説明

深みぞ玉軸受および軸受装置

【課題】潤滑オイルやそのオイルに混入する異物が軸受内部に侵入するのを抑制することができるようにした深みぞ玉軸受および軸受装置を提供することである。
【解決手段】外輪11の軌道溝12と内輪21の軌道溝22間にボール31を組込み、そのボール31を保持器40で保持する。外輪軌道溝12および内輪軌道溝22のそれぞれ両側に形成された合計4つの肩13a、13b、23a、23bのうち、外輪11の一側の肩13aおよび内輪21の他側の肩23bの高さを残りの肩13b、23aより高くし、高さの高い肩13a、23bでスラスト力を支持してボール31の肩13a、23bへの乗り上げを防止する。保持器40を内外に嵌合される第1分割保持器41と第2分割保持器42で形成する。第2分割保持器42の一側部にフランジ53を設け、そのフランジ53と外輪11の高さの高い肩13aの内径面および内輪21の高さの低い肩23aの外径面間に微小間隙54を形成して、軸受内部に異物が侵入するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、深みぞ玉軸受およびその深みぞ玉軸受を用いた軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インプットシャフトとアウトプットシャフトを同軸上に配置し、その両軸に平行にカウンタシャフトを設け、その平行する2軸の相互間に変速比の異なる複数の歯車式減速部を設けて、インプットシャフトの回転を複数段に変速してアウトプットシャフトから出力するようにしたトランスミッションにおいては、一般的に、歯車式減速部にヘリカルギヤを採用しているため、インプットシャフトからアウトプットシャフトへの回転トルクの伝達時、インプットシャフト、アウトプットシャフトおよびカウンタシャフトのそれぞれにスラスト力が負荷されることになる。
【0003】
このため、インプットシャフト、アウトプットシャフトおよびカウンタシャフトを支持する軸受には、ラジアル荷重とスラスト荷重の両方の荷重を支持することができる軸受を用いる必要がある。
【0004】
円すいころ軸受においては、負荷容量が大きく、スラスト荷重およびラジアル荷重の両方を受けることができるため、トランスミッション用軸受に好適である。しかし、円すいころ軸受においては、損失トルクが大きく、燃料の消費量が多くなるという問題が生じる。その低燃費化を図るため、損失トルクの少ない深みぞ玉軸受が使用されるケースが多くなってきている。
【0005】
ところで、標準の深みぞ玉軸受においては、過大なスラスト荷重が負荷された際に、そのスラスト荷重を受ける負荷側の肩にボールが乗り上げて、肩のエッジが損傷する懸念がある。
【0006】
そのような不都合を解消するため、特許文献1に記載された深みぞ玉軸受においては、外輪の軌道溝および内輪の軌道溝のそれぞれ両側に形成された肩のうち、スラスト荷重を受ける側の肩を高くして、ボールの乗り上げを阻止し、軸受の耐久性の低下を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−7286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載された深みぞ玉軸受においては、内輪および外輪の肩高さが左右非対称であるため、径の異なる2つの分割保持器を内外に嵌合し、一方の分割保持器に形成された係合爪を他方の分割保持器に設けられた係合凹部に係合させて、一対の分割保持器を軸方向に結合してボール保持用の保持器を形成している。このとき、一対の分割保持器は外径および内径が相違するため、回転時の周速も相違することになり、その周速差によって軸受内でポンプ作用が生じる。このため、軸受内に多くの潤滑オイルが供給されると共に、その潤滑オイルと共に摩耗粉等の異物も送り込まれて、ボールと軌道溝間に噛み込み、ボールの転動面および軌道溝の転走面を損傷させる可能性があり、異物侵入の低減化を図る上において改善すべき点が残されている。
【0009】
また、軸受内への潤滑オイルの供給量も多いため、潤滑オイルの撹拌抵抗が大きく、トルク損失が多くなり、そのトルク損失の軽減を図る上においても改善すべき点が残されている。
【0010】
