説明

液状組成物及びそれを用いた積層膜の製造方法

【課題】製造が容易でありながら、精密に有機層を多層化させた有機電子デバイスを製造可能な液状組成物及びそれを用いた積層膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液状組成物は、導電性を有するフッ素化共役化合物を0.01重量%以上50重量%以下含有し、かつ、該フッ素化共役化合物を溶解又は分散させることができ、融点が50℃以下であり、沸点が60℃以上である、下記一般式(1)で表されるフッ素化芳香族化合物を50重量%以上99.9重量%以下含有する、液状組成物。


[式中、Arは置換基を有してもよいn価の芳香族基、Rは置換基を有してもよいフルオロアルキル基、nは1以上の整数、をそれぞれ示す。Rが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状組成物及びそれを用いた積層膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELデバイスに代表される有機電子デバイスが注目されている。有機電子デバイスは有機膜からなる有機層を多層化させることで、デバイスとしての機能を高められることが多い。
【0003】
しかし、有機層を多層化させた有機電子デバイスを製造することは難しく、中でも、可溶性の高分子化合物からなる有機層を多層化させることは特に難しい(非特許文献1)。このため、可溶性の高分子化合物からなる有機層を所望の厚みで精密に多層化させることは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】トコトンやさしい有機ELの本(B&Tブックス):日刊工業新聞社,2008年4月26日,第70−71頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、精密に有機層を多層化させた有機電子デバイスを容易に製造可能な液状組成物及びそれを用いた積層膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
導電性を有するフッ素化共役化合物(以下、「フッ素化共役化合物Q」と言う。)を0.01重量%以上50重量%以下含有し、かつ、
該フッ素化共役化合物Qを溶解又は分散させることができ、融点が50℃以下であり、沸点が60℃以上である、下記一般式(1)で表されるフッ素化芳香族化合物を50重量%以上99.9重量%以下含有する。
なお、液状組成物に含有される全成分の合計を100重量%とする。
【0007】
【化1】


[式中、Arは置換基を有してもよいn価の芳香族基、Rは置換基を有してもよいフルオロアルキル基、nは1以上の整数、をそれぞれ示す。Rが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【0008】
上記液状組成物を、例えば、有機層上に積層した場合、該有機層が直上層の液状組成物から受ける影響を抑えることができ、その結果、精密に有機層を多層化させた有機電子デバイスを、容易に製造することができる。
【0009】
フッ素化芳香族化合物は、融点が50℃以下、沸点が60℃以上であるため、常温で液体となる。この結果、塗布しやすくなるため、表面の凹凸がより少ない有機層を形成できる。フッ素化芳香族化合物は、沸点が60℃以上200℃以下であることが好ましい。
【0010】
一般式(1)のRは、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0011】
フッ素化共役化合物Qは、分子量3×10以上1×10以下のフッ素化共役化合物であることが好ましい。
【0012】
本発明の積層膜の製造方法は、基板上に形成された、分子量が5×10以上1×10以下の導電性を有する共役化合物(以下、「共役化合物Z」と言う。)を含む有機層上に、上述した液状組成物を積層する工程を含む。この製造方法によれば、該有機層上に液状組成物を積層させても、液状組成物が該有機層に与える影響をより効果的に抑えられる。この結果、精密に有機層を多層化させた有機電子デバイスを、より容易に製造できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、精密に有機層を多層化させた有機電子デバイスを容易に製造可能な液状組成物及びそれを用いた積層膜の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は下記実施形態に限
定されるものではない。
【0015】
<フッ素化共役化合物Q>
フッ素化共役化合物Qは、共役関係にある2個以上のπ結合(即ち、二重結合及び三重結合)を含み、導電性を有する化合物である。フッ素化共役化合物Qは、少なくとも1個のフッ素原子を含んでおり、以下に述べる2価の芳香族基Arの1個又は複数個を含むことが好ましく、下記一般式(2)で表される構造を有することがさらに好ましい。
【0016】
【化2】


[式中、Arは2価の芳香族基、Arは1価の芳香族基、n1は1以上10000以下の整数、をそれぞれ示す。n個のAr及び2個のArのうち少なくとも一つは、フッ素原子を含む。]
【0017】
一般式(2)におけるArで示される2価の芳香族基は、芳香族化合物(置換されていてもよい芳香族炭素環式化合物及び置換されていてもよい芳香族複素環式化合物)の芳香環に直接結合する水素原子のうち、2個の水素原子を除いた原子団である。該2価の芳香族基は、炭素原子数が好ましくは6〜60であり、より好ましくは6〜48であり、さらに好ましくは6〜30であり、特に好ましくは6〜25であり、とりわけ好ましくは6〜20である。なお、該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。
【0018】
上記芳香族化合物としては、例えば、下記式(A−1)〜(A−35)で表される芳香族化合物、下記式(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物、下記式(C−1)〜(C−24)で表される芳香族化合物が挙げられる。好ましくは下記式(A−1)〜(A−8)、(A−12)、(A−13)、(A−18)、(A−20)〜(A−24)、(A−27)〜(A−35)、(B−1)〜(B−8)、(C−1)〜(C−16)、(C−21)及び(C−22)で表される芳香族化合物であり、より好ましくは下記式(A−1)〜(A−3)、(A−13)、(C−1)〜(C−14)で表される芳香族化合物であり、さらに好ましくは下記式(A−1)〜(A−3)、(C−1)、(C−2)及び(C−14)で表される芳香族化合物であり、特に好ましくは下記式(C−1)、(C−2)及び(C−14)で表される芳香族化合物であり、とりわけ好ましくは下記式(C−1)で表される芳香族化合物である。ただし、下記式(A−1)〜(A−35)、(B−1)〜(B−10)、(C−1)〜(C−24)において置換基は記載していない。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
一般式(2)におけるn1は、1以上1000以下の整数が好ましく、1以上100以下の整数がより好ましく、1以上10以下の整数がさらに好ましく、1以上6以下の整数が特に好ましく、1以上3以下の整数がとりわけ好ましい。
【0023】
一般式(2)においてn1が2以上の整数である場合、複数あるArは同一でも異なっていてもよい。
【0024】
一般式(2)中のArの説明において、「置換されていてもよい」とは、換言すると「置換基を有してもよい」との意味である。例えば、「置換基を有する芳香族炭素環式化合物」とは、芳香族炭素環式化合物中の水素原子の一部を、他の置換基で置換した化合物のことをいい、具体的には、該芳香族炭素環式化合物中の水素原子の一部が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フッ素化炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基等で置換された化合物のことをいう。
【0025】
Arで示される2価の芳香族基が有する置換基としては、フェニル基、アルキルフェニル基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、フッ素化フェニル基、フッ素化アルキルフェニル基が好ましい。
【0026】
Arの例としては、下記式(Ar−1)〜(Ar−12)で表される基が挙げられる。中でも、下記式(Ar−1)〜(Ar−9)で表される基が好ましく、下記式(Ar−1)〜(Ar−6)で表される基がより好ましく、下記式(Ar−1)〜(Ar−4)で表される基がさらに好ましい。
【0027】
【化6】

