説明

深部静脈血栓症を防ぐための装置

患者の手足を通る血流を向上させるための装置(40)は、患者の手足のまわりに延設可能な圧縮スリーブ(41)を備えている。圧縮スリーブ(41)は、そのスリーブに沿って相互に隣り合わせに並ぶ複数の圧縮器(43〜48)を有している。使用においては、圧縮器(43〜48)は、スリーブ(41)の一方の端部から他方の端部まで手足内の血液を移動させるために手足を順次圧縮するようになっている。具体的にいえば、圧縮器(43〜48)のうちの一つが手足を圧縮し始めるとき、順序からするとその一つ前の圧縮器(43〜48)が既に手足を圧縮しており、また、順序からするとその二つ前の圧縮器(43〜48)が手足を圧縮するのを終了しているようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の手足を通る血流を向上させるための装置に関するものであり。さらに詳細にいえば、本発明は、深部静脈血栓症を防ぐための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
深部静脈血栓症(DVT)は、体の任意の部分における深部静脈についてのものであるがほとんどの場合ふくらはぎまたは大腿部の静脈内の凝血塊の形成により特徴づけられる。DVTは、病的状態の大きな要因となっており、DVTの最も一般的かつ重大な合併症といえば、血栓が静脈壁から遊離して肺に移動することで動脈を詰まらせる肺塞栓症である。
【0003】
以下の要因は、静脈内での血栓の形成を促進しうる。
1.血液の凝結の増加(たとえば、ホルモン使用中の女性)
2.血液内の凝固因子の増加
3.凝固因子は放出され、化学カスケードにより凝血塊の形成が引き起こされる静脈壁の損害(たとえば、脚部の外傷)
4.重力により静脈を流れる血液の流量が減少する垂れ下がった手足に発生する血液のうっ滞血栓は、うっ滞により脚部に最も頻繁に形成することが知られている。
【0004】
循環系は、さまざまな機構を用いて体内に血液を循環させる。心臓が動脈系に血液を送り込み、このシステムが体全体に血液を分配する。心臓の上では、重力が心臓に血液を返す役割を果たし、心臓の下では、筋収縮が、静脈を圧縮して心臓に向かって血液を送るようになっている。静脈の一方向性の弁によって、血流が方向性を有していることが担保されている。小さな筋肉群は、脚部の筋肉の各収縮の間に、小量の血液を送るようになっている。このことは、静脈壁が薄くかつ弾力性を有しているため静脈内に過剰の血液が送られるとその静脈を膨らませてしまい、損傷を与えることになるとともに、一方向性の弁が機能を果たさなくなるため、重要なことである。
【0005】
長い期間筋肉が活動しない間、(たとえば、飛行機、車、バスもしくは電車で旅行中、車椅子に拘束されているとき、または、ベッドに寝たきりのとき)、人の脚部内で静脈血がほとんど流れない可能性があるので、人体内に血栓が形成される危険性が上昇する。うっ滞に加えて、血液が脚部静脈内に集まり続けると、一方向性の弁が漏洩する恐れがあり、静脈が、膨らみ、損傷を受け、これにより凝血塊の形成を開始しうる凝固因子を放出する場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DVTを防ぐための圧縮スリーブが知られている。しかしながら、このようなスリーブは血栓の形成の危険性を減少させうるが、これらのスリーブは、危険を合格レベルに至るまでは減少させないという欠点を一般的に有している。具体的にいえば、任意の与えられた時刻において広い領域の筋肉を圧縮し、次いで、多くの量の血液を静脈から絞り出すようになっているスリーブには、以下の欠点を有している場合がある:
1.スリーブの圧縮中、血液は、スリーブの下方の静脈に絞り戻されることにより、スリーブの下方の静脈内のうっ滞を増大させ、スリーブの下方の静脈をさらに膨らませる原因となりうる。この問題は、長いスリーブ圧縮時間により、大きな圧縮領域により、また、スリーブの真下に位置する静脈が既に過剰の血液を含んでいる場合に、さらに悪化する。
【0007】
2.圧縮のあと、スリーブは緩和され、また、前に圧縮された筋肉内の空の静脈がスリーブの下方から血液を補充するので、スリーブの上方の静脈中の血液を押す血液がないため、スリーブが次に圧縮されるまで、スリーブの上方の静脈内の血液が静止したまま留まることになる。
【0008】
3.着席している人の大腿部に位置する静脈のようにスリーブの上方の静脈に何らかの収縮がある場合、多量の血液がそれらの静脈を膨らまし損傷しうる。
【0009】
要約すると、公知の圧縮スリーブの一部は、筋肉の圧縮の間スリーブの下方にうっ滞を引き起こしうるし、スリーブが緩和されたときスリーブの上方にうっ滞を引き起こし、静脈壁を膨らまし、静脈の一方向性の弁を機能しなくすることにより、血栓の形成の危険性を増大させるという欠点を有している。また、このことは、一連の膨張式チャンバを有し、脚部の領域を順次圧縮するスリーブに対しても当てはまる。というのは、これらのチャンバが、広い領域の筋肉を覆い、すべてのチャンバが膨らまされるまで萎まないからである。
【0010】
本発明がより完全に理解され実行に移されうるように、本発明の好ましい実施形態が添付の図面を参照して記載される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の一つの目的は、上述の欠点のうちの少なくとも1つを最小限に抑えるもしくはそれを克服する、患者の手足を通る血流を向上させるための装置を提供するかまたは公衆に対して有用な選択肢もしくは商用の選択肢を提供することにある。
【0012】
本発明の他のオブジェクトおよび利点は、本発明の好ましい実施形態が例示を目的として示されている添付の図面を参照して説明される以下の記載から明らかなものとなる。
【0013】
本発明の第一の広い態様によれば、患者の手足を通る血流を向上させるための装置が提供されている。この装置はスリーブを備えており、このスリーブは、患者の手足のまわりに延設可能であるとともに、スリーブに沿って相互に並んで設けられている複数の圧縮器を有している。使用時には、圧縮器は、スリーブの一方の端部から他方の端部まで手足内の血液を移動させるために手足を順次圧縮するようになっている。ある一つの圧縮器が手足を圧縮し始めるとき、順序からすると一つ前の圧縮器は既に手足を圧縮しており、また、順序からすると二つ前の圧縮器は手足を圧縮するのを終了してしまっているようになっている。
【0014】
本発明の第二の広い態様によれば、圧縮スリーブを有する装置を用いて、患者の手足を通る血流を向上させるための方法が提供されている。この方法は、
(1)スリーブに沿って相互に並んで設けられている複数の圧縮器を有している圧縮スリーブを患者の手足のまわりに延設するステップと、
(2)スリーブの一方の端部から他方の端部まで手足内の血液を流すように圧縮器に手足を順次圧縮させるステップとを有しており、ある一つの圧縮器が手足を圧縮し始めるとき、順序からして一つ前の圧縮器が既に手足を圧縮しており、順序からして二つ前の圧縮器が手足を圧縮するのを終了してしまっている。
【0015】
患者は、人間であってもよいしまたは他のタイプの哺乳動物であってもよい。好ましくは、この装置は、人の腕部または脚部を通る血液を流すために用いられる。
【0016】
スリーブは、いかなる適切なサイズ、形状および構成であってもよい。好ましくは、スリーブは、人のふくらはぎ筋肉、大腿部または足部のまわりに延設可能である。スリーブは、いかなる適切な数の圧縮器を有していてもよい。スリーブは、3つの圧縮器しか有していなくともかまわないものの、好ましくは少なくとも5つ以上の圧縮器、さらに好ましくは6つの圧縮器を有している。
【0017】
上述のように、圧縮器は、スリーブの一方の端部から他方の端部まで手足内の血液を流すように手足を順次圧縮する。好ましくは、これは、
(1) 第一の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第一の圧縮器の真下の静脈血が第二の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮するステップと、
(2) 第二の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第二の圧縮器の真下の静脈血が第三の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮するステップと、
(3) 第三の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第三の圧縮器の真下の静脈血が第四の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮し、第一の圧縮器は血液が当該第一の圧縮器の真下を流れることができるように圧力を下げるステップと、
(4) 第四の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第四の圧縮器の真下の静脈血が第五の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮し、第二の圧縮器は血液が当該第二の圧縮器の真下を流れることができるように圧力を下げるステップと、(5) 第五の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第五の圧縮器の真下の静脈血が第六の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮し、第三の圧縮器は血液が当該第三の圧縮器の真下を流れることができるように圧力を下げるステップと、
