説明

液面計

【課題】船舶の燃料タンクへの補油作業を支援する液面計を得る。
【解決手段】タンク内の液体レベルを検出するセンサ11と、センサが設置されたケーブル12と、ケーブルを巻き取るケーブルリール13を備える本体部10と、センサが検出するタンク内の液体レベルを表示する表示器20と、を有し、本体部と表示器は無線信号を介して通信可能であり、センサが検出した液体レベルは無線通信によって表示器に送信され、本体部と表示器は、それぞれの内蔵電源によって動作する液面計による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の燃料タンクへの補油作業を支援する液面計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶において補油作業を行うとき、燃料タンク内に存在する燃料の量を、手動測深テープ(通称「サウンディングテープ」)を用いて計測することが義務付けられている。この計測作業は、補油作業の前後で必ず行わなければならない。
【0003】
サウンディングテープは、燃料タンクの上から垂下されるテープで、燃料に触れた位置を測ることにより液面位を計測するものである。各燃料タンクには、サウンディングテープを垂下させるための測深管(「サウンディングパイプ」ともいう)が、タンクの天井部からタンクの底に向かって設置されている。この測深管にサウンディングテープを挿入し、先端が燃料に触れた位置を実測(アレージ計測)する。このように計測した値をサウンディングテーブルによって換算することで、液面レベルを計測することができる。
【0004】
上記のようなサウンディングテープを用いた計測作業は、手動で行う作業であるから時間を要する。この計測作業を、補油作業の前後および補油中でも行う必要があり、船体の揺れによる誤差を補正するために、複数回の計測をして平均値を求めるから、より時間を要する作業となる。また、最低でも2名の人員が必要であり、また、正確な計測を行うには技術が必要になる。
【0005】
燃料を補充し過ぎると溢れ出てしまうため、補油中の計測は、数分間隔で頻繁に行う必要がある。従って、複数の燃料タンクに補油するときには、計測作業に多大な労力を要している。
【0006】
このような補油作業の際の計測作業を効率的に行うには、各燃料タンクに液面計を設置しておき、義務づけられている補油作業の前後の測定以外の測定、すなわち、補油中の測定を自動的に行うようにすればよい。しかし、コスト削減のため、貨物船においては、各燃料タンクに液面計は設置されないのが通常であり、効率的な補油作業は困難な状況にある。また、補油作業時にのみ使用でき、複数の燃料タンクで使い回しができるような液面計は知られていない。
【0007】
ある程度の大きさ以上の船舶において、荷役作業の効率化を目的として、積荷との重量バランスを調整して平衡を保つためのバラストタンクには、バラスト水のレベルを逐一把握することができる液面計が装備されている。液面計の計測方式には各種の方式があり、例えば、特許文献1に記載されているような気泡式液面計がある。この他に、タンク底部の圧力を計測することでバラスト水のレベルを把握する受圧式液面計が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3992153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、常設することなく持ち運びを容易であり、例えば、燃料タンク用液面計を装備していない船舶でも手軽に液面を計測することができるようにし、かつ、空気を含んで膨張した燃料であっても正確に計測することができ、オーバーフローの防止に貢献することができる液面計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、液面計に関するものであって、タンク内の液体レベルを検出するセンサと、センサが設置されたケーブルと、ケーブルを巻き取るケーブルリールを備える本体部と、センサが検出するタンク内の液体レベルを表示する表示器と、を有し、本体部と表示器は無線信号を介して通信可能であり、センサが検出した液体レベルは無線通信によって表示器に送信され本体部と表示器は、それぞれの内蔵電源によって動作することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
センサが設置されたケーブルが巻き取り可能な可搬式であり、測定結果を無線信号によって離れた場所でも確認することができ、内蔵電源によって動作するので、液面計の本体部を任意の場所に持ち運ぶことができ、燃料タンクに液面計が常設されていなくても、補油作業を効率的に行うことができる。
【0012】
また、センサの先端に設置されている錘によって、粘度の高い燃料であってもタンクの底部まで沈下し、かつ、底部に堆積する堆積物(スラッジ)による測定誤差を回避して、燃料タンクに液面計が設置されていなくても、補油作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る液面計を用いた計測システムの構成例を概念的に示す図である。
【図2】上記液面計が備えるセンサの例を示す側面図である。
