説明

混合器及び反応装置

【課題】
スタティックミキサとダイナミックミキサの欠点を補って、充分な生産速度を得ることができるととも、反応効率を向上させて高い歩留まりを得ることができるような混合器及び反応装置を提供する。
【解決手段】
この混合器は、連続処理を行う反応システムにおいて用いる混合器であり、少なくとも2つの微細流路22a,22bが合流する混合流路24を有する第1の混合部8と、第1の混合部8の下流側に設けられた第2の混合部10とを有する。そして、第2の混合部10は、回転対称形状の混合空間2と、混合空間において混合空間の回転対称軸まわりに回転する撹拌子26と、該撹拌子26を駆動する駆動機構28とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化学反応、特に有機化学合成を連続的に行うのに好適な混合器および反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、有機溶媒の溶解した原料と水溶性原料とを反応させて有機化学合成を行う場合、2つの原料が反応するのは2つの溶媒の界面である。従って、界面までの原料分子の移動が反応の律速段階となる、いわゆる拡散律速反応となる。このような反応を促進する手段として、界面までの距離を反応容器の寸法によって制約するのが、スタティックミキサあるいはマイクロチャンネルチップと呼ばれる反応装置である。このようなマイクロチャンネルチップは、温度制御も容易で、歩留まりは良いが、微量の処理をするので、量産手段としては適していない。
【0003】
一方、ダイナミックミキサによって液を強制撹拌し、2つの液をエマルジョン化した状態を形成し、界面比の増大と拡散距離の低下によって反応を進行させる方法も知られている。例えば、容器に原料を投入し、撹拌翼によってこれを所定時間混合させるようにするバッチ式プロセスが有る。しかしながら、バッチ処理では所望の生成物を得るために比較的大きな容器を使用することになり、十分な撹拌混合を得られず、また詳細な温度条件の設定も難しいので、歩留まりが低下する。
【0004】
そこで、連続して流体を流通させる比較的小型の容器中で撹拌子を回転させる連続式処理装置の採用が考えられる。特許文献1には、ブレードを有する撹拌子を用いる混合器が開示され、特許文献2には、棒状の撹拌子を用いる混合器が開示されている。しかしながら、これらの文献記載の技術では、強制対流混合効果による粒子微細化効果が、反応に必要なエマルジョン形成に必ずしも充分であるとは言えず、歩留まりが低下する可能性が有る。
【0005】
【特許文献1】特開平1−262936号公報
【特許文献2】特開2001−9254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、スタティックミキサとダイナミックミキサの欠点を補って、充分な生産速度を得ることができるととも、反応効率を向上させて高い歩留まりを得ることができるような混合器及び反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の混合器は、連続処理を行う反応システムにおいて用いる混合器であって、少なくとも2つの微細流路が合流する混合流路を有する第1の混合部と、前記混合部の下流側に設けられた第2の混合部とを有し、前記第2の混合部は、回転対称形状の混合空間と、前記混合空間において混合空間の回転対称軸まわりに回転する撹拌子と、該撹拌子を駆動する駆動機構とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明においては、第1の混合部において、少なくとも2つの微細流路を流れる原料流体が混合流路において合流して拡散による混合を行い、さらに第2の混合部において、混合空間の回転対称軸まわりに回転する撹拌子による強制撹拌による対流混合が行われる。これにより、少なくとも部分的に拡散混合した状態の流体を対流混合させることで、効率的な混合作用を得ることができる。
【0009】
請求項2に記載の混合器は、請求項1に記載の発明において、前記第2の混合部に対して、前記前記第1の混合部が複数配置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明においては、1つの第2の混合部に対して、第1の混合部が複数配置されているので、比較的に処理速度の小さい第1の混合部と比較的に処理速度の大きい第2の混合部の流量をバランスさせることができる。
【0010】
