説明

深紫外対応グレードの光ファイバを使用するフォトニック計測装置

原子吸光分析装置のようなフォトニック計測システムは、光ファイバケーブルにより相互接続された光源、試料および検出モジュールを含む。第1の組の光ファイバケーブルは光源モジュール内の1つ以上の光源からの光を試料モジュール内の少なくとも2つの分析チャンバのそれぞれに導く。第2の組の光ファイバケーブルは、分析チャンバからの光を検出モジュール内の検出器に導く。検出器は、導かれた光の強度に対応する信号を処理サブシステムに供給する。1つの分析チャンバが、所与の時間に試料分析を実行するために選択され、処理サブシステムが、選択された分析チャンバに関連する信号を測定信号として処理する。処理サブシステムは、所与の選択されていない分析チャンバに関連する信号を基準信号として更に処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、フォトニック計測装置に関し、特に高精度の原子吸光装置に関する。
【0002】
相互参照
本出願は、2009年11月20日に出願され、Juan C. Ivaldi 他による「ATOMIC ABSORPTION INSTRUMENT USING NON-SOLARIZING UV GRADE FIBER OPTICS」と題する米国仮特許出願第61/263,142号の恩典を請求しており、その米国仮特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景情報
スペクトロメータ(分光計)のような原子吸光装置は、よく知られており、さまざまな設定で使用されている。関心のある原子吸光装置は、測定光(即ち、吸光分析のための適切な波長の光)を試料に厳密に結合する、正確に位置合わせされた光学部品類を含む高精度のシステムである。また、高精度のシステムは、光の強度を求めて補償するための、並びにバックグラウンド吸収を補正するための基準経路を提供するために追加の光源および関連する光学部品類も利用する。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,222,626号に説明されるように、関心のあるシステムは、動作測定光路と基準光路を同時に利用する。
【0004】
該特許で説明されるように、ミラー及びビームスプリッタの精密に位置合わせされた構成は、測定およびバックグラウンド補正光源(例えば、中空陰極ランプ「HCL」及び重水素放電(D2)ランプ)からの光を測定経路および基準経路のそれぞれの開始点に同時に導くために使用される。次いで、測定経路は、アトマイザ(噴霧器)内の試料に光を結合し、且つアトマイザから検出器にも光を向けるために正確に位置合わせされた更なる複数のミラーを使用するが、基準経路は検出器に光を導くために光ファイバを使用する。
【0005】
原子吸光分析装置のアトマイザの動作は一般に、フレーム(火炎)(ネブライザ)、又は黒鉛チューブのような炉である。特定の原子吸光分析装置は、アトマイザの複数のタイプで動作することができ、1つのアトマイザ(例えば、フレーム(火炎)チャンバ)を光学的測定経路の外に移動させ、別のアトマイザ(例えば、炉)を光学的測定経路内へ移動させる手動または自動で動作する機械的な機構を含む。アトマイザの移動は、測定経路へ光を向けるミラー及びビームスプリッタの正確に位置合わせされた構成および/または試料に光を厳密に結合する更なる複数のミラーの再位置合わせを必要とすることが多い。光学部品類の再位置合わせは、多大の時間を必要とし且つ複雑であり、システムのダウンタイムをもたらす。
【0006】
他の既知のシステムは、タンデムでアトマイザを動作させ、それはレーザのようなコリメート光源が使用されている場合に良好に動作する。しかしながら、HCL及びD2ランプのような光源を使用する場合、光ビームが、拡張された測定経路にわたって発散し、それ故にタンデムシステムの光学系は、極めて複雑で高価である。
【0007】
発明の概要
フォトニック計測装置は、1つ又は複数の光源からの光を一対の分析チャンバのそれぞれに直接的に且つ同時に導く第1の組の光ファイバケーブルと、それぞれの分析チャンバからの光を検出器に直接的に且つ同時に導く第2の組の光ファイバケーブルとを含む。セレクタ/マッパーが、光源からの光を直接的に導くそれぞれの光ファイバを束ね、且つ光ファイバのマッピングを介して、各光源からの光を分析チャンバの双方に更に導く。ユーザは、試料測定の所与の時間に分析チャンバのどれを使用するべきかを選択し、システムコントローラは、選択された分析チャンバを測定経路のコンポーネントとして動作させる。同時に、他の分析チャンバは、基準経路の一部となり、第1及び第2の組の光ファイバケーブルの関連したケーブル間で光を通過させる。次いで、処理サブシステムが、選択された分析チャンバに関連する信号を測定信号として、及び選択されていない分析チャンバに関連する信号を基準信号として処理する。従って、測定経路および基準経路は、システムの再構成および/またはシステムの光学部品類の再位置合わせを必要とせずに、分析チャンバの選択により、システムを通じて同時に及び交換可能に設けられる。
