説明

混合された合金フィラーを含む伝導性組成物

【課題】
【解決手段】 本発明は電気的および熱的に伝導性の組成物であって、電気的要素の間に相互接続を成形するための組成物を提供する。本発明の組成物は、3またはそれ以上の金属または金属合金の粒子、および特定の用途においてはフラックスを含む、有機バインダーを含む。第1の粒子のタイプは、他の粒子内の反応性の低融点金属と反応して金属間化合物を形成する反応性の高融点金属を含む。低融点金属は2つの異なる粒子形態で提供される。最初の反応性の低融点金属粒子は、反応性の高融点金属との反応を容易にするキャリアを含む。第2の反応性の低融点金属粒子は反応性の低融点金属粒子のソースとして作用する。3種のタイプの粒子の組み合わせは、キャリア金属の望ましくない特性を低減し、金属反応の有益な製造を保持し、いくつかの実施態様では向上することをはじめとしていくつかの利点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国特許法第119条の規定に基づき、2009年4月2日に出願した米国仮出願第61/166,015の優先権の利益を請求する。その全体の開示は本明細書中に参考として援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は金属組成物、その調製方法および用途に関する。より詳細には、本発明は混合された合金フィラーを利用する伝導性金属組成物に関する。
発明の背景
【0003】
ここ数10年間にわたって、エレクトロニクス産業は絶えずより小さい形態における、より高い性能と機能性に向かって進んできた。生産レベルでは、これらの原動力は、より効率的な回路ルーティング、パッケージ層の削除、高性能の設計材料を支持する、より小さい回路、デザイン、および製法になった。これらの傾向によって悪化させられた問題は、異種材料の近い場所での並置により生まれた熱力学的応力の管理および温度管理を含む。
【0004】
プリント板と半導体実装のデザインが、密度における改良を容易にするためにどう変化したかの1つの例は、回路の層がどう相互接続されるかということである。速度および性能に関して回路ルーティングを最適化するために、スルーホールの垂直な相互接続構造から、層から層へ直接の相互接続構造に移行することが必要である。理想的には、回路部品の層を相互接続する伝導性ビア(via)は、それらが相互接続するサーキットトレースについてサイズにおいて等しく、頑丈で信頼できる伝導を提供し、非常に小さい接続サーキットを必要とし、回路基板または実装デザインのどこでもスタックされるかまたは他の方法で自由に配置できる。
【0005】
固体金属ビアにメッキし、そのような層−層相互接続を形成することは大きな費用がかかり、メッキ溶液の内包化が重要な問題である。一般的な解決策は、妥当な厚さにビアホールのトポグラフィーをメッキすることである。この戦略はビアの縁に力学的応力ポイントを作成する。ここでは、メッキが下地のパッドに接続する。また、ビアのセンターで作成された窪みは、欠陥の潜在的なソースである。1つの解決策は、伝導性化合物でビアホールを満たすことであるが、従来技術でのビア中詰めの材料は銅パッドとの電気的に確固としたインタフェースを形成しない。
【0006】
電子装置の小型化に加えて、装置またはそれの要素を直接他の物と統合する傾向が現れている。これらのタイプの装置の実現には、真に立体の構造と製法を必要とするだろう。革新的な相互接続戦略が、積み重ねられた半導体のI/Oのさまざまな相互接続、ワイヤレス機器のために組み込まれたアンテナ構造物の作成、ソーラーパネルのコレクショングリッド(colletion grid)作成に必用とされるであろう。
【0007】
エレクトロニクス産業におけるさらなるトレンドは、揮発有機化合物および鉛を含む、環境障害と毒物の減少と除去である。この元素が過去に手広く使用されたとき、特に鉛の除去は、電子装置の製造を複雑にした。高すず合金はスズ−鉛の代替え品として現れた。しかし、これらの高すず合金の溶融温度は従来のスズ−鉛合金より概略30℃高く、要素アセンブリ工程温度の等しい増加をもたらす。より高い工程温度は、ますますきめ細かにされた電気相互接続のときの熱力学的応力を高める。
【0008】
半導体実装とプリント基板製造が合流するとき、新しい構造と処理条件の厳しさに耐えることができる、材料の創造にかなりの技術的努力がささげられた。例えば、細かい回路を製造するのに使用される銅箔のミクロ構造は手広く制御される。別の例は、流動特性の制御、ガラス転移温度、熱膨張率、およびの高品質の孔形成のために大規模な商品開発を受けた、回路基板を作成するのに使用される複合材積層物であるだろう。また、表面処理化学とプライマーコーティングは、手広くキャラクタライズされて、最適化された。バリア金属と表面仕上は厳しい許容度に適用される。そしてドーパントが、はんだ接続の機械的特性を改良して、スズウイスカなどの望ましくないミクロ構造が形成されるのを防ぐために、はんだ材料に加えられる。
【0009】
相互接続挑戦のための工業的要求の多くを満たすことができる有望な新しい材料のタイプは、液相焼結(TLPS)材料である。その材料はさまざまな構成をサポートするために適用できる信頼性のある多能な導電性物質として導入された。主として鉛ベースの市販合金は、これらの組成物を作成するためにフラックスバインダー中で銅粒子と混合された。
【0010】
この組成物は従来の鉛すずはんだと同様に加工することができ、はんだに濡れ可能な表面に頑丈な冶金学的な結合を形成するが、はんだと異なり、組成物ははんだと異なって、加工の間に金属「熱硬化物(thermoset)」を作成した。このペースト材料は回路基板上または基板内に使用でき、または工程はんだ付けが通常必要であった操作にペースト材料を使用でき、また処理された組成物が元の工程温度で再溶融しないので、この「熱硬化性」の特性は有利であった。
【0011】
これらの初期のTLPS材料は自己イナート化フラックスを有する簡単な「熱硬化性のはんだ」として設計された。これらの初期のTLPS材料への要求は、電気的に非常に伝導性の相互接続を形成するために冶金学的に反応し、次の熱加工で固体であって、自己不活性なままであり、適度なはんだ付け可能な表面を与えるということであった。形成された金属ネットワークと周囲の有機マトリックスのミクロ構造は、電気伝導率または接着などの特性が改良されるという範囲だけに最適化された。相互接続のサイズは比較的大きく、そして、処理されたTLPS材料は220℃を超えて次の熱サイクルにほとんどかけられなかった。
【0012】
初期のTLPS材料は構成成分として鉛の利用可能性の利益を得ていた。鉛ベースのはんだは低工程温度、銅の素晴らしい濡れ、かなり良い電気および熱伝導率、および延性を示し、主として鉛であり、硬化している組成物内の銅スズ合金でおおわれた銅粒子の間に橋かけがあった。重要な構成金属としての鉛の除去は、技術の可能性を実現するのに提示された顕著な挑戦である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の測定と利益にもかかわらず、安価で、頑丈で、低工程温度、電子装置の中のいくつかの重要な結合点において信頼できる電気的および熱的な相互接続を提供するための組成物およびその製造方法への必要性が依然として存在する。本願はそのような組成物と装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明は300℃以下の温度で加工できる冶金学的な組成物であって、冶金学的な成分選択が特異的である、金属間化合物(intermetallic)製品およびそれらの相互接続ネットワークも同様に特異的な組成物に関する。組成物は、熱力学的応力に高度耐性を持ち、熱的に安定したバルクと、インターフェイスの電気的および熱的抵抗を有する。組成物は、任意に鉛を含まず、さらに、接着体と周囲物質の用途特異的材料である有機化合物を含むことができる。
