説明

液状硬化性樹脂組成物

【課題】 耐熱性に優れ、かつ変形の極めて小さい、特に光学部材として有用な硬化物を与える光硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)分岐構造を有しその分岐による各分岐鎖の末端に水酸基を有し、ポリオールの分子量を該分岐鎖末端の水酸基の数で割った値が100〜2000であるポリオールと、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートとから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー20〜60質量%、(B)重合性単官能化合物30〜70質量%、及び(C)光ラジカル重合開始剤0.01〜10質量%を含有する光学部材用光硬化性樹脂組成物;及び該光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシートやレンチキュラレンズシート等のレンズシートのレンズ部、又はこのようなシートを用いたバックライト等の光学部材形成に有用な光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等のレンズは、プレス法、キャスト法等の手法により製造されてきたが、両手法ともレンズの製作に長い時間を要し、生産性が悪かった。このような問題点を解決するために、近年、紫外線硬化性樹脂を用いてレンズを製作する検討がなされている。具体的には、レンズ形状の付いた金型と透明樹脂基板との間に紫外線硬化性組成物を流し込み、基板側より紫外線を照射し、該組成物を硬化させることで短時間でレンズを製造することができる。
【0003】
最近、硬質のレンズシートにおいて、その製造時にシートに反り(「カール」ともいう。)が生じたり、あるいはレンズシートが使用条件により60℃程度の高温下で使用されその後室温に戻された際にレンズ形状が変形し、得られる映像に歪みが生じる場合があった。特に、ノート型パソコン等では、輝度を重視する為にレンズシートが2枚用いられており、さらにカールの少ないレンズシートが要求されていた。樹脂中の多官能モノマーに代わり単官能モノマーを多用することでレンズシートの低カール化を試みていたが(例えば、特許文献1)、同時に多官能モノマー減量による架橋度低下から耐熱性も低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2004−51941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、耐熱性に優れ、かつ変形の極めて小さい、特に光学部材として有用な硬化物を与える光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、種々検討した結果、特定組成の組成物が、低カール化と高耐熱性を同時に達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)分岐構造を有しその分岐による各分岐鎖の末端に水酸基を有し、ポリオールの分子量を該分岐鎖末端の水酸基の数で割った値が100〜2000であるポリオールと、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートとから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー 20〜60質量%、
(B)重合性単官能化合物 30〜70質量%、及び
(C)光ラジカル重合開始剤 0.01〜10質量%
を含有する光学部材用光硬化性樹脂組成物;並びに当該光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる光学部材を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐熱性が高く、極めてカールの少ないレンズシートを得ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光硬化性樹脂組成物(以下、本発明の組成物ということがある)で用いる、(A)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、本発明の組成物を硬化させてなる硬化物の反りと耐熱性(軟化点)を改善する機能を有する。(A)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(a)分岐構造を有しその分岐による各分岐鎖の末端に水酸基を有し、ポリオールの分子量を分岐鎖末端の水酸基の数で割った値が100〜2000であるポリオール(以下、(a)ポリオールということがある)と、(b)ポリイソシアネートと、(c)水酸基含有(メタ)アクリレート(以下、(c)水酸基含有(メタ)アクリレートということがある)とから得られる。当該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(a)ポリオール、(b)ポリイソシアネート及び(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを、原料モル比を調整して反応させることにより得られる。(a)ポリオールの水酸基と(b)イソシアネートのイソシアネート基から形成されるウレタン結合(−CONH−)により、硬化物にじん性が与えられ、さらに、(a)ポリオールが3個以上の水酸基を有していることにより、組成物がネットワーク(網目)状に硬化した硬化物を与えることができる。
【0009】
この反応としては、例えば(a)ポリオール、(b)ポリイソシアネート及び(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを仕込んで反応させる方法;(a)ポリオール及び(b)ポリイソシアネートを反応させ、次いで(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;(b)ポリイソシアネート及び(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで(a)ポリオールを反応させる方法;(b)ポリイソシアネート及び(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いで(c)ポリオールを反応させ、最後にまた(c)水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0010】
これらの化合物の反応においては、通常、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリル酸ジn−ブチルスズ、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0011】
本発明において(a)ポリオールは、分岐構造を有し、その分岐による各分岐鎖の末端に水酸基を有し、ポリオールの分子量を分岐鎖末端の水酸基の数で割った値が100〜2000のものである。かかるポリオールの具体例としては、例えば、グリセリン、ソルビトール等の糖にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種類を開環重合したポリオール(a1)等を挙げることができる。
【0012】
ポリオールの数平均分子量は、ポリオールの分子量を分岐鎖末端の水酸基の数で割った値が、好ましくは100〜2000であり、さらに好ましくは100〜1000である。またポリオール(a1)自体の数平均分子量は、特に制限されないが、300〜5000、さらに500〜4000、特に800〜1000が好ましい。
