説明

液面に支持される生物材料を育成するための生物反応器

媒体を保持し、複数の植物の育成を支援するための本発明の生物反応器組立体。この組立体は、光源と、光透過性壁構造を有し、貯槽を画成する容器とを備えている。貯槽の主軸は、実質的に水平であり、これによって、貯槽が、部分的なレベルまで媒体で満たされ、植物を支持するために比較的大きな表面積を画成することを可能にする。また、この組立体は、容器の分離した壁構造部分を一緒に固定かつ密封し、無菌環境を画成するためにエンドキャップを壁部分に固定かつ密封するクランプも備えているとよい。他の選択肢として、クランプは、ガス供給ノズル、ガス出口ノズル、空気温度プローブ、pHプローブ、試料採取排出管、ガス組成プローブ、及び媒体温度プローブのような生物反応器の機能を測定及び制御するための種々の装置の通過を可能にする貫通開口を画成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を保持し、生物材料の育成を促進するための生物反応器の使用に関し、特に、水性植物のような光源を必要とする生物材料を育成するための透明な生物反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
光生物反応器は、光合成微生物が制御された方法で成長することを可能にする装置である。フォース(Forth)に付与された米国特許第5,846,816号(「Forth特許」)は、そのForth特許の図1に示されるように、逆三角形の断面を有する透明チャンバー10を備えるバイオマス生産装置を開示している。このチャンバー内に、第1導管22が延在している。この第1導管22は、チャンバー内へのガスの導入を可能にするために、その長さに沿って複数の穴を有している。また、チャンバー内に、熱交換媒体の供給源に接続された1対の熱交換導管26が延在している。
【0003】
導管を通って流入する空気の流れは、特徴的な流れパターンを確立し、この空気の流れパターンによって、Forth特許の図3に示されるように、チャンバー内の液体は、チャンバーの中心領域を通って上昇し、カバー16の下に位置するチャンバー上部を横切って、チャンバー側壁20に沿って下降し、導管に戻るように、循環する。カバーは、循環しているガスがチャンバーから流出する2つの出口28を備えている。明らかに、この空気の流通と液体の循環は、そこに浮遊する生体物質が露光されるのを確実にし、また、藻類のような生体物質がチャンバーの壁に付着するのを防ぐ。
【0004】
Forth特許に開示された生物反応器は、生体物質の育成を促進するが、この生物反応器は、一般的に、無菌育成環境を必要とする用途には、有用ではない。出口は、風で運ばれる汚染物質を含み得る外気に開口している。このような汚染物質は、汚染物質を避けるための厳格な米国食品医薬品局(FDA)の指針が満たさねばならない薬理学的用途の場合、特に厄介な問題になる。
【0005】
加えて、Forth特許で必要とされる液体の絶え間ない循環は、ある種の生体物質の育成を妨げる。例えば、ウキクサ科(lemnaceae)から完全に分化した水性植物は、水の表面で最適に成長する淡水植物である。このような表面で成長する植物は、典型的には、最適な成長を支援及び促進するのに、比較的静止した水を好む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、汚染物質から隔離された比較的無菌の環境において植物生物材料の育成を促進するための光生物反応器システムを有すれば、有利であろう。もしこのシステムが、ウキクサ科の植物のような表面で成長する水性植物の育成を促進することができるのであれば、さらに有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
媒体を保持し、複数の植物の成長を支援するための本発明の生物反応器組立体によって、上記の利点は達成され、及び他の要求も対処される。この組立体は、光源と、光が透過するのを可能にし、かつ媒体と生物材料で満たされる貯槽を画成する光透過性壁構造を有する容器とを備えている。貯槽の主軸は、実質的に水平であり、これによって、貯槽は、部分的なレベルまで媒体で満たされることができ、及びこのような支持を好む植物及び他の生物材料を支持するための比較的大きな表面積を画成することができる。この組立体は、容器の分離した壁構造部分を一緒に固定かつ密封するクランプと、無菌環境を維持するために壁部分に固定されるエンドキャップとを備えていてもよい。他の選択肢として、クランプは、ガス供給ノズル、ガス出口ノズル、空気温度プローブ、pHプローブ、試料採取排水管、ガス組成プローブ、及び媒体温度プローブのような生物反応器の機能を測定及び制御するための種々の装置の通過を可能にする貫通開口を画成してもよい。
【0008】
一実施形態において、本発明は、媒体を保持し、複数の植物の成長を支援するための組立体を備えている。この組立体は、少なくとも1つの光源と、光源に隣接して配置された少なくとも1つの容器とを備えている。容器の壁構造は、光源からの光の通過を可能にする光透過性を有し、他の構成部品と組み合わせて、大気環境に対して閉鎖された貯槽を画成している。この貯槽は、その最長寸法の方向に略延在する主軸を画成する細長形状を有している。この組立体において、容器は、貯槽の主軸が重力に対して実質的に水平面にあるように、配向されている。これによって、貯槽は、部分的に媒体で満たされたときに、植物が支持される比較的大きな媒体表面を生成する。
【0009】
一態様において、壁構造は、一定の断面を有する長く延びた形状を有している。例えば、壁構造は、円筒、楕円、又は矩形の断面を有しているとよい。管壁構造の好ましい寸法として、長さは、10から50フィートの範囲内にあり、直径は、2から12インチの範囲内にある。主軸を有する断面において、この主軸は、好ましくは、媒体の表面積をさらに最大限に大きくするために、実質的に水平の面と整合するように位置合わせされる。例えば、矩形断面の2つの対向するコーナ部は、残りの2つのコーナ部よりも実質的に水平な面により接近して位置決めされ得る。
【0010】
他の態様において、複数の容器が用いられてもよく、この場合、これらの容器は、互いに間隔を置いて垂直方向積重ね体に配置される。この垂直方向積重ね体は、光源としての発光ダイオード又は蛍光灯のような電気的光源と組み合わされるとよい。光源を、容器の積重ね体の両側、場合によっては、容器間の空間に配置することによって、光が垂直方向積重ね体に供給される。
【0011】
また、容器内に、壁構造の多数の部分を一緒に保持するための1つ以上のクランプが含まれてもよい。このクランプは、種々の試料採取及び制御装置の挿入のための1つ以上の開口を有していてもよい。これらの装置として、クランプ内に画成された開口を通して貯槽内に延在するガス供給ノズル、ガス出口ノズル、空気温度プローブ、pHプローブ、試料採取排出管、ガス組成プローブ、及び媒体温度プローブが挙げられる。