(6) 第六の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第六の圧縮器の真下の静脈血が手足をさらに上方に向かって流れるように手足を圧縮し、第四の圧縮器は血液が当該第四の圧縮器の真下を流れることができるように圧力を下げるステップと、
(7) 第一の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第一の圧縮器の真下の静脈血が第二の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮し、第五の圧縮器は血液が当該第五の圧縮器の真下を流れることができるように圧力を下げるステップと、(8) 第二の圧縮器は、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第二の圧縮器の真下の静脈血が第三の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮し、第六の圧縮器は血液が当該第六の圧縮器の真下を流れることができるように圧力を下げるステップと、
(9) 第三の圧縮器が、静脈血がそのあとへ流れることができないようにかつ第三の圧縮器の真下の静脈血が第四の圧縮器の真下を流れるように手足を圧縮し、第一の圧縮器は血液が当該第一の圧縮器の真下を流れることができるように圧力を下げるステップと、
(10)ステップ(4)〜(9)を無期限に繰り返すステップとを有している。
【0018】
このように、圧縮器は、波の運動のように圧縮および減圧を行い、手足を圧縮した各圧縮器の上方および下方のうっ滞の時間をほんの短いものとし、手足を圧縮した隣接する下側の圧縮器を血液で満たすと同時に、上側の圧縮器が血液を心臓の方に向かって流すことを可能なものとしている。
【0019】
圧縮器は、いかなる適切なサイズ、形状および構成であってもよい。好ましくは、圧縮器の各々は、手足のまわりに完全にまたはほとんど完全に延設される。たとえば、圧縮器は、平行に延びた膨張もしくは収縮することができるチャンバまたは締め付けもしくは緩和することができる止血器でありうる。
【0020】
スリーブは、圧縮器を取り囲むケースを有することができる。このケースは、いかなる適切なサイズ、形状および構成であってもよい。好ましくは、ケースは綿の如き生地からなっている。この点において、スリーブは血圧計に類似しうる。ケースは、いかなる適切な方法で手足のまわりに固定されてもよい。たとえば、ケースは、一または複数のマジックテープタイプの締結部材(たとえば、Velcro(登録商標)、または相互に嵌め合うクリップもしくはスナップぼたんを有することができる。
【0021】
スリーブは、ケースと下肢との間に位置し、衛生の目的のため人により使用された後に取り除いて廃棄することができる保護層を有することができる。この保護層をケースに着脱可能に接続することができる。たとえば、保護層を、ケースに接着剤を用いて接着することができる。 あるいは、手足とケースの間で圧縮される使用時においてのみ、保護層をケース上に配置するようにしてもよい。
【0022】
保護層は、いかなる適切な一または複数の材料からなっていてもよい。
【0023】
好ましくは、保護層は、プラスチックにより裏当てされた吸収性シートからなる。ここで、このシートの吸収面は手足に接し、その手足から汗を吸収することができ、プラスチック裏打ち部材汗がケースに到達しないようにする。
【0024】
また、スリーブは、圧縮器の圧縮力が手足の広範囲に及ぶことを担保させるための堅固な裏当用スリーブ(すなわち、層)をさらに備えることができる。裏当用スリーブは、手足のまわりに位置する圧縮器の外面に隣接して延びることができる。好ましくは、裏当用スリーブは、ケース内において圧縮器の外面に沿って延びる。
【0025】
裏当用スリーブは、いかなる適切なサイズ、形状および構成であってもよい。裏当用スリーブは、いかなる適切な一または複数の材料からなっていてもよい。裏当用スリーブは、単一の構成であってもよいし、または、取り付け可能な二つ以上の部分から構成されてもよい。好ましくは、裏当用スリーブは、硬質ゴムまたはプラスチック材料からなっている。このような裏当用スリーブは、ある程度の可撓性を有することができるものの、圧縮器の圧縮力が手足の広範囲に及ぼされることを担保している。
【0026】
本発明の第一の形態では、圧縮器は膨張式チャンバである。このチャンバはいかなる適切な構成であってもよい。たとえば、ゴム製の袋またはプラスチック製の袋を熱シールしてチャンバを形成することができる。このゴム製の袋またはプラスチック製の袋をケースによりゆるく取り囲むことができる。あるいは、チャンバは、ケースに接続される個別の袋からなっていてもよい。好ましくは、スリーブの端部のチャンバは、間のチャンバよりも狭く、より少ない量の流体を保持するようになっている(すなわち、より少ない容積を有している)。
【0027】
各チャンバは、そのチャンバを膨らまし過ぎないようにするための圧力逃がし弁を備えることができる。圧力逃がし弁は、チャンバ圧力が手足に約35mmHgだけ過剰な圧力を及ぼすレベルに達したときに開くようになっていることが好ましい。
【0028】
この装置は、チャンバの各々に流体を移送するための流体移送システムを有することができる。流体により、これらのチャンバを、前もって決められた速度でおよび前もって決められた圧力まで膨張することができる。いかなる適切な膨張速度および圧力を用いてもよい。チャンバの膨張速度は、たとえば約1〜30秒の範囲内であるが、好ましくは約5秒である。膨張したチャンバの圧力は、たとえば約静脈圧〜40mmHgまでの範囲内であるが、好ましくは約35mmHg未満である。どの圧力までチャンバを膨張するは調節されてもよい。好ましくは、膨張したチャンバは、虚血の危険性を減少させるために動脈圧未満である。各チャンバはいかなる適切な時間膨張されていてもよい。たとえば、各チャンバは1〜30秒間膨張されていてもよい。各チャンバが膨張している期間を調節してもよい。装置が比較的小型であるように、および、チャンバを比較的迅速に膨張および収縮することができるように、チャンバは、比較的小さいことが好ましい。
【0029】
チャンバの真下の血液の攪拌を増しかつうっ滞を減らすために、ポンプにより各チャンバに流体を規則的に脈打つように(パルス状に)送り込むことができる。
【0030】
好ましくは、流体移送システムは、流体を各チャンバに移送するために、ポンプと、このポンプとチャンバとの間に延びるマニホルドとを備えている。いかなる適切なタイプの流体(たとえば、空気、水、油)を用いてもよいが、流体は空気であることが好ましい。ポンプは、脈動する空気流を発生させるための脈動型ポンプまたは脈動しない空気流を発生させるための非脈動型ポンプのいずれかであってよい。
【0031】
好ましくは、流体移送システムは、各チャンバを順次膨張および収縮させるための弁組立体を備えている。いかなる適切なタイプの弁組立体が用いられてもよい。このような組立体は、各チャンバを膨張および収縮させるための圧力始動式、時間始動式または電気始動式の弁を有することができる。この組立体は、規則的に脈打つ(パルス状の)流体のストリームを発生するために、圧力逃がし弁と、弁とをさらに有することができる。
【0032】
本発明の1つの実施形態では、弁組立体は、各ロータリー弁の回転サイクルの間に、空気が順次各チャンバからに送り込まれ各チャンバから抜き出されるようになっているロータリー弁である。タイマーとドライブとを作用可能にロータリー弁につなぐことができる。
【0033】
本発明の他の実施形態では、弁組立体は、チャンバを膨張および収縮するための複数の三方向弁を備えている。ここで、第一の弁セッティングでは、空気がポンプから特定のチャンバへ送られ、第二の弁セッティングでは、このチャンバが膨張したまま留まるようシールされ、第三の弁セッティングでは、チャンバ内の空気が大気中に排出されチャンバが収縮される。タイマーとドライブとを作用可能に三方向弁につなぐことができる。
【0034】
ポンプは、スリーブと分離されてもよいし、または、スリーブに取り付けられてもよい。ポンプはスリーブにいかなる適切な方法で取り付けてもよい。スリーブに取り付けると、ポンプの振動により筋肉および静脈が振動し、血栓形成の危険性が減少しうる。単一のポンプが一または複数のスリーブに空気を移送することができる。
【0035】
また、この装置は、空気移送システムおよびスリーブの構成部品を監視および調整するために、マイクロプロセッサと、コントロールパネルと、電子センサまたは圧力センサを有することができる。
【0036】
本発明の第二の形態では、圧縮器は、手足を圧縮するために選択的に締め付けることができる止血器である。これらの止血器はいかなる適切な構成であってもよい。各止血器は、手足のまわりに延びるたとえばコード、ひもおよび/または可撓性の細長いシートであってもよい。好ましくは、各止血器はケースの通路内に延びている。
【0037】
止血器はいかなる適切な方法で締め付けおよび緩和されてもよい。発明の1つの実施形態では、この装置は、止血器を順次締め付けおよび緩和するカムとカム従動子とを有している。以下でさらに詳細に記載する本発明の他の実施形態では、この装置は、止血器を順次締め付けおよび緩和するためのチェーンドライブおよびレバー組立体を有しうる。このような組立体は、各止血器の一方の端部に接続されるそれに対応するレバーを有することができ、各止血器の他方の端部をケースの遠位端部へ固定することができ、また、各レバーを止血器締め付け位置と止血器緩和位置との間で移動させることができる。
