混合フェライト粉およびその製造方法、並びに、電波吸収体
【課題】電波吸収シートを製造したとき、所定の周波数帯域で所定の減衰量を得られるフェライト粉とその製造法、並びに電波吸収シートを提供。
【解決手段】2種以上のフェライト粉を混合した混合フェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々から電波吸収体を作製し、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5である混合フェライト粉を提供。
【解決手段】2種以上のフェライト粉を混合した混合フェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々から電波吸収体を作製し、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5である混合フェライト粉を提供。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1GHz以上の高周波帯域で使用する電波吸収体に適した混合フェライト粉およびその製造方法、並びにその混合フェライト粉を用いた電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の高度化に伴い、GHz帯域の電波が種々の用途で使用されるようになってきた。例えば、携帯電話、無線LAN、衛星放送、高度道路交通 システム、ノ
ンストップ自動料金徴収システム(ETC)、自動車走行支援システム(AHS)などが挙げられる。このように高周波域での電波利用形態が多様化すると、電子部品同士の干渉による故障、誤動作、機能不全などが懸念され、その対策が重要となってくる。その対策の1つとして、電波吸収体を用いて不要な電波を吸収し、電波の反射および侵入を防ぐ方法が有効である。この為、GHz帯域用の電波吸収体は需要が増大しつつある。
【0003】
従来、高周波帯域用の電波吸収体には、主としてフェライト等の酸化物系磁性材料が多く用いられている。フェライトの中でも、MHz帯域では主としてスピネル系のものが使用される。そして、GHz帯域以上の高周波帯域において優れた特性を発揮するものとして、本出願人は、Z型六方晶フェライト(特許文献1)やY型六方晶フェライト(特許文献2)、M型六方晶フェライト(特許文献3)を開示している。
【0004】
一方、本出願人は、磁石用フェライト粉末の分野において、平均粒子径が0.30〜0.50μmの微粉15〜40重量%と、平均粒子径が1.00〜2.50μmの粗粉残部とを混合して得た平均粒子径が0.9〜1.5μmであって、粉体p Hが7〜10の範囲、下
記のMFR測定法に従ってフェライト量93重量%で測定したメルトフローレートが7g/10min以上であるマグネトプランバイト型フェライト粉末を開示している(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−180469号公報
【特許文献2】特開2008−66364号公報
【特許文献3】特開2006−137653
【特許文献4】特許第3257936号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したスピネル型フェライトでは、Snoekの限界を破ることができないため、1GHzを超える高周波帯域での使用が難しい。
これに対し、Z型六方晶フェライト粉(本発明において単に「Z型フェライト粉」と記載する場合がある。)やY型六方晶フェライト粉(本発明において単に「Y型フェライト粉」と記載する場合がある。)、M型六方晶フェライト粉(本発明において単に「M型フェライト粉」と記載する場合がある)には、1GHz以上での電波吸収特性が期待される。しかし、従来のZ型六方晶フェライト粉やY型六方晶フェライト粉、M型六方晶フェライト粉の粉体では、所定の周波数帯域において十分に減衰率の高い電波吸収体を得ることが容易ではない。
【0007】
ここで本発明者等は、所定の周波数帯域において減衰率を高めるには、使用する磁性粉体の粒子形状を、より薄い板状の形状にすることが効果的であると考えた。そこで、Z型
フェライト粉の結晶やY型フェライト粉の結晶、M型六方晶フェライト粉の結晶を薄い板状とし、電波吸収性能の改善を試みた。
しかしながら、当該Z型、Y型およびM型フェライトの結晶は、粒度分布がシャープであるため充填性が悪くなり、期待する改善を得ることは困難であった。
【0008】
次に、本発明者等は、特許文献4の手法を応用し、同種のフェライト粉を分割し、当該分割したフェライト粉の一方をさらに粉砕することで、2種の異なる平均粒子径を有するフェライト粉を製造し、それらを混合することで流動性・配向性を上げて、電波吸収体においてフェライト粉の圧縮密度を上げ、電波吸収性能の改善を試みた。
しかしながら、本発明者等が、特許文献4の手法を電波吸収体用磁性粉に応用したところ、微粉を作成するため、粉砕により粉末のサイズを小さくすることで、今度は、電波吸収特性が下がってしまうことを知見した。
【0009】
そこで、今度は、フェライト粉の焼成条件等を制御することで、2種以上の異なる平均粒子径を有するフェライト粉を製造し、それらを混合することで流動性・配向性を上げることを試みた。そして、当該流動性・配向性を上げることで、電波吸収体においてフェライト粉の圧縮密度を上げ、電波吸収体の改善を試みたものである。
しかしながら、焼成条件等を制御することでフェライト粉の粒子サイズを変化させると、今度は、当該フェライト粉が電波吸収特性を示す電波の周波数も、変化してしまうことを知見した。
【0010】
本発明は上述の状況の下で成されたものであり、解決しようとする課題は、従来のフェライト粉と同様の粉体特性を有しながら、当該フェライト粉を用いて、例えば電波吸収シートを製造したとき、所定の周波数帯域で所定の減衰量を得られる混合フェライト粉とその製造法、並びに当該混合フェライト粉を用いた電波吸収シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決すべく、本発明者等が研究を行った結果、同組成フェライト粉において粉砕条件、焼成条件等を変えることにより、粒径サイズの異なる粉体を製造するのではなく、ピーク粒径が異なる2種以上の異組成のフェライト粉であって、且つ、当該ピーク粒径が異なる2種以上の異組成のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であるという、近似した磁気特性を有する2種以上の異組成のフェライト粉を混合する。そして、当該混合されたフェライト粉を含む電波吸収体は、目標の周波数において、電磁波の吸収特性を上げることができるという画期的な知見を得て、本発明を完成した。
【0012】
尚、本発明においてフェライト紛の「ピーク粒径」とは、横軸に粒径、縦軸に頻度(粒子個数)をとったグラフに、当該フェライト紛の粒度分布曲線を描いたとき、当該粒度分布曲線において、頻度の最大値(ピーク)を示す粒径のことであり、いわゆる「モード径」に相当するものである。当該「ピーク粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、フェライト紛の粒度分布曲線を測定することによって求めることができる。
【0013】
即ち、課題を解決するための第1の発明は、
2種以上のフェライト粉を混合した混合フェライト粉であって、
当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の
大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であることを特徴とする混合フェライト粉である。
【0014】
第2の発明は、
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする第1の発明に記載の混合フェライト粉である。
【0015】
第3の発明は、
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする第1の発明に記載の混合フェライト粉である。
【0016】
第4の発明は、
2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造する混合フェライト粉の製造方法であって、
当該2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5である、2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造することを特徴とする混合フェライト粉の製造方法である。
【0017】
第5の発明は、
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする第4の発明に記載の混合フェライト粉の製造方法である。
【0018】
第6の発明は、
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする第4の発明に記載の混合フェライト粉の製造方法である。
【0019】
第7の発明は、
第1から第3の発明のいずれかに記載の混合フェライト粉を含むことを特徴とする電波吸収体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収シートは、従来の混合フェライト粉を用いた電波吸収シートに比べ、例えば、2.4GHz帯や9.58GHz帯において、20dBの減衰を達成するのに必要な膜厚において、10%以上の削減を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る混合フェライト粉の製造フロー図である。
【図2】実施例1(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図3】実施例2(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図4】実施例3(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図5】実施例4(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図6】実施例5(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図7】実施例1(Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図8】実施例1(Y型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図9】比較例1(微Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図10】比較例2(強微Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図11】比較例3(Z微Z型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図12】比較例4(Z強微Z型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図13】実施例1〜5および比較例1〜4に係る電波吸収シートの材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を示すグラフである。
【図14】実施例3に係るフェライト粉のX線回折測定結果である。
【図15】比較例1に係るフェライト粉のX線回折測定結果である。
【図16】比較例2に係るフェライト粉のX線回折測定結果である。
【図17】実施例6に係る混合フェライト粉の製造フロー図である。
【図18】比較例5に係る混合フェライト粉の製造フロー図である。
【図19】実施例6(Z微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図20】実施例7(Z微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図21】実施例8(Z微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図22】実施例6(Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図23】実施例6(微M型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図24】比較例5(M微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図25】比較例5(M型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図26】比較例6(M微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図27】比較例7(M微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図28】実施例6〜8および比較例5〜7に係る電波吸収シートの材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を示すグラフである。
【図29】Y型フェライトのX線強度とY型フェライトの配合比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るフェライト粉は、Z型フェライト、Y型フェライト、M型フェライト、W型フェライト等から選択される、2種以上のフェライト粉を混合したフェライト粉である。そして、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉において、最もピーク粒径の大きなフェライト粉のピーク粒径(Pmax)と、最もピーク粒径の小さなフェライト粉とのピーク粒径(Pmin)の比(Pmax/Pmin)が1.5以上、好ましくは2.0以上である。
【0023】
さらに、本発明に係る混合されたフェライト粉は、互いに磁気特性が類似している2種以上のフェライト粉が、混合されたものであることが肝要である。
具体的には、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であることが好ましい。
【0024】
従来は、同組成のフェライト粉を用い、焼成や粉砕の水準を変えることで粒径差を生み出し、圧縮密度の向上を図っていた。この従来法では、圧縮密度の向上は実現出来るものの、微フェライト粉となるフェライト粉に過度の粉砕を行うことになる為、アスペクト比が小さくなってしまう。この結果、従来の技術に係るフェライト粉を用いた電波吸収体では、電波吸収特性が低下していた。
そこで、今度は、同組成のフェライト粉の焼成条件等を制御することで、2種以上の異なる平均粒子径を有する同組成のフェライト粉を製造し、それらを混合することで流動性・配向性を上げることを試みた。しかしながら、焼成条件等を制御することでフェライト粉の粒子サイズを変化させると、今度は、当該フェライト粉が電波吸収特性を示す電波の周波数も、変化してしまい、目標とする周波数帯域での電波吸収特性が低下していた。
【0025】
これに対し、上述の構成を有する本発明に係るフェライト粉は、2種以上のフェライト粉における互いのピーク粒径の差により圧縮密度の向上を図っている。つまり、微フェライト粉となる小粒径のフェライト粉を得るために粉砕を行うことがない。
さらに、当該2種以上のフェライト粉として、互いに、電波吸収特性の類似したフェライト粉を選択することにより、本発明に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体では、電波吸収特性が向上しているものである。
【0026】
当該電波吸収特性の向上により、電波吸収体として例えば電波吸収シートを用いた場合、当該電波吸収シートを薄くすることが可能になった。そして、電波吸収シートの薄化に
より、エレクトロニクス装置のさらなる軽量化、小型化が可能になり、産業に資するところが大である。
【0027】
尚、上述した2種以上のフェライト粉の例として、Z型フェライト(一般式:A3Me2Fe24O41)、Y型フェライト(一般式:A2Me2Fe12O22)、M型フェライト(一般式:AFe12O19)、W型フェライト(一般式:AMe2Fe16O27)、(但し、Aは、例えばSr、Ba、CaおよびPbの1種以上である。Meは、例
えば2価のCo、Ni、Zn、Cu、Mg、Fe、Mn、および、1価のLiと3価のFeとの組合せ、から選択される1種以上である。またMeは、前記Feの一部の組成を、Alのような3価の元素や、TiとCoのような4価と2価の元素で置換したものも含む。)等が挙げられる。
【0028】
ここで、Z型、Y型、M型、およびW型フェライト粉の2種以上の組み合わせは、2〜76GHz帯、好ましくは2〜40GHz帯、さらに好ましくは2〜20GHz帯での適用に適している。
【0029】
また、ピーク粒径の大きなフェライト粉と、ピーク粒径の小さなフェライト粉とを組み合わせるとき、充填性の観点から、「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率が95:5〜45:55、好ましくは、90:10〜50:50である。
【0030】
ここで、例えば「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率は、X線回折測定によっても確認できる。具体的には、各組成のフェライト粉から最も強く出る2θのピーク強度比から、混合フェライト粉の強度割合を計算し、「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率をもとめることが可能である。
【0031】
具体的には、混合前の各々のフェライト粉に対しX線回折測定を行って、最もピーク強度が強く出る、各々の2θを求める。そして、配合割合を求めたいフェライト粉の最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度:aを測定する。以下同様に、配合したほかのフェライト粉の各々最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度:b、c、・・・を測定する。
当該、a、b、c、・・・の値から、XRDピーク強度割合=a/(a+b+c+‥)
を求め、当該XRDピーク強度割合から、各組成物の配合比率を求めることができる。
【0032】
尚、ピーク強度の最も強く出るとした2θが、JCPDSカードでピーク強度が最も強い2θと異なることがある。これは、フェライト粉の粒子形状が板状となる為、当該板状面のピーク強度が強く観測される為であると考えられる。