ここで、「ポリオールの分子量を分岐鎖末端の水酸基の数で割った値」は、分岐鎖の平均分子量を意味する。なお、ポリオールの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求めたポリスチレン換算数平均分子量である。
【0013】
またポリオール(a1)は、一分子中に分岐による分岐鎖末端水酸基を3個以上有することを特徴とし、3〜6個の水酸基を有することが好ましい。
【0014】
ポリオール(a1)の市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製、旭硝子ウレタン(株)製、三洋化成工業(株)製、日本油脂(株)製の「So-1000」、「So−800」、「サニックスTP−400」、「サニックスGL−3000」、「サニックスGP−250」、「サニックスGP−400」、「サニックスGP−600」、「サニックスGP−1000」、「サニックスGP−3000」、「サニックスGP−3700M」、「サニックスGP−4000」、「サニックスGEP−2800」、「ニューポールTL4500N」「ユニオールTG−1000」「ユニオールTG−4000」等が挙げられる。
【0015】
(b)ポリイソシアネートとしては、ジイソシアネートが好ましく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。これらのうち、特に、2,4−トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0016】
これらの(b)ポリイソシアネートは、単独であるいは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
(c)水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記式(1)又は(2)
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜15の数を示す)
で表される(メタ)アクリレート及びアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートの如きグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物等を挙げることができる。これら水酸基含有(メタ)アクリレートのうち、特に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0020】
これらの、(c)水酸基含有(メタ)アクリレートは、単独であるいは、二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
(A)成分ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、本発明の液状硬化性樹脂組成物全量に対して20〜60質量%配合されることが好ましく、30〜50質量%配合されることがさらに好ましい。20質量%未満では塗工性を損ねる可能性があり、60質量%を超えるとレンズシートのカール性が悪化する。
【0022】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、さらに、(A)成分以外のウレタン(メタ)アクリレートを配合することもできる。かかるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジオールとジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートや、ジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
なお、(A)成分以外のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合する場合、(A)成分と(A)成分以外のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの合計量は、組成物全量に対して20〜60質量%の範囲内とする。
【0023】
前者は、前記ポリオール(a1)以外のポリオール(以下、「ポリオール(a2)」という。)と(b)ジイソシアネートと(c)水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物等を挙げることができる。ここで用いられる(b)成分と(c)成分は、(A)成分の項で述べたものと同様である。
【0024】
ポリオール(a2)は、ポリオール(a1)以外の他のポリオール又はポリオールの混合物であればよく、例えば、脂肪族又は環式ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。これらのポリオールとしては各構造単位の重合様式には特に制限がなく、例えばランダム重合体、ブロック重合体、グラフト重合体のいずれであってもよい。脂肪族ポリエーテルジオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコールあるいは二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルポリオールを使用することもできる。上記二種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの3元重合体等を挙げることができる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。
【0025】
上記の如きポリエーテルポリオールは、例えばエクセノール1020(旭硝子ウレタン(株)製)、PTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学(株)製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日本油脂(株)製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学(株)製)、Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬(株)製)等の市販品としても入手することができる。
【0026】
環式ポリエーテルポリオールとしては、例えばビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール及びそのアルキレンオキサイド付加ジオール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等が挙げられる。これらの中で、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。これらのポリオールは、例えばユニオールDA400、DA700、DA1000、DB400(以上、日本油脂(株)製)、N1162(第一工業製薬(株)製)、トリシクロデカンジメタノール(三菱化学(株)製)等の市販品として入手することもできる。
【0027】
ポリエステルポリオールとしては、ポリオールと二酸塩基とを反応して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。上記ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。また二塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。市販品としてはクラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、(株)クラレ製)等が入手できる。
