説明

減圧鋳造装置のシール構造

【課題】摺接面の潤滑が十分に得られ、耐久性、シール性を確保することのできる減圧鋳造装置のシール構造を提供する。
【解決手段】プランジャーロッド3が往復動可能に配設された射出スリーブの反金型側の開放端部を覆う減圧室を備える減圧鋳造装置にあって、プランジャーロッド3の外周に摺接してその摺接面のシールを行うためのシール構造として、上記摺接面に当接するように配設された真空シール部材14を備えるとともに、その真空シール部材14の大気側及び真空側の双方に、潤滑剤を前記摺接面に供給する潤滑剤供給溝15,16をそれぞれ設けられるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャーロッドが往復動可能に配設された射出スリーブの反金型側の開放端部を覆う減圧室を備える減圧鋳造装置にあって、プランジャーロッドの外周に摺接してその摺接面のシールを行う減圧鋳造装置のシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、鋳造に際して金型のキャビティー内を減圧することで、気泡などの鋳造欠陥を低減させる減圧鋳造装置が実用されている。そして、キャビティー内のより高い減圧度を確保するため、射出スリーブの反金型側の開放端部を覆う減圧室を備えた、特許文献1に見られるような減圧鋳造装置が知られている。
【0003】
図7は、そうした減圧室を備える減圧鋳造装置の構成を示している。同図に示すように、キャビティー50の設けられた金型51には、射出スリーブ52が付設されている。射出スリーブ52には、プランジャーロッド53の先端に固定されたプランジャーチップ54が往復動可能に配設されている。
【0004】
射出スリーブ52の外周には、フランジ55が設けられている。またそのフランジ55の反金型側には、減圧カップ56が固定されている。そして、フランジ55及び減圧カップ56によって、射出スリーブ52の反金型側の端部を覆う減圧室57が区画形成されている。
【0005】
キャビティー50及び減圧室57は、バルブ58を介して、真空タンク59及び真空ポンプ60に接続されている。そして真空ポンプ60によって減圧された真空タンク59を、バルブ58を開いてキャビティー50及び減圧室57と連通させることで、それらキャビティー50及び減圧室57の減圧がなされるようになっている。
【0006】
こうした減圧鋳造装置において、減圧室57の気密性を確保するには、プランジャーロッド53の外周に摺接してその摺接面のシールを行うシール構造が必要となる。従来、真空容器に取り付けられた軸材の外周に摺接してその摺接面のシールを行うシール構造として、特許文献2に記載のものが知られている。
【0007】
図8は、同文献2に記載のシール構造を示している。同図に示すように、このシール構造では、軸材61の貫通するホルダー62が真空容器63に取り付けられている。このホルダー62の内周には、真空容器63側から順に3つのシール部材64,65,66が設けられている。そして、これらシール部材64,65,66によって、ホルダー62の内周と軸材61の外周との摺接面のシールがなされるようになっている。
【0008】
ホルダー62の内周にあって、真空側の2つのシール部材64,65の間には、潤滑剤である真空グリースを溜めておくためのグリース溜め溝67が形成されている。またホルダー62の内周にあって、大気側の2つのシール部材65,66の間には、真空に排気される真空排気溝68が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−93712号公報
【特許文献2】実開平6−35737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
こうした従来のシール構造にあっても、軸材61の動きが限定されたものである場合には、実用に耐え得るものとなっている。ところが、上記のような減圧鋳造装置では、軸材であるプランジャーロッド53は、鋳造時に高速で動作されるようになっており、上記従来のシール構造では、十分な耐久性、シール性を保てなくなっている。
【0011】
すなわち、上記従来のシール構造では、グリース溜め溝67に溜められたグリースは、真空側の2つのシール部材64,65の間には、十分に行き渡るものの、中央のシール部材65によって堰き止められてしまうため、大気側の2つのシール部材65,66の間の摺接面には、ほとんど行き渡らないようになっている。そのため、そうした部分では、油膜切れが生じて摺接面間の潤滑が不十分となるため、摩耗等によりシール部材66等が損傷してしまうようになる。したがって、上記のような従来のシール構造では、軸材が高速で動作される減圧鋳造装置にあっては、十分な耐久性、シール性の確保は困難となっている。