また、上述したX線回折以外にも、SEM、SEM−EDS等の各種分析により、混合フェライト粉における、例えば「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率を確認することができる。
【0033】
各々のフェライト粉の製造方法は、公知の方法で良い。しかし、当該各々のフェライト粉に対し、凝集粒子の分散・解砕は行うものの、粉砕は行わない。
尚、本発明において、「粉砕」とは結晶粒子自体を砕く操作のことであり、「分散」とは結晶粒子自体を砕くことなく、1次粒子が凝集した2次粒子を、1次粒子へ分散させる操作のことであり、「解砕」とは、乾燥等の操作により固まった粉体を、元の粉体へ解きほぐす操作のことである。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
まず、実施例において用いた、試料の諸物性の測定方法・装置について説明する。
【0035】
<比表面積>
フェライト粉の比表面積(SSA)は、BET法に基づいて、ユアサ アイオニクス株
式会社製のモノソーブを用いて測定を行った。
【0036】
<圧縮密度>
フェライト粉の圧縮密度は、内径2.54cmφの円筒形金型にフェライト粉10gを充填した後、1ton/cm3の圧力で圧縮した。このときのフェライト粉の密度を圧縮密度として測定した。
【0037】
<粒度分布>
フェライト粉の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製、HELOS&RODOS)を用いて、focal length=20mm、分散圧
5.0bar、吸引圧 130mbarの条件にて粒度分布・ピーク粒径を測定した。
尚、当該粒度分布において、D16、D50、D84とは、それぞれ、体積16%、50%、84%における累積粒度分布のことであり、−0.3μ、−0.52μ、−1μ、+5μ、+8.6μとは、それぞれ、粒径0.3μmアンダー、粒径0.52μmアンダー、粒径1μmアンダー、粒径5μmアッパー、粒径8μmアッパーの粒子の存在割合のことである。
【0038】
<磁気特性>
フェライト粉の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いてσs(emu/g)、σr(emu/g)、Hc(Oe)、SQの測定を行った。
【0039】
<X線測定>
フェライト粉のX線回折の測定条件は、管球:コバルト管球、Goniometer:Ultima+水平ゴニオメーターI型、Attachment:ASC−43(縦型)、Monochrometer:全自動モノクロメータ、ScannigMode:2θ/θ、ScaninigType:CONTINUOUS、X−Ray:40kV/30mA、発散スリット:1/2deg.、散乱スリット:1/2deg.、受光スリット:0.15mm、測定範囲:30°〜70°である。
【0040】
<電波吸収体の電波吸収特性の評価方法>
得られた電波吸収体(シート)から切り出した小片を、外径7mm、内径3mmの円筒状測定ピースに成形した。当該測定ピースを、φ7mm×φ3.04mmの同軸管に装入し、同軸管の端をショートホルダーで短絡し、ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8720D)を用いて、1〜20GHzにおける反射・透過係数(Sパラメーター)を測定した。
当該測定結果は後述するように、μ''の値がGHz帯域にピークを示した。一般的に、磁性損失材料を用いた電波吸収体では、磁性損失を示す複素比透磁率μ''が目標の電波吸収周波数帯域で高くなる。そこで当該μ''の測定結果を、電波吸収シミュレーションを行う際のパラメーターとして用いた。
【0041】
〔実施例1〕
実施例1に係る混合フェライト粉の製造について、図1に示す製造フローを参照しながら説明する。
(ピーク粒径の大きなフェライト粉:Z型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。
そして、BaCl2を除く原料をモル比で、(Ba:Co:Zn:Fe = 3:1:0.5:24)に対応する量比で秤量(1)し、配合原料とした。この配合原料100質量部へ、当該BaCl2の2.7質量部を添加した。
BaCl2が添加秤量された配合原料粉を、ハイスピードミキサーで混合(2)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(3)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(4)・成形し乾燥(5)する。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1250℃で2hr保持することにより焼成(6)した。
得られた焼成品をハンマーミルで分散(7)し、さらに解粒の為、アトライター(AT)(溶媒:水)で5min湿式分散(8)した後、脱水・乾燥(9)した。当該脱水・乾燥した乾燥品をハンマーミルで解砕(10)して、Z型フェライト粉を得た。
【0042】
得られたZ型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表1に示し、磁気特性の測定結果を表2に示した。
【0043】
(ピーク粒径の小さなフェライト粉:Y型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、ZnO、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。そして、当該BaCl2を除く原料をモル比で、(Ba:Zn:Fe = 2:1.6:12)に対応する量比で秤量(11)した。当該BaCl2は他の配合原料100質量部に対して2.7質量部を添加した。
秤量された原料粉をハイスピードミキサーで混合(12)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(13)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(14)・成形し乾燥(15)した。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1200℃で2hr保持することにより焼成(16)した。得られた焼成品をハンマーミルで分散(17)した後、アトライター(AT)(溶媒:水)で5min湿式分散(18)し、脱水・乾燥(19)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(20)して、Y型フェライト粉を得た。
【0044】
得られたY型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表1に示し、磁気特性の測定結果を表2に示した。
【0045】
(混合フェライト粉の製造)
表1より、得られたZ型フェライト粉とY型フェライト粉とにおいて、ピーク粒径がZ型フェライト粉14.4μm、Y型フェライト粉3.0μmである。従って、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径はPmax=14.4μmであり、最も小さなピーク粒径はPmin=3.0μmであるからピーク粒径の比Pmax/Pmin=4.8である。
同様に、表2より、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数2.56GHzと、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数2.22GHzとの比fmax/fminが1.15であり、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値3.98と、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値3.86との比μ''max/μ''minが1.03であった。
ここで、上記で得られたZ型フェライト粉(90wt%)と、Y型フェライト粉(10wt%)とを秤量し、これをサンプルミル(共立理工(株)製、SK−10型)で乾式混合(21)して混合フェライト紛とし、実施例1に係る混合フェライト粉を得た。
【0046】
実施例1に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表1に示し、磁気特性の測定結果を表2に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表9、表10にも記載した。また、XRDピーク強度割合の測定結果を表3に示した。
【0047】
(電波吸収体の製造)
次に、実施例1に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造し、電波吸収特性を測定した。以下、具体的に説明する。
得られた混合フェライトコンテントが90質量%となるように、当該フェライト粉と高分子基材とを、ラボブラストミル(東洋精機製作所製、30C150)合計10分間混練して、電波吸収体素材(混練物)を作製した。尚、当該高分子素材としては、合成ゴム(JSR(日本合成ゴム)製、N215SL)を使用した。
作製された電波吸収体素材を、圧延ロールにより厚さ2.0mmに圧延し、実施例1に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を得た。
【0048】
実施例1に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)に、電波吸収特性評価を行い、当該電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値と、当該μ''の最大値を示す周波数と、電磁波吸収のシミュレーション結果を求めた。
当該波吸収特性評価結果を図2に示す。図2は、縦軸に透磁率μ、横軸に周波数の対数をとり、複素透磁率の実数部μ'を細実線、虚数部μ''を太実線でプロットしたグラフで
ある。
【0049】
図2より、実施例1に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値が4.24であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.2GHzであることが判明した。当該値を表2に示した。
【0050】
さらに、実施例1に係る電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
図13は、縦軸に当該電波吸収シートが2.4GHzの電磁波に対して示す減衰率(dB)を採り、横軸に当該電波吸収シートのシート厚み(mm)を採ったグラフである。そして、2.4GHzにおいて、上記Sパラメーターを基に、電波吸収体シートのシート厚(mm)と、電波の減衰量(dB)との関係をシミュレートしたものである。尚、図13において、縦軸の減衰量は、上記測定で得られた反射量(S11)を用いた。反射量(S11)とは、試料をホルダーに装入した場合の反射量から、試料を装入しない場合の反射量を引いた値(反射減衰量)である。
【0051】
図13において、混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)のシミュレーション結果である太実線が、減衰率−20dBを下回る範囲のシート厚みを、実施例1に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みと考えた。すると、実施例1に係る電波吸収シートの場合、シート厚みは3.2mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表2に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表10にも記載した。
当該減衰率−20dBを、実施例1に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みの判断基準と考えたのは、電波吸収シートにおいて、減衰量が−20dB以下であれば、電波吸収体として十分使用出来ると考えられていることによる。
【0052】
ここで、実施例1に係る混合フェライト粉製造の為に用いた、単独のZ型フェライト粉とY型フェライト粉との電波吸収特性について説明する。
具体的には、上記混合フェライト粉と同様に、単独のZ型フェライト粉および単独のY型フェライト粉を用いて電波吸収体(シート)を製造し、同様の測定を行った。
Z型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図7に示し、Y型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図8に示す(尚、図7、図8および後述する図3〜図6、図9〜12、図19〜図27は、図2と同様のグラフである。)。
図7より、上述したように、Z型フェライト粉のμ''の最大値が3.98であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.22GHzであることが判明した。また、Y型フェ
ライト粉のμ''の最大値が3.86であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.56GHzであることが判明した。
【0053】
さらに、Z型フェライト粉とY型フェライト粉とについても電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示した。但し、Z型フェライト粉は細実線、Y型フェライト粉は細長破線で示した。
図13より、Z型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.5mm以上必要なことが判明した。同様に、Y型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.6mm以上必要なことが判明した。当該値を表2に示した。
【表1】
【表2】
【表3】
【0054】
〔実施例2〜5〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉とY型フェライト粉とを作製した。
作製されたZ型フェライト粉とY型フェライト粉とを、表9に示す割合で秤量・配合し、サンプルミル混合して実施例2〜5に係る混合フェライト粉を得た。
実施例2〜5に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
さらに、実施例3に係る混合フェライト粉のX線回折測定結果を、図14に示した。
【0055】
実施例2〜5に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により実施例2〜5に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造した。この実施例2〜5に係る電波吸収体(シート)の電波吸収を測定した。
【0056】
実施例2の結果を図3に、実施例3の結果を図4に、実施例4の結果を図5に、実施例5の結果を図6に示した。
図3より、実施例2に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.38であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.07GHzであることが判明した。同様に、実施例3に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.49であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.03GHzであることが判明した。同様に、実施例4に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.35であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.07GHzであることが判明した。同様に、実施例5に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.26であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.14GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0057】
実施例2〜5に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
このとき、図13において、実施例2に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太長破線で、実施例3に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太短破線で、実施例4に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太1点鎖線で、実施例5に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太2点鎖線で、プロットした。
【0058】
図13から、−20dB以下の減衰量を得るためには実施例2、4、5に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.2mm以上あれば良く、実施例3に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.1mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表10に示した。
【0059】
また、実施例1〜5に係る混合フェライト粉において、Z型フェライトとY型フェライトとの配合比率と、Z型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とY型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とから求めたXRDピーク強度割合との値を表4に示し、Y型フェライトのX線強度と、Y型フェライトの配合比率との関係を、図29に示した。図29は、縦軸にY型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とから求めたXRDピーク強度割合をとり、横軸にY型フェライトの配合比率をとり、実施例1〜5に係る混合フェライト粉のデータをプロットしたグラフである。表4、図29および上述した表3より、Y型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とから求めたXRDピーク強度割合が解れば、Y型フェライトの配合比率が判明することが解る。
