸塩も上部まで分散していることが確認された。
【0077】
表3〜5に示す組成を有する液状医薬組成物(実施例3〜23)を常法により調製した。
【0078】
【表3】

*表中数値の単位はmgである。
【0079】
【表4】

*表中数値の単位はmgである。
【0080】
【表5】

*表中数値の単位はmgである。
【0081】
実施例3〜23の液状医薬組成物を、それぞれ軟カプセル剤皮(ゼラチン剤皮)に常法により充填し、実施例24〜44の軟カプセル剤(表6〜8)を調製した。
【0082】
【表6】

*表中の重量は1カプセルあたりの重量である。
【0083】
【表7】

*表中の重量は1カプセルあたりの重量である。
【0084】
【表8】

*表中の重量は1カプセルあたりの重量である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の液状医薬組成物は、疎水性分散媒中に有効成分であるメチルエフェドリン及び/又はその塩が安定に分散しており、軟カプセル剤に、特に好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、
(B)プソイドエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、並びに
(C)疎水性分散媒
を含有し、前記(A)成分及び(B)成分は、前記(C)成分中に分散している、液状医薬組成物。
【請求項2】
(C)成分として、脂肪酸トリグリセリド、又は動植物油を含有する、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【請求項3】
前記動植物油が植物油である、請求項2に記載の液状医薬組成物。
【請求項4】
(C)成分として、中鎖脂肪酸トリグリセリド又はトウモロコシ油を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状医薬組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量が30〜99w/w%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液状医薬組成物がカプセル剤皮に充填された軟カプセル剤。
【請求項7】
経口投与用である、請求項6に記載の軟カプセル剤。
【請求項8】
(A)メチルエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、
(B)プソイドエフェドリン及びその塩からなる群より選択される少なくとも一種、並びに
(C)疎水性分散媒
を混合することにより、前記(C)成分中における、前記(A)成分の分散性を改善する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−77072(P2012−77072A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192515(P2011−192515)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】