【0012】
他の態様において、クランプは、多数の壁構造部分の隣接端を受けるような大きさと形状を有する開口を画成する。例えば、クランプは、クランプ端の周りに延在する大きさを有する中央バンドを備えているとよい。その一実施の形態において、クランプは、クランプの両端に互いに離間した1対の内向きフランジを有しているとよく、この場合、これらのフランジは、壁構造部分の隣接端を把持するように構成されている。把持を容易にするために、壁構造部分の端は、内向きフランジと係合するように外側に張出しているとよい。好ましくは、クランプの各々は、FDAによって認定された複合材料から構成され、汚染物質が容器に進入するのを遮るシリコンシールを備えている。
【0013】
代替的実施形態において、容器壁構造は、各々が主軸を有する少なくとも2つの互いに離間した部分を有する閉鎖された貯槽を画成してもよい。離間された部分の主軸は、共通の実質的に水平の面内にある。これによって、離間した部分の1つを部分的に媒体で満たすことによって、残りの部分も部分的に媒体で満たされ、植物が支持される媒体面を生成する。
【0014】
本発明は、多くの利点を有している。全般的に、この生物反応器組立体は、臨床及び商業規模の量の生物薬剤を制御された無菌の清浄な環境において遺伝子変換植物から生産することを可能にする。例えば、部分的に媒体で満たされる貯槽を画成する容器を用いることによって、ウキクサ植物のような表面支持生物材料の大規模な生産のための比較的大きな表面が得られる。加えて、容器壁構造の種々の部分を相互接続するシールと種々の測定及び供給装置の挿入のための密封された開口とを有するクランプを用いることによって、医学用途の生物材料の成長を促進する清浄かつ無菌環境が確実に得られる。クランプシステムによって、保守と変更のための容器の組立及び解体を容易にすることもできる。測定及び供給装置は、貯槽内の環境が、その内部における生物材料の育成と発現を可能な限り大きくするように、厳格に制御されるのを確実にする。
【0015】
本発明を一般的な用語で述べたが、以下、添付の図面について説明する。なお、図面は、必ずしも尺度通りには描かれていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の全ての実施形態ではないが、いくつかの実施形態が示される添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。実際、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、ここに述べる実施形態に制限されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示内容が適用される法的要件を満足するように、提供されるものである。図面を通して、同様の番号は、同様の要素を指す。
【0017】
本発明の一実施形態の生物反応器組立体10が、図1に示されている。この生物反応器システムには、複数の実質的に水平方向に延在する容器11が含まれている。これらの容器11は、ラック12によって、複数の垂直方向に延在する光源13に隣接して垂直方向に積重ねられて、支持されている。容器11の各々は、光透過性の円筒状壁構造14を備えている。この壁構造14は、成長に光を必要とするウキクサ又は他の生物材料を支持するための表面をもたらすように媒体を部分的な充填レベルで保持するための貯槽15を画成する。
【0018】
ここで用いられる「媒体」という用語は、貯槽15内に収容された生体物質の育成、試験、調節、又は操作を促進するのに用いられるどのような液体、ゲル、部分的液体・部分的固体、又は化合物、薬品、又は栄養物の流動可能な供給物を指す。従って、媒体は、水のみ、水と肥料、土壌、寒天ゲル、泥との組合せ、又は成分のある種の流動と操作がここに述べる装置を用いて引き起こされる限り、水とそれらの成分の他の組合せ、又は水を含まないそれらの成分の他の組合せであってもよい。
【0019】
ここで用いられる「生物材料」又は「生体物質」という用語は、繁殖又は発現を支援するために光と媒体の供給を必要とするいかなる材料をも表す。好ましくは、生物材料は、ウキクサ科に含まれる植物のような液体表面を必要とする、すなわち、液体表面で育つ植物である。他の好ましい水生植物として、オオサンショウモ(Giant Salvinia)、カリバ藻(Kariba weed)、水槽用水コケ(Aquarium watermoss)、水シダ(Water Fern)、カロリナ・モスキートモ(Carolina mosquito fern)、ウォーターヒヤシンス (water hyacinth)、ホテイアオイ(jacinthe d'eau)、多葉水草(Variable-leaf Pondweed)、ウォータースレッド水草(Waterthread Pondweed)、クロモ(Hydrilla)、アメリカ水生プランテーン(American Water-Plantain)、湿地ペニワート(Marsh Pennywort)、及び匍匐イグサ(Creeping Rush)が挙げられる。これらの植物及び他の生物材料は、野生植物であってもよいし、又は人又は動物に用いられるワクチン、治療用タンパク及びペプチド、栄養補給食品、低分子薬剤、研究及び生産用試薬(細胞培養用の成長因子及び媒体添加物)、又は薬剤用添加物を生産するための遺伝子転換植物であってもよい。
【0020】
生物反応器10のラック12は、図1及び図2に示されるように、ラックの残りの部分を支持するための基部16を備えている。特に、基部16は、ラックの横方向端と中央に配置された3つの脚部材23の底において、床又は他の支持面に置かれる多数の足22を備えている。これらの脚部材に、容器11の実質的に全長にわたって、水平に延在する支持レール24が置かれている。
【0021】
3つの垂直支持部材17が、水平支持レール24の各横方向側部と中心に接続され、そこから上方に延在している。好ましくは、垂直支持部材17は、基部の前縁に向かって延在する片持ち支持部材19上に支持される容器11に付加的な安定性を与えるために、基部16の後縁の近くで支持される。
【0022】
片持ち支持部材19の各々は、垂直支持部材の前縁に、均一に離間された間隔で取り付けられている。加えて、片持ち支持部材の各々は、垂直支持部材17に取り付けられた取付け板20を後面側に備え、及び保持部材21を前面側に備えている。図2に示されるように、保持部材は、容器を比較的緊密な嵌合状態で支持するために、容器の壁構造14の外面に適合する同等の大きさと形状を有する円弧状の上面を画成しているとよい。
