説明

液状流体の検査器具および検査方法

【課題】 液状流体による反応について正確な計測を行う。
【解決手段】 第2プレート2、第4プレート4に、黒色の印刷面202b、204bが形成されている。印刷面202bは、第3プレート3の貫通部71の径よりも小さな領域を除き、第2プレート2の表面をほぼ覆っている。この部分には所定量の試薬が塗布されている。試薬が塗布される面には、親水処理がなされている。第4プレート4も、第2プレート2と同様である。試薬を塗布するとき、親水処理によって塗布された試薬が水平方向に広がろうとするとともに周囲の壁の撥水機能によりこの壁を越えていくように広がることを防止できる。これによりムラなく、試薬を塗布できる。また、印刷面により計測時に、一番小さな径でカットした透過光で計測が可能となるので、位置ズレによる不正確な計測を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状流体の特性を検査する器具に関し、特に、透過光検出に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、体液成分を検査する検査器具200が開示されている。図1に、かかる検査器具200の断面図を示す。
【0003】
検査器具200における反応室について説明する。多孔性のプレートである第3プレート3には貫通穴71が形成されており、第2プレート2,第4プレート4には、この貫通穴に対向する位置にそれぞれ底付きの穴72、73が設けられている。第4プレート4の底付きの孔73の底面には、試薬が塗布されている。貫通穴71、底付きの穴72、73により、所定体積を有する測定室7が形成される。
【0004】
かかる測定室7に検体Aが導かれると所定の呈色反応が生じる。これを、矢印220方向から光を照射し、測定室7を透過した光をセンサー等で読み取り、得られた光強度の値を積分する。これにより、提供された検体の特性を判断することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002-224090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記測定室について、以下のような問題があった。
【0007】
上記のように、第3プレート3と第4プレート4の穴の位置ずれが生ずると、貫通穴71、底付きの穴72、73の位置関係がずれる。このように反応室で起こった呈色反応によって生成された色素量を吸光度によって測定する場合、穴の位置ズレが生ずると、ズレの分だけ測定結果に影響を及ぼす。
【0008】
また、位置ズレがないとしても、以下のような問題がある。一般に、上記第2プレート2,第4プレート4には、AS(スチレン・アクリロニトリル)、PC(ポリカーボネート)、アクリル、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の、光透過性に優れた樹脂が用いられる。これらの樹脂の表面は疎水性を有する。すなわち、試薬水溶液とはなじみにくく、接触角が大きい。したがって、そのまま表面に試薬水溶液を塗布すると、試薬の厚みにムラができ、この結果、呈色反応にもムラがおき、正確な測定ができなくなる。
【0009】
このような問題は血液検査だけでなく、体液、さらには検査対象が液状流体の場合にも、同様に問題となる。
【0010】
この発明は、液状流体による反応について正確な計測が可能となる簡易な検査器具または検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1)本発明にかかる検査方法は、A)検査対象液状流体を供給するための供給部と、前記検査対象液状流体を試薬と反応させる反応室と、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を前記反応室まで移送するための流路とを備えた検査器具、を用いた検査方法であって、B)前記検査器具は、b1)光透過性第1プレートと、前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレートと、前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレートを備えており、b2)前記反応室は、前記多孔性プレートに形成された所定形状の貫通溝を前記光透過性1プレートおよび光透過性第2プレートで挟むことにより、構成されており、b3)前記光透過性第1プレートおよび光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側には、それぞれ親水処理面が形成されており、b4)前記親水処理面は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな形状で表面が露出するように、光非透過性プリント印刷面で覆われており、b5)前記光透過性第1プレート及び前記光透過性第2プレートの露出した親水処理面には、それぞれ異なる試薬が付着させられており、C)前記供給部に供給された検査対象液状流体を前記供給部に設けられた加圧部によって加圧して、前記流路を介して前記反応室内に移送し、D)前記反応室における前記検査対象液状流体と前記試薬との呈色反応を、光を透過させて測定する。
【0012】
このように、親水処理を行うことにより、表面が疎水性を有する場合でも、塗布する試薬の厚みのムラを防止することができる。また、前記光非透過性プリント印刷面が壁になり、資料が塗布された時に、それ以上、試薬が広がることを防止する。これにより、試薬を塗布したときに、ムラができない。また、前記親水処理面は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな形状で露出するように、光非透過性プリント印刷面で覆われている。したがって、前記反応室のうちの一部の呈色反応を測定できる。これにより、前記光透過性第1プレート、前記光透過性第2プレートおよび前記多孔性プレートの位置ズレがあったとしても、正確な測定ができる。
【0013】