【0012】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、摺接面の潤滑が十分に得られ、耐久性、シール性を確保することのできる減圧鋳造装置のシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
減圧鋳造装置のシール構造としての請求項1に記載の発明は、プランジャーロッドが往復動可能に配設された射出スリーブの反金型側の開放端部を覆う減圧室を備える減圧鋳造装置にあって、プランジャーロッドの外周に摺接してその摺接面のシールを行うためのシール構造をその前提とするものとなっている。そして上記課題を解決するため、上記摺接面に当接するように配設された真空シール部材を備えるとともに、その真空シール部材の大気側及び真空側の双方に、潤滑剤を摺接面に供給する潤滑剤供給部をそれぞれ設けるようにしている。
【0014】
このように構成されたシール構造では、真空シール部材の真空側、大気側の双方において摺接面への潤滑剤の供給がなされるようになる。そのため、真空シール部材が潤滑剤を堰き止めようとも、その真空側、大気側の双方に潤滑剤を行き渡らせることができる。したがって、上記構成によれば、摺接面の潤滑が十分に得られ、耐久性、シール性を確保することができるようになる。
【0015】
なお、請求項2に記載のように、大気側の前記潤滑剤供給部の更に大気側、及び真空側の前記潤滑剤供給部の更に真空側にスクレーパーをそれぞれ設けるようにすれば、摺接面への異物の侵入を防止することができるようになる。またスクレーパーによって潤滑剤が堰き止められるため、潤滑部分から潤滑剤が過剰に流出しないようにもなる。更に、流出が抑えられたことで、摺動面に高い圧力の潤滑剤の層が形成されるため、異物が摺動面やシール部に入り難くなるようにもなる。
【0016】
また請求項3に記載のように、真空シール部材の外周にクリアランスを設けるとともに、そのクリアランスに潤滑剤を供給するようにすれば、真空シール部材が摺接面に対してフローティングするようになり、摺接面の偏摩耗を防止することができる。
【0017】
なお、こうした減圧鋳造装置では、シール構造や減圧室を構成する部材の重量によって、摺接面の鉛直上方の部分に高い荷重か掛かるようになる。そのため、こうしたシール構造では、摺接面の鉛直上方の部分に偏摩耗が生じ易くなる。
【0018】
その点、請求項4によるように、真空シール部材の外周への潤滑剤の供給を、鉛直上方から行うようにすれば、潤滑剤の圧力で真空シール部材が鉛直下方に押し下げられ、その反力でシール構造全体は鉛直上方に持ち上げられるようになる。そのため、摺接面の鉛直上方の部分に作用する荷重を軽減して、摺接面の偏摩耗を抑制することができるようになる。
【0019】
また請求項5によるように、潤滑剤供給部を上記摺接面に形成された溝として構成するとともに、鉛直下方から鉛直上方に向うにつれて溝幅が拡大するようにその溝を形成することによっても、摺接面の偏摩耗を抑制することができる。この場合には、潤滑剤の供給の圧力に応じた力は、溝幅の広い鉛直上方の部分では大きくなり、溝幅の狭い鉛直下方の部分では小さくなる。そのため、シール構造全体は、鉛直上方に押し上げられるようになり、摺接面の鉛直上方の部分に作用する荷重が軽減されることになる。したがって、請求項5の構成でも、摺接面の偏摩耗を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態についてその適用対象となる減圧鋳造装置の射出スリーブ、プランジャーロッド及びその周辺部の側部断面構造を示す断面図。
【図2】同実施形態のシール構造の側部断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のシール構造の真空シール部材の周辺部を拡大して示す断面図。
【図4】同実施形態のシール構造の真空シール部材周辺部の軸直交面における断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態のシール構造の潤滑剤供給溝の形成態様を示す斜視図。
【図6】同実施形態でのプランジャーロッド周囲の潤滑剤供給力の作用態様を模式的に示す図。
【図7】従来の減圧鋳造装置の構成を模式的に示す略図。
【図8】従来のシール構造の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の減圧鋳造装置のシール構造を具体化した一実施の形態を、図1〜図6を参照して詳細に説明する。
