説明

清拭除塵布

【課題】糸クズの発生を抑制することができ、しかも形崩れがなくて拭き易くかつ簡単に拭き面を替えることができる清拭除塵布を提供する。
【解決手段】合成繊維からなる長繊維またはその加工糸をラッセル編みして得たままの製編生地、前記長繊維またはその加工糸をトリコット編みして得たままの製編生地または前記長繊維またはその加工糸を織って得たままの製織生地を幅方向に2つ折りし、その2つ折りした生地2Aを、インパルス溶断装置3によりその長さ方向に溶断しかつ溶断端末を溶着し、これにより袋状の清拭除塵布1が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の被塗装面を事前清浄化するため等に用いられる清拭除塵布に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した清拭除塵布として、可撓性を有する基布に、油或いは樹脂等の粘着剤を予め付与したものが知られている(特許文献1参照)。上記粘着剤は、自動車等の被塗装面を拭き取った埃が空中に飛散しないように付着させるために用いられる。
【0003】
ところで、上記基布として、以下の2つに大別される。第1の基布は、綿等の天然繊維またはポリエステル等の合成繊維からなる短繊維の織物や編物を所定寸法に裁断したものである。第2の基布は、ポリエステル等の合成繊維からなる長繊維の織物を、その両端を中にして四つ折りし、長さ方向に裁断したものである。
【特許文献1】特開平7−231870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1の基布の場合は、短繊維であるために織物や編物から糸クズが脱落するという欠点がある。また、第2の基布の場合は、長繊維を用いるものの織物である故に、裁断された端末からフィラメントが脱落して糸クズが発生するという難点がある。
【0005】
更に、第1の基布と第2の基布も共に、例えば幅寸法が15cm〜20cm、長さ寸法が45cm〜90cmに裁断されたものを、長さ方向に3つ折り乃至6つ折り(例えば中央部を挟む両側で3つ折り)して、自動車等の被塗装面を拭くように用いられるが、折り畳んでいるので拭くときに形が崩れて拭き難くなり、汚れた拭き面を替えるのに手間が掛かるという難点があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、糸クズの発生を抑制することができ、しかも形崩れがなくて拭き易くかつ簡単に拭き面を替えることができる清拭除塵布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係る清拭除塵布は、合成繊維からなる長繊維またはその加工糸をラッセル編みして得たままの製編生地、前記長繊維またはその加工糸をトリコット編みして得たままの製編生地または前記長繊維またはその加工糸を織って得たままの製織生地を幅方向に2つ折りし、その2つ折りした生地をその長さ方向に溶断しかつ溶断端末を溶着して袋状に形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係る清拭除塵布は、前記2つ折りした生地の幅寸法が15cm以上30cm以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係る清拭除塵布は、合成繊維からなる長繊維またはその加工糸をラッセル編みして得た広幅の製編生地を幅方向でカットした所定幅の裁断生地を幅方向に2つ折りし、その2つ折りした裁断生地を、その長さ方向に溶断しかつ溶断端末を溶着して袋状に形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明に係る清拭除塵布は、前記2つ折りした裁断生地の幅寸法が15cm以上30cm以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明に係る清拭除塵布は、埃付着用の粘着剤を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び2の発明による場合には、袋状の清拭除塵布は、開口部と、2つ折りされた底部と、これらの間の両側部とを有する。そして、上記開口部は、ラッセル編みやトリコット編みのままの生地の端部で、或いは製織したままの生地の端部で形成されていてフィラメント切れが無い。また、上記両側部は、溶断された端末であって溶着しているので、糸クズ(リント)の脱落が無い。更に、上記底部は2つ折りされた部分からなり、糸クズの脱落が無い。
【0013】