【0015】
本発明の組成物の金属成分は有機化学反応と類似するものとして考えることができる反応を受ける。金属試薬の導入方法、金属試薬の割合、および非常に少量でも他の金属種の存在は、反応の生成物にかなりの影響力を持っている。本発明の反応により形成された金属生成物組成物は、合金(固溶体)と金属間化合物(元素の特定の割合を有する結晶構造)の両方を含む。有機化学において試薬がしばしば基(例えば、ハロゲン元素またはパラ−トルエンスルホナートなどの解離基)を容易に形成するために導入されるように、希望の最終生産物の形成を容易にする金属成分を、本発明組成物中の金属試薬のいくつかとともに導入する。有機反応に類似して、いくつかの本発明の組成物では触媒効果を金属反応に引き起こす金属成分を使う。
【0016】
明確さのために、本発明の組成物において、反応して金属間化合物種を形成する金属元素は、「反応性HMP金属」および「反応性LMP金属」と命名される。本発明を実施する際には、比較的低融点(<400℃)の反応性金属元素が、比較的高融点(≧400℃)の反応性金属元素と反応する。反応はキャリヤーと呼ばれる1以上の容易化金属元素により容易にされる。それぞれの金属元素は微粒子形態で組成物中に存在している。粒子は、実質的に1つの金属元素であってもよいし、または二以上の金属元素の合金の粒子群であることができる。
【0017】
本発明のいくつかの実施態様では、第一の反応性LMP金属は、組成物において、2つの容易に差別化される粒子の組の中に存在している。
【0018】
より詳しく述べると、いくつかの実施態様では、本発明は粒子の混合物を含む組成物を提供し、該組成物は約30質量%から約70質量%の、少なくとも1つの高融点金属を含む第1の金属粒子;
約10質量%から約60質量%の、反応性の低融点金属とキャリア金属との合金を含む第2の金属粒子、ここで該反応性の低融点金属は、高融点金属と反応して金属間化合物を形成することができる;
約25質量%から約75質量%の、少なくとも40質量%の反応性の低融点金属を含む第3の金属粒子;および
有機バインダ、を含む。
いくつかの態様では、反応性の低融点金属は、第2の金属粒子の約35質量%と約50質量%の間を構成し、たとえば第2の金属粒子の約40質量%であることができる。いくつかの態様で、反応性LMP金属は第3の金属粒子の少なくとも90質量%を構成する。
【0019】
高融点金属は、Cu、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Be、Rh、Ni、Co、Fe、Moおよびそれらの組み合わせから成る群から選択できる。より詳細には、Cu、Ag、Al、Au、Ni、およびそれらの組み合わせから成る群から選択され、特にはCu、Agおよびそれらの混合物、たとえばCuまたはAgから選択される。最初の金属粒子は、元素の混合物、または合金である場合があり、または実質的に1つの元素から構成されることができる。
【0020】
低融点金属は、Sn、Bi、Zn、Ga、In、Te、Hg、Tl、Sb、Se、Po、およびそれらの組み合わせから成る群から選択できる。より詳細には、Sn、Bi、Ga、In、およびそれの組み合わせから成る群から選択でき、たとえばSnであることができる。本発明のある実施態様では、高融点金属はCuまたはAgであり、反応性金属がSnである。
【0021】
キャリヤー金属は、Bi、In、Pb、Ag、Cu、Sb、Au、Niまたはそれの組み合わせである場合がある。
ある態様では、反応性金属はSnであり、キャリヤー金属はBiである。
【0022】
第2の金属粒子は、Bi/Sn、In/Sn、Pb/Sn、Sn/Pb/Bi、Sn/Ag、Sn/Cu、Sn/Ag/Cu、Sn/Ag/Cu/Sb、Bi/In/Sn、Sn/In/Ag、Sn/Sb、Au/Snおよびそれらの組み合わせからなる群から選ばれた合金の少なくとも1つを含むことができる。
【0023】
第3の金属粒子は、反応性の低融点金属の合金を含むことができるか、または元素状の反応性の低融点金属から本質的に成ることができる。ある態様では、第3の金属粒子は少なくとも90質量%の反応性の低融点金属を含む。
【0024】
本発明のある態様では、低融点(LMP)金属はSnでありて、高融点(HMP)金属はCuである。そして、第1の金属粒子中のCuのすべてをCu/Sn金属間化合物に変換するには不十分なSnが第2の金属粒子の中に存在する。更なる実施態様には、第1の金属粒子中のCuのすべてをCu/Sn金属間化合物に変換するに十分なSnが、第2の金属粒子と第3の金属粒子の合計の中に存在する。
【0025】
更なる実施態様では、高融点金属は温度T1で反応性の低融点金属と金属間化合物を形成する。温度T1は約80℃から300℃の間であり、金属間化合物はT1よりも10℃以上高い最低溶融温度を有する。金属間化合物はさらに結合されて相互接続ネットワークを形成することができる。
【0026】
本発明のいくつかの態様では、第2の金属粒子は温度T1(すなわち約80℃から約300℃、または約100℃から約230℃、たとえば190℃から210℃)で溶融し、第3の金属粒子はそうではない。
【0027】
粒子はガラス、セラミックまたは高分子コアのような非金属のコアの上に金属コーティングをしたものを含むことができる。他の実施態様では、約20μmであることができる、あるサイズより上の粒子を取り除くために1種以上の粒子を篩分けすることができる。
【0028】
本発明はまた、約80℃から約300℃の間の温度で熱処理することによる、前述の組成物から形成された金属間化合物を提供する。
【0029】
さらに本発明は、あらかじめ決定された比率で第1の金属粒子、第2の金属粒子、第3の金属粒子、および有機バインダを混合することにより成分の混合物を形成し、該有機バインダが混合物中に粒子を保持し、典型的にはフラックスを含む組成物の製造方法を提供する。また、有機バインダは樹脂、ポリマー、反応性モノマー、揮発性溶剤、および他のフィラーを含むことができる。
【0030】
また、本発明は少なくとも2つの部品のアセンブリに本明細書に記載された粒子混合物組成物の所定量を適用することにより電気的および熱的に伝導性である相互接続を形成する方法を提供する。ここで少なくとも2つの部品は電気的および熱的に結合され、温度T1に加熱される。温度T1は約80℃と約300℃の間(例えば、約100℃と約200℃の間)であって、組成物中の高融点金属と低融点金属は、反応して、電気的および熱的に伝導性である金属間化合物を形成する。いくつかの態様では、金属間化合物種は、加工温度T1より少なくとも10℃高い溶融温度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、190℃での標準的でない合金TLPS組成物の処理を示す、示差走査熱量計(DSC)の図である。
【0032】
【図2】図2は処理された、標準的でない合金TLPS組成物のDSC分析を示す。