【表4】
【0060】
〔実施例6〕
実施例6に係る混合フェライト粉の製造について、図17に示す製造フローを参照しながら説明する。
【0061】
(ピーク粒径の大きなフェライト粉:Z型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。そして、BaCl2を除く原料を、モル比で(Ba:Co:Zn:Fe = 3:0.18:1.62:24)に対応する量比で秤量(1)して配合原料とした。当該BaCl2は他の配合原料100質量部に対して、2.7質量部を添加した。
秤量された原料粉をハイスピードミキサーで混合(2)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(3)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(4)・成形し乾燥(5)する。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1250℃で2hr保持することにより焼成(6)した。
得られた焼成品をハンマーミルで分散(7)し、さらに解粒の為、アトライター(溶媒:水)で5min湿式分散(8)した後、脱水・乾燥(9)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(10)して、Z型フェライト粉を得た。
【0062】
得られたZ型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表5に示し、磁気特性の測定結果を表6に示した。
【0063】
(ピーク粒径の小さなフェライト粉:ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉の製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、TiO2とα−Fe2O3を用いた。そして、原料を、モル比で(Ba:Co:Zn:Ti:Fe = 2:0.625:0.625:1.25:9.5)に対応する量比で秤量(11)した。
秤量された原料粉をハイスピードミキサーで混合(12)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(13)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(14)・成形し乾燥(15)する。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1220℃で2hr保持することにより焼成(16)した。
得られた焼成品をハンマーミルで粗粉砕(17)し、さらに解粒の為、アトライター(溶媒:水)で5min湿式粉砕(18)した後、脱水・乾燥(19)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(20)して、実施例6に係るピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を得た。
【0064】
実施例6に係るピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表5に示し、磁気特性の測定結果を表6に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表9、表10にも記載した。
【0065】
(混合フェライト粉の製造)
表5より、得られたZ型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉粉とにおいて、ピーク粒径がZ型フェライト粉8.0μm、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉1.8μmである。従って、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径はPmax=8.0μmであり、最も小さなピーク粒径はPmin=1.8μmであるからピーク粒径の比Pmax/Pmin=4.4である。
同様に、表6より、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数10.56GHzと、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数9.85GHzとの比fmax/fminが1.07であり、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値
を示すμ''の値1.13と、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値1.03との比μ''max/μ''minが1.10であった。
ここで、上記で得られたZ型フェライト粉(90wt%)と、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉(10wt%)とを秤量し、これをサンプルミルで乾式混合(21)して混合フェライト紛とし、実施例6に係る混合フェライト粉を得た。
【0066】
実施例6に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表5に示し、磁気特性の測定結果を表6に示した。
【0067】
(電波吸収体の製造)
実施例6に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により実施例6に係る電波吸収体(シート)を作製した。この実施例6に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0068】
実施例6に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値と、当該μ''の最大値を示す周波数、電磁波吸収のシミュレーション結果を図19に示す。
図19より、実施例6に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値が1.13であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.85GHzであることが判明した。当該値を表6に示した。
【0069】
さらに、実施例6に係る電波吸収シートのフェライト含有量、材料定数より、9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響を、シミュレートした結果を図28に示す。
図28は、縦軸に当該電波吸収シートが9.5GHzの電磁波に対して示す減衰率(dB)を採り、横軸に当該電波吸収シートのシート厚み(mm)を採ったグラフである。そして、9.5GHzにおいて、上記Sパラメーターを基に、電波吸収体シートのシート厚(mm)と、電波の減衰量(dB)との関係をシミュレートしたものである。 尚、図28において、縦軸の減衰量は、上記測定で得られた反射量(S11)を用いた。反射量(S11)とは、試料をホルダーに装入した場合の反射量から、試料を装入しない場合の反射量を引いた値(反射減衰量)である。
【0070】
図28において、実施例6に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)のシミュレーション結果である太実線が、減衰率−20dBを下回る範囲のシート厚みを、実施例6に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みと考えた。すると、実施例6に係る電波吸収シートの場合、シート厚みは1.6mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表6に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表10にも記載した。
当該減衰率−20dBを、実施例6に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みの判断基準と考えたのは、電波吸収シートにおいて、減衰量が−20dB以下であれば、電波吸収体として十分使用出来ると考えられていることによる。
【0071】
以下、実施例6に係る混合フェライト粉製造の為に用いた、単独のZ型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とについても電波吸収特性を測定した。
具体的には、上記混合フェライト粉と同様に、単独のZ型フェライト粉および単独のピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を用いて電波吸収体(シート)を製造し、同様の測定を行った。
Z型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図22に示し、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図23に示す。
図22より、Z型フェライト粉のμ''の最大値が1.13であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.85GHzであることが判明した。また、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉のμ''の最大値が1.03であること、当該μ''の最大値を示す周波
数が10.56GHzであることが判明した。従って、μ''max/μ''min=1.10、fmax/fmin=1.07であった。当該値を表6に示した。
【0072】
さらに、Z型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とについても電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図28に示した。但し、Z型フェライト粉は細実線、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉は細長破線で示した。
図28より、Z型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは1.8mm以上必要なことが判明した。同様に、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは1.9mm以上必要なことが判明した。当該値を表6に示した。
【表5】
【表6】
【0073】
〔実施例7、8〕
実施例6と同様の操作により、Z型フェライト粉と、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とを作製した。
作製されたZ型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とを、表9に示す割合で秤量・配合し、サンプルミル混合して実施例7、8に係る混合フェライト粉を得た。
実施例7、8に係る混合フェライト粉の比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径、磁気特性の測定結果を表9に示した。
【0074】
実施例7、8に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により実施例7、8に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造した。この実施例7,8に係る電波吸収体(シート)の電波吸収を測定した。
【0075】
実施例7の結果を図20に、実施例8の結果を図21に示した。
図20より、実施例7に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.14であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.78GHzであることが判明した。同様に、実施例8に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.12であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.78GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0076】
実施例7、8に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図28に示す。
図28において、実施例7に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太長破線で、実施例8に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太短破線で、プロットした。
【0077】
図28から、−20dB以下の減衰量を得るためには実施例7、8に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは1.6mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表10に示した。
【0078】
〔比較例1〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉のみを作製した。
当該Z型フェライト粉を、遠心ボールミル(EBM)で20min粉砕し、比較例1に係るフェライト粉とした。以下、「粉砕された(微)Z型フェライト粉」と示す。
【0079】
比較例1に係る粉砕された(微)Z型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
さらに、比較例1に係る粉砕された(微)Z型フェライト粉のX線回折測定結果を、図15に示した。
【0080】
(電波吸収体の製造)
比較例1に係る粉砕された(微)Z型フェライト粉のみを用いて、実施例1と同様の操作により比較例1に係る電波吸収体(シート)を作製した。この比較例1に係る電波吸収体(シート)を電波吸収測定に供した。
比較例1に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例1に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0081】
比較例1の結果を図9に示した。
図9より、比較例1に係るフェライト粉のμ''の最大値が2.43であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.56GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0082】
比較例1に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果のデータを図13に示す。
【0083】
図13において、比較例1に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細短破線で、プロットした。すると、比較例1に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは4.7mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0084】
〔比較例2〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉のみを作製した。
当該Z型フェライト粉を、遠心ボールミル(EBM)で40min粉砕し、比較例2に係るフェライト粉とした。以下、「強粉砕された(強微)Z型フェライト粉」と示す。
【0085】
比較例2に係る強粉砕された(強微)Z型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
さらに、比較例2に係る強粉砕された(強微)Z型フェライト粉のX線回折測定結果を、図16に示した。
【0086】
(電波吸収体の製造)
比較例2に係る強粉砕された(強微)Z型フェライト粉のみを用いて、実施例1と同様の操作により比較例2に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例2に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0087】
比較例2の結果を図10に示した。
図10より、比較例2に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.68であること、当該μ''の最大値を示す周波数が3.66Hzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0088】
比較例2に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果のデータを図13に示す。
【0089】
図13において、比較例2に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細1点鎖線で、プロットした。すると、比較例2に係る電波吸収体(シート)の場合、減衰率−20dBに到達しないことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0090】
〔比較例3〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉を作製した。
当該Z型フェライト粉の一部を、Y型フェライト粉のピーク粒径に近づけるために、遠心ボールミル(EBM)を用いて20min粉砕して、比較例1と同様の粉砕された(微)Z型フェライト粉を得た。
【0091】
上記で得られた粉砕された(微)Z型フェライト粉30wt%と、実施例1に係るZ型フェライト粉70wt%とを秤量し、これをサンプルミルで混合して混合紛とし、比較例3に係る混合フェライト粉を得た。
【0092】
比較例3に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
【0093】
(電波吸収体の製造)
比較例3に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例3に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例3に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0094】