この発明の課題は、潤滑オイルやそのオイルに混入する異物が軸受内部に侵入するのを抑制することができるようにした深みぞ玉軸受および軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明に係る深みぞ玉軸受においては、外輪の内径面に形成された軌道溝と、内輪の外径面に形成された軌道溝間にボールを組み込み、そのボールを保持器で保持し、前記外輪軌道溝の両側に形成された一対の肩および内輪軌道溝の両側に形成された一対の肩の合計4つの肩のうち、外輪軌道溝の一側の肩および内輪軌道溝の他側の肩の肩高さを、外輪軌道溝の他側の肩および内輪軌道溝の一側の肩の高さより高くし、その高さの高い肩の肩高さをH、ボールの球径をdとしたとき、ボールの球径dに対する肩高さHの比率H/dが0.25〜0.50の範囲とし、前記保持器を、ボール保持用のポケットを軸方向の一側部に有する第1分割保持器と、その第1分割保持器の内側に嵌合され、ボール保持用のポケットを軸方向の他側部に有する第2分割保持器とで形成し、その第1分割保持器と第2分割保持器とを連結手段により連結して軸方向に非分離とした深みぞ玉軸受において、前記第2分割保持器の軸方向一側部に、外輪の肩高さの高い肩の内径面および内輪の肩高さの低い肩の外径面間に微小間隙を形成するフランジを設けた構成を採用したのである。
【0012】
上記の構成からなる深みぞ玉軸受の組立てに際しては、外輪と内輪の軌道溝間に複数のボールを組み込んだのち、外輪と内輪の対向部間に第1分割保持器および第2分割保持器を挿入する。
【0013】
このとき、第1分割保持器は、外輪の高さの低い肩側からポケット形成側端を先にして対向部間に挿入し、一方、第2分割保持器は、外輪の高さの高い肩側からポケット形成側端を先にして対向部間に挿入して、連結手段により、第1分割保持器と第2分割保持器とを連結する。その連結によってボールは第1分割保持器および第2分割保持器のそれぞれに形成されたポケットで保持され、深みぞ玉軸受が組立状態とされる。
【0014】
上記のような深みぞ玉軸受の組立て状態において、第2分割保持器の軸方向一側部に設けられたフランジは、外輪の肩高さの高い肩の内径面および内輪の肩高さの低い肩の外径面間に配置されて、外輪肩の内径面と内輪肩の外径面間に微小間隙を形成する。
【0015】
このため、保持器の回転によって軸受内でポンプ作用が生じても、上記フランジの外径側および内径側に形成される微小間隙によって潤滑オイルの供給量やその潤滑オイルに混入する異物の侵入が抑制されることになる。
【0016】
ここで、第1分割保持器および第2分割保持器は、合成樹脂の成形品からなるものであってもよく、軟鋼によって形成されたものであってもよい。
【0017】
合成樹脂の成形品とする場合、深みぞ玉軸受は、オイル潤滑されるため、耐油性および耐久性に優れた合成樹脂で成形するのが好ましい。そのような樹脂として、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)を挙げることができる。それらの樹脂のうち、ポリフェニレンスルファイド(PPS)は、他の樹脂に比較して耐油性が優れているため、耐油性を考慮するならば、ポリフェニレンスルファイド(PPS)を用いるのが最も好ましい。
【0018】
また、樹脂材料の価格を考慮するならば、ポリアミド66(PA66)を用いるのが好ましく、潤滑オイルの種類に応じて適宜に決定すればよい。
【0019】
この発明に係る軸受装置においては、ヘリカルギヤが設けられたシャフトを油浴に一部が浸かる一対の転がり軸受で回転自在に支持した軸受装置において、前記一対の転がり軸受として、この発明に係る上記の深みぞ玉軸受を用いた構成としたのである。
【発明の効果】
【0020】
この発明に係る深みぞ玉軸受用保持器においては、上記のように、第2分割保持器の軸方向一側部に、外輪の肩高さの高い肩の内径面および内輪の肩高さの低い肩の外径面との間で微小間隙を形成するフランジを設けたことにより、潤滑オイルに混入する異物が軸受内部に侵入するのを抑制することができ、異物の噛み込みによる耐久性の低下を抑制することができる。
【0021】