2)本発明にかかる検査器具は、1)検査対象液状流体を供給するための供給部を有する光透過性第1プレート、2)前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレート、3)前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレートを備えた検査器具であって、4)前記多孔性プレートには、前記検査対象液状流体を試薬と反応させるための反応室、および前記反応室と連通した多孔性プレート連絡流路が設けられており、5)前記光透過性第1プレートには、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を多孔性プレート連絡流路まで移送するための光透過性第1プレート流路が設けられており、6)前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側、前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の少なくとも一方は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな形状を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、7)前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない小さな領域には親水処理がなされており、8)前記親水処理がなされた面には、試薬が付着させられている。
【0014】
このように、親水処理を行うことにより、表面が疎水性を有する場合でも、塗布する試薬の厚みのムラを防止することができる。また、前記光非透過性プリント印刷面が壁になり、資料が塗布された時に、それ以上、試薬が広がることを防止する。これにより、試薬を塗布したときに、ムラができない。また、前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない前記小さな形状は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さい。したがって、前記反応室のうちの一部の呈色反応を測定できる。これにより、前記光透過性第1プレートまたは前記光透過性第2プレートと、前記多孔性プレートとの位置ズレがあったとしても、正確な測定ができる。
【0015】
3)本発明にかかる検査器具においては、前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側および前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の双方とも、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな形状を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない小さな領域には親水処理がそれぞれなされており、前記2つの親水処理がなされた面には、それぞれ異なる試薬が付着させられている。したがって、予め混合できない試薬について、検査対象液状流体が供給されたときに、この検査対象液状流体によって異なる試薬を混合させることができる。
【0016】
4)本発明にかかる検査器具においては、前記光透過性第1プレートの前記小さな領域と前記光透過性第2プレートの前記小さな領域とは大きさが異なる。したがって、前記小さな領域のうちより小さな方の領域にて計測が可能である。よって、前記光透過性第1プレート、前記光透過性第2プレート、および前記多孔性プレートとの位置ズレがあったとしても、正確な測定ができる。
【0017】
5)本発明にかかる検査器具は、1)検査対象液状流体を供給するための供給部を有する光透過性第1プレート、2)前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレート、3)前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレートを備えた検査器具であって、4)前記多孔性プレートには、前記検査対象液状流体を試薬と反応させるための反応室、および前記反応室と連通した多孔性プレート連絡流路が設けられており、5)前記光透過性第1プレートには、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を多孔性プレート連絡流路まで移送するための光透過性第1プレート流路が設けられており、6)前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側、前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の少なくとも一方は、前記反応室における呈色反応を調べる光を照射する方向に垂直な面における断面形状よりも小さな領域を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、7)前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない領域には親水処理がなされており、8)前記親水処理がなされた面には、試薬が付着させられている。
【0018】
このように、前記反応室における呈色反応を調べる光を照射する方向に垂直な面における断面形状よりも小さな領域を残して光非透過性プリント印刷面で覆い、前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない領域に親水処理を行うことにより、表面が疎水性を有する場合でも、塗布する試薬の厚みのムラを防止することができる。また、前記光非透過性プリント印刷面が壁になり、資料が塗布された時に、それ以上、試薬が広がることを防止する。これにより、試薬を塗布したときに、ムラができない。
【0019】