【0033】
【図3】図3は、図1の組成物と等価の、混合された元素状合金の190℃の処理を示すDSCダイヤグラムである。
【0034】
【図4】図4は図3で処理されたTLPS組成物のDSC分析を示す。
【0035】
【図5】図5は、190℃における、銅とともに、SnInとSnBi合金の両方を含むTLPS組成物の処理を示すDSCダイヤグラムである。
【0036】
【図6】図6は図5の処理されたTLPS組成物のDSC分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
上述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも例示かつ説明のためであり、特許請求される本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。本明細書において使用される時、特記の無い限り、単数形の表記は複数形も含む。
【0038】
本明細書において使用される時、“または”は特記の無い限り「および/または」を意味する。さらに、「含む」、「包含する」などの用語の使用は、「含む」ものとして理解されて、制限的に使用されない。本明細書に使用されたセクションの見出しは、構成的な目的だけのためにあって、説明した内容を限定するものと解釈されない。
【0039】
本明細書では、「1〜20」などの数字の整数値の範囲は、特定の範囲内のそれぞれの整数を含む。例えば、「1〜20パーセント」は、割合が1%、2%、3%から20%である場合があることなどを意味する。本明細書に記載された範囲内が、たとえば「1.2%から10.5%」のように小数点を含む場合、その範囲は特定の範囲内で示した中で最も小さい増分のそれぞれの少数値について言及する。例えば、「1.2%から10.5%」の場合には、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、であることができ、10.5%を含む。また「1.20%から10.50%」は、1.20%、1.21%、1.22%、1.23%であることができ、10.50%を含む。
【0040】
用語、定義、および略語
“約”という本明細書に使用される用語は、“約”が付された数が、示された数字のプラスマイナス1−10%を含むことを意味する。たとえば「約」100℃は、状況に応じて、95−105℃、または99−101℃を意味する。
【0041】
「合金」という用語は、二個以上の金属を含む混合物をいい、任意に追加の非金属を含むことができる。ここで合金中の元素は互いに融合するか、または溶融した時に互いに溶解しあう。
【0042】
本明細書に使用される「フラックス」は、物質、しばしば酸または塩基であり、特に金属の融合を促進し、特には金属酸化物を除去し、その形成を防止する。
【0043】
本明細書に使用される用語「溶融温度」または「融点」は、固体が大気圧で液体になる温度(点)をいう。
【0044】
本明細書に使用される「高い溶融温度の金属」、「高融点金属」または「HMP金属」という用語は、約400℃に等しいかまたはより高い溶融温度を持っている金属を示す。
【0045】
本明細書に使用される「低い溶融温度の金属」、「低融点金属」または「LMP金属」という用語は、約400℃より低い溶融温度を持っている金属を示す。
【0046】
「共晶(eutectic)」という用語は、構成要素が融点ができるだけ低くなる割合で存在し、構成成分が同時に溶融する混合物または合金をいう。従って、共晶合金または混合物がただ一つの温度で固形化する。
【0047】
「非共晶」という用語は共晶の特性を持っていない混合物または合金をいう。従って非共晶合金が固まるとき、構成要素は異なった温度で固まり、融解範囲を示す。
【0048】
「示差走査熱量計」(「DSC」)という用語は、サンプルと参照の温度を増加させるのに必要であるカロリーの相違を温度の関数として測定する熱分析の方法を示す。
【0049】
「焼結」という用語は、金属粉末粒子の隣接している表面が加熱で接着されるプロセスを示す。「液相焼結」は固体粉末粒子が液体相と共存する焼結の形式を示す。金属がお互いの内部に拡散して、新して合金および/または金属間化合物を形成するので、混合物の高密度化と均質化が起こる。
【0050】
粉末に関する「一時的な液相焼結」または「TLPS」という用語は、金属の均質化の結果、液体が短期間の間にのみ存在し、固体合金および/または金属間化合物の混合物を形成するプロセスをいう。液相は、周囲の固相に対する非常に高い溶解牲がある。その結果、急速に固体内に拡散して、最終的には固まる。混合物を平衡融解温度より上まで加熱しなくとも、拡散均質化は最終組成物を作成する。
【0051】
「処理温度」または「T1」は、反応性金属とHMP金属(両者とも以下に詳細に説明され、議論される)が金属間化合物を形成する温度をいう。
【0052】
それには、用語「金属間化合物」または「金属間化合物種」は、ある比率で2以上の金属元素で構成される固体物質であり、その構成金属とは明確に異なるな構造を有するものをいう。
【0053】
「バルク抵抗率」という用語は、「バルク」の材料の固有の電気抵抗について言及する。すなわち、形またはサイズにかかわない。
【0054】
粉末冶金を含むTLPS組成物では、二以上の比較的低い融点(LMP)合金と比較的高い融点(HMP)金属が微粒子形態で混合される。それぞれの合金の中の少なくとも1の元素は、HMP金属と反応する。いくつかの実施態様では、反応性LMP金属合金は一般的に1つの反応性LMPを共有する。温度が処理温度T1に上げられるのに従って、合金粒子タイプの一以上が溶融状態になる。吸熱事象として示差走査熱量計(DSC)でこの転移を観測できる。比較的LMPな合金内の反応性要素は、受容的なHMP金属と反応して金属間化合物を形成する。残りのLMP合金成分は新しい合金組成物を形成する。DSCにより、発熱事象として金属間化合物種の形成を観測できる。したがって、典型的なTLPS DSC「シグネチャー(signature)」は、吸熱とその後の発熱である。LMP合金と受容的なHMP金属からの反応性元素の拡散と反応は、どちらかの反応剤が完全に減耗され、処理温度における溶融相がもうなくなるか、または反応系が混合物の冷却により冷却されるまで続く。冷却後、次の温度サイクルでは、元の融解温度を超えても、混合物のオリジナルの溶融シグネチャーを再生しない。これは典型的な低温後処理過渡的液相焼結合金混合物の「シグネチャー」である。
【0055】
しかしながら、上に示唆されるように、TLPSはLMP金属とHMP金属の割合によって制限される。その1つは金属間化合物種への処理の間に、消耗される。LMP金属が過剰であるとき、従来技術では単一のLMP合金TLPS組成物では、残った望ましくない特性を有するキャリア金属(たとえばBi)は、被処理混合物の中に大多量に存在した。逆にHMP金属が過剰の場合には、合金中のLMP金属がいったん枯渇すると、HMP金属とLMP金属の間で追加の金属間化合物を形成する能力も消耗する。
【0056】
