説明

液状媒質プラズマ放電発生装置

本発明は、液状媒質プラズマ放電発生装置に関し、パワー電極と接地電極との間の間隙に液状媒質を満たし、間隙の中間に1つまたは複数の孔またはスリットが形成された誘電体隔膜部材を配置することにより、伝導電流量を最小化し、少ない電力量でも高電場(電界)を印加させることができる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置を提供することを目的とする。前記目的を達成するための本発明は、本体と、前記本体内部の一側に備えられ、電力を受けるパワー電極と、前記本体内に備えられ、1つ以上の孔またはスリット(slit)が形成される誘電体からなる隔膜部材と、前記本体の内部に充填される液状媒質とを含み、前記本体内において前記隔膜部材を挟んで前記パワー電極に対向する接地電極をさらに含むことができ、この場合、前記隔膜部材は、前記接地電極に接して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状媒質プラズマ放電発生装置に関し、より詳細には、液状媒質が充填された本体内部の一側に備えられたパワー電極と、前記本体内に備えられ、少なくとも1つ以上の孔またはスリットが形成された誘電体隔膜部材とを含むことにより、伝導電流量を最小化し、少ない電力量でも高電場(電界)を印加させることができる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プラズマ発生電極は、微生物殺菌、揮発性有機化合物(VOCs:Volatile Organic Compounds)などの有機無機汚染物除去などの廃水および飲用水の水処理、水中音波発生源として用いられる。
【0003】
図1は、一般的な液状媒質上でのプラズマ発生装置を示す図である。同図に示すように、一般的な液状媒質上でのプラズマ発生装置は、液体(液状媒質)が満たされる装置本体1と、前記装置本体内の一側に備えられる平板状の接地電極2と、前記装置本体内において平板状の接地電極2に対向して配置されるニードルまたはロッド状のパワー電極3と、前記パワー電極3に電力を供給するための高電圧電源装置4とを含む。前記パワー電極3は、絶縁体5によって被覆されている。図1において、点線の円は、コロナ、スパークまたはアーク放電が起こる領域である。
【0004】
このようなプラズマ発生装置は、大型化が難しく、効率が低下し、永久的な電源装置を製作することが困難である。また、このようなプラズマ発生装置は、電極寿命が短く、当該液体の伝導度が非常に低い場合(超純水水準)にのみ適用できるという限界があった。
【0005】
図2は、一般的な電極構造における液体上でのプラズマ発生電力量を説明するための図である。一般的な電極構造を有するプラズマ発生装置における液体上でのプラズマ発生電力量について、図2を参照して説明する。
【0006】
図2において、プラズマ発生電力量を求めるための基本数式は、下記のとおりである。
【0007】
電場(電界)Eは、数式E=V/dによって求められる。ここで、Vは電圧、dは伝導体積の長さである。
【0008】
電圧Vは、数式V=I×Rによって求められる。ここで、Iは伝導電流、Rは電極間抵抗である。伝導電流Iは、数式I=V/Rによって求められる。
【0009】
電極間抵抗Rは、数式R=d/A×Sによって求められる。ここで、Aは伝導体積の断面積、Sは液状媒質の電気伝導度である。
【0010】
プラズマ発生電力量Wは、数式W=V×Iによって求められる。
【0011】
液状媒質が超純水で、伝導体積の長さdが1cm、伝導体積の断面積Aが2×2=4cmの場合に、超純水の伝導度が50×10−6(S/cm)であれば、伝導抵抗Rは、数式R=d/A×Sによって求められるため、伝導抵抗Rは1/(50×10−6×4)=5000(Ω)となる。このとき、超純水中の、プラズマ放電が起こるための電場(電界)Eが5kV/cmであれば、必要な電圧VはV=E×d=5kV/cm×1cm=5kVとなる。しかし、超純水を通して伝導電流が発生する場合、このとき流れる伝導電流IはI=5000(V)/5000(Ω)=1(A)で、電力量WはW=5000(V)×1(A)=5(kW)である。
【0012】
次に、液状媒質が海水で、伝導体積の長さdが1cm、伝導体積の断面積Aが2×2=4cmの場合に、海水の伝導度は53×10−3(S/cm)であり、伝導抵抗Rは、数式R=d/A×Sによって求められるため、伝導抵抗Rは1/(53×10−3×4)=4.7(Ω)である。このとき、海水中の、プラズマ放電が起こるための電場(電界)が5kV/cmであれば、必要な電圧は5kVとなる。しかし、海水を通して伝導電流が発生し、このとき流れる伝導電流Iは、数式I=V/Rによって求めると、I=5000(V)/4.7(Ω)=1064(A)となり、電力量WはW=V×I=5000(V)×1064(A)=5.3(MW)で、この電力量は小さい都市全体に供給する総電力量に該当する。このような電源装置は存在せず、パルスを使用しても実現は不可能である。したがって、前記のような電極構造では、海水中でプラズマ放電を起こすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するためになされたものであって、本発明は、パワー電極と接地電極との間隙に液状媒質を満たし、間隙の中間に1つまたは複数の孔またはスリットが形成された誘電体隔膜を配置することにより、伝導電流量を最小化し、少ない電力量でも高電場(電界)を印加することができる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様にかかる液状媒質プラズマ放電発生装置は、液状媒質が充填された本体と、前記本体内部の一側に備えられ、電力を受けるパワー電極と、前記本体内に備えられ、少なくとも1つ以上の孔またはスリット(slit)が形成される誘電体からなる隔膜部材とを含む。