【0028】
一般式(2)におけるArで表される1価の芳香族基は、芳香族化合物(置換されていてもよい芳香族炭素環式化合物及び置換されていてもよい芳香族複素環式化合物)の芳香環に直接結合する水素原子のうち、1個の水素原子を除いた原子団である。該芳香族基は、炭素原子数が通常6〜60であり、好ましくは6〜48であり、より好ましくは6〜30であり、さらに好ましくは6〜25であり、特に好ましくは6〜20である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。
【0029】
2個あるArは同一でも異なっていてもよい。
【0030】
一般式(2)中のArの説明において、「置換されていてもよい」とは、換言すると「置換基を有してもよい」との意味である。例えば、「置換基を有する芳香族炭素環式化合物」とは、芳香族炭素環式化合物中の水素原子の一部を、他の置換基で置換した化合物のことをいい、具体的には、該芳香族炭素環式化合物中の水素原子の一部が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基や、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基等で置換された化合物のことをいう。
【0031】
Arが有する置換基としては、フェニル基、アルキルフェニル基、フッ素原子、フッ素化アルキル基、フッ素化フェニル基、フッ素化アルキルフェニル基が好ましく、フッ素原子、フッ素化アルキル基、フッ素化フェニル基、及び、フッ素化アルキルフェニル基がより好ましい。
【0032】
上記芳香族化合物の例としては、上記式(A−1)〜(A−35)で表される芳香族化合物、及び、上記式(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物が挙げられる。好ましくは上記式(A−1)〜(A−8)、(A−12)、(A−13)、(A−18)、(A−20)〜(A−24)、(A−27)〜(A−35)、(B−1)〜(B−8)で表される芳香族化合物であり、より好ましくは上記式(A−1)〜(A−3)、び(A−13)で表される芳香族化合物であり、さらに好ましくは上記式(A−1)〜(A−3)で表される芳香族化合物であり、特に好ましくは上記式(A−1)で表される芳香族化合物である。ただし、上記式(A−1)〜(A−35)、(B−1)〜(B−10)において置換基は記載していない。
【0033】
Arの具体例としては下記式(Ar−1)〜(Ar−8)で表される基が挙げられる。中でも、下記式(Ar−1)〜(Ar−6)で表される基が好ましく、下記式(Ar−1)及び(Ar−2)で表される基がより好ましく、下記式(Ar−1)で表される基がさらに好ましい。
【0034】
【化7】

【0035】
フッ素化共役化合物Qは、分子量が、通常、3×10以上1×10以下であり、3×10以上1×10以下が好ましく、3×10以上1×10以下がより好ましく、3×10以上1×10以下がさらに好ましく、3×10以上1×10以下が特に好ましい。フッ素化共役化合物Qが分子量の異なる複数種の混合物の場合、上記分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィを意味し、以下、同じである。)を用いて標準ポリスチレン換算の数平均分子量を当てはめることができる。
【0036】
フッ素化共役化合物Qの例としては、下記式(Q−1)〜(Q−8)及び(Q−11)〜(Q−14)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
また、本実施形態に係るフッ素化共役化合物Qは、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0040】
【化10】

【0041】
式中、Ar、Ar、Ar、Ar及びArはそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、n、n及びnはそれぞれ独立に0又は1を示し、Z及びZはそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、シアノ基又は−Cで表される基(pは1以上10以下の整数を示し、qは1以上2p+1以下の整数を示し、rは0以上2p+1−q以下の整数を示し、sは0又は1を示す。)を示す。但し、Ar、Ar、Ar、Ar及びArのうち少なくとも一つは、置換基を有していてもよいフルオレンジイル基であり、前記アリーレン基の置換基並びにZ及びZのうち少なくとも一つは、−Cで表される基である。
【0042】
アリーレン基としては、発光素子の耐久性が一層向上するので、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フルオレンジイル基、ベンゾフルオレンジイル基が好ましく、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フルオレンジイル基、ベンゾフルオレンジイル基がより好ましく、フルオレンジイル基、ベンゾフルオレンジイル基がさらに好ましく、フルオレンジイル基が特に好ましい。フルオレンジイル基としては、2,7−フルオレンジイル基が好ましい。
【0043】
−Cで表される基としては、例えば、フッ素化アルキル基、フッ素化アリール基、フッ素化アルキルアリール基、フッ素化アルキルオキシ基、フッ素化アリールオキシ基、フッ素化アルキルアリールオキシ基、フッ素化アシル基が挙げられる。ここで、「フッ素化」とは、この語の直後に記載された官能基が置換基として少なくとも1つのフッ素原子を有することを意味する。
【0044】
−Cで表される基としては、例えば、下記式(F−1)、(F−2)、(F−3)、(F−4)で表されるフッ素化アルキル基;下記式(F−5)、(F−6)、(F−7)、(F−8)、(F−9)で表されるフッ素化アリール基;下記式(F−10)、(F−11)、(F−12)、(F−13)で表されるフッ素化アルキルアリール基;下記式(F−14)、(F−15)、(F−16)、(F−17)で表されるフッ素化アルコキシ基;下記式(F−18)、(F−19)で表されるフッ素化アリールオキシ基;下記式(F−20)、(F−21)、(F−22)で表されるフッ素化アルキルアリールオキシ基;下記式(F−23)、(F−24)、(F−25)、(F−26)、(F−27)、(F−28)、(F−29)、(F−30)、(F−31)で表されるフッ素化アシル基;が挙げられる。
【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
−Cで表される基としては、sが0である基、すなわち−Cで表される基が好ましく、上記のうち式(F−1)〜(F−13)で表される基が好ましい。
【0051】
<フッ素化芳香族化合物>
本実施形態に係るフッ素化芳香族化合物は、下記一般式(1)で表される。このフッ素化芳香族化合物は、上述のフッ素化共役化合物Qとは異なる。
【0052】
【化16】