【0038】
この組立体は、チェーンを1対のスプロケットをまわるように駆動するモータを有することができる。このチェーンの選択リンクの横方向の延出部は、レバーを締め付け位置に移動させ、リンクがもはやレバーと係合しなくなるまでその位置にレバーを保持することができる。
【0039】
この装置は、チェーンドライブおよびレバー組立体を収容するためのハウジングを備えることができる。ハウジングは、いかなる適切なサイズ、形状および構成であってもよい。チェーンドライブをハウジングに接続することができ、各レバーはハウジングに回転可能に接続することができ、また、各止血器はハウジング内の対応する孔を通って延びることができる。ケースの近位端部をハウジングに固定することができ、ケースの遠位端部を着脱可能にハウジングに接続することができる。
【0040】
モータには、たとえばバッテリを用いてまたは電気供給幹線に接続することによって等の任意の適切な方法で電力を供給することができる。
【0041】
また、この装置は、止血器の監視および制御のために、マイクロプロセッサと、コントロールパネルと、電子センサまたは圧力センサとを備えることができる。
【0042】
本発明の他の実施形態では、装置は、止血器を順次締め付けおよび緩和するための歯車システムを備えることができる。このようなシステムは歯車列を含むことができる。ここで、歯車列の各歯車を止血器の一方の端部に別々に接続し、各止血器の他方の端部をケースの遠位端部に固定することができ、また、各歯車を止血器締め付け位置と止血器緩和位置との間で回転させることができる。
【0043】
歯車列は、いかなる適切な数の歯車を備えていてもよい。歯車には平歯車が好ましい。歯車は、同一の直径であり、共通面内で相互に平行に延設されるシャフトを中心として回転することが好ましい。
【0044】
各止血器は、いかなる適切な方法で歯車列の歯車に接続されてもよい。好ましくは、突出部が各歯車の面から延びており、また、各止血器がその突出部に固定されている。突出を歯車の外周に隣接して設けることができる。
【0045】
このシステムは歯車列を駆動するためのモータを備えることができる。モータは、歯車列の歯車と噛み合う駆動歯車を有することができる。
【0046】
この装置は、歯車システムを収容するためのハウジングを有することができる。ハウジングは、いかなる適切なサイズ、形状および構成であってもよい。歯車列のシャフトとモータとをハウジングに接続することができ、また、各止血器は一または複数のガイドをまわっておよびハウジングの開口部を通って延びることができる。ケースの近位端部をハウジングに固定することができ、また、ケースの遠位端部を着脱可能にハウジングに接続することができる。
【0047】
モータには、たとえばバッテリを用いてまたは電気供給幹線に接続することによって等の任意の適切な方法で電力を供給することができる。
【0048】
また、この装置は、止血器の監視および制御のために、マイクロプロセッサと、コントロールパネルまたはロータリースイッチと、電子センサまたは圧力センサとを備えることができる。
【0049】
本発明の第三の形態では、圧縮器が、電流を印加すると、締まり(収縮し)、手足を圧縮するようになっている止血器である。止血器はいかなる適切な構成であってもよい。止血器は、たとえばセラミック製のビードが通されているワイヤであってもよい。適切なワイヤとしては、たとえばFlexinolという商標名で売られているものが挙げられる。各止血器はケースの流路内に延びていることが好ましい。
【0050】
この装置は、各止血器への電流を調整するために、各止血器に電気的に結合されている主動制御モジュールおよび従動マイクロコントローラを備えることができる。いかなる適切なタイプの制御モジュールおよびマイクロコントローラを用いてもよい。
【0051】
この装置は、止血器のピンと張った状態を検出するために、各止血器に関連付けされるセンサを備えることができる。いかなる適切なタイプのセンサを用いてもよい。好ましくは、歪みゲージセンサが各止血器の端部に接続され、この歪みゲージセンサがマイクロコントローラにフィードバックを提供する。
【0052】
この装置は、ユーザが装置を装着しながらあちこち歩き回ることができるように、比較的小型であることが好ましい。
【0053】
この装置は、異なる手足の圧縮のためにまたは同一の手足の異なる部品の圧縮のために、複数の圧縮スリーブを備えていてもよい。たとえば、この装置は、脚部のふくらはぎ筋肉または大腿部を圧縮するための一つのスリーブと、脚部の足部を圧縮するための他のスリーブとを備えていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
同様の部材には同様の参照数字が付与されている。
【0055】
図1には、人の下肢を通る静脈血流量を向上させるための装置40が示されている。装置40は、人の下肢のまわりに延設可能な膨張式圧縮スリーブ41(図4において最も分かり易い)と、スリーブ41に空気を移送するための空気移送システム42とを備えている。スリーブ41は血圧計に類似している。
【0056】
スリーブ41は、当該スリーブ41に沿って相互に隣り合って並んでいる6つの膨張可能なチャンバ43〜48を有している。チャンバ43〜48は、図4から分かるように、細長く、手足のまわりに延設されるようになっている。チャンバ43〜48は、シールされたゴム製の袋49により形成されている。チャンバ43、48はチャンバ44〜47よりも幅狭で、保持する空気量が少ない。(しかしながら、チャンバ43、48はチャンバ44〜47と比べて幅狭である必要はない)。各チャンバ43〜48は、チャンバ43〜48の圧力が約35mmHgを超えた場合に開弁する圧力逃がし弁50を有している。圧力逃がし弁50は、チャンバ43〜48が過度に膨張するのを防止するようになっている。
【0057】
スリーブ41は、袋49を取り囲む繊維製ケース51を有している。Velcro(登録商標)製の帯52によりケース51を手足のまわりに固定することができる。
【0058】
ケース51と下肢との間には、衛生の目的のために人により使用された後に取り除くまたは廃棄することができる保護シート53が置かれる。保護シート53は図4に示されている。保護シート53は、下肢からの汗を吸収するための吸収面を有しており、汗がケース51に達するのを防ぐためにプラスチックにより裏張りされている。保護シート53を用いることにより、ケース51を定期的に洗浄する必要性が減少する。
【0059】
必要に応じて、異なるサイズ人に対して異なるサイズのスリーブ41を用いることができる。小柄な人のためのスリーブは、通常幅100mmであり、6つのチャンバを有している。チャンバ43、48の各々は幅が10mmであり、チャンバ44〜47の各々は幅が20mmである。中柄の人のためのスリーブは、通常幅が140mmであり、6つのチャンバを有している。チャンバ43、48の各々は幅が20mmであり、チャンバ44〜47の各々は幅が25mmである。大柄の人のためのスリーブは、通常幅が180〜220mmの間にあり、6つのチャンバを有している。チャンバ43、48の各々は幅が20mmであり、チャンバ44〜47の各々は幅が35〜45mmである。
【0060】
図1に示されている流体移送システム42は、空気ポンプ54と、パルス弁55と、ロータリー弁56と、ポンプ54とパルス弁55との間に延びるホース57と、パルス弁55とロータリー弁56との間に延びるホース58と、ロータリー弁56とチャンバ43〜48との間に延びるホース59〜64とを備えている。パルス弁55により、空気がポンプによりチャンバ43〜48の中に規則的に脈打ちながら(パルス状に)送り込まれることが担保されている。
【0061】
ロータリー弁56により、チャンバ43〜48が順次膨張収縮することが担保されている。図2には、ロータリー弁56が詳細に示されている。ロータリー弁56は、ハウジング66内に設けられているとともにハウジング66に対して回転可能となっている円筒状の空気分配器65を有している。ハウジング66の一方の端部は気密状態でホース59〜64の各々に接続されており、ハウジング66の他方の端部は気密状態でホース58に接続されている。 ロータリー弁56は、ドライブおよびタイマー(図示せず)と作用可能に結合されており、分配器65はこのドライブにより回転されるようになっている。
【0062】
分配器65は、ポンプ54とホース59〜64との間に空気を通すための貫通する流路67を有している。また、分配器65は、ホース59〜64およびチャンバ43〜48の内部から大気中へ空気の通気するための流路68をさらに有している。ホース59〜64は、分配器65が回転するにつれて任意の与えられた時刻においてホース59〜64およびチャンバ43〜48のうちの一つのみにポンプ54から空気が送られ、また、任意の与えられた時刻においてホース59〜64およびチャンバ43〜48のうちの1つのみから空気が放出されるように、流路67、68の端部の下に環状に配置されている。
【0063】
図2のホース59〜64および流路67、68は、チャンバ43が膨張し、チャンバ47が収縮しチャンバ44〜46およびチャンバ48がシールされるように構成されている。流路67が60度回転されホース60の上に位置に来ると、チャンバ44が膨張し始め、チャンバ48が収縮し、チャンバ43が膨張されシールされたまま留まることになる。分配器65が一回転する毎に、チャンバ43〜48は、静脈血をスリーブ41の一方の端部から他方の端部まで移動させるよう、スリーブ41の一方の端部から他方の端部まで波の運動のように膨張および収縮を順次繰り返す。流路67はホース59〜64間を5秒毎に移動し、30秒毎に1フル回転をする。