【0015】
本発明の液状媒質プラズマ放電発生装置において、隔膜部材は、パワー電極に接して配置されてもよく、あるいはパワー電極から所定距離離隔して配置されてもよい。
【0016】
本発明の他の態様にかかる液状媒質プラズマ放電発生装置は、液状媒質が充填された本体と、前記本体内部の一側に備えられ、電力を受けるパワー電極と、前記本体内に備えられ、少なくとも1つ以上の孔またはスリット(slit)が形成される誘電体からなる隔膜部材と、前記本体内において前記隔膜部材を挟んで前記パワー電極に対向する接地電極とを含み、前記隔膜部材は、前記接地電極に接して配置される。
【0017】
本発明の液状媒質プラズマ放電発生装置において、隔膜部材は、液状媒質の誘電定数よりも小さい誘電定数を有することが好ましい。
【0018】
本発明の液状媒質プラズマ放電発生装置において、前記隔膜部材に形成された孔またはスリットでの電場(電界)は、前記隔膜部材の誘電定数が小さいほど大きくなってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる液状媒質プラズマ放電発生装置は、微細管液状媒質プラズマ放電発生装置の製作が簡便であり、電極の腐食が少なく、高価な電極を使用しなくてもよいという効果がある。
【0020】
また、本発明は、液状媒質の伝導度に関係なく適用可能で、応用分野が無限であり、使用電力量が非常に少なく、既存のメッキ工程などの工程コストを最小化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一般的な液状媒質プラズマ発生装置を示す図である。
【図2】一般的な電極構造における液状媒質プラズマ発生電力量を説明するための図である。
【図3】本発明にかかる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置に対する図であって、(a)は、誘電体隔膜部材がパワー電極に接して配置される構成、(b)は、誘電体隔膜部材がパワー電極から所定距離離隔して配置される構成を示す図である。
【図4】本発明にかかる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置の変形例を示す図である。
【図5】本発明の微細管液状媒質プラズマ放電の電極構造における液状媒質上でのプラズマ発生電力量を説明する説明図である。
【図6】本発明における誘電体隔膜部材に1つの微細管が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図であって、電気ポテンシャルおよびフィールドライン(potential and field lines)を示すグラフである。
【図7】本発明における誘電体隔膜部材に1つの微細管が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図であって、液状媒質での電場(電界)分布を示すグラフである。
【図8】本発明における誘電体隔膜部材に1つの微細管が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図であって、誘電体隔膜部材の孔内での電場(電界)分布を示すグラフである。
【図9】本発明における誘電体隔膜部材に2つの微細管が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図であって、電気ポテンシャルおよびフィールドライン(potential and field lines)を示すグラフである。
【図10】本発明における誘電体隔膜部材に2つの微細管が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図であって、液状媒質での電場(電界)分布を示すグラフである。
【図11】本発明における誘電体隔膜部材に2つの微細管が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図であって、誘電体隔膜部材の孔内での電場(電界)分布を示すグラフである。
【図12】テスト用微細管液状媒質放電プラズマ発生装置に対する図であって、テスト用プラズマ発生装置の外形を示す図である。
【図13】テスト用微細管液状媒質放電プラズマ発生装置に対する図であって、テスト用プラズマ発生装置の内部構成を示す図である。
【図14】テスト用微細管液状媒質放電プラズマ発生装置に対する図であって、テスト用プラズマ発生装置の断面図である。
【図15】図12〜図14のテスト用プラズマ発生装置による放電メカニズムを説明するための基本構成図である。
【図16】テスト用プラズマ発生装置による放電メカニズムを示すフローチャートである。
【図17】イオンの移動速度を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特定の構造または機能的説明は、単に本発明の概念による実施形態を説明するための目的で例示されたものであり、本発明の概念による実施形態は、多様な形態で実施可能であり、本明細書または出願に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0023】
