説明

液状堆肥の製造方法

【課題】堆肥として有効に機能する液体状の堆肥を製造すること。
【解決手段】本発明では、ペースト状にした厨芥と発酵菌を含有する菌床とを混合して発酵させることによって堆肥原料を生成する堆肥原料生成工程と、前記堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料に水を加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を抽出する液体状堆肥抽出工程とを有することを特徴とする液状堆肥の製造方法を提供することにした。また、前記液体状堆肥抽出工程で抽出した液体状の堆肥に堆肥原料をさらに加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を濃縮する液体状堆肥濃縮工程を有することを特徴とする液状堆肥の製造方法を提供することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状堆肥の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品廃棄物としての厨芥は、発酵によって堆肥化させることで有効に利用されてきている。この厨芥を原料とする固形状の堆肥は、線虫などの有害物を除去するために殺菌処理した後に、作物の植付前に圃場の土に混入して使用されていた(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−210595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、厨芥を原料とする固形状の堆肥では、線虫などの有害物によって作物の育成に悪影響を与えるおそれがあり、そのために有害物を除去するために殺菌処理を行うと、それに伴って堆肥のコスト増を招くおそれがあった。また、固形状の堆肥では、予め圃場の土に混入させておかなければならず、作物の育成途中で追加して使用することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者は、厨芥を原料とする堆肥について鋭意研究を重ね、液体状の堆肥の製造方法に関する本発明を成すに至った。
【0005】
すなわち、請求項1に係る本発明では、ペースト状にした厨芥と発酵菌を含有する菌床とを混合して発酵させることによって堆肥原料を生成する堆肥原料生成工程と、前記堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料に水を加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を抽出する液体状堆肥抽出工程とを有することを特徴とする液状堆肥の製造方法を提供するものである。
【0006】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明に加え、前記液体状堆肥抽出工程で抽出した液体状の堆肥に堆肥原料をさらに加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を濃縮する液体状堆肥濃縮工程を有することを特徴とする液状堆肥の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
そして、本発明では、堆肥原料から液体状の堆肥を抽出することによって液状堆肥を製造しているために、線虫などの有害物を除去することができるとともに、必要時に圃場に散布することができるようになり、さらには、堆肥原料中の未完熟分が良好に除去されて作物の育成に有効に機能する液状堆肥を製造することができる。また、本発明では、液体状の堆肥を濃縮することによって、堆肥としての効能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係る液状堆肥の製造方法は、概ね、ペースト状にした厨芥と発酵菌を含有する菌床とを混合して発酵させることによって堆肥原料を生成する堆肥原料生成工程と、堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料に水を加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を抽出する液体状堆肥抽出工程と、液体状堆肥抽出工程で抽出した液体状の堆肥に堆肥原料をさらに加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を濃縮する液体状堆肥濃縮工程からなる。
【0009】
堆肥原料生成工程では、まず、残飯や賞味期限切れの食品等に代表される固体状の食品廃棄物と、飲み残しや賞味期限切れの飲料製品に代表される含水率の高い液体状の食品廃棄物とを混合機で混合した後に、破砕機で食品廃棄物を液中破砕してペースト状の食品廃棄物を生成する。
【0010】
