説明

減衰装置

本発明は、減衰装置、特に震動ダンパーに関し、該減衰装置若しくは震動ダンパーは中空の球体を含んでおり、該球体は、減衰液体(5)で満たされ、かつ半径方向に配置された複数の減衰体(10)を含んでおり、該減衰体の半径方向内側の端部は、前記球体の中央に配置された共有の1つの保持体に取り付けられており、かつ該減衰体の半径方向外側の端部は、前記球体の内壁に直接に若しくは間接的に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰装置、特に震動ダンパーに関する。
【0002】
減衰装置は、公知技術において種々の構造のものが知られていて、例えば衝撃を減衰するために、特に地震の際に発生する衝撃を減衰するために用いられている。この種の減衰装置は、衝撃が発生する他のあらゆる使用分野でも、特に自動車分野でも知られている。
【0003】
公知の減衰装置はすべて次のような欠点を有しており、つまり、公知の減衰装置の減衰作用は、減衰装置の構造に基づき予め規定された1つの方向でしか充分に得られない。減衰装置は、一般的に1つの直線方向でのみ良好な減衰作用を発生させる構造である。
【0004】
しばしば次のような問題が発生しており、つまり、対象物は、どの方向で衝撃が支承すべき対象物に作用するかを予め正確に知ることなしに、衝撃を減衰するために、減衰装置に結合されて支承されている。このような状況は例えば地震減衰の場合に発生している。発生する衝撃の強さも、衝撃が対象物、例えば建物に作用する方向も、予測され得ないものである。一度取り付けられた公知形式の減衰装置は、衝撃が到来する所定の方向には向けられないものである。従って、特に振動の際に発生する衝撃若しくは振動の効果的な防止は、達成されにくく、衝撃若しくは振動は完全には排除されない。
【0005】
本発明の課題は、多くの方向で、有利にはすべての方向で少なくともほぼ同一の減衰特性を有する減衰装置を提供することにある。このような減衰装置は、取り付け位置を特定の方向に規定することなく万能形として用いられるものである。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の構成によれば、減衰装置は中空の1つの球体を含んでおり、該球体は、減衰液体で満たされていて、かつ半径方向に配置された複数の減衰体を含んでおり、該減衰体の半径方向内側の端部は、球体の特に中央に配置された共有の1つの保持体に取り付けられており、かつ該減衰体の半径方向外側の端部は、球体の内壁に直接に若しくは間接的に取り付けられている。
【0007】
本発明に係る減衰装置は、有利な実施の形態によれば、球体の中心点に関して完全に対称的に形成されており、少なくともこのことは球体の内部構造に当てはまる。このような構成により、種々の方向で球体に作用するあらゆる衝撃が、減衰装置の上記対称構造に基づき常に一様に減衰される。
【0008】
本発明に係る減衰装置においては、ほぼ2つの減衰効果が得られ、つまり、第1の減衰効果として、液体内において作用する衝撃の直接的なエネルギー消滅が行われ、第2の減衰効果として減衰体内における衝撃のエネルギー消滅が行われる。減衰体が半径方向に球体内に配置され、かつ更に有利には互いに対称性を有し、特に球体の中心点に対する点対称性を有しているので、追加的な減衰体によりオーバーラップされる前記第2の減衰効果は、すべての方向で少なくともほぼ同じである。
【0009】
減衰装置の内部の構造、つまり共有の保持体の周りに配置された減衰体から成る装置は、直接的に若しくは間接的に中間要素を介して内部の構造、つまり減衰体から成る装置を球体の内壁に取り付けることにより球体の中央に配置される。減衰体のこのような中央配置に基づき、かつ有利には対称性に基づき、中央の保持体及び減衰体から成る該構造体は、三次元的な放射状の構成を成している。
【0010】
本発明に係る減衰装置の球体は、例えば互いに相対する2つの支承台に保持されてよい。両方の支持台のうちの1つは、例えば基礎に配設され、相対する別の支承台は、支承すべき対象物、例えば建物に配設される。
【0011】
減衰装置の球形構造に基づき、減衰装置を互いに相対する2つの支承台に保持することができるだけでなく、必要に応じて、有利には球体の回りに対称的に配置された2つより多くの支承台に保持することも可能である。
【0012】