本発明の概念による実施形態は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施形態は図面に例示し、本明細書または出願に詳細に説明する。しかし、これは、本発明の概念による実施形態を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものと理解されなければならない。
【0024】
第1および/または第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用できるが、前記構成要素は前記用語に限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的としてのみ、例えば、本発明の概念による権利範囲を逸脱しない範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と名付けられてもよいし、同様に、第2構成要素は第1構成要素と名付けられてもよい。
【0025】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるとか「接続されて」いると言及されたときは、前記他の構成要素に直接的に連結されているかまたは接続されていてもよいが、中間に他の構成要素が存在してもよいことが理解されなければならない。反面、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるとかまたは「直接接続されて」いると言及されたときは、中間に他の構成要素が存在しないことが理解されなければならない。構成要素間の関係を説明するための他の表現、すなわち、「〜間に」と「直に〜間に」または「〜に隣接する」と「〜に直接隣接する」などの表現も同様に解釈されなければならない。
【0026】
本明細書で使う用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別に意図しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、説示された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組合せたものが存在することを指定しようとするもので、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組合せたものの存在または付加可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0027】
別に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで使われるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されなければならず、本明細書で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明することで本発明を詳細に説明する。各図面に示された同一の参照符号は同一の構成要素を表す。
【0029】
図3(a)は、誘電体隔膜部材30がパワー電極20に接して構成される、本発明にかかる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置の一実施形態であり、図3(b)は、誘電体隔膜部材30がパワー電極20から所定距離離隔して配置された、本発明にかかる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置の一実施形態である。
【0030】
本発明にかかる微細管液状媒質プラズマ放電発生装置は、液状媒質が充填された本体10と、前記本体内部の一側に備えられ、電力を受けるパワー電極20と、前記本体内に備えられ、少なくとも1つ以上の孔またはスリット(slit)が形成される誘電体からなる隔膜部材30とを含む。前記パワー電極20は、電力供給装置(図示せず)から電力を受ける。図3(a)に示されるように、前記隔膜部材30は、前記パワー電極20に接して配置されてもよく、図3(b)に示されるように、前記隔膜部材30は、前記パワー電極20から所定距離離隔して配置されてもよい。
【0031】
一方、図4は、本発明の液状媒質プラズマ放電発生装置の変形例の構成を示す図である。図4に示すように、本発明の液状媒質プラズマ放電発生装置の変形例として、液状媒質が充填された本体10と、前記本体内部の一側に備えられ、電力を受けるパワー電極20と、前記本体内に備えられ、少なくとも1つ以上の孔またはスリット(slit)が形成される誘電体からなる隔膜部材30と、前記本体内において前記隔膜部材を挟んで前記パワー電極に対向する接地電極50とを含み、前記隔膜部材30は、前記接地電極50に接して配置される。つまり、図4に示す本発明のプラズマ放電発生装置の変形例は、前記本体10内において前記隔膜部材30を挟んで前記パワー電極20に対向する接地電極50をさらに含むが、この場合、前記隔膜部材30は、前記接地電極50に接して配置される構成である。
【0032】
前記実施形態および変形例において、前記誘電体隔膜部材30の孔またはスリット31での電場(電界)は、誘電体隔膜部材30での電場(電界)と同じであり、液状媒質40の伝導性による伝導電流量は、孔またはスリット31の断面積に比例し、長さd(図5参照)に反比例する。
【0033】
また、大部分の極性液状媒質の誘電定数は、誘電体隔膜部材30の誘電定数よりもはるかに高いため、孔またはスリット31内での電場(電界)を極大化することができる。すなわち、前記誘電体隔膜部材30の誘電定数は、液状媒質40の誘電定数よりも小さい。
【0034】