比較例3の結果を図11に示した。
図11より、比較例3に係るフェライト粉のμ''の最大値が3.84であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.12GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0095】
比較例3に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
【0096】
図13おいて、比較例3に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細2点鎖線で、プロットした。すると、比較例3に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.5mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0097】
〔比較例4〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉を作製した。
当該Z型フェライト紛の一部を、Y型フェライト粉のピーク粒径に近づけるために、遠心ボールミル(EBM)を用いて40min粉砕して、比較例2と同様の強粉砕された(強微)Z型フェライト粉を得た。
【0098】
上記で得られた強粉砕された(強微)Z型フェライト粉30wt%と、実施例1に係るZ型フェライト粉70wt%とを秤量し、これをサンプルミルで混合して混合紛とし、比較例4に係る混合フェライト粉を得た。
【0099】
比較例4に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
【0100】
比較例4に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例4に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例4に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0101】
比較例4の結果を図12に示した。
図12より、比較例4に係るフェライト粉のμ''の最大値が3.68であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.07GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0102】
比較例4に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
【0103】
図13において、比較例4に係る電波吸収シートのシミュレーション結果を細短破線で、プロットした。すると、比較例4に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.6mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0104】
〔比較例5〕
比較例5に係る混合フェライト粉の製造について、図18に示す製造フローを参照しながら説明する。
【0105】
(ピーク粒径の大きなフェライト粉:M型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、TiO2、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。そして、当該BaCl2を除く原料を、モル比で、(Ba:Co:Zn:Ti:Fe = 2:0.625:0.625:1.25:9.5)に対応する重量比で秤量(1)し配合した。当該BaCl2は、他の配合原料100質量部に対して、2.7質量部を添加した。
秤量、配合された原料粉をハイスピードミキサーで混合(2)した後、さらに振動ミルによる乾式法により混合強化(3)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(4)・成形し、乾燥(5)した。
この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1250℃で2hr保持することにより焼成(6)した。
得られた焼成品をハンマーミルで分散(7)し、アトライター(溶媒:水)で5min湿式分散(8)して解粒した後、脱水・乾燥(9)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(10)して、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉を得た。
【0106】
ピーク粒径の大きなM型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)
、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表7に示し、磁気特性の測定結果を表8に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表9、表10にも記載した。
【0107】
(電波吸収体の製造)
表7より、得られたピーク粒径の大きなM型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉粉とにおいて、ピーク粒径が、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉4.5μm、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉1.8μmである。従って、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径はPmax=8.0μmであり、最も小さなピーク粒径はPmin=4.5μmであるからピーク粒径の比Pmax/Pmin=2.5である。
同様に、表8より、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数10.56GHzと、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数8.64GHzとの比fmax/fminが1.22であり、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値1.64と、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値1.03との比μ''max/μ''minが1.60であった。
ここで、上記で得られたピーク粒径の大きなM型フェライト粉90wt%と、実施例6に係る微M型フェライト粉10wt%とを秤量し、これをサンプルミルで混合して混合紛とし、比較例5に係る混合フェライト粉を得た。
比較例5に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例5に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例5に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0108】
比較例5の結果を図24に示した。
図24より、比較例5に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.53であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.64GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0109】
この比較例5に係る電波吸収体(シート)を後述の電波吸収測定に供した。
比較例5に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図28に示す。
【0110】
図28において、比較例5に係る電波吸収シートのシミュレーション結果を、細2点鎖線でプロットした。すると、比較例5に係る電波吸収体(シート)の場合、減衰率が−20dBに到達しないことが判明した。当該結果を表8に示す。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表10にも記載した。
【0111】
以下、比較例5に係る混合フェライト粉製造の為に用いた、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉についても電波吸収特性を測定した。
具体的には、上記混合フェライト粉と同様に、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉を用いて電波吸収体(シート)を製造し、同様の測定を行った。
ピーク粒径の大きなM型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図25に示す。
図25よりピーク粒径の大きなM型フェライト粉のμ''の最大値が1.64であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.64GHzであることが判明した。また、上述したようにピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉のμ''の最大値が1.03であること、当該μ''の最大値を示す周波数が10.56GHzであることが判明した。従って、μ''max/μ''min=1.60、fmax/fmin=1.22であった。当該値を表8に示した。
【0112】
さらに、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉についても電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレ
ートした結果を図28に示した。但し、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉は太1点鎖線で示した。
図28より、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、減衰率が−20dBに到達しないことが判明した。当該結果を表8に示す。
【表7】
【表8】
【0113】
〔比較例6、7〕
比較例5と同様の操作によりM型フェライト粉を作製し、実施例6と同様の操作によりピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を作製した。
作製されたM型フェライト粉と(微)M型フェライト粉とを、表9に示す割合で秤量・配合し、サンプルミル混合して比較例6、7に係るフェライト粉を得た。
比較例6、7に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
【0114】
比較例6、7に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例6、7に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造した。この比較例6、7に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0115】
比較例6の結果を図26に示した。
図26より、比較例6に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.33であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.64GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
比較例7の結果を図27に示した。
図27より、比較例7に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.11であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.78GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0116】
比較例6、7に係る電波吸収体(シート)のフェライト含有量、材料定数より、9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響のシミュレーション結果を、図28に示す。
図28において、比較例6に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細短
破線で、比較例7に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細1点鎖線でプロットした。
【0117】
表2および図28から、比較例6に係る電波吸収体(シート)の場合、減衰率が−20dBに到達しないことが判明した。
比較例7に係る電波吸収体(シート)の場合、−20dB以下の減衰量を得るために、シート厚みが1.9mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に記載した。
【0118】
【表9】
【表10】
【0119】
[まとめ]
表9の結果から、実施例1から8に係るフェライト紛の比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、VSMにて測定した磁気特性、粒度分布のデータは、従来の技術に係る多様な製造方法で製造された比較例1から7に係るフェライト紛における当該データの範囲内にあることが判明した。
このことから、実施例1から8に係るフェライト紛は、従来の技術に係るフェライト紛と同様の操作技術、設備で扱うことが可能であることが判明した。
【0120】
一方、表10の結果から、実施例1から8に係るフェライト紛により製造された電波吸収体シートの電波吸収特性は、比較例1から7に係るフェライト紛により製造された電波吸収体シートの電波吸収特性より優れていることが判明した。
具体的には、2.4GHz帯において、実施例1から5および比較例1から4に係る電波吸収体シートのフェライト粉濃度は、全て90%の同一としたとき、実施例1から5に係る電波吸収体シートのμ''が4.24〜4.49の範囲にあったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' は、1.68〜3.84に留まった。尚、実施例1
から5に係る電波吸収体シートのμ''の最大値を示す周波数は2.03〜2.20GHzであったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' の最大値を示す周波
数は2.07〜3.66GHzであった。
【0121】
一方、図13に示したシミュレーション結果より、実施例1から5に係る電波吸収体シートであれば、2.4GHz帯において、3.1〜3.2mmの厚みで規定の減衰量を確保出来ることが判明した。これに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートであれば、3.5〜4.7mmの厚みがないと規定の減衰量を確保出来ないことが判明した。さらに、比較例2に係る電波吸収体シートでは、規定の減衰量を確保出来ないことも判明した
。つまり、比較例から4の結果が示すように、粗粉のZ型フェライト粉を追加的に粉砕して、微粉のY型フェライト粉と同様のピーク粒径を持たせた後に、当該追加的に粉砕したZ型フェライト粉と、通常の粗粉のZ型フェライト粉とを混合しても、得られた吸収体シートの電波吸収特性は、実施例に劣るものであった。
【0122】
他方、9.5GHz帯において、実施例6から8および比較例5から7に係る電波吸収体シートのフェライト粉濃度は、全て90%の同一としたとき、実施例6から8に係る電波吸収体シートのμ''が1.12〜1.14の範囲にあったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' は、1.11〜1.53であった。そして、実施例6から
8に係る電波吸収体シートのμ''の最大値を示す周波数は9.78〜9.85GHzであったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' の最大値を示す周波数は
8.64〜8.78GHzに留まった。
【0123】
一方、図28に示したシミュレーション結果より、実施例6から8に係る電波吸収体シートであれば、9.5GHz帯において、1.6mmの厚みで規定の減衰量を確保出来ることが判明した。これに対し、比較例7に係る電波吸収体シートにおいては、1.9mmの厚みがないと規定の減衰量を確保出来ないことが判明した。さらに、比較例5、6に係る電波吸収体シートでは、規定の減衰量を確保出来ないことも判明した。つまり、比較例5から7の結果が示すように、焼成条件等を変えることにより得られたピーク粒径の大きなM型フェライト粉と、通常のピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とを混合しても、得られた吸収体シートの電波吸収特性は実施例に劣るものであった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、1GHz以上の高周波帯域で使用する電波吸収体に適した混合フェライト粉およびその製造方法、並びにその混合フェライト粉を用いた電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の高度化に伴い、GHz帯域の電波が種々の用途で使用されるようになってきた。例えば、携帯電話、無線LAN、衛星放送、高度道路交通 システム、ノ
ンストップ自動料金徴収システム(ETC)、自動車走行支援システム(AHS)などが挙げられる。このように高周波域での電波利用形態が多様化すると、電子部品同士の干渉による故障、誤動作、機能不全などが懸念され、その対策が重要となってくる。その対策の1つとして、電波吸収体を用いて不要な電波を吸収し、電波の反射および侵入を防ぐ方法が有効である。この為、GHz帯域用の電波吸収体は需要が増大しつつある。
【0003】
従来、高周波帯域用の電波吸収体には、主としてフェライト等の酸化物系磁性材料が多く用いられている。フェライトの中でも、MHz帯域では主としてスピネル系のものが使用される。そして、GHz帯域以上の高周波帯域において優れた特性を発揮するものとして、本出願人は、Z型六方晶フェライト(特許文献1)やY型六方晶フェライト(特許文献2)、M型六方晶フェライト(特許文献3)を開示している。