また、前記反応室における呈色反応を調べる光を照射する方向に垂直な面における断面形状よりも小さな領域を残して光非透過性プリント印刷面で覆われている。したがって、前記反応室のうちの一部の呈色反応を測定できる。これにより、前記光透過性第1プレートまたは前記光透過性第2プレートと、前記多孔性プレートとの位置ズレがあったとしても、正確な測定ができる。
【0020】
6)本発明にかかる検査器具は、1)検査対象液状流体を供給するための供給部を有する光透過性第1プレート、2)前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレート、3)前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレートを備えた検査器具であって、4)前記多孔性プレートには、前記検査対象液状流体を試薬と反応させるための反応室、および前記反応室と連通した多孔性プレート連絡流路が設けられており、5)前記光透過性第1プレートには、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を多孔性プレート連絡流路まで移送するための光透過性第1プレート流路が設けられており、6)前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側、前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の少なくとも一方は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな領域を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、7)前記小さな領域には親水処理がなされている。
【0021】
このように、前記親水処理された面に、所定の試薬を付着させる場合に、付着させる試薬の厚みのムラを防止することができる。また、その際、前記光非透過性プリント印刷面が壁になり、資料が塗布された時に、それ以上、試薬が広がることを防止する。これにより、試薬を塗布したときに、ムラができない。また、前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない前記小さな形状は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さい。したがって、透過光で前記反応室の呈色反応を測定するときに、前記反応室のうちの一部の呈色反応によって測定することができる。これにより、前記光透過性第1プレートまたは前記光透過性第2プレートと、前記多孔性プレートとの位置ズレがあったとしても、正確な測定ができる。
【0022】
なお、本明細書において、「光透過性第1プレート」とは、第2プレート2が、「多孔性プレート」とは、第3プレート3が、「光透過性第2プレート」とは第4プレートがそれぞれ該当する。「反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状」とは、実施形態では、測定室7の水平方向の断面形状が該当する。「多孔性プレート連絡流路」とは実施形態では、貫通孔81が該当し、「光透過性第1プレート流路」とは、実施形態では貫通部82および貫通溝83が該当する。
【0023】
また、「検査対象液状流体」には、血液、唾液、尿、リンパ液、汗、細胞室間液という体液だけでなく、他の液状流体も含む。また、「反応室」とは実施形態では測定室7が該当する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明にかかる検査器具の一実施形態として血液検査器具100を図面に基づいて説明する。図2に血液検査器具100の縦断面図を、図3に血液検査器具100の分解斜視図を示す。
【0025】
検査器具100は、上下方向に積層された4つの第1プレート1〜第4プレート4を備えている。最上層側の第1プレート1には、円形の検体供給口11が形成されている。検体供給口11の上部周囲には堰12が設けられている。この堰12には、有底円筒形状の栓体5が着脱可能に設けられている。栓体5は、弾性材料であるブチルゴムにて形成した。
【0026】
第1プレート1の下方に配置する第2プレート2には、供給口11との対向部位に円形状の凹入部20が設けられている。凹入部20の内部には円形状の複数のリブ21が同芯状および放射状に形成されている(図2参照)。リブ21は、血球を分離除去する非対称孔径膜からなる血球分離膜6を支持する。
【0027】
第2プレート2には、リブ21の中心部に上下方向に延びる貫通孔81が形成されている(図2参照)。
【0028】
第3プレート3は、所定距離離れた位置に2つの円形の貫通部71、82を有してる。貫通部71、82間は、直線状の貫通溝83で連結されている(図2参照)。貫通部82は、第2プレート2と重ね合わせた状態で、貫通孔81とほぼ同心の位置に設けられる。貫通部82は、第2プレート2の貫通孔81よりも径が大きい。これは、検体Aが測定室7に導かれやすいようにするためであるが、これは必須の形状ではない。
【0029】
また、第2プレート2のうち、第3プレート3と接する側の面には、第3図に示すように、黒色の印刷面202bが形成されている。印刷面202bは、第3プレート3の貫通部71の径よりも小さな径の印刷無し領域部分を除き、第2プレート2の表面をほぼ覆っている。第2プレート2の印刷面202bが存在しない部分には所定量の試薬が塗布されている。試薬が塗布される面には、親水処理がなされている。印刷面202bの形状、試薬の塗布および親水処理の詳細については後述する。
【0030】
第4プレート4についても、第2プレート2と同様に、第3プレート3と接する面には、黒色の印刷面204bが形成されている。印刷面204bは第3プレート3の貫通部71に対向する位置を除き、第4プレート4の表面をほぼ覆っている。印刷面204bの貫通部71に対向する位置には、第2プレートとは異なる所定量の試薬が塗布されている。試薬が塗布される面には、親水処理がなされている。印刷面204bの形状、試薬の塗布および親水処理面の詳細については後述する。
【0031】