[式中、Arは置換基を有してもよいn価の芳香族基、Rは置換基を有してもよいフルオロアルキル基、nは1以上の整数、をそれぞれ示す。Rが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【0053】
一般式(1)中のArで表される置換基を有してもよいn価の芳香族基は、置換基を有してもよい芳香族化合物の芳香環に直接結合する水素原子のうちn個の水素原子を除いた原子団である。該n価の芳香族基の置換基以外の構成原子には、炭素原子及び水素原子のほか、酸素原子、窒素原子及び/又は硫黄原子が含まれていてもよい。該n価の芳香族基の構成原子から水素原子を除いた原子の数は、通常5〜30であるが、本実施形態の液状組成物を使用する際にフッ素化芳香族化合物を気化させる必要があるため、好ましくは5〜20であり、より好ましくは5〜16であり、さらに好ましくは5〜10であり、特に好ましくは5又は6であり、とりわけ好ましくは6である。
【0054】
Arの例としては、上記式(A−1)〜(A−35)、(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物の芳香環に直接結合している水素原子のうち、n個の水素原子を除いた原子団(以下、単に「芳香族化合物の原子団」とする)が挙げられる。Arとして好ましくは上記式(A−1)〜(A−12)、(A−19)〜(A−35)、及び(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物の原子団であり、より好ましくは上記式(A−1)〜(A−5)、(A−8)、(A−19)〜(A−35)、及び(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物の原子団であり、さらに好ましくは上記式(A−1)、(A−2)、(A−19)〜(A−30)、及び(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物の原子団であり、特に好ましくは上記式(A−1)、(A−2)、(A−19)、(A−20)、(A−21)、(A−22)、及び(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物の原子団であり、とりわけ好ましくは上記式(A−1)及び(A−2)で表される芳香族化合物の原子団である。ただし、上記式(A−1)〜(A−35)、(B−1)〜(B−10)において置換基は記載していない。
【0055】
Arが有してもよい置換基としては、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基、非置換のアミノ基、置換アミノ基、非置換のシリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、イミン残基、酸イミド残基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基が挙げられ、複数の置換基が一緒になって環を形成してもよい。
【0056】
Arが有してもよい置換基の説明において、「置換されていてもよい」とは、換言すると「置換基を有してもよい」との意味である。例えば、「置換基を有する炭化水素基」とは、炭化水素基中の水素原子の一部又は全部を、他の置換基で置換した炭化水素基のことをいう。具体的には、水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基や、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基等で置換されていてもよい炭化水素基のことをいう。
【0057】
「置換されていてもよい炭化水素基」とは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜50のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数3〜50の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜50のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素原子数6〜50のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、及び6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜50のアラルキル基が挙げられる。「置換されていてもよい炭化水素基」の炭素原子数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8である。
【0058】
「置換されていてもよい炭化水素オキシ基」、「置換されていてもよい炭化水素メルカプト基」、「置換されていてもよい炭化水素カルボニル基」、「置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基」、「置換されていてもよい炭化水素スルホニル基」とは、それぞれオキシ基、メルカプト基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基に前記「置換されていてもよい炭化水素基」1個が結合した基である。なお、「置換されていてもよい炭化水素オキシ基」は、その繰り返し単位からなる基であってもよい。置換されていてもよい炭化水素オキシ基としては、−O(CHCHO)mmCH基(ただし、mmは1〜20の整数である)、−CHO(CHCHO)nnCH基(ただし、nnは1〜20の整数である)等が挙げられる。
【0059】
置換アミノ基としては、アミノ基における1個又は2個の水素原子が、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び1価の複素環基からなる群から選ばれる1個又は2個の基で置換されたアミノ基が挙げられる。該置換基はさらに置換基(以下、官能基の有する置換基が、さらに有する置換基を、「二次置換基」という場合がある。)を有していてもよい。
【0060】
置換アミノ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで通常1〜60であり、好ましくは2〜48である。置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基フェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基及び2−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基が例示される。
【0061】
1価の複素環基とは、複素環式化合物から複素環を構成する原子に直接結合した水素原子1個を除いた残りの原子団をいう。1価の複素環基としては、非置換の1価の複素環基又はアルキル基等の置換基で置換された1価の複素環基が好ましく、1価の芳香族複素環基が好ましい。1価の複素環基の炭素原子数は、通常4〜60であり、4〜20が好ましい。なお、1価の複素環基の炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まない。また、複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する原子が炭素原子だけでなく、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。1価の複素環基としては、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基及びイソキノリル基等が挙げられ、中でも、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基又はC〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0062】
置換シリル基としては、シリル基における1個、2個又は3個の水素原子が、アルキル基、アリール基、アラルキル基及び1価の複素環基からなる群から選ばれる1個、2個又は3個の基で置換されたシリル基が挙げられる。なお、これらアルキル基、アリール基、アラルキル基又は1価の複素環基は二次置換基を有していてもよい。置換シリル基の炭素原子数は二次置換基の炭素原子数を含めないで、好ましくは1〜60であり、より好ましくは3〜48である。
【0063】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示される。
【0064】
アシル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアシル基又はハロゲン原子で置換されたアシル基である。アシル基の炭素原子数は、好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜18である。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基等が挙げられる。
【0065】
アシルオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは非置換のアシルオキシ基又はハロゲン原子で置換されたアシルオキシ基である。アシルオキシ基の炭素原子数は、通常2〜20であり、好ましくは2〜18である。アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びブチリルオキシ基等が挙げられる。
【0066】
アミド基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜18である。アミド基としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基及びトリフルオロアセトアミド基等が挙げられる。
【0067】
イミン残基とは、式:H−CRX1=N−RY1又は式:H−N=C(RY1で表されるイミン化合物から、式中の「H」を除いた残基を意味する。式中、RX1は水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を示し、RY1は、水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルケニル基又はアリールアルキニル基を示す。但し、RY1が2個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、また、2個のRY1は相互に結合し一体となって2価の基、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等のアルキレン基として環を形成してもよい。このイミン化合物としては、例えば、アルジミン、ケチミン又はアルジミン中の窒素原子に結合した水素原子が、アルキル基、アリール基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基等で置換された化合物が挙げられる。イミン残基の炭素原子数は、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜18である。イミン残基としては、以下の基が挙げられる。
【0068】
【化17】