【0064】
図3には、異なる空気移送システム71を備えていること以外は図1の装置と同等の装置70が示されている。ロータリー弁56を備えることに代えて、システム71は各ホース59〜64に作用可能に接続されている一連の三方弁72を有している。弁72は順次動作するようになっている。タイマーおよびドライブ(図示せず)は、各弁72を3つのセッティング間を移動させる。第一のセッティングでは、空気がポンプ54から特定のチャンバ43〜48へ送られ、第二のセッティングでは、このチャンバ43〜48が膨張したまま留まるようシールされ、第三のセッティングでは、チャンバ43〜48内の空気が大気中に排出されチャンバ43〜48が収縮される。各弁72は各セッティングで5秒間そのまま留まるようになっている。
【0065】
使用においては、スリーブ41は、人の下肢のふくらはぎの筋肉のまわりに固定される。ポンプ20は台座または基盤により担持される。空気移送システム42、71をスリーブ41から容易に取り外すことができるし、または、装置40、70のユーザがその位置から離れる必要がある場合、空気移送システム42、71の部品を相互に容易に取り外すことができる。
【0066】
空気は、少なくとも35mmHgの圧力でポンプ54から圧送される。パルス弁55は規則的に脈打つ(パルス状の)空気流を生じる。ロータリー弁56または三方弁72は、特定のチャンバ43〜48へ空気を送り、特定のチャンバ43〜48から空気を排出する。膨張/収縮シーケンス(順序)は以下のとおりである:
(1)チャンバ43は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ43の真下の静脈血がチャンバ44の真下を移動するように、膨張する。
【0067】
(2)チャンバ44は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ44の真下の静脈血がチャンバ45の真下を移動するように、膨張する。
【0068】
(3)チャンバ45は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ45の真下の静脈血がチャンバ46の真下を移動するように、膨張する。また、チャンバ43は、血液がチャンバ43の真下を流れることができるように、収縮する。
【0069】
(4)チャンバ46は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ46の真下の静脈血がチャンバ47の真下を移動するように、膨張する。また、チャンバ44は、血液がチャンバ44の真下を流れることができるように、収縮する。
【0070】
(5)チャンバ47は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ47の真下の静脈血がチャンバ48の真下を移動するように、膨張する。また、チャンバ45は、血液がチャンバ45の真下を流れることができるように、収縮する。
【0071】
(6)チャンバ48は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ48の真下の静脈血が手足までさらに移動するように、膨張する。また、チャンバ46は、血液がチャンバ46の真下を流れることができるように、収縮する。
【0072】
(7)チャンバ43は、再び静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ43の真下の静脈血がチャンバ44の真下を移動するように、膨張する。また、チャンバ47は、血液がチャンバ47の真下を流れることができるように、収縮する。
【0073】
(8)チャンバ44は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ44の真下の静脈血がチャンバ45の真下を移動するように、膨張する。また、チャンバ48は、血液がチャンバ48の真下を流れることができるように、収縮する。
【0074】
(9)チャンバ45は、静脈血がそのチャンバを通り過ぎて流れることができないようにおよびチャンバ45の真下の静脈血がチャンバ46の真下を移動するように、膨張する。また、チャンバ43は、血液がチャンバ43の真下を流れることができるように、収縮する。
【0075】
(10)ステップ(4)〜(9)を無期限に繰り返す。このようにして、血液が下肢を上方に向かって移動する。
【0076】
飛行機、列車、バスまたは自動車で旅行する人達、長時間の机に座っている人達、麻痺患者もしくは高齢者の如き下肢を使うことができない人達、または、はれた足首、拡張蛇行静脈または静脈内の一方通行弁の機能障害を含む下肢障害を有する人達によって、DVT予防のために装置40、70を用いることができる。
【0077】
スリーブ41は、スリーブ41の上方および下方もうっ血を減少させるために、ほとんど連続的にふくらはぎ筋肉から血液を絞りだし少量の血液を一方向に移動する。ある与えられた時点において多くとも二つのチャンバ43〜48しか膨張しないので、10秒間のうっ血しかなく、血液の充てんが膨張していないチャンバ43〜48のすべての下で生じうる。さらに、膨張したチャンバの真下の血液を撹拌し、さらにうっ血および潜在的な血栓の形成をさらに減少させるために、空気が、規則的に脈打つ状態で(パルス状に)、ポンプからチャンバ43〜48の中に送られる。血液の流れが常に一方方向であるため、一方向性の弁の損害および静脈怒張はほとんどない。
【0078】
スリーブ41の波の運動のように血液を連続的に上方に向けて押すため、装置40、70は、動作するに当たって、無償かつ健全な、一方方向の静脈弁に依存していない。装置40、70は、機能する一方向性の弁を欠いている人達においても、ほとんど同様に動作することができると考えられている。
【0079】
図5および図6には、本発明の他の実施形態に従う人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置80が示されている。装置80は、スリーブ81と、ハウジング82と、チェーンドライブ・レバー組立体83とを備えている。
【0080】
スリーブ81は、織物ケース84と、このケース内に延びる5つの止血器85とを有している。図5から分かるように、各止血器85は、ケース84の対応する流路86内に延びている。
【0081】
止血器85は手足のまわりに延びているコードである。各止血器85の一方の端部87は、ケース84の遠位端部88でケース84に固定されている。
【0082】
図面には示されていないが、保護シートは、ケース84と下肢の間に位置しており、衛生の目的のために、人による使用のあと取り除いて廃棄されうる。
【0083】
ハウジング82は、矩形状であり、チェーンドライブ・レバー組立体83を収容している。ケース84の近位端部89はハウジング82に固定されており、ケース84の遠位端部88はハウジング82に着脱可能に接続されている。
【0084】
組立体83は、各止血器85(そのうちの一部しかラベルが付されていない)の端部に接続されたレバー90を有している。平面視において、各レバー90はアーチ状となっている。各レバー90の一方の端部はピン91を用いてハウジング82に接続されており、また、各レバー90はハウジング82に対して回転可能となっている。各レバー90の他方の端部は止血器85に接続されている。各レバー90は止血器締め付け位置と止血器緩和位置との間を回転可能となっている。各止血器85はハウジング82の対応する孔(ラベルは付与されていない)を通って延びている。
【0085】
また、組立体83は、モータと、歯車ボックス92と、相互に間隔おいて並べられている1対のスプロケット93、94と、スプロケット93、94をまわって延びているチェーン95とを有している。チェーン95の選択リンクの横突出部96(そのうちの一部しか図6においてラベルが付与されていない)が、レバー90と係合し、レバー90を締め付け位置へ回転させる。横突出部96がレバー90から離脱すると、レバー90は緩和位置に戻る。ハウジング82の棚97は、各レバー90の回転ピン91に対して平行に延び、横突出部96により係合されたとき、チェーン95がよじれるのではなく、レバー90が回転することを担保するようになっている。
【0086】
使用においては、スリーブ81は、人の下肢のふくらはぎ筋肉のまわりに固定される。ハウジング82は、オンオフスイッチと、電気供給幹線への接続のために電気ソケット(図示せず)とを有している。モータ92にエネルギが与えられると、チェーン95が逆時計回りに回転する。各レバー90は、横突出部96を有しているチェーンリンクにより係合されると、回転し、止血器85を締め付ける。横突出部96は、止血器85が波の運動のように下肢の締め付け(圧縮)および緩和(減圧)を行うように、チェーン95に沿って間隔おいて並べられている。
【0087】
図7〜図9には、本発明の他の実施形態にかかる、人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置100が示されている。ここで図7を参照すると、装置100は、スリーブ101(スリーブ81と類似する)と、ハウジング(その基板102のみが示されている)と、歯車システム103とを備えている。ハウジングは、矩形状であり、歯車システム103を収容している。
