説明

液状薬剤を注射する手持ち型電子制御式注射器械

【課題】皮下注射を完全に自動的に準備して実行することができる液状薬剤を注射する電子制御式注射器械の提供。
【解決手段】前もって設定された容量の液状薬剤を注射する手持ち型電子制御式注射器械1であって、患者の皮膚に接触する接触面16を備えていて、液状薬剤入りカートリッジ4を受け入れるハウジング2と、カートリッジ4をハウジング2内で接触面16に行き来させるアクチュエータ手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状薬剤を注射する手持ち型電子制御式注射器械に関し、特に、皮下注射を完全自動的に行う形式の注射器械に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、或る特定の種類の疾患、例えば、糖尿病は、薬剤、例えばインスリンを1日に数回注射することを必要とし、注射されるべき薬剤用量は、患者によって様々である場合があり、同一の患者であっても、1日の間で様々であり、しかも日ごとに様々な場合がある。
【0003】
したがって、過去数年間にわたり、電子制御式注射器械が、必要な用量(投与量)分の薬剤の自己注射を可能にするよう考案されて広く用いられている。
【0004】
米国特許出願公開第2002/0133113号明細書は、実質的に手持ち型ハウジングを有するかかる1つの注射器械を記載しており、このハウジングは、注射のための液状薬剤を収容したカートリッジを収容し、患者の皮膚に接触する接触面に、使い捨て針をカートリッジの一端部に装着させるための貫通開口部を備えている。この注射器械は、プランジャをカートリッジ本体の内部で気密的に摺動させ、液状薬剤を針を通して患者の皮膚中に投与するよう選択的に作動される電気機械式アクチュエータ組立体を更に有している。
【0005】
注射器械の動作は、プログラム可能なマイクロプロセッサにより制御され、このプログラム可能マイクロプロセッサは、種々のスイッチ及びボタン、例えば、1つ又は2つの以上の薬剤用量選択ボタン及び注射開始ボタンからの信号を受け取り、そして、マイクロプロセッサに格納されている。プログラムに従ってアクチュエータ組立体を制御する信号を出す。
【0006】
したがって、上述の注射器械は、注射のための各薬剤用量を選択し、この用量を自動的に投与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0133113号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の形式の注射器械は、機能的に有効であるが、更なる改良の余地が依然としてある。具体的に説明すると、必要な人の介在の量を一段と減少させ、薬剤を調整し、自動注射する際に医療上の経験の無いユーザを一段と保護するよう設計された解決策が要望されている。
【0009】
本発明の目的は、上述の要件に適合するよう設計され、特に、皮下注射を完全に自動的に準備して実行することができる液状薬剤を注射する電子制御式注射器械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、前もって設定された用量の液状薬剤を注射する手持ち型電子制御式注射器械であって、患者の皮膚に接触する接触面を備えていて、液状薬剤の入った薬剤容器を受け入れるようになったハウジングを有する注射器械において、薬剤容器をハウジング内で接触面に行き来させる第1のアクチュエータ手段を有する注射器械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の注射器械の正面図である。
【図2】図1の注射器械の内部コンポーネントを一方の側から見た拡大斜視図であり、分かりやすくするために幾つかの部分を省いた状態の図である。
【図3】図1の注射器械の内部コンポーネントを反対側から見た拡大斜視図であり、分かりやすくするために幾つかの部分を省いた状態の図である。
【図4】図1の注射器械の一部を示す図であり、使い捨て針の組立て状態を示す図である。
【図5】図1の注射器械の一部を示す図であり、使い捨て針の組立て状態を示す図である。
【図6】図1の注射器械の一部を示す図であり、使い捨て針の組立て状態を示す図である。
【図7】図1の注射器械の一部を示す図であり、使い捨て針の組立て状態を示す図である。
【図8】図1の注射器械の一部を示す図であり、使い捨て針の組立て状態を示す図である。
【図9】図4〜図8と類似していて、本発明の第1の実施形態の注射器械からの針の取り外し方を示す図である。
【図10】図4〜図8と類似していて、本発明の第1の実施形態の注射器械からの針の取り外し方を示す図である。
【図11】図4〜図8と類似していて、本発明の第1の実施形態の注射器械からの針の取り外し方を示す図である。
【図12】図1の注射器械を制御する制御ユニットの動作を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施形態の注射器械の正面図であり、この注射器械の内部を示すよう前壁が取り外された状態を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態の注射器械の正面図であり、この注射器械の内部を示すよう前壁が取り外された状態を示す図である。
【図15】第2の実施形態の注射器械の内部の断面図であり、注射器械のプッシュ部材の2つの互いに異なる位置のうちの一方を示す図である。
【図16】第2の実施形態の注射器械の内部の断面図であり、注射器械のプッシュ部材の2つの互いに異なる位置のうちの他方を示す図である。
【図17】第2の実施形態の注射器械に挿入された針及びカートリッジの端部を分解状態で示す断面図である。
【図18】第2の実施形態の注射器械に挿入された針及びカートリッジの端部を組立て状態で示す断面図である。
【図19】針をカートリッジに連結する方法を示す断面図である。
【図20】針をカートリッジに連結する方法を示す断面図である。
【図21】針をカートリッジに連結する方法を示す断面図である。
【図22】針をカートリッジに連結する方法を示す断面図である。
【図23】針をカートリッジから外す方法を示す断面図である。
【図24】針をカートリッジから外す方法を示す断面図である。
【図25】針をカートリッジから外す方法を示す断面図である。
【図26】カートリッジへの針の連結状態を検出するセンサ手段を含む第2の実施形態の注射器械の内側部分を示す図である。
【図27】カートリッジへの針の連結状態を検出するセンサ手段を含む第2の実施形態の注射器械の内側部分を示す図である。
【図28】カートリッジへの針の連結状態を検出するセンサ手段を含む第2の実施形態の注射器械の内側部分を示す図である。
【図29】カートリッジへの針の連結状態を検出するセンサ手段を含む第2の実施形態の注射器械の内側部分を示す図である。
【図30】カートリッジへの針の連結状態を検出する別のセンサ手段を示す図である。
【図31】カートリッジへの針の連結状態を検出する別のセンサ手段を示す図である。