【0069】
酸イミド残基は、式:RX2−CO−NH−CO−RY2で表される酸イミドから、式中の「H」を除いた残基を意味する。式中、RX2及びRY2は、それぞれ独立に、非置換もしくは置換のアルキル基、非置換もしくは置換のアリール基を表すか、又は、RX2及びRY2がともに構成原子となって形成される環構造を表す。酸イミド残基の炭素原子数は、好ましくは4〜20、より好ましくは4〜18である。酸イミド残基としては、例えば、以下に示す基が挙げられる。
【0070】
【化18】

【0071】
置換カルボキシル基としては、カルボキシル基における水素原子の一部又は全部が、アルキル基、アリール基、アラルキル基又は1価の複素環基で置換されたカルボキシル基が挙げられる。置換カルボキシル基の炭素原子数は、好ましくは2〜60であり、より好ましくは炭素原子数2〜48である。置換カルボキシル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシロキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシロキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、パーフルオロブトキシカルボニル基、パーフルオロヘキシルオキシカルボニル基、パーフルオロオクチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。なお、これらアルキル基、アリール基、アラルキル基又は1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換カルボキシル基の炭素原子数には置換基の炭素原子数は含まない。
【0072】
一般式(1)中のRで示される置換されてもよいフルオロアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜50のアルキル基の一部又は全部の水素をフッ素原子に置き換えた基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基の一部又は全部の水素をフッ素原子に置き換えた基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基又はヘキシル基の全部の水素をフッ素原子に置き換えた基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、又はtert−ブチル基の全部の水素をフッ素原子に置き換えた基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、又はプロピル基の全部の水素をフッ素原子に置き換えた基が特に好ましく、トリフルオロメチル基がとりわけ好ましい。
【0073】
nは1以上の整数を示すが、nのとりえる数には上限があり、Arに含まれる芳香環に直結した水素原子の個数がnの上限となる。
【0074】
液状組成物は、上記フッ素化芳香族化合物を50重量%以上99.99重量%以下含有し、好ましくは60重量%以上99.99重量%以下含有し、より好ましくは70重量%以上99.99重量%以下含有し、さらに好ましくは80重量%以上99.99重量%以下含有し、特に好ましくは90重量%以上99.99重量%以下含有している。
【0075】
フッ素化芳香族化合物は、融点が50℃以下、沸点が60℃以上であることが必須である。融点が50℃を超える場合、あるいは、沸点が60℃未満である場合、液状組成物を用いて有機層を形成したときに得られる有機層は、表面の凹凸が認められるものとなる。フッ素化芳香族化合物の融点は、好ましくは30℃以下であり、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは0℃以下であり、特に好ましくは−10℃以下である。フッ素化芳香族化合物の沸点は、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上である。
【0076】
フッ素化芳香族化合物は、例えば、下記式(S−1)〜(S−15)で表される芳香族化合物であり、好ましくは下記式(S−1)〜(S−10)で表される芳香族化合物であり、より好ましくは下記式(S−1)〜(S−7)で表される芳香族化合物であり、さらに好ましくは下記式(S−1)〜(S−4)で表される芳香族化合物であり、特に好ましくは下記式(S−1)で表される芳香族化合物である。
【0077】
【化19】

【0078】
液状組成物において、フッ素化芳香族化合物及びフッ素化共役化合物Qは、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよいが、一種単独で用いることが好ましい。
【0079】
液状組成物におけるフッ素化共役化合物Qの濃度は、0.01重量%以上50重量%以下であるが、0.1重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0080】
<共役化合物Z>
共役化合物Zは、共役関係にある2個以上のπ結合(即ち、二重結合及び三重結合)を含む化合物を意味し、導電性を有する。1個又は複数個の2価の芳香族基Arを含む化合物が好ましく、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物がさらに好ましい。
【0081】
【化20】


[式中、Arは2価の芳香族基、mは1以上10000以下の整数、をそれぞれ示す。Arが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【0082】
一般式(4)におけるArで表される2価の芳香族基は、芳香族化合物(置換されていてもよい芳香族炭素環式化合物及び置換されていてもよい芳香族複素環式化合物)の芳香環に直接結合する水素原子のうち、2個の水素原子を除いた原子団である。該2価の芳香族基の炭素原子数は、通常、6〜60であり、好ましくは6〜48であり、より好ましくは6〜30であり、さらに好ましくは6〜25であり、特に好ましくは6〜20である。該炭素原子数は置換基の炭素原子数は含まない。
【0083】
一般式(4)におけるmは、3以上10000以下の整数が好ましく、10以上10000以下の整数がより好ましく、50以上500以下の整数が特に好ましい。
【0084】
一般式(4)において、Arが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0085】
共役化合物Zの分子量は、通常、5×10以上1×10以下であるが、1×10以上5×10以下が好ましく、3×10以上1×10以下がより好ましく、5×10以上1×10以下がさらに好ましく、1×10以上1×10以下が特に好ましい。共役化合物Zが分子量の異なる複数種の混合物の場合、上記分子量はGPCを用いて標準ポリスチレン換算の数平均分子量を当てはめることができる。
【0086】
一般式(4)中のArの説明において、「置換されていてもよい」とは、換言すると「置換基を有してもよい」との意味である。例えば、「置換基を有する芳香族炭素環式化合物」とは、芳香族炭素環式化合物中の水素原子の一部を、他の置換基で置換した化合物のことをいい、具体的には、該芳香族炭素環式化合物中の水素原子の一部が、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フッ素化炭化水素基や、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、置換されていてもよい炭化水素メルカプト基、置換されていてもよい炭化水素カルボニル基、置換されていてもよい炭化水素オキシカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素スルホニル基等で置換された化合物のことをいう。
【0087】
Arが置換基を有する場合、該置換基がフッ素原子を含有しない基のみであると好ましい。
【0088】
上記芳香族化合物としては、例えば、上記式(A−1)〜(A−35)で表される芳香族化合物、上記式(B−1)〜(B−10)で表される芳香族化合物、上記式(C−1)〜(C−24)で表される芳香族化合物が挙げられ、好ましくは上記式(A−1)〜(A−8)、(A−12)、(A−13)、(A−18)、(A−20)〜(A−24)、(A−27)〜(A−35)、(B−1)〜(B−8)、(C−1)〜(C−16)、(C−21)及び(C−22)で表される芳香族化合物であり、より好ましくは上記式(A−1)〜(A−3)、(A−13)、(C−1)〜(C−14)で表される芳香族化合物であり、さらに好ましくは上記式(A−1)〜(A−3)、(C−1)、(C−2)及び(C−14)で表される芳香族化合物であり、特に好ましくは上記式(C−1)、(C−2)及び(C−14)で表される芳香族化合物であり、とりわけ好ましくは上記式(C−1)で表される芳香族化合物である。
【0089】
Arの例としては、上記式(Ar−1)〜(Ar−12)で表される基、下記式(Ar−1)で表される基が挙げられ、上記式(Ar−1)〜(Ar−6)で表される基、下記式(Ar−1)で表される基が好ましい。
【0090】
【化21】