【図3】上記液面計に用いるケーブルクリーナーの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る液面計の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明に係る液面計である検出器本体10を用いた無線式液面計測システムの例を示している。計測システム100は、検出器本体10と、検出器本体10から発信される無線信号を受信して測定された液面位を表示するリモート表示器20と、無線信号を離れた箇所に伝送するために中継する中継器30と、無線信号の受信機40と、受信機40が受信した無線信号から液面位を含む種々の情報を表示するコンピュータ50と、を有してなる。
【0016】
計測システム100は、検出器本体10を、船舶の燃料タンクに設置されている測深管4の近傍に持ち運び、補油作業時の計測作業に圧力式の液面計を併用可能な状態にすることができる。検出器本体10によって計測された液面位は検出器本体10から送信される無線信号をリモート表示器20が受信し、計測結果である液面位を表示することで、検出器本体10の設置場所から離れている場所や、測定地点から離れている制御室においても知ることができる。
【0017】
検出器本体10は、圧力検出器であるセンサ11と、センサ11が先端に設置されているケーブル12と、ケーブル12を巻き取るためのケーブルリール13と、センサ11によって検出された圧力から液面位を算出して表示し、かつ、液面位を無線信号にして送信する表示器14と、を有してなる。
【0018】
検出器本体10は任意の場所に持ち運ぶことができる可搬式になっていて、各部の動作に必要な電源として電池が内蔵されている。また、リモート表示器20も電池が内蔵されている。検出器本体10、リモート表示器20はともに、それぞれが内蔵する電池によって動作する。
【0019】
ケーブル12は、センサ11側から測深管4に挿入される。測深管4は、すでに説明したとおり、サウンディングテープを垂下させるためにタンクの頂上部5からタンクの底部1に至るまで垂下させて設けられていて、タンク内の液体3のレベルと同じレベルまで測深管4の内部に液体が浸入するように、周壁に孔が列設されている。測深管4の内径は32〜65mmとするように船級規則で定められていて、センサ11とケーブル12を挿入するのに十分な大きさである。
【0020】
検出器本体10のケーブルリール13の側面に設置されている表示器14は、センサ11が検出した圧力に基づいて液面位を算出して表示する。圧力から液面位を算出するには比重を係数として用いるので、表示器14には、所定の操作によって予め計測する燃料の種類に応じた比重係数を設定する機能が備わっている。
【0021】
次に、センサ11について説明をする。図2は、センサ11の側面図である。図2に示すように、センサ11は、ケーブル12の先端に設置される円筒状の部材であって、ケーブル12とセンサ11の接続点の周囲には、後述するケーブルクリーナー15と衝突した際に生じる衝撃を和らげために、保護部材112が設置されている。保護部材112は弾力を備えた部材からなる。
【0022】
センサ11の先端部には圧力センサ113が備わっている。この圧力センサ113が燃料タンクの底面位置の圧力を計測することで、燃料タンク内にある燃料の液面位を計測することができる。圧力センサ113の先端部分には錘111が設置されている。錘111の下部は、下端が細くなった略円錐形の外形を有する部材であって、粘度の高い燃料3に対して圧力センサ113を、タンクの底部1まで垂下させるためのものである。
【0023】
また、錘111はもう一つの働きを有している。タンクの底部1には堆積物(スラッジ2)が堆積している。圧力センサ113がスラッジ2に埋没すると正確な圧力計測をすることができない。そこで、錘111は、圧力センサ113がスラッジ2に埋没しないように、所定の高さ寸法を有してなる。錘111によって、圧力センサ113が燃料タンクの底部1に至ったときでも、圧力センサ113がスラッジ2に埋没することを防ぐことができる。
【0024】
錘111がスラッジ2に乗ると、計測される液面レベルに誤差が生じるので、上記のように、錘111の下部を下端が細くなった円錐形にし、錘111がスラッジ2に潜って、タンクの底部1に到達するようになっている。
【0025】
このように、本発明に係る液面計は、常設することなく持ち運びを容易にすることによって、燃料タンク用液面計を装備していない船舶でも手軽に液面を計測することができる。
【0026】
また、本発明に係る液面計は、圧力センサを用いるものであるから、測定対象の燃料が空気を含んで膨張した状態にあっても、正確に液面位の計測することができる。これによって、補油作業時に、頻繁に手動による液面測定を行わずとも、オーバーフローの防止に貢献することができる。
【0027】
次に、本発明に係る液面計に用いるケーブルクリーナーの例について図3を用いて説明する。図3(a)は、ケーブルクリーナー15の正面図を、図3(b)はケーブルクリーナー15の側面図を、図3(c)は、ケーブルクリーナー15の上面図を、それぞれ示している。図3に示すように、ケーブルクリーナー15は、螺旋部材151と、L字部材152と、本体部材153と、蓋154と、ベルト通し孔155と、を有してなる。
【0028】
螺旋部材151は、先端が螺旋形状を有する線材であって、鉄などの硬い素材からなっている。螺旋部分の内径は、ケーブル12の外径と略同じ寸法であって、ケーブル12を螺旋部分の内径側に通して用いる。計測作業を始めるときに、この螺旋部分にケーブル12を側面から滑り込ませるように嵌めて、ケーブル12が螺旋部分を通るように設置する。