【0004】
一方、本出願人は、磁石用フェライト粉末の分野において、平均粒子径が0.30〜0.50μmの微粉15〜40重量%と、平均粒子径が1.00〜2.50μmの粗粉残部とを混合して得た平均粒子径が0.9〜1.5μmであって、粉体p Hが7〜10の範囲、下
記のMFR測定法に従ってフェライト量93重量%で測定したメルトフローレートが7g/10min以上であるマグネトプランバイト型フェライト粉末を開示している(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−180469号公報
【特許文献2】特開2008−66364号公報
【特許文献3】特開2006−137653
【特許文献4】特許第3257936号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したスピネル型フェライトでは、Snoekの限界を破ることができないため、1GHzを超える高周波帯域での使用が難しい。
これに対し、Z型六方晶フェライト粉(本発明において単に「Z型フェライト粉」と記載する場合がある。)やY型六方晶フェライト粉(本発明において単に「Y型フェライト粉」と記載する場合がある。)、M型六方晶フェライト粉(本発明において単に「M型フェライト粉」と記載する場合がある)には、1GHz以上での電波吸収特性が期待される。しかし、従来のZ型六方晶フェライト粉やY型六方晶フェライト粉、M型六方晶フェライト粉の粉体では、所定の周波数帯域において十分に減衰率の高い電波吸収体を得ることが容易ではない。
【0007】
ここで本発明者等は、所定の周波数帯域において減衰率を高めるには、使用する磁性粉体の粒子形状を、より薄い板状の形状にすることが効果的であると考えた。そこで、Z型
フェライト粉の結晶やY型フェライト粉の結晶、M型六方晶フェライト粉の結晶を薄い板状とし、電波吸収性能の改善を試みた。
しかしながら、当該Z型、Y型およびM型フェライトの結晶は、粒度分布がシャープであるため充填性が悪くなり、期待する改善を得ることは困難であった。
【0008】
次に、本発明者等は、特許文献4の手法を応用し、同種のフェライト粉を分割し、当該分割したフェライト粉の一方をさらに粉砕することで、2種の異なる平均粒子径を有するフェライト粉を製造し、それらを混合することで流動性・配向性を上げて、電波吸収体においてフェライト粉の圧縮密度を上げ、電波吸収性能の改善を試みた。
しかしながら、本発明者等が、特許文献4の手法を電波吸収体用磁性粉に応用したところ、微粉を作成するため、粉砕により粉末のサイズを小さくすることで、今度は、電波吸収特性が下がってしまうことを知見した。
【0009】
そこで、今度は、フェライト粉の焼成条件等を制御することで、2種以上の異なる平均粒子径を有するフェライト粉を製造し、それらを混合することで流動性・配向性を上げることを試みた。そして、当該流動性・配向性を上げることで、電波吸収体においてフェライト粉の圧縮密度を上げ、電波吸収体の改善を試みたものである。
しかしながら、焼成条件等を制御することでフェライト粉の粒子サイズを変化させると、今度は、当該フェライト粉が電波吸収特性を示す電波の周波数も、変化してしまうことを知見した。
【0010】
本発明は上述の状況の下で成されたものであり、解決しようとする課題は、従来のフェライト粉と同様の粉体特性を有しながら、当該フェライト粉を用いて、例えば電波吸収シートを製造したとき、所定の周波数帯域で所定の減衰量を得られる混合フェライト粉とその製造法、並びに当該混合フェライト粉を用いた電波吸収シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決すべく、本発明者等が研究を行った結果、同組成フェライト粉において粉砕条件、焼成条件等を変えることにより、粒径サイズの異なる粉体を製造するのではなく、ピーク粒径が異なる2種以上の異組成のフェライト粉であって、且つ、当該ピーク粒径が異なる2種以上の異組成のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であるという、近似した磁気特性を有する2種以上の異組成のフェライト粉を混合する。そして、当該混合されたフェライト粉を含む電波吸収体は、目標の周波数において、電磁波の吸収特性を上げることができるという画期的な知見を得て、本発明を完成した。
【0012】
尚、本発明においてフェライト紛の「ピーク粒径」とは、横軸に粒径、縦軸に頻度(粒子個数)をとったグラフに、当該フェライト紛の粒度分布曲線を描いたとき、当該粒度分布曲線において、頻度の最大値(ピーク)を示す粒径のことであり、いわゆる「モード径」に相当するものである。当該「ピーク粒径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、フェライト紛の粒度分布曲線を測定することによって求めることができる。
【0013】
即ち、課題を解決するための第1の発明は、
2種以上のフェライト粉を混合した混合フェライト粉であって、
当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の
大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であることを特徴とする混合フェライト粉である。
【0014】
第2の発明は、
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする第1の発明に記載の混合フェライト粉である。
【0015】
第3の発明は、
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする第1の発明に記載の混合フェライト粉である。
【0016】
第4の発明は、
2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造する混合フェライト粉の製造方法であって、
当該2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5である、2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造することを特徴とする混合フェライト粉の製造方法である。
【0017】
第5の発明は、
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする第4の発明に記載の混合フェライト粉の製造方法である。
【0018】
第6の発明は、
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする第4の発明に記載の混合フェライト粉の製造方法である。
【0019】
第7の発明は、
第1から第3の発明のいずれかに記載の混合フェライト粉を含むことを特徴とする電波吸収体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収シートは、従来の混合フェライト粉を用いた電波吸収シートに比べ、例えば、2.4GHz帯や9.58GHz帯において、20dBの減衰を達成するのに必要な膜厚において、10%以上の削減を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る混合フェライト粉の製造フロー図である。
【図2】実施例1(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図3】実施例2(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図4】実施例3(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図5】実施例4(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図6】実施例5(ZY型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図7】実施例1(Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図8】実施例1(Y型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図9】比較例1(微Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図10】比較例2(強微Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図11】比較例3(Z微Z型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図12】比較例4(Z強微Z型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図13】実施例1〜5および比較例1〜4に係る電波吸収シートの材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を示すグラフである。
【図14】実施例3に係るフェライト粉のX線回折測定結果である。
【図15】比較例1に係るフェライト粉のX線回折測定結果である。
【図16】比較例2に係るフェライト粉のX線回折測定結果である。
【図17】実施例6に係る混合フェライト粉の製造フロー図である。
【図18】比較例5に係る混合フェライト粉の製造フロー図である。
【図19】実施例6(Z微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図20】実施例7(Z微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図21】実施例8(Z微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図22】実施例6(Z型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図23】実施例6(微M型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図24】比較例5(M微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図25】比較例5(M型)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図26】比較例6(M微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図27】比較例7(M微M型混合)に係る電波吸収体シートの複素透磁率における実数部μ'と虚数部μ''との周波数依存性を示すグラフである。
【図28】実施例6〜8および比較例5〜7に係る電波吸収シートの材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を示すグラフである。
【図29】Y型フェライトのX線強度とY型フェライトの配合比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るフェライト粉は、Z型フェライト、Y型フェライト、M型フェライト、W型フェライト等から選択される、2種以上のフェライト粉を混合したフェライト粉である。そして、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉において、最もピーク粒径の大きなフェライト粉のピーク粒径(Pmax)と、最もピーク粒径の小さなフェライト粉とのピーク粒径(Pmin)の比(Pmax/Pmin)が1.5以上、好ましくは2.0以上である。
【0023】
さらに、本発明に係る混合されたフェライト粉は、互いに磁気特性が類似している2種以上のフェライト粉が、混合されたものであることが肝要である。
具体的には、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であることが好ましい。
【0024】
従来は、同組成のフェライト粉を用い、焼成や粉砕の水準を変えることで粒径差を生み出し、圧縮密度の向上を図っていた。この従来法では、圧縮密度の向上は実現出来るものの、微フェライト粉となるフェライト粉に過度の粉砕を行うことになる為、アスペクト比が小さくなってしまう。この結果、従来の技術に係るフェライト粉を用いた電波吸収体では、電波吸収特性が低下していた。
そこで、今度は、同組成のフェライト粉の焼成条件等を制御することで、2種以上の異なる平均粒子径を有する同組成のフェライト粉を製造し、それらを混合することで流動性・配向性を上げることを試みた。しかしながら、焼成条件等を制御することでフェライト粉の粒子サイズを変化させると、今度は、当該フェライト粉が電波吸収特性を示す電波の周波数も、変化してしまい、目標とする周波数帯域での電波吸収特性が低下していた。
【0025】
これに対し、上述の構成を有する本発明に係るフェライト粉は、2種以上のフェライト粉における互いのピーク粒径の差により圧縮密度の向上を図っている。つまり、微フェライト粉となる小粒径のフェライト粉を得るために粉砕を行うことがない。
さらに、当該2種以上のフェライト粉として、互いに、電波吸収特性の類似したフェライト粉を選択することにより、本発明に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体では、電波吸収特性が向上しているものである。
【0026】
当該電波吸収特性の向上により、電波吸収体として例えば電波吸収シートを用いた場合、当該電波吸収シートを薄くすることが可能になった。そして、電波吸収シートの薄化に
より、エレクトロニクス装置のさらなる軽量化、小型化が可能になり、産業に資するところが大である。
【0027】
尚、上述した2種以上のフェライト粉の例として、Z型フェライト(一般式:A3Me2Fe24O41)、Y型フェライト(一般式:A2Me2Fe12O22)、M型フェライト(一般式:AFe12O19)、W型フェライト(一般式:AMe2Fe16O27)、(但し、Aは、例えばSr、Ba、CaおよびPbの1種以上である。Meは、例
えば2価のCo、Ni、Zn、Cu、Mg、Fe、Mn、および、1価のLiと3価のFeとの組合せ、から選択される1種以上である。またMeは、前記Feの一部の組成を、Alのような3価の元素や、TiとCoのような4価と2価の元素で置換したものも含む。)等が挙げられる。
【0028】
ここで、Z型、Y型、M型、およびW型フェライト粉の2種以上の組み合わせは、2〜76GHz帯、好ましくは2〜40GHz帯、さらに好ましくは2〜20GHz帯での適用に適している。
【0029】
また、ピーク粒径の大きなフェライト粉と、ピーク粒径の小さなフェライト粉とを組み合わせるとき、充填性の観点から、「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率が95:5〜45:55、好ましくは、90:10〜50:50である。
【0030】
ここで、例えば「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率は、X線回折測定によっても確認できる。具体的には、各組成のフェライト粉から最も強く出る2θのピーク強度比から、混合フェライト粉の強度割合を計算し、「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率をもとめることが可能である。
【0031】
具体的には、混合前の各々のフェライト粉に対しX線回折測定を行って、最もピーク強度が強く出る、各々の2θを求める。そして、配合割合を求めたいフェライト粉の最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度:aを測定する。以下同様に、配合したほかのフェライト粉の各々最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度:b、c、・・・を測定する。
当該、a、b、c、・・・の値から、XRDピーク強度割合=a/(a+b+c+‥)
を求め、当該XRDピーク強度割合から、各組成物の配合比率を求めることができる。
【0032】
尚、ピーク強度の最も強く出るとした2θが、JCPDSカードでピーク強度が最も強い2θと異なることがある。これは、フェライト粉の粒子形状が板状となる為、当該板状面のピーク強度が強く観測される為であると考えられる。
また、上述したX線回折以外にも、SEM、SEM−EDS等の各種分析により、混合フェライト粉における、例えば「ピーク粒径の大きなフェライト粉重量:ピーク粒径の小さなフェライト粉重量」の配合比率を確認することができる。
【0033】
各々のフェライト粉の製造方法は、公知の方法で良い。しかし、当該各々のフェライト粉に対し、凝集粒子の分散・解砕は行うものの、粉砕は行わない。
尚、本発明において、「粉砕」とは結晶粒子自体を砕く操作のことであり、「分散」とは結晶粒子自体を砕くことなく、1次粒子が凝集した2次粒子を、1次粒子へ分散させる操作のことであり、「解砕」とは、乾燥等の操作により固まった粉体を、元の粉体へ解きほぐす操作のことである。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
まず、実施例において用いた、試料の諸物性の測定方法・装置について説明する。
【0035】
<比表面積>
フェライト粉の比表面積(SSA)は、BET法に基づいて、ユアサ アイオニクス株
式会社製のモノソーブを用いて測定を行った。
【0036】
<圧縮密度>
フェライト粉の圧縮密度は、内径2.54cmφの円筒形金型にフェライト粉10gを充填した後、1ton/cm3の圧力で圧縮した。このときのフェライト粉の密度を圧縮密度として測定した。
【0037】
<粒度分布>
フェライト粉の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製、HELOS&RODOS)を用いて、focal length=20mm、分散圧
5.0bar、吸引圧 130mbarの条件にて粒度分布・ピーク粒径を測定した。
尚、当該粒度分布において、D16、D50、D84とは、それぞれ、体積16%、50%、84%における累積粒度分布のことであり、−0.3μ、−0.52μ、−1μ、+5μ、+8.6μとは、それぞれ、粒径0.3μmアンダー、粒径0.52μmアンダー、粒径1μmアンダー、粒径5μmアッパー、粒径8μmアッパーの粒子の存在割合のことである。
【0038】
<磁気特性>
フェライト粉の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いてσs(emu/g)、σr(emu/g)、Hc(Oe)、SQの測定を行った。