【0091】
共役化合物Zとしては、以下の式(P−1)及び(P−2)で表される高分子化合物が好ましい。なお、式中の括弧の外に添えた数字は、各繰り返し単位のモル比を示す。
【0092】
【化22】

【0093】
【化23】

【0094】
本実施形態において、共役化合物Zは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
共役化合物Zとして、二種以上を併用する場合であって、上記一般式(4)で表される化合物とその他の化合物とを併用するときには、共役化合物Zの全量に対する上記一般式(4)で表される化合物の割合は、20重量%以上100重量%未満が好ましく、50重量%以上100重量%未満がより好ましく、70重量%以上100重量%未満がさらに好ましく、85重量%以上100重量%未満が特に好ましく、90%重量以上100重量%未満がとりわけ好ましい。
【0095】
<液状組成物>
液状組成物は、フッ素化共役化合物Qを0.01重量%以上50重量%以下含有し、該フッ素化共役化合物Qを溶解又は分散させることができ、融点が50℃以下であり、沸点が60℃以上である、上記フッ素化芳香族化合物を50重量%以上99.99重量%以下含有する。
【0096】
液状組成物は、フッ素化芳香族化合物とフッ素化共役化合物Qを混合することで製造することができる。フッ素化共役化合物Qがフッ素化芳香族化合物と均一に混合できない場合は、フッ素化共役化合物Qを良溶媒に溶かした溶液をフッ素化芳香族化合物と混合させ均一化させる方法が使用できる。このとき、必要に応じて該良溶媒を留去させる。良溶媒としては、例えば、クロロホルム、メタノール、アセトン、トルエン、オルトジクロロベンゼン、テトラフドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノールを好適に用いることができる。
【0097】
<積層膜の製造方法>
本発明の積層膜の製造方法は、共役化合物Zを含む有機層上に、上述した液状組成物を積層する工程を含む。
【0098】
積層膜の製造方法に含まれる液状組成物を積層する工程としては、上述した液状組成物を塗布する方法の他に、別の支持基板上に形成された塗工液の層を転写する方法が好適である。
【0099】
塗布法の例としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及びインクジェットプリント法が挙げられる。
【0100】
積層膜の製造方法は、積層された液状組成物からフッ素化芳香族化合物の少なくとも一部を除去する乾燥工程を含んでいてもよい。当該乾燥工程によって、共役化合物Zを含む有機層上に、フッ素化共役化合物Qを含む有機膜が形成される。フッ素化芳香族化合物の除去は、例えば、減圧下で加熱する方法で行うことができる。
【0101】
上記製造方法により得られる積層膜を用いて、例えば有機トランジスタ素子、有機光電変換素子、発光素子等の電子素子を製造することができる。
【0102】
<有機トランジスタ素子>
以下、有機トランジスタ素子の一態様である電界効果トランジスタ素子を説明する。
【0103】
電界効果トランジスタ素子の構造としては、通常は、ソース電極及びドレイン電極が組成物からなる活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられている。
【0104】
電界効果トランジスタ素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板を用いることができる。
【0105】
電界効果トランジスタ素子を作製後、封止してなる封止電界効果トランジスタ素子が好ましい。これにより、電界効果トランジスタ素子が、大気から遮断され、電界効果トランジスタ素子の特性の低下を抑えることができる。
【0106】
封止方法としては、紫外線(UV)硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法、ガラス板やフィルムをUV硬化樹脂、熱硬化樹脂等で張り合わせる方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うため電界効果トランジスタ素子を作製後、封止するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中又は真空中で)行うことが好ましい。
【0107】
<有機光電変換素子>
有機光電変換素子の構造は、例えば、pnへテロ接合型素子では、オーム性電極、例えば、ITO上にp型半導体層を形成し、さらにn型半導体層を積層し、その上にオーム性電極が設けられている。
【0108】
有機光電変換素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板を用いることができる。
【0109】
<発光素子>
発光素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に設けられた発光層及び/又は該電極間に設けられる電荷輸送層とを有する。フッ素化共役化合物Qを含む有機膜は、かかる発光素子において、
(1)陰極と発光層との間に電子輸送層として用いられるか、
(2)陽極と発光層との間に正孔輸送層として用いられるか、あるいは、
(3)陰極と発光層との間に電子輸送層として用いられ、かつ、陽極と発光層との間に正孔輸送層として用いられる。
【0110】
発光素子のより具体的な構造としては、以下のa)〜c)が例示される。
a)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
b)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
c)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(ここで、/は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0111】
発光層とは、発光する機能を有する層であり、正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層である。なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。また、発光層に隣接した正孔輸送層をインターレイヤー層と呼ぶ場合もある。
【0112】
発光層の厚さは、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0113】
発光層に用いられる材料としては、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等の低分子化合物等が挙げられ、特開昭57−51781号、同59−194393号公報に記載されている化合物等も挙げられる。
【0114】
正孔輸送層に用いられる材料としては、従来公知の材料が挙げられる。
【0115】
正孔輸送層の厚さは、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0116】
電子輸送層に用いられる材料としては、従来公知の材料が挙げられる。
【0117】
電子輸送層の厚さは、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよく、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0118】
電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、特に電荷注入層(正孔注入層、電子注入層)と呼ぶことがある。
【0119】
さらに、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して上記の電荷注入層又は絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層や発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。
【0120】
積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜選択すればよい。
【0121】
電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、該導電性高分子の電気伝導度は、10−5〜10S/cmであることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10−5〜10S/cmがより好ましく、10−5〜10S/cmがさらに好ましい。通常は該導電性高分子の電気伝導度を10−5〜10S/cmとするために、該導電性高分子に適量のイオンをドープする。
【0122】
ドープするイオンの種類は、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンが挙げられ、カチオンの例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンが挙げられる。
【0123】
電荷注入層の厚さは、例えば、1nm〜100nmであり、2nm〜50nmが好ましい。
【0124】
電荷注入層に用いられる材料としては、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボン等が挙げられる。
【0125】
絶縁層は、電荷注入を容易にする機能を有するものである。この絶縁層の平均厚さは、通常、0.1〜20nmであり、好ましくは0.5〜10nm、より好ましくは1〜5nmである。絶縁層に用いられる材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料等が挙げられる。絶縁層を設けた発光素子としては、陰極に隣接して絶縁層を設けた発光素子、陽極に隣接して絶縁層を設けた発光素子が挙げられる。
【0126】
絶縁層を設けた発光素子の構造としては、例えば、以下のq)〜ab)が挙げられる。
q)陽極/絶縁層/発光層/陰極
r)陽極/発光層/絶縁層/陰極
s)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
t)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
v)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
w)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/陰極
x)陽極/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
y)陽極/絶縁層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
z)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
ab)陽極/絶縁層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/絶縁層/陰極
【0127】
発光素子を形成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等の基板が挙げられる。不透明な基板の場合には、反対の電極が透明又は半透明であることが好ましい。通常は、陽極及び陰極からなる電極の少なくとも一方が透明又は半透明であることが好ましく、陽極側が透明又は半透明であることがより好ましい。
【0128】
陽極の材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜等が用いられ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作製された膜、NESA、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。また、該陽極として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0129】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して選択することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0130】
陽極上に、電荷注入を容易にするために、フタロシアニン誘導体、導電性高分子及びカーボン等からなる層、又は、金属酸化物や金属フッ化物及び有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。
【0131】
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2種以上の合金、あるいはそれらのうち1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金、グラファイト又はグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金が挙げられる。陰極を2層以上の積層構造としてもよい。
【0132】
陰極の厚さは、電気伝導度や耐久性を考慮して選択することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0133】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が用いられる。また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、あるいは金属酸化物や金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよく、陰極作製後、該発光素子を保護する保護層を装着していてもよい。該発光素子を長期安定的に用いるためには、素子を外部から保護するために、保護層及び/又は保護カバーを装着することが好ましい。
【0134】
保護層としては、樹脂、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物等を用いることができる。保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板等を用いることができ、該カバーを熱硬化樹脂や光硬化樹脂で素子基板と貼り合わせて密閉する方法が好適に用いられる。スペーサーを用いて空間を維持すれば、素子がキズつくのを防ぐことが容易である。該空間に窒素やアルゴンのような不活性なガスを封入すれば、陰極の酸化を防止することができ、さらに酸化バリウム等の乾燥剤を該空間内に設置することにより製造工程で吸着した水分が素子にタメージを与えるのを抑制することが容易となる。これらのうち、いずれか1種以上の方策をとることが好ましい。
【0135】
液状組成物を用いて得られた積層膜を有する発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置(例えば、バックライト)、フラットパネルディスプレイ等の表示装置等に用いることができる。
【0136】
また、液状組成物を用いて得られた積層膜を有する発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、上記面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、非発光部の有機物層を極端に厚く形成し実質的に非発光とする方法、陽極若しくは陰極のいずれか一方、又は両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号等を表示できるセグメント表示装置が得られる。更に、ドットマトリックス表示装置とするためには、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置すればよい。複数の種類の発光色の異なる高分子化合物を塗り分ける方法や、カラーフィルター又は蛍光変換フィルターを用いる方法により、部分カラー表示、マルチカラー表示が可能となる。ドットマトリックス表示装置は、パッシブ駆動も可能であるし、TFT等と組み合わせてアクティブ駆動してもよい。これらの表示装置は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダー等に有用である。
【0137】
さらに、上記面状の発光素子は、自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、又は面状の照明用光源として好適に用いることができる。例えば照明用光源には白色発光、赤色発光、緑色発光又は青色発光等の発光色が挙げられる。また、フレキシブルな基板を用いれば、曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【実施例】
【0138】
以下、本発明について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0139】
<合成例1>
下記のとおり、化合物M−1から化合物M−2を合成した。
【化24】