【0023】
図1及び図2に示される実施形態において、付加的な1対の垂直支持部材25が、基部の水平支持レール24の最外端において、その水平支持レール24から上方に延在している。1対のガセット18が、水平支持レール24に対する垂直支持部材25の最外部の接続を補強している。ガセットの各々は、三角形状を有し、その1つの脚が水平支持レール24に取り付けられ、その他の脚が垂直支持部材25に取り付けられている。垂直支持部材が後側に配置されるので、前側のガセット18の底面脚は、後側のガセットの底面脚よりも長い。
【0024】
垂直支持部材17、25の各々の上端に、底側支持レール24と同じ長さでそれと平行に延在する他の水平支持レール26が支持されている。上端側水平支持レールと底側水平支持レールの両方が、複数の光源マウント27を支持している。光源マウントは、対応する対をなして、レール24、26に沿って、均一に離間された間隔で配置されている。これによって、光源マウントの各対は、垂直方向に延在する1つの光源13を支持することができる。
【0025】
光源13は、好ましくは、電力が投入される人工光源である。例えば、照明は、発光ダイオード、蛍光灯、白熱灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、又はこれらの種々の組合せ、及び他の種類の光源によって、供給することができる。代替的に、これらの人工光源は、直接的及び間接的な太陽光によって支援されてもよいし、又は置き換えられてもよい。しかし、人工光源は、貯槽15内に含まれる全てのウキクサ又は他の生物材料に成長を促進するのに十分な量の光が供給されるように、制御及び位置決めするのが容易であるので、好ましい。種々の形式の光源への電力の供給は、配線又は当該技術分野において一般的な他の方法によってなされ得るので、ここではさらに詳細には述べない。
【0026】
前述したように、図1に示された実施形態の光源13は、ラック12に保持された容器11の実質的に水平配向と直交する垂直配向(すなわち、重力の方向)を有している。垂直配向された光源13は、容器11の積重ね体の片側に位置し、容器の壁構造14に沿って規則的な間隔で互いに平行に離間している。これによって、各光源は、各容器の一端から他端にわたって、全ての容器11の光源と隣接する部分を、照明する。
【0027】
成長を支援するのに必要な照明の強さ、容器11の位置、又は貯槽15内の媒体の所望温度のような異なる因子に依存して、光源13の種々の異なる構成が可能である。例えば、光源13の代替的実施形態が、図3に示されている。この実施形態において、光源は、離間した平行配列で、容器間に延在している。とりわけ、この配列の光源は、図1及び図2に示される垂直方向の積重ね体と同様の背中合わせに積重ねられたいくつかの垂直方向の積重ね体の容器間に延在させることができる。
【0028】
光源の他の代替的構成が、図4に概略的に示されている。ここでは、光源は、容器11の対間の垂直方向の空間内に、対になって水平方向に延在している。その結果、光源の各々は、容器11の該当する1つの長さに沿って、その容器11と平行に延在している。容器の上方に配置することによって、光源13の各対は、容器の壁構造14の上端の長さの全体に沿って下方に照明を投射することができる。このような配列は、媒体の上面で主に生息する生物材料に適していると考えられる。
【0029】
図4に示される実施形態における容器11は、互いに隣接する垂直方向積重ね体の対の形態で、配置されている。この実施形態におけるラック12は、垂直支持部材17を備えているが、これらの垂直支持部材の付加的な安定性を与える必要がない場合、光源13を支持する支持レール24、26は、必ずしも必要ではない。垂直支持部材から内側に向かって、片持ち支持部材19が延在している(これらは、明瞭にするために、図4には示されていない)。これらの片持ち支持部材19の端は、容器11の隣接する垂直方向積重ね体の片持ち支持部材の端に接続されるとよい。光源13の各々は、容器11の該当する1つの上方において、片持ち支持部材の保持部材21の底に取り付けられている。
【0030】
図4における容器11に対応する配列が、図1及び図2に示される生物反応器組立体の2つの前端を隣接させて配置することによっても、得ることができるだろう。このような配列は、図4の水平方向に延在する光源13を図1及び図2の垂直方向に延在する光源と組み合わせてもよい。このような隣合せの配置関係は、容器11の隣接する垂直方向積重ね体の照明を重ねることができるので、有利である。
【0031】
図4に示される隣合せに配置された容器の垂直方向積重ね体の他の利点は、容器の密集度が改良され、同時に、容器と光源13に点検のために容易に接近することができる点にある。例えば、垂直方向積重ね体の各対は、点検用通路28をそれらの間に設けるように離間させることができる。加えて、積重ねの段数は、十分に低いので、従来の建築構造であっても、これらの積重ね体の重量を支持することができる。図4に示されるように、これによって、隣合せに配置された積重ね体を、建築構造の一階の床30と共に中二階面29に配置させることができる。
【0032】
図1と図2に示されるラックの態様は、容器11と光源13をそれ以外の実施形態の対応する位置に支持するためのラックに援用することができるので、それ以外の実施形態のための別の形態のラック12は、ここではさらに詳細には説明しないことに、留意すべきである。また、ラック12の好ましい実施形態が、図1及び図2に示されているが、異なる材料、容器11と光源13をそれらの対応する位置に支持する支持部材の配列などによって、ラックの種々の代替的実施形態が可能であることにも、留意すべきである。他の例では、ラック12は、ネジ付きロッドを管カラーと相互接続させ、容器11を支持するように、構成されてもよい。
【0033】
光源13と容器11の相対的な位置、並びに光源と容器の数は、特定の途に適するように変更されてもよいことにも、留意すべきである。例えば、生物材料の育成を促進するために、より多数の光源が用いられてもよく、又より大量の生物材料を育成するために、より密集して積重ねられたより多数の容器が用いられてもよい。従って、光源と容器の組合せは、必ずしも上記の構成に制約されず、本発明の範囲内に依然として包含されると考えられる。
【0034】
