説明

淡水化装置及び淡水化方法

【課題】塩素処理した後の原水に対して還元剤を用いて中和処理する際に、円滑且つ効率的に行うことができる淡水化装置及び淡水化方法を提供する。
【解決手段】原水供給ラインL1に設けられ、塩素含有水12aを原水11に添加する塩素含有水供給手段12と、塩素含有水12aを添加した原水11中の濁質分を除去する前処理膜13aを有する前処理装置13と、前記前処理装置13からの濾過水14中の無機物等を除去するフィルタ15と、前記フィルタ15の後流側に設けられ、添加した塩素を中和する還元剤16aを供給する還元剤供給手段16と、前記還元剤供給手段16の後流側に設けられ、余剰の還元剤16aを酸化する酸化手段17と、前記酸化手段17で余剰の還元剤16aを酸化した後の濾過水14から塩分を除去して透過水18を生産する逆浸透膜(RO膜)19aを有する逆浸透膜装置19と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素処理した後の原水を還元剤により中和処理する際に、円滑且つ効率的に行うことができる淡水化装置及び淡水化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水淡水化設備においては、脱塩処理することにより原水(海水)を淡水化させて上水として使用するための海水淡水化装置(以下、淡水化装置という)が用いられている。
【0003】
このような淡水化装置は、原水である海水中の濁質分を除去するために、例えば砂ろ過、UF膜(限外濾過膜)又はMF膜(精密濾過膜)等を用いた前処理装置が用いられている。また、原水に対しては、一般に殺菌、殺藻や有機物、鉄、マンガン、アンモニア等を除去する目的で、塩素剤である塩素含有水を原水に加える塩素処理を行っている。この塩素含有水による塩素処理は、例えば液化塩素、次亜塩素酸ソーダ、塩水の電解によって生成する塩素等を用いるようにしている。
【0004】
この塩素処理及び濾過処理したものを、RO膜を備えた逆浸透膜装置で脱塩処理している。
ところで、前記RO膜が塩素耐性の材料(例えば酢酸セルロール等)を用いている場合には、問題がないが、塩素耐性を有しない材料(例えばポリアミド膜)をRO膜としている場合には、逆浸透膜装置の前段側において、還元剤を用いて塩素の中和処理をする必要がある。
【0005】
この還元剤として、例えば重亜硫酸ソーダ(Sodium bisulfate soda「SBS」という)を供給して中和処理する提案がある(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−308671号公報
【特許文献2】特開平7−171565号公報
【特許文献3】特開平9−57076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、塩素含有水をSBS溶液で中和する際には、塩素を直接定量するのが理想的であるが、分析装置が高価であるために、濾過水中の酸化還元電位(ORP)を図示しないORP計により計測して、中和の終了を確認しているが、該ORP計は、原水の性状(pH等)や、ORP電極の連続使用による電極汚れや、ORP計自体の製造要因のぶれ等の要因で絶対値が変動することがある。
【0008】
このため、残留塩素の除去を確実とするために、SBS溶液の注入を過剰としている。発明者等は、ORP計の絶対値の誤差の影響を受けないSBS溶液の注入量の決定手法を提案した(特願2009−271847号)。しかしながら、原水の一部をサンプリングする手法であり、サンプリング時の誤差の影響を避けるためには、SBS溶液の注入量を過剰気味に注入する必要がある。
【0009】
塩素を確実に消すために計測や運転の変動を勘案し、SBSを過剰に添加して運転することが一般的に行われているが、注入量過剰の場合には、ランニングコストが嵩んだり、硫黄酸化物の存在により硫黄酸化細菌の増殖を促進したりして、逆浸透膜の閉塞等の問題を引きおこしたりするような場合がある。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、塩素処理した後の原水に対して還元剤を用いて中和処理する際に、円滑且つ効率的に行うことができる淡水化装置及び淡水化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は、上述した課題を解決する本発明の第1の発明は、原水を供給する原水供給ラインに設けられ、塩素含有水を原水に添加する塩素含有水供給手段と、添加した塩素を中和する還元剤を供給する還元剤供給手段と、前記還元剤供給手段の後流側に設けられ、余剰の還元剤を酸化する酸化手段と、前記酸化手段で余剰の還元剤の酸化した後の濾過水から塩分を除去して透過水を生産する逆浸透膜を有する逆浸透膜装置と、を具備することを特徴とする淡水化装置にある。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記塩素含有水を添加した原水中の濁質分を除去する前処理装置と、前記前処理装置からの濾過水中の無機物等を除去するフィルタとを具備することを特徴とする淡水化装置にある。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記酸化手段が活性炭又は活性炭素繊維のいずれかであることを特徴とする淡水化装置にある。