【0140】
アルゴン雰囲気下、500mL4つ口フラスコ中で、化合物M−1(21.02g)、及び、テトラヒドロフラン(390mL)を混合し、−78℃に冷却した。反応溶液へ1.6Mのn−ブチルリチウム・へキサン溶液(20mL)を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。トリメチルシリルクロライド(4.9g)を滴下した後、室温に昇温し、2時間攪拌した。反応の進行を確認し、水を加えて、反応を停止させた。有機層を水で洗浄した後、有機層を濃縮した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン)により精製することで化合物M−2を得た。なお、式中、「TMS」はトリメチルシリル基を示す。
LC−MS(APPI−MS(posi)):693[M+H]+
【0141】
<合成例2>
下記のとおり、化合物M−2から化合物M−3を合成した。
【化25】

【0142】
アルゴン雰囲気下、化合物M−2(17.35g)、テトラヒドロフラン(330mL)、及び、2,2’−ビピリジル(4.29g)を混合し、60℃に加熱した。ここへビス(シクロオクタジエン)ニッケル(0)(7.56g)を加え、3時間攪拌した。反応の進行を確認し、反応溶液を室温まで冷却した後、反応溶液をセライトろ過した。得られた溶液を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/トルエン=10/1(体積比))により精製を行うことにより、化合物M−3を得た(12.4g)。
H−NMR;δ 0.22(18H,s),0.86(12H,t),1.25(40H,m),1.53(8H,m),2.53(8H,t),7.01(8H,d),7.11(8H,d),7.50(8H,m),7.71(2H,d),7.74(2H,d)ppm.
LC−MS(APPI−MS(posi)):1228[M+H]+
【0143】
<合成例3>
下記のとおり、化合物M−3から化合物M−4を合成した。
【化26】