【図32】第1の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の正面図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図33】第1の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の側面図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図34】第1の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の部分切除図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図35】第2の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の正面図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図36】第2の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の側面図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図37】第2の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の部分切除図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図38】第3の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の正面図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図39】第3の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第3の実施形態の注射器械の一部の側面図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図40】第3の形態にあるドア開放機構体及びドアロック機構体を含む第2の実施形態の注射器械の一部の部分切除図であり、分かりやすくするために幾つかの部分が省かれた状態を示す図である。
【図41】第2の実施形態の注射器械を制御する制御ユニットの動作を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好ましい非限定的な実施形態について添付の図面を参照して例示的に説明する。
【0013】
図1の符号1は、全体として、液状薬剤を注射し、特に、皮下注射を完全に自動的に行う手持ち型電子制御式注射器械を示している。
【0014】
注射器械1は、実質的に、液状薬剤の入ったカートリッジ4を受け入れる受座3を備える手持ち型ハウジング2と、ハウジング2内部に収納されていて、カートリッジ4と協働し、患者に前もって設定された用量の薬剤を注射するよう選択的に作動される注射駆動ユニット5(図2及び図3)と、これまたハウジング2の内部に収納可能であり、注射駆動ユニット5の動作を制御する電子制御ユニット6(図12)、図示の例では、マイクロプロセッサとを有している。
【0015】
具体的に説明すると、図示の例のハウジング2は、薄手の角柱の形のものであり、LCDディスプレイ8及びセットアップボタン9(その動作については後で詳細に説明する)を備えた前壁7と、後壁10と、2つの側部11,12と、患者の皮膚に接触する接触面16を備えた底壁15と、後で詳細に説明する注射開始ボタン18を備えた頂壁17とを有している。
【0016】
図1に示すように、ハウジング2の側部のうち一方(11)は、前壁7及び後壁10に垂直な軸線周りに底部がヒンジ止めされ、受座3内部へのカートリッジ4の挿入を可能にするよう外方へ開くドア19を有している。
【0017】
図示の例では、カートリッジ4を受け入れる受座3は、底壁15及び頂壁17に垂直な軸線Aを有し、側部11の近くに形成されている。
【0018】
ハウジング2は、反対側の側部12の近くに、軸線Aに平行な軸線を有していて、注射器械1に電気的に動力を供給する1又は2つ以上のバッテリ21を受け入れる受座20(図1〜図3)を更に備え、これら電池は、底壁15に形成された別のドア22を通って挿入される。
【0019】
図1〜図11に示すように、カートリッジ4が、所定量の液状薬剤を収容した中空円筒形本体23により構成され、この中空円筒形本体は、市販の使い捨て針25を公知の仕方で挿入させることができる閉じられた断面の小さな端部24及び円板状の部材又はプランジャ27と流体密状態で係合する開口した反対側の端部26を有し、この円板状部材又はプランジャは、注射駆動ユニット5により作動されて本体23内部を摺動し、針25を通って薬剤を投与する。
【0020】
カートリッジ4は、針25のための端部24が底壁15に向いた状態で、したがって、患者の皮膚に接触する接触面16に向いた状態でハウジング2内に挿入され、底壁15は、針25をカートリッジ4に取り付けたりこれから取り外すための軸線Aの貫通開口部30を有し、針25は、この貫通開口部を通って突き出て皮膚に注射する。
【0021】
カートリッジ4は、ハウジング2内部のカートリッジ4の存在を確かめるため及び薬剤に関する情報、例えば組成、濃度、有効期限等を得るための公知の外部標識(図示せず)、例えば所定のパターンのバーコード、切欠き、伝導物質又は反射物質を有する。カートリッジ4を識別するために考えられるもう1つは、高周波識別システムを用いることである。
【0022】
図4〜図6に明確に示されているように、針25は、ユーザに対する外傷を阻止するために保護用針ハウジング31に入れた状態で供給され、針ハウジング31と一緒になって針組立体32を構成する。
【0023】
具体的に説明すると、針25は、プラスチック針支持体33に固定されると共にこれから突き出ており、この針支持体は、カートリッジ4の本体23の端部24に嵌着する。
【0024】
公知のように、針25は、患者の皮膚を穿刺し、針支持体33から突き出ている前方部分34(図2〜図11において底部のところに示されている)と、針支持体33内に納められていて、カートリッジ4の本体23の端部24を貫通して取り付けられる後方端部35(図4〜図11では頂部のところに位置している)とを有している。具体的に説明すると、針支持体33は、針25の後方端部35を包囲していて、後で詳細に説明するようにカートリッジ4の本体23の端部24に係合する多数の弾性フランジを有している。
【0025】
図示していない変形例として、針支持体とカートリッジ端部との間の係合を逆に配置することも可能であり、この後者の場合、カートリッジ端部は、針支持体に係合する弾性フランジを備えるのがよい。この別の実施形態は、針支持体を特別に弾性フランジを備えるよう設計する必要はなく、標準型の市販の針組立体(更に、一般の市販のバージョンであるねじ山を備えたもの)を用いることができるという利点を有する。
【0026】