また、軸受内への潤滑オイルの流入量も抑制することができるため、潤滑オイルの撹拌抵抗も低減することになり、トルク損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る深みぞ玉軸受の実施の形態を示す縦断面図
【図2】図1の一部を拡大して示す断面図
【図3】第1分割保持器と第2分割保持器の結合前の状態を示す平面図
【図4】第1分割保持器と第2分割保持器の結合状態を示す平面図
【図5】この発明に係る軸受装置の実施の形態を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、深みぞ玉軸受Aは、外輪11の内径面に形成された軌道溝12と内輪21の外径面に設けられた軌道溝22間にボール31を組込み、そのボール31を保持器40で保持している。
【0024】
外輪11の軌道溝12の両側に形成された一対の肩13a、13bのうち、軌道溝12の一側方に位置する肩13aの高さは他側方に位置する肩13bの高さよりも高くなっている。一方、内輪21の軌道溝22の両側に形成された一対の肩23a、23bのうち、軌道溝22の他側方に位置する肩23bの高さは一側方に位置する肩23aの高さより高くなっている。
【0025】
ここで、高さの低い肩13bおよび23aの肩の高さは、標準型深みぞ玉軸受の肩と同じ高さとしているが、標準型深みぞ玉軸受の肩の高さより低くしてもよい。
【0026】
なお、説明の都合上、高さの高い肩13a、23bをスラスト負荷側の肩13a、23bといい、高さの低い肩13b、23aをスラスト非負荷側の肩13b、23aという。
【0027】
スラスト負荷側の肩13a、23bの肩高さをHとし、ボール31の球径をdとすると、ボール31の球径dに対する肩高さHの比率H/dは、H/d=0.25〜0.50の範囲とされている。
【0028】
保持器40は、第1分割保持器41と、その第1分割保持器41の内側に嵌合された第2分割保持器42とからなる。
【0029】
図2乃至図4に示すように、第1分割保持器41は、環状体43の軸方向一側面に対向一対のポケット爪44を周方向に等間隔に形成し、各対向一対のポケット爪44間に上記環状体43を刳り抜く2分の1円を超える大きさのポケット45を設けた合成樹脂の成形品からなり、上記環状体43の内径はボール31のピッチ円径(PCD)に略等しく、外径は外輪11の高さが高い肩13aの内径と高さの低い肩13bの内径の範囲内とされて、外輪11の高さの低い肩13b側から軸受内に挿入可能とされている。
【0030】
一方、第2分割保持器42は、環状体48の軸方向他側面に対向一対のポケット爪49を周方向に等間隔に形成し、各対向一対のポケット爪49間に上記環状体48を刳り抜く2分の1円を超える大きさのポケット50を設けた合成樹脂の成形品からなり、上記環状体48の外径はボール31のピッチ円径(PCD)に略等しく、内径は内輪21の高さの高い肩23bの外径と高さの低い肩23aの外径の範囲内とされている。この第2分割保持器42は、高さの低い肩23a側から軸受内に挿入可能とされ、かつ、第1分割保持器41の内側に嵌合可能とされている。
【0031】
第1分割保持器41と第2分割保持器42の相互間には、内外に嵌り合う嵌合状態において軸方向に非分離とする連結手段Xが設けられている。連結手段Xは、第1分割保持器41の隣接するポケット45のポケット爪44間に内向きの係合爪46を設け、かつ、環状体43の内径面に上記係合爪46と同一軸線上に溝状の係合凹部47を形成し、第2分割保持器42の隣接するポケット50のポケット爪49間に外向きの係合爪51を設け、かつ、環状体48の外径面に上記係合爪51と同一軸線上に係合凹部52を形成し、第1分割保持器41の係合爪46と第2分割保持器42の係合凹部52の係合、および、第2分割保持器42の係合爪51と第1分割保持器41の係合凹部47の係合によって、第1分割保持器41と第2分割保持器42とを軸方向に非分離とする構成とされている。
【0032】
図2に示すように、第2分割保持器42の軸方向の一側部には、環状体48の外径面から外径側および内径面から内径側に張り出すフランジ53が設けられている。フランジ53は、第2分割保持器42が第1分割保持器41とでボール31を保持する状態で外輪11の高さの高い肩13aの内径面と内輪21の高さの低い肩23aの外径面間に配置されて、その内径面間および外径面間に微小間隙54を形成するようになっている。