容器11の各々の壁構造14は、そこに画成された貯槽15内に貯蔵された生物材料の育成を促進するのに十分な光を通過させることができる光透過性材料から構成される。例えば、壁構造14は、ホウケイ酸塩又はフリントガラスのようなガラス、又はポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、テフロン(登録商標)、シリコーン、ナイロン、又はポリエチレンのようなプラスチックから構成されるとよい。これらの材料は、柔軟であるか又は比較的剛性であるとよい。好ましくは、光透過性材料は、一部の光の通過を可能にするのみならず、育成を支援するのに必要な光の十分な通過を促進するために、完全に透明である。しかし、生物材料の必要性又は貯槽15内における蓄熱を低減させる必要性のような因子に依存して、一部の波長又は光強度を選別するために、半透明材料が用いられてもよい。
【0035】
ここで用いられる「壁構造」という用語は、少なくとも部分的に貯槽15を画成するいかなる部材又は部材の集合をも指す。図1及び図2の実施形態に示される壁構造14は、この場合、透明材料から構成された一定長さの管素材を用いているので、その長さに沿って一定の円形断面を有する円筒壁構造を有している。好ましくは、壁構造は、ウキクサ科の生物材料を育成するために、2から12インチの範囲内の直径と、10から50フィートの範囲内の長さとを有している。このような寸法によって、典型的には、4から8個の容器11が、通常の天井高さを有する室内に積重ねられる。しかし、壁構造のどのような長さ又は直径であって、比例的に大きな媒体面が生物材料の育成に対して設けられる限り、用いられてもよいが認識されるべきである。
【0036】
一定の断面を有する形状及び一定の断面を有しない形状を含む壁構造14に対して、他の形状が用いられ得る。例えば、壁構造は、照明の必要性又は利用可能な空間に適合するように構成された涙形状、又は部分的に任意の形状、すなわち、不規則な形状を有していてもよい。しかし、好ましくは、この形状は、壁構造によって重力の引力と直交する面(すなわち、水平面)に形成される貯槽15の断面の一部の表面積を可能な限り大きくするように選択される。例えば、6インチ直径の円筒断面(図2に示される実施形態)と10フィートの長さとを有する壁構造14は、(その上端と底との間の中間点において)、水平面で35平方フィートの最大表面積を有するだろう。
【0037】
円筒断面を10インチ直径の断面まで大きくすれば、図5に示される他の実施形態に示されるように、媒体表面積は、42平方フィートまで増大される。しかし、壁構造14の高さを増大させることによる代償として、限られた垂直空間内に積み重ねられる容器の数が少なくなる。
【0038】
他の実施形態において、図6に示されるように、壁構造14の断面は、長軸(すなわち、最大直径)と短軸(すなわち、最小直径)を有する楕円である。有利には、長軸は、貯槽15内における媒体の上面の表面積を可能な限り大きくすると共に、より多くの容器11が一定の垂直空間内に積重ねられるように壁構造14の高さを可能な限り小さくするために、水平面に配向されている。例えば、水平に配向された11.1インチの長軸と10フィートの長さを有する図示された楕円の場合、最大の媒体表面積は、83平方フィートである。加えて、比較的高さが低いので、垂直方向積重ね体当りの容器11の数をさらに大きくすることができる。
【0039】
さらに他の実施形態において、壁構造14は、図7に示されるように、4つのコーナ部を有する矩形断面を有している。矩形壁構造14の水平断面積は、2つの対向するコーナ部が水平面に接近するか又は水平面に位置し、残りの対向するコーナ部の対が水平面から遠くなるように、容器を傾斜することによって、最も大きくなる。例えば、コーナ部とコーナ部との距離が10インチで、長さが10フィートの矩形壁構造10は、約98平方フィートの媒体表面積をもたらす。楕円状壁構造14と同様に、比較的多数の矩形容器11が、制限された垂直方向空間内に用いられ得る。代替的に、矩形壁構造14は、その上端と底が水平面と整合するように、配置させることもできる。
【0040】
図1と図2を再び参照するに、壁構造14は、1対の端を有し、これらの端の各々は、クランプ40とエンドキャップ41の組立体によって、閉鎖されている。図8にさらに詳細に示されるように、エンドキャップ41は、透明材料、好ましくは、壁構造14に用いられるのと同じ材料の円形板であり、壁構造14の一開端に対して保持されている。加えて、エンドキャップ41は、以下にさらに詳細に述べる種々の装置が進入するための1つ以上の開口を画成しているとよい。代替的に、エンドキャップ41は、必要に応じて、特に、壁構造14が比較的透明である場合、半透明又は不透明な材料から構成されるようにすることもできる。
【0041】
クランプ40は、図9に示されるような外側バンド部42を備えている。この外側バンド部42は、ヒンジ43によって接続される2つの部分に分割されている。ヒンジの反対側には、係止組立体が配置され、この係止組立体は、2つの部分の一方に取り付けられたネジ44と、2つの部分の他方の固定フランジ45に画成されたネジ付き開口とを備えている。これらの接続された2つの部分を有する外側バンド部42は、円筒壁構造の外径に対応する内径を有する円形状を有している。これによって、外側バンド部42は、壁構造14を取り囲むように広げられ、次いで、図11に示される本発明の他の実施形態に示されるように、ネジ44を固定フランジ45内に締め付けることによって、固定させることができる。勿論、外側バンド部の大きさと形状は、図5、6、及び7に示されるような壁構造の種々の大きさと形状に適合するように、異ならせることができる。
【0042】
また、クランプ40は、図10に示されるように、内側シール部46を備えている。円筒壁構造14の実施形態に適合される内側シール部は、図8に示されるように、壁構造の内径と適合する大きさを有する円筒リングの形状を有している。特に、シール部46は、シール部の本体を超えて離間した1対の面取り縁47を備えている。面取り縁の各々は、シール部の一端の外周に沿って延在し、壁構造14の端又はエンドキャップ41の縁を受けるような大きさと形状を有している。シール部は、エンドキャップ41と壁構造14を圧縮してシール係合を得るのに十分な剛性を有するステンレス鋼のような耐食性金属又はアセチル共重合体のようなFDAによって認定された複合材料から構成されるとよい。
【0043】
面取り縁47の各々に、好ましくは、シール48が埋め込まれている。このシール48は、例示された実施形態では、円形断面を有するOリングである。シール48のこのような位置決めは、有利である。何故なら、このシール48は、図11の別の実施形態において示されるように、外側バンド部42が壁構造14の端又はエンドキャップ41の縁に締め付けられると、その壁構造14の端又はエンドキャップ41の縁との間に介在され、かつ圧縮されるからである。好ましくは、このシールは、貯槽15内の無菌環境を維持し、粒状物質の汚染を防ぐために、シリコーンのような不活性材料から構成される。しかし、貯槽15内の無菌環境を維持するのに十分な密封を形成する他の形式のシールが用いられ得る。例えば、前述のシリコーン、ポリエチレン、又はゴムのようなFDAによって認定されたエラストマー材料が、シールに対して用いられ得る。