【0028】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、例えばポリテトラヒドロフランのポリカーボネート、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネート等が挙げられ、市販品としてはDN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン(株)製)、PC−8000(米国PPG製)、PC−THF−CD(BASF製)等が挙げられる。
【0029】
さらにポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。これらのジオールは、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル(株)製)等が市販品として入手することができる。
【0030】
上記以外のポリオール(a2)も数多く使用することができる。このようなポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ジオール等が挙げられる。
【0031】
また上記したようなポリオール(a2)を併用する以外にも、ポリオール(a1)とともにジアミンを併用することも可能である。このようなジアミンとしては、例えばエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0032】
上記ポリオール(a2)のうち、ポリエーテルジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール及び水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオールが好ましい。市販品ではPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上三菱化学(株)社製)、ユニオールDA400、DA700、DA1000、DB400(以上、日本油脂(株)製)、N1162(第一工業製薬(株)製)として入手できる。
【0033】
これら他のポリオール(a2)の数平均分子量は、300〜5,000、好ましくは300〜2,000、さらに好ましくは300〜1,000である。
【0034】
(A)成分以外の(メタ)アクリレートのうち、ジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5(又は6)−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物が挙げられる。
【0035】
本発明の液状硬化性樹脂組成物には、(B)成分として重合性単官能化合物が配合され、当該重合性単官能化合物としては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムの如きビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートの如き脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル及び下記式(3)〜(6)で表される化合物を挙げることができる。
【0036】
【化2】

(式中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基を示し、R4は水素原子又は炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基を示し、mは0〜12、好ましくは1〜8の数を示す)
【0037】
【化3】

(式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、R6は炭素数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基を示し、R7は互いに独立して水素原子又はメチル基を示し、pは好ましくは1〜4の数を示す。)
【0038】
【化4】

(式中、R8、R9、R10及びR11は互いに独立に、水素原子又はメチル基であり、qは1〜5の整数である)
【0039】
これら(B)重合性単官能性化合物のうちN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムの如きビニル基含有ラクタム、又は、アクリロイルモルホリンが好ましい。
【0040】
これら(B)重合性単官能性化合物は、市販品IBXA(大阪有機化学工業(株)社製)、アロニックスM−111、M−113、M114、M−117、TO−1210、アロニックスM−110(以上、東亞合成(株)製)等として入手することができる。
【0041】
これら(B)重合性単官能化合物の含量は、本発明の液状硬化性樹脂組成物全体の30〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは40〜60質量%である。
【0042】
(C)光ラジカル重合開始剤は、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4‘−ジメトキシベンゾフェノン、4,4‘−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、下記式(7)で表される開始剤等が挙げられる。
【0043】
【化5】

(式中、rは1〜5の数を示す)
【0044】
(C)光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えばIrgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI11850、CG24−61、Darocurl116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、LucirinLR8728(BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)、KIP150(ランベルティ社製)等が挙げられる。これらの中で、Irgacure184及びKIP150が好ましく、KIP150は耐熱性改善、反り低減の点で特に好ましい。
【0045】
(C)光ラジカル重合開始剤は、全組成物中に、0.01〜10質量%、特に0.5〜7質量%配合されるのが好ましい。配合量の上限は組成物の硬化特性や硬化物の力学特性及び光学特性、取り扱い等の点からこの範囲が好ましく、配合量の下限は、硬化速度の低下防止の点からこの範囲が好ましい。
【0046】
本発明の組成物にはさらに、(D)2官能以上の(メタ)アクリレート(以下、(D)(メタ)アクリレートということがある)を含有させることが好ましく、(D)成分の少なくとも一部に3官能以上の(メタ)アクリレートを含有することが、硬化物の強度の観点から望ましい。当該(D)(メタ)アクリレートとしては、3価以上の多価アルコールの(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパンリト(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0047】
市販品としては、アロニックスM305、M309、M310、M315、M320、M350、M360、M408(以上、東亞合成(株)製)、ビスコート#295、#300、#360、GPT、3PA、#400(以上、大阪有機化学工業(株)製)、NKエステルTMPT、A−TMPT、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMMT(以上、新中村化学(株)製)、ライトアクリレートTMP−A、TMP−6EO−3A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学(株)製、KAYARAD PET−30、GPO−303、TMPTA、TPA−320、DPHA、D−310、DPCA−20、DPCA−60(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0048】
