説明

減少した黄色値を有するポリスルホン及びポリエーテルスルホン及びその製造方法

本発明は、重合を、塩基性の、非プロトン性の溶媒中で、壁沿いの、強制輸送撹拌機を用いて実施することを特徴とする、19より小さいDIN6167に応じた黄色値を有するポリスルホン及び30より小さいDIN6167に応じた黄色値を有するポリエーテルスルホンを製造する方法に関する。更に、本発明は、この方法を用いて初めて入手可能なポリエーテルスルホン及びポリスルホン、並びに、この種のポリマーの、成形体、シート、膜及びフォームの製造のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、19より小さいDIN6167に応じた黄色値を有するポリスルホン及び30より小さいDIN6167に応じた黄色値を有するポリエーテルスルホンの製造方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、この方法を用いて初めて入手可能なポリエーテルスルホン及びポリスルホン、並びに、この種のポリマーの、成形体、シート、膜及びフォームの製造のための使用に関する。
【0003】
ポリエーテルスルホン及びポリスルホンは、高性能熱可塑性プラスチックの群に属し、かつ、高い熱成形抵抗性、良好な機械的特性及び固有の難燃性により優れている(E. M. Koch, H. -M. Walter, Kunststoffe 80 5 (1990) 1146; E. Doering, Kunststoffe 80, (1990) 1 149)。その良好な生体相容性のために、ポリエーテルスルホン及びポリスルホンは、透析膜の製造のための材料としても使用される(S. Savariar, G. S. Underwood, E. M. Dickinson, PJ. Schielke, A.S. Hay, Desalination 144 (2002) 15)。
【0004】
ポリエーテルスルホン及びポリスルホンの製造は、通常は、双極性−非プロトン性溶媒中で適したモノマー構成要素の重縮合により高められた温度で行われる(R.N. Johnson et.al., J.Polym. Sci. A-1 5 (1967) 2375, J.E. McGrath et.al., Polymer 25 (1984) 1827)。
【0005】
ポリアリーレンエーテルスルホンの、適した芳香族ビスハロゲンスルホン及び芳香族ビスフェノール又はその塩からの、少なくとも1種のアルカリ金属−又はアンモニウムカルボナート又は−ヒドロゲンカルボナートの存在下での、非プロトン性溶媒中での製造は、例えば、US 4 870 153 , EP 113 1 12, EP-A 297 363及びEP-A 135 130中に記載されている。
【0006】
この文献中に記載されているこれらの全ての製造方法は、その光学特性について、完全には満足のいかないポリエーテルスルホン及びポリスルホンを提供する。従って、この文献公知の方法は、30より高いDIN6167に応じた不満足に高い黄色度を有する製品を生じる。更に、この文献公知の製品は、ASTMD1003に応じて測定して、85%より低い透過率、及び、同じ方法に応じて測定して、顕著に3%を上回る濁り度を有する。
【0007】
本発明の基礎となる課題は、従って、前述した欠点を有しない、改善したポリエーテルスルホン及びポリスルホンを製造するための方法を見出すことにある。
【0008】
意外にも、前記課題は、この重合を、塩基性の、非プロトン性の溶媒中で、壁沿い(wandgaengig)の、強制輸送式(zwangsfoerdernd)撹拌機を使用して実施することにより解決された。
【0009】
場合によるアルカリ金属−又はアンモニウムカルボナート又は−ヒドロゲンカルボナートの存在下での及び非プロトン性溶媒中での重合は、例えばUS 4 870 153 , EP 1 13 1 12, EP-A 297 363, EP 347 669及びEP-A 135 130中に詳細に記載され、この部分は本願明細書に参照により取り込まれる。特に、この刊行物からは、例えば適した出発生成物、触媒及び溶媒、任意の物質の適した量の比及び適した反応時間及び−パラメーター、例えば反応温度又は−圧力並びに適した後処理方法が取り出されることができる。撹拌機としては、前述した文献中では大抵は、重合の間に流れ障害物を有するクロスブレード撹拌機又はプロペラー撹拌機が使用され、これは、壁沿い又は強制輸送式ではない。無論、重合材料の後処理では、部分的に、壁沿いの馬蹄型撹拌機が、例えばEP 937749中に記載されているとおり使用される。
【0010】
本発明による方法においては、壁沿い及び強制輸送式の撹拌機が、重合の間にも使用される。壁沿い及び強制輸送式の撹拌機として、例えば馬蹄型攪拌機が使用されることができ、これは有利には交差されていて、即ち、立てかけられた(angestellt)撹拌翼を有する。例えば、M. ZlokarnikによりRuehrtechnik-Theorie und Praxis, 1999, 第6頁中で記載された螺旋撹拌機(Wendelruehrer)が使用されることができる。特に有利には、Ekato社のいわゆるSeba撹拌機又はPravisc撹拌機の使用であり、例えばこれは、DE 4219 733, G 9208095.2, G 9208094.4及びG 9208096.0及びHandbuch der Ruehrtechnik, 第2版2000, 85頁中に記載されている。有利には、d/D>0.9を有する強制輸送撹拌機が使用される。
【0011】
本発明による方法における壁沿いの及び強制輸送式の撹拌機の使用は、ポリエーテルスルホン及びポリスルホンの記載された特性の改善化を生じるのみではない。本発明の更なる利点は、反応時間の短縮化にあり、かつ反応をより濃縮化して実施する可能性に基づく。本発明による方法は、高い方法経済性及びプロセス可能性に優れている。
【0012】
実施例
a)ポリスルホン又はポリエーテルスルホンの製造
内部温度計、ガス導入管、水分離器を有する還流冷却器を有する4Lの反応器中で、乾燥したモノマー、1)ジクロロジフェニルスルホン及びビスフェノールA又は2)ジクロロジフェニルスルホン及びジヒドロキシジフェニルスルホンを、等モル量で、乾燥した炭酸カリウムと一緒に、窒素雰囲気中に装入し、N−メチルピロリドン(NMP)中で撹拌下で溶解させ、190℃に加熱した。この反応水を留去し、かつ、この充填レベルを、NMPの添加により反応の間一定に維持した。この反応を、冷NMPでの希釈により、中断し、引き続き140℃で45分間塩化メチル(10l/h)を、このバッチ中に導入した(45分間)。この後で窒素を導入し(20l/h)かつこのバッチを冷却した。この生じる塩化カリウムを濾別し、かつ、このポリマー溶液を水中で沈殿させた。このポリマー粘度を、粘度数(VZ/ml/g)を用いて評価した。ポリエーテルスルホン及びポリスルホンの粘度数をNMPの1%の溶液中で25℃で測定した。
【0013】
b)成形体の製造及び光学的特性
生成物の光学特性の評価のために、射出成形した試験体(円いディスク、直径60mm、厚さ2mm)を、材料温度310℃(PSUのため)又は350℃(PESのため)で、及び、140℃の成形用具温度で製造した。透過率及び濁度(ヘーズ)の測定を、ASTM D 1003に応じて行い、この生成物の固有色を、DIN 6167に応じた黄色値(YI)に基づき測定した。
【0014】
ポリスルホンPSUに関する試験の結果を第1表中に列記する。ポリエーテルスルホンPESに関する試験の結果を第2表中に記す。
【0015】
第1表:異なる撹拌機を用いたPSU−重合試験
【表1】

