説明

混合器及びその混合器を備えた消火設備

【課題】消火用の配管にバルブなどを取り付ける必要のない混合器を提供する。
【解決手段】T字状に形成された貫通口16を有するボール弁15と、弁室18内にボール弁15が回動可能に収納され、弁室18の両側に同一軸を中心として設けられた第1及び第2の配管接続口12,13を有し、さらに、ボール弁15のT字状の貫通口16のうち水平方向の貫通口16に対して直角方向に延びる貫通口16と常時連通状態の第3の配管接続口14を有し、ボール弁15を所定位置に回動したときに、T字状の貫通口16のうち水平方向の貫通口16と第1及び第2の配管接続口12,13とが連通する弁ホルダー11とを備えた混合器10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火水と消火薬液を所望の比率で混合して流出させる混合器及びその混合器を備えた消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火災発生時に消火水と消火薬液とを混合器により混合し、その混合した消火液により火災を消火する消火設備がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−219187号公報(第3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の消火設備では、混合器に接続された配管上に、混合器へ消火水及び消火薬液をそれぞれ供給する2つの制御弁などのバルブが必要であるため、消火設備の据え付け時には、配管の加工やバルブの取り付けを要し、施工が面倒であるという課題がある。
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたものであり、消火用の配管にバルブなどを取り付ける必要のない混合器及びその混合器を備えた消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る混合器は、T字状に形成された貫通口を有するボール弁と、弁室内にボール弁が回動可能に収納され、その弁室の両側に同一軸を中心として設けられた第1及び第2の配管接続口を有し、さらに、ボール弁のT字状の貫通口のうち水平方向の貫通口に対して直角方向に延びる貫通口と常時連通状態の第3の配管接続口を有し、ボール弁を所定位置に回動したときに、T字状の貫通口のうち水平方向の貫通口と第1及び第2の配管接続口とが連通する弁ホルダーとを備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ボール弁を所定位置に回動したときに、弁ホルダーの第1及び第2の配管接続口と第3の配管接続口とがボール弁のT字状の貫通口を介して連通状態となる。これにより、混合器が消火水及び消火薬液の当該混合器への供給を制御する制御弁としても動作するので、混合器に接続される配管上に制御弁などのバルブを設ける必要がなくなり、そのため、配管の加工やバルブの取り付け作業が不要となり、施工性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態に係る混合器を消火設備に用いた一例を示す消火システムの模式図である。
【図2】実施の形態に係る混合器の側面及び上面を切断して示す断面図である。
【図3】実施の形態の変形例を示す消火システムの模式図である。
【図4】実施の形態に係る混合器の他の例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は実施の形態に係る混合器を消火設備に用いた一例を示す消火システムの模式図、図2は実施の形態に係る混合器の側面及び上面を切断して示す断面図である。
実施の形態における消火システムは、例えば工場や駐車場などの消火設備として適用され、混合器10と、消火薬液加圧装置20と、消火水加圧装置30と、複数の消火ヘッド40とが配管50,60,70により連結されて構成されている。前述の混合器10は、図2(a)(b)に示すように、外観がほぼ球体状に形成され、T字状に形成された貫通口16を有するボール弁15と、内部に設けられた弁室18内にボール弁15が回動可能に収納された弁ホルダー11とで構成されている。
【0009】
