説明

減速装置

流体で満たされたシリンダ(2)と、前記シリンダ(2)を閉じ、前記シリンダ(2)内をスライドするロッド(4)によって貫通されているブシュ(3)と、前記流体の調整された貫通路のための手段(7)が装着され、前記シリンダ(2)の内側をスライドするように案内されたピストン(5)とを備え、前記ピストン(5)が、前記ロッド(4)とは別であり、前記ピストン(5)を前記シリンダ(2)から出ようとする方向に動かすための第1の弾性手段(8)と、前記ロッド(4)を前記シリンダ(2)から出る方向に動かすための第1の弾性手段(8)とは別個独立の第2の弾性手段(9)とが存在している減速装置(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にキャビネットの可動部のための減速装置であって、好ましくは粘性のある流体で満たされたシリンダと、前記シリンダを閉じるためのブシュによってスライドするロッドと、前記流体を調整して流通させるための手段が装着され、前記シリンダの内側をスライドするピストンとを備えている減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許EP 1162 338が、ロッドの頭部がピストンに当接し、外力によって駆動されたときにピストンをシリンダの底部に向かって押す減速装置を説明している。復帰は、ばねがピストンを抜け出しの方向に駆動し、ピストンがロッドを押すことによって達成される。したがって、ロッドの抜け出しの速度は、ばねの力およびピストンを通過して流れるシリンダ内の流体の粘性に依存して決まる。
【0003】
ロッドがピストンへと接合されているこの形式の他の公知の減速装置では、目標が、ピストンの引き込みの方向のゆっくりとした制動の行程に続いて、ピストンが高速に復帰することにあり、結果として、装置に組み合わせられ、閉鎖の方向について制動される可動部(例えば、引き出しなど)が、開放という逆の運動において同じようには制動されない。これは、ピストン上に一方向の弁を備えている装置の採用を意味し、そのような一方向の弁は製造が複雑であり、装置のコストを高くする。
【0004】
独国特許DE−OS 22 56 201が、復帰ばねがシリンダの外部でシリンダとピストンロッドの前端との間に配置されている減速装置を説明している。シリンダの内部に配置された第2のばねは、シリンダ内へのロッドの引き込みに起因する補償体積の変化を調整するという機能だけを有し、決してロッドの動きを補助しているわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、公知の減速装置において見られる不都合を克服する減速装置を提供することにある。
【0006】
この技術的課題の一部として、本発明の1つの目的は、上述の形式の減速装置であって、押し具として機能するピストンロッドがピストンの動きにかかわらず高速に復帰し、ピストンに一方向性の流れの装置を採用することを不要にする減速装置を生み出すことにある。
【0007】
本発明の他の課題は、一方向について減速装置として機能でき、反対の方向について押し装置として機能することができる装置を生み出すことにある。
【0008】
本発明の他の目的は、当然ながら、簡単かつ経済的に製造することができる減速装置を提供することにある。
【0009】
最後に、重要なこととして、本発明の他の目的は、キャビネットの可動部のきわめて滑らか、かつ静かな開閉のための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の技術的課題、ならびに上述の目的および他の目的が、本発明によれば、後述される特許請求の範囲に従って減速装置および開閉方法を設計することによって達成される。
【0011】
本発明の1つのきわめて有利な態様は、ピストンおよびピストンロッドが互いに別々であり、ピストンおよびピストンロッドの各々が、ピストンおよびピストンロッドの各々をシリンダから出ようとする方向に押す各自の個別の弾性手段(例えば、復帰ばね)によって別々に駆動される点にある。
【0012】
このようにすることで、押し具として機能するロッドの抜け出しが素速く、かつ/または引き出し具の機能を伴って生じる一方で、ピストンの動きがよりゆっくりと後を追い、シリンダ内に含まれる流体、例えば粘性オイルが、ピストンに存在する調整された通路のための手段を通って流れることができるよう、復帰ばねの力を適切に個別に調整することが可能である。
【0013】
一方、シリンダへの入り込みという反対の動きにおいては、ピストンの調整された通路を流れる粘性流体の速度が制動の作用を決定する要素であり、これに復帰ばねによってもたらされる反対の作用も加えられるため、装置が通常のやり方で減速器として機能する。
【0014】
本発明による減速装置が公知の閉鎖装置に組み合わせられているキャビネットの可動部(例えば、扉または引き出し)の開閉方法は、多数の利点を有している。
【0015】
閉鎖装置が、キャビネットの可動部を閉鎖の方向に実際に押し、これが第1の移動方向において本発明による減速装置によって制動される。
【0016】
その後に、キャビネットの可動部を開くことが望まれる場合に、外部の力によって閉鎖装置が中立または無効にされるように構成することが可能である。この場合に、本発明による同じ減速装置が、最初の方向と反対の方向に力を及ぼし、キャビネットの上記可動部の開放を生じさせ、あるいは容易にする押しを生み出す。