したがって、伝導電流量を最小化し、少ない電力量でも高電場(電界)を印加することができる。これは、製作が簡便であり、電極20、50の腐食が少なく、高価な電極を使用しなくてもよい。また、液状媒質の伝導度に関係なく適用可能で、応用分野が無限であり、使用電力量が非常に少なく、既存のメッキ工程などの工程コストを最小化することができ、永久的な電源装置の製作が簡便である。
【0035】
図5は、本発明の微細管液状媒質プラズマ放電の電極構造(図3(b))における液状媒質でのプラズマ発生電力量を説明する説明図である。説明に先立ち、プラズマ発生電力量を求めるための基本数式は、下記のとおりである。
【0036】
電場(電界)Eは、数式E=V/dによって求められる。ここで、Vは電圧、dは伝導体積の長さである。
【0037】
電圧Vは、数式V=I×Rによって求められる。ここで、Iは伝導電流、Rは電極間抵抗である。伝導電流Iは、数式I=V/Rによって求められる。
【0038】
電極間抵抗Rは、数式R=d/A×Sによって求められる。ここで、Aは伝導体積の断面積、Sは液状媒質の電気伝導度である。
【0039】
プラズマ発生電力量Wは、数式W=V×Iによって求められる。
【0040】
したがって、本発明の微細管液状媒質プラズマ放電の電極構造における液状媒質上でのプラズマ発生電力量は、上記数式を利用して求めることができる。
【0041】
本発明における液状媒質上でのプラズマ発生電力量を求めるための試験条件は、下記のとおりである。
【0042】
本発明では、液状媒質が海水で、伝導体積の長さdが1cm、誘電体隔膜部材30の孔31の面積が0.1×0.1=0.01cm、海水の伝導度は53×10−3(S/cm)の場合として試験条件を定めた。
【0043】
電極間伝導抵抗Rは、数式R=d/A×Sによって求められるため、伝導抵抗Rは1/(53×10−3×0.01)=1887(Ω)となる。ここで、海水中の、プラズマ放電が起こるための電場(電界)Eが5kV/cmであれば、必要な電圧VはV=E×d=5kV/cm×1cm=5kVとなる。
【0044】
海水を通して伝導電流が発生し、このとき流れる伝導電流IはI=V/R=5000(V)/1887(Ω)=2.65(A)となる。電力量WはW=V×I=5000(V)×2.65(A)=13.2(kW)となる。ここで、パルス電圧を使用すると、効率的に放電を維持することができる。
【0045】
このとき、電解質中のイオンの最高移動速度は制限されているため、狭い流体通路(孔またはスリット)を介してプラズマ放電なしにオームの法則のとおり電流が流れることが困難である。したがって、実際に要求される電力量は13.2kWよりもはるかに少ない。
【0046】
図6〜図8は、本発明における誘電体隔膜部材30に1つの微細管31が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図であり、図9〜図11は、本発明における誘電体隔膜部材30に2つの微細管31が備えられた液状媒質プラズマ放電電極の物理量をテストした結果を示す図である。図6および図9は、電気ポテンシャルおよびフィールドライン(potential and field lines)を示すグラフである。図7および図10は、液状媒質での電場(電界)分布を示すグラフで、図8および図11は、誘電体隔膜部材の孔内での電場(電界)分布を示すグラフであって、縦軸は電場(電界)の強度を示し、横軸は、各図面の右側下端に示された微細管での、1→2に沿った線の位置を示す。
【0047】
一方、図12〜図14は、テスト用微細管液状媒質放電プラズマ発生装置に対する図であって、図12は、テスト用プラズマ発生装置の外形を示す図であり、図13は、テスト用プラズマ発生装置の内部構成を示す図であり、図14は、テスト用プラズマ発生装置の断面図である。
【0048】
図12〜図14において、反応器の予想素子特性は、反応器の抵抗が〜1.92kΩで、反応器の静電容量が〜2pFである。要求電源装置は、予想として、出力電圧が〜10kV、波形が+またはバイポーラ(bi polar)矩形波であり、負荷サイクル(duty cycle)が〜50usec、Repfが〜2kHz、電流ピーク(current peak)が〜5.2A、電力範囲(power Range)が〜5.2kWである。参照として、10kVにおいて、イオンの移動速度は、水素(H)の場合が36.3cm/secで、ヒドロキシ(OH)の場合が20.7cm/secで、ナトリウム(Na)の場合が5.2cm/secで、塩素(Cl)の場合が7.9cm/secである。
【0049】
一般的に、水溶液を含む極性溶媒の誘電定数は、固体誘電体に比べて大きい値を有する。例えば、誘電定数は、蒸溜水が80で、炭酸エチレンが89.6で、炭酸プロピレンが64で、アルミニウムやセラミックが10で、ガラスが5で、アクリルが2.1である。図15では、誘電体隔膜部材の材質は、アクリルとして誘電定数εは2.1であり、液状媒質は、海水として誘電定数εは80以上である。
【0050】
液状媒質内の誘電体隔膜部材30の微細管31での電場(電界)の強度Eは、下記式によって算出できる。
【数1】

【0051】
ここで、Eは誘電体隔膜部材の微細管での電場(電界)の強度で、Eは液状媒質での電場(電界)の強度である。dは誘電体隔膜部材の微細管の長さで、dは液状媒質の伝導体積の長さである。εは誘電体隔膜部材の誘電定数で、εは液状媒質の誘電定数である。
【0052】
上記式から明らかなように、固体誘電体によって取り囲まれた微細管での電場(電界)は、周辺の固体誘電体での電場(電界)の影響を受けて高電場(電界)が適用可能である。したがって、与えられた電圧条件において、固体誘電体の誘電定数が低いほど微細管内により高い電場(電界)を印加することができる。