本発明はTLPS混合物に第三成分を加えると、TLPSの間に金属間化合物に変換されるHMPとLMP金属の両方の量が改良されるという観測に基づいている。この第三成分はLMP金属の元素状、または非常に富化された形態を含む。したがって、第三成分は、高率のLMP金属を含む。特定の理論に縛られることは希望しないが、LMP合金中のLMP金属がHMP金属と不可逆的に反応するので、元素状形態のLMP金属がLMP金属合金中にLMP金属を補給すると信じられている。選択された処理温度がLMP富化粒子の溶融温度以下であるときさえ、予想外にも、この補給は起こる。このようにして、同時に残留するLMP合金とアロイ化キャリヤー金属の望ましくない特性を減少させつつ、HMP金属またはLMP金属合金のどちらかの固定された量から、より多くの金属間化合物を形成させることができる。
【0057】
本発明の組成物
本発明は有機バインダ中に以下の3つのタイプの金属粒子を含む組成物を提供する:
高融点金属粒子、低融点金属合金粒子、たとえば低融点金属の元素状または富化された形態の、低融点金属を高率で含む粒子。ある実施態様では、組成物は以下の成分を含む:
(A)少なくとも1つのHMP金属(すなわち、高融点金属微粒子またはHMP金属微粒子)を含む第1の金属粒子の約30質量%から約70質量%;
(B)反応性LMP金属合金(すなわち、低融点金属合金粒子またはLMP金属合金粒子)を含む第2の金属粒子の約10質量%から約60質量%;および
(C)LMP金属(すなわち、低融点金属が富化されるか、または低融点金属の実質的に純粋な元素状の形態を含むことができる低融点の金属富化粒子またはLMP金属富化粒子)の少なくとも40質量%を含む第3の金属粒子成分の約25質量%から約75質量%。
【0058】
また、本発明の組成物に存在しているのは、以下でさらに詳細に説明するようなフラックスとして、および混合物として粒子群を一緒に保持するのに役立つ有機バインダである。
【0059】
最初の金属粒子(上の成分(A))は少なくとも1つのHMP金属を含む。それは、約400℃以上の融点を通常有する。いくつかの実施態様では、HMP金属を含む金属粒子は、実質的に1つの元素である。本明細書において使用される時、「実質的に」とは、実質的に含むと記述されている種または元素が、少なくとも約95%、通常少なくとも約98%、しばしば少なくとも約99%、最も頻繁には少なくとも約99%含むことをいう。したがって、1つの元素で実質的に作られるHMP金属は、最大5%の不純物を含むことができる。
【0060】
HMP金属は組成物の総金属成分の約30質量%と約70質量%の間を構成する。使用できる典型的なHMP金属としては、Ag、Pd、AuまたはPtなどの貴金属とCuがあげられる。Cuは、比較的安価であって、豊富であり、電子回路要素に通常使用される金属と互換性があって、1,000℃を超える溶融温度を持って、延性があって、さまざまな粉体形状で容易に利用可能であり、優れた電気的および熱の導体である。
【0061】
また、Agは本発明の組成物におけるHMP金属として具体的に想定され、特には銅粒子が次の製造プロセスで傷つきやすい用途(例えば銅エッチング)、または貴金属の使用が正味の金属充填をかなり増加させて、その結果フラックスの必要性を減少させる場合に想定される。
【0062】
いくつかの用途においては、Al、Pd、Be、Rh、Ni、Co、Fe、Moは、本発明におけるHMP金属としての代替の選択として選定されることができる。これらの金属のそれぞれ、またはそれらの二つ以上を、Cu、Au、Pt、Ag、またはそれらの任意の組み合わせの代わりに、または追加的に使用できる(すなわち、許容できるHMP金属として上に記載した金属の代用品または補充として使用できる)。
【0063】
成分(B)(第2の金属粒子)は、少なくとも1つのキャリヤー金属と合金化された、反応性LMP金属を含む。LMP金属合金は低融解温度金属成分(すなわち、成分(B)と(C))の少なくとも10質量%を構成する。温度T1(以下で議論する)では、LMP金属合金は溶融状態である。
【0064】
成分(C)(LMP金属富化粒子)は反応性LMP金属を質量で少なくとも40%で含み、LMP金属の合金または元素状の形態であることができる。ある実施態様では、LMP金属富化粒子の少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上、たとえば96%、97%、98、99%または100%がLMP金属である。LMP金属がスズである場合には、LMP金属富化粒子は90−100%のSnを含むことができ、残部はたとえばBi、In、Pb、Au、Niまたはそれらの組み合わせなどのようなキャリヤー金属である。
【0065】
典型的には、成分(B)および(C)のLMP金属は同じ金属である。しかしながら、約400℃未満の溶融温度を有する金属の組み合わせも、本発明における使用のために想定される。さらに、成分(B)のLMP金属は、成分(C)のLMP金属と同じであってもよくて、しばしば同じであるが、必ずしも同じでなければならないというわけではない。LMP金属が成分(B)および(C)において異なっている場合、LMP金属は、成分(A)のHMP金属とそれぞれ独自に金属間化合物を形成し、成分(B)のLMP合金類中で適当に交換可能であるべきである。
【0066】
いくつかの実施態様では、第2の金属粒子(成分(B))は共晶であり、LMP金属富化粒子(成分(C))は非共晶である。組成物はさらに金属添加物を含むことができる。これは当業者により選択されることができ、過渡的液相焼結反応の生成物が、意図している用途のための特性の最適組合せが得られるようにされる。考慮される特性としては、典型的には熱安定性、延性、高い電気的および熱的伝導性、周囲の材料と同様な熱膨張係数があげられる。
【0067】
Snは成分(B)の合金中の反応性LMP金属として使用することのできる金属の一例である。Snはもちろん成分(C)の金属粒子中に存在することができ、LMP金属富化粒子が「スズ富化」合金であるとすることができる。
【0068】
本発明の粒子群に使用できる他の反応性LMP金属の非限定的な例は、Bi、Zn、Ga、In、Te、Hg、Tl、Sb、Se、Poおよびそれらの組み合わせを含む。また、別の金属または合金を使用できるが、上記の成分(A)の金属、すなわち少なくとも1つのHMP金属と反応する構成要素を含むことが要件である。
【0069】
成分(B)の合金粒子の中で使用できるキャリヤー金属(LMP金属合金)の非限定的な例としては、Bi、In、Pb、Ag、Cu、Sb、Auおよびそれらの組み合わせを含む。従って、前記の任意の反応性金属、および任意のキャリア金属からも第2の金属粒子を形成でき、そして反応性金属とキャリヤー金属のどちらも以下の例示された合金ファミリーの一以上の微粒子として組み込まれることができる:Sn/Bi、In/Sn、Pb/Sn、Sn/Pb/Bi、Sn/Ag、Sn/Cu、Sn/Ag/Cu、Sn/Ag/Cu/Sb、Bi/In/Sn、Sn/In/Ag、Sn/Sb、Au/Sn、およびそれの組み合わせ。いくつかの実施態様では、LMP金属合金はSn/Bi合金である。
【0070】
第2の金属粒子の中の反応性金属およびキャリヤー金属の間の比率は変化することができる。例えば、成分(B)の第2の金属粒子は反応性LMP金属を約35質量%から約65質量%の間、たとえば約40質量%または約42質量%で含むことができ、残部はキャリヤー金属であることができる。上記の1つの例示実施態様では、LMP金属合金がSn/Bi合金であり、それは約42質量%のSnを含むことができ、または約40質量%のSnを含むことができ、残部はBiであることができる。
【0071】