第3プレートの貫通部71を、第2プレート2および第4プレート5で挟み込むことにより、測定室7が構成される。
【0032】
本実施形態においては、第1プレート1,第2プレート2および第4プレート4は、加工が容易な樹脂材料として、AS樹脂(スチレン・アクリロニトリル樹脂)を用いたが、これに限定されない。また、第3プレート3は、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜として、厚み75μmで孔径1μmのPTFE(四フッ化エチレン樹脂)フィルムを用いたがこれに限定されない。かかる通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜を用いるのは、検体Aを外部に逃がすことなく、流路内に存在する空気を外部に逃がすことにより、検体Aを測定室7に確実に移送するためである。また、前記栓体5としてブチルゴム製のものを用い、血球分離膜6としては非対称孔径膜を用いた。
【0033】
第2プレート2および第4プレート4の印刷面、試薬の塗布および親水処理面について図4を用いて説明する。以下では、第4プレート4を例として説明するが、第2プレート2についても同様である。
【0034】
図4Aに示す第4プレート4の第3プレート側の面である第1面184に、図4Bに示すように、親水処理を行う。親水処理は、親水機能を有する膜をコーティング等すればよい。これにより、第1面184が全面、親水処理面4dによって覆われる。つぎに、図4Cに示すように、親水処理面4dの一部に穴186が形成されるように黒色の印刷面4cを形成する。穴186は、第3プレート3の貫通穴71の直径よりも小さな直径d4の円形状とした。これにより、穴186以外の親水処理面は印刷面4cで覆われる。なお、本実施形態においては、親水処理面4dの表面に黒色のスクリーン印刷をおこなうことにより、印刷面4cを形成した。
【0035】
かかる穴186に所定量の試薬を塗布する。塗布した直後は、図5Aに示すように、穴186には試薬188が塗布されている。
【0036】
親水処理および印刷面204による効能について説明する。本実施形態においては、穴186の露出面では、親水処理がなされており、かつ、穴186の周辺は印刷面4cによって、壁が形成されている。かかる穴186に試薬を塗布すると、親水処理によって塗布された試薬が水平方向に広がろうとする。一方、印刷面4cは撥水機能を有するので、印刷面4cによって形成された壁を越えていくように広がることを防ぐ。これにより、試薬188が穴186を越えるように広がったり、また、逆に穴186の一部にのみ付着すること(図5C参照)がなく、塗布された試薬は、図5Aに示すように、穴186から盛り上がるような形状となる。時間の経過とともに、試薬188の水分が蒸発し、図5Bに示すように、表面がなだらかに固まる。なお、図5Bにおいては、印刷面204bと同じ高さになっているが、必ず、このような形状になるわけではない。
【0037】
なお、第2プレート2についても、第4プレート4と同様に、印刷面、試薬の塗布および親水処理面が形成される。
【0038】
なお、第2プレート2と第4プレート4に塗布される試薬は、種類の異なる試薬が所定量塗布されている。かかる試薬の種類は、測定対象によって変更すればよい。たとえば、生体の体液成分である血中グルコースを測定する場合は、一方に、NAD(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)とテトラゾリウム塩を含んだものを、他方に、グルコース脱水酵素、ジアホラーゼ、緩衝液を含んだものを、塗布して乾燥させておけばよい。なお、これらは逆に塗布することも可能である。
【0039】
本実施形態においては、第2プレート2の親水処理面に、NAD3.6wt%、WST−3[2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4ジニトロフェニル)−5−(2,4ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウム;同仁化学社製]の5.2wt%を含んだ試薬の10μlを滴下し、第2プレート2の親水処理面に、グルコース脱水酵素2KU/ml、ジアホラーゼ1KU/ml、pH7.5の50mMリン酸緩衝液を含んだ試薬の10μlを滴下し、それぞれ乾燥させた。
【0040】
また、中性脂肪(トリグリセライド)を測定するときは、NADとテトラゾリウム塩を含んだものを一方に、リパーゼ、グリセロール脱水素酵素、ジアホラーゼ、緩衝液を含んだものを他方に、塗布すればよい。
【0041】
また、総コレステロールを測定する場合には、NADとテトラゾリウム塩を含んだものを一方に、コレステロールエステラーゼ、コレステロール脱水素酵素、ジアホラーゼ、衝撃液を含んだものを、他方に塗布すればよい。
【0042】
なお、試薬の量については、試薬と反応する検体Aの体積、すなわち、塗布された試薬が乾燥した後の測定室7の体積に基づき決定すればよい。
【0043】
第1プレート1〜第4プレート4は、接着剤を介して、積層状態にて一体化される。また、血球分離膜6は、接着剤により、前記第1プレート1および第2プレート2と固定される(図示せず)。
【0044】
つぎに、実際の測定方法について簡単に説明する。ユーザは、図1に示すように、検体供給口11から検体Aを供給する。そして、栓体5を検体供給口11に被せ、指で加圧する(図示せず)。これにより、測定室7や流路8内の空気が、第3プレートから外部に排出されて、検体Aが測定室7内に送り込まれる。このように、本実施形態においては、貫通部82、貫通孔81、貫通部83により、流路が形成されている。
【0045】
測定室7には、2種類の試薬が空間を形成するように離れて塗布されており、測定室7の側面173の孔175から測定室7の空間に、検体Aが搬送されると、検体Aと2種類の試薬との反応が開始する。1の空間内で2種類の試薬とまとめて混合されるので、従来と比べて薄い部分や濃い部分ができるという問題を解決することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、対向する平面に2種類の試薬を塗布しているので、これらの試薬を塗布させやすいという効果もある。また、対向する平面に2種類の試薬を塗布場合には、両平面の距離の制御が容易である。したがって、かかる距離を制御することにより、検体と2種類の試薬を混ぜ合わせて反応させることも制御できる。