【0044】
壁構造14、エンドキャップ41、又はクランプ40の異なる形状と材料に対して、異なるシール構成が、用いられてもよい。例えば、貫通穴を画成する円形素材から形成されるガスケット式シールが、ラッチ・レバー式クランプを用いて、端を画成する平坦な縁を有する壁構造と、その壁構造の端に保持される平坦な円形素材であるエンドキャップとの間に介在されるようにすることもできる。このような場合、シール48は、加圧されたときの表面積の増大によって気密・液密シールを形成するのに、それほど大きく圧縮される必要がないポリマー又は金属材料から構成されるとよい。
【0045】
本発明の他の実施形態において、容器11の各々の壁構造14は、図11及び図12に示されるように、クランプ40によって隣接端で一緒に接合される分離部分31に分割される。図12は、各々が専用の片持ち支持部材19の対によって支持される分離部分31の使用を示している。加えて、光源13は、容器11の前側と後側に隣接して、垂直方向に延在している。勿論、図12に示される多部分容器は、図3に示されるような他の容器の大きな列内に配置させることもでき、又は分離部分のない一体壁構造を有する容器に代わって、ここに例示かつ記載される種々の他の実施形態に用いることもできる。しかし、多部分壁構造14は、容易に分解され、容器11を小さな形状で移送し、又容器11の長さを変更することができるという利点を有している。
【0046】
図11に示されるように、壁構造部分31の1つは、隣接する壁構造部分に接合される一端を有し、エンドキャップ41によって、他端で閉鎖されている。特に、エンドキャップは、クランプ40によって、壁構造部分の端に保持される。クランプの取付けを容易にするのは、壁構造部分31の各々の端において半径方向外方に延在する張出し縁32である。好ましくは、この張出し縁は、クランプ40の面取り縁47内に緊密に嵌合するように、丸められている。加えて、各クランプ40のバンド部42は、そのバンドの両端に、互いに離間した1対の内向きフランジ49を有しているとよい。
【0047】
組立中、壁構造部分31の張出し縁は、シール48とシール部46の該当する面取り縁に着座される。次いで、バンド部42の一端における内向きフランジが、壁構造部分の外向き張出し縁32を越えて延ばされる。バンド部42が締め付けられると、内向きフランジ49は、張出し縁32の基部で、壁構造14の外面に下向きに延在する。これは、張出し縁の直径よりも小さい内径を形成し、壁構造部分を軸方向運動に対して拘束することによって、張出し縁を保持する。
【0048】
貯槽15内における環境の制御を可能にしながら、無菌環境をもたらすのを容易にするために、複数のネジ付き開口が内側バンド部42及び/又はエンドキャップ41を通って画成され、これによって、種々の試料採取、測定、及び供給装置をそれらの開口内を通過させることを可能にする。図11を参照するに、エンドキャップ内のネジ付き開口50は、主充填及び排出ノズル51の通過を可能にする。これらのノズルの各々は、比較的高流量で媒体と生物材料を注入又は供給することができ、従って、比較的大きな直径を有することができる。
【0049】
加えて、ノズル51は、エルボーとエンドキャップ41から下方に延在する主充填及び排出導管52とエルボーに取り付けられている。図1及び図2に示されるように、主充填及び排出導管52は、好ましくは、1つの容器と他の容器によって生産される生物材料間の混合がないように、容器11の各々に対して、個別化される。また、この個別化は、交差汚染の発生を隔離し、容器の各々に対して特別注文された媒体の使用を可能にする。ノズル51は、薬剤規格に合った定置清浄(CIP)の能力をさらにもたらす。上流において、充填導管52は、それらの導管が分岐する中心ヘッダーマニフォールドに接続されるとよく、各導管は、流れを制御する1つ以上の弁を有している。
【0050】
他の選択肢として、生物反応器組立体10は、容器11の各々の内側の周囲に延在するように構成された使い捨て容器ライナーをさらに備えていてもよい。例えば、このようなライナーは、貯槽15を画成する容器の部分を覆うように膨張可能であり、光の透過を可能にするために半透明であるとよく、又は壁構造14内で滑動する半透明なポリマースリーブであってもよい。有利には、容器ライナーは、取外し可能及び廃棄可能とすることによって、他の容器ライナーの挿入を可能にし、清浄手順を促進する。また、清浄化は、大きな媒体の抽出ノズルを接続するために、特に大きい貫通開口を有する特殊なエンドキャップ41を用いることによって、容易にされ得る。エンドキャップの取付けは、媒体の抽出中に、貯槽15内における真空引きを容易にする。
【0051】
媒体の主要な供給と排出以外に、媒体は、他の装置によって、試料採取され、及び測定されることもある。例えば、バンド部42に画成された開口53と各クランプ40のシール部46に画成されたネジ付き開口54によって、図8、図10及び図11に示されるように、試料採取ノズル55、多レベル温度プローブ56、及びpHプローブ57の挿入と固定が可能である。図8(ここでは、さらに明瞭にするために、クランプ40のバンド部42が示されていない)に最も明確に示されるように、プローブの各々は、ネジ部64の端に取り付けられるボルトヘッド58を備え、このボルトヘッド58によって、ネジ部をネジ付き開口54内に進入させ、クランプ40に固定することができる。試料採集排出管が、図11に示されるように、同様に取り付けられている。貯槽15内に延在するネジ部が図示されているが、貯槽に最も隣接する壁構造14の部分が、漏れを防ぐために、比較的滑らかな円筒開口であって、その長さに沿って延在する一連のOリング又は他のシールを有する円筒開口を画成することができる。
【0052】
ネジ部から媒体内に、プローブ(又はノズル)そのものが延在している。プローブの場合、ボルトヘッド58から、通常の電子的測定及び制御システム60に接続する電気リード線59が延在している。試料採取ノズル55は、試料採取及び供給ネットワーク66に接続された専用の導管65を有している。これによって、容器11を開口せず、汚染の危険もなく、媒体は、そのpHレベルが測定され、(媒体の多数のレベルにおける)温度が測定され、又は他の測定のための試料が採取され得る。好ましくは、ここに記載されたネジ付き開口の全ては、例えば、ポリマーテープ、半田、ワッシャー・シール組合せなどを用いることによって、汚染物質の通過に対して密封される。他の代替案として、ネジ部がネジ付き開口内に固定された時点で、確実な密封を得るために、それらのネジ部が溶接又は接着され、又は他の手段によって永久的に取り付けられてもよい。このような永久的な取付けの場合、装置が溶接又は取付けプロセス中に適切に配置される限り、ネジが必要とされないので、有利である。