上記の成分の希望の組成は、容易に利用可能な合金と元素金属の組み合わせを使用することによって達成できる。成分(B)を構成する金属と合金粉末成分の組み合わせは、選択された工程温度T1で溶融し、他の成分と相互作用する少なくとも1つの粉末を含む。本発明のTLPS組成物と組み合わせる際には、市販の合金類を組み合わせて、その場で希望の合金組成物を形成する。言い換えれば、成分(B)と(C)を含む粒子混合物は、そのいくらかの部分が処理温度で溶融状態になり、すべての組成物内の重合体類のガラス化以前に、上記の成分(A)中のHMP金属との反応に利用可能なように、合金中の反応性LMP金属種がされるべきである。
【0072】
組み合わされる金属と合金のすべてが処理温度でより低い融点を有することが必要であるというわけではないが、高融点LMP金属および/または合金成分(C)が合金組成(B)に可溶性であり、該合金組成(B)は処理温度T1以下の融点を有し、したがって処理温度で溶融していることが条件である。成分(A)のHMP金属との反応により、成分(B)のLMP金属が減耗するので、すべての成分(B)と(C)の粒子群が溶融合金の再生により利用可能にされるのを保証するために、成分(B)の粒状の種の少なくとも10%は溶融しなければならない。
【0073】
上記の有機バインダは単に金属粒子のためのキャリヤーであることができ、使用時に混合物を容易に一緒に保持して、互いに極めて接近して様々な粒子群を維持するのに役立つ。より典型的には、有機バインダはフラックス活性を提供し、特にHMP金属が非貴金属である場合にそうである。またフラックスが処理の間に取り除かれる機会が全くない用途でフラックスに対する自己イナート化のためのメカニズムを提供できる。有機バインダは、さらにTLPS組成物が所望に応じて処理の前に賦形されるのを許容する熱可塑性プラスチック材料を含むことができ、処理の間、反応して相互侵入マトリクスを金属ネットワークと形成するために、反応性の重合体前駆体、および/または、他の化合物および溶媒を含むことができる。
【0074】
本発明組成物中の有機バインダは、反応に利用可能な金属試薬を作り、溶媒が有機反応でするように、それらを環境から保護するのに役立つ。いくつかの要素(例えば、極性、プロティックまたはアプロティック、水との混和性など)が有機反応のために適切な溶媒の選択を決定する。同様に、本発明の組成物の有機バインダは適切な特性のために選択される。有機バインダの最も重要な特性は、金属試薬を反応に利用可能にするように、金属試薬の表面から金属酸化物を取り除かなければならないということである。金属酸化物の除去は当業者に「フラキシング(fluxing)」として知られており、当業者に公知の種々の化学種、たとえば有機酸および強塩基で行うことができる。有機バインダの他の特性は用途について具体的に選択される。例えば、発明金属成分がはんだペースト代替え品として使われる用途では、処理の間に揮発するように、全体の有機バインダを配合することができる。金属組成物が非金属の表面上の接着性のコーティングで使われる用途では、接着特性を有する有機バインダが選択される。したがって、フラキシング成分の必要性とは別に、有機バインダは当技術分野で周知のさまざまな有機成分を含むことができる。
【0075】
沈着、処理、接着または他の性能特性を満たすために、用途の必要性にしたがって当業者は有機バインダの成分を選択できる。いくつかの実施態様では、フラックスと樹脂の組み合わせを有機バインダは含むことができる。当業者はこれらの目的に一般的に使用される製品からフラックスと樹脂の両方を選択できる。非限定的な例として、樹脂としてエポキシ材料を使用できる。
【0076】
また、本発明は鉛を含まない混合粒子組成物を提供する。既存の鉛含有組成物の代換え品として、上記成分(B)および(C)として、適当な鉛非含有の反応性金属とそれらの合金を選択することは特に挑戦的な課題である。最初の制限的な拘束は処理温度である。鉛は、この点で過去に比較的低い溶融温度のために選ばれ、この溶融温度はエレクトロニクス用途と非常に適合性があるが、現在では、有毒性のため除かれている。TLPS組成物のための処理温度は、電子装置の生産に使用されるその他の材料が、破損されていないように十分低くなければならない。300℃の上限は、ポリマー成分を含む電子用途のための最大の処理温度として通常設定される。230℃以下の処理温度は多くの用途に望ましいと考えられている。したがって、反応性金属およびそれらの合金類の候補としては、スズ、ビスマス、インジウム、ガリウム、および亜鉛があげられる。適当ではあるが、元素または合金化されたGaとInは法外に高価であって、容易に利用可能でない。元素状または合金化されたZnは一般的な多くの回路製品と非適合性である。主としてSnで構成される合金類は、好ましい処理温度を超える溶融温度を持ち、Cu粒子と共に使用される場合にはもろいCu/Sn金属間化合物を主な最終製品として形成することがあり、またSnウイスカを形成する可能性がある。従って、BiとSnの合金類は特性の望ましい組み合わせを提示する。ただし他の元素の添加が望ましい具体的特性を獲得する際に役立つかもしれない。
【0077】
BiとSnの合金類は上に概説された要件の多くを満たす。しかしながら、またそれらはいくつかの欠点を提示する。BiとSnの合金類は微粒子形態で手頃な費用で容易に利用可能である。約135℃から約200℃の範囲内に、ほとんどの一般的なBi−Sn合金の溶融温度がある。Bi/Sn合金中のSn、およびSnがCuと反応して形成された金属間化合物は非常に良好な電気的および熱的な伝導体である。TLPS反応で形成された残りの元素状のBiとCu/Sn金属間化合物は、典型的な次の熱加工とテストの範囲外にそれぞれ溶融温度を持っている。SnとBiは毒性であるとは考えられず、すべての典型的な金属回路製品と適合性がある。残念ながら、BiとCu/Sn金属間化合物の両方とももろく、力学的応力にさらされると、破損しやすい。さらに、元素状のBiは不十分な電気伝導体であり、非常に不良な熱伝導体である。
【0078】
上記の成分(A)のHMP金属としてCuまたは貴金属とともに使用されるBiとSnの合金類は、多くの望ましい特性を提供し、本発明は欠点を最小にする方法でこの冶金を使う手段を提供する。Biの低い電気および熱伝導性およびもろさは基本的な欠陥である。したがって、組成物のBiの割合を最小にするのは、望ましい。公知の共晶合金、および他の容易に利用可能で、商業的なBi/Sn合金類におけるよりも、スズのさらに高い割合で合金組成物を形成することによってこれは達成される。
【0079】
さらに、残りの、ポスト−TLPS合金をより延性または伝導性にする他の金属とBiを組み合わせることは、望ましい場合がある。希望の割合で希望の元素を一緒に製錬して、LMP金属合金の粒子群を製造することによってカスタム合金組成物を形成することは、理論的に可能であるが、実際に、それぞれの粒子において元素が特定割合で存在している粒子群を製造するのは難しいかもしれない。特に4以上の元素が含まれている場合にはそうである。いくつかの実施態様では、Biを最小にし、容易に商業的に利用可能な合金類を混合使用することにより変成できるだろう。
【0080】