【0039】
<X線測定>
フェライト粉のX線回折の測定条件は、管球:コバルト管球、Goniometer:Ultima+水平ゴニオメーターI型、Attachment:ASC−43(縦型)、Monochrometer:全自動モノクロメータ、ScannigMode:2θ/θ、ScaninigType:CONTINUOUS、X−Ray:40kV/30mA、発散スリット:1/2deg.、散乱スリット:1/2deg.、受光スリット:0.15mm、測定範囲:30°〜70°である。
【0040】
<電波吸収体の電波吸収特性の評価方法>
得られた電波吸収体(シート)から切り出した小片を、外径7mm、内径3mmの円筒状測定ピースに成形した。当該測定ピースを、φ7mm×φ3.04mmの同軸管に装入し、同軸管の端をショートホルダーで短絡し、ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8720D)を用いて、1〜20GHzにおける反射・透過係数(Sパラメーター)を測定した。
当該測定結果は後述するように、μ''の値がGHz帯域にピークを示した。一般的に、磁性損失材料を用いた電波吸収体では、磁性損失を示す複素比透磁率μ''が目標の電波吸収周波数帯域で高くなる。そこで当該μ''の測定結果を、電波吸収シミュレーションを行う際のパラメーターとして用いた。
【0041】
〔実施例1〕
実施例1に係る混合フェライト粉の製造について、図1に示す製造フローを参照しながら説明する。
(ピーク粒径の大きなフェライト粉:Z型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。
そして、BaCl2を除く原料をモル比で、(Ba:Co:Zn:Fe = 3:1:0.5:24)に対応する量比で秤量(1)し、配合原料とした。この配合原料100質量部へ、当該BaCl2の2.7質量部を添加した。
BaCl2が添加秤量された配合原料粉を、ハイスピードミキサーで混合(2)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(3)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(4)・成形し乾燥(5)する。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1250℃で2hr保持することにより焼成(6)した。
得られた焼成品をハンマーミルで分散(7)し、さらに解粒の為、アトライター(AT)(溶媒:水)で5min湿式分散(8)した後、脱水・乾燥(9)した。当該脱水・乾燥した乾燥品をハンマーミルで解砕(10)して、Z型フェライト粉を得た。
【0042】
得られたZ型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表1に示し、磁気特性の測定結果を表2に示した。
【0043】
(ピーク粒径の小さなフェライト粉:Y型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、ZnO、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。そして、当該BaCl2を除く原料をモル比で、(Ba:Zn:Fe = 2:1.6:12)に対応する量比で秤量(11)した。当該BaCl2は他の配合原料100質量部に対して2.7質量部を添加した。
秤量された原料粉をハイスピードミキサーで混合(12)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(13)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(14)・成形し乾燥(15)した。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1200℃で2hr保持することにより焼成(16)した。得られた焼成品をハンマーミルで分散(17)した後、アトライター(AT)(溶媒:水)で5min湿式分散(18)し、脱水・乾燥(19)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(20)して、Y型フェライト粉を得た。
【0044】
得られたY型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表1に示し、磁気特性の測定結果を表2に示した。
【0045】
(混合フェライト粉の製造)
表1より、得られたZ型フェライト粉とY型フェライト粉とにおいて、ピーク粒径がZ型フェライト粉14.4μm、Y型フェライト粉3.0μmである。従って、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径はPmax=14.4μmであり、最も小さなピーク粒径はPmin=3.0μmであるからピーク粒径の比Pmax/Pmin=4.8である。
同様に、表2より、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数2.56GHzと、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数2.22GHzとの比fmax/fminが1.15であり、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値3.98と、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値3.86との比μ''max/μ''minが1.03であった。
ここで、上記で得られたZ型フェライト粉(90wt%)と、Y型フェライト粉(10wt%)とを秤量し、これをサンプルミル(共立理工(株)製、SK−10型)で乾式混合(21)して混合フェライト紛とし、実施例1に係る混合フェライト粉を得た。
【0046】
実施例1に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表1に示し、磁気特性の測定結果を表2に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表9、表10にも記載した。また、XRDピーク強度割合の測定結果を表3に示した。
【0047】
(電波吸収体の製造)
次に、実施例1に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造し、電波吸収特性を測定した。以下、具体的に説明する。
得られた混合フェライトコンテントが90質量%となるように、当該フェライト粉と高分子基材とを、ラボブラストミル(東洋精機製作所製、30C150)合計10分間混練して、電波吸収体素材(混練物)を作製した。尚、当該高分子素材としては、合成ゴム(JSR(日本合成ゴム)製、N215SL)を使用した。
作製された電波吸収体素材を、圧延ロールにより厚さ2.0mmに圧延し、実施例1に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を得た。
【0048】
実施例1に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)に、電波吸収特性評価を行い、当該電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値と、当該μ''の最大値を示す周波数と、電磁波吸収のシミュレーション結果を求めた。
当該波吸収特性評価結果を図2に示す。図2は、縦軸に透磁率μ、横軸に周波数の対数をとり、複素透磁率の実数部μ'を細実線、虚数部μ''を太実線でプロットしたグラフで
ある。
【0049】
図2より、実施例1に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値が4.24であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.2GHzであることが判明した。当該値を表2に示した。
【0050】
さらに、実施例1に係る電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
図13は、縦軸に当該電波吸収シートが2.4GHzの電磁波に対して示す減衰率(dB)を採り、横軸に当該電波吸収シートのシート厚み(mm)を採ったグラフである。そして、2.4GHzにおいて、上記Sパラメーターを基に、電波吸収体シートのシート厚(mm)と、電波の減衰量(dB)との関係をシミュレートしたものである。尚、図13において、縦軸の減衰量は、上記測定で得られた反射量(S11)を用いた。反射量(S11)とは、試料をホルダーに装入した場合の反射量から、試料を装入しない場合の反射量を引いた値(反射減衰量)である。
【0051】
図13において、混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)のシミュレーション結果である太実線が、減衰率−20dBを下回る範囲のシート厚みを、実施例1に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みと考えた。すると、実施例1に係る電波吸収シートの場合、シート厚みは3.2mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表2に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表10にも記載した。
当該減衰率−20dBを、実施例1に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みの判断基準と考えたのは、電波吸収シートにおいて、減衰量が−20dB以下であれば、電波吸収体として十分使用出来ると考えられていることによる。
【0052】
ここで、実施例1に係る混合フェライト粉製造の為に用いた、単独のZ型フェライト粉とY型フェライト粉との電波吸収特性について説明する。
具体的には、上記混合フェライト粉と同様に、単独のZ型フェライト粉および単独のY型フェライト粉を用いて電波吸収体(シート)を製造し、同様の測定を行った。
Z型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図7に示し、Y型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図8に示す(尚、図7、図8および後述する図3〜図6、図9〜12、図19〜図27は、図2と同様のグラフである。)。
図7より、上述したように、Z型フェライト粉のμ''の最大値が3.98であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.22GHzであることが判明した。また、Y型フェ
ライト粉のμ''の最大値が3.86であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.56GHzであることが判明した。
【0053】
さらに、Z型フェライト粉とY型フェライト粉とについても電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示した。但し、Z型フェライト粉は細実線、Y型フェライト粉は細長破線で示した。
図13より、Z型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.5mm以上必要なことが判明した。同様に、Y型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.6mm以上必要なことが判明した。当該値を表2に示した。
【表1】
【表2】
【表3】
【0054】
〔実施例2〜5〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉とY型フェライト粉とを作製した。
作製されたZ型フェライト粉とY型フェライト粉とを、表9に示す割合で秤量・配合し、サンプルミル混合して実施例2〜5に係る混合フェライト粉を得た。
実施例2〜5に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
さらに、実施例3に係る混合フェライト粉のX線回折測定結果を、図14に示した。
【0055】
実施例2〜5に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により実施例2〜5に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造した。この実施例2〜5に係る電波吸収体(シート)の電波吸収を測定した。
【0056】
実施例2の結果を図3に、実施例3の結果を図4に、実施例4の結果を図5に、実施例5の結果を図6に示した。
図3より、実施例2に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.38であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.07GHzであることが判明した。同様に、実施例3に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.49であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.03GHzであることが判明した。同様に、実施例4に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.35であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.07GHzであることが判明した。同様に、実施例5に係るフェライト粉のμ''の最大値が4.26であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.14GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0057】
実施例2〜5に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
このとき、図13において、実施例2に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太長破線で、実施例3に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太短破線で、実施例4に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太1点鎖線で、実施例5に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太2点鎖線で、プロットした。
【0058】
図13から、−20dB以下の減衰量を得るためには実施例2、4、5に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.2mm以上あれば良く、実施例3に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.1mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表10に示した。
【0059】
また、実施例1〜5に係る混合フェライト粉において、Z型フェライトとY型フェライトとの配合比率と、Z型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とY型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とから求めたXRDピーク強度割合との値を表4に示し、Y型フェライトのX線強度と、Y型フェライトの配合比率との関係を、図29に示した。図29は、縦軸にY型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とから求めたXRDピーク強度割合をとり、横軸にY型フェライトの配合比率をとり、実施例1〜5に係る混合フェライト粉のデータをプロットしたグラフである。表4、図29および上述した表3より、Y型フェライトの最もピーク強度の強い2θにおけるX線強度とから求めたXRDピーク強度割合が解れば、Y型フェライトの配合比率が判明することが解る。
【表4】
【0060】
〔実施例6〕
実施例6に係る混合フェライト粉の製造について、図17に示す製造フローを参照しながら説明する。
【0061】
(ピーク粒径の大きなフェライト粉:Z型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。そして、BaCl2を除く原料を、モル比で(Ba:Co:Zn:Fe = 3:0.18:1.62:24)に対応する量比で秤量(1)して配合原料とした。当該BaCl2は他の配合原料100質量部に対して、2.7質量部を添加した。
秤量された原料粉をハイスピードミキサーで混合(2)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(3)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(4)・成形し乾燥(5)する。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1250℃で2hr保持することにより焼成(6)した。
得られた焼成品をハンマーミルで分散(7)し、さらに解粒の為、アトライター(溶媒:水)で5min湿式分散(8)した後、脱水・乾燥(9)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(10)して、Z型フェライト粉を得た。
【0062】
得られたZ型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表5に示し、磁気特性の測定結果を表6に示した。
【0063】
(ピーク粒径の小さなフェライト粉:ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉の製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、TiO2とα−Fe2O3を用いた。そして、原料を、モル比で(Ba:Co:Zn:Ti:Fe = 2:0.625:0.625:1.25:9.5)に対応する量比で秤量(11)した。