【0088】
歯車システム103は、5つの噛み合う平歯車105〜109を有する歯車列104と、歯車列104を駆動するためのモータ110とを備えている。モータ110は、歯車105と噛み合う駆動歯車111を有している。各歯車105〜109の直径は同一である。各歯車105〜109は、基板102から延びるシャフト(ラベルは付けられなかった)を有しており、これらのシャフトは相互に平行に共通の面内に延設されている。突起112(図8に最も分かり易く示されている)は、各歯車105〜109の面から垂直に延びている。スペーサ113は、モータ110と基板102との間に延びている。モータ110は、12ボルトのバッテリ114(図9に示されている)により駆動される。
【0089】
図7から分かるように、スリーブ101は、織物ケース115と、このケース115内に延びている5つの止血器116〜120とを備えている。各止血器116〜120は、ケース115の対応する流路内で延びている。止血器116〜120は手足のまわりに延びるようになっている。各止血器116〜120は、突起112に固定される端部を有したコード121と、コード121から延びている可撓性ストリップ122とを備えている。各止血器116〜120の他方の端部は、ケース115の遠位端部(図示せず)でケース115に固定されている。ケース115の近位端部123は、基板102を含むハウジングに固定されており、ケース115の遠位端部(図示せず)はハウジングに着脱可能に接続されている。各コード121は、基板102のスロット124を通りガイドレール125をわたって延びている。1対のブラケット126が基板102から延び、スロット124に隣接するガイドレール125を保持している。
【0090】
シャフトに対する突起112の位置に応じて各歯車105〜109がそのシャフトを中心として回転するにつれて、止血器116〜120は締め付けられるか緩和されるようになっている。図10には、装置100の歯車および付随する止血器について規格化された力(F/Fmax)と時間(sec)とをプロットしたものが示されている。
【0091】
図9には、装置100の回路図が示されている。この図には、電源114と、オンオフスイッチ127と、モータ110と、トランジスタ128と、ダイオード129と、2つの抵抗器130と、ロータリースイッチ131とが示されている。通常使用時には、オンオフスイッチ127は閉じており、ロータリースイッチ131はオフ位置にあり、モータ110は歯車列104を回転させるようになっている。
【0092】
手足の中の血液を移動させるために装置100を用いる前に、まず各止血器116〜120を手足のまわりに適切に伸張しなければならない。この目的のために、装置100は、ロータリースイッチ131と、永久磁石132〜136と、リードスイッチ137〜141とを備えている。各歯車105〜109は永久磁石132〜136を有しており、回路は、マグネット132〜136により稼働されるリードスイッチ137〜141を有している。歯車105が回転してリードスイッチ137のすぐ近くにマグネット132を持って来ると、スイッチ137が閉じ、モータ110が電力を失う。同様に、歯車106が回転してマグネット133をリードスイッチ138のすぐ近くに持ってくると、スイッチ138が閉じ、モータ110が歯車列104の駆動を停止する。同一のことが、マグネット134とスイッチ139、マグネット135とスイッチ140、および、マグネット136とスイッチ141に対して生じる。
【0093】
各止血器116〜120の張りを調節するために、スリーブ101は、まず人の手足のまわりに伸張される。図9では、ロータリースイッチ131が「1」のマークの付いた位置まで回転され、マグネット132がリードスイッチ137を閉じるまで、モータ110により歯車105が回される。このとき、モータ110が電力を失い、止血器120により最大の張力が手足に加えられる。必要ならば、止血器120により加えられた張力は、手足のまわりのスリーブ101の締め付けを変更することにより調節される。このプロセスは、歯車106の場合に、「2」の位置までロータリースイッチ131を回転し、歯車107の場合に、「3」の位置までロータリースイッチ131を回転し、歯車108の場合に、「4」の位置までロータリースイッチ131を回転し、歯車109の場合に、「5」の位置までロータリースイッチ131を回転することによって次々と繰り返される。
【0094】
各止血器116〜120の張力を調節したあと、ロータリースイッチ131はオフ位置まで回転され、オンオフスイッチ127が閉じられ、歯車105〜109が回転し、止血器116〜120が波の運動のように手足の締め付け(圧縮)および緩和(減圧)を行う。
【0095】
図11には、本発明の他の実施形態にかかる、人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置150の一部が示されている。装置150は、6つの止血器151(そのうちの4つしか示されていない)と、各止血器151に設けられている歪みゲージセンサ152と、従動マイクロコントローラ153と、この従動マイクロコントローラ153を介して各センサ152に電気的に結合されている主動モジュール154とを備えている。
【0096】
各止血器151は、セラミックビード156を通したFlexinol(登録商標)筋肉ワイヤ155を有している。歪みゲージセンサ152はこのワイヤ155の一方の端部に接続されている。Velcro(登録商標)ストラップ157が、ワイヤ155の他方の端部と歪みゲージセンサ152との間に延設されている。ストラップ157は、二つの係合可能な半片を備えているため長さが調整可能となっている。
【0097】
使用するとき、止血器151は、これらのストラップ157を利用して人の手足のまわりに固定される。主動モジュール154は、静脈血が手足を通って心臓へ移動されるように、従動マイクロコントローラ153を介して各止血器151に順次に電流を印加するために用いられる。電流が止血器151を通って流れると、止血器151が縮んで、手足のまわりを締め付ける。流れのない状態では、止血器151が手足のまわりで緩和された状態になる。止血器151のピンと張った状態に関するフィードバックが従動マイクロコントローラ153へ送信される。
【0098】
図12〜図14には、人の下肢161を通る静脈血の流量を向上させるための他の装置160が示されている。装置160は、スリーブ162と、このスリーブ162に沿って互いの隣りに位置する5つの膨張可能チャンバ163〜167とを備えている。これらのチャンバ163〜167は、図12から分かるように、細長く、下肢161のまわりを延びるようになっている。
【0099】
スリーブ162は、チャンバ163〜167を取り囲むケース168を有している。また、スリーブ162は、チャンバ163〜167の圧縮力が下肢161に広範囲に及ぼされることを担保するための堅いゴムまたはプラスチックの裏当用スリーブ169をさらに備えている。裏当用スリーブ169は、下肢161のまわりのチャンバ163〜167に沿ってケース168内で延びている。裏当用スリーブ169は、幾分柔軟であるが、チャンバ163〜167の圧縮力が下肢161に広範囲に及ぼされることを担保している。
【0100】
装置160は、本明細書に記載される本発明のその他の実施形態のうちの一または複数に対して記載される追加の機構をさらに備えることができる。
【0101】
図15には、図1に示されている流体移送システム42のロータリー弁56の代わりに用いられうるロータリー弁170が示されている。このロータリー弁170は、プラスチックから作られる円筒状の第一の端部材171を有している。複数の円筒状の突起部172が、第一の端部材171の端部から延びている。ノズル173が、第一の端部材171の側面から延びている。突起部172が延びている第一の端部材171の同一の端部からノズル173を通って、流路174が延びている。
【0102】
雌ねじ176を有する中空の円筒状の心棒部材175が、第一の端部材171に対してかつそれと同心円状に固定されている。
【0103】
突起部172が延びている第一の端部材171の同一の端部には、テフロン(登録商標)から作られている円状の内側ガスケット177が着座している。内側ガスケット177は、第一の端部材171および心棒部材175と同心円状に設けられている。心棒部材175は内側ガスケット177を貫通しており、内側ガスケット177は複数の開口部を有しており、ガスケット177が第一の端部材171および心棒部材175に対して回転しないように、各開口部は対応する突起部172を受け入れるようになっている。
【0104】
突起部172が延びている第一の端部材171の同一の端部には、テフロン(登録商標)から作られている円状の外側ガスケット178が着座している。外側ガスケット178は、第一の端部材171および心棒部材175と同心円状に設けられている。外側ガスケット178は、複数の開口部を有しており、ガスケット178が第一の端部材171および心棒部材175に対して回転しないように、各開口部は対応する突起部172を受け入れるようになっている。
【0105】
内側ガスケット177および外側ガスケット178は、心棒部材175を取り囲むギャップ179により相互に分離されている。流路174に向かう開口部は、内側ガスケット177と外側ガスケット178との間に設けられている。
【0106】