SnとBiの合金類は上記の議論における本発明の実施態様として提示されるが、特定の冶金学的組成物と処理後に得られるミクロ構造を達成するために、合金と金属微粒子をブレンドするという本発明の概念は、他の金属システムおよび用途に広く適用可能であることが理解される。また、HMP金属と組み合わせた追加の反応性LMP金属の使用も、最適の特性を有するTLPS反応生成物を得るために想定される。理論によって拘束されることは希望しないが、追加の金属がTLPS組成物の処理の間の結晶粒組織、相互拡散の範囲、および成分(A)、(B)および(C)からのマトリクスの構成速度を変更すると信じられている。これらの構造上の変化、たとえばより大きな柔軟性の促進のような、特定の用途の組成物へさまざまな利益を提供するとさらに信じられている。任意の金属添加物を別個の粒子として加えることができ、HMP金属または上記の粒子群の反応性金属の1つのコーティングとして提供でき、または予備合金化できる。粒状添加材のサイズはナノメートルのオーダーから約20μmないし約100μmの範囲で変化できる。そのような添加材の非限定的な例としては、B、Al、Cr、Fe、Ni、Zn、Ga、Ag、Pd、Pt、Au、In、Sb、Bi、Te、Mn、PおよびCo、およびそれらの組み合わせがあげられる。
【0081】
また、本発明は上記組成物を調製するための方法を提供する。市販の材料から上記のそれぞれの成分と金属粒子を選択できる。成分(A)、(B)、および(C)は、望ましいサイズ、例えば直径が約1μmから約20μmの直径を有する粒子の形で調製することができる。次に、それぞれの成分の適切な量が秤量され、3つの成分が組み合わされ、公知の方法を使用して混合することができる。最終組成物は、1以上の粒径または粒度分布の組み合わせを有する粒子群の1つ以上を含むことができる。
【0082】
いくつかの実施態様では、組成物の金属粒子の少なくとも1つのタイプが、非金属コアの上に金属コーティングを含むことができる。非金属コアはガラス、セラミックまたはポリマー材料から構成されることができる。いくつかの実施態様では、あるサイズより上の粒子群を取り除くか、または例えば、約20μmである最大粒径を達成するために、希望の粒度分布に達するように粒子を篩分けすることができる。
【0083】
調製に続いて、さまざまな用途に組成物を使用できる。例えば、T1またはT1の周辺の温度で処理した後に、約1から約60分の間に、上で説明した成分(B)と(C)のLMP金属合金の反応性金属と、上で説明した成分(A)のHMP金属の間に金属間化合物種を形成できる。
【0084】
いくつかの実施態様では、粒子群(B)と(C)における反応性LMP金属がSnであり、HMP金属(粒子A)がCuであり、Cuの全量をCu−Sn金属間化合物に変換するためには不十分なSnが存在する。他の実施態様では、Snの量は、Cuの全量をCu−Sn金属間化合物に変換するために十分である。他の実施態様では、Cuを6:5モル比のCu−Sn金属間化合物に変換するために十分な量よりも過剰のSnが存在する。Snの量が非常に過剰である場合には、余分なSnは組成物中に存在している他の1種以上の元素と合金化し、それらが温度T1で残りの溶融相として存在する。ここでT1は約80℃から約300℃、典型的には約100℃から約250℃、非常にしばしばには約150℃から約230℃、最も頻繁には約190℃から約210℃の間の範囲である。
【0085】
形成に続いて、金属間化合物は成長して冶金学的に結合し、次の熱サイクルで電気的および機械的に安定した相互接続ネットワークを形成する。一般に、処理温度T1は室温(すなわち、約20℃)と約300℃の間、たとえば約80℃から約250℃、たとえば約100℃と約230℃の間、またはたとえば190℃と約220℃の間である。金属間化合物種はT1の10℃上よりも低くない最低溶融温度を持つだろう。
【0086】
本発明の組成物を作るプロセスで、いくつかの実施態様では、3つの成分が典型的には処理温度T1で反応する。その結果、実質的に、混合物の中に存在している反応性HMP金属および/または反応性LMP金属の全量が消費される。他の実施態様では、混合物の中に存在している反応性HMP金属および/または反応性LMP金属が使い果たされるように、例えば処理温度T1より少なくとも10℃高い、T1よりも高い温度で成分が反応される。他の実施態様では、処理温度T1より少なくとも10℃高い溶融温度を有する粒子群(C)が、低融点成分を含み処理温度T1で溶融状態である粒子群(B)に可溶性である。
【0087】
そのように形成された冶金学的なネットワークは、電気的構造の中で電気的、熱的および/または機械的に、要素を接続するために役に立つ。本発明の組成物が有用である用途の例としては、半導体ダイのパッケージング要素への接続、パッケージされた半導体要素のプリント板への接続、他の個々の要素の電子基体への接続、積み重ねられたダイの間の回路トレースとしての接続の形成、電子基体の穴の充填、プリント回路板および/または半導体パッケージ内の回路層の相互接続、ソーラー・パネルのコレクショングリッドの形成、電気的伝導電のピラー、シリンダまたはカラムの形成、インタポーザ構造および同様のものを介する電気的に相互接続された電気サブシステムがあげられる。
【0088】
様々なテクニックを使用することで上記の組成物を適用できる。たとえば、ニードルディスペンシング、ステンシル塗り、スクリーン印刷、インクジェット、押出、キャスティング、スプレー、または当業者に知られている他の方法があげられるが、これらに限定されるものではない。一度適用されると、説明された組成物はオーブン、ホットプレート、ラミネートプレスで熱処理され、またははんだ付けまたは有機接着剤充填処理に通常使用される他の手段により熱処理される。具体的熱的処理条件は用途、TLPSシステムの選択、および有機結合剤成分に依存する。
【0089】
ある場合には、一般に困難な篩分を通して達成される厳重な粒子サイズの管理が、ディスペンシング、インクジェットなどの堆積技術のために本発明の組成物を好適とし、適用を可能とする。
【0090】
実施例
さらに以下の非限定的な例を参照して本発明がさらに説明される。
【0091】
実施例1
本発明の先に説明された特徴を例示するために、二以上の異なる、相溶性の合金が混合されて組み合わされ、標準的でないかまたは「ブレンドされた」合金をその場(in situ)で形成した。少なくとも1つの金属合金粉末が溶融状態であり、そして、非溶融合金成分が溶融状態の成分に非常に可溶性であれば、合金粉末配合成分のすべてが希望の処理温度で溶融状態でなければならないというわけではない。例えば、伝導性組成物中のBiの潜在的に有害な特性を緩和する1つの方法は、Biの割合が実質的に低下されたSnとBiの合金を使うことである。そのような合金は一般的に利用可能でない。しかしながら、共晶のSn−Bi合金粉末、およびSnを支配的に含む合金は、容易に利用可能である。
【0092】
3つの組成物A、B、およびCが以下の表1に示されたように調製された。
【0093】
【表1】

【0094】
*表1および以下において、Snの約95.5質量%、Agの約3.7質量%、およびCuの約0.8質量%の合金。
**組成物中にSnの約82質量%を含む。
***表1および以下において、有機バインダは、メチルテトラヒドロフタル酸無水物モノグリセリンエステル(1.35g);トリエタノールアミン(1.00g);ブチルカルビトール(2.96g)との50重量%のビスフェノールA溶液;アラルダイトMY721エポキシ樹脂(0.74g)、およびブチルカルビトール(0.2g)を含む。
【0095】
上記の組成物A、B、およびCは、表2に示された、Cu、Sn、およびBi(組成物中の総金属成分に対する割合として)を含んでいた。