【0047】
測定室7での検体Aの測定方法については、従来から知られている透過光を用いた光学測定が採用できる。例えば、測定室7における呈色反応を、第4プレート4の下方から第2プレート2に向かって、たとえば、波長565nmの透過光Bを照射し、前記測定室7での発色量を透過光Bの吸収により測定すればよい。その際、第2プレート2および第4プレート4は、黒色の印刷面でマスクされている。また、第2プレート2の孔径d2、第4プレート4の孔径d4、第3プレート3の孔径d3の関係は、図6に示すように、d3>d4>d2となっている。したがって、照射した光は、図7Aに示すように、いちばん小さな径d2でカットされることとなる。これにより、図7Bに示すような検出値が得られる。このようにして、得られた検出値の積分値を計測することにより正確に呈色反応を測定することができる。なぜなら、第2プレート2,第3プレート3、第4プレート4の3枚のプレートにて、印刷面および貫通穴の加工に、多少位置ズレが起こった場合でも、最小孔である孔径d2を通過する光の量で呈色反応を計測できるからである。
【0048】
なお、本実施形態においては、生体の体液成分として血液を測定する場合について説明したが、血液以外の体液、たとえば、唾液、尿、リンパ液、汗、細胞間液であってもよく、さらに、これらの体液以外でも、少なくとも2種類の試薬と反応させる液状流体であればどのようなものでも適用することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、流路および測定室を1つだけ設けた場合について説明したが、流路および測定室を複数、形成し、これらの箇所に異なる試薬を塗布しておき、複数の検査をするようにしてもよい(特開2002-224090号公報の図3参照)。
【0050】
なお、本実施形態においては、第3プレート3を、光透過性第1プレートであるプレート2と、光透過性第2プレートであるプレート4とで直接挟み込んだが、これらの間にさらに別のプレートを挟み込むことも可能である。
【0051】
なお、本実施形態においては、栓体5を加圧することにより、流路8および測定室7に存在する空気を外部に排出させて、検体Aを測定室7にスムーズに導くようにしたが、流路8および測定室7に存在する空気を外部に排出できれば、どのようなものであってもよく、たとえば、検査器具を密封空間に入れ、当該密封空間の圧を負圧状態とするようにしてもよい。
【0052】
また、測定室,流路の形状については、本実施形態の形状に限定されず、どのようなものであってもよい。
【0053】
また、上記印刷面は黒としたが、これに限定されず、遮光性があれば他の色であってもよい。かかる遮光性より、光がどこから回り込んで来る現象(迷光)も防止できる。
【0054】
上記実施形態においては、第4プレート4の表面全面に親水処理を施してから、スクリーン印刷をするようにしたが、上記親水処理は、その後、孔が形成される領域を含むように、一部のみ親水処理をしてもよい。
【0055】
また、上記親水処理は、スクリーン印刷をしてから、印刷面で覆われなかった部分のみ、親水処理をするようにしてもよい。かかる親水処理としては、スパッタリング法等、公知の手法が可能である。
【0056】
なお、本実施形態においては、対向する平面に2種類の試薬を塗布しているが、これは、同じ試薬でもよい。また、一方のみに試薬を塗布してもよい。この場合塗布しない側には親水化処理は不要である。また、試薬を塗布しない側は上記黒色印刷を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】従来の検査器具200を示す縦断面図である。
【図2】本発明にかかる検査器具100の一実施形態を示す縦断面図である。
【図3】図2における検査器具100の分解斜視図である。
【図4】印刷面の形成方法の一例を示す図である。
【図5】試薬の塗布の一例を示す図である。
【図6】測定室7の要部拡大図である。
【図7】測定時を説明するための図である。
【符号の説明】
【0058】
2・・・・・第2プレート
3・・・・・第3プレート
4・・・・・第4プレート
7・・・・・測定室
8・・・・・流路
A・・・・・検体
202b・・・印刷面
204b・・・印刷面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)検査対象液状流体を供給するための供給部と、前記検査対象液状流体を試薬と反応させる反応室と、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を前記反応室まで移送するための流路とを備えた検査器具、を用いた検査方法であって、
B)前記検査器具は、
b1)光透過性第1プレートと、前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレートと、前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレートを備えており、
b2)前記反応室は、前記多孔性プレートに形成された所定形状の貫通溝を前記光透過性1プレートおよび光透過性第2プレートで挟むことにより、構成されており、
b3)前記光透過性第1プレートおよび光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側には、それぞれ親水処理面が形成されており、
b4)前記親水処理面は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな形状で表面が露出するように、光非透過性プリント印刷面で覆われており、
b5)前記光透過性第1プレート及び前記光透過性第2プレートの露出した親水処理面には、それぞれ異なる試薬が付着させられており、