本実施の形態のシール構造の適用対象となる減圧鋳造装置は、そのシール構造を除き、図7に示した従来の減圧鋳造装置と基本的に同様の構成となっている。すなわち、本実施の形態の適用される減圧鋳造装置も、キャビティーの設けられた金型に付設された射出スリーブ、その射出スリーブ内に往復動可能に配設されたプランジャーチップが先端に固定されたプランジャーロッドを備えている。また減圧カップが設けられ、それにより射出スリーブの反金型側の端部を覆う減圧室が形成された構成となっている。
【0022】
図1は、本実施の形態の適用対象となる減圧鋳造装置の射出スリーブ、プランジャーロッド及びその周辺部の側部断面構造を示している。同図に示すように、略円管形状に形成された射出スリーブ1の反金型側(図中右方)には、注湯口2が形成されている。こうした射出スリーブ1の内部には、プランジャーロッド3の先端に固定されて、注湯口2より注湯された溶湯を金型のキャビティーに圧送するプランジャーチップ4が往復動可能に配設されている。
【0023】
注湯口2の形成された射出スリーブ1の反金型側の端部の周囲には、これを囲繞するように円管形状の減圧カップ5が配設されている。そして減圧カップ5の反金型側には、プランジャーロッド3の外周と摺接し、その摺接面をシールするシール構造としてのシール部6が固定されている。そしてこれら減圧カップ5及びシール部6により、気密された減圧室17が区画形成されている。
【0024】
図2は、シール部6の側部断面構造を示している。同図に示すように、シール部6は、真空側(図中左方)から順に、それぞれ略円環形状に形成された真空側スクレーパー押え7、真空側銅ブッシュ8、シール押え9、大気側銅ブッシュ10、大気側スクレーパー押え11を備えている。
【0025】
またこのシール部6には、真空側スクレーパー押え7と真空側銅ブッシュ8とにより挟持されるかたちで真空側スクレーパー12が、大気側銅ブッシュ10と大気側スクレーパー押え11とにより挟持されるかたちで大気側スクレーパー13が、それぞれ配設されている。これらのスクレーパーは、真空側銅ブッシュ8及び大気側銅ブッシュ10とプランジャーロッド3との摺接面への異物の侵入を防止するものとなっている。
【0026】
更にシール押え9の内周には、真空側銅ブッシュ8と大気側銅ブッシュ10とにより挟み込まれた態様で、略円環形状に形成された真空シール部材14が配設されている。この真空シール部材14は、自身の弾性でプランジャーロッド3の外周に密接し、これによりシール部6とプランジャーロッド3との摺接面のシールを行っている。
【0027】
さて、本実施の形態のシール構造では、真空側銅ブッシュ8及び大気側銅ブッシュ10の内周に、潤滑剤供給部としての潤滑剤供給溝15,16が形成されている。これらの潤滑剤供給溝15,16は、真空側銅ブッシュ8及び大気側銅ブッシュ10の内周を周回するように形成されている。そしてこれらの潤滑剤供給溝15,16には、潤滑剤である真空グリースが外部から供給されるようになっている。
【0028】
こうした本実施の形態では、真空シール部材14の真空側、大気側の双方に、潤滑剤の供給がなされるようになっている。そのため、真空シール部材14が潤滑剤を堰き止めようとも、その真空側、大気側の双方に潤滑剤を行き渡らせることができる。したがって、同図に示すように、真空側銅ブッシュ8とプランジャーロッド3との摺接面、大気側銅ブッシュ10とプランジャーロッド3との摺接面のいずれにも、油膜Lが形成されるようになり、摺接面の潤滑が十分に得られるようになる。
【0029】
図3は、真空シール部材14の周辺部を拡大して示したものとなっている。同図に示すように、真空シール部材14の外周とシール押え9の内周との間には、若干のクリアランスが形成されている。そしてそのクリアランスにも、真空グリースが供給されるようになっている。この真空シール部材14の外周への真空グリースの供給は、鉛直上方から行われるようになっている。
【0030】
こうした本実施の形態では、図4に示すように、真空シール部材14は、真空グリースの供給に応じた力により、鉛直下方に押し下げる方向への荷重を受けるようになる。一方、シール押え9は、その反力で、鉛直上方に押し上げる方向への荷重を受けることになる。シール部6は、シール部6及びこれに固定された減圧カップ5の重量で、鉛直下方への荷重を受けており、プランジャーロッド3の鉛直上方の部分で偏摩耗が生じ易くなっている。その点、本実施の形態のシール構造では、上記のような真空シール部材14の外周への真空グリースの供給力で、シール押え9が、ひいてはシール部6全体が鉛直上方に押し上げられるため、重量による鉛直下方への荷重を軽減して、偏摩耗を抑制することができるようになっている。