請求項3に記載の混合器は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記混合流路は、前記混合空間の径方向に対して傾斜して形成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、混合流路が混合空間の径方向に対して傾斜して形成されているので、装置の径を変えずに所定の混合流路長さを確保することができる。
【0011】
請求項4に記載の混合器は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の発明において、前記第2の混合部は、前記混合空間の軸線上に開口する導出流路を有し、前記導出流路の開口部とこれに対向する前記撹拌子の表面の間に、未撹拌の流体が短絡的に流出するのを防止する狭隘部が形成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明においては、第2の混合部において、導出流路の開口部とこれに対向する撹拌子の表面の間に形成された狭隘部により、未撹拌の流体が短絡的に流出するのが防止され、充分な撹拌作用を得ることができる。
【0012】
請求項5に記載の反応装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の混合器と、これに原料流体を供給する供給源と、前記混合器における反応生成物を回収する回収容器とを有することを特徴とする。
請求項5に記載の反応装置においては、第1の混合部と第2の混合部を有する混合器による混合作用により、効率良く反応生成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1ないし請求項4に記載の混合器によれば、スタティックミキサとダイナミックミキサの欠点を補って、充分な生産速度と高い歩留まりを得ることができる。
【0014】
請求項5に記載の反応装置によれば、混合器の高い混合作用により、品質の良い反応生成物を生産性良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の実施の形態では、混合によって反応を起こさせて、生成物を得ることを目的とするので、混合器は同時に反応器であり、混合システムは反応システムである。
【0016】
図1(a)及び(b)は、この発明の第1の実施の形態の混合器であって、円盤状部材の中央に混合空間2が形成された本体部4と、これを下側から覆うベース部6とにより、2つの微細流路が合流する混合流路を有する第1の混合部(スタティックミキサ部)8と、中央の円筒状混合空間2内で回転する撹拌子を有する第2の混合部(ダイナミックミキサ部)10が構成されている。ベース部6の下方には、ヒータ12a等の温度調節装置が設けられ、混合器は温度センサ12b及びコントローラ12cにより所定温度に調整されている。本体部4の上部には導出孔14を有するカバー16が設けられている。
【0017】
本体部4の上縁部の2ヶ所にはそれぞれ第1及び第2の原料流体導入口(継手)18a,18bが設けられ、これは本体部4を貫通して下面に開口する縦導入流路20a,20bに連通し、本体部4の下面に形成された水平導入流路22a,22bにつながる。図2(a)に示すように、各水平導入流路22a,22bは、それぞれ径方向に中心に向かって延びた後、周方向に2つに分岐して中間部において他側から同様に延びてきた水平導入流路22a,22bと合流し、径方向中心側に延びる2本の混合流路24を形成する。これらの2つの混合流路24が、第1の混合部8を構成する。
【0018】
これらの流路の断面積は1mm以下、好ましくは0.25mm以下、より好ましくは0.01mm以下である。また、導入流路20a,20b,22a,22bの断面寸法は、図2(b),(c)に記載のとおり、幅をW、深さをHとした場合、W≦Hの条件であることが望ましい。また、導入流路20a,20b,22a,22bの断面形状は、これらの他に、矩形型や半円型など対象とする化学反応に応じて都度選択する。
【0019】
混合空間2は、代表寸法(内径)Dが、200mm以下程度の円筒状空間であり、ここに、これより外径が小さい撹拌子26が挿入されている。混合空間2の大きさを小さくすれば、混合空間2内の流体の容積に対する表面積の比率が大きくなるため、容器内流体の温度制御や流体混合が促進される効果が得られる。混合空間2の代表寸法(内径)Dは、200mm以下、より好ましくは100mm以下、さらに好ましくは10mm以下であることが望ましい。