*)固形含有量(FG)を、固形物質(モノマー及び炭酸カリウム)の質量として、全体のバッチの質量に関して定義している。
**)Paravisc撹拌機、Ekato、Handbuch der Ruehrtechnik、第2版、2000、85頁。
【0016】
Paravisc及び交差した馬蹄型攪拌機は、壁沿いであり、かつ、強制輸送式撹拌機(参照、実施例1及び2)であり、残りは異なる(参照、比較例V3及びV4)。
【0017】
この収率は全ての試験において、理論値の98%よりも高かった。
【0018】
第2表:異なる撹拌機を用いたPES−重合試験
【表2】

【0019】
Paravisc及び交差した馬蹄型攪拌機は、壁沿いであり、かつ、強制輸送式撹拌機(参照、実施例5及び6)であり、残りは異なる(参照、比較例V7及びV8)。
【0020】
この収率は全ての試験において、理論値の98%よりも高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合を、塩基性の、非プロトン性の溶媒中で、壁沿いの、強制輸送撹拌機を用いて実施することを特徴とする、19より小さいDIN6167に応じた黄色値を有するポリスルホン及び30より小さいDIN6167に応じた黄色値を有するポリエーテルスルホンを製造する方法。
【請求項2】
d/D>0.9を有する強制輸送撹拌機を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶媒として、NMP、NEP、スルホラン、DMF、DMAC及び/又はDMSOを使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
撹拌機として、じゃま板を有する馬蹄型撹拌機を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
交差した馬蹄型撹拌機を使用することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
撹拌機としてSeba撹拌機を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ASTM D1003に応じた透過率が、85%以上であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ASTM D1003に応じた濁り度が、3%未満であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により得られるポリスルホン及びポリエーテルスルホン。
【請求項10】
成形体、シート、膜及びフォームの製造のための、請求項9記載のポリスルホン及びポリエーテルスルホンの使用。

【公表番号】特表2009−541508(P2009−541508A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515830(P2009−515830)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055797
【国際公開番号】WO2007/147759
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】