【0033】
ここで、第1分割保持器41および第2分割保持器42は、深みぞ玉軸受を潤滑する潤滑オイルに曝されるため、耐油性に優れた合成樹脂を用いるようにする。そのような合成樹脂として、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド66(PA66)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)を挙げることができる。これらの樹脂は、潤滑オイルの種類に応じて適切なものを選択して使用すればよい。
【0034】
実施の形態で示す深みぞ玉軸受は上記の構造からなり、その深みぞ玉軸受の組立てに際しては、外輪11の内側に内輪21を挿入し、その内輪21の軌道溝22と外輪11の軌道溝12間に所要数のボール31を組込む。
【0035】
このとき、内輪21を外輪11に対して径方向にオフセットして、内輪21の外径面の一部を外輪11の内径面の一部に当接して、その当接部位から周方向に180度ずれた位置に三日月形の空間を形成し、その空間の一側方から内部にボール31を組込むようにする。
【0036】
そのボール31の組込みに際して、外輪11のスラスト負荷側の肩13aや内輪21のスラスト負荷側の肩23bの肩高さHが必要以上に高い場合には、ボール31の組込みを阻害することになるが、実施の形態では、ボール31の球径dに対する肩高さHの比率H/dが、0.50を超えることのない高さとされているため、外輪11と内輪21間にボール31を確実に組込むことができる。
【0037】
ボール31の組込み後、内輪21の中心を外輪11の中心に一致させてボール31を周方向に等間隔に配置し、外輪11のスラスト非負荷側の肩13bの一側方から外輪11と内輪21間に第1分割保持器41を、その第1分割保持器41に形成されたポケット45内にボール31が嵌り込むようにして挿入する。
【0038】
また、内輪21のスラスト非負荷側の肩23aの一側方から外輪11と内輪21間に第2分割保持器42を、その第2分割保持器42に形成されたポケット50内にボール31が嵌り込むように挿入して、第1分割保持器41内に第2分割保持器42を嵌合する。
【0039】
上記のように、第1分割保持器41内に第2分割保持器42を嵌合することにより、図2および図4に示すように、各分割保持器41、42に形成された係合爪46、51が相手方の分割保持器に設けられた係合凹部47、52に係合することになり、深みぞ玉軸受Aの組立てが完了する。
【0040】
上記のような深みぞ玉軸受Aの組立て状態において、第2分割保持器42に設けられたフランジ53は、外輪11の高さの高い肩13aの内径面と内輪21の高さの低い肩23aの外径面間に配置されて、その内径面と外径面間に微小間隙54を形成する。
【0041】
深みぞ玉軸受Aを油浴に外周下部が浸かる内輪回転の仕様において、内輪21が回転すると、ボール31は自転しつつ公転し、その公転によって保持器40が回転する。このとき、保持器40を形成する第1分割保持器41と第2分割保持器42とは外径および内径が相違するため、周速も相違することになり、その周速差によって軸受内部にポンプ作用が生じ、軸受内部の潤滑オイルは第1分割保持器41の組込み側から外部に送り出され、第2分割保持器42の組込み側から軸受内部に潤滑オイルが吸入されることになる。
【0042】
潤滑オイルには、ギヤの摩耗粉等の異物が混入している場合が多く、これらの異物は潤滑オイルと共に軸受内部に向けて送り込まれることになる。
【0043】
このとき、第2分割保持器42に設けられたフランジ53は、上記のように、外輪11の高さの高い肩13aの内径面と内輪21の高さの低い肩23aの外径面間に配置されて、その内径面と外径面間に微小間隙54を形成しているため、その微小間隙54によって異物の侵入が抑制されることになり、異物の噛み込みによる耐久性の低下が抑制される。
【0044】
また、軸受内への潤滑オイルの流入量も抑制することができるため、潤滑オイルの撹拌抵抗も小さくなり、損失トルクの低減が図られることになる。
【0045】