【0014】
第4の発明は、原水から逆浸透膜装置により塩分を除去して透過水を生産する逆浸透膜を有する逆浸透膜装置を用いて淡水化する方法であって、原水に塩素含有水を添加した後、還元剤を供給して塩素を除去した後、残留する還元剤を活性炭又は活性炭素繊維により酸化し、その後原水から塩分を逆浸透膜装置により除去することを特徴とする淡水化方法にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塩素処理した後の原水に対し、還元剤を用いて中和処理する際に、余剰の還元剤を酸化処理することにより、還元剤起因のバイオファウリングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1に係る淡水化装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る淡水化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0018】
本発明に係る実施例に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係る淡水化装置の概略図である。図1に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Aは、原水11を供給する原水供給ラインL1に設けられ、塩素含有水12aを原水11に添加する塩素含有水供給手段12と、塩素含有水12aを添加した原水11中の濁質分を除去する前処理膜13aを有する前処理装置13と、前記前処理装置13からの濾過水14を供給する濾過水供給ラインL2に設けられ、濾過水14中の無機物等を除去するフィルタ15と、前記フィルタ15の後流側に設けられ、添加した塩素を中和する還元剤16aを供給する還元剤供給手段16と、前記還元剤供給手段16の後流側に設けられ、余剰の還元剤16aを酸化する酸化手段17と、前記酸化手段17で余剰の還元剤16aを酸化した後の濾過水14から塩分を除去して透過水18を生産する逆浸透膜(RO膜)19aを有する逆浸透膜装置19と、を具備するものである。
図1中、符号20は濃縮水、Pは高圧ポンプ、L3は透過水ライン、L4は濃縮水ラインを図示する。
【0019】
なお、本発明においては、塩素含有水12を添加した原水11中の濁質分を除去するために、前処理膜13aを有する前処理装置13及びフィルタ15を設置した一例を示しているが、本発明はこれに限定されず、当該前処理装置13及びフィルタ15の設置を不要としてもよい。
【0020】
本実施例では、余剰の還元剤16aを酸化する酸化手段17として、活性炭又は活性炭素繊維のいずれか一方を充填したものを用いている。
【0021】
従来の活性炭の機能として濾過水14中の塩素の除去に用いているが、本発明では、余剰の還元剤16aに対して酸化力を発揮して、中和するようにしている。
すなわち、還元剤16aとして重亜硫酸ソーダ(SBS:NaHSO3)を用いた場合、その酸化によりH2SO4として除去し、SBS起因のバイオファウリングを抑制することができる。
【0022】
また、活性炭の代わりに活性炭素繊維(ACF)を用いて、その酸化力によりSBSを酸化するようにしてもよい。
【0023】
ここで、本発明の活性炭素繊維の原料の炭素繊維としては、その製造原料の違いにより、ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、フェノール系、セルロース系等の各種のものを挙げることができる。前記炭素繊維は、市販品であってもよい。前記した公知の炭素繊維のなかでも好ましい種類は、ピッチ系、フェノール系、セルロース系のような炭素繊維、および含窒素官能基を有する炭素繊維である。
【0024】
これらの炭素繊維を賦活処理して活性炭素繊維(ACF)を得る。
賦活処理とは、触媒や高温ガス流通下での部分酸化反応により、炭素繊維原料の表面にナノメートルからマイクロメートル程度の径をもつ細孔を作り出し、比表面積を増大させ、且つ、表面状態の変化を生じさせ反応活性を向上させる手法である。賦活処理には、薬品賦活法とガス賦活法とがある。薬品賦活法では炭化の作用と賦活の作用との両方が生じる。ただし、原料として炭素繊維を用いる場合は炭化が完了しているため、通常はガス賦活法を用いている。