本発明の有利な実施の形態によれば、減衰液体は、衝撃、特に減衰液体内を伝播する衝撃波が減衰され、特に数分の一に減衰されるように選ばれている。このために例えば、衝撃若しくは減衰液体内を伝播する衝撃波の作用に際して形状を変化させてエネルギーを消費する減衰液体が用いられる。有利には減衰液体は、形状変化が減衰液体の破壊なしに完全に可逆的であるように選ばれる。
【0013】
特に有利な実施の形態によれば、減衰液体はラジカルの長い大きな分子を有しており、例えば、プロテオグリカンを含む液体である。プロテオグリカンは、ヒアルロン酸のキールからなる羽状構造を有していて、衝撃波により発生する高いエネルギーを減衰することができる。プロテオグリカンは、約2×106の質量及び数マイクロメートルの長さを有する分子集合体を成すものである。粘性特性は、主としてプロテオグリカンによって規定される。この場合に、約95%の多糖及び約5%の蛋白質から成っている。プロテオグリカンの多糖鎖は、グリコサミノグリカンによって形成されており、グリコサミノグリカンは繰り返される二糖構造を有し、アミノ糖、グルコサミン若しくはガラトサミンの誘導体を含んでいる。重要なグリコサミノグリカンは例えば、ヒアルロナート、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、へパラン硫酸及びヘパリンである。
【0014】
プロテオグリカンは例えば生物の細胞組織、特に帯組織及び/又は骨組織から得られるものが知られている。従って、可能な実施の形態によれば、使用される減衰液体は骨間の液体であり、特に動物の海綿状の骨材から得られる液体である。このような液体は、例えば動物死体の組織及び骨から抽出され、若しくは同一の特性若しくはほぼ同等の特性を有する減衰液体が、合成される。
【0015】
本発明により用いられる減衰液体は、特にプロテオグリカンを含む液体であり、次の特性、つまり、21°で0.995g/cm3の密度、21°で9786N/m3の比重、及び36°で0.23〜0.25Pasの動的な粘度を有している。
【0016】
合成の減衰液体においては、例えば水、天然の食塩水若しくは海水がベース液として用いられ、該ベース液にプロテオグリカンが混合される。更に、生物、特に動物の血漿がベース液として用いられる。
【0017】
減衰液体の別の構成によれば、減衰液体は、特に圧縮性を得るためにアルカリ、例えばNaOHを含んでいる。アルカリの混合により、液体の体積の数パーセント、例えば5〜15%、有利には10%の圧縮率が達成される。
【0018】
本発明の別の実施の形態によれば、球体は、一体構造ではなく、つまりボールシェル状の2つの要素から二部構造で形成されており、両方の要素は互いにシールされた状態で連結され、有利には互いにオーバーラップしてシールされた状態で連結されている。該実施の形態において可能な構成では、各ボールシェル状の各要素は1つの半球シェルよりも大きくなっており、結果として両方の要素は、球体の円周領域で互いにオーバーラップすることができる。重要なことは、両方の要素がボールシェル要素のオーバーラップ領域で互いに重なり合って密接していることである。
【0019】
上記実施の形態は、ボールシェル状の両方の要素が共有の1つの中心点を基準として互いに少なくとも部分的に相対回動できるので有利であり、更にボールシェル状の両方の要素は1つの直線方向でも相対的に運動することができ、この場合には円周領域のオーバーラップは増大若しくは減少する。このような構成により利点として、本発明に係る減衰装置を用いて支承される対象物、例えば建物は、その振動、特に地震により発生した振動を減衰装置内へ、特に球体の内部構造内へより良好に伝えるようになっている。更に、オーバーラップの平面に対して垂直な直線方向での強い運動に際しては、球体における元に戻らない変形の発生を避けることができる。このことを達成するために、ボールシェル要素は、上方の要素と下方の要素とから成っており、各要素はそれぞれ各支承台に対応配置されている。
【0020】
本発明に係る減衰装置の有利な実施の形態によれば、減衰体は、作業媒体を有するシリンダー・ピストン・ユニットとして形成されており、つまり、減衰体は、引っ張り力及び/又は押圧力に対して減衰作用を発生させる通常の緩衝器に対応するものである。減衰体としてのシリンダー・ピストン・ユニットの特に半径方向外側の端部は、球体の内壁に取り付けられている。
【0021】
有利な実施の形態によれば、複数の減衰体が、球体の中心点を基準として対称的に、かつそれぞれ半径方向に延びるように配置されていて、共有の1つの保持体に支持されている。保持体は例えば同様に球形を有していてよい。有利には、上記種類の少なくとも6つの減衰体が用いられており、各4つは、互いに交差する面内に配置されている。