【0031】
また本実施の形態では、潤滑剤供給溝15,16の形状の工夫によっても、上記のような偏摩耗の抑制が図られるようになっている。
図5は、本実施の形態におけるプランジャーロッド3周囲の潤滑剤供給溝15,16の形成態様を示している。同図に示すように、本実施の形態では、潤滑剤供給溝15,16は、鉛直下方から鉛直上方に向うにつれて溝幅が拡大するように形成されている。こうした本実施の形態では、図6に示すように、潤滑剤供給溝15,16への真空グリースの供給圧に応じた力は、溝幅の広い鉛直上方の部分では大きくなり、溝幅の狭い鉛直下方の部分では小さくなる。そのため、そうした真空グリースの供給圧に応じた力の格差により、シール部6全体が鉛直上方に持ち上げられるようになり、摺接面の鉛直上方の部分に作用する荷重が軽減されることになる。そのため、こうした潤滑剤供給溝15,16の形状によっても、摺接面の偏摩耗が抑制されるようになっている。
【0032】
以上説明した本実施の形態の減圧鋳造装置のシール構造によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態のシール構造は、プランジャーロッド3が往復動可能に配設された射出スリーブ1の反金型側の開放端部を覆う減圧室17を備える減圧鋳造装置にあって、プランジャーロッド3の外周に摺接してその摺接面のシールを行うものとなっている。そして本実施の形態では、そうした摺接面に当接するように配設された真空シール部材14を備えるとともに、その真空シール部材14の大気側及び真空側の双方に、潤滑剤を摺接面に供給する潤滑剤供給部としての潤滑剤供給溝15,16をそれぞれ設けるようにしている。
【0033】
このように構成されたシール構造では、真空シール部材14の真空側、大気側の双方において摺接面への潤滑剤の供給がなされるようになる。そのため、真空シール部材14が潤滑剤を堰き止めようとも、その真空側、大気側の双方に潤滑剤を行き渡らせることができる。したがって、本実施の形態によれば、摺接面の潤滑が十分に得られ、耐久性、シール性を確保することができるようになる。
【0034】
(2)本実施の形態では、潤滑剤供給溝15の形成された真空側銅ブッシュ8の真空側、及び潤滑剤供給溝16の形成された大気側銅ブッシュ10の大気側に、摺接面への異物の侵入を防止するための真空側スクレーパー12及び大気側スクレーパー13をそれぞれ設けるようにしている。そのため、真空側銅ブッシュ8及び大気側銅ブッシュ10とプランジャーロッド3との摺接面への異物の侵入を効果的に防止することができるようになる。また真空側スクレーパー12及び大気側スクレーパー13によって真空グリースが堰き止められるため、潤滑部分から真空グリースが過剰に流出しないようにもなる。更に、流出が抑えられたことで、摺動面に高い圧力の真空グリースの層が形成されるため、異物が摺動面やシール部に入り難くなるようにもなる。
【0035】
(3)本実施の形態では、真空シール部材14の外周にクリアランスを設けるとともに、そのクリアランスに潤滑剤を供給するようにしている。そのため、真空シール部材14が摺接面に対してフローティングするようになり、摺接面の偏摩耗を抑制することができるようになる。
【0036】
(4)本実施の形態では、真空シール部材14の外周への潤滑剤の供給を、鉛直上方から行うようにしている。こうした場合、潤滑剤の供給力で真空シール部材14は鉛直下方に押し下げられ、その反力でシール構造全体が鉛直上方に持ち上げられるようになる。そのため、シール部6や減圧カップ5の重量により摺接面の鉛直上方の部分に作用する荷重を軽減して、摺接面の偏摩耗を抑制することができるようになる。
【0037】
(5)本実施の形態では、潤滑剤供給溝15,16を、鉛直下方から鉛直上方に向うにつれて溝幅が拡大するように形成するようにしている。こうした場合、潤滑剤の供給圧に応じた力は、溝幅の広い鉛直上方の部分では大きくなり、溝幅の狭い鉛直下方の部分では小さくなる。そのため、シール部6全体は、鉛直上方に押し上げられるようになり、摺接面の鉛直上方の部分に作用する荷重が軽減されることになる。したがって、本実施の形態によれば、摺接面の偏摩耗を更に抑制することができるようになる。
【0038】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、潤滑剤供給溝15,16を、鉛直下方から鉛直上方に向うにつれて溝幅が拡大するように形成するようにしていた。シール部6や減圧カップ5の重量による偏摩耗が問題とならない場合には、そうした形状以外の形状に潤滑剤供給溝15,16を形成しても良い。