【0025】
ガス賦活処理は、水蒸気、二酸化炭素、空気等を用い、反応温度を例えば700℃以上にして行われるのが通常である。本発明では、より好ましくは800〜950℃、より好適には850〜900℃で処理している。
なお、上限値を超える温度での賦活処理は炭素繊維の消費が激しく、収率が低下するので好ましくない。なお、反応に必要な時間は、その温度によって適宜設定することができ、例えば2〜5時間程度とするのが好ましい。
【0026】
本発明により、余剰のSBSである還元剤16aを酸化手段17の活性炭又は活性炭素繊維により酸化除去できるので、過剰注入に起因する前記諸問題が解決され、安定したSBSの供給制御が可能となる。
また、仮にSBSの注入量が不足し、塩素が残留している場合であっても、活性炭又は活性炭素繊維にて残留した塩素が分解される。よって、後段の逆浸透膜エレメントにダメージを与える虞がない。
なお、本発明は原水11として海水に限定されるものではなく、河川水、地下水等かん水に対しても適用可能である。
また、塩素含有水12として次亜塩素酸、塩素酸、塩素ガス溶解水等の有効塩素を含む塩素化合物であれば、すべて本発明が適用可能である。
【実施例2】
【0027】
本発明に係る実施例に係る淡水化装置について、図面を参照して説明する。図2は、実施例2に係る淡水化装置の概略図である。なお、図1に示す実施例1の構成と同様の構成については同一の符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係る淡水化装置10Bは、実施例1の淡水化装置10Aのフィルタ15を削除すると共に、酸化手段17として活性炭素繊維を用い、それを充填してフィルタを用いるようにしている。
【0028】
これにより、従来の砂等を除去するフィルタの機能と共に、余剰の還元剤16aを酸化除去するようにしている。
従来のフィルタの機能に酸化機能を付加するので、新たな設備を導入することなく、余剰還元剤の処理が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る淡水化装置によれば、塩素処理した後の原水に対して還元剤を用いて中和処理する際に、円滑且つ効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
10A、10B 淡水化装置
11 原水
12a 塩素含有水
12 塩素含有水供給手段
13a 前処理膜
13 前処理装置
14 濾過水
15 フィルタ
16a 還元剤
16 還元剤供給手段
17 酸化手段
18 透過水
19a 逆浸透膜(RO膜)
19 逆浸透膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を供給する原水供給ラインに設けられ、塩素含有水を原水に添加する塩素含有水供給手段と、
添加した塩素を中和する還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記還元剤供給手段の後流側に設けられ、余剰の還元剤を酸化する酸化手段と、
前記酸化手段で余剰の還元剤の酸化した後の濾過水から塩分を除去して透過水を生産する逆浸透膜を有する逆浸透膜装置と、を具備することを特徴とする淡水化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記塩素含有水を添加した原水中の濁質分を除去する前処理膜を有する前処理装置と、
前記前処理装置からの濾過水中の無機物等を除去するフィルタとを具備することを特徴とする淡水化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記酸化手段が活性炭又は活性炭素繊維のいずれかであることを特徴とする淡水化装置。
【請求項4】
原水から逆浸透膜装置により塩分を除去して透過水を生産する逆浸透膜を有する逆浸透膜装置を用いて淡水化する方法であって、
原水に塩素含有水を添加した後、還元剤を供給して塩素を除去した後、残留する還元剤を活性炭又は活性炭素繊維により酸化し、その後原水から塩分を逆浸透膜装置により除去することを特徴とする淡水化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−120970(P2012−120970A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273011(P2010−273011)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】