【0022】
前記形式若しくは後で述べる形式の減衰体の任意の数において、各2つの減衰体は、それぞれ1つの線上で共有の保持体に配置されてよい。
【0023】
減衰体の上記構成において、液体及び減衰体の減衰機能は互いに独立して作用するようになっている。これに対して、本発明に係る別の有利な実施の形態によれば、減衰体は、減衰液体を満たされた管として形成されており、管の端部はダイヤフラムによって閉じられており、各ダイヤフラムは少なくとも1つの貫通開口部を有している。その他の点について、該減衰体は、前述の実施の形態と同じ半径方向の配置構造を有している。
【0024】
ここでは、一面において減衰液体内における伝播の際の衝撃波の直接的な減衰により発生する減衰作用と、かつ他面において減衰体内における減衰液体の流れにより発生する減衰作用との組合せが得られている。
【0025】
ダイヤフラムの少なくとも1つの貫通開口部により、管内の横断面が減少され、ひいては相応の高い流動抵抗が得られるようになっている。
【0026】
別の有利な実施の形態によれば、1つの管、特に各管は、前記の端部側のダイヤフラム間で該管内に少なくとも1つの別のダイヤフラム、有利には複数のダイヤフラムを有しており、該別のダイヤフラムも少なくとも各1つの貫通開口部を有している。該実施の形態において、管の長手方向で順次に位置する2つのダイヤフラムの貫通開口部は、同列には配置されてないようにされている。
【0027】
上記の実施の形態においても、同列の配置に比べて管内における高い流動抵抗が達成されている。特に有利な実施の形態によれば、1つの管のすべてのダイヤフラムの貫通開口部は、仮想の1つのつる巻線上に配置されている。このようなつる巻線上配置は、各貫通開口部がその全横断面の領域でもって、管内を延びる仮想の1つのつる巻線の回りに配置されていることを意味し、有利には各貫通開口部の横断面の中心が正確に巻線上に位置していることを意味している。
【0028】
有利な別の実施の形態によれば、管はその半径方向外側の端部領域が、球体の内側に設けられかつ有利には球体の中心点と一致した中心点を有する1つの中空球内に配置されている。該中空球は、球体の内壁に取り付けられ、若しくは結合又は接続され、例えば引っ張りばね若しくは圧縮ばねを介して球体の内壁にばね弾性的に結合されていてよく、該引っ張りばね若しくは圧縮ばねは半径方向で中空球の外側と球体の内側との間に配置されている。
【0029】
球体に対する中空球の安定した位置を達成するために、中空球及び球体の中心点は有利には互いに一致しており、半径方向に延びる管も球体内において少なくともほぼ定位置に配置されている。管の少なくとも半径方向外側の端部領域を中空球内に配置してあることに基づき、球体に作用する衝撃波は、球体の、中空球により仕切られた外側の領域と内側の領域との間に圧力差を発生させ、これにより、減衰液体が、圧力バランスを得るために管を通って適切に流れるようになっている。
【0030】
管を、その半径方向外側の端部の領域で前記中空球内に配置する代わりに、管は、その端部でもって正確に該内側の中空球の表面に配置されてよく、つまり、管の半径方向外側の端部のダイヤフラムが、球表面の一部分を成していてよい。
【0031】
更に有利な別の実施の形態によれば、球体内に1つの中空球が配置されるのではなく、互いに内側と外側とに配置される複数の中空球が配置されており、該中空球は特に有利にはそれぞれ球体の中心点と同一の中心を有しており、管は、半径方向ですべての中空球を貫通し、特に密に貫通している。つまり有利な1つの実施の形態においては、減衰液体は管と中空球表面との間の領域を通って流過しないようになっている。このために、金属から成っていてよい中空球と管とは、互いに接着され、ろう付けされ、若しくは溶接され、或いは別の形式では互いに密に接合されていてよい。更に、1つの構成部分若しくは2つのボールシェル要素から成る最も外側の球体は、金属により製造されていてよい。管は、その少なくとも周壁材料及び/又はダイヤフラム材料に関して弾性的に形成され、例えばゴムのようなエラストマ等から成っていてよい。
【0032】
最適なスペース利用のために、前述のすべての実施の形態においては、半径方向に延びる管は、その横断面が半径方向外側から半径方向内側に向かって減少している。管は有利には円錐台形状を有している。
【0033】