【0020】
撹拌子26は、この実施の形態では、混合空間2の軸線に直交する方向に延びるカプセル状の部材であり、駆動機構28によって、混合空間2の軸線回りに強制回転駆動される。撹拌子26の材質は、磁性体もしくは金属にテトラフルオロエチレン重合体やセラミック、ガラスをはじめとする耐有機系流体の特性を有する材料をコーティングしたものを使用する。駆動機構28は、ベース部6および本体部4には、コイル30が同一円周上に等配置されており、励磁電流をコントローラ32より入力し、コイル30に順次極性を持たせて磁化し、それにより撹拌子26を回転させるものである。
【0021】
撹拌子26の形状及び寸法は、回転によって乱流を形成する作用が発揮できるように選択する。例えば、混合空間2の内径に対する撹拌子26の外径の差、すなわち径方向の隙間は、各導入流体に対し、撹拌子26の回転によりせん断力を効果的に効かせ、混合の促進を図るために1.0mm以下であることが望ましく、より望ましくは0.5mm以下、さらに望ましくは0.2mm以下である。
【0022】
この実施の形態では、混合空間2から流体を排出するための導出流路34が、混合空間2の上部にその軸線に沿って形成されている。それにより、図3に示すように、導出流路34の開口部と撹拌子26の間に、混合空間2内の流路において一番狭い部分である狭隘部Gが形成されている。
【0023】
このように、周方向に不均一な形状の撹拌子26と導出流路34の開口部との間に狭隘部Gを設定することにより、混合空間2が準密閉空間となり、撹拌子26により強い対流が起きても、混合流路24から導入された未混合の流体が短絡的に導出流路34へ流れてしまうような事態が回避され、結果として充分な撹拌を経た流体が流出する。このような効果を得るために、狭隘部Gは狭い程良いと思われるが、狭すぎると、流路抵抗が過大となって、ポンプや回転駆動装置に負荷が掛かったり、摩擦による品質不良等が起きたりする。これらを回避しつつ充分な撹拌効果を得るには、撹拌子26の高さHと混合空間2の高さhとの差は、2.0mm以下が良く、より好ましくは、0.2mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下である。
【0024】
以下、上記のように構成された混合器を用いて、2つの相互に簡単に溶解しない流体の混合を行う場合の作用を説明する。2つの流体は、ポンプ等の作用によって、それぞれの導入口より導入され、導入流路を経て、微細断面の混合流路24に流入する。ここで、混合流路24内の2つの流体の界面における拡散混合によって、混合流路24を出るまでに、一部又は全部の原料流体が混合する。この過程で、流体はヒータ12a等の温度調節手段12によって所定の温度に調節される。
【0025】
少なくとも一部が拡散混合した流体は、さらに混合空間2に導入される。混合空間2では、流体は撹拌子26による強制対流により、撹拌され、剪断される。これにより、未混合であった流体は微細化してエマルジョン状態となり、さらに拡散混合の作用によって均一に混合される。
【0026】
このように、この発明においては、微細断面の混合流路24を有する第1の混合部8において、一部又は全部の原料流体を混合状態とした後、撹拌子26による強制対流混合を行う第2の混合部に送ることにより、スタティックミキサとダイナミックミキサの双方の利点を活かした効率のよい混合器が構成される。
【0027】
なお、供給流体は液体に限定されるものではなく、例えば流体の一方が気体である場合には、強い剪断力で引きちぎられた気泡はマイクロバブル化(微細気泡化)し、混合空間2内に均一に分散される。マイクロバブルでは、気体容積に対するバブル表面積が飛躍的に増大するため、反応効率が向上する。
【0028】
この混合器では、混合空間2の直径Dと撹拌子26の長さdsの比(ds/D)が1に近いほど、撹拌子26の回転により、各混合供給流体の掻きとりが効果的になされ、それにより、混合空間2内での供給流体の薄層が効果的に形成される。これにより、供給流体同士の分子間距離も小さくなるので、分子拡散による混合が促進される。一方、この比が小さすぎると、撹拌子26の先端部の速度が小さくなって、あるいは、流体の流れが円滑でなくなって逆効果になるので注意を要する。
【0029】
撹拌子26の回転速度について説明すると、この混合器では、供給流体の導入流速Vは、
V=(4・Q)/(π・di2) ・・・式1