【0017】
本発明の他の特徴は、後述の特許請求の範囲にさらに記載される。
【0018】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面に一例として示される(ただし、これに限られるわけではない)本発明による減速装置の好ましい応用(ただし、これがすべてというわけではない)についての説明から、さらに明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】減速装置を構成する部品の分解斜視図を示している。
【図2】ロッドが突き出た位置にある図1の装置の軸方向断面を示している。
【図3】ロッドが引っ込んだ位置にある図1の装置の軸方向断面を示している。
【図4】ロッドが突き出しの最中の中間位置にある図1の装置の軸方向断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述の図を参照すると、減速装置の全体が、参照符号1によって指し示されている。
【0021】
減速装置は、粘性流体で満たされたシリンダ2と、シリンダ2を閉じ、シリンダ2内をスライドするロッド4によって貫通されているブシュ3と、ロッド4とは別個のピストン5とを備えている。
【0022】
シリンダ2を満たす粘性流体は、例えば空気などの気体であってよく、あるいは今回の場合のように、例えば油などの液体であってよい。
【0023】
ピストン5が、シリンダ2内をスライドし、粘性流体を調整して流通させるための貫通路7を提供する。
【0024】
減速装置1は、有利には、ピストン5をシリンダ2から出ようとする方向に動かすための第1の弾性手段8と、ロッド4をシリンダ2から出る方向に動かすための第1の弾性手段とは別個独立の第2の弾性手段9とを有している。
【0025】
第1の弾性手段8は、ピストン5の後ろ側の段部19とシリンダの底部を閉じているキャップ20との間に保持された第1の復帰ばね10を備えている。
【0026】
第2の弾性手段9は、シリンダ2の外部においてロッド4を覆うように装着され、ロッド4の前頭部とブシュ3の前端との間に保持された第2のばね11を備えている。
【0027】
第1および第2の復帰ばね10および11は、好ましくはシリンダ2と同軸な圧縮コイルばねであり、好ましくは堅さの度合いが異なっている。
【0028】
ロッド4の前頭部12は、衝突に起因する騒音を弱めるために弾性キャップ16を有している。
【0029】
ロッド4は、ピストン5の前面に当接する後頭部21を有し、ピストン5の環状の周溝17にOリング18が装着されている。
【0030】
ブシュ3とロッド4との間の気密が、リップシール13によって保証される。
【0031】
圧縮可能な弾性材料からなる筒状部材15が、ブシュ3の小径にされた脚部14を囲んでいる。
【0032】
筒状部材15は、例えば独立気泡のゴム製スリーブで構成され、ロッド4が引き出され、粘性流体がシリンダ2の前部に向かって流れるときに圧縮される(図2)。
【0033】
より具体的には、シリンダ2が、小径の後部22と、大径の前部23と、後部22と前部23とを接続している中間部24とを有している。
【0034】
シリンダの後部22が、ピストン5の軸方向のスライドを案内する。Oリング18が、シリンダ2の前部22の内表面とピストン5との間の封止をもたらしている。
【0035】
シリンダ2の前部23は、脚部14を有するブシュ3と、脚部14に支えられた筒状部材15とを収容する。
【0036】
本発明による減速装置1の機能は、以上の説明および図から明らかであり、詳しくは以下のようである。
【0037】
図2に示されているロッド4が突き出している位置から出発し、ロッド4が引っ込む際に、第1の復帰ばねが、ピストン5をロッド4の後頭部21に接触した状態に保つ。第1の復帰ばね10および第2の復帰ばね11の両方が圧縮され、ピストン5とともにロッド4の引っ込みの行程を減速させるように機能する。
【0038】
引っ込みの終わりにおいて、ロッド4は、図3に示されている構成をとる。
【0039】
図4は、その後のロッド4の抜け出しの際の減速装置1を示し、ロッド4が、シリンダ内での動きが制動されないがゆえに、すでに第2の復帰ばね11によって完全に押し出された状態にある一方で、ピストン5は、シリンダ2内の粘性流体を調整して流通させるための通路7を通過して流れるがゆえに、シリンダ2内をよりゆっくりと移動するため、依然として第1の復帰ばね10によって押し出されつつある状態である。したがって、ピストン5の抜け出しの行程は、ロッド4の抜け出しの行程の終わりに対して遅れて、ピストン5がロッド4の後頭部21に当接する(図2に示されている位置)ことによって終了する。
【0040】
このように機能して、減速装置1を公知の閉鎖装置に有利に組み合わせ、キャビネットの可動部のきわめて滑らか、かつ静かな開閉を実現することができる。
【0041】
実施において、キャビネットの可動部を閉じる際に、第1の弾性手段8および第2の弾性手段9の両方が有効であって、ピストン5と協働してロッド4を減速させ、したがってキャビネットの可動部を減速させるように機能する一方で、キャビネットの可動部を開く際には、第2の弾性手段がロッド4だけを抜け出しの方向に素速く押すように働く一方で、第1の手段8は、ロッド5だけをシリンダ2から抜け出そうとする方向に押すように働き、調整された通路7を通過する粘性流体の流れゆえに、ロッド5のよりゆっくりとした移動が可能である。