別の実施の形態によれば、管及び/又は中空球は穿孔を有している。該実施の形態において、減衰液体は穿孔を通って流れるようになり、穿孔は、一面において直接的な流動抵抗により、かつ他面において流れに基づき減衰液体に作用する力、ひいては発生する分子の形状変化により更なる減衰に寄与するものである。
【0034】
別の実施の形態によれば、支承台に1つの減衰措置が、例えば規定された1つの直線方向での衝撃の減衰のために配置される。該実施の形態においても、減衰装置は前記の減衰液体で満たされていて、前記形式の減衰体を備えており、仮想の直線に沿って相互に移動可能な2つの減衰装置要素によって形成されていてよく、減衰装置要素間には、本発明に係る前述の実施の形態とは異なり、減衰体は装置の長手方向に直線状に配置されている。この場合に内部の容積は、冒頭に述べた筒状のダンパーが前記直線方向で互いに平行に延びる少なくとも1つの分離面によって仕切られていてよい。
【0035】
次に本発明を図示の実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】液圧式の減衰体を有する第1の実施の形態を示す図である。
【図2】減衰液体で満たされた筒状の管を有する本発明に係る第2の実施の形態を示す図である。
【図3】筒状の減衰体の詳細図である。
【図4】プロテオグリカンの概略図である。
【図5】主要なグリコサミノグリカンの幾つかの二糖構造を示す図である。
【0037】
図1は、本発明に係る球体の可能な実施の形態を例として示しており、該球体は、2つのボールシェル要素3,4から構成されており、該両方のボールシェル要素は、図示の実施の形態においては下方及び上方の要素を成していて、ほぼ水平に位置する周囲領域Uで互いにオーバーラップしている。
【0038】
両方のボールシェル要素は、少なくとも部分的に、球体の中心点Mを中心として相対的に回転運動することができ、かつほぼ垂直な方向で互いに相対的に運動することができるようになっており、このような運動により、周囲領域Uは拡大され若しくは縮小される。
【0039】
上方のボールシェル要素3は上方の支承台1に配置され、若しくは該支承台に取り付けられており、かつ下方のボールシェル要素4は下方の支承台2に取り付けられており、該下方の支承台は例えば基礎を形成していてよいのに対して、支承台1は対象物、例えば建物に結合されるようになっている。両方のボールシェル要素3,4は、例えば金属から製造されていてよく、有利には同じ材料厚さを有しており、下方のボールシェル要素4は、上方のボールシェル要素よりもわずかに小さい直径を有しており、これにより両方のボールシェル要素は、オーバーラップ領域で互いに継ぎ合わされている。
【0040】
本発明に係る上述のように形成された球体の内側の容積は、前述の特性を有する減衰液体5で満たされている。このような液体は、マックスプランクの理想流体とも称されている。このような理想流体の特性は、天然では前に述べた種類の液体によってほぼ得られるようになっている。
【0041】
更に、固有の作業流体、例えばハイドロリックオイルを有するハイドロリック式の衝撃ダンパーの、球体の中心点Mに対する対称的な配置も考えられる。この種の衝撃ダンパーは、例えばピストンによる流体の内部流れに基づき、引張負荷も押圧負荷も減衰するようになっている。図示の衝撃ダンパー10は、球体の中心点Mに対して対称的に配置されており、図示の実施の形態においては全体で6つの衝撃ダンパー10が設けられており、これらのうちの各4つは各1つの平面内に位置しており、図示の実施の形態では、互いに垂直に配置されかつそれぞれ4つの衝撃ダンパーを有する2つの平面が規定されている。
【0042】
本発明に係るダンパーに作用する衝撃波、例えば地震の震動波は、内部の衝撃ダンパー10によっても、減衰液体5によっても減衰される。
【0043】
図2は、図1と同じ外側の構成を有する別の有利な実施の形態を示しており、両方のボールシェル要素3,4から成る球体内の内側の構成は、異なる構造を有している。
【0044】