針ハウジング31は、針25の円筒形のカップ状本体ハウジング前方部分34により構成され、針25の開口端部は、針支持体33に装着されている。図示の例では、針組立体32は、針25の前方部分34を覆う内側針ハウジング37を更に有している。
【0027】
図2及び図3を参照すると、注射駆動ユニット5は、電気機械式アクチュエータ組立体40を有し、この電気機械式アクチュエータ組立体は、選択的に作動されてカートリッジ4のプランジャ27に作用してこれをカートリッジ4の本体23の内部で端部24に向かって動かして針25を通って液状薬剤を送り出すようになっている。
【0028】
本発明の重要な特徴によれば、注射駆動ユニット5は、カートリッジ4をハウジング2の内部で軸線Aに沿って接触面16に向かって移動させたりこれから移動させて自動的に針25をカートリッジ4に装着したりこれから取り外し、又、針25を所定の速度で患者の皮膚の内部に刺入するための別の電気機械式アクチュエータ組立体41を有している。
【0029】
具体的に説明すると、カートリッジ4は、ハウジング2の受座3の内部で軸方向に摺動する支持スリーブ42と嵌合している。
【0030】
図2及び図3に示すように、支持スリーブ42は、カートリッジ4の挿入を可能にするよう軸方向を互いに反対側の端部だけでなくドア19に向いた側部も開いている。
【0031】
具体的に説明すると、支持スリーブ42は、カートリッジ4の端部24を受け入れる断面の小さな底端部38を有し、この底端部は、針25をカートリッジ4に装着すると、針支持体33の弾性フランジ36と係合する。端部38は又、支持スリーブ42の残部と共に環状肩39を構成する。
【0032】
アクチュエータ組立体40は、電気歯車モータ43と、カートリッジ4のプランジャ27に作用してこれをカートリッジ4の本体23の内部で端部24に向かって動かすプッシュ部材44と、歯車モータ43により生じた回転をプッシュ部材44の並進に変換する伝動装置45とを有している。
【0033】
具体的に説明すると(図2)、伝動装置45は、実質的に、歯車モータ43の出力部材に取り付けられたピニオン46と、プッシュ部材44に連結されたねじ組立体47と、ピニオン46と噛み合う外歯及びねじ組立体47の親ねじ49に係合する内歯を備えた中間歯車48とを有している。
【0034】
具体的に説明すると、親ねじ49は、回転するが軸方向には並進しないようハウジング2に取り付けられ、ねじ組立体47は、親ねじ49に取り付けられ、プッシュ部材44と一体であり、ハウジング2に取り付けられていて、親ねじ49に沿って並進するが、これに対して回転しないナットねじ50を更に有している。
【0035】
プッシュ部材44は、有利には、公知のボーデン(Bowden)型可撓性ケーブル51のコアによって構成され、このケーブルのシース52は、ハウジング2、例えば、頂壁17に固定された部分を有する。
【0036】
アクチュエータ組立体41は、電気歯車モータ53と、カートリッジ4の支持スリーブ42と一体であり、軸線Aに平行に動くことができるスライダ54と、歯車モータ53により生じた回転をスライダ54の並進に変換する伝動装置55とを有している。
【0037】
具体的に説明すると(図3)、スライダ54は、支持スリーブ42から側方に突き出ていて、ハウジング2に取り付けられ、軸線Aに平行な軸線に沿って並進するがこれに対して回転しないナットねじによって構成されている。伝動装置55は、歯車モータ53の出力部材に取り付けられたピニオン56と、スライダ54に連結されると共にハウジング2に取り付けられていて、それ自体の軸線回りに回転するが、この軸線に沿って並進しない親ねじ57と、ピニオン56と噛み合う外歯及び親ねじ57に係合する内歯を備えた中間歯車58とを有している。
【0038】
図4〜図11を参照すると、注射器械1は、ハウジング2に取り付けられた針組立体32を所定位置(図5)に保つよう受座3周りに延びる2つ又は3つ以上の保持要素60を更に有し、この所定の位置では、針組立体32は、ハウジング2の底壁15から軸線Aに沿って突き出ており、針支持体33を備えた部分は、壁15に設けられた開口部30に嵌まる。
【0039】
具体的に説明すると、保持要素60は、軸線Aに平行に延びていて、ハウジング2の構造部分にヒンジ止めされた頂端部61及びロックフランジ62を備えた自由底端部を有するレバーによって構成されている。具体的に説明すると、ロックフランジ62は、開口部30のところに位置し、軸線Aに垂直に且つ開口部30の内側に延びている。
【0040】
保持要素60は、ロック形態(図5、図6、図10及び図11)を取るよう受座3の内方に弾性的に装入され、支持スリーブ42が軸線Aに沿って動くと、支持スリーブ42に設けられた異形環状突出部64と相互作用するそれぞれのカムプロフィール63によりリリース又は釈放形態(図4、図7、図8及び図9)の状態に引き離される。
【0041】
具体的に説明すると、支持スリーブ42及びこれと共にカートリッジ4は、アクチュエータ組立体41により共同して軸線Aに沿って互いに逆方向に動いて次の3つの別々の位置、即ち、
−カートリッジ4が装入され、注射器械1の何らかの自動的動作(この場合、針25を組み立てたり取り外す動作や患者に薬剤を注射する動作)が開始したり終了する最上部限界位置(図4及び図7)、
−針25がカートリッジ4から抜去された最下部限界位置(図10及び図11)、
−最下部限界位置の近くにあり、液状薬剤を患者の皮膚を通って投与し、針25がカートリッジ4に連結されている動作位置(図6)
を取ることができる。
【0042】
図4〜図11に示すように、各保持要素60のカムプロフィール63及びスリーブ組立体42の突出部64は、相補形状のランプ(傾斜路)の形態をしており、相互に協働して保持部材60を支持スリーブ42の最上部限界位置で又その近くで引き離したり、支持スリーブ42の運動中、支持スリーブ42の取る他の位置では互いに離脱させて保持要素60が軸線Aに向かう弾性戻し力だけを受けさせるよう設計されている。
【0043】
図5及び図6に示すように、ロック形態では、保持要素60のロックフランジ62は、支持スリーブ42が動作位置に動いているときに針組立体32を底壁15の開口部30の内部に保持するよう針ハウジング31の開口端部のところに形成されている外側リブ65と協働して支持スリーブ42の端部38が針支持体33の弾性フランジの内部に嵌まり、針25の後方端部35がカートリッジ4の端部24の内部に挿入されるようにする。
【0044】
次に支持スリーブ42が動作位置から最上部限界位置まで動くと、依然としてロック形態にある保持要素60のロックフランジ62は、針ハウジング31に圧接してこの針ハウジングが針25を辿るのを阻止し、針支持体33及び内側針ハウジング37は、支持スリーブ42と一緒に動いて針25及び針支持体33をカートリッジ4に連結したり針ハウジング31から引き抜かれるのを自動的に行うことができるようになっている。
【0045】
注目されるように、保持要素60は、針ハウジング31に圧接すると、針ハウジング31をユーザに対してもロックする。かくして、最終的には、ユーザによる針ハウジング31の取り外しは、例えば、針25がカートリッジ4に連結されているときは、阻止される。