秤量された原料粉をハイスピードミキサーで混合(12)した後、さらに振動ミルにより乾式法で混合強化(13)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(14)・成形し乾燥(15)する。この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1220℃で2hr保持することにより焼成(16)した。
得られた焼成品をハンマーミルで粗粉砕(17)し、さらに解粒の為、アトライター(溶媒:水)で5min湿式粉砕(18)した後、脱水・乾燥(19)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(20)して、実施例6に係るピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を得た。
【0064】
実施例6に係るピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表5に示し、磁気特性の測定結果を表6に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表9、表10にも記載した。
【0065】
(混合フェライト粉の製造)
表5より、得られたZ型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉粉とにおいて、ピーク粒径がZ型フェライト粉8.0μm、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉1.8μmである。従って、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径はPmax=8.0μmであり、最も小さなピーク粒径はPmin=1.8μmであるからピーク粒径の比Pmax/Pmin=4.4である。
同様に、表6より、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数10.56GHzと、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数9.85GHzとの比fmax/fminが1.07であり、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値
を示すμ''の値1.13と、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値1.03との比μ''max/μ''minが1.10であった。
ここで、上記で得られたZ型フェライト粉(90wt%)と、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉(10wt%)とを秤量し、これをサンプルミルで乾式混合(21)して混合フェライト紛とし、実施例6に係る混合フェライト粉を得た。
【0066】
実施例6に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表5に示し、磁気特性の測定結果を表6に示した。
【0067】
(電波吸収体の製造)
実施例6に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により実施例6に係る電波吸収体(シート)を作製した。この実施例6に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0068】
実施例6に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値と、当該μ''の最大値を示す周波数、電磁波吸収のシミュレーション結果を図19に示す。
図19より、実施例6に係る混合フェライト粉を用いた電波吸収体の複素透磁率の虚数部μ''の最大値が1.13であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.85GHzであることが判明した。当該値を表6に示した。
【0069】
さらに、実施例6に係る電波吸収シートのフェライト含有量、材料定数より、9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響を、シミュレートした結果を図28に示す。
図28は、縦軸に当該電波吸収シートが9.5GHzの電磁波に対して示す減衰率(dB)を採り、横軸に当該電波吸収シートのシート厚み(mm)を採ったグラフである。そして、9.5GHzにおいて、上記Sパラメーターを基に、電波吸収体シートのシート厚(mm)と、電波の減衰量(dB)との関係をシミュレートしたものである。 尚、図28において、縦軸の減衰量は、上記測定で得られた反射量(S11)を用いた。反射量(S11)とは、試料をホルダーに装入した場合の反射量から、試料を装入しない場合の反射量を引いた値(反射減衰量)である。
【0070】
図28において、実施例6に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)のシミュレーション結果である太実線が、減衰率−20dBを下回る範囲のシート厚みを、実施例6に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みと考えた。すると、実施例6に係る電波吸収シートの場合、シート厚みは1.6mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表6に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表10にも記載した。
当該減衰率−20dBを、実施例6に係る電波吸収シートが採るべきシート厚みの判断基準と考えたのは、電波吸収シートにおいて、減衰量が−20dB以下であれば、電波吸収体として十分使用出来ると考えられていることによる。
【0071】
以下、実施例6に係る混合フェライト粉製造の為に用いた、単独のZ型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とについても電波吸収特性を測定した。
具体的には、上記混合フェライト粉と同様に、単独のZ型フェライト粉および単独のピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を用いて電波吸収体(シート)を製造し、同様の測定を行った。
Z型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図22に示し、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図23に示す。
図22より、Z型フェライト粉のμ''の最大値が1.13であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.85GHzであることが判明した。また、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉のμ''の最大値が1.03であること、当該μ''の最大値を示す周波
数が10.56GHzであることが判明した。従って、μ''max/μ''min=1.10、fmax/fmin=1.07であった。当該値を表6に示した。
【0072】
さらに、Z型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とについても電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図28に示した。但し、Z型フェライト粉は細実線、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉は細長破線で示した。
図28より、Z型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは1.8mm以上必要なことが判明した。同様に、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは1.9mm以上必要なことが判明した。当該値を表6に示した。
【表5】
【表6】
【0073】
〔実施例7、8〕
実施例6と同様の操作により、Z型フェライト粉と、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とを作製した。
作製されたZ型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とを、表9に示す割合で秤量・配合し、サンプルミル混合して実施例7、8に係る混合フェライト粉を得た。
実施例7、8に係る混合フェライト粉の比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径、磁気特性の測定結果を表9に示した。
【0074】
実施例7、8に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により実施例7、8に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造した。この実施例7,8に係る電波吸収体(シート)の電波吸収を測定した。
【0075】
実施例7の結果を図20に、実施例8の結果を図21に示した。
図20より、実施例7に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.14であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.78GHzであることが判明した。同様に、実施例8に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.12であること、当該μ''の最大値を示す周波数が9.78GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0076】
実施例7、8に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図28に示す。
図28において、実施例7に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太長破線で、実施例8に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を太短破線で、プロットした。
【0077】
図28から、−20dB以下の減衰量を得るためには実施例7、8に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは1.6mm以上あれば良いことが判明した。当該値を表10に示した。
【0078】
〔比較例1〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉のみを作製した。
当該Z型フェライト粉を、遠心ボールミル(EBM)で20min粉砕し、比較例1に係るフェライト粉とした。以下、「粉砕された(微)Z型フェライト粉」と示す。
【0079】
比較例1に係る粉砕された(微)Z型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
さらに、比較例1に係る粉砕された(微)Z型フェライト粉のX線回折測定結果を、図15に示した。
【0080】
(電波吸収体の製造)
比較例1に係る粉砕された(微)Z型フェライト粉のみを用いて、実施例1と同様の操作により比較例1に係る電波吸収体(シート)を作製した。この比較例1に係る電波吸収体(シート)を電波吸収測定に供した。
比較例1に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例1に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0081】
比較例1の結果を図9に示した。
図9より、比較例1に係るフェライト粉のμ''の最大値が2.43であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.56GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0082】
比較例1に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果のデータを図13に示す。
【0083】
図13において、比較例1に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細短破線で、プロットした。すると、比較例1に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは4.7mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0084】
〔比較例2〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉のみを作製した。
当該Z型フェライト粉を、遠心ボールミル(EBM)で40min粉砕し、比較例2に係るフェライト粉とした。以下、「強粉砕された(強微)Z型フェライト粉」と示す。
【0085】
比較例2に係る強粉砕された(強微)Z型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
さらに、比較例2に係る強粉砕された(強微)Z型フェライト粉のX線回折測定結果を、図16に示した。
【0086】
(電波吸収体の製造)
比較例2に係る強粉砕された(強微)Z型フェライト粉のみを用いて、実施例1と同様の操作により比較例2に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例2に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0087】
比較例2の結果を図10に示した。
図10より、比較例2に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.68であること、当該μ''の最大値を示す周波数が3.66Hzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0088】
比較例2に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果のデータを図13に示す。
【0089】
図13において、比較例2に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細1点鎖線で、プロットした。すると、比較例2に係る電波吸収体(シート)の場合、減衰率−20dBに到達しないことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0090】
〔比較例3〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉を作製した。
当該Z型フェライト粉の一部を、Y型フェライト粉のピーク粒径に近づけるために、遠心ボールミル(EBM)を用いて20min粉砕して、比較例1と同様の粉砕された(微)Z型フェライト粉を得た。
【0091】
上記で得られた粉砕された(微)Z型フェライト粉30wt%と、実施例1に係るZ型フェライト粉70wt%とを秤量し、これをサンプルミルで混合して混合紛とし、比較例3に係る混合フェライト粉を得た。
【0092】
比較例3に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
【0093】
(電波吸収体の製造)
比較例3に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例3に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例3に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0094】
比較例3の結果を図11に示した。
図11より、比較例3に係るフェライト粉のμ''の最大値が3.84であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.12GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0095】
比較例3に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
【0096】
図13おいて、比較例3に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細2点鎖線で、プロットした。すると、比較例3に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.5mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0097】
〔比較例4〕
実施例1と同様の操作により、Z型フェライト粉を作製した。
当該Z型フェライト紛の一部を、Y型フェライト粉のピーク粒径に近づけるために、遠心ボールミル(EBM)を用いて40min粉砕して、比較例2と同様の強粉砕された(強微)Z型フェライト粉を得た。
【0098】
上記で得られた強粉砕された(強微)Z型フェライト粉30wt%と、実施例1に係るZ型フェライト粉70wt%とを秤量し、これをサンプルミルで混合して混合紛とし、比較例4に係る混合フェライト粉を得た。
【0099】
比較例4に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
【0100】
比較例4に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例4に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例4に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0101】
比較例4の結果を図12に示した。
図12より、比較例4に係るフェライト粉のμ''の最大値が3.68であること、当該μ''の最大値を示す周波数が2.07GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0102】
比較例4に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より2.4GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図13に示す。
【0103】