【0039】
・上記実施の形態では、真空シール部材14の外周への潤滑剤の供給を、鉛直上方から行うようにしていた。もっとも、鉛直上方以外の方向から真空シール部材14の外周への潤滑剤の供給を行ったとしても、真空シール部材14の外周にクリアランスを設けるとともに、そのクリアランスに潤滑剤を供給すれば、真空シール部材14が摺接面に対してフローティングするようになるため、摺接面の偏摩耗をある程度に抑制することはできる。
【0040】
・上記実施の形態では、真空シール部材14の外周にクリアランスを設けるとともに、そのクリアランスに潤滑剤を供給するようにしていた。真空シール部材14をフローティングさせなくても、摺接面の偏摩耗を十分に抑えることができるのであれば、真空シール部材14の外周のクリアランスの形成やそのクリアランスへの潤滑剤の供給は、割愛するようにしても良い。
【0041】
・上記実施の形態では、潤滑剤供給溝15の形成された真空側銅ブッシュ8の真空側、及び潤滑剤供給溝16の形成された大気側銅ブッシュ10の大気側に、摺接面への異物の侵入を防止するための真空側スクレーパー12及び大気側スクレーパー13をそれぞれ設けるようにしていた。もっとも、減圧鋳造装置がクリーンな環境で使用される場合など、摺動面への異物の侵入が問題とならない場合には、真空側スクレーパー12及び大気側スクレーパー13の一方、あるいは双方を割愛するようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…射出スリーブ、2…注湯口、3…プランジャーロッド、4…プランジャーチップ、5…減圧カップ、6…シール部、7…真空側スクレーパー押え、8…真空側銅ブッシュ、9…シール押え、10…大気側銅ブッシュ、11…大気側スクレーパー押え、12…真空側スクレーパー、13…大気側スクレーパー、14…真空シール部材、15…潤滑剤供給溝、16…潤滑剤供給溝、17…減圧室、50…キャビティー、51…金型、52…射出スリーブ、53…プランジャーロッド、54…プランジャーチップ、55…フランジ、56…減圧カップ、57…減圧室、58…バルブ、59…真空タンク、60…真空ポンプ、61…軸材、62…ホルダー、63…真空容器、64…シール部材、65…シール部材、66…シール部材、67…グリース溜め溝、68…真空排気溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャーロッドが往復動可能に配設された射出スリーブの反金型側の開放端部を覆う減圧室を備える減圧鋳造装置にあって、前記プランジャーロッドの外周に摺接してその摺接面のシールを行うためのシール構造であって、
前記摺接面に当接するように配設された真空シール部材を備えるとともに、
その真空シール部材の大気側及び真空側の双方に、潤滑剤を前記摺接面に供給する潤滑剤供給部がそれぞれ設けられてなる
ことを特徴とする減圧鋳造装置のシール構造。
【請求項2】
大気側の前記潤滑剤供給部の更に大気側、及び真空側の前記潤滑剤供給部の更に真空側に、スクレーパーがそれぞれ設けられてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の減圧鋳造装置のシール構造。
【請求項3】
前記真空シール部材の外周にクリアランスを設けるとともに、そのクリアランスに前記潤滑剤を供給する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の減圧鋳造装置のシール構造。
【請求項4】
前記真空シール部材の外周への前記潤滑剤の供給は、鉛直上方から行われる
請求項3に記載の減圧鋳造装置のシール構造。
【請求項5】
前記潤滑剤供給部は、前記摺接面に形成された溝であり、該溝は、鉛直下方から鉛直上方に向うにつれて溝幅が拡大するように形成されてなる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の減圧鋳造装置のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−66289(P2012−66289A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213961(P2010−213961)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【Fターム(参考)】