【0008】
代案として、基準経路は、専用の光ファイバケーブルにより提供されることができ、その結果、セレクタ/マッパーは、システムを通る3つの経路、即ち専用の基準経路およびそれぞれの分析チャンバに関連する経路に沿って光ファイバをマッピングする。次いで、処理サブシステムが、選択された分析チャンバに関連する信号を測定信号として、及び専用の基準信号に関連する信号を基準信号として処理し、選択されていない分析チャンバに関連する信号を処理しない。この構成において、測定経路は、やはりシステムの再構成および/またはシステムの光学部品類の再位置合わせを必要とせずに、分析チャンバの選択により、システムを通じて同時に及び交換可能に設けられる。
【0009】
以下の本発明の説明は添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構築された原子吸光分析装置の機能ブロック図である。
【図2A】図1に示されたカプラーの機能ブロック図である。
【図2B】図1に示されたカプラーの機能ブロック図である。
【図2C】図1に示されたカプラーの機能ブロック図である。
【図3】図1のシステムで示されたアトマイザの代替の構成を示す図である。
【図4】図1のシステムの動作に関する流れ図である。
【図5】図1に示された光源モジュールの代替の構成である。
【図6】図1に示された試料モジュールの代替の構成である。
【図7】図1に示されたシステムの代替の構成である。
【0011】
例示的な実施形態の詳細な説明
図面は、一律の縮尺に従っておらず、特定の構成要素は、説明を簡単にするために他の構成要素に対して拡大されている場合がある。異なる図面の同じ参照符号は、同じ構成要素を参照する。フォトニック計測装置は、原子吸光分析装置のような例により説明される。他のフォトニック計測システムは、例えば誘導結合プラズマ発光分析、液体クロマトグラフィーの光検出、紫外/可視分光法、及び紫外/可視近赤外分光法を使用するシステムを同様に構成することができる。係るシステムにおいて、適切な分析チャンバが、以下で説明されるアトマイザと同じように利用される。
【0012】
図1を参照すると、原子吸光分析装置は、光源モジュール102、試料モジュール104、及びシステムを通して経路1000及び2000の部分である光ファイバケーブル108〜111によって相互接続される検出モジュール106を含む。光源モジュールは、2つのタイプの光源120及び122を含み、係る光源は例えば、吸光分析用の所望の波長で動作する中空陰極ランプ「HCL」、及びバックグラウンド補正用の光を提供する重水素放電(D2)ランプである。光源によって生成される光は、光ファイバケーブル128及び129により光源から直接的に導かれ、係る光ファイバケーブルはそれぞれ、経路1000及び2000の部分でもある。それぞれの光ファイバーケーブル128及び129は、複数の光ファイバからなる。
【0013】
光源モジュール102に含まれるセレクタ/マッパー130は、ケーブル128及び129の光ファイバを束ね、当該光ファイバを光ファイバケーブル108及び109にマッピングし、係る光ファイバケーブル108及び109は、双方の光源からの光を試料モジュール104における2つのアトマイザ140及び150のそれぞれに同時に導く分岐である。ケーブル128、129、108及び109は、第1の組の光ファイバケーブルを形成する。光ファイバケーブル110及び111は、試料モジュール104のアトマイザ140及び150からの光を検出モジュール106の検出器160に導く。また、第2の組の光ファイバケーブルを形成するケーブル110及び111は、それぞれの経路1000及び2000の部分でもある。当該例において、第1及び第2の組の光ファイバケーブルは、深紫外対応グレードの光ファイバからなり、既知の態様で動作する。
【0014】