【0053】
媒体の供給、排出、及び測定に加えて、貯槽15内の空気又は他のガスが、前述の装置に対するのと同様の方法で取り付けられた種々の他の装置を用いて、供給、排出、及び測定され得る。例えば、付加的なネジ付き開口50、54が、空気温度プローブ61、ガス供給ノズル62、及びガス出口ノズル63の通過を可能にする。これらの装置の各々は、専用のボルトヘッド58とネジ部64によって、その該当するネジ付き開口内に固定される。空気温度プローブ61は、空気温度の測定を可能にする。ガス供給ノズル及び出口ノズル62、63は、貯槽15内のガスの種類、温度、流量、及び他の特性の制御を可能にする。好ましくは、ガス出口ノズル63は、一方向のみの流れを許容するように規制され、これによって、汚染物質の侵入を保護する。ガス供給ノズル62の一端に、好ましくは、空気の供給を、貯槽15内の媒体と生物材料を過度に阻害させないように、拡散させる多孔分散管67が設けられる。ガス供給ノズルの他端に、ガス供給ライン70が位置している。
【0054】
貯槽15内の他の測定値が、ユーザによって望まれる情報に依存して、他の形態の装置によってなされ得ることに、留意すべきである。例えば、ガス組成プローブを用いて、CO2の量を試料採取することができる。このCO2の量は、ノズル62、63によって添加又は排出されるガスの組成を変更させるために、フィードバック値として用いられるだろう。ここで検討された測定、供給、及び排出装置は、所望の頻度、精度、速度、及び他の性能特性に依存して、異なる大きさ、構成、及び配置を有していてもよい。
【0055】
加えて、これらの装置は、ユーザの種々の要求、例えば、近づき易さ、開口に対する容器材料の耐容性、漏れと汚染の危険、などに依存して、容器11を通して、その容器の他の場所及び部分に延在させることもできる。例えば、これらの装置は、クランプ40のエンドキャップ41に加えて、壁構造14又は生物反応器組立体10の他の要素部品に画成された開口を通して、延在させることができる。他の代替案として、壁構造14の短い区域(例えば、4〜6インチの長さの区域)が、種々の装置用の開口を画成することもできる。例えば、ノズル62、63は、壁構造の短い区域に支持され、かつその区域内に延在し、この壁構造の短い区域は、水規制式クランプによって残りの壁構造に固定されるようにすることができる。この短い区域は、保守と清浄を容易にするために、取り外しかつ再取り付けすることができる。
【0056】
ガス供給及び排出ノズル62、63は、生物材料によるタンパク生産を増大させるために、生物材料の収穫の前に、貯槽15内のガス圧を低減させるのに十分な出力を有するポンプと共に用いられ得る。代替的に、育成過程中に、ガス圧を増加させ、貯槽内における生物材料の育成を促進させることができる。とりわけ、これは、貯槽内のガスに露出される部分が大きい媒体表面で支持される植物に対して、特に効果的である。また、本発明の貯槽の気密構造によって、内部のガス圧の操作が容易になる。
【0057】
例示されたクランプ40は、例示された壁構造14の構成に対して好ましいが、他の種類のクランプも、生物反応器組立体10の異なる部分を接続するのにここで用いられてもよいことが、さらに認識されるべきである。代替的クランプ構成は、必要に応じて、種々の因子に対処するようにされるとよい。これらの種々の因子として、容易な添加と排出、(徐々に締め付けることを可能にするような前述のレバー式の変形、すなわち、レバー・ラチェット設計によって益を得る)緊密な取付け、貯槽15内の無菌環境を確実にする気密・液密シールを確保する相補的シールの設計、耐食性、生体適合性、薬剤製造プロセスへのFDA規則で認定される材料の使用、及び無菌貯槽環境を維持しながら種々の測定及び試料採取装置を支持する能力が挙げられる。
【0058】
前述の実施形態は、各々、単一の主軸に沿って延在し、(すなわち、最長寸法に延在する長さを有し)、一定の断面を有する連続的な貯槽15を有しているが、本発明は、このような形状に制限されるべきではないことが、留意されるべきである。貯槽15を画成する容器11の壁構造14、エンドキャップ41、及び他の部分は、貯槽内の媒体がウキクサ植物のような表面支持生物材料を支持するための比較的大きな媒体表面積を画成するレベルまで充填され得る限り、部分的な捩じれ、折返し、分岐、及び偏位を有することができる。
【0059】
一般的に、この貯槽は、各々が主軸を有する1つ以上の主部を有し、これらの主部の全て又は殆どの軸が共通面を共有する。これによって、貯槽は、流動可能な媒体が比較的大きな表面積を形成するように、実質的に水平になるまで、(すなわち、重力の引力と直交するまで)、(容器を配向することによって)、位置付けされ得る。ここで、「実質的に水平」という用語が用いられる理由は、1つ又は多数の主軸におけるある程度の角度が処理目的のための流れを引き起こすために、望ましいことがあるからである。例えば、図1に示される容器11は、充填及び排出操作を容易にするために、主充填及び排出ノズル51の方向において、50フィートごとに約1インチだけ、降下している。媒体をその降下方向においてさらに付勢するために、さらに急峻な降下が用いられることもあるが、降下によって、容器の一端が媒体で満たされることがないこと、すなわち、壁構造14が媒体面上の生物材料の上方に向かう十分な育成を妨げるような高さまで、媒体が充填されないことが、望ましい。従って、貯槽15が長い場合、典型的には、その貯槽がその長さと比較して高くない限り、急峻ではない降下を必要とする。
【0060】
最初に使用する場合、容器11は、比較的大量の媒体を供給する主充填及び排出ノズル51を用いて、媒体で満たされる。生物材料は、主ノズル51を用いて添加させることもできるが、容器を最初に組み込むときに、添加されてもよい。好ましくは、光合成によって増殖させるのに光を必要とするウキクサ科の植物又は前述した水生植物種のような表面支持生物材料が、添加される。貯槽15が満たされると、この貯槽15は、媒体がどの点で最大表面積が確定されるレベルに達するかを決定するために、肉眼又は自動操作のいずれかによって、監視される。図1及び図2に示される実施形態の場合、これは、略半分充填された点である。
【0061】
生物材料と媒体が添加された後、透明な壁構造14を通して貯槽15内に光を投射するために、電力が光源13に供給される(又は、光源は、すでにオン状態であってもよい)。時間が経過すると、生物材料は、光からエネルギを吸収し、媒体から栄養素を吸収し、増殖し始める。薬理学的な目的に用いられる生物材料の場合、これらの生物材料は、ペプチドとタンパクを周囲の媒体内に分泌し始める。