実施の形態においては、第1分割保持器41および第2分割保持器42を合成樹脂の成形品としたが、軟鋼(SPC)により形成してもよい。
【0046】
図5は、実施の形態で示す深みぞ玉軸受Aを用いて従動側のヘリカルギヤ60を支持するシャフト61を回転自在に支持した軸受装置を示す。この場合、深みぞ玉軸受Aは、内輪21のスラスト負荷側の肩23bがヘリカルギヤ60側に位置する組付けとする。また、深みぞ玉軸受Aは、一部が油浴に浸かる組付けとする。
【0047】
上記軸受装置において、駆動側ヘリカルギヤ62から従動側ヘリカルギヤ60に回転を伝達すると、シャフト61にスラスト力が負荷され、そのスラスト力は深みぞ玉軸受Aにおける内輪21のスラスト負荷側の肩23bと外輪11のスラスト負荷側の肩13aで支持される。
【0048】
このとき、ボール31にもスラスト力が負荷され、内輪21のスラスト負荷側の肩23bと外輪11のスラスト負荷側の肩13aが必要以上に低い場合、ボール31が肩13a、23bに乗り上がり、肩13a、23bのエッジを損傷させる可能性がある。
【0049】
実施の形態では、ボール31の球径dに対する肩高さHの比率H/dを0.25以上としているため、ボール31の乗り上げを確実に阻止することができる。
【符号の説明】
【0050】
11 外輪
12 軌道溝
13a 肩
13b 肩
21 内輪
22 軌道溝
23a 肩
23b 肩
31 ボール
40 保持器
41 第1分割保持器
42 第2分割保持器
45 ポケット
50 ポケット
53 フランジ
54 微小間隙
60 ヘリカルギヤ
61 シャフト
A 深みぞ玉軸受
X 連結手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪の内径面に形成された軌道溝と、内輪の外径面に形成された軌道溝間にボールを組み込み、そのボールを保持器で保持し、前記外輪軌道溝の両側に形成された一対の肩および内輪軌道溝の両側に形成された一対の肩の合計4つの肩のうち、外輪軌道溝の一側の肩および内輪軌道溝の他側の肩の肩高さを、外輪軌道溝の他側の肩および内輪軌道溝の一側の肩の高さより高くし、その高さの高い肩の肩高さをH、ボールの球径をdとしたとき、ボールの球径dに対する肩高さHの比率H/dが0.25〜0.50の範囲とし、前記保持器を、ボール保持用のポケットを軸方向の一側部に有する第1分割保持器と、その第1分割保持器の内側に嵌合され、ボール保持用のポケットを軸方向の他側部に有する第2分割保持器とで形成し、その第1分割保持器と第2分割保持器とを連結手段により連結して軸方向に非分離とした深みぞ玉軸受において、
前記第2分割保持器の軸方向一側部に、外輪の肩高さの高い肩の内径面および内輪の肩高さの低い肩の外径面間に微小間隙を形成するフランジを設けたことを特徴とする深みぞ玉軸受。
【請求項2】
前記第1分割保持器および第2分割保持器のそれぞれが、合成樹脂の成形品からなる請求項1に記載の深みぞ玉軸受。
【請求項3】
前記合成樹脂が、ポリアミド樹脂からなる請求項2に記載の深みぞ玉軸受。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂が、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド9Tのうちの一種からなる請求項3に記載の深みぞ玉軸受。
【請求項5】
前記合成樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる請求項2に記載の深みぞ玉軸受。
【請求項6】
前記合成樹脂が、ポリフェニレンサルファイド樹脂からなる請求項2に記載の深みぞ玉軸受。
【請求項7】
前記第1分割保持器および第2分割保持器のそれぞれが、軟鋼からなる請求項1に記載の深みぞ玉軸受。
【請求項8】
ヘリカルギヤが設けられたシャフトを油浴に一部が浸かる一対の転がり軸受で回転自在に支持した軸受装置において、
前記一対の転がり軸受が、請求項1乃至7のいずれかの項に記載の深みぞ玉軸受からなることを特徴とする軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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