光ファイバケーブル110及び111により導かれた光を受け取る検出器160は、モノクロメータとすることができ、それは必要に応じて、光ファイバケーブルにより供給される光を単一センサの異なる領域に向けるためのスリット又は他の機構(図示せず)を利用する。代案として、検出器は、対応するケーブルから直接的に光を受け取るように適切に配置された2つのセンサ(図示せず)を含んでもよい。検出器160は既知の方法で動作して、選択された波長の入射光の強度に対応する信号を生成し、当該信号を処理サブシステム194に供給する。
【0015】
システムコントローラ180は、以下でより詳細に説明されるように、アトマイザの選択に基づいてそれぞれのモジュール102、104、及び106、及び処理サブシステム194のコンポーネント(構成要素)の動作を制御する。システムコントローラは、ユーザがアトマイザ選択の命令および適宜に分析の他の命令を提供する、コンピュータのキーボード又はタッチスクリーンのような入力装置190から信号を受け取るように構成される。ディスプレイ装置192が、システム動作に関連する情報、並びに処理サブシステム194により実行された処理の結果をユーザに提供する。
【0016】
アトマイザ140及び150は例えば、フレーム(火炎)チャンバ又はネブライザ、及び例えば黒鉛チューブのような炉とすることができる。ユーザは、所与の時間に試料測定に使用するためのアトマイザのうちのどれかを選択するために、入力装置190を介して命令を入力する。当該命令に応答して、システムコントローラ180は、光源120と122、及びアトマイザ140と150の動作を制御して、光測定、バックグラウンド補正、及び基準情報を検出器160に提供する。
【0017】
より具体的には、システムコントローラ180は、試料測定およびバックグラウンド補正の情報が得られる光を提供するために、選択されたアトマイザ140、150を既知の方法で動作させ、基準情報を提供するために、光が単に通過することを可能にするモードで選択されていないアトマイザを動作させる。システムコントローラは更に、処理サブシステム194の動作を制御し、その結果、当該サブシステムは、選択されたアトマイザに関連する信号を測定経路信号として、及び選択されていないアトマイザに関連する信号を基準経路信号として処理する。このように、システムコントローラは、センサの特定領域または特定のセンサから適宜に供給される信号を測定信号として、及び他の領域またはセンサからの信号を基準信号として処理するようにプロセッササブシステムに命令する。
【0018】
従って、システムにより、ユーザは、システムを再構成する必要なしに、任意の所与の時間に試料測定用のアトマイザの何れかを選択することが可能になる。特に、アトマイザの選択は、1つ又は複数のアトマイザの、光測定経路内へ又は光測定経路外への機械的な移動を必要としない。従って、システム100において、測定経路内の光学部品類は、測定経路内に含まれるアトマイザを変更するために再位置合わせされる必要がない。
【0019】
システムを最適化するために、光ファイバ結合ユニット124、125を光源モジュール102内で使用して、光源120、122により生成された光をそれぞれの光ファイバケーブル128及び129に結合することができる。試料モジュール104内において、光ファイバ結合ユニット132、133を使用して、ケーブル108及び109からの光を、選定された領域、例えばそれぞれのアトマイザ140、150の中央に結合することができる。更に、光ファイバ結合ユニット134、136を使用して、アトマイザからの光を光ファイバケーブル110及び111に結合することができ、係る光ファイバケーブル110及び111は光を検出モジュール106に導く。結合ユニットは、図2A〜図2Cに関連してより詳細に説明される。
【0020】
さて、図2Aを参照すると、それぞれの結合ユニット3000は、カプラー304(当該例において軸外楕円ミラー)からなり、それはミラーの2つの焦点のうちの第1の焦点に位置する光源300により供給される光を、ミラーの第2の焦点に位置する宛先302に結合する。当該例において、ミラーは、90°の屈曲で光を反射するが、他の角度の屈曲、例えば30°又は60°が設計により利用され得る。
【0021】
カプラー304は本質的に、第1及び第2の焦点距離の比により特徴付けられる。例えば、0.5xカプラーは、ミラーからの距離が光源と比べて2倍である宛先を有する。カプラーは更に、入射ビームが宛先に集束されるミラーの選択領域である妨害のない開口により特徴付けられる。図面において点線306で示される妨害のない開口は本質的に、ミラーのサイズを決定する。カプラーは、ビームの開口数を変更するために、即ちビームの縮小または拡大のために、全て既知の態様で利用され得る。
【0022】