【0062】
また、この期間中に、種々のプローブ56、57、61を用いて、貯槽内のガスと媒体の環境の性質(温度、pH、CO2組成など)を測定する。次いで、このデータが収集され、光源13の強度、容器11の周囲の大気の温度と対流特性、及びガス供給ノズル62と充填及び排出導管52を通って貯槽15に供給されるガスと媒体の温度と量を制御するのに、用いられる。加えて、試料採取ノズル55を用いて、分泌物の増進を決定するために少量の試料を採取することもできる。また、このような分泌物の増進を用いて、貯槽15内の種々の前述の条件を決定してもよい。
【0063】
ある点において、例えば、媒体が枯渇したとき又は生物材料の完全な収穫が所望されるとき、貯槽15の内容物の全体が、主充填及び排出ノズル51と導管52から勢いよく流出されるようにすることができる。このように流出の後、洗浄化合物が、同じノズルと導管を用いて、システム内に流されるとよい。代替的に、生物材料の発現した産物が連続的に試料採取され、又は部分的に排出され、媒体とガスが補給され、これによって、成長と発現プロセスが殆ど無制限に連続するようなある種の安定状態が、確立されるようにすることもできる。
【0064】
本発明は、多くの利点を有している。全体的に、生物反応器組立体10は、臨床及び商業規模の量の生物薬剤を容器内の無菌環境において遺伝子変換植物から生産することを可能にする。例えば、媒体によって部分的に満たされる貯槽15を画成する容器11を用いることによって、ウキクサ植物のような表面支持生物材料の大規模生産用の比較的大きな表面積が得られる。加えて、容器壁構造14の種々の部分を相互接続するシールと種々の測定及び供給装置の挿入のための密封された開口50、54とを有するクランプ40を用いることによって、医学用途の生物材料の育成を促進する清浄かつ無菌環境が確実に得られる。また、クランプシステムによって、保守と変更のための容器11の組立及び解体を容易にすることができる。測定及び供給装置は、貯槽15内の環境が、その内部における生物材料の育成と発現を可能な限り大きくするように、厳密に制御されることを確実にする。
【0065】
ここに述べた本発明の多くの修正形態と他の実施形態が、前述の説明とその関連する図面に現われる示唆の利得を受ける本発明が属する技術分野における当業者に思い浮かぶだろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、修正形態及び他の実施形態は、添付の請求項の範囲内に包含されることが意図されている、と理解されるべきである。特定の用語がここに用いられているが、それらは、包括的及び記述的な意味でのみ用いられ、制限する目的では用いられていない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態の生物反応器組立体の側面図である。
【図2】図1の生物反応器組立体の正面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の生物反応器の立面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態の生物反応器組立体の立面図である。
【図5】比較的大きい直径の容器を用いる本発明の他の実施形態の生物反応器組立体の側面図である。
【図6】楕円状容器を用いる本発明の他の実施形態の生物反応器組立体の側面図である。
【図7】傾斜した矩形状容器を用いる本発明の他の実施形態の生物反応器組立体の側面図である。
【図8】図1及び図2の生物反応器組立体に示される容器の1つの端部の側面図である。
【図9】本発明の他の実施形態のクランプ組立体の外側バンド部の平面図である。
【図10】図9に示される外側バンド部との組合せによってクランプ組立体を形成する内側シール部の平面図である。
【図11】容器の壁構造がクランプによって一緒に保持される多数の部分を有する本発明の他の実施形態の生物反応器組立体の側面図である。
【図12】図11の生物反応器組立体の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を保持し、増殖に光を必要とする生物材料の育成を支援するための組立体において、
少なくとも1つの光源と、
前記光源に隣接して配置される少なくとも1つの容器であって、前記容器は、細長の無菌貯槽を画成する光透過性壁構造を有し、前記細長の貯槽は、実質的に水平配向の主軸を有し、前記貯槽は、前記生物材料が支持される媒体表面を生成するように、部分的に媒体で満たされることができるような容器と
を備える組立体。
【請求項2】
前記壁構造は、前記主軸に沿って一定の断面を有する請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記断面は、円形断面である請求項2に記載の組立体。
【請求項4】
前記壁構造は、10から50フィートの長さを有する請求項2に記載の組立体。
【請求項5】
前記壁構造は、2から12インチの直径を有する請求項4に記載の組立体。
【請求項6】
前記壁構造の開端に固定されるエンドキャップをさらに備える請求項2に記載の組立体。
【請求項7】
ラックをさらに備え、複数の前記容器は、前記ラックによって支持され、互いに間隔を置いて垂直方向積重ね体に配置される請求項1に記載の組立体。
【請求項8】
前記光源は、前記垂直方向積重ね体の両側に配置される複数の電気的光源を含む請求項7に記載の組立体。
【請求項9】
前記壁構造は、前記主軸に沿って一定の楕円状断面を有し、前記楕円状断面は、前記実質的に水平の面に延在する長軸を有する請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
前記壁構造は、前記主軸に沿って一定の断面を有し、前記断面は、矩形の形状を有し、前記矩形状構造の2つの対向するコーナ部は、残りの2つの対向するコーナ部よりも前記実質的に水平の面に接近して配置される請求項1に記載の組立体。
【請求項11】
前記容器は、少なくとも1つのクランプを有し、前記容器壁は、少なくとも2つの部分に分割され、前記部分の各々は、開端を有し、前記部分の前記開端は、互いに隣接して配置され、前記クランプによって一緒に保持される請求項1に記載の組立体。
【請求項12】
前記クランプは、前記2つの壁構造部分の前記互いに隣接する開端を受けるような大きさと形状を有する開口を画成する請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
前記クランプは、中央バンドを備え、前記中央バンドは、前記クランプ開口の周囲に延在し、前記クランプの両端に互いに離間した1対の内向きフランジを有し、前記フランジは、前記壁構造部分の前記両端を把持するように構成される請求項12に記載の組立体。