【0046】
支持スリーブ42の最下部限界位置(図10及び図11)では、保持要素60のロックフランジ62は、支持スリーブ42の肩39と針支持体33の後方端部との間の隙間に入り、次に支持スリーブ42が最上部限界位置に動くと針支持体33を拘束して針25及び針支持体33が使用後にカートリッジ4から自動的に引き抜かれるようになっている。
【0047】
図12を参照すると、制御ユニット6は、注射器械1に設けられている種々の検出要素及びボタンから多くの信号を受け取り、制御ユニット6それ自体に格納されているプログラムに従って歯車モータ43,53及びディスプレイ8のための制御信号を出力する。
【0048】
具体的に説明すると、制御ユニット6は、次の信号を受け取る。
−受座3に向いていて、カートリッジ4の標識を検出するセンサ66(例えば、光学、電気、高周波、赤外線等)からの信号S1、
−底壁15の開口部30のところに設けられていて、開口部と所定直径の外側本体、例えば、針ハウジング31の係合を判定する存在センサ67、例えば接触設置からの信号S2、
−ハウジング2の底壁15に設けられていて、患者の皮膚との接触を判定する皮膚センサ68、例えば機械式又は容量型センサからの信号S3、
−例えば注射用量、針25が患者の皮膚を穿通する速度、薬剤送り出し速度等を選択するためのセットアップボタン9からの信号S4、
−注射開始ボタン18からの信号S5。
【0049】
到来する信号に基づき、制御ユニット6は、両方の回転方向においてそれぞれの歯車モータ43,53を制御する信号C1,C2及びディスプレイ8を制御するための信号C3を出力する。
【0050】
制御ユニット6は、患者及び(又は)医師にこれらのこと及びカートリッジ4内に何回分の用量が残っているかを知らせるよう制御ユニット6の動作プログラム並びに実行される注射の用量及びタイミングを格納するそれ自体の内部メモリ70(単純化のために外部に示されている)を有する。したがって、医師は、患者の同意をチェックすることができる。
【0051】
注射器械1は、データ分析のためにコンピュータとの情報交換を可能にするインターフェイス(それ自体周知であり、図示されていない)、例えば、USBポート、ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))通信部、赤外ポート等を更に備えている。
【0052】
注射器械1のプラグラミングも又可能であるのがよく(例えば、コンピュータからのアップロードにより)、このプログラミングは、治験にとって有用な場合がある(例えば、或る特定の量且つ或る特定の時刻/間隔における注射のみを可能にする)。
【0053】
例えば図4の形態の注射器械1の動作原理を説明するが、この図4の形態では、支持スリーブ42は、針25を備えておらず、最上部限界位置に設定され、カートリッジ4は、ドア19を通ってハウジング2の受座3内に挿入されると共に支持スリーブ42に連結されている。
【0054】
カートリッジ4への針25の組付けは、制御ユニット6により完全に自動的に制御され、針ハウジング31の開口端部により針組立体32を単にハウジング2の底壁15の開口部30内に挿入することにより実施される。針組立体の挿入は、存在センサ67により即座に検出され、したがって、制御ユニット6は伝動装置55及びスライダ54を介して歯車モータ53を設計方向に稼働させて支持スリーブ42を動作位置に動かす。
【0055】
支持スリーブ42の上述の移動の結果として、突出部64は、カムプロフィール63から離されて保持要素60が開口部30の内方へ移動し、ロックフランジ62が針ハウジング31上に近づいて針ハウジングを開口部30に部分的に係合する位置にロックするようにする(図5)。
【0056】
針組立体32を手によるか図4〜図10に全体を符号71で示すアダプタを用いるかのいずれかにより開口部30の内部に挿入するのがよい。
【0057】
具体的に説明すると、アダプタ71は、二重カップの形をしており、このアダプタは、互いに反対側の側部が開口したキャビティをそれぞれ構成していて、針ハウジング31及び内側針ハウジング37をそれぞれ収容する互いに異なる直径の互いに反対側に位置する部分72,73を有している。また、断面の大きな部分72は、針ハウジグ31のための実際の受座を構成する円筒形スリップスリーブ76を収容しており、その機能については後で説明し、断面の小さな部分73は、開口端部に近接して内部に内側リブ74を備え、この内側リブは、内側針ハウジング37に圧接してこの内側針ハウジングを針25及び針支持体33により構成された組立体から取り外す。
【0058】
支持スリーブ42が動作位置(図6)に達すると、端部38は、弾性フランジ36相互間に挿入されて針支持体33に連結され、針25の後方端部35は、カートリッジ4の端部24の内部に挿入される。
【0059】
この時点で、歯車モータ53の回転方向を逆にし、支持スリーブ42は、動作位置から最上部限界位置に動く。支持スリーブ42がこのようになると、針支持体33、針25及びこれと共に内側針ハウジング37を、保持要素60により開口部30に部分的に係合ロックされた状態で針ハウジング31から軸方向に引き抜く。
【0060】
最上部限界位置の近くでは、支持スリーブ42の突出部64は、保持要素60のカムプロフィール63と相互作用して保持要素60を引き離し、ロックフランジ62が開口部30の外方に動いて針ハウジング31を解除するようにする(図7)。
【0061】
支持スリーブ42がいったん最上部限界位置に達すると、アダプタ71の部分73を開口部30を通って受座3内に挿入するのがよく、部分73のキャビティはかくして、内側針ハウジング37と係合する。部分73の挿入は、その直径が小さいと仮定すれば、存在センサ67によっては検出されない。アダプタ71を開口部30から引き抜くと、内側針ハウジング37が針25から除去される(図8)。
【0062】
実際の注射の開始の同意は、表面16が患者の皮膚に接触することにより、そして皮膚センサ68を作動させることにより与えられる。開始ボタン18を押すと、先ず最初に歯車モータ53が作動され、そして伝動装置55を介して支持スリーブ42を動作位置に戻し、針25が患者の皮膚を穿刺するようになる。次に歯車モータ43が作動され、そして電動装置45及びプッシュ部材44を介してカートリッジ4のプランジャ27に作用してこのプランジャを端部24に向かって摺動させ、所定用量の液状薬剤を送り出す。
【0063】
注射を行う前に、注射されるべき用量、針25が患者の皮膚を穿刺する速度、液状薬剤の送り出し速度及び注射深さを、セットアップボタン9を用いて選択してディスプレイ8上に表示するのがよい。
【0064】
注射がいったん完了すると、支持スリーブ42は、最上部限界位置に戻る。
【0065】