カプラー304は好適には、UV強化コーティングでコーティングされる。当該例において、カプラーは、対象となる波長に対して85%よりも大きい反射率を有するUV強化アルミニウムでコーティングされる。システム100において、対象となる波長は、190nmから900nmである。必要に応じて、長方形のミラーが、楕円ミラーの代わりに使用され得る。
【0023】
図2Aに示された例において、宛先302は光ファイバケーブル350のコア354である。ケーブル350はカプラー又はミラー304と位置合わせされ、その結果、ミラーの第2の焦点は、単一又は複数の光ファイバからなることができるコアの入口352内にある。
【0024】
システムにおいて、カプラーのそれぞれは、光を光ファイバケーブルに結合、又は光ファイバケーブルからの光を結合する。個々の光ファイバケーブルは、光源120、122並びにアトマイザ140、150の入口141、151及び出口143、153(図2C)であるように開口数により特徴付けられる。カプラーは、望み通りに、ビームの開口数および/または経路1000及び2000に沿って1つのコンポーネントから次へのビームの倍率を維持または変更する。当該例において、結合ユニット124及び125は、ビームの開口数を減らす0.5xカプラーであり、結合ユニット132及び135は、ビームの開口数を増加する2xカプラーであり、結合ユニット134及び136は、ビームを中継する又はビームの開口数を維持する1xカプラーである。
【0025】
ここで、図2Bも参照すると、システムを構成するために、光源モジュール102の結合ユニット124、125は、光源120、122及び光ファイバケーブル128、129と位置合わせされる。かくして、結合ユニットは、光源が対応するカプラー又はミラーの第1の焦点に位置するように、及び光ファイバケーブル128、129の入口126及び127がミラーの第2の焦点に位置するように配置される。光ファイバ129、128は、セレクタ/マッパー130を介して延在し、当該セレクタ/マッパー130は、個々の光源のそれぞれからの光を、ケーブルセクション108、109を介してアトマイザ140、150の双方に導くために個々の光ファイバを束ねてマッピングする。
【0026】
ここで、図2Cも参照すると、試料モジュール104において、ケーブルセクション108、109の端部105、107は、光源として結合ユニット又はカプラー132及び135と位置合わせされ、カプラーが光ファイバからの光を、アトマイザ140、150の個々の入口141、151を介してカプラーの第2の焦点に結合し、係る第2の焦点は当該例においてアトマイザの中央にある。同様に、結合ユニット134及び136は、アトマイザの出口143、153と位置合わせされ、アトマイザの中央からの光を、光源として光ファイバケーブル110及び111の入口113、115に結合する。ひとたびカプラー及び光ファイバが光源および試料モジュール102、104に適切に位置合わせされるならば、モジュール102、104、106は、任意の又は全てのケーブル108、109、110、111を曲げることにより互いに対して移動することができる。しかしながら、モジュールの相対移動は、結合ユニットが個々のモジュール内に配置されているので、システムの光学部品類の位置合わせに悪影響を及ぼさない。効率的なシステム動作に関して、モジュールの移動は、曲げられる光ファイバケーブルの最も小さい光ファイバの直径の300倍より小さい曲げ半径を採用するべきではない。しかし、光ファイバは、システム全体にわたって同じ直径である必要はないかもしれない。代案として、第1及び第2の組の光ファイバケーブルは、様々な個々の直径の光ファイバを利用することができる。説明を簡単にするために、アトマイザと光学部品類との間に位置しており、且つ分析中に存在する可能性がある腐食性蒸気から光学部品類を隔離する働きをする、光を通過させるための石英で覆われた開口を備える防壁等は、図面に示されていない。係る壁の使用は、従来の光学部品類を利用する原子吸光装置でよく知られており、同じ理由で現在のシステムで使用される。
【0027】
測定信号用および基準信号用のユーザ選択可能および交換可能の経路は、システムの使用のみならず、システムの構成にも大きな柔軟性を提供する。特に、光源モジュール102、試料モジュール104、及び検出モジュール106は、個々のアトマイザ140、150の熱源が温度に影響されやすいシステムコンポーネントから離れて位置するように構成され得る。更に、揮発性物質または放射性物質を分析するために使用されるシステムにおいて、所与のアトマイザ又は双方のアトマイザは、他のシステムコンポーネントから隔離され得る。
【0028】