真鍮から作られている円筒状の空気分配器180は、内側ガスケット177および外側ガスケット178の上に着座し、分配器180の同心円状の円形状の開口部181が心棒部材175を受け取るようになっている。複数の円周上に間隔をおいて設けられた歯182は、分配器180の外周のまわりに延びている。複数の円筒状の突起部183が分配器180の端部から延びている。さらに、偏心円状の開口部184が分配器180を貫通して延びている。分配器180内の開口部184は、開口部184がパス179の上方に位置するような位置に設けられている。
【0107】
第一の端部材171の端部と、ガスケット177、178に着座する分配器180の端部と、ギャップ179とで、心棒部材175を取り囲む流路が形成されている。空気が、ノズル173内の流路174から流入することができ、分配器180内の開口部184から流路の外へ流出することができる。
【0108】
突起部183が延びている分配器180の端部には、テフロン(登録商標)から作られるおおむね円形状のガスケット185が着座している。ガスケット185は、複数の開口部を有しており、各開口部は、ガスケット185が分配器180に対して回転しないように、対応する突起部183を受け入れるようになっている。また、ガスケット185は、円形状の開口部187と、円形状の開口部188とを備えており、これらの開口部は、それぞれ対応して分配器180の開口部181および開口部184の上に重なるようになっている。ガスケット185のアーチ状の開口部189は部分的に開口部187を取り囲んでいる。また、ガスケット185内の開口部190は、アーチ状の開口部189からガスケット185の外周まで延びている。
【0109】
ガスケット185の頂部には、円筒状の第二の端部材191の下端部が着座している。第二の端部材191は、ガスケット185の開口部187の上に重なる円形状の開口部192を備えている。第二の端部材191の下端部は、円周に沿って間隔をおいて並べられた5つの円筒状の凹部193を備えている。複数のノズル194〜198が、第二の端部材191の側面から放射状に延びている。各ノズル194〜198は、対応する流路199により対応する円筒状の凹部193に結合されているため、空気が凹部193からノズル194〜198に流入したあと、ノズル194〜198から第二の端部材191の外へ流出することができるようになっている。
【0110】
分配器180およびガスケット185は、心棒部材175を中心として、かつ、第一の端部材171、ガスケット177、178および第二の端部材191に対して回転することができる。
【0111】
開口部189、190と、ガスケット185に重なっている第二の端部材191の端部および分配器180の端部とにより、開口部187を部分的に取り囲み、弁170の中の空気を大気中に放出するための外側開口部を有している流路が形成される。ノズル194〜198から凹部193の中に流れ込む空気は、流路に流れ込み、分配器180が回転して凹部193が開口部189の上に重なったとき大気中に放出されることができる。
【0112】
第一の端部材171、分配器180、第二の端部材191、ガスケット177、178、185は、ボルト200により相互に固定されるようになっている。このボルトは、ワッシャ201を通して差し込まれ、雌ねじが切られた心棒部材175の中に螺合される。ボルト200は、ガスケット177、178、185、第一の端部材171、分配器180および第二の端部材191の間で気密状態のシールまたは実質的に気密状態のシールが形成されるように、締め付けられる。
【0113】
先に述べられたように、装置40のロータリー弁56をロータリー弁170と取り替えてもよい。弁170の各ノズル194〜198を、気密状態で、装置40の対応するホース59〜64に接続する必要があり、また、ノズル173を、気密状態で、ノズル173に接続する必要がある。分配器180およびガスケット185を第一の端部材171、ガスケット177、178および第二の端部材191に対して回転することができるように、分配器180は、装置40の駆動装置により駆動されるウォーム歯車または減速歯車の如き駆動歯車とかみ合うことが可能となっている。ノズル194〜198はホース59〜64に接続されており、装置40の使用時、装置40のチャンバ43〜48が順次膨張して手足を圧縮し、手足内の血液をスリーブ41の一方の端部から他方の端部に移動させるように、開口部189、190が構成されている。チャンバ43〜48が膨張して手足を圧縮することを始めると、順序において一つ前のチャンバ43〜48は既に膨張して既に手足を圧縮しており、順序において二つ前のチャンバ43〜48は縮小して手足を圧縮するのを終えている。
【0114】
図16には、図1に示されている流体移送システム42のロータリー弁56の代わりに使用されうる他のロータリー弁210が示されている。ロータリー弁210は、当該ロータリー弁210の分配器180が真鍮ではなくテフロン(登録商標)から作られているのでロータリー弁210がガスケット177、178、185を有していないという点以外は、ロータリー弁170と同一である。また、ロータリー弁210の第一の端部材171は突起部172を有していない。さらに、ロータリー弁210の分配器180は、ロータリー弁170のガスケット185の開口部189、190と同様に機能する凹部211、212を有している。さらに、ロータリー弁210の第1の端部材171は、ロータリー弁170のギャップ179と同様に機能する凹部213を有している。ロータリー弁210はロータリー弁170と同様に機能する。
【0115】
図17には、図1に示されている流体移送システム42のロータリー弁56の代わりに用いられうるロータリー弁220が示されている。ロータリー弁220は、当該ロータリー弁220のノズル194〜198がロータリー弁220の第二の端部材191の頂部から延びているという点以外、ロータリー弁210と同等である。また、第二の端部材191は、ロータリー弁220の分配器180および第一の端部材171の外周のまわりに延びる側壁221を有している。側壁221は、駆動歯車223にロータリー弁220の分配器180を駆動することを可能とする開口部222を有している。また、側壁221は、ロータリー弁220のノズル173が貫通して延びている小さな開口部224を有している。ロータリー弁220および駆動歯車223は、第二の基板部材226に固定されている第一の基板部材225に固定されている。また、ロータリー弁220も、ロータリー弁170と同様に機能する。
【0116】
図18には、図3に示され、装置70の6つの膨張式チャンバではなく5つの膨張式チャンバを有している装置70に類似する装置の5つの三方弁および空気ポンプモータ231を制御するためのコントローラ230が示されている。三方弁は、それぞれ対応して、弁の動作を制御するためのソレノイド232を有している。コントローラ230は、12VDCの安定化されていない電源から電力が供給される5VDCの電圧調整器233を有している。圧力センサ231が電圧調整器233の出力部に接続されている。圧力センサ231の出力部は、電圧調整器233に接続されている差動増幅器235の入力部に接続されている。差動増幅器235の出力部および電圧調整器233の出力部は、比較器236の入力部に接続されている。設定値基準回路237の出力部は比較器236の入力部に接続されている。比較器236の出力部および電圧調整器233の出力部は、マイクロコントローラ238の入力部に接続されている。水晶式時間基準回路239はマイクロコントローラ238の入力部に接続されている。マイクロコントローラ238の出力部は、ダーリントントランジスターアレイドライバ240の入力部に接続されている。直列に接続されたスイッチ241とダイオード242とは、ソレノイド232と並列に接続されている。ソレノイド232は12VDCの安定化されていない電源に接続されており、スイッチ241は12VDCのバッテリに接続されている。
【0117】
コントローラ230は、三方弁から変数および連続する空気圧出力を取得するようにソレノイド232を通じて三方弁を制御するように構成されており、これらが、コントローラ230が属する装置の膨張式チャンバの膨張を制御するようになっている。
【0118】
圧力センサ234は連続的に装置の膨張式チャンバの内部の圧力を検出する。設定値基準回路237を用いて、チャンバ圧力の基準設定値を0〜300mmHgから調節することができる。センサ234により出力されたチャンバ圧力信号および設定値基準回路237により出力された設定値信号は、電子ブリッジ装置(図示せず)において比較され、電子ブリッジ装置の出力はポンプモータ231を制御するために用いられる。
【0119】
また、コントローラ230は、マイクロコントローラ238の入力部に接続される、16の位置を備えたバイナリーロータリースイッチ(sixteen position binary rotary switch)243を有している。装置の1サイクル中に装置の各膨張式チャンバが膨張する期間につては、ロータリースイッチ243を回すことによって、16の異なる時間のうちから選択することが可能である。装置の単一サイクル中に第一の膨張式チャンバが膨張されたときから第五番目の膨張式チャンバが収縮されるときまでに経過する合計時間については、25秒から約75秒までの間で変えることができる。
【0120】
マイクロコントローラ238は、三方弁の動作のシーケンスおよびタイミング、ならびに、ポンプモータ231の動作を制御するようにプログラムされている。マイクロコントローラ238は、ダーリントントランジスターアレイドライバ240を通じて、モータ231およびソレノイド232を駆動するようになっている。