次に、発酵槽の内部でペースト状の食品廃棄物に5重量%の澱粉質を添加するとともに、発酵菌(放線菌や乳酸菌など)を含有する菌床を混合する。その際に、菌床にペースト状の食品廃棄物を混入した状態で含水率が50%〜60%程度となるように、必要に応じて加水する。なお、ここでいう菌床とは、飼料等に使われる米糖やトウモロコシ等に、炭水化物等の有機物を分解する作用を有する微生物(例えば、放線菌や乳酸菌など)を混入させ、その含水率を10%〜20%程度として、微生物を安定に貯蔵させたものをいう。
【0011】
これにより、菌床に含まれる微生物が含水率の増加によって活動を開始し、ペースト状の食品廃棄物に含まれる水分や栄養分を栄養源として増殖し、発酵槽の内部で食品廃棄物が好気的に発酵して食品廃棄物に含まれる有機物が分解される。
【0012】
この際に、発酵が進むにつれて発酵熱が発生し、約12時間後には菌床の温度が澱粉質をα化させるに十分な70℃以上に増加し、約14時間後には発酵が完了する。これにより、発酵熱によってペースト状の食品廃棄物に添加した澱粉質が食品廃棄物に含有される水分と結合してα澱粉を生成するとともに、澱粉質のα化に寄与しなかった残存する水分は、発酵の際に生成される発酵熱によって蒸発し、その結果、含水率が20%〜30%程度の固形状の堆肥原料となる。
【0013】
また、液体状堆肥抽出工程では、貯留槽の内部において、堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料に重量比で約8倍の水を加えて撹拌混合し、その後、約24時間静置する。これにより、固形分が貯留槽の底部に沈殿し、上澄み液と沈殿物とに固液分離される。そして、貯留槽の上澄み液だけを液体状の堆肥として抽出する。
【0014】
このように、堆肥原料に水を加えて液体状の堆肥を抽出することによって、固形状の堆肥原料に含まれる線虫などの有害物を除去することができるとともに、堆肥原料中の未完熟分を除去することができる。
【0015】
この液体状の堆肥は、そのままでも液状堆肥として利用することができる。また、沈殿物は、発酵菌を含有しているために菌床として再利用することができ、或いは、飼料として有効利用することもできる。
【0016】
また、液体状堆肥濃縮工程では、貯留槽において、液体状堆肥抽出工程で抽出した液体状の堆肥に重量比で約1/8倍の堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料をさらに加え、必要に応じて水も加え、撹拌混合した後に約24時間静置する。これにより、固形分が貯留槽の底部に沈殿し、上澄み液と沈殿物とに固液分離される。そして、貯留槽の上澄み液だけを液体状の堆肥として抽出する。
【0017】
この液体状堆肥濃縮工程を施すことによって、液体状の堆肥に含有される有効成分が濃縮されることになる。
【0018】
以上に説明したようにして、液状堆肥を製造することができる。この液状堆肥について有効性を試験したところ、堆肥を全く使用しないで育成した場合よりも作物の育成が促進されることが確認された。また、堆肥原料を使用して育成した場合には、堆肥を全く使用しない場合よりも作物の育成が抑制されてしまうことが確認された。このことから、堆肥原料から液体状の堆肥を抽出する液体状堆肥抽出工程によって堆肥原料中の未完熟分が良好に除去され、液状堆肥としての効能を向上させることができることが確認された。
【0019】
以上に説明したように、本発明では、堆肥原料から液体状の堆肥を抽出することによって液状堆肥を製造しているために、線虫などの有害物を除去することができるとともに、必要時に圃場に散布することができるようになり、さらには、堆肥原料中の未完熟分が良好に除去されて作物の育成に有効に機能する液状堆肥を製造することができる。
【0020】
また、液体状の堆肥を濃縮することによって、堆肥としての効能を向上させることができ、希釈して使用することによって原液の搬送に要する労力や費用を低減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状にした厨芥と発酵菌を含有する菌床とを混合して発酵させることによって堆肥原料を生成する堆肥原料生成工程と、前記堆肥原料生成工程で生成した堆肥原料に水を加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を抽出する液体状堆肥抽出工程とを有することを特徴とする液状堆肥の製造方法。
【請求項2】
前記液体状堆肥抽出工程で抽出した液体状の堆肥に堆肥原料をさらに加えて静置することで固液分離して液体状の堆肥を濃縮する液体状堆肥濃縮工程を有することを特徴とする請求項1に記載の液状堆肥の製造方法。

【公開番号】特開2007−197234(P2007−197234A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15544(P2006−15544)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(503370022)
【出願人】(506026690)
【Fターム(参考)】