【0144】
アルゴン雰囲気下、100mL4つ口フラスコ中で化合物M−3(5.53g)、及び、ジクロロメタン(30mL)を混合し、0℃に冷却した。ここへ1規定のICl/ジクロロメタン溶液(10mL)を滴下し、1時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで昇温し、水で洗浄後、有機層を濃縮した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/トルエン=10/1(体積比))で精製することにより、化合物M−4を得た。
H−NMR;δ 0.86(12H,t),1.27(40H,m),1.55(8H,m),2.53(8H,t),7.07(16H,m),7.49(6H,m),7.70(6H,m)ppm.
LC−MS(APPI−MS(posi)):1335[M+H]+
【0145】
<合成例4>
下記のとおり、化合物M−4からフッ素化共役化合物M−5を合成した。
【化27】

【0146】
アルゴン雰囲気下、100mL4つ口フラスコ中で、化合物M−4(1.34g)、ペンタフルオロフェニルボラン(0.85g)、フッ化セシウム(0.61g)、酸化銀(0.56g)、及び、ジメチルホルムアミド(20mL)を混合した。反応溶液にPd(dba)(92mg)、及び、トリ−tert−ブチルホスフィン(51mg)を加え、100℃で3時間攪拌した。反応進行を確認した後、反応液をセライトろ過し、次いでシリカゲルを通してろ過した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=10/1(体積比))で精製することにより、フッ素化共役化合物M−5(420mg)を得た。
H−NMR;δ 0.86(12H,t),1.25(40H,m),1.54(8H,m),2.53(8H,t),7.05(8H,d),7.13(8H,d),7.42(4H,dd),7.59(4H,dd),7.84(4H,dd)ppm.
19F−NMR;δ 14.7,−138.4,−156.0 ppm.
【0147】
<合成例5>
化合物M−2から化合物M−11を合成した。
【化28】

【0148】
アルゴン雰囲気下、化合物M−2(5.83g)、化合物M−10(3.18g)、トルエン(40mL)、酢酸パラジウム(45mg)、及び、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(282mg)を混合し、80℃に加温した。この反応溶液に20質量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(10mL)を10分かけて滴下し、105℃に2時間加温した。反応終了後、有機層を水で洗浄後、洗浄した有機層を濃縮した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/トルエン=5/1(体積比))で精製することにより化合物M−11を得た(6.5g)。
LC−MS(APPI−MS(posi)):1768[M+H]
【0149】
<合成例6>
化合物M−11から化合物M−12を合成した。
【化29】

【0150】
アルゴン雰囲気下、100mL4つ口フラスコ中で、化合物M−11(6.52g)、及び、ジクロロメタン(25mL)を混合し、0℃に冷却した。ここへ1規定のICl/ジクロロメタン溶液(8.4mL)を滴下し、1時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで昇温し、水で洗浄後、有機層を濃縮した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:へキサン/トルエン=5/1(体積比))で精製することにより目的物を得た(3.91g)。
LC−MS(APPI−MS(posi)):1877[M+H]
【0151】
<合成例7>
化合物M−12からフッ素化共役化合物M−13を合成した。
【化30】

【0152】
アルゴン雰囲気下、100mL4つ口フラスコ中で、化合物M−12(2.81g)、ペンタフルオロフェニルボラン(1.27g)、フッ化セシウム(0.91g)、酸化銀(0.83g)、及び、ジメチルホルムアミド(30mL)を混合した。反応溶液にPd(dba)(140mg)、及び、トリ−tert−ブチルホスフィン(75mg)を加え、100℃で3時間攪拌した。反応進行を確認した後、反応液をセライトろ過し、次いでシリカゲルを通してろ過した。得られたオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/トルエン=1/1(体積比))で精製することにより、フッ素化共役化合物M−13(2.4g)を得た。
LC−MS(ESI−MS):1994[M+K]+
【0153】
<合成例8:高分子化合物P−1の合成>
不活性雰囲気下、下記式:
【化31】


で表される化合物MM−1(7.28g)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(4.94g)、下記式:
【化32】


で表される化合物MM−2(0.74g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド(7.0mg)、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(商品名:Aliquat336、アルドリッチ製)(1.30g)、及びトルエン(100mL)を混合し、105℃に加熱した。反応溶液に2Mの炭酸ナトリウム水溶液(27mL)を滴下し、2時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸(120mg)を加え、さらに4時間還流させた。次いで、1.8Mのジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(60mL)を加え、80℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後、水で3回、3重量%の酢酸水溶液で3回、水で3回洗浄し、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノールに滴下し、1時間撹拌した後、固体をろ取し乾燥させたところ、下記式:
【0154】
【化33】


[式中、括弧の外に添えた数字は、各繰り返し単位のモル比を示す。]
で表される高分子化合物P−1を8.0g得た。高分子化合物P−1のGPCを用いたポリスチレン換算の数平均分子量は7.3×10であった。
なお、化合物MM−1は、国際公開第2008/111658号パンフレットに記載の方法で合成し、化合物MM−2は、欧州特許出願公開第1394188号明細書に記載の方法で合成した。
<可溶性の確認>
(実施例1〜3)
99.5重量部のトリフルオロメチルベンゼン(実施例1)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(実施例2)、及び、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(実施例3)を溶媒として、該溶媒に対する0.5重量部のフッ素化共役化合物M−5及びM−13の可溶性を目視で判断した。
【0155】
(比較例1〜4)
実施例1〜3の溶媒を、ヘキサン(比較例1)、2,2,3,3-テトラフルオロ−1−プロパノール(比較例2)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(比較例3)、1H,1H,7H−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール(比較例4)に変えた以外は同様にして、フッ素化共役化合物M−5及びM−13の可溶性を目視で判断した。
【0156】
<下層膜の侵食性の確認>
(実施例1〜3)
高分子化合物P−1を0.9重量%有するキシレン溶液を調製し、ガラス基板の上にスピンコート法により塗布し、130℃で10分間加熱して約80nmの高分子化合物P−1の塗膜を形成した。この時点でULVAC社製、Dektak3を用いて、高分子化合物P−1の塗膜の厚さを測定した。次にトリフルオロメチルベンゼン(実施例1)、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(実施例2)及び、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(実施例3)を溶媒としてスピンコートで高分子化合物P−1の塗膜の上に塗布し、130℃で10分間加熱して乾燥させた。ここで再度、得られた塗膜の厚さを測定し、溶媒の塗布・乾燥前の塗膜の厚さに対する、溶媒の塗布・乾燥後の塗膜の厚さの変化の割合を求めた。
【0157】
(比較例1〜4)
実施例1〜3の溶媒を、ヘキサン(比較例1)、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(比較例2)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(比較例3)、1H,1H,7H−ドデカフルオロ−1−ヘプタノール(比較例4)に変えた以外は同様にして、塗膜の厚さの変化の割合を求めた。
【0158】
結果を表1にまとめる。
【0159】
【表1】