(D)(メタ)アクリレートを含有させる場合には、全組成物中に、3〜20質量%、特に5〜10質量%配合されるのが好ましい。配合量の下限は硬化物の耐熱性の点から上記範囲が好ましい。配合量の上限は低反りを維持する点から、上記範囲が好ましい。
【0049】
本発明の組成物にはさらに光増感剤を配合することができ、当該光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられ、市販品としては、例えばユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0050】
本発明の組成物には、必要に応じて本発明の組成物の特性を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を配合することができる。
【0051】
尚、本発明の組成物は、放射線、又は放射線及び熱によって硬化される。ここで放射線とは、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0052】
本発明の組成物を放射線によって硬化させることにより、得られる硬化物は以下の物性を有するものであることが特に好ましい。得られる硬化物の25℃における屈折率は、好ましくは1.50以上、より好ましくは1.55以上である。屈折率が1.50未満であると、本組成物を用いてプリズムレンズシートを形成した場合、十分な正面輝度を確保することができない場合が生ずる。
さらに、その硬化物の軟化点は、50℃以上、特に52℃以上であるのが好ましい。軟化点が50℃未満の場合は耐熱性が十分でない場合がある。
【0053】
本発明の組成物を硬化させてなる硬化物は、例えば、図1に示す液晶ディスプレイのプリズムレンズとして特に有用である。
【実施例】
【0054】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中、部は質量部である。
【0055】
<(A)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの製造例>
合成(A−1)
撹拌機を備えた反応容器に、イソホロンジイソシアネート42.961g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、ジブチル錫ジラウレート0.08g及びフェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら22.448g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。次に数平均分子量1000のポリプロピレンヘキサオール(第一工業製薬(株)製 So−1000)34.479gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。この樹脂液をオリゴマーA−1とする。
【0056】
合成(A−2)
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート27.676g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、ジブチル錫ジラウレート0.08g及びフェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら18.451g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。次に数平均分子量1000のポリプロピレントリオール「ユニオールTG−1000」(日本油脂(株)製)53.761gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。この樹脂液をオリゴマーA−2とする。
【0057】
合成(A−3)
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート10.460g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、ジブチル錫ジラウレート0.080g及びフェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。液温が20℃以下になるように制御しながらヒドロキシエチルアクリレートを6.973g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。次に数平均分子量4,000のポリプロピレントリオール「ユニオールTG−4000」(日本油脂(株)製)82.455gを加えて液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。このようにして得られた樹脂液をオリゴマーA−3とする。
【0058】
合成(A’−1)
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート33.264g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、ジブチル錫ジラウレート0.08g及びフェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら22.176g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。次に数平均分子量400の水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール「N1162」(第一工業製薬(株)製)44.448gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。この樹脂液をオリゴマーA’−1とする。
【0059】
合成(A’−2)
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート35.454g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、ジブチル錫ジラウレート0.08g及びフェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら23.636g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。次に数平均分子量400のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール「DA400」(日本油脂(株)製)40.854gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。この樹脂液をオリゴマーA’−2とする。
【0060】
合成(A’−3)
撹拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート22.099g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、ジブチル錫ジラウレート0.08g及びフェノチアジン0.008gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が10℃以下になるまで氷冷した。ヒドロキシエチルアクリレートを液温度が20℃以下になるように制御しながら14.732g滴下した後、さらに、1時間撹拌して反応させた。次に数平均分子量1000のポリプロピレングリコール「エクセノール1020」(旭硝子ウレタン(株)製)63.057gを加え、液温度70〜75℃にて3時間撹拌を継続させ、残留イソシアネートが0.1質量%以下になった時を反応終了とした。この樹脂液をオリゴマーA’−3とする。