【0121】
図19には、装置の1サイクル中にソレノイド232に対してダーリントントランジスターアレイドライバ240によって出力される制御信号のタイミングが示されている。明らかなように、各ソレノイド232は、前のソレノイド232が5秒間オンの状態のあとオンにされ、各ソレノイド232は10秒間オンの状態に留まったままである。
【0122】
図20には、本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置250が示されている。装置250は、複数の止血器251を有している点において、図5および図6に示されている装置80および図7〜図10に示されている装置100と類似している。これらの複数の止血器251は、スリーブ252を通り延びており、ハウジング253内に収容されているとともに引っ張りケーブルにより当該止血器251に固定されている機構により順次締め付けおよび緩和することができるようになっている。スリーブ252の第一の端部255はハウジング253に固定されている。スリーブ252の第二の端部256は、ハウジング253内の開口部からハウジング253の中にスリーブ252を挿入し、スリーブ252がハウジング253内に設けられたロッドをまわって延びてくるように、同一の開口部からハウジング253の外へスリーブ252の第二の端部256を引き出し、次いで、ハウジング253から引き出されたスリーブ252の部分をスリーブ252の他の部分のスリーブ252に固定されたVelcro(登録商標)マジックテープを用いて固定することにより、ハウジング253に対して固定されるようになっている。ハウジング253から引き出されるスリーブ252の量を変えることにより、スリーブ252を締め付けおよび緩和することができる。
【0123】
図21を参照すると、装置250が人の下肢259のふくらはぎに固定されることが示されている。装置250は、ハウジング253が下肢259の脛骨上に位置するように、また、スリーブ252が下肢259のふくらはぎ筋肉のまわりに延設されるように、スリーブ252により下肢259にストラップで固定される。装置250がしっかりと適所に保持されるように、スリーブ252は下肢259のまわりに締め付けられる。
【0124】
図22には、本発明の他の実施形態にかかる、人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置260が示されている。装置260は、スリーブ261がハウジング262の背部を横切って延びるようにスリーブ261に固定されているハウジング262内に収容された空気ポンプおよび空気移送システムによって順次膨張および収縮されうる、スリーブ261内に設けられた複数の膨張式チャンバを備えているという点において、図1および図2に示されている装置40および図3に示されている装置70に類似している。スリーブ261の第一の端部263は細長いアイレット264に固定されている。スリーブ261の第二の端部265はアイレット264を通して差し込まれ、スリーブ261に固定されたVelcro(登録商標)マジックテープ266を用いてアイレット264を通して差し込まれていないスリーブ261の部分に固定されている。アイレット264を通して引き出されるスリーブ261の量を変えることにより、スリーブ261を締め付けおよび緩和することができる。
【0125】
図23を参照すると、装置260が人の下肢267のふくらはぎに固定されていることが示されている。装置260は、ハウジング262が下肢267の脛骨上に位置するように、また、スリーブ261が下肢267のふくらはぎ筋肉のまわりに延設されるように、スリーブ261により下肢267にストラップで固定されている。装置261がしっかりと適所に保持されるように、スリーブ261は下肢267のまわりに締め付けられる。
【0126】
図24には、本発明の他の実施形態にかかる、人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置270が示されている。装置270は、図22および図23に示されている装置260に類似しており、スリーブ271がハウジング272の背部を横切って延びるようにスリーブ271に固定されているハウジング272内に収容された空気ポンプおよび空気移送システムによって順次膨張および収縮されうる、スリーブ271内に設けられた複数の膨張式チャンバを備えている。スリーブ271の第一の端部273は細長いアイレット274に固定されている。スリーブ271の第二の端部275はアイレット274を通して差し込まれ、スリーブ271に固定されたVelcro(登録商標)マジックテープ(図示せず)を用いてアイレット274を通して差し込まれていないスリーブ271の部分に固定されている。装置270と装置260との間の1つの差は、装置270のアイレット274がハウジング272により近くに設けられているということである。装置270は、人の下肢276のふくらはぎに固定されていることが示されている。装置270は、装置260が下肢267にストラップにより固定されている方法と類似の方法で下肢276にストラップにより固定されている。
【0127】
図25には、本発明の他の実施形態にかかる、人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置280が示されている。装置280は、人の足部281にストラップにより固定されるように構成され、スリーブ282に対して固定されたハウジング283内のコントローラにより駆動される複数の止血器または膨張式チャンバを有するスリーブ282を備えている。止血器および膨張式チャンバは、足部281およびそれに繋がる下肢を通る静脈血の流量を向上すべく足部281を順次圧縮するように、上述の実施形態の止血器および膨張式チャンバと類似する方法で動作するようになっている。
【0128】
図26には、本発明の他の実施形態にかかる、人の手足を通る静脈血の流量を向上させるための装置290が示されている。装置290は、人の下肢292のふくらはぎのまわりにストラップにより固定される第一のスリーブ291と、人の足部294のまわりにストラップにより固定される第二のスリーブ293とを備えている。スリーブ291、293は、足部294および下肢292を順次圧縮するためにハウジング295内のコントローラにより駆動可能な止血器または膨張式チャンバの如き複数の圧縮機を有しているという点で、先に記載された実施形態のスリーブと類似している。第一のスリーブ291および第二のスリーブ293の圧縮器の動作は、足部が第二のスリーブ293内の圧縮器により圧縮されたあと、ふくらはぎが第一のスリーブ291内の圧縮器により圧縮されるように、コントローラによって調整される。装置290は、人が、病院のベッドに横になっているときのように人が動けない状況において使用するに特に適している。第二のスリーブ293は、足部294から第一のスリーブ291まで血液が流れることを補助し、第一のスリーブ291は、血液を、人の下肢292をさらに上方に向かってさらに移動させるように機能するようになっている。
【0129】
特に明記されない限り、明細書および請求項の全体において、用語「備える」またはその変形は、記載された要素または要素の群を含み、いかなる他の要素または要素の群を排除するものではないことを意味する。
【0130】
特に明記されない限り、明細書および請求項の全体において、用語「実質的に」または「約」は、これらの用語により修飾された範囲の値に限定されるものではないことを意味する。
【0131】
いうまでもなく、本発明の技術的思想および技術的範囲から逸脱することなく本明細書記載の発明に対して変形および変更を加えうることは当業者にとって明らかである。当業者にとって明らかな変形および変更は、本明細書に記載される発明の広い範囲内に含まれるものであると認められる。
【0132】
いうまでもなく、先行技術文献が本明細書において参照された場合、この参照は、その文献がオーストラリアまたは他の国における共通の技術常識の一部を構成することを認めたことを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置を示す図である。
【図2】図1に示された装置の一部を示す部分的に詳細な斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置を示す図である。
【図4】人の脚部のまわりに設置される図1または図2の装置の膨張式圧縮スリーブを詳細に示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置を詳細に示す図である。
【図6】図5に示されている装置を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置の一部を示す斜視図である。
【図8】図7に示されている装置の一部を示す平面図である。
【図9】図7に示されている装置のための回路図である。
【図10】装置の通常使用時において、図7の装置の歯車およびそれに接続された止血器についての規格化された力と時間とをプロットしたものである。
【図11】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置の一部を示す図である。
【図12】装置が人の脚部に取り付けられた状態に置かれている、本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置を示す図である。
【図13】図12に示されている装置の一部を示す部分詳細斜視図である。