【0160】
<積層膜の形成>
(実施例4〜5)
ガラス基板上の高分子化合物P−1の塗膜の上に、トリフルオロメチルベンゼンと、フッ素化共役化合物M−5(実施例4)、又は、フッ素化共役化合物M−13(実施例5)とからなる液状組成物を用いて、スピンコーティングで膜を形成した後、得られた膜を加熱して乾燥させることにより、高分子化合物P−1の層と、フッ素化共役化合物M−5、又は、フッ素化共役化合物M−13の層とからなる積層膜を形成した。したがって、液状組成物を用いることによって、積層膜の形成が容易にできた。
【0161】
<評価>
実施例1〜3で用いた3種の溶媒は、いずれもフッ素化共役化合物M−5及びM−13にとって良溶媒である。これら3種の溶媒を高分子化合物P−1の塗膜に塗布しても、その前後での塗膜の厚さの変化は3%以内である。
そして、このような良溶媒を用いた実施例4、5によれば、本発明の液状組成物を用いることにより、精密に有機層を多層化させた積層膜を形成することができた。したがって、この積層膜を用いれば、精密に有機層を多層化させた有機電子デバイスを容易に製造可能であると評価できる。
一方、比較例1〜4で用いた4種の溶媒は、いずれもフッ素化共役化合物M−5にとって良溶媒ではないので、塗布法等により精密に有機層を多層化させた有機電子デバイスを製造することは困難である。
【0162】
発光素子の作製例
<合成例9:高分子化合物P−2の合成>
不活性雰囲気下、2,7−ビス(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチルフルオレン(6.40g)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン(1.37g)、下記式:
【化34】


で示される化合物MM−3(0.64g)、下記式:
【化35】


で表される化合物MM−4(4.10g)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロライド(21mg)、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、酢酸パラジウム(4.5mg)、o−トリメトキシフェニルホスフィン(28mg)及びトルエン(100mL)を混合し、105℃に加熱した。反応溶液に20重量%水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(35mL)を滴下し、2時間還流させた。反応後、フェニルホウ酸(61mg)を加え、さらに4時間還流させた。次いで、1.8Mのジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液(100mL)を加え、80℃で4時間撹拌した。室温まで冷却後、水で3回、3重量%の酢酸水溶液で3回、水で3回洗浄し、アルミナカラム、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られたトルエン溶液をメタノールに滴下し、1時間撹拌した後、固体をろ取し、乾燥させたところ、下記式:
【化36】


[式中、括弧の外に添えた数字は、各繰り返し単位のモル比を示す。]
で表される高分子化合物P−2を6.2g得た。高分子化合物P−2は、ポリスチレン換算の数平均分子量が9.7×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3.0×10であった。
なお、化合物MM−3は、米国特許第2004/035221号明細書に記載の方法で合成し、化合物MM−4は、特開2003−226744号公報に記載の方法で合成した。
【0163】
<溶液の調製例>
・キシレン溶液S−1溶液の調製
高分子化合物P−1をキシレンに溶解させ、ポリマー濃度1.3重量%のキシレン溶液S−1を調製した。
・キシレン溶液S−2溶液の調製
高分子化合物P−2をキシレンに溶解させ、ポリマー濃度0.7重量%のキシレン溶液S−2を調製した。
・トリフルオロメチルベンゼン溶液S−3の調製
フッ素化共役化合物M−5をトリフルオロメチルベンゼンに溶解させ、化合物濃度0.2重量%のトリフルオロメチルベンゼン溶液S−3を調製した。
【0164】
<発光素子の作製例>
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板上に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(Bayer製、商品名:BaytronP AI4083)の懸濁液を0.2μmメンブランフィルターで濾過した液を用いて、スピンコートにより70nmの厚さで薄膜を形成し、ホットプレート上で200℃、10分間乾燥させた。次に、上記で得たキシレン溶液S−2を用いて、スピンコートにより1600rpmの回転速度で成膜し、ホットプレート上で180℃、60分間加熱することにより薄膜を硬化させた。成膜後の厚さは約20nmであった。さらに、上記で得たキシレン溶液S−1を用いて、スピンコートにより1600rpmの回転速度で成膜し、ホットプレート上で130℃、10分間加熱した。成膜後の厚さは約60nmであった。さらに、上記で得たトリフルオロメチルベンゼン溶液S−3を用いて、スピンコートにより1600rpmの回転速度で成膜した。成膜後の厚さは約10nmであった。これを減圧下130℃で10分間乾燥させた後、陰極としてバリウムを約5nm蒸着し、次いでアルミニウムを約100nm蒸着して発光素子を作製した。なお真空度が1×10−4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。
【0165】
<発光素子の性能評価例>
得られた発光素子に電圧を印加することにより、この素子から460nmにピークを有するEL発光が得られた。また、最大発光効率は5.4cd/Aであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するフッ素化共役化合物を0.01重量%以上50重量%以下含有し、かつ、
該フッ素化共役化合物を溶解又は分散させることができ、融点が50℃以下であり、沸点が60℃以上である、下記一般式(1)で表されるフッ素化芳香族化合物を50重量%以上99.99重量%以下含有する、液状組成物。
【化1】


[式中、Arは置換基を有してもよいn価の芳香族基、Rは置換基を有してもよいフルオロアルキル基、nは1以上の整数、をそれぞれ示す。Rが複数ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記フッ素化芳香族化合物が、沸点が60℃以上200℃以下のフッ素化芳香族化合物である、請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)のRがトリフルオロメチル基である、請求項1又は2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記フッ素化共役化合物が、分子量3×10以上1×10以下のフッ素化共役化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
基板上に形成された、分子量が5×10以上1×10以下の導電性を有する共役化合物を含む有機層上に、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状組成物を積層する工程を含む、積層膜の製造方法。

【公開番号】特開2012−212704(P2012−212704A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76260(P2011−76260)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(599086607)ケンブリッジ、ディスプレイ、テクノロジー、リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE DISPLAY TECHNOLOGY LTD
【Fターム(参考)】