で求められ(Qは供給流体の供給量QAまたはQB、diは混合流路24の内径)、撹拌子26の周速度Vcは、
Vc = π・ds・ω ・・・式2
で求められる(dsは撹拌子26の長さ)。ここで、流速と撹拌子26の周速度との差である、相対(周)速度が大きくなれば、すなわち、導入流速/撹拌子26周速の比が小さくなれば、混合空間2内に導入された各供給流体の流体層は微細化され、各供給流体間の流体層は薄くなり、混合空間2内での供給流体の積層数が多くなる。それにより、供給流体同士の分子間距離も小さくなるので、分子拡散による混合が促進される。供給流体の導入速度/撹拌子26の周速の比が1/3以下、より好ましくは1/5以下、さらに好ましくは1/8以下であることが望ましい。
【0030】
図示する例では、撹拌子26を滑らかな曲面で形成することによって、寸法差を小さくしても円滑な回転や流れを確保することができる。同じ効果を得るために、混合空間2の容積と撹拌子26の体積の体積比(撹拌子26体積/混合空間2容積)を小さくしてもよいが、寸法差が大きくなるとよどみ領域ができてしまう。寸法差を小さくしてかつ体積比を小さくするには、撹拌子26の扁平比(=h/w)を1より大きくしてやればよいが、この実施の形態のような遠隔的に駆動される撹拌子26で、かつ単純な棒状では姿勢が不安定になるので難しい。後述するような3方向以上に延びる放射状の撹拌子26や、駆動軸で直接駆動される方式の場合には採用可能である。
【0031】
また、混合空間2の容積と撹拌子26の体積の体積比は対象とする反応に対し、最適なものを選択することが必要である。例えば、析出系の反応では体積比(回転体体積/混合室容積)を小さくすれば、析出物の混合空間2への滞留による、撹拌子26の停止を抑制することが可能となる。体積比としては、5%〜80%、より好ましくは15%〜60%、さらに好ましくは20%〜40%が良いが、適時、対象とする化学反応により最適値を選択することは言うまでも無い。
【0032】
混合状態を制御する上で重要となる他の因子としては、混合空間2における流体の全体としての通過時間が挙げられる。これは、流体の供給圧力や導入流路20、導出流路34での絞り度等によって調整することができる。従って、充分な混合あるいはそれに伴う反応時間を得ることができるように混合流路24、導出流路34の内径di、deを設定しなければならない。
【0033】
この通過時間をTとすると、混合空間2内の供給流体の層数は、撹拌子26の単位時間当たりの回転数ωと時間Tの積(ω・T)に関係する。またここで、一つの層の厚みは、混合空間2直径Dを前記層数で割った値の関数となる。これにより、この発明による混合器では、混合空間2直径Dが小さく、撹拌子26の回転数ωが大きいほど、混合空間2内の供給流体の流体層が微細化し、よりDが小さくなれば、混合空間2内の供給流体の滞留時間が減少して、短時間で効果的な混合が達成される作用が生じる。なお、本体部4及びベース部6に形成する供給流体の導入用流路および混合(反応)生成物の導出流路34の内径は、φ8.0mm以下、より望ましくはφ1.0mm以下であることが望ましい。
【0034】
上述したように、この発明による混合器における混合の作用は、複雑な因子の組合せによって支配される。これらの中には、流体の供給、排出速度、流体の粘性、供給流体の混合比、混合の結果起こる反応や生成物の種類等が挙げられる。特に、この実施の形態のような遠隔駆動の撹拌子26では、駆動機構28による流体の汚染を防止することができる利点があるが、撹拌子26の回転速度を完全に制御することも難しい。そこで、混合あるいは反応処理の態様毎に、装置の各部の形状、寸法、その他の条件を試行して、最適のものを採用することが望ましい。以下に、この装置の種々のバリエーションを説明する。
【0035】
図4は、撹拌子26の形状の変形例であり、(a)は、両端が半球で中央が筒状のカプセルタイプ、(b)は円柱状、(c)は角柱状のものである。また、(d)はカプセルタイプを、(e)は円柱状を、(f)は角柱状をそれぞれを十字状にしたものである。これらは、いずれも回転軸線(混合空間2の軸線)に直交する方向に延びる軸線を持つ放射状部40を有している。このような放射状部40の断面形状は、上記例に限られるものではなく、任意の曲線的、直線的形状が採用可能である。例えば、曲線形状としては、円、楕円、あるいは適宜の2次、3次の閉曲線が挙げられ、直線形状としては、三角形をはじめとする任意の多角形が挙げられる。勿論、曲線形状と直線形状の混合形状でもよい。例えば、上述したように、縦に扁平な楕円は(a)や(b)のタイプでは倒れてしまうので採用しにくいが、(d)、(e)のタイプでは採用可能であろう。