更にまた、開口部から手の先を入れて拭く使用形態を採ることができる袋状に形成されているので、形崩れがなくて拭き易く、しかも汚れたら上下面を逆にするか或いは新しいものに替えることで、簡単に拭き面を替えることができる。特に、請求項2の場合には、使い易い深さ寸法の清拭除塵布が得られる。
【0014】
請求項3及び4の発明による場合にも、袋状の清拭除塵布は、開口部と、2つ折りされた底部と、これらの間の両側部とを有し、上記開口部は、ラッセル編みのままの生地で形成されていてフィラメント切れが無い。また、上記両側部は、溶断された端末であって溶着しているので、糸クズ(リント)の脱落が無い。更に、上記底部は2つ折りされた部分からなり、糸クズの脱落が無い。加えて自動車等の被塗装面を拭き取り時にバリに当たってもラッセル編み地のため糸クズ(リント)脱落が無い。
【0015】
更にまた、開口部から手の先を入れて拭く使用形態を採ることができる袋状に形成されているので、形崩れがなくて拭き易く、しかも汚れたら上下面を逆にするか或いは新しいものに替えることで、簡単に拭き面を替えることができる。特に、請求項4の場合には、使い易い深さ寸法の清拭除塵布が得られる。
【0016】
請求項5の発明による場合には、自動車等の被塗装面を拭き取った埃が空中に飛散しないように粘着剤に付着させ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を具体的に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1〜図3に、合成繊維からなる長繊維をラッセル編みして得た製編生地から清拭除塵布を製造する工程を示す。図1は製編生地2を示す平面図、図2は製編生地2を幅方向に2つ折りした状態を示す平面図、図3は2つ折りした状態の製編生地2を、2つ折り部分2bとは反対方向(A方向)から見た正面図である。
【0019】
この製編生地2は、図1に示すように、例えば幅寸法W1が30cm以上60cm以下の或る一定寸法の生地であって、その長手方向Lに製編されつつ送られるようになっている。
【0020】
続いて、得られた製編生地2を、図1に一点鎖線にて示す部分2bで幅方向に2つ折りし、つまり幅寸法W1/2の2つ折り生地2Aを作り(図2参照)、その2つ折り生地2Aを、図3に示すように、所定位置に設けたインパルス溶断装置3により所定長さに溶断して清拭除塵布1にする。
【0021】
このようにして製造された清拭除塵布1は、幅方向に2つ折りされた部分2bが底部1aとなり、その底部1aとは反対側が製編生地2の幅方向両端2cからなる開口部1bとなり、インパルス溶断装置3により溶断された部分が両側面1cとなった、袋状に形成される。なお、製編生地2の幅寸法W1を30cm以上60cm以下としたのは、その半分の深さ寸法の使い易い清拭除塵布1が得られるようにするためである。
【0022】
上記製編生地2は、図4に示すようにループの端が上段のコースに連結されているたて編組織となっていて、幅方向の両端には糸の端が無い組織である。なお、製編生地2としては、合成繊維からなる長繊維の加工糸をラッセル編みしたものを含む。
【0023】
上記インパルス溶断装置3は、図2および図3に示すように2つ折り生地2Aをその表裏両側から挟んで、受け板3aと溶断部3bとが設けられたもので、受け板3a及び溶断部3bは生地2Aの幅寸法W1/2よりも若干長い寸法の長さを有する。本実施形態では受け板3aを固定、溶断部3bを受け板3aに対して接離するように構成され、かつ、溶断部3bにパルス電流を一定時間だけ供給し、その溶断部3bを、間に生地2Aを挟んだ状態で受け板3aに押し付け、パルス電流の供給が終了して一定時間経過後に溶断部3bが受け板3aから遠ざかるようになっている。
【0024】
このインパルス溶断装置3による清拭除塵布1の溶断は、パルス電流の供給により加熱した溶断部3bが受け板3a側へ押し付けられ、これにより生地2Aから分離されることで行われる。そして、溶断された清拭除塵布1の溶断端末は、溶断部3bが清拭除塵布1の溶断部分を押し付けたままでパルス電流の供給終了に伴って冷却していき、その後に前記清拭除塵布1の溶断部分から遠ざかるので、生地2Aの表裏部分が溶着した状態とされる。この溶着した部分が上記側面1cとなる。なお、もう一方の片端末は同様にして既に溶着された側面1cであり、清拭除塵布1の幅寸法L1としては、開口部1bに手の先が入る寸法、例えば10cm以上20cm以下の任意の寸法に設定される。
【0025】
よって、得られた清拭除塵布1は、その両側面1cがそれぞれ溶着された状態で、かつ開口部1bが製編生地2の幅方向両端2cからなる袋状に形成され、2つ折り部分2bは底部1aとして機能する。