アダプタ71(図9及び図10)を用いて完全に自動的に又は例えば“SHARPS BOX”という商標名で知られている形式の針ボックス75(図11)を用いて直接に針25をカートリッジ4から抜去するのがよい。具体的に説明すると、針ハウジング31及び内側針ハウジング37(図9及び図10)を取り外すのに用いられるアダプタ71を用いる場合、先ず最初に、スリップスリーブ76を部分72から抜き取ってこれが針ハウジング31のリブ65上に軸方向に載らなければならない。
【0066】
この時点において、針ハウジング31及び抜き取ったスリップスリーブ76の部分をハウジング2の開口部30を通って挿入して存在センサ67を作動させ、その結果、制御ユニット6が歯車モータ53を作動させて支持スリーブ42を最上部限界位置から最下部限界位置まで移動させるようにする。
【0067】
カムプロフィール63を支持スリーブ42の突出部64から離脱させると、保持要素60は、ロックフランジ62がアダプタ71(図9)のスリップスリーブ76上に載っているのでロック形態に動くのが阻止される。
【0068】
しかしながら、支持スリーブ42が最下部限界位置に達すると(図10)、保持要素60のロックフランジ62は、支持スリーブ42の肩39と針支持体33の軸方向頂端部との間の隙間の中でカチッという音を出す。
【0069】
この時点で、歯車モータ53の回転方向を逆にすると、支持スリーブ42は、最上部限界位置に動く。支持スリーブ42がこのようになると、針支持体33及び針25は、これらがロックフランジ62によって保持され、かくして、支持スリーブ42及びカートリッジ4から軸方向に引き出される位置のままである。
【0070】
支持スリーブ42が最上部限界位置に達すると、再び保持要素60を引き離し、すると、注射器械1は、いつでも次の注射のために別の針25が装着される状態にある。
【0071】
針ボックス75(図11)を用いる場合、開口部30の内部に位置するこの針ボックスの口側端部を単に挿入して存在センサ67を作動させると共に針25をアダプタ71に関して上述したのと全く同じ仕方でカートリッジ4から自動的に取り出す。
【0072】
本発明の注射器械1の利点は、上記の説明から明らかであろう。
【0073】
特に、接触面16へのカートリッジ4の行き来の制御を可能にすることにより、注射器械1は、カートリッジ4への針25の取付け取出しを完全に自動的に行うことができると共に針25が患者の皮膚に穿刺する速度を制御することができる。
【0074】
換言すると、実際の注射を行う場合、薬剤用量及び用量の送り出し速度だけでなく注射25をハウジング2から突き出す速度及びしたがって皮膚穿刺速度を設定することが可能である。
【0075】
しかしながら、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書において説明した注射器械1の変更を行うことができることは明らかである。
【0076】
特に、単一の歯車モータを用いてカートリッジ4の運動及びカートリッジ4内に入っている薬剤の送り出しを制御することができ、この単一の歯車モータは、例えば、上述したのと類似した伝動装置によって、カートリッジ4のプランジャ27に作用するボーデン型可撓性ケーブルのコアの軸方向変位を制御することができ、又、カートリッジ4のプランジャ27と本体23を選択的に互いに一体にする解除自在なロック手段を設けるのがよく、その結果、ロック手段を作動させると、カートリッジ4は、接触面16に行き来し、又、ロック手段を解除すると、プランジャ27は、カートリッジ4の本体23の内部で摺動して薬剤を送り出す。
【0077】
さらに、注射器械1を開示したのと同一の仕方で他形式の薬剤容器、例えば注射器に用いることができる。
【0078】
図13〜図16は、本発明の第2の実施形態の手持ち型電子制御式注射器械80を示している。第1の実施形態の注射器械1と同様、図13〜図16に示す注射器械80は、液状薬剤を収容したカートリッジ83を受け入れるカートリッジホルダ82と、カートリッジ83のプランジャ85に作用するよう設計されたプッシュ部材84と、プッシュ部材84を駆動する第1の前記機械式アクチュエータ組立体86と、特にカートリッジホルダ82を軸方向に移動させる第2の電気機械式アクチュエータ組立体87とをハウジング81(図13及び図14にのみ示されている)の中に有している。ハウジング81の側壁に設けられ、同じ側壁に設けられたスライド運動ボタン89により作動されるドア88は、これを回動軸線90回りに回転させることにより開放可能であり、それによりカートリッジ83を注射器械に出し入れすることができる。カートリッジホルダ82は、軸方向引っ込み位置にあるとき、ドア88に対して軸方向に動くことができるが、ドア88と一緒に回動軸線90回りに回転することができる。
【0079】
プッシュ部材84は、ばねの態をしており、注射器械の上方部分のところに設けられた案内剛性半円形ハウジング92により180°だけ片寄っている軸方向非圧縮性で且つ側方に可撓性の管91と、カートリッジホルダ82及びカートリッジ83の軸線Bに沿ってハウジング92から突き出た管91の端部に固定されているピストン93とを有している。ピストン93は、カートリッジ83のプランジャ85(図16参照)並びに可動凹み部分94(図15参照)と協働するよう設計されており、この可動凹み部分の機能については後で説明する。
【0080】
図41に示された制御ユニット95の制御下において、第1のアクチュエータ組立体86は、プッシュ部材84を、ピストン93がカートリッジ83の外部に位置すると共に凹み部分94(図15)内に位置する引っ込み位置から、カートリッジ83に連結されている使い捨て針96に向かって軸方向に動かすことができ、したがって、ピストン93は、カートリッジ83内のプランジャ85と接触し、プランジャ85を押して針96(図16)を通って薬剤を送り出すようになっている。次に、プッシュ部材84をその引っ込み位置に戻すのがよく、後にはプランジャ85がこれを押した到達先の位置に位置したままになる。
【0081】
第2のアクチュエータ組立体87を制御ユニット95によって制御して第1のアクチュエータ組立体86、プッシュ部材84、プッシュ部材ハウジング92及びカートリッジホルダ82から成る構造体を軸線Bに沿って、即ち、患者の皮膚と接触可能な器械ハウジング81の底壁97に行き来させて針96をカートリッジ83に自動的に取り付けたりこれから取り外すと共に針96を患者の皮膚に刺入したり抜去するようにする。より詳細に説明すると、構造体82,84,86,92をカートリッジ83に連結されている針96が器械ハウジング81内に位置する頂部引っ込み位置と、針96が底壁97に設けられている貫通開口部98から突き出る1つ又は2つ以上の底部位置との間で動かすことができる。
【0082】
図17及び図18を参照すると、針96がプラスチック製の針支持体99に固定された状態でこれから突き出ており、この針支持体は、カートリッジホルダ82の底端部100に嵌着し、底端部100によって包囲されているカートリッジ83の対応の底端部83aが針96の後方端部101によって穿通されるようになっている。カートリッジホルダ82への針支持体99の嵌着は、カートリッジホルダ82の底端部100に固定されていて、多数の弾性フランジ103を備えた中間金属部材102によって達成され、これら弾性フランジは、カートリッジホルダ壁に設けられた溝82a内でカートリッジ83の底端部83aの外側円周方向壁と針支持体99の内側円周方向壁との間で圧縮可能である。