例えば、図3に示されるように、当該例においてフレームチャンバ150であるアトマイザは、グローブボックス240内で動作し、当該グローブボックスは、グローブボックスの壁に取り付けられた光学的フィードスルー242及び243を備える。グローブボックスの内部に位置する結合ユニット132は、光学的フィードスルー242を介して受光した光を、チャンバ入口151を介してフレームチャンバの中央に結合する。フレームチャンバの中央から供給される光を、アトマイザ出口153を介して受光する結合ユニット134は、光学的フィードスルー243を介して光をケーブル110のコアへ結合する。ユーザは、アトマイザ内で試料を位置決めするために、手袋付きの穴250を介してアトマイザにアクセスできる。システムコントローラは、必要に応じて選択された又は選択されていない隔離されたアトマイザ150を用いて、分析を実行するために上述されたようにシステムを動作させる。
【0029】
原子吸光分析装置100の個々のモジュール102、104、106は、別々に製造され得る。更に、個々のモジュールは特定の使用のために最適化されることができ、ひいては様々なシステム構成が組み立てられ得る。例えば、所与のシステム用に製造されたモジュールは、特定の波長等の光と共に使用するために最適化され得る。また、説明されたように、試料モジュールは例えば、アトマイザの一方または双方の隔離を必要とする放射性物質または他の物質と共に使用するために最適化され得る。
【0030】
ここで、図4も参照すると、原子吸光分析装置100の動作が説明される。ステップ480において、ユーザは、試料の分析にどのアトマイザ140、150を使用するかに関するユーザの選択を、入力装置190を介してシステムに入力する。また、ユーザは適宜、持続時間、温度等のような実行されるべき分析に関する情報および/または命令を提供する。代案として、ユーザは、予めプログラミングされた分析ルーチンを選択してもよい。
【0031】
当該例において、ユーザは、フレームコンパートメント140を選択する。選択情報に応答して、ステップ482において、システムコントローラ180は、選択されたアトマイザに関連する信号を測定信号として、及び選択されていないアトマイザに関連する信号を基準信号として処理するように処理サブシステム194に命令する。かくして、システムコントローラは、検出器160の所与のセンサ又はセンサの所与の領域により提供される信号が測定信号として処理されるべきであること、及び別のセンサ又は領域からの信号が基準信号として処理されるべきであることを指定する。ステップ484において、ユーザは選択されたアトマイザ内に試料を配置する。
【0032】
ひとたび試料が所定位置にあれば、ステップ486において、システムコントローラは、選択されたアトマイザを既知の方法で動作させ、要求された分析を実行する。更に、システムコントローラは、選択されていないアトマイザを「スタンバイ」モードで動作させ、この場合、光ファイバケーブルによりアトマイザに供給される光は、アトマイザから検出器に導く光ファイバケーブルに送られる。更に、システムコントローラは、HCL及びD2ランプ並びに検出器160を分析のために既知の方法で動作させる。
【0033】
このように、システムコントローラ180は、光源120、122及び検出器160を同期して動作させる。当該例において、システムコントローラは、例えば50Hzの同期オン及びオフサイクルでランプ及び検出器を動作させる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,222,626号で説明されているように、HCL及びD2ランプは、検出サイクルの少なくとも一部の間に独立して動作する。
【0034】
ステップ488において、プロセッササブシステム194は、どの信号が測定信号であり且つどの信号が基準信号であるかに関する、システムコントローラからの命令に従って、検出器160により供給される信号を既知の方法で処理する。
【0035】
ステップ490において、ユーザは、次の試料の分析のために同じアトマイザ又は他のアトマイザを選択し、システムコントローラはそれに応じてシステムを動作させる。
【0036】
ここで図5を参照すると、異なる波長の複数のHCL120、120・・・120が光源モジュール102内に含まれ得る。代案として、光源120の一部または全ては、無電極放電ランプ(EDL)とすることができる。複数のランプは、選択された1つのランプのみ又は任意の所与の時間に動作する複数のランプと共に結合ユニットと同時に動作するように配置されることができ、或いは以下で説明されるように、結合ユニットは、選択されたランプに対して再配置され得る。ユーザ又はシステムコントローラは、所与の分析にどのHCL及び/又はEDLを使用するかを選択し、次いでシステムコントローラは、選択されたランプの動作を、分析を実行するために適切に制御する。