【0053】
上記式によれば、固体誘電体の厚さが薄いほど微細管内に高電場(電界)を印加することができるが、固体誘電体の厚さが薄すぎると微細管の電気抵抗が低くなり、プラズマが発生せず、電気電解伝導がなされて電力損失が増加することがある。
【0054】
海水の伝導度Sは53mS/cmで、海水の比抵抗Rsは18.9Ωcmである。誘電体隔膜部材の孔での伝導抵抗Rhは9.6kΩである。
【0055】
図15は、図12〜図14のテスト用プラズマ発生装置による放電メカニズムを説明するための基本構成図であり、図16は、放電メカニズムを示すフローチャートである。図16において、(a)は、誘電体隔膜部材の孔またはスリットで空洞(cavity)またはバブルが生成されることを示し、(b)は、前記孔またはスリットで放電チャネルが生成されることを示し、(c)は、活性基、紫外線および化学物質が放出されることを示し、(d)は、空洞およびバブルが崩壊され衝撃波が発生することを示す。
【0056】
また、図17は、イオンの移動速度を示す表である。
【0057】
上記のように、誘電体隔膜部材の孔またはスリットでの電場(電界)は、誘電体隔膜部材での電場(電界)と同じであり、液状媒質の伝導性による伝導電流量は、孔またはスリットの断面積に比例し、長さに反比例する。大部分の極性液状媒質の誘電定数は、誘電体隔膜部材の誘電定数よりもはるかに大きいため、孔またはスリット内での電場(電界)を極大化することができる。
【0058】
したがって、伝導電流量を最小化し、少ない電力量でも高電場(電界)を印加することができる。
【0059】
以上で説明した本発明は、上述した実施形態および添付した図面によって限定されるものではなく、本発明の思想および範囲を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形および変更が可能であることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、そのような修正例または変形例は、本発明の特許請求の範囲に属するというべきである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
このような微細管液状媒質プラズマ放電の応用分野は、飲用水処理、廃水処理、バラスト水殺菌、農業用水処理、農薬代替、食加工、造景、水貯蔵タンク殺菌、加湿器殺菌、医療機器洗浄水、洗浄用水処理、淡水化設備、養殖場殺菌、水槽殺菌、赤潮/青粉防止などの環境分野と、単位操作、半導体および平板ディスプレイ製造ウェット工程、電気電解メッキ、ケミカル製造などの産業工業分野と、水中衝撃波発生、ソーナー装備(水中音波発生)、水中光源、水中ジェット(Jet)などに適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒質が充填された本体と、
前記本体内部の一側に備えられ、電力を受けるパワー電極と、
前記本体内に備えられ、少なくとも1つ以上の孔またはスリット(slit)が形成される誘電体からなる隔膜部材とを含むことを特徴とする液状媒質プラズマ放電発生装置。
【請求項2】
前記隔膜部材は、前記パワー電極に接して配置されることを特徴とする請求項1に記載の液状媒質プラズマ放電発生装置。
【請求項3】
前記隔膜部材は、前記パワー電極から所定距離離隔して配置されることを特徴とする請求項1に記載の液状媒質プラズマ放電発生装置。
【請求項4】
前記隔膜部材は、前記液状媒質の誘電定数よりも小さい誘電定数を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状媒質プラズマ放電発生装置。
【請求項5】
前記隔膜部材に形成された孔またはスリットでの電場(電界)は、前記隔膜部材の誘電定数が小さいほど大きくなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状媒質プラズマ放電発生装置。
【請求項6】
前記本体内において前記隔膜部材を挟んで前記パワー電極に対向する接地電極をさらに含み、
前記隔膜部材は、前記接地電極に接して配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状媒質プラズマ放電発生装置。
【請求項7】
前記隔膜部材は、前記液状媒質の誘電定数よりも小さい誘電定数を有することを特徴とする請求項6に記載の液状媒質プラズマ放電発生装置。
【請求項8】
前記隔膜部材に形成された孔またはスリットでの電場(電界)は、前記隔膜部材の誘電定数が小さいほど大きくなることを特徴とする請求項6に記載の液状媒質プラズマ放電発生装置。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−504157(P2013−504157A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527809(P2012−527809)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004789
【国際公開番号】WO2011/027973
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(509242864)コリア・ベーシック・サイエンス・インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】