【0083】
カートリッジ83への針96の連結前に、針支持体99は針96と共に保護用針ハウジング又は針キャップ104内に入れられて針96と一緒になって針組立体105(図19及び図20参照)を形成する。
【0084】
図19及び図20を参照すると、この第2の実施形態の注射器械80は、針組立体105を底壁97の開口部98内の所定の位置に保持する解除可能な保持手段を更に有する。これら解除可能な保持手段は、針組立体105を開口部98内に挿入したときに針組立体105によって作動される2つ又は3つ以上の解除可能な保持タブ又はフィンガ106と、開口部98内への針組立体105の挿入度を制限する軸方向当接面107とを有する。解除可能な保持タブ106は、開口部98の周囲に設けられ、軸線Bに差し向けられる弾性荷重を受ける。解除可能な保持タブ106は、当接面107と共に隙間を構成し、これら隙間は、針ハウジング104の環状上側フランジ108と嵌合して針組立体105を開口部98内にロックする。解除自在な保持タブ106に接続された電気機械式センサ(電気スイッチ)109(図41)は、針ハウジング104によるタブ106の作動を検出し、電気信号を制御ユニット95に送る。
【0085】
カートリッジ83への針96の自動連結は、タブ106相互間への針組立体105の挿入によって起動される。センサ109によって即座に検出されるこの挿入により、制御ユニット95は、第2のアクチュエータ組立体87を作動させて構造体82,84,86,92を器械ハウジング81内部でその引っ込み位置から下降させる。保持タブ106により針ハウジング104に及ぼされる保持力は、針ハウジング104が図20に示すその位置にロックされたままであるようにするのに十分であり、その間、中間固定部材102を備えたカートリッジ本体82の底端部100は、針支持体99(図21)に係合する。可動構造体82,84,86,92は、カートリッジホルダ82の底端部100が針支持体99に完全に係合し、かくして針96をカートリッジ83に連結する所定の最下部位置にいったん達すると、第2のアクチュエータ組立体87は、針支持体99及び針96はカートリッジ83に連結された状態で構造体82,84,86,92をその最上部の引っ込み位置に戻し、その間、針ハウジング104は、当接面107(図22)により保持される。
【0086】
第1の実施形態の保持要素60とは異なり、保持タブ106は、ユーザがカートリッジ83への針96の連結中、針ハウジング104を取り外すのを阻止しない。しかしながら、連結中における針ハウジング104の取り外すのを阻止しない。しかしながら、連結中における針ハウジング104の取り外しは、センサ109によって検出される。かかる取り外しが生じた場合、制御ユニット95は、連結プロセスを即座に停止し、可動構造体82,84,86,92がその最上部位置に戻るのを制御する。すると、ユーザは、注射器械に設けられているディスプレイスクリーン110(図41)を介して新たな連結プロセスを開始するよう提案される。
【0087】
針96をカートリッジ83から離脱させるため、ユーザは、空の針ハウジング104を保持手段106,107と針ハウジング104の係合が生じるまで開口部98内へ挿入する。タブ106の作動は、センサ109によって検出される。これにより、制御ユニット95は、第2のアクチュエータ組立体87を作動させて構造体82,84,86,92を針支持体99が針ハウジング104(図23及び図24)内に嵌め込まれる底部位置まで下降させる。次に、ユーザは、器械ハウジング81に設けられていて、制御ユニッ95に連結された針解除ボタン111を作動させて正方形の保持部材112を針ハウジング104の当接面107と環状上側フランジ108との間の隙間内に挿入された保持部材112の脚部113が針支持体の上端部の上方に位置する位置(24)まで軸線Bに対して横断方向に移動させるのがよい。しかる後、針支持体99及びこれと共に針96が保持部材112によって保持された状態で逆の運動を構造体82,84,86,92に及ぼし、それにより針支持体99及び針96をカートリッジホルダ82及びカートリッジ83(図25)から取り外す。次に、ユーザは、針組立体105を保持タブ106から離脱させ、この針組立体を注射器械から取り出すのがよい。
【0088】
本発明の有利な特徴によれば、カートリッジ83への針96の連結を検出するセンサ手段が、注射器械に設けられている。図26〜図29に見えるこれらセンサ手段は、光送信器114、例えば、発光ダイオードと、器械ハウジング81の前壁又は後壁の内側フェースに固定された第1及び第2の光受信器115,116、例えばフォトダイオードと、器械ハウジング81の反対側の後壁又は前壁に固定された反射器117、例えばミラーとを有している。光送信器114は、軸線Bに平行な方向で第1及び第2の光受信器115,116と整列すると共にこれらの間に配置されている。カートリッジホルダ82、より正確に言えば、可動構造体82,84,86,92が引っ込み位置にあり、針がカートリッジ83(図26)に連結されていない場合、送信器114により送信されるビームの一部をなす第1の光線118は、最初に、カートリッジホルダ82の底端部100の近くを通ってミラー117によって反射され、そして2回目に底端部100の近くを通って第1の光受信器115に達し、送信器114によって送信された第2の光ビーム119は、最初に、底端部100の近くを通ってミラー117によって反射され、そして2回目に底端部100の近くを通って第2の光受信器116に達する。図27で明らかなように、カートリッジホルダ82の底端部100の上方部分の断面は、部分的に円形であるに過ぎず、即ち、底端部100は、第1の光ビーム118を通過させるよう切頭された平らな側部120を有している。針支持体99が針96と共にカートリッジホルダ82の底端部100に正しく連結されている場合、光ビーム118,119は、針支持体99によって遮られる(図29)。かくして、光受信器115,116は、もはや光ビーム118,119を受け取らない。これは、制御ユニット95により針96がカートリッジ83に正しく連結されていることを意味するものとして解釈される。図28は、針支持体99及び針96がカートリッジホルダ82及びカートリッジ83に一部だけ連結されている中間形態を示している。この形態では、第2の光ビーム119は、針支持体99によって遮られるが、第1の光ビーム118は依然として第1の光受信器115に達する。これは、制御ユニット95により、針96がカートリッジ83に一部しか連結されていないことを意味するものとして解釈される。
【0089】
かくして、上述した針連結プロセス後、制御ユニット95により針がカートリッジ83に連結されていないこと又は針がカートリッジ83に一部しか連結されていないことが判定された場合、ユーザは、注射を開始させることが許されず、針連結プロセスを再開することが提案される。かくして、注射器械の使用の安全性が向上する。