弁ホルダー11は、弁室18の両側に同一軸を中心として設けられた第1及び第2の配管接続口12,13を有し、さらに、ボール弁15のT字状の貫通口16のうち水平方向の貫通口16に対して直角方向に延びる貫通口16と常時連通状態の第3の配管接続口14を有している。また、第1及び第2の配管接続口12,13は、ボール弁15を所定位置に回動したときに、T字状の貫通口16のうち水平方向の貫通口16と連通する位置となるように弁ホルダー11に設けられている。混合器10のボール弁15には、ハンドル17が取り付けられている。なお、本実施の形態においては、ハンドル17に連結された電動機(図示せず)が設けられている。
【0010】
弁ホルダー11の第1の配管接続口12は、配管60を介して消火水加圧装置30と接続され、弁ホルダー11の第3の配管接続口14は、配管50を介して消火薬液加圧装置20と接続されている。また、弁ホルダー11の第2の配管接続口13は、配管70を介して複数の消火ヘッド40と接続されている。
【0011】
消火水加圧装置30は、圧力タンク31と圧力調節弁32を備えている。圧力タンク31には、加圧された消火水が充填されている。圧力調節弁32は、混合器10に供給される消火水の圧力を調節するための装置である。消火薬液加圧装置20は、前記と同様に圧力タンク21と圧力調節弁22を備えている。その圧力タンク21には、例えば、消火水側の圧力タンク31とほぼ同じ圧力で加圧された消火薬液が充填されている。圧力調節弁22は、混合器10に供給される消火薬液の圧力を調節するための装置で、前述の圧力調節弁32との相互の圧力調節により消火薬液と消火水の混合比が調節されている。
【0012】
前記のように構成された消火システムにおいては、火災感知器(図示せず)が火災を感知して火災信号を制御盤(図示せず)に送出すると、制御盤は、混合器10に設けられた電動機を駆動して、図2(a)に示す閉止状態の混合器10のボール弁15を所定方向に所定角度(90度)回動させる。そのボール弁15の回動により、混合器10のボール弁15は、図2(b)に示すように開放状態となり、ボール弁15に設けられたT字状の貫通口16のうち水平方向の貫通口16と弁ホルダー11の第1及び第2の配管接続口12,13とが連通する。
【0013】
この時、配管50からボール弁15のT字状の貫通口16まで流入していた消火薬液が弁ホルダー11の第2の配管接続口13側に流れ込むと共に、配管60内の消火水がボール弁15内の貫通口16に流入して消火薬液と混合され、第2の配管接続口13側に流れ込む。その混合された混合液は、弁ホルダー11の第2の配管接続口13から配管70内に流出し、複数の消火ヘッド40から散布され、火災の拡大を防止する。
【0014】
以上のように実施の形態によれば、混合器10のボール弁15に連結された電動機によりボール弁15を所定方向に所定角度回動させたときに、弁ホルダー11の第1及び第2の配管接続口12,13と第3の配管接続口14とがボール弁15のT字状の貫通口16を介して連通状態となる。これにより、混合器10が消火水及び消火薬液の当該混合器10への供給を制御する制御弁としても動作するので、混合器10に接続される配管上に制御弁などのバルブを設ける必要がなくなり、そのため、配管の加工やバルブの取り付け作業が不要となり、施工性に優れている。
【0015】
また、実施の形態においては、圧力調整弁22,32により混合器10へ供給する消火水又は消火薬液の加圧量を調整して消火液の混合比を変えることができるため、ボール弁15の貫通口16及び貫通口16から弁ホルダー11の第3の配管接続口14への内径を自由に設定でき、内径のサイズに影響されずに圧力調整が可能である。これにより、第3の配管接続口14の内径を、粘着性のある消火薬液により第3の配管接続口14内が詰まらない大きさにすることができる。
【0016】
なお、実施の形態では、混合器10を工場や駐車場などの消火設備に適用したことを述べたが、例えば、図3に示すように、携帯用の消火液放射装置80に混合器10を設けて初期消火を行えるようにしても良い。その場合、混合器10と消火薬液加圧装置20との間の配管51、混合器10と消火水加圧装置30との間の配管61には可撓性を有するパイプが使用され、消火薬液加圧装置20及び消火水加圧装置30は、背中に背負うことができるように、例えばリュックサックに収納されている。消火の際には、ハンドガン形状などの放射方向を保持し易い形状の消火液放射装置80を火元の方に向けて、混合器10のハンドル17を所定方向に所定角度回動させて混合器10内で消火水と消火薬液を混合させ、消火液放射装置80の先端のノズルから消火液を放射させる。
このように構成した場合、消火水供給用の制御弁と、消火薬液供給用の制御弁の2つを個々に操作する必要がなく、混合器10のハンドル17を操作するだけで良いので、携帯用の消火液放射装置80を使用する人は、操作を間違えることなく消火を行うことができる。