【0036】
また、放射状部40の数は、上で示した2、4の場合に限られず、適宜の数を採用することができる。放射状部40のそれぞれの形状、長さその他の寸法を同じにする必要は無い。例えば、(e)において交差する1つの方向を短くしてもよい。それによって姿勢の安定を確保する等の作用を得ることができるからである。また、(a)、(d)の放射状部40は、その軸線に沿って等断面ではないが、他は軸線に沿って等方的であり、いずれでもよいことは明らかである。角部は適宜に面取りする(丸める)ことが望ましい。
【0037】
図5は、狭隘部Gの構造を工夫した他の実施の形態の混合器を示すものである。この実施の形態では、導出流路34の基部に、拡径部64を形成し、撹拌子26にこれに対応する形状の突起部62を形成した。これにより、狭隘部Gを的確に形成でき、かつ撹拌子26の回転中心を維持する芯出し機能を持たせることができる。
【0038】
図6(a)の例では、合流点の形状をT字路ではなく、Y字路としたもので、これにより、混合流路24を短く設定している。斜めの流路の角度を変えることにより、混合流路24の長さを変えることができる。長さの設定は、反応に応じて適宜に行えばよい。
【0039】
また、図6(b)の例では、混合流路24に至る傾斜流路60を分岐させて、合流を多段で行うようにしたものである。これにより、混合空間2内に導入される試薬が多層化し、各流体層は薄くなる。従って、原料流体同士の距離も小さくなるので、分子拡散による混合効率向上の効果により混合が促進される。
【0040】
さらに、図6(c)及び(d)は、混合流路24の長さを確保するための変形例である。このように混合流路24を混合空間2の径方向に対して傾斜させ、あるいは曲線状とすることにより、円盤状の本体の寸法を大きくすることなく、混合流路24の長さを増やすことができる。
【0041】
図7は、この発明のさらに他の実施の形態を示すもので、1つの混合空間2に対してより多くの混合流路24を合流させるようにしたものである。この実施の形態では、多くの混合流路24を形成するために、一方の原料流体を分配するための分配流路を混合流路24とは異なる平面上に形成している。
【0042】
すなわち、図8(a)に示すように、本体部4の下面に混合流路24が形成されており、ベース部6の上面には、図8(b)に示すように、環状の第1の分配流路66aが形成されている。そして、このベース部の下方に、別の第2のベース部68を設け、図8(c)に示すように、この第2のベース部の上面に環状の第2の分配流路66bを形成し、その所定箇所に形成した貫通孔70を介して混合流路24と同一面にある水平導入流路に原料流体を供給するようにしている。
【0043】
これにより、分配流路66a,66bと混合流路24とが異なる面に有るために、これらの流路が干渉することがなく、3以上の混合流路24に原料流体を供給することができる。このように、1つの混合空間2に対して多くの混合流路24を合流させることにより、第1の混合部8と第2の混合部10の混合速度、すなわち反応量をバランスさせることができる。
【0044】
図9は、混合流路24の長さをより長くするための変形例を示すもので、図9(a)は混合流路24を径方向に対して傾斜させたもので、図9(b)は、混合流路24をさらに曲線(螺旋)状に形成したものである。このようにすることで、同じ大きさの本体部4により長い混合流路24を形成することができる。
【0045】
なお、温度制御手段としては、ヒータ12aの代わりにベース部6に加熱もしくは冷却用の媒体Mを流す熱媒体流路を形成し、かつ温度センサ12bを混合空間2の温度を検出する位置に設置してもよい。加熱もしくは冷却媒体の流量を調節する流量調整弁を設け、温度センサの指示値に基づきコントローラにより制御することで、化学反応に最適な温度制御を達成し、化学反応を高効率に行うことが可能となる。
【0046】
本発明では、供給流体を圧送するポンプにおけるライン圧力を増大することにより、温度に加え、容器全体の内圧を増大させることができる。各流路中、もしくは混合室内の圧力を検出可能な適切な位置に圧力センサを配置することにより、その信号に基づく圧力制御を施すことにより、対象とする反応プロセスに応じた最適な圧力条件を設定することができる。
【0047】