図面から見て取れるように、球体内には複数の中空球7が配置されており、該中空球は有利にはすべて、球体の中心点Mと一致する同じ中心点Mを有している。図示の実施の形態では、中空球7は互いに、少なくともほぼ等間隔に配置されており、このことはしかしながら必須ではない。中空球7は、半径方向で複数の減衰体10によって貫通されており、該減衰体は管状に形成されており、該減衰体の半径方向外側の端部は、中空球7の内周面で終わっているか、若しくは中空球の表面を超えて突出している。図面から見て取れるように、筒の外側の端部も内側の端部も、貫通開口部6aを備えるダイヤフラム6を有しており、端部に配置された該ダイヤフラム6間にも、貫通開口部6aを備える別のダイヤフラム6が配置されており、これらのダイヤフラム6の全部の貫通開口部6aは、1つのつる巻線9上に配置されている。更に管周壁が穿孔10aを有し、同じく中空球7も穿孔を有している。衝撃波の作用に際して本発明に係る球体内における圧力差に基づき、伝播する衝撃波による減衰が発生するだけではなく、管内を流れる減衰液による減衰も発生するようになっている。
【0045】
上記の実施の形態においても、半径方向内側のすべての端部は、球体の中心の周りに配置された共有の1つの保持部に支えられている。保持体も1つの中空球7であってよい。
【0046】
球体内の内部の構造体の安定的な位置決めのために、外側の中空球7はばね要素8を介して球体の内側領域に取り付けられている。このような構成により、少なくとも静止状態では、各中空球の各中心点Mは球体の中心点と一致している。
【0047】
図3は、図2に示す実施の形態に用いられる筒状の減衰体10の詳細図である。図3に示す実施の形態において、筒は、その横断面を半径方向で減少させられているのではなく、円筒状に形成されている。図面から見て取れるように、上方及び下方の端面はダイヤフラム6によって閉じられており、該ダイヤフラムは偏心的な貫通開口部6aを有している。端面側の両方のダイヤフラム6間には、例として別の1つのダイヤフラム6が配置されており、描かれたつる巻線9によって示してあるように、管のダイヤフラム6のすべての開口部6aはつる巻線9上に配置されている。管10の壁領域にも貫通開口部10aが設けられている。
【0048】
付言すれば、図示の実施の形態は例として示されたものであり、本発明に係る構成は、正確な寸法比で描かれているのではなく、概略的に描かれているものである。管は、球体に対して描かれている寸法比よりも著しく小さい寸法を有している。何れの図面も正確な寸法比で描かれているものではない。
【0049】
例えば、管は、マイクロメートル範囲の直径しか有していなくてよく、ダイヤフラムの貫通開口部及び管周壁若しくは中空球の穿孔もマイクロメートル範囲の直径しか有していなくてよく。管直径の寸法は、有利には20〜200マイクロメートルの範囲であり、更に有利には40〜60マイクロメートルの範囲であり、管周壁、ダイヤフラム若しくは中空球の開口部は、有利には3〜200マイクロメートルの範囲の寸法で形成され、更に有利には5〜10マイクロメートルの範囲の寸法で形成されている。このようなマイクロメートル範囲の小さい寸法を有する実施の形態においては利点として、プロテオグリカン若しくは他の長鎖分子を有する減衰液体において、このような長鎖分子は、小さい断面の開口部を通って流れる際に多くのエネルギーを失うことになる。
【0050】
図示の実施の形態の減衰装置は、地震の衝撃若しくは揺れの減衰のためにのみ用いられるのではなく、原理的には、対象物に作用する振動の減衰のために種々に使用されるものである。
【0051】
図4は、例としてプロテオグリカン分子を概略的に示している。図示してあるように、ヒアルロン酸には、グリコサミノグリカンが付加されている。このような分子は、1乃至数マイクロメートルの長さを有していてよい。図5は、例として主要なグリコサミノグリカンの幾つかの二糖構造を示している。この種の分子を含む液体は、優れた減衰特性を有している。
【0052】
本発明は図示の実施の形態に限定されるものではなく、種々に実施され得るものである。本発明の図示の実施の形態の各構成事項は、互いに任意に組み合わせて用いられ、若しくは単独に用いられるものである。
【符号の説明】
【0053】
1,2 支承台、 3,4 ボールシェル要素、 5 減衰液体、 6 ダイヤフラム、 6a 貫通開口部、 7 中空球、 8 ばね要素、 9 つる巻線、 10 衝撃ダンパー、 10a 穿孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰装置、特に震動ダンパーにおいて、該減衰装置若しくは震動ダンパーは中空の球体を含んでおり、該球体は、互いに密に結合されたボールシェル状の2つの要素(3,4)から二部構造で形成されており、減衰液体(5)で満たされていて、かつ半径方向に配置された複数の減衰体(10)を含んでおり、該減衰体の半径方向内側の端部は、前記球体の中央に配置された共有の1つの保持体に取り付けられており、かつ該減衰体の半径方向外側の端部は、前記球体の内壁に直接に若しくは間接的に取り付けられていることを特徴とする減衰装置。