【0090】
図30及び図31は、カートリッジ83への針96の連結を検出する別のセンサ手段を示している。この変形例では、中間固定部材102の弾性フランジ103のうちの一方103aは、他方よりも長い。カートリッジホルダ82が引っ込み位置にあり、針96がカートリッジ83に正しく連結されている場合、針支持体99とカートリッジ83の底端部83aとの間で圧縮されている最も長い弾性フランジ103aは、針支持体99の外部に突出した端部を有し、軸線Bと第1の角度α1をなす。この形態では、光送信器121により送信された光線は、フランジ103aの突出端部により反射されて光受信器122に差し向けられる。光受信器122による信号の受信は、制御ユニット95により、針96がカートリッジ83に正しく連結されていることを意味するものとして解釈される。他方、針96が図31に示すようにカートリッジ83に正しく連結されていなければ、フランジ103aの突出端部は、軸線Bと第1の角度α1とは異なり第2の角度α2をなす。この場合、フランジ103aの突出端部により反射された光線は、光受信器122によっては受け取られない。これは、制御ユニット95により、針がカートリッジ83に連結されておらず又は針がカートリッジ83に不適切に連結されていることを意味するものとして解釈される。
【0091】
図15及び図16に戻ってこれらを参照すると、針96を介する薬剤の送り出しは、上述したように、プッシュ部材84のピストン93がカートリッジ83のプランジャ85を押すことにより行われる。このプロセスの間、ピストン93及び管91の一部は、カートリッジ83の中に位置する。ピストン93及び管91は、薬剤の何回分かの用量がカートリッジ83内に残っている限り、カートリッジ83内に位置したままである。カートリッジ83内に入っている薬剤の全ての用量が患者の体内にいったん注射されると、プッシュ部材84はカートリッジ83の外部に引っ込められてカートリッジの交換を可能にする(図15)。しかしながら、2回の注射相互間において、プッシュ部材84が依然としてカートリッジ83の内部に位置している状態でユーザがドア88を開いてカートリッジ83を注射器械から取り出す恐れが存在する場合がある。かかる作業は、プッシュ部材84を深刻に損傷させる場合がある。
【0092】
この危険性を無くすため、本発明は有利には、プッシュ部材84がカートリッジ83の内部又は外部に位置しているとき、ドア88の開放機構体をロックし又はロック解除するロック機構体を提供する。
【0093】
図32〜図40を参照すると、ドア88の開放機構体は、軸線Bに平行な方向に摺動可能な開放ボタン89と、器械ハウジング81内で開放ボタン89に固定されていて、フランジ124を備えたロック可能な部品123と、ロック可能な部品123により作動されるレバー125と、レバー125により作動されるロック部材126とを有している。レバー125は、器械ハウジング81に対して固定されている軸線に取り付けられている。
ロック部材126は、開放ボタン89に対して軸線Bの反対側に位置した場所で可動構造体82,84,86,92に取り付けられると共に軸線Bに平行な方向に可動構造体82,84,86,92に対して摺動できるよう設けられており、このロック部材は、フランジ127を備えた凹部を有し、このフランジが、カートリッジホルタ82の対応のフランジ128と協働するよう設計されている。
【0094】
ロック機構体は、可動凹み部品94と、凹み部品94により作動され、一方の端部にフランジ130を備えたレバー129とを有し、このフランジは、ロック可能な部品123のフランジ124と協働するよう設計されている。レバー129は、器械ハウジング81に対して固定された軸線に取り付けられている。凹み部品94は、軸線Bに沿って動くことができ、ばね131(図13〜図16に見える)の一端部に固定されており、このばねの他端部は、可動構造体82,84,86,92に固定されている。
【0095】
開放及びロック機構体の動作原理は次の通りである。即ち、薬剤用量の注射中(図32〜図34)、可動構造体82,84,86,92は、最下部位置にあり、プッシュ部材84のピストン93は、カートリッジ83の内部に位置し、凹み部品94は、休止位置にあって、レバー129と非接触状態にある。この形態では、第2のレバー129のフランジ130は、ロック可能な部品123のフランジ124に係合し(図33及び図34)、ロック可能な部品123及びこれと共に開放ボタン89が、ロックされ、即ち、これらを上に移動させることができないようになり、かくして、ドア88が開かれるのが阻止される。同一カートリッジ83を用いた2回の注射相互間で、可動構造体82,84,86,92は、その引っ込み位置にあり、プッシュ部材84のピストン93は、カートリッジ83の中に位置し、凹み部品94は、休止位置にあって、レバー129と非接触状態にある(図35〜図37)。この形態では、第2のレバー129のフランジ130は依然としてロック可能な部品123のフランジ124に係合し(図37)、ロック可能な部品123及びこれと共に開放ボタン89がロック状態のままであり、かくしてドア88が開かれるのが阻止されるようになっている。カートリッジ83内に入っている全ての薬剤用量がいったん注射されると、プッシャ部材84の可動構造体82,84,86,92及びピストン93は各々引っ込められる。プッシュ部材84の引っ込み中、ピストン93は、凹み部品94の凹部に入って凹み部品94をばね131の作用に抗して上方に押し、凹み部品94がフランジ124を備えた端部と反対側の第2のレバー129の端部に接触してレバー129を回転させ、かくしてレバー129をロック可能な部品123から離脱させるようになっている(図40)。次に、ドア開放ボタン89を図38に示すように上方に滑らすのがよい。開放ボタン89を上方に移動させることにより、第1のレバー125は、回転してロック部材129を下降させ、かくしてカートリッジホルダ82のフランジ128をロック部材126のフランジ127から離脱させる。次に、ばねの作用を受けてドア88及びこれと共にカートリッジホルダ82は回動軸線90回りに回転してカートリッジホルダ82からのカートリッジ83の取出しを可能にする(図38)。ドア開放ボタン89、レバー125、ロック部材126及びレバー129は、それぞれのばねの作用を受け、これらばねは、これらを図32〜図34、又は図35〜図37に示すこれらの休止位置に維持する傾向がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(81)と、
開放位置において、前記ハウジング(81)への薬剤容器(83)の出し入れを可能にするドア(88)と、
前記ドア(88)を開閉するドア開放機構体(89,123,125,126,82)と、
前記薬剤容器(83)の外部に位置する引っ込み位置から軸方向に動いて前記薬剤容器(83)に入り、前記薬剤容器(83)内に入れられている液状薬剤を前記薬剤容器(83)から押し出してこの液状薬剤を患者に投与し、次にその引っ込み位置に戻ることができるプッシュ部材(84)と、