【0037】
結合ユニット124は、光ファイバケーブル128を僅かに曲げることにより、HCL及び/又はEDLに対して移動可能とすることがきる。かくして、結合ユニットは、カプラーと光ファイバケーブル128の入口130との間の位置合わせを変更せずに、選択されたランプに近接した選定された位置(波線により示される)に移動する。代案として、ランプは、ユーザの制御下またはシステムの制御下で、選択されたランプを静止したカプラーの焦点位置の位置に回転させる回転テーブル(図示せず)上に配置されてもよいし、又はランプ及びカプラーの双方が選定された位置に互いに対して移動可能であってもよい。更に、複数のカプラー及び光ファイバケーブルが使用されてもよく、この場合、複数のケーブルの個々の光ファイバは、セレクタ/マッパー130を介して光ファイバケーブル108、109へ束ねられる。また、係る構成の場合、2つ以上の波長の光が、アトマイザに同時に供給され得る。
【0038】
ここで、図6を参照すると、特定の原子吸光動作、例えば、炉140を利用する特定の分析は、基準信号を使用する必要がない。従って、試料モジュール104は、選択された炉が動作する間に、ユーザが選択されていないアトマイザに分析されるべき次の試料を配置するように、2つの一列で隣り合った炉140及び950でもって構築され得る。システムコントローラの命令に応答して、処理サブシステム194は、選択されたアトマイザからの信号を測定信号として処理する。恐らく、選択されていないプロセッサは、第2の組の光ファイバケーブルへ光情報を通過させない。かくして、システムの処理能力は、システムコンポーネントの再構成および/または再位置合わせを必要とせずに、2つの炉アトマイザを選択可能および交換可能に使用することにより、増大され得る。
【0039】
代案として、図7に示されるように、システムは、独立して配線された専用の基準光ファイバケーブル960と共に構成され得る。かくして、検出器160は、3つの検出領域または3つのセンサ(図示せず)でもって動作する。この構成において、システムコントローラ184は、選択されたアトマイザからの信号が測定信号として処理され、選択されていないアトマイザからの信号が処理されず、専用基準経路からの信号が基準信号として処理されることを確実にするようにプロセッササブシステム194を制御する。この構成における測定経路は、選択可能で交換可能であり、上述したシステムの柔軟性を提供する。
【0040】
本明細書で説明されたシステムは、選択可能および交換可能な測定経路および基準経路における3つ以上のアトマイザと共に構成されることができ、この場合、ユーザは、所与の時間における試料測定のためにアトマイザの1つを選択し、ユーザ又はシステムコントローラは、選択されていないアトマイザの1つを基準経路の一部として働くように割り当てる。システムコントローラは、選択されたプロセッサに関連する信号を測定信号として、及び必要に応じて選択されていない割り当てられたアトマイザに関連する信号を基準信号として処理するように処理サブシステム194に命令する。係るシステムにおいて、任意の又は全ての選択されていないアトマイザは、スタンバイモードで動作し、第1の組の光ファイバケーブルからの信号を第2の組の光ファイバケーブルに送り、この場合、基準経路に割り当てられた選択されていないアトマイザからの信号だけが、処理サブシステムにより処理される。説明されたように、基準経路は代わりに、専用の光ファイバケーブルにより提供されてもよい。複数のアトマイザ構成のシステムは、測定経路、及び必要に応じて基準経路がシステムを通して選択可能で交換可能であるため、上述した同じ柔軟性を提供する。
【0041】
システムは、例えば、光のより大きな強度が分析を実行するために必要とされる可能性がある場合に、所与のアトマイザの様々な比、又はHCL及び/又はD2ライトの様々な強度に備えることができる。セレクタ/マッパーは、個々の光源からアトマイザへの光を適切にマッピングして束ねることにより、60%/40%のHCL/D2ライトの混合物、又は70%/30%のような他の選択された比を提供することができる。セレクタ/ミクサは同様に、2つ以上のHCLにより生成された異なる波長の光の様々な混合物をアトマイザの1つに同時に提供することができる。
【0042】