【請求項2】
前記減衰液体(5)は、衝撃に際してエネルギーを消費する構造の分子を含んでいる請求項1に記載の減衰装置。
【請求項3】
前記減衰液体(5)は、プロテオグリカンを含み、特にアルカリ、例えばNaOHの混合物を有している請求項2に記載の減衰装置。
【請求項4】
前記減衰液体(5)は、骨間の液体であり、特に動物の海綿状の骨材から得られた液体である請求項2又は3に記載の減衰装置。
【請求項5】
前記ボールシェル状の2つの要素(3,4)は、互いにオーバーラップしてシールされた状態で相互に装着されている請求項1から4のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項6】
前記減衰体(10)は、作業媒体を有するシリンダー・ピストン・ユニットとして形成されており、該シリンダー・ピストン・ユニットの半径方向外側の端部は、前記球体の内壁に取り付けられている請求項1から5のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項7】
前記減衰体(10)は、前記減衰液体(5)を満たされた管として形成されており、該管の端部はダイヤフラム(6)によって閉じられており、該各ダイヤフラムは少なくとも1つの貫通開口部(6a)を有している請求項1から6のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項8】
1つの前記管(10)、特に各前記管(10)は、該管の端部の前記ダイヤフラム(6)間で該管の内部に少なくとも1つの別のダイヤフラム(6)を有しており、該別のダイヤフラムは少なくとも1つの貫通開口部(6a)を有している請求項7に記載の減衰装置。
【請求項9】
前記管(10)の長手方向で順次に位置する2つの前記ダイヤフラム(6)の前記貫通開口部(6a)は、同列には配置されてないようにされている請求項7又は8に記載の減衰装置。
【請求項10】
1つの前記管(10)のすべての前記ダイヤフラム(6)の前記貫通開口部(6a)は、1つのつる巻線(9)上に配置されている請求項7から9のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項11】
前記管(10)は、該管の半径方向外側の端部の領域でもって、特に前記球体内に設けられて同一の中心点(M)を有する1つの中空球(7)内に配置されていて、前記球体の内壁に取り付けられ、特にばね弾性的に取り付けられている請求項7から10のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項12】
前記球体は、互いに内外に配置されかつ有利には同一の中心点(M)を有する複数の中空球(7)を含んでおり、前記管(10)は半径方向で前記中空球(7)を貫通し、特に密に貫通している請求項7から11のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項13】
前記管(10)及び/又は前記中空球(7)は穿孔を有している請求項7から12のいずれか1項に記載の減衰装置。
【請求項14】
前記球体は少なくとも2つの支承台(1,2)に保持されており、該支承台は、前記球体を中心として対称的に配置され、特に2つの支承台の場合に相対する側に配置されている請求項1から13のいずれか1項に記載の減衰装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−515633(P2011−515633A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500100(P2011−500100)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001907
【国際公開番号】WO2009/115270
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510251501)
【氏名又は名称原語表記】Franz Copf senior
【住所又は居所原語表記】Roemerstrasse 42, D−72127 Kusterdingen, Germany
【Fターム(参考)】