【図14】図13に示されている装置を示す横断面図である。
【図15】本発明の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置のためのロータリー弁を示す部分分解図である。
【図16】本発明の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置のための他のロータリー弁を示す分解図である。
【図17】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置のための他のロータリー弁を示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置の一部を示す略式回路図である。
【図19】図18に示されている装置のソレノイドの動作を示すタイミング図である。
【図20】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置を示す図である。
【図21】人の脚部のまわりで載置された図20の装置の膨張式圧縮スリーブを詳細に示す図である。
【図22】本発明の他の実施形態にかかる人の手足を通して血液を流す装置を示す図である。
【図23】人の脚部のまわりに載置された図22の装置の膨張式圧縮スリーブを詳細に示す図である。
【図24】装置のスリーブが人の下肢のまわりに置かれる場合に、本発明の他の実施形態による人の手足を通して血液を移動させるための装置を示す。
【図25】本発明の他の実施形態による人の手足を通して血液を移動させるための装置を示す。
【図26】本発明の他の実施形態による人の手足を通して血液を移動させるための装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の手足を通る血流を向上させるための装置であって、
前記患者の手足のまわりに延設可能な圧縮スリーブであって、この圧縮スリーブに沿って相互に並んで設けられる複数の圧縮器を有している圧縮スリーブを備えており、
使用時には、前記複数の圧縮器は、前記スリーブの一方の端部から他方の端部まで前記手足内の血液を移動させるために順次手足を圧縮するように構成されており、
一つの前記圧縮器が前記手足を圧縮し始めるとき、順序からすると一つ前の圧縮器が既に前記手足を圧縮しており、順序からすると二つ前の圧縮器が前記手足を圧縮するのを終了してしまっているように構成されてなる、装置。
【請求項2】
前記スリーブは、前記圧縮器の圧縮力が前記手足の広範囲に及ぶことを担保させるための堅固な裏当用スリーブをさらに備えてなる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記裏当用スリーブが、前記圧縮器の外面に隣接してかつ前記手足のまわりに延びるように構成されてなる、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記裏当用スリーブが硬質材料から作られてなる、請求項2記載の装置。
【請求項5】
前記裏当用スリーブが可撓性材料から作られてなる、請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記スリーブが少なくとも前記圧縮器を取り囲むケースをさらに備えてなる、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記スリーブが前記ケースと前記手足との間に位置する保護層をさらに備えてなる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記保護層が前記ケースに着脱可能に接続されてなる、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記保護層がプラスチック製の裏当てを具備した吸収性シートからなる、請求項6記載の装置。
【請求項10】
前記圧縮器が膨張式チャンバである、請求項1記載の装置。
【請求項11】
チャンバが前記スリーブの各端部に隣接して設けられ、少なくとも1つのチャンバが前記スリーブの各端部に隣接して設けられた前記チャンバの間に設けられており前記スリーブの各端部に隣接して設けられた前記チャンバがその他のチャンバよりも幅が狭く、容積がより小さい、請求項10記載の装置。
【請求項12】
各チャンバが、前記チャンバを膨らまし過ぎないようにするための圧力逃がし弁を有してなる、請求項10記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、各チャンバに流体を移送するための流体移送システムをさらに備えてなる、請求項10記載の装置。
【請求項14】
どの圧力に至るまで前記チャンバが前記流体移送システムにより膨張されるかが調節されうる、請求項13記載の装置。
【請求項15】
各チャンバが前記流体移送システムにより膨張される期間が調節されうる、請求項13記載の装置。
【請求項16】
前記チャンバが前記流体移送システムにより規則的に脈打つよう膨張するように構成されてなる、請求項13記載の装置。
【請求項17】
前記流体移送システムが、ポンプと、該ポンプと前記チャンバとの間に延びているマニホルドとを有してなる、請求項13記載の装置。
【請求項18】
前記ポンプが脈動型ポンプである、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記流体移送システムが、各チャンバを順次膨張および収縮させるための弁組立体を有してなる、請求項13記載の装置。
【請求項20】
前記弁組立体がロータリー弁を有してなる、請求項19記載の装置。
【請求項21】
前記弁組立体が前記チャンバを膨張および収縮するための複数の三方弁を有してなる、請求項19記載の装置。
【請求項22】
前記ポンプが前記スリーブに取り付けられてなる、請求項17記載の装置。
【請求項23】
前記圧縮器が止血器である、請求項1記載の装置。
【請求項24】
前記装置が、前記止血器を締め付けおよび緩和するためのチェーンドライブ・レバー組立体をさらに備えてなる、請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記チェーンドライブ・レバー組立体が、一対のスプロケットと、該スプロケットのまわりを延びるチェーンと、前記スプロケットのまわりを延びるチェーンを駆動するためのモータとを有してなる、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記チェーンが複数のリンクを有しており、前記チェーンの選択リンクが、止血器締め付け位置へ移動し該止血器締め付け位置に前記レバーを保持するための横方向延長部を有してなる、請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記装置が、前記止血器を締め付けおよび緩和するための歯車システムを備えてなる、請求項23記載の装置。
【請求項28】
前記歯車システムが歯車列を有しており、該歯車列の各歯車がそれに対応する止血器の一方の端部に別々に接続されており、各止血器の他方の端部がケースに固定されており、各歯車が止血器締め付け位置と止血器緩和位置との間を回転させられうる、請求項27記載の装置。
【請求項29】
前記止血器は、それに電流を流すと前記手足を締め付けおよび圧縮するように構成されている電気導体である、請求項23記載の装置。
【請求項30】
前記止血器が、セラミックのビードを通したワイヤを有してなる、請求項29記載の装置。
【請求項31】
前記装置が、前記止血器内の電流を調整するために、主動制御モジュールと、従動マイクロコントローラとをさらに備えてなる、請求項29記載の装置。
【請求項32】
前記装置が、前記止血器のピンと張った状態を検出し、前記マイクロコントローラにフィードバックを供給するためのセンサを備えてなる、請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記センサが歪みゲージセンサである、請求項32記載の装置。
【請求項34】
圧縮スリーブを備えた装置を用いて患者の手足を通る血流を向上させるための方法であって、
(1)前記圧縮スリーブに沿って相互に並んで設けられる複数の圧縮器を有した前記圧縮スリーブを前記患者の手足のまわりに延設するステップと、
(2)前記スリーブの一方の端部から他方の端部まで前記手足内の血液を移動するように前記圧縮器に前記手足を順次圧縮させるステップとを有しており、
一つの前記圧縮器が前記手足を圧縮し始めるとき、順序からすると一つ前の圧縮器が既に前記手足を圧縮しており、順序からすると二つ前の圧縮器が前記手足を圧縮するのを終了してしまっている、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2009−508597(P2009−508597A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531483(P2008−531483)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001156
【国際公開番号】WO2007/033401
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(508087583)バスキュラー エンハンスメント テクノロジー プロプライエタリー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】