代案として、又は更に、スイッチング機構(図示せず)を使用して、HCL及びD2ランプの双方からの光とは対照的に、HCLのような単一タイプの光源からの光だけを使用する所与のアトマイザに増大した処理能力を提供することができる。HCL光のみを必要とするアトマイザが選択された場合、スイッチング機構は、機械的に単一の光源を、セレクタ/マッパーを迂回して炉140のようなアトマイザへ延在する追加の光ファイバケーブル(図示せず)に接続する。もしそうでなければ、スイッチング機構は、HCL及びD2ランプの双方からの光をセレクタ/マッパーに供給し、次いで混合されたHCL及びD2光が第2の組の光ファイバケーブル108及び109を介して双方のアトマイザに供給される。
【0043】
前述の説明は、本発明の特定の実施形態に制限する。しかしながら、明らかなように、上述されたランプ及びアトマイザの代わりに又はそれらに加えて、他の光源(例えば、無電極放電ランプ)、他のタイプのアトマイザ(例えば、冷蒸気セル)を使用することのような変形および変更が本発明に行われることができ、その利点の一部または全てを獲得すると共に、セレクタ/マッパーは、特定の光源からの光をアトマイザのサブセットにマッピングすることができ、複数のHCL及び/又はEDLからの光が関連する光ファイバを束にすることを通じてアトマイザに同時にマッピングされることができ、多色検出器が単色検出器の代わりに使用されることができ、単一の光源からの光が、各アトマイザにマッピングされることができる等である。従って、添付の特許請求の範囲の目的は、本発明の真の思想および範囲内に入るような係る変形および変更の全てを網羅することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニック計測システムであって、
1つ又は複数の光源と、
少なくとも2つの分析チャンバと、
前記1つ又は複数の光源により生成された光を前記分析チャンバのそれぞれに導く第1の組の光ファイバケーブルと、
前記分析チャンバのそれぞれからの光を検出器に導く第2の組の光ファイバケーブルと、
前記検出器が、前記第2の組の光ファイバケーブルの各々のケーブルから前記検出器に導かれた光の強度に対応する信号を生成ように構成されていることと、
前記検出器により提供される信号を処理する処理サブシステムと、
試料分析を実行するように、選択された分析チャンバを動作させるために前記1つ又は複数の光源および前記分析チャンバを制御し、前記選択された分析チャンバに関連する信号を測定信号として処理するように前記処理サブシステムを制御するシステムコントローラとを含む、フォトニック計測システム。
【請求項2】
前記光源が第1及び第2のタイプからなり、
前記第1の組の光ファイバケーブルが、前記第1及び第2のタイプの光源のそれぞれからの光をそれぞれの分析チャンバに導くように光ファイバをマッピングするセレクタ/マッパーを含む、請求項1に記載のフォトニック計測システム。
【請求項3】
前記処理サブシステムが、選択されていない分析チャンバに関連する信号を基準信号として処理する、請求項2に記載のフォトニック計測システム。
【請求項4】
前記システムが、原子吸光分析装置であり、前記分析チャンバが炉アトマイザ及びフレームアトマイザである、請求項3に記載のフォトニック計測システム。
【請求項5】
前記第1の組における光ファイバケーブルへ光を結合し及び当該光ファイバケーブルからの光を結合するための第1の複数のカプラーと、
前記第2の組における光ファイバケーブルに光を結合するための第2の複数のカプラーとを更に含む、請求項1に記載のフォトニック計測システム。
【請求項6】
前記第1及び第2のカプラーが、軸外楕円ミラーである、請求項5に記載のフォトニック計測システム。
【請求項7】
前記第1及び第2のタイプの光源からの光を前記検出器に供給する第3の光ファイバケーブルを更に含み、
前記処理サブシステムが、前記第3の光ファイバケーブルに関連する信号を基準信号として処理する、請求項2に記載のフォトニック計測システム。
【請求項8】
前記システムが、原子吸光分析装置であり、前記分析チャンバの全てが炉である、請求項1に記載のフォトニック計測システム。
【請求項9】
個々の波長で光を生成する第1のタイプの複数の光源と、
選択された波長の光を前記第1の組の光ファイバケーブルに結合するために、前記第1のタイプの光源の任意の1つに対して対応するカプラーを配置するための手段とを更に含む、請求項5に記載のフォトニック計測システム。
【請求項10】
吸光のために個々の波長で光を生成する第1のタイプの複数の光源と、
前記第1のタイプの選択された光源からの光を前記第1の組の光ファイバケーブルに結合するために、対応するカプラーに対して前記光源を配置するための手段とを更に含む、請求項5に記載のフォトニック計測システム。