そのため、螺旋部分のピッチは、ケーブル12を内側に嵌め込むことができる寸法からなっている。また、螺旋部分の巻回数は、2回程度の少ない回数になっている。
【0029】
L字部材152は、螺旋部材151を固定する部材であって、横断面形状がL字である金属からなる。本体部材153は、ケーブルクリーナー15を測深管4の上端部に設置するための略半円筒形の外形を有する部材である。本体部材153には、略半円形の蓋154が固着されている。この天板となる蓋154の略中心にL字部材152が固定されている。
【0030】
本体部153の外壁には、ケーブルクリーナー15を測深管4の上端部に固定するためのベルトを通すベルト通し孔155が設けられている。
【0031】
次に、検出器本体10を用いて、補油作業の際に燃料3の液面位を測定する手順について説明をする。検出器本体10は持ち運び可能であるため、補油作業を行う燃料タンクの上に持っていき、ケーブル12をケーブルリール13から繰り出して、ケーブルクリーナー15にケーブル12を通す。ケーブル12の先端に設置されているセンサ11を測深管4に挿入して、ケーブルクリーナー15を測深管4の上端部に被せて設置する。ベルト通し孔155に通した図示しないベルトを、測深管4の上端部の外周に巻きつけて固定させることで、ケーブルクリーナー15を測深管4の上端部に固定することができる。
【0032】
ケーブルリール13から繰り出されたケーブル12を、センサ11の錘111がタンクの底部1に達するまで挿入する。錘111がタンクの底部1に達した状態でセンサ11が検知した圧力によって、タンク内の燃料3の量を算出することができ、これによって、液面位を計測することができる。
【0033】
計測作業が終わった後、ケーブルリール13によってケーブル12を巻き上げる。燃料3は粘度が高い液体であるから、ケーブル12の巻き上げにともなって、ケーブル12の外皮に付着して一緒に持ち上がってくる。
【0034】
ケーブル12はケーブルクリーナー5の螺旋部材151に挿通された状態であるから、燃料3が付着している外皮が螺旋部材151によって擦られて剥離される。剥離された燃料3は、螺旋部材151から滴り落ちて燃料タンク内に戻る。測深管4から出てきたケーブル12の外皮には微量の燃料が付着している状態になるので、布などを用いてこれを拭き取りながらケーブルリール13に巻き取っていく。このとき、ケーブルクリーナー5は図示しないベルトによって測深管4に固定されているので、ケーブルの巻き取りに伴って、ケーブルクリーナー5は動かないようになっている。
【0035】
このように、本発明に係る液面計にケーブルクリーナーを用いた実施例によれば、計測作業後のケーブル巻き取り作業において、通常であれば大量の燃料を布で拭き取る必要があったが、巻き取り作業と同時に、付着燃料をタンク内に落下させることができるので、計測作業の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
4 測深管
10 検出器本体
11 センサ
12 ケーブル
13 ケーブルリール
14 表示器
15 ケーブルクリーナー
111 錘
112 保護部材
113 圧力センサ
151 螺旋部材
152 L字部材
153 本体部材
154 蓋
155 ベルト通し孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の液体レベルを検出するセンサと、前記センサが設置されたケーブルと、前記ケーブルを巻き取るケーブルリールを備える本体部と、前記センサが検出する前記タンク内の液体レベルを表示する表示器と、を有する液面計であって、
前記本体部と前記表示器は無線信号を介して通信可能であり、前記センサが検出した液体レベルは前記無線通信によって前記表示器に送信され、
前記本体部と前記表示器は、それぞれの内蔵電源によって動作することを特徴とする液面計。
【請求項2】
前記センサの先端部に前記センサを前記液体内に沈下させる錘が備わっており、
前記錘は、前記タンクの底部に堆積している堆積物に前記センサが埋没しない高さを有することを特徴とする請求項1記載の液面計。
【請求項3】
前記錘の下部は下端が細くなった円錐形であることを特徴とする請求項2記載の液面計。
【請求項4】
前記ケーブルが前記ケーブルリールに巻き取られるとき、前記ケーブルに付着した前記液体を取り除くケーブルクリーナーを有することを特徴とする請求項1記載の液面計。
【請求項5】
前記ケーブルクリーナーは、前記ケーブルの外皮に接触する螺旋部材を有してなることを特徴とする請求項4記載の液面計。
【請求項6】
前記ケーブルクリーナーは、前記ケーブルの外皮に接触する螺旋部材と、
前記螺旋部材を前記タンクの上部に設置する本体部と、
前記本体部を前記タンクに設置されている測深管に固定する固定部材と、を有してなることを特徴とする請求項4記載の液面計。
【請求項7】
前記センサは、前記ケーブルとの接続端の外周に、前記ケーブルクリーナーの先端部から保護する保護部材を有することを特徴とする請求項4記載の液面計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−83494(P2013−83494A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222462(P2011−222462)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(391014631)ムサシノ機器株式会社 (14)
【Fターム(参考)】