【0096】
【表2】

【0097】
処理温度は約190℃が選択された。この温度で共晶Sn/Bi合金粉末が溶融し、SAC305のような主としてSnから構成される合金粉末の1つと均一にされ、両方のソースからのスズが有機結合剤フラックス(例えば、有機バインダ)の存在下で、Cu粉末と反応する。主成分のSn粉末は溶けないが、組成物中のSnのすべてが少しの間にCuと反応する。この場合、主成分のSn合金は溶融状態の共晶Sn/Bi合金中に溶解し、共晶組成の中のSnがCuと反応するとき、溶解されたSnは、より多くの共晶合金をその場で効率的に作成することによって、それを補給する。
【0098】
上記のように調製された組成物のいくつかの特性が、図1−4に示されたように示差走査熱量計(DSC)で調べられた。図1および2は、表1のTLPS組成物 Aについて示す。図1は、組成物が室温から約190℃まで加熱されて、約10分間その温度で維持されるときのTLPS反応について示す。最初の下向きのピーク(吸熱)は標準的でない合金の溶融を反映し、次の上向きのピークは銅−スズ金属間化合物の発熱的な形成を示す。図2は図1で処理されたサンプルの熱サイクルについて示す。新しい反応生成物が形成されて、さらなる発熱反応が次の熱サイクルの間に見られないので、図2のシグネチャーは図1のそれと実質的に異なっている。
【0099】
図3および4は表1の組成物BのDSC分析について示す。これは全体として組成物Aと同じ元素組成を持っている。しかしながら組成物Bでは、SnとBiの等しい割合が、約217℃で溶ける支配的にSnを有する粉末(すなわち、SAC305)と共晶のSn/Bi粉末を混合することによって、達成された。初めのプロセススキャン(図3)は同一のプロセスパラメータの下における図1のものと非常に類似して見える。また、図4に示された第2の熱サイクルの間、シグネチャーが図2のものと同様に見えるだけではなく、190℃の処理温度は合金の溶融温度のかなり下にあるにも関わらず、Snが主成分である当初の合金についての証拠がほとんどない。この現象は、非溶融合金相の溶融合金相との割合が3:1であるTLPS組成物で観測され、組成物中の望ましくないBiの割合の実質的減少をもたらす。
【0100】
実施例2
二以上の異なる、相溶性合金が組み合わされた。以下に示す材料を一緒に混合することによって組成物を調製した:Biの約58質量%とSnの約42質量%を含むBi/Sn合金の約4.0g;実施例1で記載されたSAC305の約8.5g;Inの約58質量%とSnの約42質量%を含む共晶In/Sn合金の約4.0g;約30.0gのCu;および有機バインダの約5.0g。
【0101】
上記の組成物はCuの約65質量%、Snの約25質量%、およびBiの約5質量%(組成物中の総金属成分に対する割合として)を含んでいた。
【0102】
処理温度は190℃であった。この温度で上記の1番目と第3の合金が溶融され、第2の合金と均質化され、Cuと反応し、いくつかの金属間化合物および/または合金種が同時に作成された。示されたように、共晶In/Sn合金(インジウム合金で一番安価で最も容易に利用可能である)は、Bi/Sn合金粉末と混合された。2つの合金類を結合することによって、Inの費用を緩和できて、Biの不十分な電気的、熱的、そして機械的な性能を最低減にすることができる。
【0103】
190℃では、In/Sn合金とBi/Sn合金とSAC305によって利用可能にされたスズが銅粒子と反応して、Cu/Sn金属間化合物を形成し、InがさらにCuとBiの両方と反応し、追加の金属間化合物を形成する。この反応は図5におけるDSCスキャンに示される。安定した規則的な結晶構造を提供するので、金属間化合物種の構成は好ましい。これらのミクロ構造の安定性は図6に示された処理された組成物の次のDSCスキャンにおける、発熱および吸熱の特徴の欠如によって証明される。したがって、2つの合金類を結合することによって、費用と性能の最適なバランスが獲得された。
【0104】
実施例3−10
様々な組成物は、以下の表3に示した量で化合物を混合することによって調製された。
【0105】
【表3】

【0106】
表3に示された組成物は、表4に示された具体的量の金属を含んでいた。
【0107】
【表4】

【0108】
実施例3−5、8および9の組成物が、バルク抵抗率、および4週間約150℃で保持した後のバルク抵抗率との変化についてテストされた。結果は表5中に示される。
【0109】
【表5】


【0110】
実施例11−18
追加組成物は、表6に示された量の化合物を混合することによって調製された。
【0111】
【表6】

【0112】
表6に示された組成物は、表7に示された具体的量の金属を含んでいた。
【0113】
【表7】

【0114】
実施例15および17の組成物が、バルク抵抗率、および4週間約150℃で保持した後のバルク抵抗率との変化についてテストされた。その結果は以下の表8に示す。
【0115】
【表8】

【0116】
実施例19−26
さらなる追加の組成物は表9に示された量の化合物を混合することによって調製された。
【0117】
【表9】

【0118】
表9に示された組成物は、表10に示された具体的量の金属を含んでいた。
【表10】

【0119】
実施例20、21および26の組成物が、バルク抵抗率、および4週間約150℃で保持した後のバルク抵抗率との変化についてテストされた。結果は表11に示される。
【0120】
【表11】

【0121】
よく焼結しない配合物は500ミクロオーム*cmを大きく超えるバルク抵抗率を有し、高温での貯蔵により抵抗率の大きな変化(> 80%)を示すことは周知である。
従って、表5、8および11に示された抵抗値は、低融点合金とスズ富化合金の間の温度で処理される本発明の配合物がよく焼結されていることを示す。
【0122】
これらの具体的例に関して本発明について説明したが、他の修正と変更が本発明の趣旨から逸脱せずに可能であることは、明確であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む粒子混合物組成物:
a) 少なくとも1つの高融点金属を含む第1の金属粒子の約30質量%から約70質量%;
b) 反応性の低融点金属およびキャリヤー金属の合金を含む第2の金属粒子の約10質量%から約60質量%、ここで反応性の低融点金属が高融点金属と反応して金属間化合物を形成することができる;
c) 反応性の低融点金属の少なくとも40質量%を含む第3の金属粒子の約25質量%から約75質量%;および
d) 有機バインダ。
【請求項2】
該高融点金属がCu、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Be、Rh、Ni、Co、Fe、Mo、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該高融点金属がCu、Ag、Al、Au、Ni、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該高融点金属がCu、Ag、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
該高融点金属がCuである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