【0017】
また、実施の形態では、混合器10のボール弁15に設けられたT字状の貫通口16のうち水平方向の貫通口16の内径を同一としたが、図4に示すように、水平方向の貫通口16aをベンチュリー状にしても良い。この場合、ベンチュリー状の貫通口16aを通過する消火水の流速を変化させて発生する負の圧力により、弁ホルダー11の第3の配管接続口14からボール弁15の貫通口16aに消火薬液が吸引されて消火水と混合できるので、消火薬液加圧装置20を用いなくても消火液を生成することができる。
【0018】
ここで、図4に示す混合器10aを図3で説明した携帯用の消火液放射装置80に使用した場合、その混合器10aは、消火水加圧装置30のみが配管61(可撓性のパイプ)を介して接続される。この時、消火薬液加圧装置20が不要であるため、消火薬液が無加圧状態又は低圧で充填されたカートリッジ式のタンク(図示せず)を消火液放射装置80に着脱可能に取り付けるようにすることができる。このように構成した場合、消火液放射装置80に接続される配管61(可撓性のパイプ)は1本で済むので、より携帯性に優れ、消火時の作業性が向上する。
【0019】
また、実施の形態では、混合器10,10aで消火水と消火薬液を混合する際、ボール弁15を所定方向に所定角度(90度)回動させるようにしたが、ボール弁15の回動角度を任意に調節して、第2の配管接続口12と、ボール弁15の貫通口16の連通面積(開口面積)を調整することによって、消火水と消火薬液の混合比を変えるようにしても良い。
【0020】
また、実施の形態では、消火薬液加圧装置20を圧力タンク21と圧力調節弁22とで構成し、消火水加圧装置30を圧力タンク31と圧力調節弁32とで構成したが、ポンプなどの加圧手段によって消火水、消火薬液を混合器10,10aに供給するようにしても良い。
【0021】
また、実施の形態では、ボール弁15の貫通口16をT字状としたが、T字状である必要はなく、ボール弁15を回動したとき、ボール弁15の3方向の連通口とそれぞれ連通するように、弁ホルダー11に3つの配管接続口を設けるようにしても良い。
【0022】
また、実施の形態では、第1の配管接続口12から消火水を供給し、第3の配管接続口14から消火薬液を供給しているが、消火水と消火薬液とを逆の配管接続口から供給するようにしても良い。
【符号の説明】
【0023】
10,10a 混合器、11 弁ホルダー、12 第1の配管接続口、13 第2の配管接続口、14 第3の配管接続口、15 ボール弁、16,16a T字状の貫通口、17 ハンドル、18 弁室、20 消火薬液加圧装置、21 圧力タンク、22 圧力調節弁、30 消火水加圧装置、31 圧力タンク、32 圧力調節弁、40 消火ヘッド、50,51,60,61,70 配管、80 消火液放射装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T字状に形成された貫通口を有するボール弁と、
弁室内に前記ボール弁が回動可能に収納され、その弁室の両側に同一軸を中心として設けられた第1及び第2の配管接続口を有し、さらに、前記ボール弁のT字状の貫通口のうち水平方向の貫通口に対して直角方向に延びる貫通口と常時連通状態の第3の配管接続口を有し、前記ボール弁を所定位置に回動したときに、T字状の貫通口のうち水平方向の貫通口と前記第1及び第2の配管接続口とが連通する弁ホルダーと
を備えたことを特徴とする混合器。
【請求項2】
前記ボール弁に設けられたT字状の貫通口のうち水平方向の貫通口をベンチュリー状にしたことを特徴とする請求項1記載の混合器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の混合器の弁ホルダーの第1の配管接続口に消火水を加圧調整可能に供給する消火水加圧装置が接続され、前記混合器の弁ホルダーの第3の配管接続口に消火薬液を加圧調整可能に供給する消火薬液加圧装置が接続されていることを特徴とする消火設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−212085(P2011−212085A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80835(P2010−80835)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】