C)前記供給部に供給された検査対象液状流体を前記供給部に設けられた加圧部によって加圧して、前記流路を介して前記反応室内に移送し、
D)前記反応室における前記検査対象液状流体と前記試薬との呈色反応を、光を透過させて測定すること、
を特徴とする検査方法。
【請求項2】
検査対象液状流体を供給するための供給部を有する光透過性第1プレート、
前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレート、
前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレート、
を備えた検査器具であって、
前記多孔性プレートには、前記検査対象液状流体を試薬と反応させるための反応室、および前記反応室と連通した多孔性プレート連絡流路が設けられており、
前記光透過性第1プレートには、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を多孔性プレート連絡流路まで移送するための光透過性第1プレート流路が設けられており、
前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側、前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の少なくとも一方は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな形状を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、
前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない小さな領域には親水処理がなされており、
前記親水処理がなされた面には、試薬が付着させられていること、
を特徴とする検査器具。
【請求項3】
請求項2の検査器具において、
前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側および前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の双方とも、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな形状を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、
前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない小さな領域には親水処理がそれぞれなされており、
前記2つの親水処理がなされた面には、それぞれ異なる試薬が付着させられていること、
を特徴とするもの。
【請求項4】
請求項3の検査器具において、
前記光透過性第1プレートの前記小さな領域と前記光透過性第2プレートの前記小さな領域とは大きさが異なること、
を特徴とするもの。
【請求項5】
検査対象液状流体を供給するための供給部を有する光透過性第1プレート、
前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレート、
前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレート、
を備えた検査器具であって、
前記多孔性プレートには、前記検査対象液状流体を試薬と反応させるための反応室、および前記反応室と連通した多孔性プレート連絡流路が設けられており、
前記光透過性第1プレートには、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を多孔性プレート連絡流路まで移送するための光透過性第1プレート流路が設けられており、
前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側、前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の少なくとも一方は、前記反応室における呈色反応を調べる光を照射する方向に垂直な面における断面形状よりも小さな領域を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、
前記光非透過性プリント印刷面で覆われていない領域には親水処理がなされており、
前記親水処理がなされた面には、試薬が付着させられていること、
を特徴とする検査器具。
【請求項6】
検査対象液状流体を供給するための供給部を有する光透過性第1プレート、
前記光透過性第1プレートの下に位置し、通気性があり且つ非通液状性の多孔性膜で構成された多孔性プレート、
前記多孔性プレートの下に位置する光透過性第2プレート、
を備えた検査器具であって、
前記多孔性プレートには、前記検査対象液状流体を試薬と反応させるための反応室、および前記反応室と連通した多孔性プレート連絡流路が設けられており、
前記光透過性第1プレートには、前記供給部に供給された前記検査対象液状流体を多孔性プレート連絡流路まで移送するための光透過性第1プレート流路が設けられており、
前記光透過性第1プレートの前記多孔性プレート側、前記光透過性第2プレートの前記多孔性プレート側の少なくとも一方は、前記反応室の前記多孔性プレートの厚み方向に垂直な面における断面形状よりも小さな領域を残して光非透過性プリント印刷面で覆われており、
前記小さな領域には親水処理がなされていること、
を特徴とする検査器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−263799(P2007−263799A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90225(P2006−90225)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(305053226)株式会社ティー・ティー・エム (10)
【Fターム(参考)】