【0042】
このように考え出された減速装置に、多数の変更および変種を適用することが可能であり、それらはすべて、本発明の考え方の技術的範囲に包含される。さらに、すべての細目は、技術的に同等な要素で置き換えが可能である。
【0043】
実施において、使用される材料および寸法を、ニーズおよび最新技術に適合させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体で満たされたシリンダ(2)と、
前記シリンダ(2)を閉じ、前記シリンダ(2)内をスライドするロッド(4)によって貫通されているブシュ(3)と、
前記流体を調整して流通させるための手段(7)が装着され、前記シリンダ(2)の内側をスライドするピストン(5)と
で構成された減速装置(1)であって、
前記ピストン(5)が、前記ロッド(4)とは別であり、前記ピストン(5)を前記シリンダ(2)から出ようとする方向に動かすための第1の弾性手段(8)と、前記ロッド(4)を前記シリンダ(2)から出る方向に動かすための前記第1の弾性手段(8)とは別個独立の第2の弾性手段(9)とが存在することを特徴とする、減速装置(1)。
【請求項2】
前記第1の弾性手段(8)が、前記ピストン(5)と前記シリンダ(2)の底部との間に保持された第1のばね(10)で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の減速装置(1)。
【請求項3】
前記第2の弾性手段(9)が、前記シリンダ(2)の外部において前記ロッド(4)を覆うように装着され、前記ロッド(4)の前頭部(12)と前記シリンダ(2)または前記ブシュ(3)との間に保持された第2のばね(11)を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載の減速装置(1)。
【請求項4】
前記第1および第2のばね(10、11)が、異なる堅さの度合いを有していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の減速装置(1)。
【請求項5】
前記第1および第2のばね(10、11)が、前記シリンダ(2)と同軸なコイルばねであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の減速装置(1)。
【請求項6】
前記ロッド(4)が、前記ピストン(5)に当接する後頭部(21)を有していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の減速装置(1)。
【請求項7】
前記ロッド(4)に、衝突に起因する騒音を弱めるための弾性キャップ(16)を有している前頭部(12)が取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の減速装置(1)。
【請求項8】
前記ピストン(5)の環状の周溝(17)にOリング(18)が装着され、該ピストン(5)が、前記シリンダ(2)に沿って軸方向に案内されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の減速装置(1)。
【請求項9】
キャビネットの可動部の減速させられた閉鎖のために、請求項1〜8のいずれか一項に記載の減速装置(1)を有していることを特徴とする、キャビネット。
【請求項10】
粘性流体で満たされたシリンダ(2)と、
前記シリンダ(2)を閉じ、前記シリンダ(2)内をスライドするロッド(4)によって貫通されているブシュ(3)と、
前記ロッド(4)とは別個のピストン(5)と
で構成され、
前記ピストン(5)が前記シリンダ(2)の内側をスライドし、前記ピストン(5)に前記粘性流体を調整して流通させるための手段(7)が取り付けられている減速装置(1)によって、キャビネットの可動部を開閉する方法であって、
前記キャビネットの可動部を閉じる際には、前記ピストン(5)を前記シリンダから出ようとする方向に動かすための前記第1の弾性手段(8)が、前記ロッド(4)を前記シリンダ(2)から出る方向に動かすための第2の弾性手段(9)と協働して、前記ロッド(4)を減速させるように働き、
前記キャビネットの可動部を開く際には、前記第2の弾性手段(9)が、前記ロッド(4)だけを前記シリンダ(2)から出る方向に押すように働く一方で、前記第1の手段(8)が、前記ピストン(5)を前記シリンダ(2)から出ようとする方向に押すように働き、前記粘性流体を調整して流通させるための手段(7)を通る前記粘性流体の流れを可能にすることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−524217(P2012−524217A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505108(P2012−505108)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053810
【国際公開番号】WO2010/118934
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511248685)アルトゥーロ・サリーチェ・ソシエタ・ペル・アチオニ (1)
【Fターム(参考)】