前記プッシュ部材(84)が前記薬剤容器(83)内に位置しているとき、前記ドア(88)の開放を阻止するよう前記ドア作動機構体(89,123,125,126,82)の少なくとも一部をロックし、前記プッシュ部材(84)がその引っ込み位置にあるとき、前記ドア開放機構体(89,123,125,126,82)をロック解除するロック機構体(94,129)と
を有することを特徴とする薬剤投与器械。
【請求項2】
前記ロック機構体は、前記プッシュ部材(84)が前記薬剤容器(83)内に位置しているとき、前記ドア開放機構体(89,123,125,126,82)のドア開放ボタン(89)をロックするよう設計されていることを特徴とする請求項1記載の注射器械。
【請求項3】
前記ロック機構体(94,129)は、休止位置において、前記ドア開放ボタン(89)をロックし、前記プッシュ部材(84)の引っ込みの際に前記プッシュ部材(84)によって作動されて前記ドア開放ボタン(89)をロック解除する第1のレバー(129)を有することを特徴とする請求項2記載の注射器械。
【請求項4】
前記ロック機構体(94,129)は、前記プッシュ部材(84)の変位方向に動くことができる部分(94)を更に有し、該部分(94)は、休止位置において、前記第1のレバー(129)と非接触状態にあり、前記プッシュ部材(84)の引っ込みの際、前記プッシュ部材(84)の端部(93)によって押されて前記第1のレバー(129)に接触してこれを作動させることを特徴とする請求項3記載の注射器械。
【請求項5】
前記ドア開放機構体(89,123,125,126,82)は、前記プッシュ部材(84)の変位方向に動くことができるドア開放ボタン(89)と、前記ドア開放ボタン(89)によって作動される第2のレバー(125)と、前記変位方向に動くことができ、前記第2のレバー(125)によって作動され、第1のフランジ(127)を備えたロック部材(126)と、前記薬剤容器(83)を前記ハウジング(81)内に保持する薬剤容器ホルダ(82)とを有し、前記薬剤容器ホルダ(82)は、前記第1のフランジ(127)と協働するよう設計された第2のフランジ(128)を有し、前記第2のフランジ(128)は、前記第2のフランジ(128)を前記第1のフランジ(127)によって解除すると、前記ドア(88)と共に前記ドア(88)の閉鎖位置から前記ドア(88)の開放位置に回動することができることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載注射器械。
【請求項6】
ハウジング(81)と、
端部(83a)が針(96)に連結できる薬剤容器(83)を前記ハウジング(81)内に受け入れて保持するホルダ(82)と、
制御手段(95)と、
前記制御手段(95)によって制御され、前記薬剤容器(83)内に入れられている液状薬剤を前記針(96)を通って前記薬剤容器(83)から押し出す手段(86,84)と、を有する薬剤注射器械であって、
前記制御手段(95)に連結されていて、前記薬剤容器(83)への前記針(96)の正しい連結状態を検出する第1のセンサ手段(114〜117、103a、121,122)を有することを特徴とする薬剤注射器械。
【請求項7】
前記第1のセンサ手段は、光送信器手段(114)及び第1の光受信器手段(115)を有し、前記光送信器手段(114)及び前記第1の光受信器手段(115)は、針(96)が前記薬剤容器(83)に正しく連結されていない場合、前記光送信器手段(114)により送信された第1の光線(118)が前記薬剤容器(83)及び前記ホルダ(82)によって形成されたユニットの端部(100)の近くを通って前記第1の光受信器手段(115)に到達し、前記針(96)が前記薬剤容器(83)に正しく連結されている場合、前記第1の光線(118)が前記針(96)を支持した針支持体(99)によって遮られるように配置されていることを特徴とする請求項6記載の注射器械。
【請求項8】
前記薬剤容器(83)及び前記ホルダ(82)によって形成されたユニットの前記端部(100)は、前記針(96)が前記薬剤容器(83)に正しく連結されていない場合、前記第1の光線(118)を通過させるよう切頭(120)されていることを特徴とする請求項7記載の注射器械。
【請求項9】
前記薬剤容器(83)への前記針(96)の部分的な連結状態を検出する第2のセンサ手段(114,116,117)を有することを特徴とする請求項6乃至8の何れか1項に記載の注射器械。
【請求項10】
前記第2のセンサ手段は、前記光送信器手段(114)及び第2の光受信器手段(116)を有し、前記光送信器手段(114)及び前記第2の光受信器手段(116)は、前記針(96)が前記薬剤容器(83)に連結されていない場合、前記光送信器手段(114)により送信された第2の光線(119)が前記薬剤容器(83)及び前記ホルダ(82)によって形成されたユニットの前記端部(100)の近くを通過して前記第2の光受信器手段(116)に到達し、前記針(96)が前記薬剤容器(83)に部分的に連結されている形態では、前記第1の光線(118)が依然として前記第1の光受信器手段(115)に到達している状態で、前記第2の光線(119)が前記針支持体(99)によって遮られるよう配置されていることを特徴とする請求項7又は8の従属形式としての請求項9記載の注射器械。
【請求項11】
前記薬剤容器(83)及び前記ホルダ(82)によって形成されたユニットの端部(24,100)は、前記針(96)を支持した針支持体(99)を前記ユニット(82,83)の前記端部(100)に連結できる少なくとも1つの弾性フランジ(103)を備え、前記第1のセンサ手段は、光送信器手段(121)及び光受信器手段(122)を有し、前記光送信器手段(121)及び前記光受信器手段(122)は、前記針(96)が前記薬剤容器(83)に正しく連結されている場合、前記弾性フランジ(103)のうちの1つ(103a)の反射性部分が、前記光送信器手段(121)により送信された光線を前記光受信器手段(122)に向かって反射し、前記針(96)が前記薬剤容器(83)に正しく連結されていない場合、前記反射性部分(103a)が前記光線を前記光受信器手段(122)に一致していない方向に反射するよう配置されていることを特徴とする請求項6記載の注射器械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−50847(P2012−50847A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236462(P2011−236462)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【分割の表示】特願2006−553594(P2006−553594)の分割
【原出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504238862)アレス トレイディング ソシエテ アノニム (24)
【Fターム(参考)】