【0026】
したがって、この第1実施形態の清拭除塵布1は、開口部1bが解け難いラッセル編みからなる製編生地2の幅方向両端2cで形成され、また両側面1cが溶着されており、底部1aが2つ折り部分2bで形成されているので、4辺の全てにおいて、糸クズ(リント)の脱落が無い。加えて、摩擦の少ないラッセル編みによる製編のためフィラメント切れが無く、また自動車等の被塗装面を拭き取り時にバリに当たっても編み地のため糸クズの脱落が無い。
【0027】
また、この清拭除塵布1は、開口部1bに手の先を入れて拭く使用状態を採ることができる袋状に形成されているので、形崩れがなくて拭き易く、しかも汚れたら上下面を逆にするか或いは新しいものに替えることで、簡単に拭き面を替えることができる。加えて、被塗装面と手との間が生地1枚分の薄肉となっているので、被塗装面の凹凸や、異物の検知が容易である。
【0028】
更に、清拭除塵布1に粘着剤、例えば油や樹脂、或いは油脂ワックス等を含浸等させた構成とすることにより、自動車等の被塗装面を拭き取った埃が空中に飛散しないように粘着剤に付着させ得る。なお、粘着剤としては、上記以外で埃を付着し得るものも含むことは勿論である。
【0029】
なお、この第1実施形態ではラッセル編みによる製編生地を用いて清拭除塵布を製造する場合について説明しているが、本発明はこれに限らない。例えば、30cm以上60cm以下の幅寸法W1でトリコット編みして得たままの製編生地や、同じく30cm以上60cm以下の幅寸法W1で織ったままの製織生地を用いても、同様の清拭除塵布を得ることができる。上記製織生地としては、平織の一種であるパナマ織生地が、解け難い点で好ましい。
【0030】
図5に、トリコット編みの一例であるフルトリコット編み5の編み目を示す(図中のLは製編方向である)。このフルトリコット編み5においても、前述したラッセル編みと同様、ループの端が上段のコースに連結されているたて編組織となっていて、幅方向の両端には糸の端が無い組織となる。また、図示を省略するが、3枚筬トリコット編み等の他のトリコット編みによる生地も同様である。
【0031】
(第2実施形態)
この第2実施形態は、清拭除塵布の深さ寸法よりも長い幅寸法のラッセル編みによる製編生地を裁断したものを用いて、清拭除塵布を製造する場合である。
【0032】
上記製編生地としては、図6に示すように、合成繊維からなる長繊維若しくはその加工糸を、その長手方向Lにラッセル編みして得た広い幅寸法W2の製編生地10が用いられる。そして、上記製編生地10を幅方向でカットし、図示例では2箇所(破線部分)でカットし、幅寸法W3(≒W2/3)が30cm以上60cm以下の或る一定寸法の裁断生地11になす。裁断生地11の長手方向Lは製編生地10の製編方向と一致している。
【0033】
この裁断生地11を用いる清拭除塵布の製造は、図7に示すように、裁断生地11を幅方向に2つ折りし、幅寸法が15cm以上30cm以下の或る一定寸法W3/2の2つ折り生地12を形成する。図7中の12bは2つ折り部分で、12cは裁断生地11の両端である。
【0034】
次に、図8に示すように、上記2つ折り生地12を、その長さ方向に、前同様のインパルス溶断装置3により一定間隔で溶断する。これにより、両側面13cのそれぞれが溶着され、かつ開口部13bが裁断生地11の両端12cからなる袋状であって、深さ(2つ折り生地12の幅寸法W3/2に相当)が使い易い寸法、例えば15cm以上30cm以下の或る一定寸法で、幅寸法L1が手の先が入る寸法、例えば10cm以上20cm以下の或る一定寸法である清拭除塵布13が製造される。2つ折り生地12の2つ折り部分12bは清拭除塵布13の底部13aとして機能する。
【0035】
したがって、この第2実施形態による清拭除塵布13は、製編生地10を幅方向にカットした裁断生地11を用いているが、製編生地10がラッセル編みによるため、裁断生地11の幅方向の一端または両端がカットされていても、フィラメント切れが無く、また自動車等の被塗装面を拭き取り時にバリに当たっても糸クズ(リント)脱落が無い。更に、インパルス溶断装置3により溶断された両側面13cは溶着しており、底部13aが2つ折り部分12bで形成されているので、4辺において糸クズの脱落が無い。
【0036】
また、この清拭除塵布13は、開口部13bに手の先を入れて拭く使用状態を採ることができる袋状に形成されているので、形崩れがなくて拭き易く、しかも汚れたら上下面を逆にするか或いは新しいものに替えることで、簡単に拭き面を替えることができる。加えて、被塗装面と手との間が生地1枚分の薄肉となっているので、被塗装面の凹凸や、異物の検知が容易である。