【請求項14】
前記壁構造部分の前記両端は、前記内向きフランジと係合するように外側に張り出している請求項13に記載の組立体。
【請求項15】
前記クランプは、前記壁構造部分の前記張出し端と前記クランプの前記内向きフランジとの間で前記フランジに沿って延在するシールをさらに備える請求項14に記載の組立体。
【請求項16】
前記クランプは、米国食品医薬品局によって認定された複合材料から構成される請求項15に記載の組立体。
【請求項17】
前記シールは、米国食品医薬品局によって認定されたエラストマー材料である請求項15に記載の組立体。
【請求項18】
前記容器によって画成された開口を通して前記貯槽内に延在するガス供給ノズル、ガス出口ノズル、空気温度プローブ、pHプローブ、試料採取排出管、ガス組成プローブ、及び媒体温度プローブの少なくとも1つをさらに備える請求項1に記載の組立体。
【請求項19】
媒体を保持し、増殖に光を必要とする生物材料の育成を支援するための組立体において、
支持ラックと、
前記支持ラックによって保持され、垂直方向に互いに離間して積重ね体に配置された複数の横方向に延在する細長の容器であって、各容器は、細長の殺菌貯槽を画成する光透過性壁構造を有し、前記細長の貯槽は、実質的に水平配向の主軸を有し、前記貯槽は、前記生物材料が支持される媒体面を生成するように、部分的に前記媒体で満たされることができるような容器と、
前記支持ラックによって保持され、前記容器に隣接して取り付けられる前記容器を照明するための少なくとも1つの光源と
を備える組立体。
【請求項20】
前記支持ラックは、複数の直立した支持部材と、前記直立した支持部材を相互接続する横方向に延在する上側及び下側支持レールとを備え、前記容器は、前記直立した支持部材に取り付けられる請求項19に記載の組立体。
【請求項21】
前記容器の各々は、実質的に均一な断面を有する細長の透明管と、前記細長の貯槽を画成するように前記管の両端を閉鎖するエンドキャップとを備える請求項19に記載の組立体。
【請求項22】
前記容器の各々は、端と端が取り付けられた少なくとも2つの細長の透明管と、前記管部分の互いに隣接する端部分を相互接続するクランプとを備える請求項21に記載の組立体。
【請求項23】
前記少なくとも1つの光源は、前記ラックに取り付けられた複数の細長の蛍光管を含む請求項19に記載の組立体。
【請求項24】
前記蛍光管は、垂直方向に延在し、横方向において互いに離間している請求項23に記載の組立体。
【請求項25】
前記蛍光管は、実質的に水平に、かつ前記容器と略平行に延在する請求項23に記載の組立体。
【請求項26】
増殖に光を必要とする生物材料を液体媒体において育成する方法において、
実質的に水平配向の主軸を有する貯槽を画成する少なくとも1つの光透過性容器を設ける段階と、
前記貯槽を部分的な充填レベルに達するまで前記液体媒体で満たし、前記貯槽の長さに沿って延在する前記媒体の上面を画成する段階と、
前記生物材料を前記貯槽に加え、前記生物材料を前記媒体の上面に支持する段階と、
前記容器を光源に露出させ、光合成によって前記生物材料の育成を促進する段階と
を含む方法。
【請求項27】
前記貯槽を液体媒体で満たし、前記生物材料を加えた後、前記貯槽を汚染から密封する段階をさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記光透過性容器を設ける段階は、1つ以上のクランプを用いて、前記光透過性容器の多数の部分を締め付ける段階を含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記容器に画成された開口を通して、前記貯槽にアクセスする段階をさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記貯槽にアセクスする前記段階は、ガス供給ノズルを前記クランプ開口を通して挿入し、ガスを前記貯槽に供給する段階を含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記貯槽にアクセスする前記段階は、温度プローブを前記クランプ開口を通して挿入し、前記貯槽内の温度を測定する段階を含む請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記貯槽にアクセスする前記段階は、pHプローブを前記クランプ開口を通して挿入し、前記貯槽内の前記媒体のpHを測定する段階を含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記貯槽にアクセスする前記段階は、試料を前記クランプ開口を通して排出する段階を含む請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記貯槽を満たす前記段階は、前記媒体を前記容器の端に画成された開口を通して供給する段階を含む請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記貯槽を充填した後、前記液体媒体を前記貯槽から排出する段階をさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項36】
温度、媒体pH、媒体充填レベル、ガス圧、及びガス組成の1つを自動的に測定及び制御する段階をさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記貯槽内の温度を制御するために、前記容器の周囲に調整空気を供給する段階をさらに供給する段階をさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記媒体を加熱、及び循環する段階をさらに備える請求項26に記載の方法。
【請求項39】
複数の前記容器を垂直方向に互いに離間して積重ね体に取り付ける段階をさらに含む請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−526411(P2006−526411A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514953(P2006−514953)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/016437
【国際公開番号】WO2004/108881
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503040136)バイオレックス,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】