【請求項11】
吸光のために個々の波長で光を生成する第1のタイプの複数の光源と、
前記複数の光源のそれぞれからの光を前記第1の組の光ファイバケーブルに結合する複数のカプラーとを更に含む、請求項5に記載のフォトニック計測システム。
【請求項12】
前記第1及び第2の光源が、中空陰極ランプ及び重水素放電ランプである、請求項4に記載のフォトニック計測システム。
【請求項13】
前記第1及び第2の光源が、無電極放電ランプ及び重水素放電ランプである、請求項4に記載のフォトニック計測システム。
【請求項14】
前記システムが、誘導結合プラズマ発光分析、液体クロマトグラフィーの光検出、紫外/可視分光法、及び紫外/可視近赤外分光法の1つを実行する、請求項1に記載のフォトニック計測システム。
【請求項15】
前記第1のタイプの光源からの光を第1の選択された分析チャンバに供給し、前記第1及び第2のタイプの光源からの光を異なる選択された分析チャンバに供給するスイッチング機構を更に含む、請求項4に記載のフォトニック計測システム。
【請求項16】
原子吸光分析装置を動作させる方法であって、
光源から検出器までの各々の導かれる光路内に構成された少なくとも2つのアトマイザからアトマイザを選択し、
前記選択されたアトマイザに関連する信号を測定信号として処理するために前記検出器から信号を受け取るように構成された処理サブシステムを動作させることを含む、方法。
【請求項17】
所与の選択されていないアトマイザに関連する信号を基準信号として処理するように前記処理サブシステムを動作させることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
新たなアトマイザの選択を行い、
前記新たに選択されたアトマイザに関連する信号を測定信号として、及び所与の選択されていないアトマイザに関連する信号を基準信号として処理するように前記処理サブシステムを動作させることを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
フォトニック計測システムであって、
1つ又は複数の光源を含む光源モジュールと、
少なくとも2つの分析チャンバを含む試料モジュールと、
前記分析チャンバのそれぞれに関連する信号を生成する検出器を含む検出モジュールと、
前記1つ又は複数の光源からの光を前記分析チャンバのそれぞれに導く第1の組の光ファイバケーブルと、
前記分析チャンバのそれぞれからの光を前記検出器に導く第2の組の光ファイバケーブルと、
前記検出器により生成される信号を処理する処理サブシステムと、
試料分析を実行するように、選択された分析チャンバを動作させるために前記1つ又は複数の光源および前記分析チャンバを制御し、前記選択された分析チャンバに関連する信号を測定信号として処理するように前記処理サブシステムを制御するシステムコントローラとを含む、フォトニック計測システム。
【請求項20】
前記光源が異なるタイプの光源であり、
前記第1の組の光ファイバケーブルが、前記異なるタイプの光源のそれぞれからの光を導く光ファイバと、2つのタイプの光源のそれぞれからの光を前記分析チャンバのそれぞれに導くように前記光ファイバを束ねてマッピングするセレクタ/マッパーを含む、請求項19に記載のフォトニック計測システム。
【請求項21】
前記システムコントローラが、選択されていない所与の分析チャンバに関連する信号を基準信号として処理するために前記検出モジュールを更に動作させる、請求項20に記載のフォトニック計測システム。
【請求項22】
前記システムが、原子吸光分析装置であり、前記分析チャンバが炉アトマイザ及びフレームアトマイザである、請求項21に記載のフォトニック計測システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−511715(P2013−511715A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539875(P2012−539875)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/003006
【国際公開番号】WO2011/062630
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(510203304)パーキンエルマー ヘルス サイエンセズ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】