【0037】
更に、第2実施形態の清拭除塵布13においても、第1実施形態と同じように、粘着剤を含浸等させた構成とすることにより、自動車等の被塗装面を拭き取った埃が空中に飛散しないように粘着剤に付着させ得る。
【0038】
なお、この第2実施形態では裁断生地を得る際に製編生地を幅方向にカットしているが、本発明はこれに限らず、製編生地がラッセル編みであるので、製編生地を製編方向(L方向)に2または3以上でカットしても、フィラメント切れが無いため、上述のように製編生地を製編方向でカットしたものを用いても、清拭除塵布13と同様の糸クズの発生がない清拭除塵布を得ることができる。
【0039】
また、上述した第1、第2実施形態ではインパルス溶断装置として、受け板を固定、溶断部を受け板に対して接離する構成のものを用いているが、本発明はこれに限らない。例えば、受け板及び溶断部が相互に接離する構成としたインパルス溶断装置、或いは、生地を挟んで両側にパルス電流が供給される溶断部を配置した構成のインパルス溶断装置を用いてもよい。
【0040】
更に、本発明は、上述したインパルス溶断装置の代わりに、生地を溶断して清拭除塵布を分離でき、しかも清拭除塵布の両端を溶着できるような溶断溶着装置、例えば一定幅の溶着部分を形成してその溶着部分の途中位置をカットする構成の溶断溶着装置などを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】合成繊維からなる長繊維をラッセル編みして得た製編生地から清拭除塵布を製造する工程を示す図であって、製編生地を示す平面図である。
【図2】合成繊維からなる長繊維をラッセル編みして得た製編生地から清拭除塵布を製造する工程を示す図であって、製編生地を幅方向に2つ折りした状態を示す平面図である。
【図3】合成繊維からなる長繊維をラッセル編みして得た製編生地から清拭除塵布を製造する工程を示す図であって、幅方向に2つ折りした状態の製編生地を、2つ折り部分とは反対方向(A方向)から見た正面図である。
【図4】ラッセル編みの編み目を示す図である。
【図5】フルトリコット編みの編み目を示す図である。
【図6】清拭除塵布の幅寸法よりも長い幅寸法の製編生地を示す平面図である。
【図7】図6の製編生地を幅方向にカットして得た裁断生地を幅方向に2つ折りした状態を示す平面図である。
【図8】図7の正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1、13 清拭除塵布
2、10 製編生地
2A、12 2つ折り生地
3 インパルス溶断装置
11 裁断生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維からなる長繊維またはその加工糸をラッセル編みして得たままの製編生地、前記長繊維またはその加工糸をトリコット編みして得たままの製編生地または前記長繊維またはその加工糸を織って得たままの製織生地を幅方向に2つ折りし、その2つ折りした生地をその長さ方向に溶断しかつ溶断端末を溶着して袋状に形成されたことを特徴とする清拭除塵布。
【請求項2】
前記2つ折りした生地の幅寸法が15cm以上30cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の清拭除塵布。
【請求項3】
合成繊維からなる長繊維またはその加工糸をラッセル編みして得た広幅の製編生地を幅方向でカットした所定幅の裁断生地を幅方向に2つ折りし、その2つ折りした裁断生地を、その長さ方向に溶断しかつ溶断端末を溶着して袋状に形成されたことを特徴とする清拭除塵布。
【請求項4】
前記2つ折りした裁断生地の幅寸法が15cm以上30cm以下であることを特徴とする請求項3に記載の清拭除塵布。
【請求項5】
埃付着用の粘着剤を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の清拭除塵布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−13021(P2008−13021A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185395(P2006−185395)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(390031923)協和産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】