該高融点金属がAgである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
該第1の金属粒子が実質的に1つの元素で構成される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
該反応性の低融点金属が、Sn、Bi、Zn、Ga、In、Te、Hg、Tl、Sb、Se、Po、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
該反応性の低融点金属が、Sn、Bi、Ga、Inおよびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
該反応性の低融点金属が、Snである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
該反応性の低融点金属がSnであり、高融点金属がCuである、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
該反応性の低融点金属がSnであり、高融点金属がAgである、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
該キャリヤー金属がBi、In、Pb、Ag、Cu、Sb、Au、Ni、およびそれの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
該反応性の低融点金属がSnであり、キャリヤー金属はBiである、請求項2記載の組成物。
【請求項15】
該第2の金属粒子がBi/Sn、In/Sn、Pb/Sn、Sn/Pb/Bi、Sn/Ag、Sn/Cu、Sn/Ag/Cu、Sn/Ag/Cu/Sb、Bi/In/Sn、Sn/In/Ag、Sn/Sb、Au/Snおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの合金を含む、請求項2記載の組成物。
【請求項16】
該第3の金属粒子が反応性の低融点金属の合金を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
該第3の金属粒子が反応性の低融点金属の少なくとも90質量%を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
該第3の金属粒子が元素形態の反応性の低融点金属から実質的に成る、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
該反応性の低融点金属が第2の金属粒子の約35質量%から約65質量%を構成する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
該反応性の低融点金属は第2の金属粒子の約40質量%を構成する、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
該第1の金属粒子中のCuのすべてをCu/Sn金属間化合物に変換するためには不十分なSnが第2の金属粒子の中に存在する、請求項11記載の組成物。
【請求項22】
該第1の金属粒子中のCuのすべてをCu/Sn金属間化合物に変換するために十分なSnが、第2の金属粒子と第3の金属粒子の合計中に存在する、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
該高融点金属が該反応性の低融点金属と温度T1で金属間化合物を形成し、T1は約80℃と約300℃の間の範囲内であり、該金属間化合物はT1の少なくとも10℃上の最低溶融温度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項24】
該金属間化合物種は冶金学的に結合し、相互接続ネットワークを形成する、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
該第2の金属粒子が温度T1で溶融状態であり、T1は約80℃と約220℃の間の範囲内である、請求項1記載の組成物。
【請求項26】
該T1が約100℃と約200℃の間の範囲内である、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
該金属粒子の少なくとも1つのタイプが、非金属製のコアの上に金属コーティングを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項28】
該非金属製のコアがガラス、セラミックまたはポリマーから成る群から選択された材料で構成される、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
少なくとも1つの粒子が、あるサイズより上の粒子群を取り除くために篩分けされる、請求項1記載の組成物。
【請求項30】
最大粒径が約20μmである、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
約80℃と300℃の間の温度で、請求項1記載の組成物の熱処理により形成された金属間化合物生成物。
【請求項32】
該第1の金属粒子、該第2の金属粒子、第該3の金属粒子、および該有機バインダを予定された比率で組み合わせ、それにより成分の混合物を形成することを含む、請求項1記載の組成物の製造方法。
【請求項33】
該有機バインダがさらに、樹脂、ポリマー、反応性モノマー、揮発性の溶媒、およびフィラーの少なくとも1つを含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
以下を含む、電気的および熱的に伝導性の相互接続を作るための方法:
a) 請求項1の組成物の所定量を少なくとも2つの部品のアセンブリに適用する、 ここで該少なくとも2つの部品が電気的および熱的に相互接続される;
b) 該組成物を温度T1まで加熱する;ここでT1は約80℃と約300℃の間であって、組成物内の高融点金属と低融点金属が反応して金属間化合物を形成し、該金属間化合物は電気的および熱的に伝導性であり、それにより電気的および熱的に伝導性の相互接続を得る。
【請求項35】
T1が約100℃と約230℃の間の範囲内である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
T1が約190℃と約210℃の間の範囲内である、請求項34記載の方法。
【請求項37】
該金属間化合物がT1より少なくとも10℃高い溶融温度を有する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
該反応性の低融点金属を含む粒子群の少なくとも1つのタイプが、T1より少なくとも10℃高い温度で溶融する、請求項34記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−523091(P2012−523091A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503646(P2012−503646)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/029330
【国際公開番号】WO2010/114874
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(511237380)オーメット サーキッツ インク (2)
【Fターム(参考)】