【0061】
<実施例1〜4、比較例1〜5>
表1に記載された割合で各成分を混合し、光硬化性樹脂組成物を製造した。得られた各組成物を下記条件で硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物について、下記評価法にて物性を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
<硬化物の物性評価法>
1.屈折率の測定
ガラス板上にアプリケーターバーを用いて上記実施例及び比較例で得られた光硬化性樹脂組成物を塗布し、それに空気雰囲気下、1.0J/cmの紫外線を照射し、厚さ200μmの硬化膜を得た。JIS K7105に従い、アタゴ(株)製アッベ屈折計を用いて、この硬化膜の25℃における屈折率を測定した。
【0063】
2.透明性評価
125μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケーターバーを用いて上記実施例及び比較例で得られた光硬化性樹脂組成物を40μm厚になるように塗布し、それに窒素雰囲気下、250mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を得た。得られた硬化膜の透明性を目視にて観察し、異物、塗りムラ、はじき、白濁、失透等の異常発生の有無を判定した。これらの異常のいずれも見られない場合を○、いずれか一つでも見られる場合を×とした。
【0064】
3.耐熱性評価
透明性評価と同様にして、硬化膜を得た。次いで、本サンプルを1cm角にカットし、セイコー電子工業製熱機械分析装置(TMA)を用いて、温度を変えながら試験片に5mmφの円柱状の石英棒を20gfの荷重で押し付け、試験片厚の変位量を測定した。この際、昇温速度を5℃/分とした。変位量は昇温とともに増加するが、減少に転じる変曲点を軟化点(℃)として測定した。レンズシートの変曲点が低いと、高温でレンズ形状が変形し不具合が生じる恐れがあるため、変曲点が50℃未満の場合を「×」とし、50℃以上の場合を「○」とした。また、レンズシートの耐熱温度として、上記軟化点(℃)を表1に記載した。
【0065】
4.反り測定
透明性評価と同様にして、硬化膜を得た。次いで、本サンプルを8cm角にカットし、硬化塗膜を上面にして平坦な机の上に置き、机からのサンプル四隅の高さを測定し、その平均値を反り量と定義した。本硬化性組成物でレンズシートを作製した場合、反り量が10mmを超えると、レンズがカールし、輝度等の光学特性に問題が生ずる恐れがあるため「×」とし、反り量が10mm以下である場合を「△」、5mm以下である場合を「◎」とした。
本測定は紫外線の照射後、試料を一晩23℃、50%RHの恒温恒湿下で放置して、85℃で30分再加熱した直後に行った。
【0066】
【表1】

【0067】
表1中の(B)〜(D)成分の詳細は次の通りである。
ライトエステルPO:フェノキシエチルメタクリレート、共栄社化学(株)製
KIP150:ランベルティ社製光ラジカル重合開始剤(下記に構造式を示す)
【化6】

(式(7)中、rは1〜5の数を示す)
アロニックスM315:(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸アクリル酸エステル)東亞合成(株)製
【0068】
表1より、本発明における(A)、(B)、(C)及び(D)成分を本発明で規定する量で含有する組成物の硬化物は、耐熱性に優れ、かつ反りと変形が小さく、さらに屈折率が1.50以上と高く、特に光学部材として有用であることがわかる。
(A)成分が、60質量%を超える比較例4では、反りが悪化することがわかる。
分岐構造を有しないポリオール(a2)を用いたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いた比較例1及び3では、変曲点が50℃より低くなり、軟化点も低下することがわかる。また、比較例2では、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに用いる分岐構造を有しないポリオールの種類により、耐熱性は良くても、反りが悪化することがわかる。
(B)成分が30質量%に達しない比較例5では、反りが悪化することがわかる。
これに対し本発明に係る実施例1〜4では、耐熱性に優れ、反りも良好であることがわかる。
この結果から、本発明の特定の組成を有する光硬化性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物は、耐熱性と低カール性の両方を同時に満たすことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の光硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、高屈折率を保持しつつ、耐熱性に優れ、かつ変形が小さいので、プリズムレンズシート等の光学部材として特に有用である。
本発明の光硬化性樹脂組成物の硬化物は、屈折率が高く、液晶ディスプレイのバックライトからの光をヒトの視野に対して真っ直ぐにするレンズシートとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の組成物を硬化させてなる硬化物の用途の一例として、液晶ディスプレイのプリズムレンズシートとして適用した例を示す。
【符号の説明】
【0071】
1:基材
2:プリズムレンズシートのレンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)分岐構造を有しその分岐による各分岐鎖の末端に水酸基を有し、ポリオールの分子量を該分岐鎖末端の水酸基の数で割った値が100〜2000であるポリオールと、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリレートとから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー 20〜60質量%、
(B)重合性単官能化合物 30〜70質量%、及び
(C)光ラジカル重合開始剤 0.01〜10質量%
を含有する光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(D)2官能以上の(メタ)アクリレートを3〜20質量%含有する請求項1に記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分の少なくとも一部が、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物である請求項1又は2に記載の光学部材用光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光学部材が、フレネルレンズシート、レンチキュラレンズシート又はプリズムレンズシートである請求項1〜3のいずれか一に記載の光硬化性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−63144(P2006−63144A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245413(P2004−245413)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592109732)日本特殊コーティング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】