図13において、比較例4に係る電波吸収シートのシミュレーション結果を細短破線で、プロットした。すると、比較例4に係る電波吸収体(シート)の場合、シート厚みは3.6mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に示す。
【0104】
〔比較例5〕
比較例5に係る混合フェライト粉の製造について、図18に示す製造フローを参照しながら説明する。
【0105】
(ピーク粒径の大きなフェライト粉:M型フェライトの製造)
原料としてBaCO3、Co3O4、ZnO、TiO2、α−Fe2O3とBaCl2を用いた。そして、当該BaCl2を除く原料を、モル比で、(Ba:Co:Zn:Ti:Fe = 2:0.625:0.625:1.25:9.5)に対応する重量比で秤量(1)し配合した。当該BaCl2は、他の配合原料100質量部に対して、2.7質量部を添加した。
秤量、配合された原料粉をハイスピードミキサーで混合(2)した後、さらに振動ミルによる乾式法により混合強化(3)する方法で混合した。
得られた混合粉をペレット状に造粒(4)・成形し、乾燥(5)した。
この成形体をローラーハース型電気炉に送入し、大気中において1250℃で2hr保持することにより焼成(6)した。
得られた焼成品をハンマーミルで分散(7)し、アトライター(溶媒:水)で5min湿式分散(8)して解粒した後、脱水・乾燥(9)した。当該脱水・乾燥した焼成品をハンマーミルで解砕(10)して、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉を得た。
【0106】
ピーク粒径の大きなM型フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)
、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表7に示し、磁気特性の測定結果を表8に示した。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表9、表10にも記載した。
【0107】
(電波吸収体の製造)
表7より、得られたピーク粒径の大きなM型フェライト粉とピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉粉とにおいて、ピーク粒径が、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉4.5μm、ピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉1.8μmである。従って、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径はPmax=8.0μmであり、最も小さなピーク粒径はPmin=4.5μmであるからピーク粒径の比Pmax/Pmin=2.5である。
同様に、表8より、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数10.56GHzと、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数8.64GHzとの比fmax/fminが1.22であり、最も大きな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値1.64と、最も小さな複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示すμ''の値1.03との比μ''max/μ''minが1.60であった。
ここで、上記で得られたピーク粒径の大きなM型フェライト粉90wt%と、実施例6に係る微M型フェライト粉10wt%とを秤量し、これをサンプルミルで混合して混合紛とし、比較例5に係る混合フェライト粉を得た。
比較例5に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例5に係る電波吸収体(シート)を製造した。この比較例5に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0108】
比較例5の結果を図24に示した。
図24より、比較例5に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.53であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.64GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0109】
この比較例5に係る電波吸収体(シート)を後述の電波吸収測定に供した。
比較例5に係る電波吸収体(シート)の、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレートした結果を図28に示す。
【0110】
図28において、比較例5に係る電波吸収シートのシミュレーション結果を、細2点鎖線でプロットした。すると、比較例5に係る電波吸収体(シート)の場合、減衰率が−20dBに到達しないことが判明した。当該結果を表8に示す。尚、説明の便宜の為、当該測定結果を表10にも記載した。
【0111】
以下、比較例5に係る混合フェライト粉製造の為に用いた、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉についても電波吸収特性を測定した。
具体的には、上記混合フェライト粉と同様に、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉を用いて電波吸収体(シート)を製造し、同様の測定を行った。
ピーク粒径の大きなM型フェライト粉の電波吸収特性評価結果を図25に示す。
図25よりピーク粒径の大きなM型フェライト粉のμ''の最大値が1.64であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.64GHzであることが判明した。また、上述したようにピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉のμ''の最大値が1.03であること、当該μ''の最大値を示す周波数が10.56GHzであることが判明した。従って、μ''max/μ''min=1.60、fmax/fmin=1.22であった。当該値を表8に示した。
【0112】
さらに、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉についても電波吸収シートの、フェライト含有量、材料定数より9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響をシミュレ
ートした結果を図28に示した。但し、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉は太1点鎖線で示した。
図28より、ピーク粒径の大きなM型フェライト粉を単独で含む電波吸収体(シート)の場合、減衰率が−20dBに到達しないことが判明した。当該結果を表8に示す。
【表7】
【表8】
【0113】
〔比較例6、7〕
比較例5と同様の操作によりM型フェライト粉を作製し、実施例6と同様の操作によりピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉を作製した。
作製されたM型フェライト粉と(微)M型フェライト粉とを、表9に示す割合で秤量・配合し、サンプルミル混合して比較例6、7に係るフェライト粉を得た。
比較例6、7に係る混合フェライト粉の配合、比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、粒度分布、ピーク粒径の測定結果を表9に示し、磁気特性の測定結果を表10に示した。
【0114】
比較例6、7に係る混合フェライト粉を用いて、実施例1と同様の操作により比較例6、7に係る混合フェライト粉を含む電波吸収体(シート)を製造した。この比較例6、7に係る電波吸収体(シート)の電波吸収特性を測定した。
【0115】
比較例6の結果を図26に示した。
図26より、比較例6に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.33であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.64GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
比較例7の結果を図27に示した。
図27より、比較例7に係るフェライト粉のμ''の最大値が1.11であること、当該μ''の最大値を示す周波数が8.78GHzであることが判明した。当該値を表10に示した。
【0116】
比較例6、7に係る電波吸収体(シート)のフェライト含有量、材料定数より、9.5GHzにおける減衰量に及ぼすシート厚の影響のシミュレーション結果を、図28に示す。
図28において、比較例6に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細短
破線で、比較例7に係る電波吸収体(シート)のシミュレーション結果を細1点鎖線でプロットした。
【0117】
表2および図28から、比較例6に係る電波吸収体(シート)の場合、減衰率が−20dBに到達しないことが判明した。
比較例7に係る電波吸収体(シート)の場合、−20dB以下の減衰量を得るために、シート厚みが1.9mm以上必要なことが判明した。当該結果を表10に記載した。
【0118】
【表9】
【表10】
【0119】
[まとめ]
表9の結果から、実施例1から8に係るフェライト紛の比表面積(SSA)、圧縮密度(CD)、VSMにて測定した磁気特性、粒度分布のデータは、従来の技術に係る多様な製造方法で製造された比較例1から7に係るフェライト紛における当該データの範囲内にあることが判明した。
このことから、実施例1から8に係るフェライト紛は、従来の技術に係るフェライト紛と同様の操作技術、設備で扱うことが可能であることが判明した。
【0120】
一方、表10の結果から、実施例1から8に係るフェライト紛により製造された電波吸収体シートの電波吸収特性は、比較例1から7に係るフェライト紛により製造された電波吸収体シートの電波吸収特性より優れていることが判明した。
具体的には、2.4GHz帯において、実施例1から5および比較例1から4に係る電波吸収体シートのフェライト粉濃度は、全て90%の同一としたとき、実施例1から5に係る電波吸収体シートのμ''が4.24〜4.49の範囲にあったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' は、1.68〜3.84に留まった。尚、実施例1
から5に係る電波吸収体シートのμ''の最大値を示す周波数は2.03〜2.20GHzであったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' の最大値を示す周波
数は2.07〜3.66GHzであった。
【0121】
一方、図13に示したシミュレーション結果より、実施例1から5に係る電波吸収体シートであれば、2.4GHz帯において、3.1〜3.2mmの厚みで規定の減衰量を確保出来ることが判明した。これに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートであれば、3.5〜4.7mmの厚みがないと規定の減衰量を確保出来ないことが判明した。さらに、比較例2に係る電波吸収体シートでは、規定の減衰量を確保出来ないことも判明した
。つまり、比較例から4の結果が示すように、粗粉のZ型フェライト粉を追加的に粉砕して、微粉のY型フェライト粉と同様のピーク粒径を持たせた後に、当該追加的に粉砕したZ型フェライト粉と、通常の粗粉のZ型フェライト粉とを混合しても、得られた吸収体シートの電波吸収特性は、実施例に劣るものであった。
【0122】
他方、9.5GHz帯において、実施例6から8および比較例5から7に係る電波吸収体シートのフェライト粉濃度は、全て90%の同一としたとき、実施例6から8に係る電波吸収体シートのμ''が1.12〜1.14の範囲にあったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' は、1.11〜1.53であった。そして、実施例6から
8に係る電波吸収体シートのμ''の最大値を示す周波数は9.78〜9.85GHzであったのに対し、比較例1から4に係る電波吸収体シートのμ'' の最大値を示す周波数は
8.64〜8.78GHzに留まった。
【0123】
一方、図28に示したシミュレーション結果より、実施例6から8に係る電波吸収体シートであれば、9.5GHz帯において、1.6mmの厚みで規定の減衰量を確保出来ることが判明した。これに対し、比較例7に係る電波吸収体シートにおいては、1.9mmの厚みがないと規定の減衰量を確保出来ないことが判明した。さらに、比較例5、6に係る電波吸収体シートでは、規定の減衰量を確保出来ないことも判明した。つまり、比較例5から7の結果が示すように、焼成条件等を変えることにより得られたピーク粒径の大きなM型フェライト粉と、通常のピーク粒径の小さな(微)M型フェライト粉とを混合しても、得られた吸収体シートの電波吸収特性は実施例に劣るものであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のフェライト粉を混合した混合フェライト粉であって、
当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であることを特徴とする混合フェライト粉。
【請求項2】
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする請求項1に記載の混合フェライト粉。
【請求項3】
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする請求項1に記載の混合フェライト粉。
【請求項4】
2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造する混合フェライト粉の製造方法であって、
当該2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5である、2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造することを特徴とする混合フェライト粉の製造方法。
【請求項5】
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする請求項4に記載の混合フェライト粉の製造方法。
【請求項6】
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする請求項4に記載の混合フェライト粉の製造方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の混合フェライト粉を含むことを特徴とする電波吸収体。
【請求項1】
2種以上のフェライト粉を混合した混合フェライト粉であって、
当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該混合フェライト粉を構成する2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5であることを特徴とする混合フェライト粉。
【請求項2】
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする請求項1に記載の混合フェライト粉。
【請求項3】
前記2種以上のフェライト粉が、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とであることを特徴とする請求項1に記載の混合フェライト粉。
【請求項4】
2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造する混合フェライト粉の製造方法であって、
当該2種以上のフェライト粉の、それぞれのピーク粒径の大きさをPとし、当該2種以上のフェライト粉のピーク粒径のうち、最も大きなピーク粒径をPmax、最も小さなピーク粒径をPminとしたとき、Pmax/Pmin≧1.5であり、
且つ、当該2種以上のフェライト粉の各々と、高分子基材とを用いて、当該各々のフェライト粉濃度が90質量%となる電波吸収体を作製し、当該各々の電波吸収体において、複素透磁率の虚数部μ''の最大値を示す周波数をfとし、当該2種以上の電波吸収体の周波数fのうち、最も高い周波数をfmax、最も低い周波数をfminとしたとき、fmax/fmin≦1.3であり、且つ、当該2種以上の電波吸収体の、それぞれの複素透磁率の虚数部μ''の最大値のうち、最も大きいものをμ''max、最も小さいものをμ''minとしたとき、μ''max/μ''min≦1.5である、2種以上のフェライト粉を混合して、混合フェライト粉を製造することを特徴とする混合フェライト粉の製造方法。
【請求項5】
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、Y型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする請求項4に記載の混合フェライト粉の製造方法。
【請求項6】
前記2種以上のフェライト粉として、Z型六方晶フェライト粉と、M型六方晶フェライト粉とを用いることを特徴とする請求項4に記載の混合フェライト粉の製造方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の混合フェライト粉を含むことを特徴とする電波吸収体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2010−114407(P2010−114407A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55425(P2009−55425)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(595156333)DOWAエフテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(595156333)DOWAエフテック株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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