また、混合器やその下流の流路に分析装置を設置してもよい。分析装置は、混合(反応)生成物の成分を分析する装置であり、クロマトグラフィ装置のように混合(反応)生成物の成分を分析する装置などである。これにより、混合(反応)後の生成物の成分を逐次分析し、分析結果(収率など)をリアルタイムでコントローラに出力する。コントローラは、この分析結果に基づいて所定の判断基準により判断を行い、電動機回転数とヒータ52の温度の制御信号を電動機およびヒータ52に出力し、目的生成物の成分(収率)が最大値もしくは目標値となるようにこれらを制御することができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態における混合器では、混合空間2をメンテナンスする場合、円盤状部材を順次分解・取り外しすれば、流路の寸法や形状の変更、あるいは混合空間2の洗浄などのメンテナンスが可能である。また、同様にメンテナンス後の組立も非常に簡便であり、円盤状部材を結合するのみである。従って、混合器は、既存のマイクロリアクタと比較して、保守、管理が簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の実施の形態の混合器を示す、(a)外観斜視図、(b)断面図である。
【図2】(a)は、図1(b)のA線に沿った矢視図、(b)及び(c)は、流路の断面形状を示す図である。
【図3】図1(b)の混合空間の部分を拡大して示す図である。
【図4】(a)ないし(f)は、撹拌子の各種変形例を示す図である。
【図5】(a)及び(b)は、図1の実施の形態の狭隘部の変形例を示す図である。
【図6】(a)ないし(d)は、混合流路の各種変形例を示す図である。
【図7】(a)及び(b)は、他の実施の形態の混合器を示す図である。
【図8】(a)ないし(c)は、図7の実施の形態のそれぞれA,B,C線に沿った矢視図である。
【図9】(a)及び(b)は、図7の実施の形態の混合流路に関する変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
2 混合空間
4 本体部
6 ベース部
8 第1の混合部
10 第2の混合部
12 温度調節手段
12a ヒータ
12b 温度センサ
12c コントローラ
14 導出孔
16 カバー
18a,18b 導入口
20a,20b 縦導入流路
22a,22b 水平導入流路
24 混合流路
26 撹拌子
28 駆動機構
30 コイル
32 コントローラ
34 導出流路
38 コントローラ
40 放射状部
60 傾斜流路
62 突起部
64 拡径部
66a,66b 分配流路
68 第2のベース部
70 貫通孔
G 狭隘部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続処理を行う反応システムにおいて用いる混合器であって、
少なくとも2つの微細流路が合流する混合流路を有する第1の混合部と、
前記混合部の下流側に設けられた第2の混合部とを有し、
前記第2の混合部は、回転対称形状の混合空間と、前記混合空間において混合空間の回転対称軸まわりに回転する撹拌子と、該撹拌子を駆動する駆動機構とを有することを特徴とする混合器。
【請求項2】
前記第2の混合部に対して、前記前記第1の混合部が複数配置されていることを特徴とする請求項1に記載の混合器。
【請求項3】
前記混合流路は、前記混合空間の径方向に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の混合器。
【請求項4】
前記第2の混合部は、前記混合空間の軸線上に開口する導出流路を有し、前記導出流路の開口部とこれに対向する前記撹拌子の表面の間に、未撹拌の流体が短絡的に流出するのを防止する狭隘部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の混合器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の混合器と、これに原料流体を供給する供給源と、前記混合器における反応生成物を回収する回収容器とを有することを特徴とする反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−43892(P2008−43892A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222837(P2006−222837)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】